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特許7545316エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物およびそれを含む多層構造
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  • 特許-エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物およびそれを含む多層構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物およびそれを含む多層構造
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20240828BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20240828BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240828BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C08L29/04 S
B32B27/28 102
B65D65/40 D
C08K3/38
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020211096
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2021102763
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2020-12-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】16/726,552
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/999,587
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】林 文星
(72)【発明者】
【氏名】梁 志傑
(72)【発明者】
【氏名】許 朝翔
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】北澤 健一
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/171278(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L29/04
C08K3/00-13/08
B32B27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレットの形態のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物であって、
前記ペレットは、それぞれ、少なくとも2つの融点温度およびホウ素化合物を含み、
前記少なくとも2つの融点温度の差が10℃~44℃であり、
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物のホウ素含有量が2~300ppmであり;前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の表面に0.01mLのヨウ素溶液を滴下し、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を5秒間水に浸し、120℃の温度で2時間乾燥させた後、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物のヨウ素染色領域が0.1mm2以下であるエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項2】
そのホウ素含有量が30~300ppmである、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項3】
そのヨウ素染色領域が0.02mm2以下である、請求項1又は2に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項4】
前記少なくとも2つの融点温度の差が15℃~41℃である、請求項1からのいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項5】
少なくとも2つの融点温度の1つが142℃~177℃である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項6】
前記少なくとも2つの融点温度の1つが179℃~195℃である、請求項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項7】
第1のエチレン含有量および第2のエチレン含有量を有し、前記第2のエチレン含有量が前記第1のエチレン含有量と異なり、前記第1のエチレン含有量は、2~35モル%の範囲であり、前記第2のエチレン含有量が3~65モル%の範囲である、請求項1からのいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項8】
アルカリ金属をさらに含み、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物のアルカリ金属含有量が50~400ppmである、請求項1からのいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項9】
次の(a)~(c)を含む、多層構造。
(a)請求項1からのいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物から形成された少なくとも1つの層
(b)少なくとも1つのポリマー層
(c)少なくとも1つの接着剤層。
【請求項10】
前記ポリマー層は、低密度ポリエチレン層、ポリエチレン-graft-マレイン酸無水物(polyethylene grafted maleic anhydride)層、ポリプロピレン層およびナイロン層からなる群から選択され、かつ前記接着剤層が結合層(tie layer)である、請求項に記載の多層構造。
【請求項11】
前記多層構造の熱成形後の酸素透過率が0.021cc/pkg×day以下である、請求項又は10に記載の多層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高く均一なガスバリア性を持つフィルムを形成することができ、改善されたガスバリア性を提供する多層構造を形成することもできるエチレン-ビニルアルコール共重合体(ethylene-vinyl alcohol copolymer,EVOH)樹脂に関する。本発明はまた、前記EVOH樹脂を調製し、これからフィルムを形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
EVOH樹脂は、腐敗しやすい物を保存するために積層体(laminate)に広く応用されている。例えばEVOH樹脂および積層板は、食品包装業、医療機器と消耗品業、製薬業、電子業、農業用化学品工業でよく使用されている。EVOH樹脂は、通常、酸素バリア層として機能するため、ユニークな層として積層板に組み込まれる。
【0003】
ユニークなEVOH層を備えた積層体(laminate)は、通常、EVOHを他のタイプのポリマーと共押出することによって製造される。EVOH樹脂は、他の樹脂と似ているレオロジー特性を示すため、従来の押出装置を使用して、ポリオレフィン、ポリアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルおよび熱可塑性ポリウレタンと共押出できる。しかしながらEVOH樹脂は、通常、例えば上記のポリマーのいくつかを含む他のポリマーへの接着が不十分である。したがって、共押出しでは、「タイレジン(tie resin)」と呼ばれる接着樹脂を使用して、EVOH層を隣接する層に接着する。 ただし、一部のナイロンと熱可塑性ポリウレタンは、タイレジンを使用せずに直接EVOHに接着できる。
【0004】
また、エチレン含有量が低いEVOH樹脂は、通常結晶化度とガスバリア特性に優れているが、機械的性質に劣っている。対照的に、エチレン含有量が高いEVOH樹脂は、通常機械的性質に優れているが、ガスバリア特性に劣っている。
【0005】
高い機械的性質と高いガスバリア性を同時に兼ね備えたEVOH樹脂を製造するために、通常エチレン含有量の異なる2種類のEVOH樹脂を混合する。しかし、過去に該方法で製造されたEVOH製品の均一性が低いのは、未解決課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、本発明は、高い均一なガスバリア性を持つフィルムを形成することができ、かつガスバリア性、外観見栄え、および厚みムラを改善した多層構造を形成することもできるエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂組成物、および、該EVOH樹脂を調製し、これからフィルムを形成する方法を提供することを、技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、少なくとも2つの融点温度およびホウ素化合物を含むエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂組成物を提供し、前記EVOH樹脂組成物のホウ素含有量が約25~約300ppmであり;エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の表面に0.01mLのヨウ素溶液を滴下し、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を5秒間水に浸し、120℃の温度で2時間乾燥させた後、前記EVOH樹脂組成物のヨウ素染色領域が0.1mm2以下である。本発明者は、EVOH樹脂(ペレットまたはフィルムなど)にヨウ素溶液を加え、EVOH樹脂におけるヨウ素の吸収を測定することにより、良好なエチレン含有量の均一性を評価および制御できることを見出した。EVOH樹脂組成物のエチレン含有量が異なるため、EVOH樹脂組成物のヨウ素溶液の吸収率も異なる。本発明者らは、染色領域の大きさを評価することにより、異なるエチレン含有量の均一性を判断できることを見出した。フィルムの均一性が悪いと、フィルムの特定の領域で酸素透過率が急激に低下すると考えられる。たがって、前記フィルムに標準偏差の高い酸素透過率が含まれている可能性があり、これは理想的ではない。
【0008】
前記EVOH樹脂組成物のホウ素含有量は、好ましくは約30~約300ppmの範囲であり得る。いくつかの実施例において、ヨウ素染色領域は、0.02 mm2以下である。前記EVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点温度の差は、約10℃~約44℃の範囲であり得る。少なくとも1つのケースでは、前記少なくとも2つの融点温度の差が約15℃~約41℃の範囲である。前記EVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点のうちの1つは、142℃~177℃の範囲であり得る。追加的または代替的に、前記EVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点のうちの1つは、179℃~195℃の範囲であり得る。
【0009】
前記EVOH樹脂組成物は、第1のエチレン含有量および第2のエチレン含有量を有し得、前記第2のエチレン含有量が前記第1のエチレン含有量と異なる。例えば前記第1のエチレン含有量は、約20~約35モル%の範囲であってよく、前記第2のエチレン含有量が約36~約65モル%の範囲であってよい。
【0010】
いくつかの実施例において、前記EVOH樹脂は、アルカリ金属を含み、EVOH樹脂のアルカリ金属含有量が50~400ppmの範囲である。
【0011】
本発明の別の態様は、少なくとも2つの融点温度およびホウ素化合物を有するフィルムの形態のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を提供し、前記EVOH樹脂組成物のホウ素含有量は約25~約300ppmの範囲であり;エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の表面に0.01mLのヨウ素溶液を滴下し、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を5秒間水に浸し、120℃の温度で2時間乾燥させた後、該EVOH樹脂フィルムが1000μm2以下のヨウ素染色領域を持つ。
【0012】
前記フィルム形態のEVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点の差は、好ましくは約15℃~約45℃の範囲である。前記フィルム形態のEVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点のうちの1つは、179℃~195℃の範囲であり得る。追加的または代替的に、フィルム形態のEVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点温度のうちの1つは、142℃~177℃の範囲であり得る。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、本発明のEVOH樹脂組成物から形成される少なくとも1つの層と、少なくとも1つのポリマー層と、少なくとも1つの接着剤層を通常有する多層構造を提供する。いくつかの実施例において、前記ポリマー層は、低密度ポリエチレン層、ポリエチレン-graft-マレイン酸無水物(polyethylene grafted maleic anhydride)層、ポリプロピレン層およびナイロン層からなる群から選択され、かつ前記接着剤層が結合層(tie layer)である。
【0014】
以下に、添付図面および実施例を参照しつつ本発明の技術を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のいくつかの態様による実施例のEVOH樹脂組成物の評価方法を説明する概略図である。
図2】容器の起立面部およびコーナー部が区切られた実施例の熱成形多層容器の概略図である。
図3】本発明のいくつかの態様によるヨウ素溶液で染色された実施例のEVOHペレットの表面の画像である。
図4】本発明のいくつかの態様によるヨウ素溶液で染色された比較例のEVOHペレットの表面の画像である。
図5】本発明のいくつかの態様による実施例のEVOH樹脂の2つの融点温度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な態様は、図面に示される配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0017】
本発明の一態様は、ペレットの形態(このペレットは、本明細書では「EVOHペレット」と呼ばれることもある)を呈し得るエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂組成物に関する。EVOHペレットの形態の1つ以上のEVOH樹脂が本発明全体にわたって記載されているが、前記EVOH樹脂は、ビーズ、円柱、キューブ、チップ、削りくずなどの形態であってもよい。別の態様において、本発明は、高い均一なガスバリア性を有するEVOHフィルムおよび多層構造に関する。更なる態様において、本発明は、前記EVOH樹脂組成物を調製し、それからフィルムを形成する様々な方法に関する。
【0018】
図1は、簡単な概要を示す。方法100は、EVOHペレットまたはEVOHフィルムをヨウ素溶液と接触させ、EVOHペレットまたはEVOHフィルムを水に浸し、ヨウ素溶液を一定時間乾燥させ、 EVOHペレットまたはEVOHフィルムの染色領域を測定する工程を含む。
【0019】
工程110では、EVOHペレットまたはEVOHフィルムが得られる。通常前記EVOHペレットは、本発明のEVOH樹脂組成物から形成される。
【0020】
工程120では、EVOHペレットまたはEVOHフィルムは、ヨウ素溶液と接触させられる。ヨウ素溶液は、好ましくは、EVOHペレットまたはEVOHフィルム上に滴下される。例えば約0.01mLのヨウ素溶液をEVOHペレットに滴下できる。特定の量のヨウ素溶液に特に限定されないが、方法100は、約0.005mL~約0.01mL、約0.01mL~約0.015mL、約0.015mL~約0.02mL、約0.02mL~約0.03mL、約0.03mL~約0.04mL、約0.04mL~約0.05mL、約0.05mL~約0.06mL、約0.06mL~約0.07mLなどのヨウ素溶をEVOHペレットまたはEVOHフィルムに滴下することを含み得る。ヨウ素溶液には、8gI2+2g KI+70gH2Oを含み得る。EVOH樹脂組成物がペレットの形態である場合には、EVOHペレットは、例えばEVOHペレットの長径または短径の横断面に沿って切断される。通常マイクロトームで測定したEVOHペレットの横断面は1.5~4.5mm2である。EVOHペレット試料の重量は特に制限されないが、EVOHペレットを10mgのEVOHペレット試料にカットできる。ヨウ素溶液は、好ましくは、EVOHペレットの切断面と接触している(例えば、滴下されている)。
【0021】
工程130では、ヨウ素溶液を有するEVOHペレットまたはフィルムを水に浸す。望ましくは、EVOHペレットまたはフィルムを水に浸すことにより、過剰なヨウ素溶液を除去する。いくつかの実施例において、EVOHペレットまたはフィルムに水浴に浸す代わりに水を噴霧する。EVOHペレットまたはフィルムを水に浸す前に、ヨウ素溶液はEVOHペレットまたはフィルム上に約1秒~5分間滞留できる。例えばヨウ素溶液は、EVOHペレットまたはフィルム上に約1~約10秒、2.5~約7.5秒、約5~約15秒、約15~約30秒、約30~約45秒、約45~約60秒、約60~約90秒、約90~約120秒、約2~約3分、約3~約4分、約4~約5分(その範囲およびサブ範囲を含む)滞留できる。
【0022】
工程140では、EVOHペレットまたはEVOHフィルム上のヨウ素溶液を一定の時間乾燥させる。ヨウ素溶液は、EVOHペレットまたはEVOHフィルムを約120℃のオーブンに置く2時間前に、ヨウ素溶液はEVOHペレットまたはEVOHフィルムの切断面に約15秒間接触できる。EVOHペレットまたはEVOHフィルムを乾燥させるためのオーブンの温度は変動し得るが、通常80℃~160℃の範囲、好ましくは90℃~150℃の範囲、または100℃~140℃の範囲である。いくつかの実施例において、オーブン温度および/またはEVOHペレットまたはEVOHフィルム上のヨウ素溶液の量に基づいて、EVOHペレットまたはEVOHフィルムをオーブン内で約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、またはそれらの間の任意の範囲で乾燥させる。
【0023】
工程150では、EVOHペレットまたはEVOHフィルムの染色領域を測定する。本明細書に記載の染色領域は、グレースケール値と海相の平均グレースケール値の差が15(例えば、その差は±15である)を超える領域である。グレースケール値は、例えばOM分析ソフトウェアを使用して、レンズの下のEVOHペレットまたはEVOHフィルムの切断面の海相における5つのランダムな点から測定できる。 グレースケール値は、次の式で計算される。R、G、およびBはそれぞれ、RGB色空間の各領域の赤(R、Red)チャネル値、緑(G、Green)チャネル値、および青(B、Blue)チャネル値を表す。
【数1】
【0024】
海相は、初期分析に使用されるOM内の明るい色の領域として定義される。OM分析ソフトウェアで領域の大きさを測定できまる。EVOHペレットの染色領域を光学顕微鏡で観察し、好ましくは約0.1mm2以下、約0.09mm2以下、約0.08mm2以下、約0.07mm2以下、約0.06mm2以下、約0.05mm2以下、約0.04mm2以下、 約0.03mm2以下、約0.02mm2以下、約0.01mm2以下、約0.009mm2以下、約0.008mm2以下または染色されていない領域は、非常に高度な均一性を示す。
【0025】
少なくとも1つのケースでは、EVOHフィルムのテスト面積は32,000μm2であるが、他のケースでは、テスト面積は32,000m2よりも大きい場合も小さい場合もある。EVOHフィルムの染色領域は、好ましくは約1000μm2以下、約950μm2以下、約900μm2以下、約850μm2以下、約800μm2以下、約750μm2以下、約700μm2以下、約650μm2以下、約600μm2以下、約550μm2以下、約500μm2以下、約450μm2以下、約400μm2以下、約350μm2以下、約300μm2以下、約250μm2以下、約200μm2以下、約150μm2以下、または約100μm2以下である。
【0026】
場合によっては、方法100を使用してEVOH樹脂組成物のエチレン含有量の均一性を制御することができる。本発明者は、ペレットまたはフィルムの形態のEVOH樹脂組成物中のヨウ素の吸収を測定することにより、EVOH樹脂組成物の良好なエチレン含有量の均一性を評価と制御できることを見出した。場合によっては、方法100は、望ましくない染色領域を有するEVOH樹脂組成物を廃棄すること、または望ましい染色領域を有するペレットまたはフィルムの形態のEVOH樹脂組成物を選択することを含み得る。
【0027】
一態様によれば、本発明は、ペレット形態を呈することができるエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂組成物を提供する。本明細書に記載されるEVOHペレットは、1つまたは複数のペレット形態および/または形状のEVOH樹脂を意味する。通常EVOH樹脂組成物は、少なくとも2つの融点温度およびホウ素化合物を含み、ここで、前記EVOH樹脂組成物のホウ素含有量が約25~約300ppmであり;前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の表面に0.01mLのヨウ素溶液を滴下し、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を5秒間水に浸し、120℃の温度で2時間乾燥させた後、前記EVOH樹脂組成物のヨウ素染色領域が0.1mm2以下である。上記のように、前記EVOH樹脂組成物から形成されるEVOHペレットの染色領域は、好ましくは0.1mm2以下、約0.09mm2以下、約0.08mm2以下、約0.07mm2以下、約0.06mm2以下、約0.05mm2以下、約0.04mm2以下、約0.03mm2以下、約0.02mm2以下、約0.01mm2以下、約0.009mm2以下、または約0.008mm2以下である。
【0028】
特定の理論に限定されることなく、上記のような好ましい染色領域を有するEVOHペレットは、以下の場合に得られると考えられる。すなわち、EVOH樹脂のペレット化は、5℃以下の温度を有する冷却水を使用することと、前記EVOHペレットのホウ素含有量が30~250ppmであることと、前記EVOH粒子のアルカリ金属含有量が50~400ppmであることを含む。なお、本発明者は、前記EVOHペレットが溶融する回数が多いほど、染色領域が望ましくなくなることを認識した。したがって、いくつかの実施例において、前記EVOH樹脂またはそのペレットを熱処理によって2回以上溶融しないことが好ましい。
【0029】
前記EVOH樹脂組成物またはそのペレットは、通常約142℃~約195℃の範囲の少なくとも2つの融点を有する。前記EVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点の1つは、好ましくは約142℃~約177℃の範囲、例えば約145℃~約175℃または148℃~約172℃の範囲である。追加的にまたは代替的に、前記EVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点の1つは、好ましくは約179℃~約192℃の範囲、例えば約181℃~約189℃または約183℃~約187℃の範囲である。いくつかの実施例において、前記EVOH樹脂組成物は少なくとも3つの異なる融点温度を有する。他の実施例において、前記EVOH樹脂組成物は、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの異なる融点温度を含む。
【0030】
少なくとも2つの融点温度の差は、好ましくは約10℃~約44℃の範囲、例えば約10℃~約41℃、約15℃~約41℃、約15℃~約35℃または約18℃~約32℃の範囲である。本発明者は、特定の理論に限定されることなく、前記少なくとも2つの融点温度の差が上記の好ましい範囲を超えた場合、EVOH樹脂組成物またはそのペレットを形成するEVOHのエチレン含有量の差が大きすぎ、混和性(miscibility)が悪くなる、および/またはそれから形成される熱成形された多層構造の特性が劣る結果となることを見出した。例えばEVOH樹脂組成物またはそのペレットを形成するEVOHのエチレン含有量が近すぎる場合、前記EVOH樹脂組成物またはEVOHペレットから熱成形された多層構造は、劣った特性を有する可能性がある。
【0031】
前記EVOH樹脂組成物は通常、少なくとも第1のEVOHおよび第2のEVOHから形成され、前記第1のEVOHが第1のエチレン含有量を有し、前記第2のEVOHは第2のエチレン含有量を有し、ここで、前記第2のエチレン含有量が前記第1のエチレン含有量とは異なる。例えば、前記第1のエチレン含有量は、約20~約35モル%の範囲であってよく、前記第2のエチレン含有量が約36~約65モル%の範囲であってよい。いくつかの実施例において、前記第1のエチレン含有量は、約20~約35モル%、約22~約35モル%、約24~約35モル%、約28~約35モル%、約20~約34モル%、約22~約34モル%、約24~約34モル%、約28~約34モル%、約20~約32モル%、約22~約32モル%、約24~約32モル%、約28~約32モル%、約20~約30モル%、約22~約30モル%、約24~約30モル%、または約28~約30モル%である。追加的または代替的に、前記EVOH樹脂の前記第2のエチレン含有量は、約36~約65モル%、約40~約65モル%、約42~約65モル%、約44~約65モル%、約36~約60モル%、約40~約60モル%、約42~約60モル%、約44~約60モル%、約36~約55モル%、約40~約55モル%、約42~約55モル%、約44~約55モル%、約36~約50モル%、約40~約50モル%、約42~約50モル%、または約44~約50モル%であり得る。
【0032】
いくつかの実施例において、前記EVOH樹脂組成物のホウ素含有量は、25~300ppmである。例えば前記EVOH樹脂組成物のホウ素含有量は、30~250ppm、50~200ppmまたは60~230ppmの範囲であり得る。前記EVOH樹脂組成物またはそれから形成されるペレット中の結晶構造の量を減らすため、前記EVOH樹脂組成物は、特定のホウ素含有量を有するように調合することができる。また、前記EVOH樹脂組成物のアルカリ金属含有量は、50~400ppmの範囲であり得る。いくつかの実施例において、前記EVOH樹脂組成物のアルカリ金属含有量は、約50~約380ppm、約80~約370ppm、約140~約360ppm、約250~約350ppm、約260~約340ppm、約270~約330ppm、約280~約320ppm、または約290~約310ppmである。場合によっては、前記EVOH樹脂組成物は、桂皮酸、遷移金属、共役ポリエン、潤滑剤、アルカリ土類金属、それらの塩、および/またはそれらの混合物をさらに含み得る。上記の物質は、EVOH樹脂組成物に通常存在する一般的な物質であり、より良い特性をもたらす。単位重量当たりのEVOH樹脂組成物中の上記共役ポリエン構造の化合物の含有量が1~30,000ppmであれば、加熱後の着色をさらに抑制でき、熱安定性を向上させることができる。一方、単位重量当たりのEVOH樹脂組成物中の上記アルカリ土類金属化合物の含有量が金属換算で1~1000ppmの場合、長期運転成形性を向上させることができる。また、単位重量当たりのEVOH樹脂組成物中の上記潤滑剤の含有量が1~300ppmであれば、加工性を向上させることができる。
【0033】
別の態様において、本発明は、EVOH樹脂(例えば、本発明のEVOH樹脂組成物)から形成されるEVOHフィルムを提供し、前記EVOH樹脂が少なくとも2つの融点温度およびホウ素化合物を有し、ここで前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物のホウ素含有量が約25~約300ppmであり;前記EVOHフィルムの表面に0.01mLのヨウ素溶液を滴下し、前記EVOHフィルムを5秒間水に浸し、120℃の温度で2時間乾燥させた後、前記EVOH樹脂組成物のヨウ素染色領域が1000μm2以下である。前記EVOHフィルムは、本発明のEVOH樹脂組成物から、従来の方法および機器(押出機など)を介して形成させることができる。
【0034】
EVOHフィルの染色領域は、好ましくは約1000μm2以下、約950μm2以下、約900μm2以下、約850μm2以下、約800μm2以下、約750μm2以下、約700μm2以下、約650μm2以下、約600μm2以下、約550μm2以下、約500μm2以下、約450μm2以下、約400μm2以下、約350μm2以下、約300μm2以下、約250μm2以下、約200μm2以下、約150μm2以下、または約100μm2以下である。
【0035】
前記EVOHフィルムは、通常約142℃~約195℃の範囲の少なくとも2つの融点を有する。前記EVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点の1つは、好ましくは約142℃~約177℃の範囲、例えば145℃~約175℃または148℃~約172℃の範囲である。追加的にまたは代替的に、前記EVOH樹脂組成物の少なくとも2つの融点の1つは、好ましくは179℃~195℃、例えば181℃~192℃または183℃~189℃の範囲である。いくつかの実施例において、前記EVOHフィルムは少なくとも3つの異なる融点温度を有する。他の実施例において、前記EVOHフィルムは、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの異なる融点温度を含む。
【0036】
前記EVOHフィルムの少なくとも2つの融点温度の差は、好ましくは約15℃~約45℃、例えば約17℃~約44℃または約20℃~約40℃である。本発明者は、少なくとも2つの融点温度を有し、かつ前記2つの融点温度の差が約15℃~約45℃であるEVOHフィルムを形成すると、高い均一なガスバリア性を持つEVOHフィルムを提供できることを見出した。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、EVOH樹脂組成物(例えば本発明のEVOH樹脂組成物)で形成された少なくとも1つの層を有する多層構造を提供する。前記多層構造は、本発明のEVOH樹脂組成物から形成される少なくとも1つの層と、少なくとも1つのポリマー層と、少なくとも1つの接着剤層を含む。
【0038】
前記ポリマー層は、低密度ポリエチレン層、ポリエチレングラフト化無水マレイン酸層、ポリプロピレン層およびナイロン層から選択することができる。前記接着剤層は、結合層であり得る。
【実施例
【0039】
以下の非限定的な実施例は、主に、本発明の様々な態様によって奏する効果および特徴を説明するために提供される。
【0040】
実施例1(配合物の調製)
本発明が一定の効果を有することを説明するため、実施例および比較例のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)配合物を調製した。各実施例および比較例のEVOH配合物は、少なくとも2種の成分から調製される。実施例および比較例の配合物の少なくとも2種の成分は、EVOHポリマーまたはエチレン-酢酸ビニル(EVAC)ポリマーであった。
【0041】
実施例の配合物A~Cは、それぞれ異なるエチレン含有量を有する2種のEVAC成分から調製された。実施例の配合物Dは、それぞれ異なるエチレン含有量を有する3種のEVAC成分から調製された。実施例の配合物E~Hは、それぞれ異なるエチレン含有量を有する2種のEVOH樹脂組成物から調製された。
【0042】
同様に、比較例の配合物I、JおよびMは、それぞれ異なるエチレン含有量を有する2種のEVAC組成物から調製された。比較例の配合物K、NおよびOは、異なるエチレン含有量を有する2種のEVOH樹脂組成物から調製された。比較例の配合物Pは、異なるエチレン含有量を有する2種のEVOHペレットを乾式混合することによって調製された。表1には、実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~Pを調製するための各成分のエチレン含有量を示す。
【表1】
【0043】
実施例1の表1に示す各種実施例および比較例の配合物(実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~P)からEVOHペレットを製造した。
【0044】
実施例の配合物AのEVOH樹脂の調製
実施例の配合物Aについて、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーを重合することにより2種の成分(EVACポリマー)を形成した。2種の成分を溶液混合により組み合わせ、その後鹸化してEVOHを形成した。
【0045】
EVOHをメタノールと水の混合比率が60:40のアルコール水溶液に溶かした。EVOH/メタノール/水溶液へのEVOHの溶解を促進するため、EVOH/メタノール/水溶液を60℃で1時間置いた。前記EVOH/メタノール/水溶液の固形分は41重量%であった。
【0046】
EVOH/メタノール/水溶液を流量が120L/minの供給管にポンプで圧送してから、直径2.8mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHを回転数1500rpmの回転刃で切断し、1.5℃の水を加えてペレットを冷却し、アンダーウォーターカット方式によりEVOHペレットを形成した。前記EVOHペレットを遠心分離することで、EVOH粒子を分離し、分離されたEVOH粒子を水洗した後、ホウ酸/酢酸ナトリウム溶液に浸漬し、その後乾燥させてEVOHペレットの最終製品を得た。前記EVOHペレットの最終製品は、ホウ素含有量62ppm、アルカリ金属含有量約50ppmを含み、かつ長径3mm、短径2.4mmの丸い形のペレットであった。
【0047】
実施例の配合物BのEVOH樹脂の調製
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物AのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物BのEVOHペレットを製造した。ただし、実施例の配合物BのEVOHペレットを製造する時、冷却水の温度を2.5℃に設定した。実施例の配合物BのEVOHペレットは、ホウ素含有量85ppm、アルカリ金属含有量約78ppmを有し、かつ長径3mm、短径2.4mmの丸い形のペレットであった。
【0048】
実施例の配合物CのEVOHペレットの製造
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物AのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物CのEVOHペレットを製造した。ただし、実施例の配合物BのEVOHペレットを製造する時、EVOH/メタノール/水溶液を流量が60L/minの供給管に圧送してから、直径2.5mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHを回転数1000rpmの回転刃で切断し、0.5℃の水を加えてペレットを冷却し、ストランド造粒/ストランドカット(strand cutting)によりEVOHペレットを形成した。実施例の配合物CのEVOHペレットは、ホウ素含有量113ppm、アルカリ金属含有量約140ppmを含み、かつ直径1.5mm、長さ5mmの丸い形のペレットであった。
【0049】
実施例の配合物DのEVOHペレットの製造
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物AのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物DのEVOHペレットを製造した。ただし、使用した冷却水は0.3℃であった。EVOHペレットの最終製品は、ホウ素含有量248ppm、アルカリ金属含有量約400ppmを含み、かつ長径3mm、短径2.4mmの丸い形のペレットであった。
【0050】
実施例の配合物EのEVOHペレットの製造
エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーを重合することにより、2種の成分(EVACポリマー)を形成して実施例の配合物EのEVOHペレットを製造した。2種の成分を別々に鹸化してEVOHポリマーを形成した。実施例の配合物A~DのEVOHの調製プロセスとは対照的に、鹸化前に溶液混合は行われないため、鹸化前に2種の成分を組み合わせさせなかった。
【0051】
鹸化後、2種のEVOHポリマーを別々にメタノールと水の混合比率が60:40のアルコール水溶液に溶かした。2種のEVOH/メタノール/水溶液の固形分はそれぞれ41重量%であった。続いて、2種のEVOH/メタノール/水溶液を溶液混合によって組み合わせ、60℃で1時間置いた。
【0052】
前記EVOH/メタノール/水溶液を流量が60L/minの供給管にポンプで圧送してから、直径2.5mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHを回転数1000rpmの回転刃で切断し、3℃の水を加えてペレットを冷却し、ストランドカット方式により造粒してEVOHペレットを形成した。前記EVOHペレットを遠心分離することで、EVOH粒子を分離し、分離されたEVOH粒子を水洗した後、ホウ酸/酢酸ナトリウム溶液に浸漬し、その後乾燥させてEVOHペレットの最終製品を得た。前記EVOHペレットの最終製品は、ホウ素含有量30ppm、アルカリ金属含有量約264ppmを含み、かつ直径1.5mm、長さ5mmの円柱形ペレットであった。
【0053】
実施例の配合物FのEVOHペレットの製造
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物EのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物FのEVOHペレットを製造した。ただし、実施例の配合物FのEVOHペレットを製造する時、EVOH/メタノール/水溶液を流量が120L/minの供給管にポンプで圧送してから、直径2.8mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHを回転数1500rpmの回転刃で切断し、2.1℃の水を加えてペレットを冷却し、アンダーウォーターカットによりEVOHペレットを形成した。実施例の配合物FのEVOHペレットは、ホウ素含有量90ppm、アルカリ金属含有量約345ppmを含み、かつ長径3mm、短径2.4mmの丸い形のペレットであった。
【0054】
比較例の配合物GのEVOHペレットの製造
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物EのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物GのEVOHペレットを製造した。ただし、実施例の配合物GのEVOHペレットを製造する時、EVOH/メタノール/水溶液を流量が120L/minの供給管に圧送してから、直径2.8mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHを回転数1000rpmの回転刃で切断し、1.5℃の水を加えてペレットを冷却し、ストランドカットによりペレット化してEVOHペレットを形成した。実施例の配合物GのEVOHペレットは、ホウ素含有量125ppm、アルカリ金属含有量約201ppmが含まれた。
【0055】
比較例の配合物HのEVOHペレットの製造
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物EのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物HのEVOHペレットを製造した。ただし、実施例の配合物HのEVOHペレットを製造する時、EVOH/メタノール/水溶液を流量が120L/minの供給管にポンプで圧送してから、直径2.8mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHを回転数1000rpmの回転刃で切断し、0.7℃の水を加えてペレットを冷却し、アンダーウォーターカット方式によりEVOHペレットが形成された。実施例の配合物HのEVOHペレットは、ホウ素含有量125ppm、アルカリ金属含有量約201ppmが含まれた。
【0056】
比較例の配合物IのEVOHペレットの製造
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物AのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物のEVOHペレットを製造した。ただし、実施例の配合物のEVOHペレットを製造する時、冷却水の温度を1.8℃に設定した。前記EVOHペレットは、ホウ素含有量78ppm、アルカリ金属含有量約254ppmを含み、かつ長径3mm、短径2.4mmの丸い形のペレットであった。
【0057】
比較例の配合物JのEVOHペレットの製造
表1に示す配合物に従って、実施例の配合物AのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物JのEVOHペレットを製造した。ただし、実施例の配合物JのEVOHペレットを製造する時、冷却水の温度を1.7℃に設定した。前記EVOHペレットは、ホウ素含有量173ppm、アルカリ金属含有量約170ppmを含み、かつ長径3mm、短径2.4mmの丸い形のペレットであった。
【0058】
比較例の配合物KのEVOHペレットの製造
エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーを重合することにより、2種の成分(EVACポリマー)を形成して実施例の配合物KのEVOHペレットを製造した。2種の成分を別々に鹸化してEVOHポリマーを形成した。鹸化後、2種のEVOHポリマーを別々にメタノールと水の混合比率が70:30のアルコール水溶液に溶かした。前記2種のEVOH/メタノール/水溶液の固形分はそれぞれ41重量%であった。続いて、前記2種のEVOH/メタノール/水溶液を60℃で1時間置いた。
【0059】
前記2種のEVOH/メタノール/水溶液を流量が60L/minの供給管にポンプで圧送してから、直径2.5mmの入口管に送り込んだ。前記2種のEVOH溶液を回転数1000rpmの回転刃で切断し、2.2℃の水を加えてペレットを冷却し、前記2種のEVOH溶液からそれぞれ異なるEVOHペレットを形成した。前記2種のEVOH溶液から形成されたEVOHペレットを遠心分離することで、EVOH粒子を分離し、前記EVOH粒子を水洗した後、ホウ酸/酢酸ナトリウム溶液に浸漬し、その後乾燥させて2種の異なるEVOHペレットを得た。
【0060】
前記2種のから形成されたEVOHペレットを、二軸押出機を使用してスクリュー回転数100rpm、ドラム温度205℃で調合し、次にストランドカット方式によりペレット化して、比較例配合物Kの最終EVOHペレットを得た。前記2種の異なるEVOHペレットの調合プロセスは、前記2種の異なるEVOHペレットを溶融および混合することを含む。最終的なEVOHペレットは、ホウ素含有量215ppm、アルカリ金属含有量約450ppmを含み、かつ直径1.5mm、長さ5mmの円柱形ペレットであった。
【0061】
比較例の配合物LのEVOHペレットの製造
実施例の配合物AのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、実施例の配合物LのEVOHペレットを製造したが、相違点は0.9℃の温度を有する水で比較例の配合物LのEVOHを冷却し、ホウ素含浸後EVOHペレットを調合することであった。具体的にEVOH/メタノール/水溶液を形成した後、前記EVOH/メタノール/水溶液を流量が60L/minの供給管にポンプで圧送してから、直径2.5mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHを回転数1000rpmの回転刃で切断し、0.9℃の水を加えてペレットを冷却して、EVOHペレットを形成した。前記EVOHペレットを遠心分離することで、EVOH粒子を分離し、分離されたEVOH粒子を水洗した後、ホウ酸/酢酸ナトリウム溶液に浸漬し、その後乾燥させて比較例の配合物LのEVOHペレットを得た。
【0062】
続いて、前記EVOHペレットを、配合機(compounding machine)を使用してスクリュー回転数100rpmおよびドラム温度205℃で調合した。ストランドカット方式でペレット化して、EVOHペレットの最終製品を得た。得られたEVOHペレットは、ホウ素含有量163ppm、アルカリ金属含有量約340ppmを含み、かつ直径1.5mm、長さ5mmの円柱形ペレットであった。
【0063】
比較例の配合物MのEVOHペレットの製造
実施例の配合物AのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、比較例の配合物MのEVOHペレットを製造したが、比較例の配合物Mをホウ酸/酢酸ナトリウム溶液に浸漬しなかった。具体的に、比較例の配合物MのEVOHペレットを製造した後、前記EVOHペレットを遠心分離することで、EVOHペレット粒子を分離した。分離されたEVOH粒子を水洗してから乾燥させて、比較例の配合物Mの最終EVOHペレットを得た。得られたEVOHペレットは、ホウ素含有量0ppm、アルカリ金属含有量約0ppmを含み、かつ直径1.5mm、長さ5mmの円柱形ペレットであった。
【0064】
比較例の配合物NのEVOHペレットの製造
実施例の配合物EおよびFのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、比較例の配合物NのEVOHペレットを製造したが、比較例の配合物Nを0.7℃の温度を有する冷却水に浸けた。具体的に、比較例の配合物NのEVOHペレットを製造した後、前記EVOHペレットを遠心分離することで、EVOHペレット粒子を分離した。分離されたEVOH粒子を水洗してから乾燥させて、比較例の配合物NのEVOHペレットの最終製品を得た。前記EVOHペレットは、ホウ素含有量125ppm、アルカリ金属含有量約201ppmを含み、かつ長径1.5mm、短径1mmの丸い形のペレットであった。
【0065】
比較例の配合物OのEVOHペレットの製造
実施例の配合物EおよびFのEVOHペレットの製造と似ているプロセスを用いて、比較例の配合物OのEVOHペレットを製造したが、比較例の配合物Oを1.5℃の温度を有する冷却水に浸けた。比較例の配合物OのEVOHペレットを製造した後、前記EVOHペレットを遠心分離することで、EVOHペレット粒子を分離した。分離されたEVOH粒子を水洗してから乾燥させて、比較例の配合物OのEVOHペレットの最終製品を得た。前記EVOHペレットは、ホウ素含有量125ppm、アルカリ金属含有量約201ppmを含み、かつ長径1.5mm、短径1mmの丸い形のペレットであった。
【0066】
比較例の配合物PのEVOHペレットの製造
エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーを重合することにより、2種の成分(EVACポリマー)を形成して実施例の配合物PのEVOHペレットを製造した。2種の成分を別々に鹸化してEVOHポリマーを形成した。鹸化後、前記2種のEVOHポリマーを別々にメタノールと水の混合比率が70:30のアルコール水溶液に溶かした。前記2種のEVOH/メタノール/水溶液の固形分はそれぞれ41重量%であった。続いて、前記2種のEVOH/メタノール/水溶液を60℃で1時間置いた。
【0067】
前記2種のEVOH/メタノール/水溶液を流量が120L/minの供給管にポンプで圧送してから、直径2.8mmの入口管に送り込んだ。前記EVOHが冷却温度1.8℃に達した時、前記2種のEVOH溶液を回転数1500rpmの回転刃で切断することで、前記2種のEVOH溶液からそれぞれ異なるEVOHペレットを形成した。前記2種のEVOH溶液から形成されたEVOHペレットを遠心分離することで、EVOH粒子を分離し、前記EVOH粒子を水洗した後、ホウ酸/酢酸ナトリウム溶液に浸漬し、その後乾燥させて異なるEVOHペレットを得た。ブレンディングマシン(blending machine)で前記2種のEVOHペレットをドライブレンドして比較例の配合物PのEVOHペレットの最終製品を形成した。得られたEVOHペレットは、ホウ素含有量125ppm、アルカリ金属含有量約356ppmを含み、かつ長径3mm、短径2.4mmの丸い形のペレットであった。
【0068】
実施例2(単層フィルム、多層フィルムおよび多層構造の製造)
実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~Pの個々のEVOHペレットを用いて単層フィルムおよび多層フィルムを形成した。実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物IからPのEVOHペレットを単層Tダイ(T-die)キャストフィルム押出機(光学制御システムMEV4)に供給して単層フィルム(実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1)を製造した。実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1の厚みは20μmであった。前記押出機の温度は、220℃に設定され、前記ダイ(すなわち、T-die)の温度が230℃に設定され、スクリュー回転数が7rpmであった。
【0069】
個々のEVOHペレット、ポリプロピレン、および結合層(例えばOREVACR18729、アルケマ社製)を共押出しすることにより、実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~Pの個々のEVOHペレットから多層フィルムを形成した。前記多層フィルム(実施例のフィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2)は、5層を有し、EVOH層が2つのポリプロピレン層の間に介在している。EVOH層の各側とポリプロピレン層の1つの間に結合層が配置される。具体的に、EVOHペレット(I)、ポリプ
ロピレン(II)およびバインダー樹脂(III)を5共押出機に供給して(II)/(III)/(
I)/(III)/(II)などの構造を備え、厚みが各々300/25/50/25/300
(μm)である多層シートを製造した。
【0070】
実施例のフィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2を熱成形して容器(例えばカップおよび/またはカップ状容器(フルーツカップなど))の形状に成形することにより、多層容器が得られた。次に、実施例のフィルムA2~F2および比較例のフィルムG2~M2の多層容器をカッターで切断し、光学顕微鏡(Optical Microscope OM, LEICA DM2700)を用いて起立面部とコーナー部のEVOH層の厚みを測定した。図2は、容器の起立面部およびコーナー部が区切られた例示的な熱成形多層容器の画像である。
【0071】
実施例3(化学的および物理的性質の確認)
実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~Pから調製されたEVOHペレット、ならびに前記EVOHペレットによって形成された単層フィルム(実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1)、多層フィルム(実施例のフィルムA2~H2および比較例フィルムI2~P2)および多層構造(例示的な容器形状を形成)を分析して熱成形前後のガスバリア性、融点温度、ホウ素含有量、均一性および各種ペレットの染色領域の大きさを含む様々な化学的および物理的性質を測定した。
【0072】
実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~PのEVOHペレットの融点温度は、ISO11357-3-2011の方法に従ってDSC Q200装置(TZERO TECHNOLOGIES,INC.製;蓋(Tzero lid)はTA機器T 170607で、パン(Tzero pan)がTA機器T 170620)で測定した。実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1の融点も同じ方法で測定した。
【0073】
実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~PのEVOHペレットをマイクロトームで長径に切断した。表2に示すように、実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~PのEVOHペレットの横断面は、1.18~12.57mm2の範囲であった。次に、切断されたEVOHペレット10mgごとの試料切断面に0.01mLのヨウ素溶液を滴下し、15秒間接触させた。ヨウ素溶液には、8gI2+2gKI+70gH2Oが含まれる。切断したEVOHペレットを5秒間水に浸し、120℃のオーブンで2時間入れて乾燥させた。
【0074】
試料を冷却し、LEICA DM2700M顕微鏡およびLEICA MC170HD CCDカメラで評価した。これらは両方とも、LEICA MICROSYSTEMSから商業的に入手することができる。顕微鏡レンズはOFN25/N PLAN EPI/20×0.4BDで、カメラはOM:C-M0.55Xに接続されている。具体的は、OM分析ソフトウェアを使用して試料を評価し、レンズの下の各試料の染色された切断面の海相における5つのランダムな点のR、G、B値を測定し、グレースケール値も測定した。グレースケール値は、次の式を使用して計算した。
【数2】
【0075】
海相は、初期分析に使用されるOM内の明るい色の領域として定義される。本明細書に記載の染色領域は、グレースケール値と海相の平均グレースケール値の差が15(例えば、その差は±15である)を超える領域である。OM分析ソフトウェアは、領域の大きさを測定するためにも用いられる。
【0076】
カメラの下に染色領域がない場合、染色領域の面積の大きさは「ND」として表され、実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~Pの試料を「完全に均一」であると判断する。 カメラの下の各染色領域が0.1mm2以下の場合、試料を「均一」であると判断する。少なくとも1つの染色領域が0.1mm2より大きい場合、試料を「不均一」と判断する。図3は、実施例のEVOHペレットの均一な表面の画像を示している。図4は、比較例のEVOHペレットの不均一な表面の画像を示している。
【0077】
EVOHペレットのパラメータも評価した。円形または楕円形のEVOHペレットの場合、ペレットの最大外径を長径とし、長径に垂直な横断面において面積が最大となる横断面の最大径を短径とする。円柱形のEVOHペレットの場合、横断面に垂直な最大長さを長さとし、横断面の最大直径を長径としている。
【0078】
本実施例では、実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~PのEVOHペレットのホウ素含有量も測定した。濃硝酸とマイクロ波を用いて0.1gのEVOHペレットの試料を分解し、EVOHペレットから試料溶液を形成させた。次に、試料溶液を純水で希釈して、濃度を0.75mg/mlに調整した。誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP emission spectrochemical analysis device、ICP-OES;アナライザー:iCAP7000(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて試料溶液のホウ素含有量を測定した。前記ホウ素含有量とは、使用したホウ素化合物に由来するホウ素量に対応する測定値を意味する。
【0079】
EVOHペレット2gを白金皿に入れ、硫酸を数mL添加してガスバーナーで加熱した。ペレットが炭化して硫酸白煙がなくなるのを確認したら、数滴硫酸を添加して再び加熱した。この操作を有機物がなくなるまで繰り返し、完全に灰化させた。灰化が終わった容器を放冷し、塩酸を1mL添加して溶解させた。この塩酸溶液を超純水で洗いこみ、50mLに定容した。このサンプル溶液中のアルカリ金属含有量を誘導結合プラズマ発光分析計(ICP-AES)によって測定した。最終的に、溶液中のアルカリ金属濃度から、上記EVOHペレット中のアルカリ金属含有量として換算した。
【0080】
実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1、実施例のフィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2のガスバリア性は、前記フィルムを通る酸素透過率(oxygen transmission rate,OTR)を測定することによって評価された。OX-TRAN Model 2/22酸素透過率テスター(mocon社製)を用いて、ISO14663-2の方法に従って、実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1のOTRを3つの異なる位置で測定した。OTRテストは、相対湿度65%、23℃の条件下で実施された。OTR標準偏差は、3つの位置のOTRの差から計算された。実施例のフィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2のOTRはまた、ISO14663-2の方法に従って相対湿度65%、23℃でOX-TRAN Model 2/22酸素透過率テスター(mocon社製)を用いて測定された。
【0081】
実施例の配合物A~Hおよび比較例の配合物I~PのEVOHペレットの製造と似ているプロセスおよび機器を用いて、実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1の染色領域と均一性を評価した。ただし、実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI1~P1のテスト面積は32,000μm2であった。
【0082】
実施例のフィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2の熱成形多層容器の外観見栄えを評価した。具体的に、各熱成形多層容器のコーナー部のEVOH層の厚みと起立面部のEVOH層の厚みとの差を測定した。
【0083】
表2は、各EVOHペレットの融点温度、ホウ素含有量、均一性および染色領域の大きさの分析結果を示す。表3は、単層フィルム(実施例のフィルムA1~H1および比較例のフィルムI2~P2)の融点温度、ガスバリア性および染色領域の大きさの分析結果を示す。表4は、多層フィルム(実施例のフィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2)のガスバリア性の分析結果およびこれらの多層フィルムの熱成形容器の外観見栄えを示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0084】
「厚みムラ」の列見出しは、実施例のフィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2の多層フィルムによって製造された熱成形多層容器のコーナー部のEVOH層の厚みおよび起立面部のEVOH層の厚みの差を意味する。「○」は、コーナー部と起立面部間でのEVOH層の厚みの差が20%未満であることを意味する。「△」は、コーナー部と起立面部間でのEVOH層の厚みの差が20%~40%であることを意味する。「×」は、コーナー部と起立面部間でのEVOH層の厚みの差が40%を超えることを意味する。
【0085】
「外観見栄え」の列見出しは、実施例フィルムA2~H2および比較例のフィルムI2~P2の多層フィルムによって形成された熱成形容器の視覚的評価をいう。「○」は目視で容器表面に窪みがないことを意味する。「×」は、目視で容器表面に窪みがあることを意味する。
【0086】
表2に示すように、例示的な配合物A~HのEVOHペレットはそれぞれ、少なくとも2つの異なる融点温度を示した。特定の理論に束縛されることなく、比較例の配合物JのEVOHペレットは、2種の成分がそれぞれ非常に近い融点温度を持っているため、1つだけの融点温度を示したと考えられる。図5は、2つの融点温度を持つEVOHペレットを示す例示的なグラフである。
【0087】
比較例の配合物IのEVOHペレットの融点温度の差は72℃であり、これは、10~44℃の所望の範囲を超える。また、単層フィルム比較例のフィルムI1の融点温度の差が範囲外であった。特定の理論に拘束されることなく、本発明者は、比較例のフィルムI2の熱成形多層容器の外観不良およびEVOH層の厚みムラは、比較例の配合物IのEVOHペレットの融点温度の差が上記の所望の範囲を超えることによるものであると考えている。
【0088】
比較例の配合物JのEVOHペレットは、2つの異なる融点温度を示さなかった。比較フィルムJ2から形成された熱成形容器において、少なくとも外観不良および望ましくないEVOH層の厚みムラは、比較例の配合物JのEVOHペレットが2つの異なる融点を示さないためであると考えられている。
【0089】
単層フィルム比較例のフィルムJ1は、1つの溶融温度しか示さなかった。比較例のフィルムJ2の熱成形多層容器は、外観不良を示し、そのコーナー部のEVOH層と起立面部のEVOH層との間に望ましくない厚みムラがあった。
【0090】
比較例の配合物Kのペレットの染色領域は、本明細書に記載されている所望の範囲外であり、均一ではない。 比較例の配合物Kのペレットから製造された比較例のフィルムK1の染色領域もまた、所望の範囲外であった。比較例のフィルムK1の酸素透過率の標準偏差は0.235(すなわち、23.5%)であった。比較例のフィルムK2の熱成形多層容器は、外観不良を示し、そのコーナー部のEVOH層と起立面部のEVOH層との間に望ましくない厚みムラがあった。また、比較例のフィルムK2の多層容器の酸素透過率は、0.85であり、これは実施例のフィルムA2~H2の酸素透過率よりも著しく大きい。
【0091】
同様に、比較例のフィルムL1の染色領域は、所望の範囲外であり、そのOTR標準偏差が実施例のフィルムA1~H1のOTR標準偏差よりも大きくなっている。比較例のフィルムL2の熱成形多層容器は、外観不良を示し、そのコーナー部のEVOH層と起立面部のEVOH層との間に望ましくない厚みムラがあった。
【0092】
比較例のフィルムM2は、外観見栄えの悪化および厚みムラを示した。なお、比較例のフィルムM1は、望ましくないほど高いOTR標準偏差を示した。比較例のフィルムM1の外観見栄えの悪化は、比較例の配合物MのEVOHペレットの結晶化効果に起因する可能性がある。比較例の配合物MのEVOHペレットは、ホウ素で含浸されなかった。
【0093】
比較例の配合物Nは、1つの融点しか持たない。比較例のフィルムN1および比較例のフィルムN2の多層構造は、それぞれ、劣ったOTR標準偏差および多層フィルムOTRを示した。
【0094】
同様に、較例の配合物Oは1つの融点しか持たない。比較例のフィルムO1は、望ましくないほど高いOTR標準偏差を持っている。また、比較例のフィルムO2の多層構造は、外観不良、コーナー部と起立面部との間の厚みムラおよび望ましくないほど高い多層フィルムOTRを持っている。
【0095】
比較例の配合物Pから形成されたEVOHペレットは、乾式混合法によって製造された。比較例の配合物Pから形成された2種の異なるEVOHペレットは、それぞれ単一の融点温度を有するが、2つの融点温度が異なる。比較例フィルムP1は、望ましくない過度に大きな染色領域を有し、劣ったOTR標準偏差を示した。比較例のフィルムP2の熱成形多層容器は、外観不良を示し、そのコーナー部のEVOH層と起立面部のEVOH層との間に望ましくない厚みムラがあった。また比較例のフィルムP2の熱成形多層容器のOTRは、実施例のフィルムA2~H2の熱成形多層容器のOTRよりも高かった。
【0096】
また、実施例のフィルムA1~H1の単層フィルムは、比較例のフィルムと比較して非常に優れた均一なガスバリア性を示した。具体的に、実施例のフィルムA1~H1の単層フィルムは、比較例のフィルムI1~P1よりも予想外に優れたOTR標準偏差を示した。例えば、実施例のフィルムA1~H1が示す平均OTRの標準偏差は0.0231であるが、比較例のフィルムI1-P1が示す平均OTRの標準偏差は0.166であり、比較例のフィルムI1-P1が示す平均OTRの標準偏差は実施例のフィルムA1~H1が示す標準偏差よりも約719%大きくなっている。
【0097】
実施例のフィルムA2~H2の多層フィルムは、比較例のフィルムI2~P2と比較して非常に優れた均一なガスバリア性も示した。例えば比較例のフィルムI2~P2によって示される平均OTRは、実施例フィルムA2~H2の多層フィルムによって示される平均OTRよりも約7,767%大きかった。
【0098】
本明細書において提供されるすべての範囲は、所定の範囲内の各特定の範囲、および所定の範囲間のサブ範囲の組み合わせを含むことが意図されている。また、本明細書に明確に記載されるあらゆる範囲は、特に明示されていない限り、その終点を含む。したがって、1~5の範囲には、特に1、2、3、4、および5と、2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などのサブ範囲が含まれる。
【0099】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれ、ありとあらゆる目的のために、各個々の刊行物または特許出願は、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれている刊行物または特許出願との間に矛盾がある場合、本明細書が優先される。
【0100】
本明細書で使用される「備える」、「有する」および「含む」という用語は、オープンエンドで非限定的な意味を有する。「1つの」および「前記」という用語は、文脈上明らかに単数形であることが示されない限り、複数形も同様に含むことを意図する場合がある。「1つ以上」という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、したがって、単一の特徴または混合物/組み合わせを含むことができる。
【0101】
明細書記載の実施例以外で、または特に明記されていない限り、成分の量および/または反応条件を表すすべての数値は、すべての場合に「約」という用語で修飾できる。これは、示された数値の±5%以内を意味する。本明細書で使用する場合、「基本的に含まない」または「実質的に含まない」という用語は、特定の特徴が約2%未満であることを意味する。本明細書に明確に記載されているすべての要素または特徴は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。
【符号の説明】
【0102】
100 本発明のEVOH樹脂組成物の評価方法
110 EVOHの取得
120 ヨウ素溶液への接触
130 水への浸漬
140 乾燥
150 染色領域の測定
図1
図2
図3
図4
図5