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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】電子機器および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20240828BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G06F1/26 306
H02J1/00 304A
H02J1/00 306B
H02J1/00 306F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020195360
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083815
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森友 広志
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038429(JP,A)
【文献】特開2020-005339(JP,A)
【文献】特開2019-121268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/26
H02J1/00
H02J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを有し、前記ケーブルを介して接続された外部機器に電力を供給する電子機器であって、
電力の供給に関する認証通信に用いる第1の認証情報と、前記ケーブルに関する認証通信に用いる第2の認証情報とを記憶した記憶手段と、
前記ケーブルを介して前記外部機器が接続された場合に、前記外部機器からの前記電子機器に対する認証通信に対して応答可能であり、前記外部機器からの前記ケーブルに対する認証通信に対しても応答可能な通信手段と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記通信手段は、前記外部機器から受信した認証通信の宛先が前記電子機器である場合には前記第1の認証情報を用いて応答し、前記外部機器から受信した認証通信の宛先が前記ケーブルである場合には前記第2の認証情報を用いて応答することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記外部機器から受信した認証通信の宛先が前記ケーブルである場合に、前記ケーブルに対する認証通信に応答する前に、前記ケーブルに対する認証通信に先立って特定の通信を受信しているか否かを判定し、前記外部機器から前記ケーブルを宛先とした認証通信に先立って前記特定の通信を受信していない場合に、前記外部機器に対する電力の供給を制限する制御手段を有することを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電力の供給がUSB Power Delivery(USB PD規格に準拠して行われ、前記特定の通信がVconn_Swap通信であることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子機器はUSB Power Delivery(USB PB)規格に準拠した給電装置であり、前記認証通信はUSB AUTH規格の認証通信であり、
前記通信手段は、前記外部機器からの前記電子機器に対する認証通信に対し、前記電子機器がUSB PD規格に準拠した機器であると前記外部機器が判定するための応答を行い、前記外部機器からの前記ケーブルに対する認証通信に対し、前記ケーブルがUSB PD規格に準拠した機器であると前記外部機器が判定するための応答を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記外部機器に対する電力の供給を制御する制御手段をさらに有し、
前記通信手段は、前記外部機器による前記電子機器に対する認証通信と前記ケーブルに対する認証通信が成功した場合に、前記外部機器からの電力の要求を受信し、
前記制御手段は、前記外部機器から要求された電力を前記外部機器に供給するための制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
ケーブルと、
電力の供給に関する認証通信に用いる第1の認証情報と、前記ケーブルに関する認証通信に用いる第2の認証情報とを記憶した記憶手段とを有し、前記ケーブルを介して接続された外部機器に電力を供給する電子機器の制御方法であって、
前記ケーブルを介して前記外部機器が接続されている場合に、
前記外部機器からの前記電子機器に対する認証通信に対して応答するステップと、
前記外部機器からの前記ケーブルに対する認証通信に対して応答するステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
USB(Universal Serial Bus)に関する規格としてUSB Type-C規格およびUSB PD(Power Delivery)規格が知られている。USB PD規格に準拠したUSBインタフェースは、最大100Wの電力を供給可能である。
【0003】
特許文献1には、受電機器とUSBケーブルのそれぞれと認証通信を行う給電機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-097643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
USBケーブルが一体化された給電機器、USBケーブルを介さずに受電機器と接続可能なコネクタを有する給電機器を、ケーブル不要タイプの給電機器と呼ぶ。
【0006】
特許文献1では、ケーブル不要タイプの給電機器を想定していない。そのため、受電機器とケーブル不要タイプの給電機器との間で認証通信に成功した場合も、受電機器とUSBケーブルとの間で認証通信が行われる。そして、給電機器がUSBケーブルに対する認証通信に対応していない場合、USBケーブルに対する認証通信に失敗し、給電機器から受電機器への給電が不必要に制限されうる。
【0007】
そこで、本発明は、USBケーブルに対する認証通信に起因して生じる問題を解決できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、ケーブルを有し、ケーブルを介して接続された外部機器に電力を供給する電子機器であって、電力の供給に関する認証通信に用いる第1の認証情報と、ケーブルに関する認証通信に用いる第2の認証情報とを記憶した記憶手段と、ケーブルを介して外部機器が接続された場合に、外部機器からの電子機器に対する認証通信に対して応答可能であり、外部機器からのケーブルに対する認証通信に対しても応答可能な通信手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、USBケーブルに対する認証通信に起因して生じる問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1および2における給電システムの構成例を説明するための図である。
図2】ケーブル120が一体化された給電機器100の構成要素と、受電機器300の構成要素とを説明するための図である。
図3】給電システムにおける動作シーケンスの例を説明するための図である。
図4】給電機器100のPD通信部121の動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[実施形態1]
図1は、実施形態1および2における給電システムの構成例を説明するための図である。
【0013】
図1に示すように、実施形態1および2における給電システムは、給電機器100と、給電機器100から供給される電力で動作可能な受電機器300とを有する。給電機器100および受電機器300とはいずれも、USB(Universal Serial Bus) PD(Power Delivery)規格およびUSB Type-C規格に準拠する電子機器である。
【0014】
給電機器100は、USBケーブル(以下、ケーブルという)120が一体化された給電機器である。給電機器100は、例えば、USB-ACアダプタ、モバイルバッテリ、パーソナルコンピュータまたはタブレットコンピュータとして動作可能な電子機器である。
【0015】
なお、給電機器100は、ケーブル120が一体化された給電機器に限るものではなく、ケーブル120を介さずに受電機器300と接続可能なコネクタまたはレセプタクルを有する給電機器であってもよい。
【0016】
受電機器300は、ケーブル120の先端に設けられたUSB Type-Cプラグ(以下、プラグという)130に対応するUSB Type-Cレセプタクル(以下、レセプタクルという)310を有する。受電機器300は、例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、メディアプレーヤ、PDA、携帯電話機、スマートフォン、ゲーム機、ロボットまたはドローンとして動作可能な電子機器である。
【0017】
次に、図2を参照して、図1に示す給電システムの構成要素を説明する。
【0018】
電源部101は、整流平滑部、DC/DCコンバータなどで構成され、外部から入力された商用交流電源を整流して、給電機器100の各構成要素に必要な電力を供給する。なお、外部から直流電源が入力される場合や、給電機器100がバッテリを内蔵する場合には、電源部101は、それぞれの場合に対応した構成を有する。
【0019】
制御部102は、例えば、給電機器100の各構成要素を制御するハードウェアプロセッサ(CPUなど)と、ハードウェアプロセッサが実行可能なプログラムを記憶したメモリとを有する。制御部102のメモリは、例えば、後述する給電機器100の動作例を実現するためのプログラムを記憶している。本明細書において、給電機器100を主体として記載された動作は、制御部102が給電機器100の構成要素を制御することによって実現される。
【0020】
給電部105はVBUSラインに接続され、給電機器100に接続された受電機器300に対して電力を供給する。ここでは後述するPD通信部121および認証部122が給電部105から供給される電力で動作するものとする。しかし、PD通信部121および認証部122は、電源部101が供給する電力で動作してもよい。
【0021】
プルアップ抵抗106は、CC1ラインに接続され、CC1ラインを所定の電圧にプルアップする。ここで、プルアップ抵抗106に接続される所定の電源は電源部101であり、所定の電源の電圧は5.0Vであり、プルアップ抵抗106の抵抗は10kΩであるとする。プルアップ抵抗106に接続される所定の電源の電圧およびプルアップ抵抗106の抵抗は、それぞれUSB PD規格またはUSB Type-C規格で規定された値であれば他の値でもよい。
【0022】
PD通信部121は、ケーブル120のCC1ラインに接続され、給電機器100と接続された受電機器300に対してUSB PD規格に基づいた通信(PD通信)を行う。PD通信部121は、給電機器としてのPD通信と、ケーブルとしてのPD通信とを行うことができる。
【0023】
認証部122は、PD通信部121と接続され、USB規格の推進団体(USB-IF)から発行された認証情報を記憶したメモリを有する。ここで、認証情報は、給電機器100が所定の機器(USB規格に準拠した機器)であるとUSB-IFによって認められていることを示す証明書データなどを含む、認証通信に必要な情報である。認証部122のメモリは、給電機器100に関する第1の認証情報と、ケーブル120に関する第2の認証情報とを記憶している。
【0024】
認証部122は、PD通信によって受電機器300から認証情報を要求されると、認証情報を、PD通信部121を介して受電機器300に送信する。
【0025】
さらに、認証部122は、PD通信によって受電機器300から取得した、受電機器300の暗号化された認証情報を、証明書データを用いて復号することで、受電機器300がUSB-IFによって認証された機器か否かを判定してもよい。
【0026】
単体のケーブルが用いられる場合、CC1ラインとCC2ラインのどちらがPD通信に用いられ、どちらがVconnの供給に用いられるかは、ケーブルが接続されるまで確定しない。そのため、給電機器には、CC1ラインとCC2ラインのどちらに対してもプルアップ抵抗106を接続可能な構成と、Vconnを供給可能な構成とが必要になる。
【0027】
しかしながら、給電機器100は、ケーブル120を有するため、CC1ラインにプルアップ抵抗106を固定的に接続することができる。その結果、プルアップ抵抗106をCC1ラインとCC2の一方に選択的に接続するための構成も、CC1ラインにVconnを供給するための構成も不要となる。さらに、CC2ラインの接続検出に必要なプルアップ抵抗も不要である。
【0028】
給電機器100は、単体のケーブルが有するPD通信部に相当する構成を有しておらず、PD通信部121が、ケーブルのPD通信部としても機能する。そのため、単体ケーブルを用いる場合にケーブルのPD通信部に対してVconnを供給するための構成も不要である。
【0029】
さらに、ケーブル120は、PD通信部および認証部が不要なだけでなく、給電機器100からVconnの供給を受けるための構成も不要である。
【0030】
一方で、ケーブル120は、受電機器300に対してケーブル120との通信が可能であることを通知する必要がある。そのため、CC2ラインとGNDとを接続するプルダウン抵抗206を有している。
【0031】
受電機器300の構成について説明する。電源部301は、リチウムイオン電池などの電源、DC/DCコンバータなどを有する。電源部301は、接続された受電部305、あるいは電源から供給される電力から、受電機器300の各構成要素に必要な電力を供給する。
【0032】
制御部302は、例えば、受電機器300の各構成要素を制御するハードウェアプロセッサ(CPUなど)と、ハードウェアプロセッサが実行可能なプログラムを記憶したメモリとを有する。制御部302のメモリは、例えば、後述する受電機器300の動作例を実現するためのプログラムを記憶している。本明細書において、受電機器300を主体として記載された動作は、制御部302が受電機器300の構成要素を制御することによって実現される。
【0033】
PD通信部303は、レセプタクル310のCC1端子およびCC2端子と接続され、接続された機器と、CC1ラインまたはCC2ラインを介してPD通信を行う。ここでは給電機器100により、CC1ラインにプルアップ抵抗106が、CC2ラインにプルダウン抵抗206が接続されているため、PD通信部303は、CC1ラインを用いてPD通信を行う。
【0034】
認証部304は、PD通信部303と接続され、USB-IFから発行された受電機器300に対する証明書データを含む、認証通信に必要な認証情報を記憶したメモリを有する。認証部304は、PD通信によって給電機器100から取得した、給電機器100の認証情報を、証明書データを用いて復号することで、給電機器100が所定の機器(USB PD規格およびUSB Type-C規格に準拠した機器)か否かを判定することができる。さらに、認証部304は、PD通信によって給電機器100から取得した、ケーブル120の認証情報を、証明書データを用いて復号することで、ケーブル120が所定のケーブル(USB PD規格およびUSB Type-C規格に準拠したケーブル)か否かを判定することができる。
【0035】
認証部304は、PD通信によって給電機器100から認証情報を要求されると、認証部304のメモリが記憶している認証情報を、PD通信部303を介して給電機器100に送信することができる。
【0036】
受電部305は、レセプタクル310のVBUS端子に接続され、給電機器100からVBUSラインを介して電力の供給を受ける。受電部305は、供給された電力を電源部301に供給して、電源部301が有する電源を充電してもよい。ここでは、PD通信部303および認証部304はVBUSラインを介して供給される電力で動作するものとするが、電源部301からの電力で動作してもよい。
【0037】
プルダウン抵抗306は、レセプタクル310のCC1端子とGNDとを接続し、USB PD規格またはUSB Type-C規格に規定された値(ここでは5.1KΩとする)を有する。
【0038】
プルダウン抵抗307は、スイッチ308により選択された際にレセプタクル310のCC2端子とGNDとを接続する。プルダウン抵抗307は、USB PD規格またはUSB Type-C規格に規定された値(ここでは5.1KΩとする)を有する。
【0039】
スイッチ308は、レセプタクル310のCC2端子を、所定の電圧を供給する電源と、プルダウン抵抗307との一方に選択的に接続する。ここで、電源は電源部301であり、電源の電圧は5.0Vとする。スイッチ308は、PD通信部303により制御される。PD通信部303は、ケーブル120とのPD通信を行う場合にCC2ラインVconnとして用いるためにCC2ラインを電源に接続するようにスイッチ308を制御する。PD通信部303は、それ以外の場合にはCC2ラインをプルダウン抵抗307に接続するようにスイッチ308を制御する。
【0040】
なお、図2には示していないが、スイッチ308と同様のスイッチが、CC1ラインとプルダウン抵抗306との間にも設けられており、そのスイッチの動作もPD通信部303が制御する。PD通信部303は、CC1ラインを給電機器100とのPD通信に用いる場合にはCC1ラインをプルダウン抵抗306に接続する。CC1ラインをケーブル120とのPD通信を行う場合には、CC1ラインをVconnとして用いるためにCC1ラインを電源に接続するようにスイッチ308を制御する。この電源は、CC2ラインに接続されるものと同様、電源部301であり、電源の電圧は5.0Vである。
【0041】
次に、図3を参照して、給電システムの動作シーケンスについて説明する。
【0042】
給電機器100のケーブル120に受電機器300が接続されると、ステップS301が開始される。ステップS301において、給電機器100は、外部機器である受電機器300が給電機器100に接続されたことを検出する。ケーブル120のプラグ130が受電機器300のレセプタクル310に接続されると、CC1ラインにプルダウン抵抗306が接続される。そのため、CC1ラインの電圧が、プルアップ抵抗106とプルダウン抵抗306との抵抗に応じた電圧(例えば1.1V)に変化する。CC1ラインの電圧を監視しているPD通信部121は、CC1ラインにプルダウン抵抗306が接続されたことによる電圧の変化を検出すると、給電機器100に受電機器300が接続されたと判定する。PD通信部121は、受電機器300の接続を検出すると、制御部102に通知する。
【0043】
ステップS302において、制御部102は、PD通信部121から受電機器300の接続を検出した旨の通知を受けると、給電部105はVBUSラインへの給電(例えば5V,100mA)を開始させる。
【0044】
VBUSラインへの電力供給を受電機器300の受電部305が検出すると、ステップS303が開始される。ステップS303において、受電部305は、外部機器である給電機器100が受電機器300に接続されたことを検出する。
【0045】
給電機器100は、ケーブル120が一体化されていない場合には、VBUSラインへの電力供給を開始した後、ケーブル120との認証通信を行う必要がある。実施形態1において、制御部102は、ケーブル120が一体化されている(ケーブル120との認証通信が不要である)ことを把握している。そのため、制御部102は、ケーブル120に対する認証通信を行わずに、受電機器300とのネゴシエーションを開始することができる。ステップS304において、PD通信部121は、CC1ラインを介してPD通信部303と、USB PD規格に定められたネゴシエーション通信を行う。ネゴシエーション通信では、給電機器100の給電能力に関する情報が受電機器300に送信される。受電機器300から給電機器100には、給電能力に基づいた電力要求が送信される。
【0046】
ステップS305において、ネゴシエーション通信が完了する。
【0047】
ステップS306において、受電機器300は、USB AUTH規格における認証イニシエータとして、給電機器100に対する認証通信を行う。認証通信において、受電機器300は給電機器100から認証情報を取得し、給電機器100が所定の機器(USB PD規格およびUSB Type-C規格に準拠した機器)であるか否かを判定する。
【0048】
ステップS307において、給電機器100が所定の機器であると判定された(給電機器との認証通信に成功した)ものとする。給電機器100との認証通信に成功した場合、ステップS308に進む。
【0049】
ステップS308において、受電機器300は、給電機器100と受電機器300とを接続しているケーブル120との認証通信の準備動作として、給電機器100に対して、特定の通信(Vconn_Swap通信)を行う。Vconn_Swap通信とは、ケーブル120が有する認証通信のための回路(PD通信部および認証部)に対する電力供給を行う機器を切り替えるための通信である。USB PD規格では、Vconnを供給している機器のみがケーブルとの通信を行うことができる。USB PD規格では、初期状態では給電機器(ソース)がVconnを供給することが規定されている。そのため、受電機器(シンク)がケーブルと通信する場合には、通信に先立ってVconnを受電機器が供給する状態にすることが必要である。Vconnの供給元をデフォルトの給電機器100(ソース)から受電機器300に(シンク)に切り替えるため、受電機器300はケーブルとの通信に先立ってVconn_Swap通信を行う。
【0050】
先に説明したように、実施形態1では、ケーブル120がPD通信部および認証部を有していないため、給電機器100はケーブル120に対してVconnの供給を行っていない。しかし、受電機器300は、ケーブル120が給電機器100に一体化されていることを知らない。そのため、受電機器300は、USB PD規格にしたがい、ケーブル120に対する認証通信が行われる前に、Vconn_Swap通信を行う。
【0051】
ステップS308において、PD通信部303は、Vconn_Swapメッセージを送信する。PD通信部121は、PD通信部303からVconn_Swapメッセージを受信すると、Vconn供給元の切り替えを許可する旨を通知するAcceptメッセージを送信する。
【0052】
ステップS309において、PD通信部303は、Acceptメッセージを受信すると、スイッチ308を制御して、CC2ラインをプルダウン抵抗307でGNDに接続している状態から所定の電圧の電源に接続する状態に切り替える。これにより、CC2ラインに対して受電機器300から電力(Vconn)が供給されるようになる。
【0053】
実施形態1において、ケーブル120は、給電機器100に一体化されており、PD通信部および認証部を有していない。図2に示したように、ケーブル120においてCC2ラインはプルダウン抵抗206を介してGNDに接続されている。そのため、受電機器300から供給されるVconnは、ケーブル120に対する認証通信には利用されない。Vconnが認証通信に利用されないことで、受電機器300の消費電力を低減することができる。受電機器300はモバイル機器など電池駆動される機器であることが多いため、受電機器300の消費電力低減は、動作可能時間の延長を可能にする。
【0054】
ステップS310において、受電機器300は、ケーブル120が所定のケーブル(USB規格に準拠したケーブル)か否かを判定するために、USB Auth規格にしたがった認証通信を行う。例えば、PD通信部303が、CC1ラインを介して、ケーブル120を対象とした通信(SOP*通信)により、認証通信を行う。
【0055】
USB PD規格では、メッセージの宛先をメッセージ中のStart of Packet(SOP)で指定する。したがって、PD通信部303は、ケーブル120(給電機器100に接続されているプラグ)を宛先としたメッセージを用いて認証通信を行う。実施形態1では、PD通信部121が、給電機器100宛のメッセージに加え、ケーブル120宛のメッセージに対しても応答することにより、ケーブル120のPD通信部として振る舞う。認証通信においてPD通信部121は、PD通信部303からの要求に応じて、認証部122からケーブル120に関する認証情報を取得する。そして、PD通信部121は、ケーブル120に関する認証情報をPD通信部303に対して送信する。
【0056】
ステップS311において、PD通信部303は、ステップS310で取得した認証情報を、認証部304に供給する。認証部304は、証明書データを用いて認証情報を復号することにより、ケーブル120が所定のケーブル(USB PD規格およびUSB Type-C規格に準拠したケーブル)であるか否かを判定する。ここでは、ケーブル120が所定のケーブルであると判定された(認証通信に成功した)ものとする。
【0057】
給電機器100およびケーブル120のいずれについても認証通信が成功したことにより、受電機器300は、ステップS304のネゴシエーション通信で要求した電力よりも大きな電力を給電機器100に要求することができる。ステップS312において、PD通信部303は、CC1ラインを通じたPD通信により、PD通信部121に対して供給電力の変更を要求するメッセージを送信する。PD通信部303は、ステップS304で取得した給電機器100の電力供給能力に関する情報に基づいて、例えば受電機器300の全ての機能を実現するために必要な電力を要求する。PD通信部121は、PD通信部303から受信した要求メッセージに基づいて、要求された電力を制御部102に通知する。
【0058】
ステップS313において、制御部102は、要求された電力をVBUSラインに供給するよう、給電部105を制御する。
【0059】
ステップS314において、受電機器300は、ケーブル120を介して給電機器100から受電機器300に供給される電力を受ける処理を開始する。
【0060】
以上、給電機器100および受電機器300の構成と、USB PD規格に従った給電制御動作とに関して説明した。実施形態1では、ケーブル120が一体化された給電機器100のPD通信部121および認証部122が、ケーブル120のPD通信部および認証部としても振る舞うことができる。これにより、PD通信部121は、ケーブル120に対する認証通信にも対応応答することができる。そのため、ケーブル120に対する認証通信の失敗に起因して生じる問題を解決することができる。さらに、ケーブル120内にPD通信部および認証部を設ける必要がなくなるため、ケーブル120の構成を簡単にすることができる。
【0061】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、給電機器100のPD通信部121の動作をさらに説明する。
【0062】
図3のステップS305において給電機器100と受電機器300の間でネゴシエーション通信が完了すると、給電機器100と受電機器300は互いにPD通信が可能な状況となる。その後、PD通信部121がPD通信部303から通信を受信すると、PD通信部121は、図4に示す動作を行う。
【0063】
ステップS401において、PD通信部121は、PD通信部303から受信した通信(メッセージ)の宛先が給電機器100か否かを判定する。上述したように、メッセージの宛先はSOPで指定されている。そのため、PD通信部121はメッセージのSOPに基づいて通信の宛先を判定することができる。PD通信部121は、ステップS401で通信の宛先が給電機器100であると判定した場合には、ステップS407の処理を行う(ステップS401でYES)。PD通信部121は、ステップS401で受信した通信の宛先が給電機器100でないと判定した場合には、ステップS402の処理を行う(ステップS401でNO)。
【0064】
ステップS407において、PD通信部121は、ステップS401で受信した通信に対して応答する。例えば、ステップS401で認証通信を受信した場合、PD通信部121は、認証部122から給電機器100に関する認証情報を取得し、PD通信部303に認証情報を送信する。
【0065】
ステップS402において、PD通信部121は、ステップS401で受信した通信の宛先がケーブル120か否かを判定する。PD通信部121は、ステップS401で受信した通信の宛先がケーブル120でないと判定した場合には、ステップS403の処理を行う(ステップS402でNO)。PD通信部121は、ステップS401で受信した通信の宛先がケーブル120であると判定した場合には、ステップS404の処理を行う(ステップS402でYES)。
【0066】
ステップS403において、PD通信部121は、通信エラーと判定する。PD通信部121は、通信エラーと判定した場合、受信した通信に対して応答しない。
【0067】
ステップS404において、PD通信部121は、受電機器300から特定の通信(Vconn_Swap通信)を受信済みか否かを判定する。PD通信部121は、受電機器300からVconn_Swap通信を受信済みであると判定した場合には、ステップS406の処理を行う(ステップS404でYES)。PD通信部121は、受電機器300からVconn_Swap通信を受信済みであると判定しなかった場合には、ステップS405の処理を行う(ステップS404でNO)。
【0068】
ステップS405において、PD通信部121は、ステップS401で受信した通信に対して応答しない。上述したとおり、受電機器300がケーブルとの通信を行う場合、通信に先立ってVconnの供給元を受電機器300に切り替える必要がある。したがって、Vconnの供給元を受電機器300に切り替えるためのVconn_Swap通信より前にケーブル宛の通信を受信した場合、PD通信部121はケーブル宛の通信に応答しない。
【0069】
ステップS406において、PD通信部121は、ステップS401で受信した通信に対して応答する。PD通信部121は、ステップS407とは異なり、ケーブル120のPD通信部として通信に応答する。例えば、ステップS401で受信した通信が認証通信である場合、PD通信部121は、認証部122からケーブル120に関する認証情報を取得し、PD通信部303に認証情報を送信する。
【0070】
以上説明したように、実施形態1によれば、ケーブル120が一体化された給電機器100において、PD通信部121を、給電機器100に対する認証通信に応答可能であり、ケーブル120に対する認証通信にも応答可能に構成した。さらに、給電機器100の認証情報と、ケーブル120の認証情報とを認証部122のメモリに記憶するようにした。そのため、給電機器100は、受電機器300からケーブル120に対して行われた認証通信に対して適切に振る舞うことができる。これにより、ケーブル120が一体化された給電機器100について、給電機器100に対する認証通信が成功したが、ケーブル120に対する認証通信に失敗したという問題の発生を回避することができる。
【0071】
実施形態1によれば、給電機器100に対する認証通信に用いる構成と、ケーブル120に対する認証通信に用いる構成とを共通化したので、給電機器100の構成を簡略化することができる。
【0072】
[実施形態2]
実施形態1において、Vconn_Swap通信の受信前にケーブル宛の通信を受信した場合、給電機器100は通信に応答しないだけで、他の動作は行わなかった。しかし、Vconn_Swap通信なしにケーブル宛の通信を行う受電機器はUSB PD規格に準拠していない機器である。そのため、PD通信部121は、ステップS405において、制御部102に受電機器がUSB PD規格に準拠していない旨を通知してもよい。そして、制御部102は、通知を受けると、受電機器300への電力供給を制限するように給電部105を制御してもよい。
【0073】
例えば、制御部102は、ネゴシエーション通信(ステップS304)後に供給を開始した電力よりも小さい電力を供給するようにしたり、電力の供給を停止したりすることができる。これにより、給電機器100は、USB PD規格に準拠していない受電機器300に対してより安全性を重視した電力供給を行うことができる。
【0074】
実施形態1では、受電機器300から供給されるVconnをGNDにプルダウンし、ケーブル120に対する認証通信においてもPD通信部121および認証部122は給電部105の電力で動作していた。しかし、ケーブル120に対する認証通信が行われる場合には、PD通信部121および認証部122を受電機器300が供給するVconnで動作させてもよい。
【0075】
この場合、PD通信部121および認証部122に電力を供給する経路を、給電部105からの経路と、CC2ラインからの経路とで切り替えるスイッチを給電機器100に設ける。そして、受電機器300がCC2ラインにVconnを供給している間はCC2ラインからの電力でPD通信部121および認証部122を動作させるようにスイッチを制御する。なお、受電機器300が供給可能なVconnがPD通信部121および認証部122を動作させるのに不十分な場合がある。この場合には、受電機器300がCC2ラインにVconnを供給している間も、給電部105からの電力でPD通信部121および認証部122を動作させる。
【0076】
[実施形態3]
実施形態1および2で説明した様々な機能、処理または方法は、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)またはマイクロプロセッサがプログラムを実行することによって実現することもできる。以下、実施形態3では、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)またはマイクロプロセッサを「コンピュータX」と呼ぶ。実施形態3では、コンピュータXを制御するためのプログラムであって、実施形態1および2で説明した様々な機能、処理または方法を実現するためのプログラムを「プログラムY」と呼ぶ。
【0077】
実施形態1および2で説明した様々な機能、処理または方法は、コンピュータXがプログラムYを実行することによって実現される。この場合において、プログラムYは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を介してコンピュータXに供給される。実施形態3におけるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、ハードディスク装置、磁気記憶装置、光記憶装置、光磁気記憶装置、メモリカード、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどの少なくとも一つを含む。実施形態3におけるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、non-transitoryな記憶媒体である。
【符号の説明】
【0078】
100…給電機器、102…制御部、122…認証部、120…ケーブル、300…受電機器、303…PD通信部
図1
図2
図3
図4