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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】電気外科処置用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20240828BHJP
   A61B 18/08 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
A61B18/04
A61B18/08
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020202049
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2021098005
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】19213828
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・ケラー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・エンデルレ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・エデラー
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215869(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/106937(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020395(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/009747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04
A61B 18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端(27)から遠位端(28)まで延在する器具本体(25)と、
電圧印加用に構成された電極(32)とを備え、
前記遠位端(28)の領域において、少なくとも1つのカラーマーク(39)が前記器具本体(25)上に配置され、前記カラーマーク(39)の色は、単位面積当たり所望のエネルギーで処置された組織(34)の色と一致するように選択される
組織(34)の熱処置用の器具。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)の色は、茶色または茶ベージュ色である
請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)の色は、RALカラーである
請求項1または2に記載の器具。
【請求項4】
前記カラーマーク(39)は、前記器具本体(25)の延在方向に少なくとも2mmまたは3mmの長さを有する
請求項1~3のいずれか1項に記載の器具。
【請求項5】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)は、前記器具本体(25)のシェル面(40)に設けられる
請求項1~4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項6】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)の少なくとも一部は、前記遠位端(28)からの規定された最小距離(d)を示す
請求項5に記載の器具。
【請求項7】
前記遠位端(28)から最も遠く離れている前記少なくとも1つのカラーマーク(39)の縁部は、前記遠位端(28)からの前記最小距離(d)を示す
請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)は、前記器具本体(25)の周囲の少なくとも約50%、周方向に延在する
請求項5~7のいずれか1項に記載の器具。
【請求項9】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)は、前記器具本体(25)の周囲全体に延在する
請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)は、出口開口部(31)まで距離を有する
請求項1~9のいずれか1項に記載の器具。
【請求項11】
前記少なくとも1つのカラーマーク(39)は、出口開口部(31)を有する、前記器具本体(25)の末端部(41)に設けられる
請求項1~10のいずれか1項に記載の器具。
【請求項12】
前記器具本体(25)は、器具ホース(26)として構成される
請求項1~11のいずれか1項に記載の器具。
【請求項13】
前記器具ホース(26)は、内視鏡(15)の操作チャネル(18)を通って案内される
請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記器具は、組織(34)のプラズマ処置用に構成される
請求項1~13のいずれか1項に記載の器具。
【請求項15】
前記遠位端(28)の領域の出口開口部(31)と流体的に連結される流体チャネル(30)が前記器具本体(25)内に設けられ、前記電極(32)は、前記出口開口部(31)に隣接して前記器具本体(25)内部に配置される
請求項1~14のいずれか1項に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の熱処置用、例えば電気外科処置用に構成される、器具、特にプローブまたは内視鏡プローブに関する。この器具またはプローブは、剛体によって、またはプラズマによっても生体組織に熱的に作用を及ぼすことができる。例えば、器具は、焼灼用またはプラズマ凝固用、特にアルゴンプラズマ凝固用に構成することができる。
【背景技術】
【0002】
そのような器具は、例えば特許文献1から知られている。その器具は、内視鏡の操作チャネルを通して案内することができる。器具は遠位端に隣接してマーキングリングを有し、そのマーキングリングによって、外科医は遠位端が内視鏡からどのくらい遠くに突出しているかを認識することができる。
【0003】
組織の熱処置、特に電気外科処置中、処置の投与量、すなわち、所望の深さ効果を得るために、生体組織をどれくらいの時間、照射領域において熱処置しなければならないか、または、単位面積当たりどれくらいのエネルギー量を生体組織に導入しなければならないかを予測することは、外科医にとって難しい場合が多い。投与量の不足または過剰を避け、かつ所望の効果、特に所望の深さ効果を得るために、組織の処置は、短かすぎても長すぎてもいけない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第19820240号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これを出発点として、本発明の目的は、投与、特に照射領域における処置時間の予測を容易にするプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有するプローブによって解決される。
【0007】
器具またはプローブは、生体組織の熱処置用に構成される。組織は、特にプラズマによって、照射領域において処置される。器具またはプローブは、電気外科凝固用、特にアルゴンプラズマ凝固用に構成されることが好ましい。
【0008】
器具は、定期的に発生する力で曲がらない剛性を有する管本体、または可撓性を有するホース本体によって形成することができる器具本体を備える。器具本体は、近位端から遠位端まで延在する。器具本体は、近位端で供給・操作部に接続することができる。
【0009】
器具は、電圧、特に高周波交流電圧を印加することができる電極を器具本体の遠位端の領域に備える。電極は、器具本体内に延在する導電体によって電気端子に接続することができ、電気端子は、特に、器具またはプローブの近位端に配置することができる。電圧を電極に供給することができるように、供給・操作部の供給ラインを電気端子に接続することができる。
【0010】
生体組織への熱的作用は、(例えば焼灼中)直接接触によって、または(例えば凝固中)電気伝導性媒体を介して間接的に、電極によって施すことができる。
【0011】
一実施形態において、器具またはプローブは、プラズマ凝固用、特にアルゴンプラズマ凝固用に構成される。その際、遠位端の領域の出口開口部と流体的に連結される流体チャネルを器具本体内に形成することができる。電極は、器具本体内部の出口開口部の領域に配置されることが好ましい。電極には、流体、特に、不活性ガス、ガス混合物、または不活性ガスに添加される添加剤が流れる。
【0012】
好ましい用途におけるこの器具構成では、出口開口部から流出する流体、特に不活性ガスをイオン化し、電気伝導性状態の凝集にすることができ、その流体はプラズマに変わる。流体は、照射領域の生体組織上に送られる。流出するイオン化された流体の凝集が電気伝導性状態であるため、エネルギーが生体組織に伝達される。流体、特にアルゴンガスをイオン化するために、供給・操作部を介して器具に供給し得る高周波交流電圧が電極に印加される。不活性ガスのイオン化は、出口開口部の直前の領域で起こる。
【0013】
一用途において、電極を介して伝えられるエネルギーは、例えば、電極が組織に接触することによって、照射領域の組織に伝達される。電極に伝達されるエネルギーは、供給・操作部を介して器具に供給し得る高周波交流電圧によって実現される。
【0014】
器具本体の遠位端に、規定された色、または規定された色合いおよび/または規定された彩度および/または規定された明るさを有する少なくとも1つのカラーマークが設けられ、その色は、例えば、茶色、茶ベージュ色または赤色にすることができる。少なくとも1つのカラーマークは、外側から見えるように配置され、例えば、着色印刷物および/または着色挿入物を含むことができる。さらに、または代替として、例えば出口開口部を含む末端部などの器具本体の一部は、選択もしくは規定された色で製造することができ、かつ/または、少なくとも部分的に着色もしくは印刷することができる。少なくとも1つのカラーマークは、器具本体のシェル面に設け得ることが好ましい。
【0015】
少なくとも1つのカラーマークは、少なくとも1つの記号ならびに/または少なくとも1つの符号(数字および/もしくは文字)ならびに/または、例えばロゴおよび/もしくはバーコードなどの少なくとも1つの幾何学的図形を含むことができる。例えば、少なくとも1つの着色リングは、カラーマークとして機能することができる。1つのカラーマークまたは複数のカラーマークのうちの少なくとも1つは、所望または規定された色で完全に塗りつぶされた連続領域であることが好ましい。
【0016】
カラーマークの色は、所望の投与量および/または深さ効果で処置された組織の色と一致するように選択される。すなわち、カラーマークは、処置された組織の色との色比較に役立ち、所望の投与量または深さ効果が得られた場合、処置された組織の色は、カラーマークに最も類似する。したがって、外科医は、カラーマークと処置された組織との色比較によって、投与量または作用時間が正確に選択されたか直接認識することができ、ひいては、得られた深さ効果について判断することができる。典型的な用途に対して、以下が適用される。処置された組織の色がカラーマークの色より明るい場合、処置は十分な時間行われなかった。処置された組織の色がカラーマークの色より暗い場合、特に組織の処置が長すぎて、処置の投与量が過剰であった。処置された組織とカラーマークの色が等しい場合、正しい投与量が正しい処置時間施され、所望の深さ効果が生体組織内に得られた。また、他の用途において、色の変化を、記載した典型的な用途と異なるようにすることもできる。いずれの場合も、少なくとも1つのカラーマークは、それぞれの用途において所望の投与量または深さ効果が生体組織内に得られた時の色を示す。
【0017】
カラーマークの色は、茶色または茶ベージュ色が好ましい。色、色合いまたは他の色特性は、特に処置の種類および処置される組織のタイプに応じて選択することができる。一用途において、少なくとも1つのカラーマークの色はRALカラーである。臨床的適応、処置領域または組織のタイプに応じて、RAL番号が1001、1005、1011、1024、8001、8003、8007または8011のRALカラーを少なくとも1つのカラーマークに使用することができる。このことは、これらRALカラーは正しい投与量で非常に良好に処置された組織の色合いを示し、RALカラーのうちの1つは処置の種類および処置される組織のタイプに応じて選択されることを示している。さらに、RALカラーは正確に規定され、プローブの製造中に非常に良好に再現することができる。
【0018】
外科医が十分正確に比較できるように、カラーマークが十分に大きい場合は有利である。カラーマークは、二次元であることが好ましく、少なくとも15mmまたは少なくとも20mmの総面積を有することが好ましい。さらに、または代替として、カラーマークは、器具本体の延在方向に少なくとも2mm、少なくとも3mm、または少なくとも5mmの長さを有することができる。カラーマークの示される総面積が連続領域として構成され、好ましくは規定された色で完全に塗りつぶされる場合はさらに好ましい。
【0019】
好ましい実施形態において、1つのカラーマークまたは複数のカラーマークのうちの少なくとも1つは、器具本体のシェル面に、特に印刷物の形で設けられる。ここで、このカラーマークは、少なくとも1つのストライプまたはリングの形状を有することができる。
【0020】
好ましい実施形態において、1つのカラーマークまたは複数のカラーマークのうちの少なくとも1つは、例えば1つの取り囲むリングおよび/または2以上のストライプとして、特に少なくとも部分的に取り囲む領域の形で、器具本体のシェル面に設けられる。この少なくとも1つのカラーマークが器具本体の周囲の少なくとも約50%、器具本体の周方向に延在する場合は有利である。少なくとも1つのカラーマークは、器具本体の周囲全体に延在し、閉じたリング領域の形状を有することが好ましい。
【0021】
少なくとも1つのカラーマークの外側では、器具本体は、少なくとも1つのカラーマークの色と区別され、かつ特に組織と光学的に対照をなす少なくとも1以上の色を有する。その際、器具またはプローブの視認性が外科医のために改善される。例えば、器具本体は、少なくとも1つのカラーマークの外側またはその周囲を青色にすることができる。少なくとも1つのカラーマークを取り囲む器具本体の色は、少なくとも1つのカラーマークの色より暗いことが好ましい。
【0022】
少なくとも1つのカラーマークは、器具本体の遠位端まで延在せず、遠位端と距離をとって配置されることが好ましい。
【0023】
さらに、少なくとも1つのカラーマークは、遠位端までの規定された距離または最小距離を示すマークであることも好ましい。その際、器具本体または遠位端が、プラズマ照射中に内視鏡の光学系を破損したり、それらに影響を及ぼしたりしないように内視鏡から外に十分遠く移動した時を外科医に示すことができる。例えば、最も遠く離れているカラーマークの縁部は、遠位端までの最小距離を規定することができる。内視鏡の光学系を介して少なくとも1つのカラーマークを完全に見ることができる場合のみ、器具本体の遠位端は、処置を行うために内視鏡から十分遠く離れている。
【0024】
一実施形態において、器具本体は、出口開口部を有する末端部を含む。例えば、末端部は、流体またはプラズマの流出方向を規定することができる。末端部は、複数のカラーマークのうちの少なくとも1つを形成するように、カラーマークの規定された色で完全にまたは部分的に作ることができる。
【0025】
少なくとも1つのカラーマークまたは複数のカラーマークのうちの少なくとも1つは、テクスチャおよび/または表面構造体および/または艶消し面および/または非反射面を有することができる。その際、実際の組織構造体をより良好に描くことができ、テクスチャード加工されたカラーマークと、組織の色および/または構造との比較を簡単にすることができる。さらに、カラーマークの粗面および/または艶消し面および/または非反射面は、光反射を防ぐことができる。これにより、表面は、VDIガイドライン3400(表面標準サンプル測定)のVDIクラス33~42のうちの1つに対応する粗さを有し得ることが好ましい。表面は、粗さの最大深さRmax=18μm~49μm、特にRmax=25μm、および/または算術平均粗さ値Ra=4.5μm~12.5μm、特にRa=6.3μmを有することができる。
【0026】
上述した少なくとも1つのカラーマークの構成は、互いに任意に組み合わせることができる。例えば、器具本体の末端部はカラーマークとして機能することができ、さらに、1以上の追加の着色された領域、記号、符号などを器具本体のシェル面に設けることもできる。好ましい実施形態において、少なくとも1つのカラーマークは、器具本体のシェル面の外側だけに設けられる。この場合、器具本体は、非可変部として、プローブの製造中に出口開口部のタイプおよび構成とは無関係に使用することができる。その際、スケーリング効果を得ることができる。
【0027】
一実施形態において、器具本体は、器具ホースとして構成される。器具ホースは、その延在方向に対して横方向に可撓性を有し、または発生する力によって曲がり得る。器具ホースは、内視鏡の操作チャネルを通って案内されることが好ましい。
【0028】
本発明の好ましい実施形態は、従属クレーム、明細書および図面から明らかである。続いて、本発明の好ましい実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、内視鏡と、内視鏡の操作チャネルを通って案内されるプローブを形成する器具との基本概略図である。
図2図2は、内視鏡の操作チャネルから突出する図1におけるプローブの端部の概略ブロック図のような図である。
図3図3は、プラズマ用または流体用プローブの出口開口部における実施形態の概略側面図である。
図4図4は、図3の場合とは異なる構成のプラズマ用または流体用プローブの出口開口部における実施形態の概略側面図である。
図5図5は、図3および図4の場合とは異なる構成のプラズマ用または流体用プローブの出口開口部における実施形態の概略側面図である。
図6a図6aは、プローブの端部における変更形態の概略図である。
図6b図6bは、プローブの端部に沿って延在するカラーマークを有する端部における変更形態の概略図である。
図7図7は、処置された生体組織の照射領域の色と比較したプローブのカラーマークの基本概略図である。
図8図8は、処置された生体組織の照射領域の色と比較したプローブのカラーマークの基本概略図である。
図9図9は、処置された生体組織の照射領域の色と比較したプローブのカラーマークの基本概略図である。
図10】カラーマークを有するプローブの端部と、プローブの照射投与量が異なる組織の複数の照射領域との写真である。
図11図11は、プローブのさらなる実施形態の部分概略図である。
図12図12は、プローブのさらなる実施形態の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、生体組織34の熱処置用、例えば電気外科処置用の器具に関する。図面に示す以下の実施形態において、器具は、内視鏡15と組み合わせて使用されることが好ましいプローブ17として構成される。
【0031】
図1は、内視鏡15をブロック図で示す。内視鏡15は、外科医によって操作することができる操作部16を含む。プローブは、操作部16において内視鏡15の操作チャネル18に挿入することができる。操作チャネル18は、操作部16と反対側の内視鏡端部19にポートを有し、そのポートから、プローブ17の少なくとも一部が外に延在することができる。操作チャネル18のポートに隣接して、光源20および対物レンズ21が遠位内視鏡端部19に配置される。光源20によって、内視鏡端部19の正面の環境、特に処置される組織が照らされる。対物レンズ21および光学系またはカメラによって、内視鏡端部19の正面の環境、特に処置される組織の画像が検出される。内視鏡15のカメラおよび/または光学系は、その画像を接眼レンズおよび/または外部モニタに転送する。
【0032】
プローブ17として構成される器具は、発生する力によってその延在方向に対して横方向に曲がり得る実施形態において、器具ホース26として構成される器具本体25を有する。器具はプローブ17であるため、器具本体25をプローブ本体とも呼ぶことができるであろうし、器具ホースをプローブホースとも呼ぶことができるであろう。器具本体25、実施例によれば器具ホース26は、近位端27から遠位端28まで延在する。近位端27では、供給・操作部29が器具ホース26に接続される。
【0033】
図示した実施形態において、器具、実施例によればプローブ17は、プラズマ凝固用、実施例によればアルゴンプラズマ凝固用に構成される。あるいは、器具は、生体組織の焼灼用または別の熱処置実施用に構成することもできるであろう。
【0034】
プローブ17は、器具本体25の遠位端28の領域に電極32を含む。電極32は、例えば、処置される生体組織34と直接接触することができる。好ましい実施形態において、電極32は、電気伝導性媒体を介して間接的に生体組織34への熱的作用を施す。
【0035】
電極32には、電圧、特に高周波交流電圧を印加することができる。電極32は、器具本体25内に延在する図示していない導電体を介して電気端子に接続され、電気端子は、特に器具またはプローブの近位端に配置される。電極32に電圧を印加することができるように、電気端子を介して供給・操作部29との電気的接続を確立することができる。
【0036】
プラズマ凝固用プローブ17の構成では、器具本体25または器具ホース26の内部に流体チャネル30が形成される(図2)。供給・操作部29によって、例えば不活性ガス、例えばアルゴンなどの流体Gを導入することができる。流体Gは、流体チャネル30を通って、器具ホース26の遠位端28の領域における出口開口部31に流れる。
【0037】
電極32は、器具ホース26の内部に、出口開口部31に隣接して配置される。説明したように、電極32は、高周波交流電圧が印加され得るように供給・操作部29と電気的に接続可能である。高周波交流電圧によって、流体、例えば不活性ガスGをイオン化し、プラズマ35を形成することができる。図2において非常に概略的に示したように、印加された電界の方向Eのプラズマ、実施例によればアルゴンプラズマによって、照射領域33内の処置される組織34にエネルギーが伝達される。そのプラズマによるエネルギー導入によって、投与量、例えば、高周波交流電圧の量および/もしくは経時推移、ならびに/または照射領域33への作用時間に応じて、処置される組織34内に深さ効果が得られる。特に、処置中、所望の深さ効果の約3分の2が得られる場合、処置される組織34へのエネルギー導入の投与量は最適である。処置後約72時間以内の後作用により、深さ効果は、まだ不足している3分の1ほど高まる。
【0038】
このように、プローブ17によって、処置される組織34の熱処置または電気外科処置、実施例によればアルゴンプラズマ凝固を行うことができる。アルゴンプラズマ凝固は非接触である。したがって、プローブ17は、照射領域33の組織34に接触しない。
【0039】
器具本体25、実施例によれば器具ホース26の端部38において、遠位端28に隣接して少なくとも1つのカラーマーク39が存在し、カラーマーク39は、規定された色合いおよび/または規定された彩度および/または規定された明るさを備えた色を有する。色合いは、例えば茶色にすることができる。選択された投与量で導入されたエネルギーによって所望の深さ効果が組織34内に得られた場合、カラーマーク39の色は、照射領域33の処置された組織34の色と一致する。したがって、照射領域33の処置された組織34の色は、得られた深さ効果、および投与量、特に単位面積当たり導入されたエネルギーの指標である。カラーマーク39に基づいて、カラーマークの色と照射領域33の組織34の色との光学的比較を、アルゴンプラズマ凝固後に行うことができる。そして、投与量が正確に選択されたかを認識することができる。
【0040】
実施例によれば、カラーマーク39の色は、茶色または茶ベージュ色である。その実施形態において、少なくとも1つのカラーマーク39の色は、RALカラー1011番である。
【0041】
1つのカラーマーク39または複数のカラーマーク39のうちの少なくとも1つは、1以上の連続着色領域を有する。単一の連続着色領域で十分である。
【0042】
1つのカラーマーク39または複数のカラーマーク39のうちの少なくとも1つは、選択肢として、テクスチャ、表面構造体および/または艶消し面を有することもできる。その際、実際の組織構造体をより良好に表すことができ、テクスチャード加工されたカラーマーク39と組織34の色および/または構造体との比較を簡単にすることができる。さらに、カラーマーク39の粗面および/または艶消し面は反射を防ぐことができ、それによって、色比較を簡単にすることができる。
【0043】
1つのカラーマーク39または複数のカラーマーク39のうちの少なくとも1つは、1以上のテクスチャを含む限り、粗さの最大深さRmax=18μm~49μmおよび算術平均粗さ値Ra=4.5μm~12.5μm、特にVDIクラス36のRmax=25μm、Ra=6.3μmを有するVDIクラス33~42によるVDI3400(表面標準サンプル測定)に従って得ることができる。
【0044】
その実施形態において、例えば印刷工程によって、端部38における器具ホース26のシェル面40または周面に少なくとも1つのカラーマーク39が設けられる。例えば、カラーマーク39は、シェル面40を部分的に、好ましくは完全に取り囲むリング領域にすることができる。少なくとも1つのカラーマーク39の長さは、器具ホース26または端部38の延在方向において、少なくとも2mmまたは少なくとも3mmである。端部38の延在方向におけるカラーマーク39の長さは、5mm未満、6mm未満、7mm未満または10mm未満であることが好ましい。
【0045】
外科医のために、任意の色および形状で構成することができる追加のマーキングを、器具ホース26、特にシェル面40に設けることができる。
【0046】
少なくとも1つのカラーマーク39は、リング形状の代わりに他の任意の構成も有することができる。例えば、少なくとも1つのカラーマーク39は、少なくとも1つの記号および/または少なくとも1つの符号(数字もしくは文字)および/または少なくとも1つの幾何学的図形を有することができる。したがって、会社レタリングおよび/または会社ロゴをカラーマーク39として使用することもできる。図6aは、記号の形のカラーマーク39の印刷を概略的に示す。
【0047】
図6bに示したプローブ17のさらなる実施形態の端部38において、複数のカラーマーク39のうちの少なくとも1つが、遠位端28に直接隣接してシェル面40に、例えば印刷され、配置される。このカラーマークは、中空筒状末端部41によって完全にまたは部分的に形成することができる。選択肢として、例えば、遠位端28まで異なる距離をとって配置される1以上の追加のリング状カラーマークを設けることができる。
【0048】
図2図3および図6aによるプローブ17の実施形態において、1つのカラーマーク39または複数のカラーマーク39のすべては、器具ホース26の遠位端28と距離をとって配置される。器具ホース26は、少なくとも1つのカラーマーク39は別として、手術中に、実施例によれば内視鏡治療中に器具ホース26を良好に認識することができるように、周辺組織と光学的に対照をなす色を有することが好ましい。遠位端28から少なくとも1つのカラーマーク39まで距離があるため、出口開口部31は、組織34の照射領域33から所望の距離のところに配置することができる。
【0049】
少なくとも1つのカラーマーク39、または、複数のカラーマーク39が存在するならば存在するカラーマーク39のうちの1つによって、器具ホース26の遠位端28からの最小距離dをマーキングすることができる。例えば、カラーマーク39の縁部、特に遠位端28と反対側のカラーマーク39の縁部を、遠位端28までの最小距離dを規定する器具ホース26の端部38の位置に配置することができる。内視鏡検査中、外科医は、プローブ17またはその端部38が、組織34の処置中に内視鏡15、特に光学系を破損しないように内視鏡15の操作チャネル18から外に十分遠く押し出されているかを認識することができる。
【0050】
器具またはプローブ17のすべての実施形態において、1つのカラーマーク39または複数のカラーマーク39のうちの1つは、器具本体25の遠位端に直接隣接して配置することができる。あるいは、少なくとも1つのカラーマーク39は、遠位端28まで距離を有することができる。両方の変更例には、それぞれの利点がある。
【0051】
図3図5図11および図12には、器具本体25または器具ホース26の異なる構成を示す。図3による実施形態は、流体Gまたはプラズマが端部38まで達して噴出される図2に示した実施形態に対応する。図3による実施形態とは異なり、図4および図5による実施形態において、器具本体25、実施例によれば器具ホース26は、出口開口部31を有する末端部41を含む。末端部41によって、流出する流体Gまたはプラズマの方向を変えることができる。図4による実施形態において、流体Gまたはプラズマは、端部38の延在方向に略直交する全方向に流出する。図4による実施形態とは対照的に、図5の末端部41の出口開口部31は、不活性ガスGまたはプラズマが端部38の延在方向に略直交する一方向において選択的に横方向に噴出されるように構成される。
【0052】
図11および図12は、器具本体25の遠位端28から電極32が突出するプローブの実施形態を概略的に示す。これらのプローブは、流体チャネル30なしで構成することができる。電極32は、熱処置中に組織34に直接接触することができ、または追加の媒体を用いないスパーク生成によって組織34に作用することができる。
【0053】
末端部41が設けられる実施形態において、末端部41はカラーマーク39を形成することができる。このために、末端部41は、カラーマーク39の規定された茶色に着色することができ、または完全にもしくは部分的にコーティングすることができる。例えば、末端部41は、セラミック材料から作ることができる。
【0054】
図7図10に基づいて、少なくとも1つのカラーマーク39の機能を概略的に説明する。少なくとも1つのカラーマーク39を、組織34が既に処置された照射領域33に直接隣接して配置することによって、色比較を行うことができる。色の明るさは、ドットの密度によって図7図9に概略的に示す。
【0055】
図7から、カラーマーク39の色は照射領域33の組織34の色より暗いことが明らかである。投与量が不足しており、所望の深さ効果を得るために照射領域33において組織をさらに処置しなければならない。
【0056】
対照的に、図9による照射領域33の組織34の色は、少なくとも1つのカラーマーク39の色より暗く、投与量が過剰である。組織34は、損傷を受けたか、所望の深さ効果を超えて照射領域33において作用を受けた。外科医は、これを認識し、該当する場合、結果を予測する、または必要な措置を開始することができる。
【0057】
図8は、カラーマーク39の色と、照射領域33の処置された組織の色とがほぼ一致する状況を概略的に示しており、外科医は、処置直後に、組織34内に所望の深さ効果を得るための投与量が正しいことを認識する(後作用を考慮して、深さ効果の約3分の2が得られる)。
【0058】
図7図9に概略的に示した状況について、図10の写真に基づいて再び説明する。写真の左側に、第1照射領域33aを見ることができ、その色は、カラーマーク39の色より暗い。投与量が過剰である。第2照射領域33bの色は、少なくとも1つのカラーマーク39の色に実質的に一致する。第2照射領域33bでは、導入されたエネルギーの投与量が正しかった。カラーマーク39の色より明らかに明るい色を有する第3照射領域33cでは、エネルギー導入の投与量が不足していた。この第3照射領域33cをさらに処置することによって、所望の投与量または深さ効果をなお得ることができる。
【0059】
本発明は、組織34の熱処置用、特に電気外科処置用、特にアルゴンプラズマ凝固用の器具に関する。器具は、近位端27と遠位端28との間に延在する器具本体25を備える。遠位端28に隣接する端部38において、器具本体25は、規定された色の少なくとも1つのカラーマーク39を有する。この色は、組織34内に所望の深さ効果を得るためのエネルギー導入の投与量が正しく選択された場合、処置された組織34の生成される色と一致する。器具は、プローブ17、特に内視鏡プローブとして構成され、器具ホース26と呼ぶことができる可撓性を有する曲げ可能な器具本体25を備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
15 内視鏡
16 操作部
17 プローブ
18 操作チャネル
19 遠位内視鏡端部
20 光源
21 対物レンズ
25 器具本体
26 器具ホース
27 器具ホースの近位端
28 器具ホースの遠位端
29 供給・操作部
30 流体チャネル
31 出口開口部
32 電極
33 照射領域
33a 第1照射領域
33b 第2照射領域
33c 第3照射領域
34 組織
35 プラズマ
38 端部
39 カラーマーク
40 シェル面
41 末端部
d 最小距離
E 電界の方向
G 流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12