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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20230101AFI20240828BHJP
   C02F 3/28 20230101ALI20240828BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20240828BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20240828BHJP
【FI】
C02F1/58 Q
C02F3/28 A ZAB
C02F11/04 Z
C02F1/461 101A
C02F1/461 101C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020219677
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104443
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505733(JP,A)
【文献】特開2007-117995(JP,A)
【文献】特開2019-010607(JP,A)
【文献】特開2009-039705(JP,A)
【文献】特開平10-085755(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-11/20
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する反応部と、
前記反応部に海水を供給する海水供給手段と、
を備え
前記海水供給手段は、海水の供給量を調整する調整機能を有することを特徴とする、処理装置。
【請求項2】
前記反応部は、上流側への逆流防止機能を備えることを特徴とする、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
被処理物に対する嫌気処理を行う処理槽と、を備え、
前記処理槽で、前記被処理物が嫌気処理された後の処理水を、前記反応部に導入することを特徴とする、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する電極反応を行う反応工程と、
前記反応工程に海水を供給する海水供給工程と、を備え、
前記海水供給工程は、海水の供給量を調整する調整機能を有することを特徴とする、処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の嫌気処理に係る処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理物の処理に際しては、様々な処理方法が知られている。このような処理は、被処理物に含まれる成分や、排出される処理水の量などのように、被処理物自体に係る物性上の特徴や、処理効率とコストのバランスなどのように、処理を実施するための設備や運用に係る特徴などを考慮し、処理方法が選択されている。
また、処理においては、異なる処理方法を複数組み合わせることで、処理の効率化を図ることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機物を含む被処理水の処理として、被処理水中に一対の電極を浸漬し、電気化学処理を行った後、被処理水を生物処理する処理について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-330182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、電気化学処理と生物処理とを組み合わせた処理においては、それぞれの処理ごとに反応効率のよい反応を進行させ、処理全体としての処理効率を向上させることが可能となる。その一方で、一般的に、電気化学処理は電力消費に係るランニングコストの負担が大きいという課題がある。特許文献1に記載された処理では、電気化学処理単独よりはランニングコストの低減が可能とされている。しかしながら、特許文献1に記載された処理では、処理の系外から電気化学処理及び生物処理に係るエネルギーを供給する必要がある。したがって、処理時における更なる省エネルギー化が求められている。
【0006】
近年、処理時における設備駆動電力を抑え、省エネルギー化に優れるものとするために、処理の工程上でエネルギーの回収・利用が可能な技術が検討されている。
このような技術の一つとして、生物処理により発生したバイオガスを利用したエネルギーの回収が行われているが、バイオガスの貯留・精製設備や、バイオガスの燃焼により得られた熱エネルギーをガスエンジンやガスタービンを介して電気エネルギーに変換する設備など、付帯設備が必要となる。したがって、処理において、より簡便かつ効率的にエネルギーを回収・利用する技術が求められている。
【0007】
処理においてエネルギーを簡便かつ効率的に回収する技術としては、処理工程上に電極を設け、電極反応により直接電気エネルギーを回収することが考えられる。このとき、電極反応に供する電子供与体として処理工程上の水溶液(被処理水や処理水)中に含まれる還元性物質を用いることで、電極反応によるエネルギー回収と同時に、被処理水や処理水に対する電気化学処理を行うことができ、処理の効率向上と省エネルギー化の実現が期待できる。本発明者らは、特に、嫌気処理に伴い発生する硫化水素を電子供与体として用いることにより、併せて処理水の脱硫処理も可能となることを既に見出している。
【0008】
また、本発明者らは、処理工程上の水溶液中に含まれる還元性物質を用いて電極反応によるエネルギー回収を行う場合、処理工程上の水溶液に含まれる塩濃度が一定ではなく、十分な電極反応効率を安定して得ることが難しいという課題があることを見出した。
一般に塩濃度を高める手段としては、添加剤として電解質を添加することが挙げられるが、添加剤を用いることによるランニングコストの増加が問題となる。
【0009】
本発明の課題は、被処理物に対する嫌気処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用や脱硫処理を可能とするとともに、高効率な電極反応を低コストで安定して行うことができる処理装置及び処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、被処理物を嫌気処理した後の処理水中に含まれる還元性物質を電子供与体として電極反応を行うことにより、効率的なエネルギーの回収・利用や処理水の脱硫処理が可能となること、及び、電極反応を行う反応部に海水を供給する手段を設けることで、電極反応を安定して高効率化することが可能となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の処理装置及び処理方法である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の処理装置は、被処理物に対する嫌気処理を行う処理装置であって、被処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する反応部と、反応部に海水を供給する海水供給手段と、を備えるという特徴を有する。
本発明の処理装置は、処理装置に電極を用いた反応部を設置することで、嫌気処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、処理水の脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、電極反応を行う反応部に海水を供給する手段を設けることにより、海水を電極反応時における電解質として用いることができ、低コストで電極反応を高効率化させることが可能となり、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0012】
また、本発明の処理装置の一実施態様としては、海水供給手段は、海水の供給量を調整する調整機能を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、海水の供給量を調整することで、反応部における電解質濃度を変化させることができ、電極反応効率を容易に制御することが可能となる。また、処理水中の還元性物質の含有量について大幅な変動があった場合においても、海水の供給量を調整することで、反応部における電解質濃度を一定に保つことができ、高効率化した電極反応を安定して継続させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の処理装置の一実施態様としては、反応部は、上流側への逆流防止機能を備えるという特徴を有する。
一般的に電極反応においては、電極反応に供する溶液中の塩濃度が、電極反応効率向上に大きく影響する一方、嫌気処理のような生物処理においては塩濃度が高い環境下では微生物の活性が低下し、処理効率が低下することも知られている。
したがって、反応部よりも上流側への逆流を防止する機能を設けることで、反応部に添加した海水が嫌気処理に影響を与えないようにすることが可能となる。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の処理方法としては、被処理物に対する嫌気処理を行う処理方法であって、被処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する電極反応を行う反応工程と、反応工程に海水を供給する海水供給工程と、を備えるという特徴を有する。
本発明の処理方法は、水処理において電極を用いた電極反応工程を設けることで、水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、電極反応を行う反応部に海水を供給する工程を設けることにより、海水を電極反応時における電解質として用いることができ、低コストで電極反応を高効率化させることが可能となり、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理物に対する嫌気処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用や脱硫処理を可能とするとともに、高効率な電極反応を低コストで安定して行うことができる処理装置及び処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様における処理装置の別態様を示す概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図4】本発明の第3の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図5】本発明の第4の実施態様における処理装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る処理装置及び処理方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における処理方法は、本発明における処理装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する処理装置及び処理方法については、本発明に係る処理装置及び処理方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の処理装置において、処理対象である被処理物は、嫌気処理後の処理水中に電極と反応する還元性物質が含まれるものであれば特に限定されず、固体あるいは液体のいずれであってもよい。なお、還元性物質は、処理装置に導入する前の被処理物に含有されているものであってもよく、処理装置における処理経過に伴って生成され、処理水中に存在するものであってもよい。
具体的な被処理物の例としては、例えば、食品工場、化学工場、紙パルプ工場等の各種工場から排出される工業排水や、下水などの生活排水などのような排水(廃水)が挙げられる。また、被処理物の他の例としては、例えば、家庭や各種工場から排出する生ごみや食品廃棄物、木などバイオマスのほか、各種工場から排出される工業排水や下水などの生活排水を処理した後の余剰汚泥などのような固体廃棄物が挙げられる。ここで、被処理物が固体である場合、嫌気処理後の処理水とは、固体分を除去した濾液を指すものである。
なお、以下の実施態様においては、被処理物として、嫌気処理を経ることで処理水中に還元性物質が存在する排水(以下、「被処理水」と呼ぶ。)について主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0019】
また、本発明において、処理水中に含まれる還元性物質とは、電子供与体として機能するものであればよく、特に限定されない。ある物質が電子供与体として機能するか否かは、電子受容体として機能する物質(以下、単に「電子受容体」と呼ぶ)との組み合わせによって相対的に決まるものである。つまり、本発明における還元性物質は、電子受容体よりも電子を放出しやすいもの、すなわち電子受容体よりも酸化還元電位が低いものとすることが挙げられる。例えば、電子受容体として酸素を用いた場合、本発明における還元性物質は、酸素よりも酸化還元電位が低いものであればよく、このような還元性物質としては、硫化水素、水素、アンモニアなどが挙げられる。
【0020】
〔第1の実施態様〕
[処理装置]
図1は、本発明の第1の実施態様における処理装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様における処理装置1Aは、図1に示すように、処理槽2と、反応部3と、海水供給手段4とを備えるものである。なお、本実施態様においては、処理対象となる被処理物が、嫌気処理を経ることで処理水中に還元性物質が存在する排水(以下、「被処理水W」と呼ぶ。)である場合について説明する。
また、本実施態様における処理装置1Aは、図1に示すように、処理槽2に被処理水Wを導入する導入配管L1と、処理槽2と反応部3を接続し、処理槽2で被処理水Wが処理された後の処理水W1を反応部3に供給する接続配管L2と、電極反応後の処理水W2を反応部3から排出する排出配管L3とを備えている。
【0021】
(処理槽)
処理槽2は、被処理水Wに対して嫌気処理を行うための槽である。
処理槽2で行う処理は、被処理水W中に含まれる処理対象に合った処理であり、処理後の処理水W1中に還元性物質を含むものであれば、特に制限されない。例えば、嫌気的な環境下での生物処理(嫌気処理)として、酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵や、脱窒菌により硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理や、硫酸還元菌により硫酸の還元を行う硫酸還元処理等が挙げられる。さらに、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。なお、処理槽2は、単一槽であってもよく、複数の槽からなるものであってもよい。例えば、処理槽2で行う処理がメタン発酵である場合、酸生成槽とメタン発酵槽のように複数槽の組み合わせを処理槽2として用いること等が挙げられる。
【0022】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理水Wを処理した後の処理水W1中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0023】
処理槽2で処理された被処理水Wは還元性物質を含有する処理水W1となり、接続配管L2を介して、反応部3へ導入される。
【0024】
(反応部)
反応部3は、処理水W1中の還元性物質を電子供与体とした電極反応を行うためのものである。また、反応部3では、この電極反応によって発電や脱硫処理を行うことができる。
以下、本実施態様の反応部3の構造について、発電に係る観点から説明する。なお、本実施態様の反応部3による脱硫処理の詳細については後述する。
【0025】
本実施態様の反応部3は、図1に示すように、処理槽2の後段に設けられ、第1のセル31a及び第2のセル31bと、セル31a、31bの間を仕切るように設けられたイオン交換体35と、セル31a、31bにそれぞれ配置された電極33a、33bとを備えている。ここで、第1のセル31aは、処理槽2から接続配管L2を介して導入された処理水W1が電極33aに接触するように形成されており、第1のセル31aに配置された電極33aはアノードとして機能する。一方、第2のセル31bは、電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されており、第2のセル31bに配置された電極33bはカソードとして機能する。また、電極33a、33bは導線により外部回路と接続されている(不図示)。これにより、反応部3において、還元性物質が電子供与体として作用することで発生する電気エネルギーの回収及び利用が可能となる。
【0026】
第1のセル31aは、電極33aを備え、処理水W1が電極33aに接触するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、図1に示すように、接続配管L2を介して処理水導入口32aから導入された処理水W1を一時的に貯留可能なスペースを有し、電極33aに接触した後の処理水W2を処理水排出口32bから排出するための排出配管L3を備えるものとすること等が挙げられる。これにより、処理水W1中の還元性物質は電子供与体として電極33aに電子を供与した後、排出配管L3を介して速やかに排出される。
なお、接続配管L2及び/又は排出配管L3に、バルブ等の流量調整機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33aに接触させる処理水W1の量及び流速を調整し、電極33aに対する物質移動速度を制御することが可能となる。
【0027】
排出配管L3を介して排出された処理水W2は、河川及び海洋などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L3の後段に、処理水W2を更に処理するための処理設備を設け、処理水W2を処理した後、系外へ排出するものとしてもよい。このような処理設備としては、処理水W2が系外あるいは河川及び海洋などへの放流が可能な水質となるように処理できるものであれば特に限定されない。例えば、曝気槽やpH調整槽などが挙げられる。
【0028】
第2のセル31bは、電極33bを備え、処理水W1中の還元性物質に対する電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。
【0029】
ここで、電子受容体の形態は、気体、液体のいずれであってもよい。なお、液体としては、固体薬剤を溶解させた溶液であってもよく、気体を混合(溶解)させた溶液であってもよい。
【0030】
本実施態様において電子受容体の具体的な例については、例えば、気体としては、酸素及び酸素を含む気体が挙げられる。なお、酸素を含む気体とは、空気のように混合物として酸素を含むものや、二酸化炭素のように化合物を構成する元素として酸素を含むものが挙げられる。電子受容体として気体を用いた場合、反応後に排出したものの処理が不要(あるいは容易)であることや、入手に係るコストを低減できるという利点がある。なお、これらの利点を最大限活用するためには、電子受容体として、空気を用いることが特に好ましい。
また、本実施態様において電子受容体の他の例としては、例えば、液体として、溶存酸素を含む溶液や、フェリシアン化カリウム水溶液のような酸化剤の水溶液等が挙げられる。電子受容体として液体を用いた場合、電子受容体として効果の高い化合物(酸化剤)の取り扱いが容易となるため、電極反応効率をより向上させることができるという利点がある。なお、電極反応効率を向上させるという観点からすると、電子受容体としては、フェリシアン化カリウム水溶液を用いることが特に好ましい。
【0031】
第2のセル31bとしては、例えば、図1に示すように、第2のセル31bに、液体を貯留可能なスペースを設け、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bとして、それぞれ電子受容体の溶液の供給及び反応後の溶液の排出が可能なものを設けることが挙げられる。
第2のセル31bの他の例としては、第2のセル31bに、気体状の電子受容体(酸素、空気など)を電極33bに対して供給するために、配管L5を介して気体を供給するための電子受容体供給口34a、及び、配管L4を介して反応後の気体を排出するための電子受容体排出口34bを設けることが挙げられる。
これにより、電極33aからの電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取ることができ、電極33aと電極33bの間に電流が流れて発電が行われる。また、反応後の電子受容体は電子受容体排出口34b及び配管L4を介して速やかに反応部3の外部に排出される。
なお、電子受容体供給口34a及び/又は電子受容体排出口34bにバルブ等の流量調整機構を設け、第2のセル31bにおける電子受容体の濃度を調整できるものとしてもよい。さらに、電極33aにおける反応により生成した電子量に応じた電子受容体濃度が維持されるように流量調整機構を制御する制御機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33b間の電子移動に係る反応効率の低下を抑制し、電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0032】
図1において、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bは、それぞれ1つずつ設けたものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを複数設けるものとしてもよい。特に、電子受容体として酸素を含む気体を用いた場合、電極33bにおける反応によって水が生成する。したがって、電子受容体排出口34bを複数設ける場合、例えば、気体を排出するものと液体を排出するものをそれぞれ分けて設けること等が挙げられる。
【0033】
イオン交換体35は、イオンを透過することのできる公知の構成であればよく、特に限定するものではない。特に、電極33a(アノード側)で発生する水素イオンを透過することのできる陽イオン交換膜とすることが挙げられる。これにより、電極33a(アノード側)から電極33b(カソード側)へ水素イオンが移動することで、電極33bでの電子受容体の反応効率を高めることができ、電極反応効率を向上させることができる。また、イオン交換体35は、酸素透過性が低いものとすることがより好ましい。これにより、電極33b(カソード側)に供給される電子受容体(特に酸素)が電極33a側に移動することを抑制し、電極33aにおける電子供与体の反応効率が酸素により低下することを抑制することが可能となる。
なお、図1において、イオン交換体35は、電極33a及び電極33bと別体として設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、イオン交換能を有する材料と電極33a及び/又は電極33bを一体とすること等が挙げられる。これにより、反応部3全体を小型化することが可能となるとともに、メンテナンス作業に係る時間短縮が可能となる。
【0034】
電極33aは、処理水W1中の還元性物質から電子を回収する電極であり、いわゆるアノードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33aは、処理槽2で処理された後の処理水W1と接触するように第1のセル31a内に配置されている。
【0035】
電極33aとしては、アノードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33aの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33aにおける還元性物質の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33aの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33aの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33aとしては、電極反応効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33aとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0036】
電極33bは、電極33aの対極であって、電子受容体へ電子を受け渡す電極であり、いわゆるカソードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33bは、第2のセル31b内に配置されている。
【0037】
電極33bとしては、カソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33bの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33bにおける電子受容体の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33bとしては、電極反応効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33bとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0038】
第2のセル31b内に供給される電子受容体が気体(空気)である場合、電極33bは、一方の面は気体と接するが、もう一方の面は処理水W1と接する。このため、電極33bは、いわゆるエアカソードとして適した形態とすることが好ましい。エアカソードとして適した形態としては、例えば、気体透過性と不透水性の両方の性質を備えることが挙げられる。電極33bが気体透過性を備えた形態とすることにより、電子受容体である気体を電極33bで効果的に反応させることが可能となる。また、電極33bが不透水性を備えることにより、第1のセル31a内の処理水W1が電極33bを透過し、第2のセル31b内に流入することを抑制することが可能となる。このような電極33bの具体例としては、炭素繊維からなるものや、金属メッシュ表面に対して気体透過性及び不透水性を有する材料の塗布あるいはフィルムの積層等の表面処理を行ったもの等が挙げられる。なお、ここでの不透水性とは、水を通さないことを指し、例えば、電極33bを防水化、撥水化、疎水化、あるいは止水化することについても、不透水性を備えることに含まれるものである。
【0039】
以下、図1に基づき、本発明の第1の実施態様の処理装置における電極反応に係る反応及び工程を説明する。
本実施態様の処理装置1Aにおける電極反応に係る反応及び工程は、被処理水Wを嫌気処理することで生成した還元性物質を電子供与体として用い、酸素や酸化剤を含む溶液を電子受容体として用いるものについて説明するものである。
なお、図1に基づく反応及び工程に係る説明は、本実施態様における電極反応の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。また、以下の説明は、処理槽2から反応部3に係る反応及び工程について述べたものであり、その他の構成(導入配管L1、排出配管L3など)に係る反応及び工程については説明を省略している。さらに、反応R1~R4及び工程S1~S3の表記については、説明のために番号を付したものであり、反応及び工程順序を特定するものではない。
【0040】
図1に示すように、処理槽2に導入された被処理水Wは、処理槽2内の嫌気性微生物(酸生成菌及びメタン生成菌)により嫌気処理される(工程S1)。このとき、メタンのほかに、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が生成する。
【0041】
処理槽2で処理され、還元性物質を含む処理水W1は、接続配管L2を介して反応部3における第1のセル31a内に導入される(工程S2)。ここで、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が電極33aに接触することで、還元性物質が電子供与体として機能し、電極33aへ電子が供与される。このとき、電子供与体として機能する還元性物質として、硫化水素を例にとると、電極33aにおける反応(反応R1)は、以下の反応式(式1)で示される。
【数1】
【0042】
また、硫化水素の一部は硫化水素イオンとして反応する。このときの反応は、以下の反応式(式2)で示される。
【数2】
【0043】
式1及び式2で示されるように、反応R1において、処理槽2で処理された後の処理水W1に含まれる硫化水素は電極33aに電子を供与するとともに、硫化水素自身は酸化処理されることで無害化、無臭化する。このため、本実施態様の処理装置1Aは、発電とともに、脱硫処理・脱臭処理が可能となる。なお、硫化水素以外の有害物質・臭気物質である還元性物質(アンモニア等)についても、同様に電子供与体として機能し、反応が進行することで、無害化・無臭化が可能になる。
【0044】
式1及び式2に示された反応式に基づき、電極33aにおける反応が進行した後、電子は電極33aから導線を介して電極33bへ移動する(反応R2)。なお、このとき、電極33aにおける反応で生成した水素イオンは、イオン交換体35を介して第2のセル31b側へ移動する(反応R3)。
【0045】
一方、第2のセル31bには、電子受容体供給口34aから電子受容体(溶液)を導入する(工程S3)。ここで、反応R2により、電極33aから電極33bに移動した電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取る。また、このとき、反応R3により、イオン交換体35を介して第2のセル31b側に移動した水素イオンも電子受容体と反応する。このときの電極33bにおける反応(反応R4)は、以下の反応式(式3)で示される。なお、式3における酸素が、電子受容体に相当する。
【数3】
【0046】
上述した反応R1~R4及び工程S1~S3に基づき、電極33aと電極33bの間に電流が流れる。これにより、被処理水W中の還元性物質(処理水W1に含まれる還元性物質)を電子供与体とする反応が進行し、本実施態様の処理装置1Aにおける発電及び脱硫処理が行われる。
また、発電により得られた電気エネルギーは、電極33a及び電極33bに接続した外部回路を通じて回収・利用することができる。なお、電気エネルギーの利用については、特に限定されない。例えば、処理装置の設備駆動に用いるものであってもよく、処理装置外で利用するものであってもよい。
【0047】
本実施態様の処理装置における電極反応では、塩濃度(電解質濃度)に応じて電流の流れやすさが変化し、電極反応効率に影響する。しかし、処理水W1中の還元性物質や塩の濃度は常に一定とは限らないため、電極反応の高効率化を安定して行うことは困難である。一方で、塩化ナトリウムなどの電解質を添加剤として反応部3に添加すると、添加剤に係るコストが問題となる。そこで、反応部3における塩濃度を高める手段として、安価かつ大量入手が可能であり、電解質としても機能する海水に着目した。このため、本実施態様における処理装置1Aには、反応部3に海水を供給する手段を設けるものとする。
【0048】
(海水供給手段)
海水供給手段4は、反応部3に海水を供給することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。
海水供給手段4により供給される海水の供給源(以下、「海水源」と呼ぶ)は、特に限定されない。例えば、自然環境(海洋)を海水源とし、海洋から直接海水供給手段4に対して海水を導入するものとしてもよく、二酸化炭素の海洋貯留処理や船舶のバラスト水として用いられる海水のように他の用途で使用されたものや、貯蔵タンク内に収容した海水など、人為的に一時貯留された海水を海洋源として用いるものとしてもよい。
なお、海水の原料調達にかかるコストは、主として海水の搬送に係るコストとなる。例えば、本発明の処理装置1Aを海に近い陸地あるいは海上に設置することにより、最小限の搬送コストで海水を利用することが可能となる。
【0049】
以下、本実施態様における海水供給手段4の具体例について説明する。なお、以下に示す海水供給手段4に係る説明は、本実施態様における海水供給手段4の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。
【0050】
図1に示すように、海水供給手段4としては、反応部3における第1のセル31aに接続した配管40と、海水を貯留した貯留槽41とを備えるものが挙げられる。そして、貯留槽41内の海水を、配管40を介して第1のセル31a内に導入し、海水と処理水W1とを混合する。
なお、配管40及び貯留槽41は海水の供給・貯留に用いるものであるため、耐腐食性を有する材質からなることが好ましい。これにより、海水による劣化を抑制し、装置の長寿命化が可能となる。
【0051】
海水中には様々なイオン種が含まれている。例えば、Na、Kのような一価の金属イオン、Ca2+、Mg2+のような二価の金属イオンのほか、ClやSO 2-などの陰イオンも含まれている。これらのイオン種が第1のセル31a内で電解質として機能し、電極33a及び33bにおける電極反応効率を高めることになる。
【0052】
ここで、被処理水Wを嫌気処理して得られた処理水W1と海水とを比較すると、海水中に含まれる電解質濃度のほうが、相当程度大きい。したがって、処理水W1中の塩濃度の変動が生じても、海水中に含まれる電解質濃度のほうが大きいので、反応部3における電極反応は海水中に含まれる電解質濃度に応じて高効率化する。また、第1のセル31a内における電解質濃度の変動も実質起こらないものとみなすことができるため、高効率の電極反応を安定して継続することが可能となる。
【0053】
図2は、本実施態様における処理装置1Aの別態様を示す概略説明図である。
図2に示すように、反応部3に対し、配管L6、配管L7、反応部3内の溶液(処理水W1と海水の混合液)を貯留する貯留タンクTを設け、循環流路を形成するものとしてもよい。これにより、海水供給手段4により供給された海水と処理水W1との混合が促進され、反応部3における電極反応効率を向上させることが可能となる。
【0054】
上述したように、本実施態様における処理装置1Aは、被処理水W中の還元性物質を電子供与体として用い、電気化学反応(電極反応)により発電を行い、エネルギーを回収・利用するものである。一般に、電気化学反応を行う場合、実際に電気化学反応を行う箇所(反応部3)以外へ電子が移動することで、電気化学反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、本実施態様における処理装置1Aは電気化学反応を行う箇所(反応部3)以外を絶縁処理することが好ましい。絶縁処理の具体例としては、例えば、処理槽2を絶縁体の上部に設置することのほか、処理槽2の外壁あるいは内壁を絶縁体で構成することや、処理槽2の外壁あるいは内壁を絶縁材料でコーティングすることなどが挙げられる。また、導入配管L1、接続配管L2及び排出配管L3の絶縁処理としては、例えば、それぞれの配管を絶縁体からなるものとすることや、それぞれの配管に絶縁材料をコーティングすること等が挙げられる。
【0055】
以上のように、本実施態様の処理装置1A及び処理装置1Aを用いた処理方法により、被処理物の嫌気処理における一連の処理過程の中で電極反応を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、電極反応を行う反応部に海水を供給する手段を設けることにより、海水を電極反応時における電解質として用いることができ、低コストで電極反応を高効率化させることが可能となり、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0056】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る処理装置1Bは、第1の実施態様における処理装置1Aにおける海水供給手段4に対し、海水の供給量を調整する供給量調整機能42を備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0057】
本実施態様の処理装置1Bは、海水供給手段4に、供給量調整機能42を設け、海水の供給量を調整することで、反応部3における電解質濃度を変化させることができる。これにより、反応部3における電極反応効率を容易に制御することが可能となる。
また、処理水W1中の還元性物質の含有量について大幅な変動があった場合においても、海水の供給量を調整することで、反応部3における電解質濃度を一定に保つことができる。これにより、高効率化した電極反応を安定して継続させることが可能となる。
【0058】
供給量調整機能42は、配管40上に設けられ、配管40から反応部3に供給する海水の量を調整することができるものであればよく、例えば、流量調整弁やバルブなどが挙げられる。
【0059】
また、供給量調整機能42の操作は作業者が手動で行うものとしてもよく、プログラム等に基づく自動制御を行うものとしてもよい。作業の効率化等を鑑み、本実施態様における供給量調整機能42には、図3に示すように、制御部43を備えることが好ましい。なお、図3における一点破線の矢印は、制御可能となるよう接続されていることを示すものである。
本実施態様における制御部43は、供給量調整機能42の開閉動作に係る制御を行うものである。また、制御部43は、反応部3における電極反応の反応効率(出力)に係るデータ取得を行うデータ取得部と、データ取得部で取得したデータに基づき海水の供給量や供給のタイミングを演算する演算部を備えることがより好ましい。これにより、供給量調整機能42の制御を、より精度高く、好適なタイミングで実行することが可能となる。
なお、データ取得部で取得するデータの種類としては、電極33a及び33b間の電位差や電流量のほか、第1のセル31a内の溶液の導電率などが挙げられる。
【0060】
以上のように、本実施態様における処理装置1B及び処理装置1Bを用いた処理方法は、反応部に供給する海水の供給量を調整することで、反応部における電解質濃度を変化させたり、一定に保つことが可能となる。これにより、電極反応効率を容易に制御することができ、高効率化した電極反応を安定して継続させることが可能となる。
【0061】
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る処理装置1Cは、第1の実施態様における処理装置1Aの反応部3において、上流側への逆流防止機能5を備えるという特徴を有する。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0062】
一般的に、電極反応においては、電極反応に供する溶液(処理水W1等)中の塩濃度が、電極反応効率向上に大きく影響する一方、嫌気処理のような生物処理においては塩濃度が高い環境下では微生物の活性が低下し、処理効率が低下することも知られている。
【0063】
本実施態様における処理装置1Cでは、反応部3の上流側において、被処理水Wに対して嫌気処理を行う処理槽2を備えるものであり、処理槽2で処理された後の処理水W1が反応部3にて電極反応に供される溶液となる。したがって、反応部3に対し、よりも上流側への逆流を防止する機能を設けることで、反応部3に供給した海水が処理槽2における嫌気処理に影響を与えないようにすることが可能となる。
【0064】
逆流防止機能5としては、反応部3内の溶液が上流側(処理槽2側)に流入することを抑制することができる機能を有するものであればよく、例えば、処理槽2と反応部3を接続する接続配管L2上に逆止弁を設けることなどが挙げられる。
【0065】
以上のように、本実施態様における処理装置1C及び処理装置1Cを用いた処理方法は、反応部よりも上流側への逆流を防止する機能を設けることで、反応部に添加した海水が嫌気処理を行う処理槽側に流入することを抑制し、嫌気処理に影響を与えないようにすることが可能となる。
【0066】
本発明の処理装置は、被処理水Wのような液体成分を処理槽2において嫌気処理するものに限定されない。また、反応部3に供給する処理水は、処理槽2から直接排出されるものに限定されない。
以下、本発明の処理装置における別態様として、処理対象である被処理物がバイオマスなどの固体成分からなるものについて例示する。
【0067】
〔第4の実施態様〕
図5は、本発明の第4の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第4の実施態様に係る処理装置1Dは、図5に示すように、処理槽2と反応部3の間に、固液分離部6を備え、さらに海水供給手段4を備えるものである。
また、処理装置1Dは、処理槽2に被処理物Sを導入する導入配管L20、処理槽2と固液分離部6を接続する接続配管L21、固液分離部6で分離された処理水W4を反応部3に導入する導入配管L22、固液分離部6で分離された固形物を系外に排出する排出配管L23、反応部3から処理水W2を系外に排出する排出配管L24を備えている。
【0068】
図5に示した処理装置1Dでは、被処理物Sに対して処理槽2による嫌気処理を行い、固液分離部6において嫌気処理を経た後の排出物(処理液W3)を処理水W4(濾液)と固形物に分離し、処理水W4を反応部3に導入する。これにより、被処理物Sの嫌気処理後の排出物を活用し、より効率的なエネルギーの回収・利用あるいは脱硫処理が可能となる。
以下、処理装置1Fの構成について説明する。
【0069】
(処理槽)
本実施態様における処理槽2は、バイオマスなどの固体成分に対して嫌気処理を行うものである。
本実施態様における処理槽2で行う嫌気処理としては、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。したがって、処理槽2は、被処理物Sの消化を行う消化設備として機能する構造を有することが好ましい。より具体的には、処理槽2は、消化槽として公知の構造を有することが好ましく、消化槽に係る具体的な構造については特に限定されない。
【0070】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理物Sを処理した後の排出物(処理液W3)中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0071】
処理槽2で処理された被処理物Sは還元性物質を含有する排出物(処理液W3)となり、接続配管L2を介して、固液分離部6へ導入される。
【0072】
(固液分離部)
固液分離部6は、処理槽2から導入された処理液W3を、固形物と処理水W4に分離処理するためのものである。
ここで、固液分離部6で分離処理される処理液W3は、処理槽2で嫌気処理された後の排出物であり、余剰汚泥などの泥状物を含む固液混合物(スラッジ)である。また、処理液W3中には、メタン発酵により生成した還元性物質が含有されている。
したがって、固液分離部6で処理液W3を固液分離し、還元性物質を含有する処理水W4を回収して後段の反応部3に導入することで、還元性物質を電子供与体とする反応を進行させることが可能となる。
【0073】
固液分離部6としては、処理液W3中に含まれる固形物と処理水W4とを分離することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、凝集沈殿槽、沈殿槽のような沈降分離式によるものや、遠心分離機を備える遠心分離式によるもののほか、ベルトプレス脱水機やスクリュープレス脱水機のような加圧濾過装置を備えるものなどが挙げられる。
【0074】
固液分離部6で分離された処理水W4は、還元性物質を含有する処理水(処理水W1に相当)として導入配管L22を介し、反応部3へ導入される。一方、固液分離部6で分離された固形物は、排出配管L23を介して系外に排出される。このとき、排出配管L23の後段に、固形物を処理する処理設備を設けるものとしてもよい。
【0075】
そして、処理水W4が導入された反応部3では、上述した処理水W1を用いた場合と同様に、処理水W4中の還元性物質を電子供与体として発電を行うとともに、処理水W4中の還元性物質のうち、硫化水素などの硫黄含有化合物を電子供与体とすることで、脱硫処理を行うことも可能となる。
【0076】
以上のように、本実施態様の処理装置1D及び処理装置1Dを用いた処理方法により、被処理物の嫌気処理後の排出物を活用し、固体成分からなる被処理物の嫌気処理においても、発電による効率的なエネルギーの回収・利用や脱硫処理を行うことが可能となる。特に、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中に含まれる還元性物質を用いた電極反応を可能とすることで、嫌気処理で用いる微生物による物質移動の阻害や、微生物の代謝速度に基づく律速段階がなく、発電効率や脱硫処理効率の向上が可能となる。また、微生物燃料電池による発電と比べて設備を小型化することができる。さらに、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。
【0077】
なお、上述した実施態様は、処理装置及び処理方法の一例を示すものである。本発明に係る処理装置及び処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る処理装置及び処理方法を変形してもよい。
【0078】
例えば、本実施態様における処理装置は、絶縁機構を設けるものとしてもよい。絶縁機構は、反応部3で反応する処理水W1以外の処理水(処理水W2)を絶縁することができるものであればよく、特に限定されない。
絶縁機構による絶縁手段としては、例えば、反応部3の電極33aと処理水W2との電気的な接触(液絡)の解消あるいは液絡時間の短縮が挙げられる。このような液絡解消手段又は液絡時間の短縮手段の例としては、処理水W2の流れを不連続(断続的)とする手段や、処理水W2に空気などの絶縁体を介在させる手段、あるいはこれらの手段を組み合わせるもの等が挙げられる。これにより、反応部3で生成した電子が電極33a及び電極33bの間以外に流れることを防ぎ、電極反応効率を向上させるものである。
なお、本実施態様における処理装置は、第1の実施態様に示したような処理装置を構成する構造物(処理槽や配管)に係る絶縁を併せて行うものとしてもよい。これにより、より一層の絶縁効果を得ることができ、反応部3における電極反応効率を向上させることが可能となる。
【0079】
また、例えば、本実施態様における処理装置は、一部の構造を省略し、装置構成をより簡略化するものとしてもよい。
省略可能な構造としては、例えば、イオン交換体35が挙げられる。これにより、反応部3の簡略化が可能となるとともに、メンテナンス作業が容易となる。
また、省略可能な構造の他の例としては、第2のセル31bにおける電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bが挙げられる。これにより、反応部3をより簡略化することが可能となる。このとき、電極33bの一面が処理水W1又はイオン交換体35に接触し、もう一方の面が全体的に外気(空気)に直接接触する構造とすること等が挙げられる。さらに、外気側の電極33b表面に交換又は洗浄容易な通気性素材を設けることが好ましい。これにより、塵などの固体不純物が電極33b表面に付着することを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の処理装置及び処理方法は、被処理水を処理する処理に利用される。特に、被処理水を処理することにより還元性物質が発生する処理において、好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0081】
1A,1B,1C,1D 処理装置、2 処理槽、3 反応部、31a 第1のセル、31b 第2のセル、32a 処理水導入口、32b 処理水排出口、33a,33b 電極、34a 電子受容体供給口、34b 電子受容体排出口、35 イオン交換体、4 海水供給手段、40 配管、41 貯留槽、42 供給量調整機能、43 制御部、5 逆流防止機能、6 固液分離部、L1,L20 導入配管、L2,L21 接続配管、L3,L23 排出配管、L4~L7 配管、S 被処理物、T 貯留タンク、W 被処理水、W1~W4 処理水(処理液)
図1
図2
図3
図4
図5