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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】画像処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240828BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240828BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G06F3/12 373
G06F3/12 303
H04N1/00 912
B41J29/38 801
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020217370
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102560
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 蘭丸
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-149382(JP,A)
【文献】特開2006-1254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
H04N 1/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
ジョブを実行する実行手段と、
前記実行手段によりジョブの実行を開始する場合、該ジョブに関するジョブ情報を第1不揮発性メモリに保存する第1保存手段と、
前記実行手段によるジョブの実行経過とともに変化する消耗品使用量を、前記第1不揮発性メモリと異なる第2不揮発性メモリに保存する第2保存手段と、
前記実行手段によりジョブの実行が正常に終了した場合、前記第1不揮発性メモリに保存された前記ジョブ情報と、前記第2不揮発性メモリに保存された前記消耗品使用量とを用いてジョブログを生成する第1生成手段と、
前記実行手段によりジョブの実行が前記画像処理装置の電源断により正常に終了しなかった場合、前記画像処理装置の電源断からの復帰の後、前記第1不揮発性メモリに保存された前記ジョブ情報と、前記第2不揮発性メモリに保存された前記消耗品使用量とを用いて、前記電源断が発生するまでのジョブの実行結果を含むジョブログを生成する第2生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1生成手段により生成されたジョブログを前記第1不揮発性メモリに保存する第3保存手段、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記実行手段によりジョブの実行が正常に終了した場合、前記第1不揮発性メモリから前記第1保存手段により保存された前記ジョブ情報を削除し、前記第2不揮発性メモリから前記第2保存手段により保存された前記消耗品使用量を削除する第1削除手段、をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理装置の電源断からの復帰の際、前記第1不揮発性メモリに保存された情報に基づいて、前記第2生成手段によるジョブログの生成を行うか否かを判定する判定手段、をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記第1保存手段により保存された前記ジョブ情報が前記第1不揮発性メモリに存在する場合、前記第2生成手段によるジョブログの生成を行うと判定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1生成手段により生成されたジョブログを前記第1不揮発性メモリに保存する第3保存手段、をさらに備え、
前記判定手段は、前記第3保存手段により保存された前記ジョブログが前記第1不揮発性メモリに存在しない場合、前記第2生成手段によるジョブログの生成を行うと判定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記第3保存手段により保存された前記ジョブログが前記第1不揮発性メモリに存在する場合、前記第2生成手段によるジョブログの生成を行わないと判定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第3保存手段により保存された前記ジョブログが前記第1不揮発性メモリに存在するか否かは、前記ジョブ情報の識別情報に基づいて判定されることを特徴とする請求項6又は7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記判定手段により前記第2生成手段によるジョブログの生成が行われると判定されて、前記第2生成手段によるジョブログの生成が行われた場合、前記第1不揮発性メモリから前記第1保存手段により保存された前記ジョブ情報を削除し、前記第2不揮発性メモリから前記第2保存手段により保存された前記消耗品使用量を削除する第2削除手段、をさらに備えることを特徴とする請求項4乃至8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第1不揮発性メモリと前記第2不揮発性メモリは、互いに異なるハードウェアであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第2不揮発性メモリへの書込み速度は、第1不揮発性メモリへの書込み速度よりも速いことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記画像処理装置の電源断からの復帰とは、前記画像処理装置の再起動であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記消耗品使用量は、印刷枚数を含むことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
画像処理装置において実行される方法であって、
ジョブを実行する実行工程と、
前記実行工程においてジョブの実行を開始する場合、該ジョブに関するジョブ情報を第1不揮発性メモリに保存する第1保存工程と、
前記実行工程におけるジョブの実行経過とともに変化する消耗品使用量を、前記第1不揮発性メモリと異なる第2不揮発性メモリに保存する第2保存工程と、
前記実行工程においてジョブの実行が正常に終了した場合、前記第1不揮発性メモリに保存された前記ジョブ情報と、前記第2不揮発性メモリに保存された前記消耗品使用量とを用いてジョブログを生成する第1生成工程と、
前記実行工程においてジョブの実行が前記画像処理装置の電源断により正常に終了しなかった場合、前記画像処理装置の電源断からの復帰の後、前記第1不揮発性メモリに保存された前記ジョブ情報と、前記第2不揮発性メモリに保存された前記消耗品使用量とを用いて、前記電源断が発生するまでのジョブの実行結果を含むジョブログを生成する第2生成工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョブを実行する画像処理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像データの印刷ジョブを実行するインクジェットプリンタや複写機等の画像処理装置には、各ジョブの実行履歴情報(ジョブログ)を不揮発性メモリに保存する機能がある。ジョブログには、ジョブの実行ユーザや開始時間、ジョブの実行結果といった様々な項目が含まれる。各ジョブで印刷した紙の枚数は、例えば消耗品定額サービスに用いられる場合があり、正確な情報が求められる。特許文献1には、ジョブログの各項目に変化があるたびに不揮発性メモリの内容を更新する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-149382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ジョブログのいずれかの項目に変化があれば、不揮発性メモリの内容を更新する。従って、ジョブの実行経過とともに変化する消耗品の情報などに変化があれば、不揮発性メモリのジョブログ単位での更新が行われる。その場合、不揮発性メモリへのジョブログの書き込み中に電源断エラー等が発生すると、ジョブログに含まれる消耗品の情報を保存し損ねてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、エラーが発生する場合においても、ジョブの実行結果に基づいて適切なジョブログを生成する画像処理装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像処理装置は、画像処理装置であって、ジョブを実行する実行手段と、前記実行手段によりジョブの実行を開始する場合、該ジョブに関するジョブ情報を第1不揮発性メモリに保存する第1保存手段と、前記実行手段によるジョブの実行経過とともに変化する消耗品使用量を、前記第1不揮発性メモリと異なる第2不揮発性メモリに保存する第2保存手段と、前記実行手段によりジョブの実行が正常に終了した場合、前記第1不揮発性メモリに保存された前記ジョブ情報と、前記第2不揮発性メモリに保存された前記消耗品使用量とを用いてジョブログを生成する第1生成手段と、前記実行手段によりジョブの実行が前記画像処理装置の電源断により正常に終了しなかった場合、前記画像処理装置の電源断からの復帰の後、前記第1不揮発性メモリに保存された前記ジョブ情報と、前記第2不揮発性メモリに保存された前記消耗品使用量とを用いて、前記電源断が発生するまでのジョブの実行結果を含むジョブログを生成する第2生成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エラーが発生する場合においても、ジョブの実行結果に基づいて適切なジョブログを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】ジョブログ保存処理を示すフローチャートである。
図3】開始時ジョブログを示す図である。
図4】終了時ジョブログを示す図である。
図5】ジョブログ復元処理を示すフローチャートである。
図6】復元されたジョブログを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、本実施形態における画像処理装置100の構成を示すブロック図である。画像処理装置100は、CPU101、プログラムメモリ102、データメモリ103、通信制御部105、ジョブ制御部106、印刷部107、ジョブログ管理部108、第1不揮発性メモリ109、第2不揮発性メモリ112、を有する。
【0011】
CPU101は、システム制御部であり、画像処理装置100を統括的に制御する。プログラムメモリ102は、CPU101が実行する制御プログラムや、組み込みオペレーティングシステム(OS)プログラム等を記憶する。データメモリ103は、プログラム制御変数等を記憶し、さらに、画像データを保持する画像メモリ104を含む。データメモリ103には、ジョブ制御部106の処理時に用いられる各種ワークバッファ領域が設けられている。本実施形態における画像処理装置100の動作は、例えば、CPU101がプログラムメモリ102に記憶されているプログラムをデータメモリ103に読み出して実行することにより実現される。通信制御部105は、通信回線130を介して外部とのデータ送受信を制御する。通信回線130は、有線通信回線、無線通信回線、並びにそれらが混在した通信回線を含む。また、通信制御部105は、ソフトウェアもしくはハードウェアとして構成されたアクセスポイントとして動作しても良い。画像処理装置100は、通信制御部130を介して、外部のPC、携帯端末、サーバなどから画像データや印刷ジョブを受信する。
【0012】
ジョブ制御部106は、外部から受け付けたジョブの管理・実行を行う。例えば、ジョブ制御部106は、スプーラとして動作し、留め置き印刷等の機能により留め置きされた複数の印刷ジョブを順次実行していく。ジョブの実行時には、ジョブ制御部106は、画像メモリ104から印刷用の画像データを取得し、印刷部107により印刷処理を実行するよう制御する。また、ジョブを実行する際、ジョブ制御部106は、ジョブに関する情報をジョブログ管理部108に送信する。ジョブに関する情報とは、例えば、印刷対象のドキュメント名、ユーザ名、印刷対象の用紙情報、を含む。ジョブの実行後、ジョブ制御部106は、ジョブログ管理部108にジョブの実行情報を送信する。ジョブの実行情報とは、例えば、成功/失敗等を示すジョブの実行結果、印刷が行われた印刷枚数、を含む。
【0013】
印刷部107は、ジョブ制御部106から印刷命令を受けて印刷処理を行う。印刷部107は、用紙1枚の印刷が完了するたびに、ジョブ制御部106への通知を行う。印刷部107は、種種の記録方式が採用されて良く、例えば、記録ヘッドからのインク滴の吐出により記録媒体への記録を行うインクジェット記録方式が採用されても良い。
【0014】
ジョブログ管理部108は、ジョブ制御部106から受信したジョブに関する情報、ジョブ実行情報に基づいてジョブログを生成し、第1不揮発性メモリ109に保存する。また、ジョブログ管理部108は、ジョブ制御部106から受信したジョブの実行情報を第2不揮発性メモリ112に保存する。本実施形態では、第1不揮発性メモリ109と第2不揮発性メモリ112は、物理的に異なるメモリとして構成される。なお、以下において、ジョブの実行情報の一例として印刷枚数を挙げて説明する。
【0015】
第1不揮発性メモリ109にジョブログが保存されるタイミングは、ジョブの実行開始時と、ジョブ実行終了時もしくは画像処理装置100の電源断からの復帰時である。画像処理装置100の電源断からの復帰時とは、画像処理装置100の再起動を含む。図1に示すように、第1不揮発性メモリ109には、ジョブログを保存するためのジョブログ保存領域110とジョブログ保存領域111とが別々に設けられている。ジョブログ保存領域110は、ジョブ実行開始時にジョブログを保存する際に用いられる。ジョブログ保存領域111は、ジョブの実行終了時にジョブログを保存する際に用いられる。また、ジョブログ保存領域111は、電源断からの復帰時に、復元されたジョブログを保存する際にも用いられる。本実施形態では、ジョブログ管理部108は、印刷ジョブの実行中に電源断エラーが発生した場合、そのエラー発生後の再起動時に、エラー発生までに印刷が完了していた用紙枚数が反映されたジョブログを生成し、復元されたジョブログとして保存する。
【0016】
第2不揮発性メモリ112には、印刷部107で用紙1枚の印刷が完了するたびに、印刷枚数が更新されて保存される。ジョブログ管理部108は、エラー発生後の再起動時に、第2不揮発性メモリ112に保存された印刷枚数を用いて、復元されたジョブログを生成する。上述したように、第2不揮発性メモリ112は、第1不揮発性メモリ109とは物理的に異なるメモリとして構成される。また、本実施形態では、第2不揮発性メモリ112として、データの書込み速度が第1不揮発性メモリ109よりも高速なメモリが用いられ、専ら印刷枚数の保存を目的としたメモリとして構成される。
【0017】
CPU101~データメモリ103、通信制御部105、ジョブ制御部106、ジョブログ管理部108、第1不揮発性メモリ109、第2不揮発性メモリ112は、バス120を介して相互にデータ送受信可能なように接続されている。また、画像処理装置100の構成は、図1に示す構成に限られず、画像処理装置100の実行可能な機能に応じて、図1に示す構成以外の構成を適宜含み得る。
【0018】
次に、画像処理装置100におけるジョブログ管理部108の動作について説明する。例えば、ジョブログの各項目に変化があるたびに不揮発性メモリのジョブログの内容を更新していく構成である場合、一度に不揮発性メモリに書き込むデータのサイズが大きくなり書込み時間が長くなってしまう。書込み時間が長くなると、書込み中に発生した画像処理装置100内のエラーから影響を受ける可能性が高くなる。例えば、画像処理装置100内で電源断エラーが発生すると、印刷枚数などのジョブの実行結果を示す情報を不揮発性メモリに保存し損ねてしまうことが想定される。印刷枚数などのジョブの実行結果を示す情報は、消耗品の注文など各種のサービスで用いられることがあり、保存された情報が正確でなければユーザが予期せぬ不利益を被ってしまう。また、不揮発性メモリへの書込み時間が長くなると、その後の不揮発性メモリへの保存処理が所定のタイミングで行われない可能性がある。
【0019】
また、ジョブの実行終了時に、ジョブログの情報を後続する処理に用いるため、不揮発性メモリに保存していたジョブログを別の所定領域に移動させる場合がある。その場合、所定領域にジョブログをコピーした後に、不揮発性メモリに保存していたジョブログを削除する前に電源断エラーが発生すると、次回の電源断エラーからの回復時に再度、所定領域へジョブログを移動させる処理が行われ、結果、ジョブログが重複して保存されてしまう。即ち、ジョブの実行完了までに不揮発性メモリに保存された情報が正確であっても、上記のタイミングで電源断エラーが発生すると、正確でない情報がサービス等で用いられてしまう可能性がある。
【0020】
本実施形態では、印刷枚数等、ジョブの実行経過に伴って変化する情報を随時、第2不揮発性メモリ112に保存していく。上述したように、第2不揮発性メモリ112は、第1不揮発性メモリ109とは別々に構成され、書込み速度が第1不揮発性メモリ109よりも高速である。また、印刷枚数等、ジョブの実行経過に伴って変化していく情報を随時保存していくため、第2不揮発性メモリ112に一度に書き込むビットサイズは極めて小さい。そのため、印刷枚数の保存について、電源断エラーの発生に対するロバスト性を高くすることができる。
【0021】
図2は、本実施形態における、印刷ジョブの実行により画像データを印刷する際のジョブログ保存処理を示すフローチャートである。図2の処理は、例えば、CPU101がプログラムメモリ102に記憶されているプログラムをデータメモリ103に読み出して実行することにより実現される。また、図2の処理は、印刷ジョブの実行が開始された場合に開始される。印刷ジョブの実行は、画像処理装置100に投入された印刷ジョブの実行でも良いし、画像処理装置100に留め置きされた印刷ジョブの実行でも良い。また、セキュアプリントなどの機能により実行された印刷ジョブの実行でも良い。
【0022】
印刷ジョブが開始されると、ジョブログ管理部108は、ジョブ制御部106から、ジョブの実行開始時に確定されるドキュメント名や用紙サイズ等のジョブに関する情報(ジョブ情報)を受信して取得する(S201)。ジョブログ管理部108は、S201で受信したジョブ情報にジョブログ管理用のレコード番号を付与して開始時ジョブログを生成し(S202)、第1不揮発性メモリ109のジョブログ保存領域110に保存する(S203)。
【0023】
図3は、開始時ジョブログの一例を示す図である。図3には、開始時ジョブログの項目として、レコード番号、ドキュメント名、ユーザ名、ジョブ開始時刻、ジョブ実行結果、用紙種類、用紙サイズ、印刷枚数が示されている。図3に示す項目は一例であって、他の項目が含まれていても良い。図3には、ドキュメント名、ユーザ名、ジョブ開始時刻、用紙の種類、用紙サイズに対応する情報として、「報告書.doc」、「Suzuki」、「2020/10/22 11:00」、「普通紙」、「A4」が示されている。それらの情報は、S201でジョブ制御部106から受信したジョブ情報である。また、レコード番号には、ジョブログ管理部108により「0001」が付与されている。また、ジョブ実行結果、印刷枚数の項目は、ジョブの実行開始時においては不明な情報であるので、空欄として示されている。
【0024】
なお、ジョブログ保存領域110、111はそれぞれ、複数のジョブログを記憶可能であり、識別情報であるレコード番号により識別可能である。例えば、ジョブログ保存領域110には、図3に示す開始時ジョブログの他、ドキュメント名、ユーザ名、ジョブ開始時刻、用紙の種類、用紙サイズが、「提案書ひな型.xlsx」、「Honda」、「2020/10/26 13:00」、「普通紙」、「A3」のジョブ情報を含む開始時ジョブログが記憶され、レコード番号「0002」により識別可能である。
【0025】
画像データの印刷が開始され、印刷が1枚完了するごとに、印刷部107からジョブ制御部106に通知が行われ、さらに、ジョブログ管理部108は、ジョブ制御部106から印刷枚数の更新通知を受信する。そして、ジョブログ管理部108は、印刷枚数の更新通知の受信ごとに印刷枚数の累計値を更新し、第2不揮発性メモリ112に保存する(S205)。印刷枚数の累計値の更新処理は、本印刷ジョブの印刷が全ページ完了するまで、あるいは途中でキャンセルされるまで繰り返される(S204~S206)。
【0026】
このように、本実施形態では、印刷枚数がジョブの実行経過に伴って取得され、第2不揮発性メモリ112内の情報が更新されていく。そのような構成により、第2不揮発性メモリ112への一回の書込み時間が短くてすむ。また、第2不揮発性メモリ112は、第1不揮発性メモリ109とは別に構成されているので、第2不揮発性メモリ112への書込みが失敗したとしても、第1不揮発性メモリ109のジョブログ保存領域110に保存されている開始時ジョブログの情報へ影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0027】
印刷ジョブにおける最後のページの印刷が完了すると、ジョブログ管理部108は、ジョブ制御部106からジョブ終了時に確定する情報を受信して取得する。ジョブ終了時に確定する情報とは、例えば、図3のジョブ実行結果である。ジョブログ管理部108は、受信した情報を、ジョブログ保存領域110に保存されている開始時ジョブログと組み合わせる。また、ジョブログ管理部108は、ジョブ終了時の印刷枚数の累計を算出して、その算出結果を開始時ジョブログと組み合わせる(S208)。そして、ジョブログ管理部108は、S208で組み合わされて生成されたジョブログを終了時ジョブログとしてジョブログ保存領域111に保存する(S209)。
【0028】
図4は、終了時ジョブログの一例を示す図である。終了時ジョブログは、開始時ジョブログに、ジョブ終了時に確定する印刷枚数とが組み合わせられて生成される。図4の終了時ジョブログは、図3に示す開始時ジョブログに、ジョブ実行結果「正常終了」と、印刷枚数「6」とが組み合わせられて生成される。ジョブログ管理部108は、終了時ジョブログを第2不揮発性メモリ112のジョブログ保存領域111に保存した後、ジョブログ保存領域110に保存されていた開始時ジョブログと、第2不揮発性メモリ112に保存されている印刷枚数の情報を削除する(S210)。
【0029】
即ち、電源断エラーが発生することなくジョブの実行が正常に完了した場合には、図2の処理の終了後、ジョブログ保存領域111は、終了時ジョブログが保存された状態であり、ジョブログ保存領域110と第2不揮発性メモリ112は、削除された状態である。また、例えば、電源断エラーが発生してジョブの実行が失敗した場合には、図2の処理はS205の途中で終了することになる。その場合、ジョブログ保存領域110は、開始時ジョブログが保存された状態であり、ジョブログ保存領域111は、終了時ジョブログがまだ保存されていない状態であり、第2不揮発性メモリ112は、その時点までの印刷枚数が保存されている状態である。また、ジョブの実行が正常に完了し、図2のS210の処理の前に電源断エラーが発生した場合、ジョブログ保存領域110は、開始時ジョブログが保存された状態であり、ジョブログ保存領域111は、終了時ジョブログが保存された状態であり、第2不揮発性メモリ112は、印刷完了後の印刷枚数が保存されている状態である。
【0030】
図5は、電源断エラーが発生し、画像処理装置100の復帰後のジョブログ復元処理を示すフローチャートである。図5の処理は、例えば、CPU101がプログラムメモリ102に記憶されているプログラムをデータメモリ103に読み出して実行することにより実現される。また、図5の処理は、電源断エラーの発生後、次に電源が投入されたときに実行される。
【0031】
まず、ジョブログ管理部108は、ジョブログ保存領域110を参照し、保存された情報を確認する(S501)。そして、ジョブログ管理部108は、ジョブログ保存領域110に開始時ジョブログが存在するか否かを判定する(S502)。ジョブログ保存領域110に開始時ジョブログが存在しないと判定された場合とは、例えば、電源断エラーが発生せずに、ジョブの実行が正常に完了して図2の処理が終了した場合である。その場合、ジョブログ管理部108は、後述するジョブログの復元処理を実行せずに、図5の処理を終了する。なお、電源断エラーが発生しなかった場合だけでなく、ジョブの実行が正常に完了して図2の処理が終了した後に電源断エラーが発生した場合にも、S502では、ジョブログ保存領域110に開始時ジョブログが存在しないと判定され、図5の処理を終了する。
【0032】
一方、S502でジョブログ保存領域110に開始時ジョブログが存在すると判定された場合、ジョブログ管理部108は、ジョブログ保存領域110から開始時ジョブログを取得する(S503)。ジョブログ管理部108は、ジョブログ保存領域111を参照し、保存された情報を確認する(S504)。そして、ジョブログ管理部108は、ジョブログ保存領域111に、開始時ジョブログと同一のレコード番号の終了時ジョブログが存在するか否かを判定する(S505)。同一のレコード番号の終了時ジョブログが存在すると判定された場合とは、例えば、S209での終了時ジョブログの保存処理は完了していたものの、S210での削除処理の前に電源断エラーが発生した場合である。そのため、ジョブログ管理部108は、電源断エラーの発生タイミングを、S209の後、且つ、S210の前と特定する。その場合、ジョブログ管理部108は、ジョブログの復元処理を実行せず、ジョブログ保存領域110に保存されている開始時ジョブログと、第2不揮発性メモリ112に保存されている印刷枚数を削除し(S509)、図5の処理を終了する。図5の終了後、ジョブログ保存領域111に保存されている終了時ジョブログは、他のメモリ領域に移動され、消耗品発注サービスなど、各種サービスの実行に用いられる。
【0033】
一方、S505でジョブログ保存領域111に開始時ジョブログと同一のレコード番号の終了時ジョブログが存在しないと判定された場合とは、例えば、S205の途中で電源断エラーが発生した場合である。そのため、ジョブログ管理部108は、電源断エラーの発生タイミングを、S209の前と特定する。そのような場合には、終了時ジョブログが保存されていないので、電源断エラーが発生するまでに実行された印刷枚数を取得してジョブログを復元する必要がある。
【0034】
復元処理として、ジョブログ管理部108は、第2不揮発性メモリ112から印刷枚数を取得する(S506)。そして、ジョブログ管理部108は、ジョブログ保存領域110に保存されている開始時ジョブログに対して、S506で取得した印刷枚数を組み合わせる(S507)。ジョブログ管理部108は、S507により組み合わされて生成された(復元された)ジョブログを、終了時ジョブログとしてジョブログ保存領域111に保存する(S508)。S508で保存されたジョブログは、以降、終了時ジョブログとして扱われる。
【0035】
図6は、復元されたジョブログの一例を示す図である。図6は、印刷枚数が3枚まで実行されたタイミングで電源断エラーが発生してジョブが異常終了した場合に、復元されたジョブログを示している。図6に示すように、復元されたジョブログは、図3の開始時ジョブログに対して、ジョブ実行結果「異常終了」と印刷枚数「3」とが組み合わせられて生成される。
【0036】
復元されたジョブログが終了時ジョブログとしてジョブログ保存領域111に保存された後、ジョブログ管理部108は、ジョブログ保存領域110に保存されている開始時ジョブログと、第2不揮発性メモリ112に保存されている印刷枚数を削除し(S509)、図5の処理を終了する。図5の終了後、ジョブログ保存領域111に保存されている終了時ジョブログ(復元されたジョブログに対応)は、他のメモリ領域に移動され、消耗品発注サービスなど、各種サービスの実行に用いられる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、ジョブの実行経過に伴い、印刷枚数を随時、ジョブログを保存する第1不揮発性メモリ109とは別に構成された第2不揮発性メモリ112に保存していく。言い換えれば、ジョブログの復元のための情報を随時、第2不揮発性メモリ112に保存していくといえる。本実施形態では、ジョブが正常に終了し、図2の処理が終了した場合には、ジョブログ保存領域110及び第2不揮発性メモリ112に保存された情報を削除している。そのような構成により、開始時ジョブログの保存状況と終了時ジョブログの保存状況に基づいて、電源断エラーの発生タイミングを特定することを可能としている。例えば、開始時ジョブログが保存されていなければ(S502:NO)、電源断エラーは発生しなかった(もしくは図2の終了後に発生)と特定することができる。また、例えば、開始時ジョブログが保存されており、終了時ジョブログも保存されている場合には、電源断エラーの発生タイミングは、ジョブが正常終了した後で且つS210の処理前と特定することができる。また、例えば、開始時ジョブログが保存されているものの、終了時ジョブログが保存されていない場合には、電源断エラーの発生タイミングは、ジョブの実行途中であると特定することができる。
【0038】
そして、本実施形態では、特定された電源断エラーの発生タイミングに応じて、ジョブログの復元処理を行う。例えば、電源断エラーの発生タイミングがジョブの実行途中であると特定した場合、第2不揮発性メモリ112に保存された印刷枚数を用いてジョブログを復元する。一方、例えば、電源断エラーの発生タイミングがジョブが正常終了した後で且つS210の処理前であると特定した場合、ジョブログの復元は行わない。そのような構成により、電源断エラーの発生までの印刷枚数が反映されたジョブログを復元できるとともに、ジョブログを重複して復元してしまうことを防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態では、第1不揮発性メモリ109と第2不揮発性メモリ112とが互いに別々に構成されたメモリであるとして説明した。しかしながら、物理的に一つの不揮発性メモリ内に、ジョブログ保存領域110、ジョブログ保存領域111、ジョブログの復元のための情報の保存領域、が互いに独立に構成されるようにしても良い。
【0040】
また、本実施形態では、ジョブログの復元のための情報として用いられるジョブの実行情報の一例として印刷枚数を説明した。しかしながら、ジョブの実行経過に伴って変化し得る消耗品使用量であれば、他の情報が用いられても良い。例えば、インク滴に関する情報であっても良い。その場合、例えば、ドットカウント数が第2不揮発性メモリ112に保存されるようにしても良い。
【0041】
また、本実施形態では、画像処理装置100で発生するエラーとして電源断エラーを説明した。しかしながら、画像処理装置100の再起動を要するようなエラーであれば、他のエラーであっても良い。例えば、再起動によりプログラムの再読み込みを必要とするようなシステムエラーの発生の場合に、本実施形態の動作を適用しても良い。
【0042】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0043】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0044】
100 画像処理装置: 101 CPU: 102 プログラムメモリ: 103 データメモリ: 108 ジョブログ管理部: 109 第1不揮発性メモリ: 110、111 保存領域: 112 第2不揮発性メモリ
図1
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図6