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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】クラフト用フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240828BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240828BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C08J5/18 CEV
C08L101/00
C08K5/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020212738
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022099012
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521475990
【氏名又は名称】株式会社キッチニスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】船木 泰志
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/042670(WO,A1)
【文献】特開2005-104525(JP,A)
【文献】特開2014-051095(JP,A)
【文献】特開昭47-002134(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002488(WO,A1)
【文献】特開2004-166828(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094729(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094731(WO,A1)
【文献】特表2019-536867(JP,A)
【文献】特開2019-031639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H1/00-37/00
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及び着色剤を含有するクラフト用フィルムであり、
前記クラフト用フィルムを20℃、65%RH環境下で四つ折りにしたフィルムの折畳み保持角度が、15度以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリ塩化ビニリデン系樹脂である、クラフト用フィルム。
【請求項2】
全光線透過率が、50~95%である、請求項1に記載のクラフト用フィルム。
【請求項3】
前記着色剤が、青色着色剤、赤色着色剤、黄色着色剤、緑色着色剤、及び紫色着色剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の着色剤を含む、請求項1又は2に記載のクラフト用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラフト用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折り紙用の紙を折って折り鶴等の作品を作ることが知られている。一方、紙の折り紙への使用方法は限れている。そこで、紙に変わる折り紙の素材として、プラスチックフィルムを用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、プラスチックフィルムと着色層を有するプラスチック折り紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-165833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラスチック折り紙は、折り方の手順が定められた折り紙として使うことは可能であるが、手順が定まっておらず、形を作りながら作品を作成していくクラフト材料に用いることには改善の余地がある。また、プラスチック折り紙は、折り曲げた後に開くと、折り跡が残ってしまい、美観を損ねる可能性がある。
【0005】
本開示は、折り曲げた際に跡が残らず、美観を損ねずに折り曲げが可能なクラフト用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、熱可塑性樹脂及び着色剤を含有するクラフト用フィルムであり、前記クラフト用フィルムを20℃、65%RH環境下で四つ折りにしたフィルムの折畳み保持角度が、15度以下である、クラフト用フィルムに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、折り曲げた際に跡が残らず、美観を損ねずに折り曲げが可能なクラフト用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「X~Y」(X又はYは任意の数字)と表現した場合、X以上かつY以下の任意の数を示す。当該任意の数は、好ましくは、Xより大きくかつY以下であるか、X以上かつYより小さいか、Xより大きくかつYより小さい数である。
【0009】
[クラフト用フィルム]
一実施形態に係るクラフト用フィルムは、熱可塑性樹脂及び着色剤を含有する。以下、クラフト用フィルムが含有し得る各成分について詳述する。
【0010】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;6-ナイロン、6,6-ナイロン、12-ナイロン等のポリアミド系樹脂;ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニリデン系樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0011】
熱可塑性樹脂は、フィルムに折り跡が残り難いことから、好ましくは、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリ塩化ビニリデン系樹脂である。
【0012】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、フィルムの折り跡の残りをより低減する観点から、好ましくは、平均重合度700~1300のポリ塩化ビニル系樹脂である。本明細書における平均重合度は、JIS K6720-2に準じて測定された平均重合度を意味する。
【0013】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、フィルムの折り曲げ性により優れることから、塩化ビニルホモポリマー(ポリ塩化ビニル樹脂)であってもよく、他の特性を付与する目的から、塩化ビニルとこれに共重合可能なその他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体は、グラフト共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体であってよい。その他のモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン;酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の飽和酸のビニルエステル;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和酸のアルキルエステル;ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;アクリロニトリル;及びフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0014】
ポリ塩化ビニル系樹脂が共重合体である場合、共重合体における塩化ビニル単位の含有量は、モノマー単位全量基準で、10質量%以上であってよく、機械特性に優れる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。共重合体における塩化ビニル単位の含有量の上限は、特に限定されず、例えば、モノマー単位全量基準で99質量%以下であってよい。
【0015】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの三次元ポリマー等とのポリマーブレンド、アルコール等による後処理物、含塩素化合物による後処理物であってもよい。これらの場合、ポリ塩化ビニル系樹脂における塩化ビニル単位の含有量は、モノマー単位全量基準で10質量%以上であってよい。
【0016】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンホモポリマー(ポリ塩化ビニリデン樹脂)であってもよく、例えば、塩化ビニリデンと、塩化ビニリデンと共重合可能なその他のモノマーとをモノマー単位として含む共重合体であってよい。その他のモノマーは、塩化ビニル、アクリル酸と炭素数1~8のアルコールとのアクリル酸エステル、メタクリル酸と炭素数1~8のアルコールとのメタクリル酸エステル、脂肪族カルボン酸のビニルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル等であってよい。なお、塩化ビニリデンと塩化ビニルとの共重合体は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂に属するものとする。
【0017】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂における塩化ビニリデン単位の含有量は、フィルムの成形性及び耐熱性の観点から、モノマー単位全量基準で、例えば、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよい。ポリ塩化ビニリデン系樹脂における塩化ビニリデン単位の含有量の上限は、特に限定されず、例えば、モノマー単位全量基準で99質量%以下であってよい。塩化ビニリデン単位の含有量は、核磁気共鳴(NMR)装置により測定することができる。
【0018】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、40000以上、60000以上、又は80000以上であってよく、180000以下、160000以下、又は140000以下であってよく、40000~180000、60000~160000、又は80000~140000であってよい。ポリ塩化ビニリデン系樹脂のMwは、GPC法により、分子量既知のポリスチレンを標準物質として測定することができる。
【0019】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂のMwの測定に用いるGPC法の条件は、以下のとおりである。測定装置としてウォーターズ社製ゲルクロマトグラフAllianceGPC2000型を使用する。ポリ塩化ビニリデン系樹脂を0.5質量%となるようにテトラヒドロフランに溶解させたものを、試料として用いる。
カラム:東ソー株式会社製TSKgel GMHHR-H(S)HT 30cm×2、TSKgel GMH6-HTL 30cm×2
移動相:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計
流速:1.0mL/分
カラム温度:20℃
注入量:500μL
【0020】
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂であってよい。ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又はエチレン等をモノマー単位とする共重合体であってよい。具体的には、ポリエチレン系樹脂は、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数3~10のα-オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル、共役ジエン、非共役ジエン等の不飽和化合物などから選ばれる1種又は2種以上のモノマーとの共重合体であってよい。ポリエチレン系樹脂におけるエチレン単位の含有量は、モノマー単位全量基準で50質量%以上であってよい。
【0021】
熱可塑性樹脂の含有量は、フィルムの折れ曲げ性をより向上する観点から、フィルムの全量基準で、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってよく、またフィルムの折り跡を残り難くする観点から、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0022】
(着色剤)
着色剤としては、例えば、青色着色剤、赤色着色剤、黄色着色剤、緑色着色剤、及び紫色着色剤が挙げられる。着色剤は、これらの着色剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでよい。
【0023】
青色着色剤は、例えば、可視光領域(波長:380~750nmの全域)における最大吸収波長が600~750nmに存在する着色剤である。青色着色剤の可視光領域における最大吸収波長での吸光度は、波長470nmでの吸光度の好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。具体的には、青色着色剤は、銅フタロシアニン(銅フタロシアニンブルー)、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)、酸化第一コバルトと酸化アルミニウムとの混合物、インディゴ、又はウルトラマリンであってよい。青色着色剤は、強度、分散性及び耐溶剤性をより向上させる観点から、好ましくは青色顔料である。
【0024】
赤色着色剤は、例えば、可視光領域(波長:380~750nmの全域)における最大吸収波長が500~599nmに存在する着色剤である。視認性に優れる観点から、赤色着色剤の可視光領域における最大吸収波長での吸光度は、波長650nmでの吸光度の好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。具体的には、赤色着色剤は、キナクリドンレッド、キナクリドンスカーレット、ジメチルキナクリドン、4-ニトロアニリンと2-ナフトールとの混合物、2-ニトロ-4-トルイジンと2-ナフトールとの混合物、2-ニトロ-p-トルイジンと3-オキシ-3’-ニトロナフタニリドとの混合物、o-アニシジンと2-ナフトールとの混合物、2,4,5-トリクロロアニリンと3-オキシ-2-ナフト-o-トルイダイドとの混合物、4-クロロ-o-トルイジンと4’-クロロ-3-ヒドロキシ-2-ナフト-o-トルイダイドとの混合物、2,5-ジクロロアニリンと3-オキシ-2-ナフト-p-トルイダイドとの混合物、2,5-ジクロロアニリンと3-オキシ-2-ナフト-o-アニシダイドとの混合物、N,N’-ジエチル-4-メトキシメタニルアミドと5’-クロロ-3-ヒドロキシ-2’,4’-ジメトキシ-2-ナフトアニリドとの混合物、4-ニトロ-o-アニシジンと3-オキシ-N-1-ナフチル-2-ナフトアミドとの混合物、1-ナフチルアミンと1-ナフトール-5-スルホン酸(カルシウム塩)との混合物、2-アミノ-ナフタレン-1-スルホン酸と2-ナフトール(カルシウム塩)との混合物、6-アミノ-m-トルエンスルホン酸と3-オキシ-2-ナフトエ酸(カルシウム塩)との混合物、2-アミノ-5-クロロ-p-トルエンスルホン酸と3-オキシ-2-ナフトエ酸(カルシウム塩)との混合物、6-アミノ-4-クロロ-m-トルエンスルホン酸と3-オキシ-2-ナフトエ酸(カルシウム塩)との混合物、2-アミノナフタレン-1-スルホン酸と3-オキシ-2-ナフトエ酸(カルシウム塩)との混合物、3,3’-ジクロロベンジジンと3-カルボキシ-1-フェニル-5-ピラゾロンとの混合物、o-ジアニシジンと3-メチル-1-p-トリル-5-ピラゾロンとの混合物、1,2’-ジオキシアントラキノン(カルシウムレーキ、鉄レーキ、アルミニウムレーキ)、4,4’-ジメチル-6,6’-ジクロロ-2,2’-ビスチオナフテンインディゴ、4,4’-ジメチル-6,5’,7’-トリクロロ-2,2’-ビスチオナフテンインディゴ、ナフチオン酸とR酸(アルミニウム塩)との混合物、エリスロシン(アルミニウム塩)等であってよい。赤色着色剤は、強度、分散性及び耐溶剤性をより向上させる観点から、好ましくは赤色顔料である。
【0025】
黄色着色剤は、例えば、可視光領域(波長:380~750nmの全域)における最大吸収波長が380~499nmに存在する着色剤である。視認性に優れる観点から、黄色着色剤の可視光領域における最大吸収波長での吸光度は、波長600nmでの吸光度の好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。具体的には、黄色着色剤は、o-ニトロアニリンとアセトアセトアニリドとの混合物、p-ニトロアニリンとアセトアセトアニリドとの混合物、4-クロロ-2-ニトロアニリンとアセトアセトアニリドとの混合物、o-ニトロ-p-トルイジンとアセトアセトアニリドとの混合物、p-クロロ-o-ニトロアニリンとo-クロロ-アセトアセトアニリドとの混合物、4-クロロ-2-ニトロアニリンとアセトアセト-m-キシリジドとの混合物、スルファニル酸と3-カルボキシ-1-(p-スルフォフェニル)-5-ピラゾロンとの混合物、スルファニル酸と3-カルボキシ-1-(p-スルフォフェニル)-5-ピラゾロン(アルミニウムレーキ)との混合物、3,3’-ジクロロベンジジンとアセトアセト-o-トルイジドとの混合物、3,3’-ジクロロベンジジンとアセトアセト-p-トルイジドとの混合物、3,3’-ジクロロベンジジンとアセトアセト-m-キシリジドとの混合物、1-アミノ-5-ベンザミド-アントラキノンとオキシラルクロリドとの混合物、N,N-ビス-(1-アントラキノリル)-イソフタリックアミド、3,3’-ジクロロベンジジンと4-クロロ-2,5-ジメトキシ-アセトアセトアニリドとの混合物、スルファニル酸と2-ナフトール-6-スルホン酸ナトリウムとの混合物、3,3’-ジクロロベンジジンと3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロンとの混合物、o-ジアニシジンとアセトアセトアニリドとの混合物、4,11-ビス(ベンゾイルアミノ)-16H-ジナフト[2,3-a:2’,3’-i]カルバゾール-5,10,15,17-テトラオン、ナフタレンテトラ-カルボン酸と1,2-ジアミノベンゼンとの混合物等であってよい。黄色着色剤は、強度、分散性、及び耐溶剤性をより向上させる観点から、好ましくは黄色顔料である。
【0026】
緑色着色剤は、α-ニトロソ-β-ナフトール鉄錯体、4-ニトロベンゼンアゾ-2-ナフトール銅錯体、オクタクロロ銅フタロシアニン、ポリクロロ銅フタロシアニン等であってよい。
【0027】
紫色着色剤は、6,15-ジブロモ-イソビオランスロン、5,5’-ジクロロ-4,4,7,7’-テトラメチル-2,2’-ビス(チオナフテンインディゴ)、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンバイオレット等であってよい。
【0028】
着色剤の含有量は、フィルムの全量基準で、0.5質量%以上、0.6質量%以上、又は0.7質量%以上であってよく、2.0質量%以下、1.8質量%以下、又は1.5質量%以下であってよい。
【0029】
(その他の成分)
本実施形態に係るクラフト用フィルムは、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、可塑剤、安定剤(熱安定剤又は光安定剤)、滑剤、充填剤、プレートアウト防止剤、抗酸化剤、離型剤、粘度低下剤、界面活性剤、蛍光剤、表面処理剤、架橋剤、加工助剤、粘着剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。クラフト用フィルムがその他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量(合計の含有量)は、フィルム全量基準で、例えば、1質量%以上であってよく、30質量%以下であってよい。
【0030】
クラフト用フィルムは、好ましくは可塑剤を更に含有する。可塑剤は、例えば、ポリエステル系可塑剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸エステル、エポキシ化植物油等であってよい。
【0031】
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤が挙げられる。脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤は、例えば、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の多価アルコールとのポリエステル樹脂であってよい。脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤としては、具体的には、ポリ(エチレングリコール/アジピン酸)エステル、ポリ(1,3-ブタンジオール/アジピン酸)エステル、ポリ(1,4-ブタンジオール/アジピン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/セバシン酸)エステル等が挙げられる。これらのポリエステル系可塑剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0032】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸に由来するエステル構造を有している。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミスチリン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、及びリグノセリン酸が挙げられる。不飽和脂肪酸としては、例えば、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、バウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、及びネルボン酸が挙げられる。これらの飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸は、その一部が水酸基等で置換されていてもよい。脂肪酸の一部が水酸基で置換された化合物としては、例えば、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、イワシ酸、及びエレオステアリン酸が挙げられる。
【0033】
アジピン酸エステルは、例えば、アジピン酸と、炭素数6~10の直鎖又は分岐の脂肪族アルコールとのジエステル(アジピン酸ジエステル)であってよい。アジピン酸エステルは、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等であってよい。
【0034】
エポキシ化植物油は、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化コーン油、エポキシ化菜種油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化パーム油、エポキシ化綿実油、エポキシ化オリーブ油等であってよい。
【0035】
可塑剤の含有量は、フィルムの折り曲げ性と折り跡の低減を両立する観点から、フィルム全量基準で、例えば、8質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0036】
クラフト用フィルムは、好ましくは安定剤を更に含有する。安定剤は、例えば、Ca/Zn系安定剤であってよい。Ca/Zn安定剤は、カルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩との混合物である。当該脂肪酸としては、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、及びリシノール酸が挙げられる。
【0037】
安定剤の含有量は、フィルム全量基準で、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよい。
【0038】
本実施形態に係るクラフト用フィルムは、20℃、65%RH環境下で四つ折りにしたフィルムの折畳み保持角度が15度以下である。折畳み保持角度は、以下のような手順で測定することができる。まず、20℃、65%RH環境下で10cm角のフィルムを四つ折りにし、0.5kgの荷重を1秒間かける。次いで、四つ折りフィルムの開いた角度を1分後に測定する。四つ折りフィルムの折畳み保持角度は、折り曲げ性をより優れること、好ましくは10度以下、より好ましくは8度以下、更に好ましくは5度以下であってよく、特に好ましくは0度(四つ折りフィルムが、完全に折り畳まれた状態の角度)である。
【0039】
クラフト用フィルムは、2枚以上を積層して積層フィルムとして用いてもよい。クラフト用フィルムを積層することで、色合いを調節することができる。本実施形態に係るクラフト用フィルムは、自己粘着性を有していることから、接着剤等を使用しなくとも複数枚重ねることができる。積層フィルムは、同じ色のクラフト用フィルムを重ねたものであってもよく、異なる色のクラフト用フィルムを重ねたものであってもよい。
【0040】
クラフト用フィルムの全光線透過率は、積層フィルムの色合いを調節し易いことから、50~95%、60~92%、又は65~90%であってもよい。全光線透過率は、JIS K7361-1に準じて入射光量及び全透過光量を測定し、全光線透過率=(全透過光量)/(入射光量)×100として算出できる。
【0041】
クラフト用フィルムのヘーズ(Haze)は、0.5~10.0%、0.8~9.0%、又は1.0~8.5%であってもよい。ヘーズは、フィルムの濁度を表わす値(%)であり、JIS K7136に準じてフィルムの全光線透過光と散乱光を測定し、ヘーズ=(散乱光量)/(全透過光量)×100として算出できる。
【0042】
クラフト用フィルムの厚さは、強度の観点から、好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは6μm以上であってよく、取り扱い性の観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下であってよい。
【0043】
クラフト用フィルムは、例えば、熱可塑性樹脂、着色剤、及び必要に応じてその他の成分を、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機により混合し、更に必要に応じてミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダ等の混練機により混練することで組成物を得た後、例えば押出成形することにより製造される。具体的には、該組成物を押出機のホッパーに供給しインフレーション法、Tダイ法等で目的とするクラフト用フィルムが得られる。
【0044】
このようにして得られたフィルムに対して、熱収縮率、自然収縮率等の軽減;幅収縮の発生の抑制;などの目的に応じて、加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行ってもよく、防曇性、帯電防止性、粘着性等を向上させる目的で、コロナ処理;熟成処理;印刷、コーティング等の表面処理;表面加工;などを行ってもよい。
【0045】
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、ロールの形で供給されうるものをいい(必要であれば、日本工業規格JIS K6900を参照できる)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本実施形態において文言上両者を区別する必要がないので、本明細書においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。また、「フィルム」は、上記の定義のうちでも特にクラフト用フィルムを含む概念である。
【実施例
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
(1)クラフト用フィルムの作製
(実施例1)
ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ株式会社製、「TH-1000」、平均重合度:1000)74質量部、キナクリドンレッド(大日精化工業株式会社製、「NX-032レッド」、最大吸収波長:510nm)1質量部、ポリエステル系可塑剤(株式会社ADEKA製、「PN-150」、数平均分子量:1000、アジピン酸系ポリエステル)7質量部、ジグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製、「O-71-DE」、ジグリセリンオレエート)2質量部、アジピン酸ジオクチル(新日本理化株式会社製、「サンソサイザーDOA」)6質量部、エポキシ化大豆油(三和合成化学株式会社製、「ケミサイザーSE-100」)9質量部、及びCa/Zn系安定剤(株式会社ADEKA製、「SC-308E」)1質量部をスーパーミキサーに投入した後、攪拌しながら材料温度を常温から130℃まで昇温し、混合した後、70℃まで冷却した時点で取り出して樹脂組成物を調製した。樹脂組成物を、Tダイ(幅350mm、ギャップ0.4mm)を装着した直径40mmの単軸押出機(L/D=20)にて、樹脂温度200℃で押出し、厚み8μmのクラフト用フィルムを作製した。
【0048】
(実施例2)
キナクリドンレッドを、3,3’-ジクロロベンジジンと4-クロロ-2,5-ジメトキシ-アセトアセトアニリドとの混合物(大日精化工業株式会社製、「NX-012イエロー」、最大吸収波長:420nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、クラフト用フィルムを作製した。
【0049】
(実施例3)
キナクリドンレッドを、銅フタロシアニン(大日精化工業株式会社製、「NX-053ブルー」、最大吸収波長:620nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、クラフト用フィルムを作製した。
【0050】
(比較例1)
市販のポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、「オリエステルおりがみ」)をクラフト用フィルムとして用いた。
【0051】
(2)評価
各クラフト用フィルムについて、全光線透過率、ヘーズ、折り曲げ性、及び折り跡残り性を以下の手順で測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(全光線透過率及びヘーズ)
ガラス板上に、気泡を抜きながらクラフト用フィルムを積層した後、該クラフト用フィルムの上に気泡を抜きながらクラフト用フィルムを更に積層して、クラフト用フィルムが2枚積層された積層フィルムと、3枚積層された積層フィルムを作製した。ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH 5000)を用いて、クラフト用フィルム及び積層フィルムの全光線透過率及びヘーズを測定した。
【0053】
(折り曲げ性)
クラフト用フィルムを25℃で24時間放置した後、20℃、65%RHの環境で、10cm角に裁断したフィルムを四つ折りに折り畳んだ。四つ折りフィルムに、0.5kgの重りを載せて荷重を1秒間かけた。荷重をかけた後、1分間放置し、四つ折りフィルムが開いた角度を測定して折畳み保持角度を求めた。
【0054】
(折り跡残り性)
折り曲げ性を評価した後の四つ折りフィルムを開き、フィルムに折り跡が残るかどうかを下記の基準に従い目視で確認した。
A:折り跡がフィルムに残らない。
B:折り跡がフィルムに白く残る。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1~3のクラフト用フィルムは、折り曲げ性に優れており、折り跡が残らないため、成形後に形を整えることが容易である。