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特許7545332断熱材に結合される少なくとも1つの硬化セメント質層を備えたプレハブ断熱建築用パネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】断熱材に結合される少なくとも1つの硬化セメント質層を備えたプレハブ断熱建築用パネル
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/288 20060101AFI20240828BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
E04C2/288
E04B1/80 100Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020564979
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 CA2019050179
(87)【国際公開番号】W WO2019157595
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】2,994,868
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520304815
【氏名又は名称】ネクシー ビルディング ソリューションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NEXII BUILDING SOLUTIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドンボウスキー、マイケル アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ドンボウスキー、ベネディクト ジョン
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-140694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0003271(US,A1)
【文献】実開昭57-174031(JP,U)
【文献】特開昭62-111054(JP,A)
【文献】実開昭57-101203(JP,U)
【文献】米国特許第04841702(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/288
E04B 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレハブ断熱建築用パネルであって、
反対の方向に向き、シート状の剛性断熱材の周囲を集合的に画定する前記シートの第1の面と第2の面を集合的に範囲設定する両側の第1及び第2の側部と両側の第1及び第2の端部を有する前記シート状の剛性断熱材、
前記パネルに加えられた荷重を支えるための、前記剛性断熱材の前記第1の面に接続された内部構造層、
各々が前記剛性断熱材の前記第2の面から窪んだベースを有する複数の溝を前記第2の面に画定する前記剛性断熱材、
前記シートの前記周囲で終端する前記それぞれの溝の端部で開口するように、前記剛性断熱材の前記第2の面の位置から前記シートの前記周囲に各々延びる、前記溝、
複合セメント質材料であって、硬化セメント質層が前記剛性断熱材との結合作用により前記剛性断熱材の前記第2の面で支えられるように、前記剛性断熱材の前記第2の面から外層の外面まで測定される厚さを有する硬化セメント質外層を設けるために、前記剛性断熱材の前記第2の面に結合される前記複合セメント質材料、
前記パネルの外側に前記パネルの前記周囲の内部の位置から流体が流れるための通路を画定するために、前記溝の前記ベースの反対側に閉鎖され、円周方向に囲まれるチャネルを画定するように前記溝を覆う前記複合セメント質材料、及び
前記剛性断熱材の前記第2の面と、前記それぞれのベースに前記第2の面から延びる前記溝の側壁との間に形成される前記溝の外側縁部を包み、前記複合セメント質材料が前記溝の中に延びるようにし、チャネルそれぞれを前記それぞれの溝の前記側壁の一方から他方に亘る前記複合セメント質材料、前記溝の前記ベース、及び前記溝の前記側壁の各々の一部分によって集合的に画定される、前記複合セメント質材料、を備え
前記内部構造層が、前記剛性断熱材の前記第1の面に結合された複合セメント質材料を含み、硬化セメント質内層であって前記剛性断熱材の前記第1の面から同硬化セメント質内層の外面まで測定される厚さの硬化セメント質内層を設けて、それにより前記硬化セメント質内層が前記剛性断熱材との結合作用によって前記剛性断熱材の前記第1の面で支持されており、
前記剛性断熱材の(i)前記第1の側部と第2の側部、または(ii)前記第1の端部と第2の端部の少なくとも1つは、外側に延びる一対の両側のフランジを形成し、前記剛性断熱材の前記第1の面と略平行に向いているが、そこから窪んでいる、前記剛性断熱材の前記周囲に沿った棚面を画定するようにし、そのため、前記棚面の各々が、前記それぞれの棚面と前記第1の面に対して横向きの移行面によって前記第1の面と相互接続され、
前記硬化セメント質内層が、前記剛性断熱材の前記第1の面と前記移行面の間に形成され、前記棚面まで延びる縁を包み、
前記硬化セメント質内層が、前記棚面に結合され、
前記硬化セメント質内層が、前記棚面の1つから、前記剛性断熱材の前記第1の面を横切って、前記棚面の他方まで切れ目がなく、
前記棚面から前記硬化セメント質内層の前記外面までの同硬化セメント質内層の厚さが、前記剛性断熱材の前記第1の面の前記硬化セメント質内層の前記厚さよりも厚い、プレハブ断熱建築用パネル。
【請求項2】
前記溝は、前記溝の少なくとも1つが1つの他の溝を通って延在するように、交差するアレイで配置される、請求項1に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項3】
前記剛性断熱材の一方の側部または端部からもう一方の側部または端部に向かう方向に、他方とそれぞれ平行に延びる第1の溝のセットと、前記剛性断熱材の一方の側部または端部からもう一方の側部または端部に向かう方向にそれぞれ他方と平行に、また前記第1の溝のセットに対して横方向に延びる第2の溝のセットにより、前記溝がグリッドを形成する、請求項1または2に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項4】
前記剛性断熱材の前記第2の面から、前記それぞれの溝の前記ベースまで測定される前記溝のそれぞれの深さが、前記第1の面から前記第2の面まで測定される前記剛性断熱材の厚さの半分未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項5】
前記内部構造層及び前記硬化セメント質外層が、剛性断熱材の厚さによって互いに分離されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項6】
前記剛性断熱材の前記第2の面の表面領域が平坦である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項7】
前記剛性断熱材の前記第1の面の表面領域が平坦である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項8】
前記第1の面から前記第2の面まで測定される前記剛性断熱材の前記厚さが、前記硬化セメント質外層の前記厚さの3から10倍程度である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項9】
前記剛性断熱材の前記第1の面にある前記硬化セメント質内層、及び前記剛性断熱材の前記第2の面にある前記硬化セメント質外層の各々の前記厚さが、0.25インチ(0.64cm)から1.5インチ(3.81cm)の範囲である、請求項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項10】
前記フランジが前記剛性断熱材の前記第2の面と面一であり、前記第2の面の表面領域が前記第1の面の表面領域よりも大きく、前記剛性断熱材の前記第2の面の実質的に全体を覆う前記硬化セメント質外層は、前記フランジで前記剛性断熱材の厚さによって前記硬化セメント質内層から分離される、請求項またはに記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項11】
前記剛性断熱材の(i)前記第1の側部と第2の側部、及び(ii)前記第1の端部と前記第2の端部の両方が、前記棚面の両側をそれぞれ形成し、前記硬化セメント質内層が、前記シート状の剛性断熱材の周囲全体の周りで厚くなるようにする、請求項1、9および10のいずれか一項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【請求項12】
前記硬化セメント質内層が、前記両側のフランジの一方から他方に亘る、切れ目のない埋め込み補強基板を含む、請求項1、9、10および11のいずれか一項に記載のプレハブ断熱建築用パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して建物の壁、床、及び屋根を形成すべく組み立てられ得る少なくとも1つの硬化セメント質層を備えるプレハブ断熱建築用パネルに関し、より具体的には、流体を排出するチャネルを有するそのようなパネルと、断熱材の両側の面に接続される、対の硬化セメント質層とに関する。
【背景技術】
【0002】
構造断熱パネル(SIP)は、建築業界で定評のある地位にある。このタイプのプレハブの工場製パネルは、通常、発泡スチロール(EPS)などの厚い独立気泡断熱材と、それに結合された構造スキンを備えている。現在、2種類の構造スキンが一般的に使用されており、接着剤などでEPSに結合させている。これには、配向性ストランドボード(OSB)木製シートや、コンクリート板としても業界で知られている酸化マグネシウム板がある。
【0003】
SIPを使用する建築システムの欠点は、パネルの大きさであり、これは一般に、大量生産される木またはコンクリートのシート状の板のサイズに制限される。これにより、壁、床、または屋根が、複数の接合部を備えた複数のSIPパネルで構成されている。さらに、従来技術のパネルは、通常、耐候性及び装飾のために、追加の外層をSIPに、つまり他の場合には木またはコンクリートのシートの外面に、取り付ける必要がある。さらに、SIPで形成される建物の内部は、通常、石膏シートロックの層とペイントを受け入れて内部を仕上げる必要がある。これまでのところ、OSBのSIPの耐荷重能は2階建てに制限されている。
【0004】
プレキャストコンクリートサンドイッチパネルはSIPの制限に対処するものであり、適切な外装仕上げ、多大な耐荷重能を備え、SIPと比較して、通常大きさが大きくされて、他の同様のパネルと組み合わせたときに使用する接合部が少なくなっている。しかし、このタイプのパネルの欠点は、SIPに比べて重量がかさむことである。重量の増加に関連する欠点があるにもかかわらず、プレキャストサンドイッチコンクリートパネルは、SIPと比較して、耐荷重性と火災関連のパフォーマンスが向上している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、以下を含むプレハブ断熱建築用パネルが提供される:
反対の方向に向き、シート状の剛性断熱材の周囲を集合的に画定するシートの第1の面と第2の面を集合的に範囲設定する両側の第1及び第2の側部と両側の第1及び第2の端部を有するシート状の剛性断熱材、
剛性断熱材の前記第1の面に接続された内部構造層、
各々が剛性断熱材の第2の面から窪んだベースを有する、複数の溝を第2の面に画定する剛性断熱材、
シートの周囲で終端するそれぞれの溝の端部で開口するように、前記剛性断熱材の前記第2の面の位置からシートの周囲に各々延びる、前記溝、
複合セメント質材料であって、硬化セメント質層が剛性断熱材との結合作用により剛性断熱材の第2の面で支えられるように、剛性断熱材の第2の面から外層の外面まで測定される厚さを有する硬化セメント質外層を設けるために、剛性断熱材の第2の面に結合される複合セメント質材料、
パネルの外側にパネルの周囲の内部の位置から流体が流れるための通路を画定するために、溝のベースの反対側に閉鎖され、円周方向に囲まれるチャネルを画定するように前記溝を覆う前記複合セメント質材料。
【0006】
本発明の別の態様によれば、以下を含むプレハブ断熱建築用パネルが提供される:
反対の方向に向き、シート状の剛性断熱材の周囲を集合的に画定するシートの第1の面と第2の面を集合的に範囲設定する両側の第1及び第2の側部と両側の第1及び第2の端部を有するシート状の剛性断熱材、
剛性断熱材の第1の面に接続された内部構造層、
硬化セメント質層が剛性断熱材との結合作用により剛性断熱材の第1の面で支えられるように、剛性断熱材の第1の面から内層の外面まで測定される厚さを有する硬化セメント質内層を設けるために、剛性断熱材の第1の面に結合される複合セメント質材料を備える内部構造層、
複合セメント質材料であって、硬化セメント質層が剛性断熱材との結合作用により剛性断熱材の第2の面で支えられるように、剛性断熱材の第2の面から外層の外面まで測定される厚さを有する硬化セメント質外層を設けるために、剛性断熱材の第2の面に結合される複合セメント質材料、
外側に延びる一対の両側のフランジを形成し、剛性断熱材の第1の面と略平行に向いているが、そこから窪んでいる、剛性断熱材の周囲に沿った棚面を画定するようにし、そのため、棚面の各々が、それぞれの棚面と第1の面に対して横向きの移行面によって第1の面と相互接続される、剛性断熱材の(i)第1の側部と第2の側部、または(ii)第1の端部と第2の端部の少なくとも1つ、
剛性断熱材の第1の面と移行面の間に形成され、棚面まで延びる縁を包む、硬化セメント質内層、
棚面に結合される硬化セメント質内層、
棚面の1つから、剛性断熱材の第1の面を横切って、棚面の他方まで切れ目がない、硬化セメント質内層、
剛性断熱材の第1の面の硬化セメント質内層の厚さよりも厚い、棚面から内層の外面までの硬化セメント質内層の厚さ。
【0007】
このように、剛性断熱材への複合セメント質材料の硬化中に行われる結合作用だけで、例えば断熱材の厚さを通るファスナーによって、セメント質層を内部構造層に直接固定することなく、所定の厚さの硬化セメント質層の重量を支えることができる。
【0008】
セメント質外層が内部構造層に直接固定されていないために断熱材の厚さ全体を貫通して複合セメント質材料を内部構造層に接続する、ファスナーなどの熱伝導要素がないかのような配置では、したがって、熱エネルギーがパネルの厚さ方向に望まぬように通り得るサーマルブリッジは存在しない。したがって、途切れのない断熱ブランケットがそれぞれのパネルによって形成される。
【0009】
さらに、比較的薄い硬化セメント質層を設けることでパネルの重量が軽減され、それらを輸送することや、クレーンの使用など建物の一部を形成するためにそれらを適所に配置することなどに伴う作業をするのが容易になる。
【0010】
パネルの周囲に沿った厚い縁は、厚い縁の両側の各対の間に亘り一方向にパネルをさらに剛性化し、そのため、比較的薄い硬化セメント質層でも、パネルは、製造の間や輸送及び設置する間に、曲げや硬化セメント質層のひび割れなしに形状と元の状態を維持するのに十分な強度がある。
【0011】
したがって、より大きなパネルを工場で構築して、建設中の建物の共通部分、例えば床や壁、エレベータシャフトを一体に形成するために使用するパネルの数を減らし、それによってその接合部の数を減らし、それに応じて現場での組み立ての労力を減らすことができる。
【0012】
また、パネルは、パネルの外側と内側の任意の仕上げを含め、実質的に仕上げることができる。
さらに、セメント質外層と剛性断熱材の境界に形成及び配置されたチャネルは、壁を形成する際に使用するパネルが周囲環境及び要素にさらされたときに外層に浸透する風力駆動式の水分を、重力によりパネルの外へ放出する機能を実現する。チャネルは、壁用パネルに、外部の「雨よけ」と剛性断熱材との間の空域を備える。これにより、パネルを「均圧化」することができ、雨を伴う強風の状態にさらされたときに水分が建物に吸い込まれなくなる。
【0013】
さらに、床を形成する際に使用する場合、チャネルは、このような給水管及び床内放射加熱パイプを配管するための導管を画定する。
さらに、屋根または天井の形成に使用する場合、チャネルは、消火スプリンクラーと給水管及び電気配線を支えるための導管を画定する。
【0014】
製造時に、水平鋳床上のフォームにより限定される固化していない複合セメント質材料の中に溝付きの剛性断熱材を含む部分的に形成されたパネルを配置することによってセメント質外層が形成されると、これらの溝が、捕捉された空気のポケットを、パネルの外側へと溝に沿って逃がすことができる。したがって、結合は、固化していない複合セメント質材料と接触する剛性断熱材の表面全体にわたって生じる。
【0015】
本開示で使用される場合、「複合セメント質材料」は、硬化すると硬質の耐久性材料を形成するセメントを含む複数の構成材料を含む材料を指す。複合セメント質材料の例には、コンクリート及びセメント質樹脂がベースのコーティングが含まれる。
【0016】
好ましくは、複合セメント質材料は、剛性断熱材の第2の面と、第2の面からそれぞれのベースまで延びる溝の側壁との間に形成された溝の外縁を包み、その結果、複合セメント質材料は、溝内に延び、そのため、チャネルそれぞれがそれぞれの溝の側壁の一方から他方に亘る複合セメント質材料、溝の底部、及び溝の各側壁の一部によって集合的に画定される。複合セメント質材料の溝へのこの延在及びその側壁への取り付けは、硬化セメント質層の断熱材へのより強い結合を実現する。
【0017】
通常、溝は、溝の少なくとも1つが他の1つの溝を貫通するように、交差するアレイで配置される。したがって、溝の標準化されたレイアウトは、壁、屋根、床用パネルのいずれであろうと、パネルのあらゆる用途に対して適切に機能する。
【0018】
このような配置では、溝は通常、断熱材の一方の側部または端部からもう一方の側部または端部に向かう方向に、他方に対してそれぞれ平行に延びる第1の溝のセットと、断熱材の一方の側部または端部からもう一方の側部または端部に向かう方向に、それぞれ他方に対して平行に、第1のセットに対して横方向に延びる第2の溝のセットでグリッドを形成する。
【0019】
好ましくは、断熱材の第2の面からそれぞれの溝のベースまで測定される各溝の深さは、第1の面から第2の面まで測定される断熱材の厚さの半分未満である。このことは、チャネルと内部構造層の間に十分な断熱材が残り、あたかもそのようなチャネルが存在しないかのように実質的に同様の断熱特性を実現させる。
【0020】
好ましくは、内部構造層は、硬化セメント質層が剛性断熱材との結合作用により剛性断熱材の第1の面で支えられるように、剛性断熱材の第1の面から内層の外面まで測定される厚さを有する硬化セメント質内層を設けるために、剛性断熱材の第1の面に結合される複合セメント質材料を備える。
【0021】
好ましくは、内部構造層及び硬化セメント質外層は、剛性断熱材の厚さによって互いに分離されている。
通常、剛性断熱材の第2の面の表面領域は平坦である。
【0022】
通常、剛性断熱材の第1の面の表面領域は平坦である。
好ましくは、第1の面から第2の面まで測定される剛性断熱材の厚さは、硬化セメント質外層の厚さの3から30倍程度である。
【0023】
好ましくは、剛性断熱材の第1の面の硬化セメント質内層、及び剛性断熱材の第2の面の硬化セメント質外層のそれぞれの厚さは、0.25インチ(0.64cm)から1.5インチ(3.81cm)の範囲である。
【0024】
通常、フランジは剛性断熱材の第2の面と面一であり、第2の面の表面領域が第1の面より大きく、剛性断熱材の第2の面の実質的に全体を覆う硬化セメント質外層は、フランジでの剛性断熱材の厚さによって、硬化セメント質内層から分離されている。
【0025】
好ましくは、剛性断熱材の(i)第1の側部と第2の側部、及び(ii)第1の端部と第2の端部の両方が、棚面の両側をそれぞれ形成して、硬化セメント質内層が、シート状の剛性断熱材の周囲全体の周りで厚くなるようにする。
【0026】
1つの配置では、硬化セメント質内層は、両側のフランジの一方から他方に亘る、切れ目のない埋め込み補強基板を備えている。
本発明のさらに別の態様によれば、以下を含むプレハブ断熱建築用パネルが提供される:
反対の方向に向き、シート状の剛性断熱材の周囲を集合的に画定するシートの第1の面と第2の面を集合的に範囲設定する両側の第1及び第2の側部と両側の第1及び第2の端部を有するシート状の剛性断熱材、
パネルに加えられた荷重を支えるための、剛性断熱材の第1の面に接続された内部構造層、
各々が剛性断熱材の第2の面から窪んだベースを有する複数の溝を第2の面に画定する剛性断熱材、
シートの周囲で終端するそれぞれの溝の端部で開口するように、剛性断熱材の第2の面の位置からシートの周囲に延びる溝、
複合セメント質材料であって、硬化セメント質層が剛性断熱材との結合作用により剛性断熱材の第2の面で支えられるように、剛性断熱材の第2の面から外層の外面まで測定される厚さを有する硬化セメント質外層を設けるために、剛性断熱材の第2の面に結合される複合セメント質材料、
パネルの外側にパネルの周囲の内部の位置から流体が流れるための通路を画定するために、溝のベースの反対側に閉鎖され、円周方向に囲まれるチャネルを画定するように溝を覆う複合セメント質材料、及び
剛性断熱材の第2の面と、それぞれのベースに第2の面から延びる溝の側壁との間に形成される溝の外側縁部を包み、複合セメント質材料が溝の中に延びるようにし、チャネルそれぞれがそれぞれの溝の側壁の一方から他方に亘る複合セメント質材料、溝のベース、及び溝の側壁の各々の一部分によって集合的に画定される、複合セメント質材料。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、以下を含むプレハブ断熱建築用パネルが提供される:
反対の方向に向き、シート状の剛性断熱材の周囲を集合的に画定するシートの第1の面と第2の面について集合的に範囲設定する両側の第1及び第2の側部と両側の第1及び第2の端部を有するシート状の剛性断熱材、
外側に延びる一対の両側のフランジを形成し、剛性断熱材の第1の面と略平行に向いているが、そこから窪んでいる、剛性断熱材の周囲に沿った棚面を画定するようにし、そのため、棚面の各々が、それぞれの棚面と第1の面に対して横向きの移行面によって第1の面と相互接続される、剛性断熱材の(i)第1の側部と第2の側部、または(ii)第1の端部と第2の端部の少なくとも1つ、
前記棚面の1つから、剛性断熱第1の面を横切って棚面の他方に延びる第1の切れ目のない硬化セメント質層を設ける剛性断熱材の第1の面、棚面、及び移行面に結合された複合セメント質材料であって、第1の硬化セメント質層が剛性断熱材の第1の面から、第1の面と棚面の反対側の第1の硬化セメント質層の外面まで測定される厚さを有する、複合セメント質材料、
複合セメント質材料であって、剛性断熱材の第2の面からその反対側にある第2の硬化セメント質層の外面まで測定される厚さを有する第2の硬化セメント質層を設けるために、剛性断熱材の前記第2の面に結合される複合セメント質材料、及び
外面と、剛性断熱材の第1及び第2の面の対応するものとの間の厚さに各々寸法決めされ、剛性断熱材の第1及び第2の面の対応するもので、結合作用により支えられるようにする、第1及び第2の硬化セメント質層。
【0028】
好ましくは、外面及び剛性断熱材の第1及び第2の面の対応するものの間にある第1及び第2の硬化セメント質層のそれぞれの厚さが、0.25インチ(0.64cm)から1.5インチ(3.81cm)の範囲である。
【0029】
1つの配置では、フランジは剛性断熱材の第2の面と面一であり、第2の面の表面領域が第1の面の表面領域より大きく、剛性断熱材の第2の面の実質的に全体を覆う硬化セメント質外層は、フランジでの剛性断熱材の厚さによって、硬化セメント質内層から分離されている。
【0030】
1つの配置では、剛性断熱材の(i)第1の側部と第2の側部、及び(ii)第1の端部と第2の端部の両方が、棚面の両側をそれぞれ形成して、第1の硬化セメント質層が、シート状の剛性断熱材の周囲全体の周りで厚くなるようにする。
【0031】
1つの配置では、第1の硬化セメント質層は、両側のフランジの一方から他方に亘る、切れ目のない埋め込み補強基板を備えている。
1つの配置では、第1及び第2の硬化セメント質層の各々に、硬化セメント質内層及び外層の一方の内部の場所から剛性断熱材の厚さを超えて、硬化セメント質内層及び外層の他方に延び、第1及び第2の硬化セメント質層を相互接続するようにする相互接続ファスナーがない。
【0032】
これより、本発明が添付の図面と関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】パネルの様々な層を見るためにパネルの一部が切り取られている、本発明によるプレハブ断熱建築用パネルの配置の斜視図である。
図2図1のプレハブ断熱建築用パネルの配置の正面図である。
図3図1の線3-3に沿った断面図であり、説明を明確にするためにいくつかの構成要素が省かれている。
図4図3のIに示されている部分拡大図である。
図5図3のIIに示されている部分拡大図である。
図6】本発明によるプレハブ断熱建築用パネルの別の配置の斜視図であり、その剛性断熱材のみを示している。
図7図6の配置の立面図である。
図8】パネルの様々な層を見るためにパネルの一部が切り取られている、本発明のプレハブ断熱建築用パネルのさらなる配置の斜視図である。
図9図8の線9-9に沿った水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面では、同様の参照符号は、異なる図面の対応する部分を示している。
添付の図は、建物の壁、屋根、または床を形成するための同様のパネルで使用できるプレハブ断熱建築用パネルを示している。
【0035】
10に示されているパネルは、シート状の剛性の独立気泡断熱材12、例えば発泡スチロール(EPS)(例えば、EPSタイプ2)、業界で剛性ロックウールとしても公知の剛性ミネラルウール、または剛性ポリウレタンまたはポリイノシネート(polyinosinate)で構成されている。シート状の断熱材12は、全体的な形状が長方形であり、対向している左右の側部14、15ならびに対向している上端及び下端17、18を有する。これらは、平坦で互いに平行で、反対方向に向いているシートの内面19及び外面20を集合的に範囲設定する。また、シートの左右の側部14、15ならびに上端及び下端17、18は、シート状の剛性断熱材12の周囲を集合的に範囲設定する。例えば左右として側部について、また上下として端部について言及することは、非限定的なことであり、パネル10が建物の建設にどのように使用されるかに応じて多様な様式で配向され得るため、パネル10が好都合に言及するのに簡便であるということが認識されよう。
【0036】
パネルに加えられた荷重の少なくとも一部を支えるためのパネルの内部構造層23は、複合セメント質材料24を含み、これは断熱材12と接触して配置されている間に硬化し、硬化セメント質層が、シート12の内面19への結合作用により、断熱材シートへ接続される。硬化セメント質内層23は、シートの内面19からセメント質層の外面または遠位面26までで測定される厚さを有し、その結果、層23を形成する材料の総量の重量は、断熱材に関連して結合作用のみで支えることができる。
【0037】
硬化セメント質内層23を形成する複合セメント質材料24は、非収縮、高速硬化、高柔軟性、セルフレベリング、強化繊維、破砕岩石不含有のため、層を鋳造するときの製造プロセス中やパネルの強さに関して使用する際など、最高の性能が得られる。そのような材料の一例は、スルホアルミン酸カルシウム(CSA)セメントを含む。
【0038】
断熱材12の横方向に離間した左右の側部14、15と縦方向に離間した上端と下端17、18の各対は、低断熱材料の対向する外側に延びるフランジ28、29、及び31、32の対を形成し、内面19と外面20との間で測定されるよりも薄い厚さを有するようにする。フランジ28、29及び31、32は、断熱シート12の全周に沿って棚面34を画定する。棚面34は平坦であり、シート12の内面19に平行に向けられているが、内面19から窪んでおり、棚面のそれぞれ1つは、それぞれの棚面34及び内面に横方向に垂直に向けられた平面移行面36によって相互接続される。したがって、移行面36は、内面19と棚面16の両方に垂直に向けられる。フランジは、その内面19上のシート12の縁部分の切り欠きとして形成され、長方形のブロックが、最初完全に長方形の断熱材シートの内面19の縁に沿って取り除かれる。棚面34と反対側にあるフランジ28、29、及び31、32のそれぞれの側は平面であり、シート12の外面20と面一であり、外面20の表面領域は内面19よりも大きい。
【0039】
硬化セメント質内層23は、断熱材12の内面19を完全に覆うだけでなく、シートの内面19と移行面36の間に形成された縁38を包み、棚面34まで延びて棚面に結合され、移行面36にも結合される。したがって、内層の内面19と外面26との間で測定される剛性断熱材の内面19における硬化セメント質内層の厚さよりも厚い、棚面34から内層23の外面26まで測定される硬化複合セメント質材料の厚さを有する硬化セメント質層23の厚い縁部分40が、棚面34の対向する各対に形成される。硬化セメント質内層23は、両側の各対の棚面のうちの一方の棚面34から、内面19を横切り、その対の棚面34の他方まで切れ目がなく、材料の共通の一体層を形成する。これは、縁部が厚く、断熱シートの周囲全体に沿っており、反対側の側部14、15の間の横方向と、反対側の端部17、18の間の長手方向の両方で、硬化セメント質材料の層を硬化させながら、内部層23の大部分を形成する内面の厚さを減少させることにより層の重量を最小限にしている。内層23のそれぞれの厚い縁部分40は、隣接する切れ目がない移行面36の反対側にあるその自由遠位端からその表面36まで棚面34の幅全体に亘る、増大した厚みを含む。移行面36からフランジの自由端の間で測定された縁部分40の幅は、セメント質層の内面19と外面26との間で測定された層23の厚さに実質的に等しい。パネルの製造中、内層23は連続層として鋳造され、内層の外面26は、断熱の内面19と対向する各対の棚面34を覆う全表面領域にわたって平坦である。
【0040】
硬化セメント質内層23はまた、硬化セメント質材料24に埋め込まれた可撓性メッシュ、例えばガラス繊維スクリムまたは炭素繊維メッシュの形態の切れ目がない補強基板43を含む。補強基板43は、パネルの横方向及び長手方向の両方で、一方のフランジから反対側のフランジに及ぶ。基板43は、単に断熱シート12の内面19の上に基板43を置き、縁38の上に垂下して棚面に下向きに依拠することにより、層23に埋め込まれ、固化していない複合セメント質材料が注がれるときに、この材料は、メッシュ基板に画定された開口部45の周りを流れ、その結果、複合セメント質材料は、断熱シートと内層23の露出した外面との間の中間の位置に埋め込まれた基板43と共に硬化する。補強基板43が断熱シート12の幅減少部分の全周に広がり、棚面34に垂直に向けられていること、及び棚面34から硬化セメント質内層23の外面26に向かって全体的に延びることに加えて、やはりメッシュの形態の二次補強基板46を、厚い縁部分40に配置してもよい。したがって、2つの補強基板43、46は、厚い縁部分で互いに重なり合う。
【0041】
断熱材12は、内面19に中央トラフ47を画定し、トラフ47の長手方向に延びる少なくとも1つの金属補強バー48を受け入れる。断熱シートの長手方向に延び、いずれかの端部17、18で開口しているトラフ47は、一対の両側の側壁51、52を有し、これは内面19と切れ目がなく、そこから内面19と平行であるが離間した凹所にあるトラフベース54まで延びる。トラフベース54は、トラフ47の深さが断熱シートの厚さ方向の距離に等しくなるように棚面34と同一平面上にあり、それによって棚面34が内面19から窪んでいる。両側の側壁51、52の間のトラフ47の幅は、約1.5インチ(3.81cm)である。少なくとも1つの補強バー48は、トラフベース54及び側壁51、52から離間した位置でトラフ47に配置され、トラフにある複数の従来式のクレードルによって製造中にそこで支えられ、その結果、固化していないセメント質材料が重力によってトラフとそれぞれの補強バーの周りに流れ込む。このようにすると、当技術分野で従来から理解されているように、硬化セメント質内層にTビームが形成される。
【0042】
剛性断熱材12は、その外面20に、それぞれベース57が断熱シート12の外面20から窪んだ複数の細長い溝56と、ベース57から外面20に延びる両側の側壁59、60とを画定し、縁部62で切れ目がないようにする。溝ベース57は、断熱シート12の厚さ方向に断熱材をその間に残すように棚面34から離間されている。
【0043】
そのため、断熱材12の外面20からベース57までの各溝56の深さは、通常、内面19と外面20の間で測定された断熱材の厚さの半分未満であり、これは、本明細書で説明するようにチャネル44が使用される目的としては十分である。例えば、溝56は、深さが0.75インチ(1.91cm)、幅31が0.5インチ(1.27cm)であってもよい。また、これにより、溝のベース57と断熱シート12の内面19との間に十分な断熱材12が残り、図示の配置で深さが内面19と外面20の間の断熱材の4インチ(10.16cm)の厚さの18.75%であるようなチャネルが存在しないかのように、実質的に同様の断熱特性をもたらす。また、トラフ47のベース54と同一平面上にある外面20と棚面34との間の断熱材の厚さが薄くなっても、厚い縁部分40及びトラフ47の幅は、パネル10の幅全体と比較して小さく、正味の断熱効果は依然として比較的高く、すぐに理解されるように、いずれのサーマルブリッジもないことによってさらに改善される。
【0044】
断熱材12の溝56は、溝56Aの少なくとも1つがそれを横切る他の1つの溝56Bを貫通するように、交差するアレイで配置される。また、各々の溝は、図示の配置の交差するアレイが正方形のグリッドを含むため、断熱材の一方の側部14から反対側の側部15に向かって横方向または垂直横方向に延びる56Aのものを含む第1の溝のセットと、断熱材の一端部17から反対側の端部18に向かってパネルの長手方向に延びる56Bのものを含む第2の溝のセットを伴う複数のその他の溝と交差する。第1のセットの溝は互いに平行であり、第2のセットの溝は互いに平行であり、第1の溝のセットに対して垂直に横断する。
【0045】
また、溝56は、各々がその周囲の内側の断熱材12の外面20にある位置から、その断熱材の周囲に延びて、溝がパネル10の外部に連通しているようにする。図示の実施形態の各溝は、断熱材の一方の側部または端部の周囲から、反対側の側部または端部の断熱材の周囲まで延びており、その結果、溝は、溝の両方の終端部のパネル10の外側へ開口している。
【0046】
溝56は、硬化複合セメント質材料66の外層65により覆われており、これは、剛性断熱材12の外面20に結合され、外面20全体を覆うが、フランジ28、29、31及び32における剛性断熱材12の厚さで硬化セメント質内層23から分離されている。このようにして、複数の管状チャネル68が形成され、これらは、溝ベース57の反対側で閉じて、パネルの周囲内部の位置からパネルの外側へ流体が流れるための円周方向に囲まれた経路を画定する。この複合セメント質材料66は、内部構造層23を形成するのと同じタイプであり、硬化セメント質外層65は、断熱材の外面20からセメント質層の外面または遠位面70まで測定される厚さを有し、層65を形成する材料の総量の重量を、結合作用のみによって断熱材に関連させて支えることが可能である。
【0047】
硬化セメント質層23、65のそれぞれの厚さは、実質的に0.5インチ(1.27cm)に等しいが、一般に、0.25インチ(0.64cm)から1.5インチ(3.81cm)の間の第1の厚さの範囲、または0.3インチ(0.76cm)から1インチ(2.54cm)の間の第2の厚さの範囲にあり得る。
【0048】
2つのセメント質層は、結合作用のみで断熱材12に接続されているため、パネル10には、例えば、複合セメント質材料から断熱材の厚さ全体に渡された金属ファスナーなどの断熱材にいずれかの層を直接固定するファスナーやアンカーがなく、内側の構造層に固定されるようにする。結果として、断熱材12は、いずれかのそのような非断熱性の熱伝導性物体によって中断されず、内部の位置から、当該の橋絡非断熱性物体が内部構造層23に接触している場所まで延びるか、断熱材の外面20と接触している結合面で硬化セメント質層と少なくとも接触することによって、硬化セメント質外層65と内部構造層23との間を橋絡する。
【0049】
パネルが、建設現場で処理され、適切にそれらの所望の位置に操縦することができるように、当技術分野において理解されているように、本明細書に記載のタイプの建築パネルは、比較的軽量にすることが望ましい。複合セメント質材料の比較的薄い層を使用することにより、その内面19と外面20の間の断熱材12の厚さは、本発明のパネル10の断熱特性、つまりR値を増強するために、従来式の配置で使用される厚さよりも増大し得るが、パネルは適切な重量を維持する。したがって、断熱材12は、硬化セメント質層の数倍、例えば、断熱シート12の面とそのセメント質層の外面との間の内層または外層のいずれかを形成する複合セメント質材料の厚さの3~30倍であり得る。図示の実施形態では、内面19と外面20との間の断熱材の厚さは実質的に4インチ(10.16cm)に等しく、したがって、0.5インチ(1.27cm)の厚さの硬化セメント質層よりも8倍厚い。しかし、一般的に言えば、パネル10では、断熱材の厚さは、硬化セメント質層23、65よりも3~10、4~8または5~30倍程度厚くてもよい。
【0050】
外層65の複合セメント質材料66は、断熱材12の外面20に結合するだけでなく、縁62を包み、そこで外面が溝の側壁59、60、つまり溝56の外側縁部と交わり、溝56の中に延び、溝ベース57から遠位の側壁59、60の一部に結合される。これは、断熱材のみの平坦な外面20での結合よりも、断熱材12へのより強い接続を実現する。さらに、図1にかかることが示されているが、この図では、断熱材12及び内層23は、単に図1には完全には示されていない溝56に対応する硬化セメント質外層65の内側結合面73に画定された複数の交差する隆起72が切り欠いている。
【0051】
このように、各チャネル68は、溝の一方の側壁59から他方の60までに亘り、結合させていない硬化セメント質面72Aを設けるようにする複合セメント質材料、溝のベース57、及びベース57から断熱材の外面20から内向きに離間した位置まで延びる溝の各側部の一部分75によって画定される。典型的には、セメント質材料は、溝56の深さの約3分の1溝において延び、溝の深さの約3分の2を空隙とする。したがって、一般的に言えば、チャネルはそれぞれ、(i)ベース57が外面20から窪んでいる断熱材の外面20の溝30、及び(ii)溝のベース57から離間した位置で溝56に亘る複合セメント質材料66によって集合的に画定されており、円周方向に閉じているが、パネルの外側との流体連通のために、断熱材12の周囲に位置するチャネル端部で開口しているようにする。結果として形成されたチャネル68は、長方形の断面を有する。
【0052】
チャネル68は、特に建築パネル10の硬化セメント質層が建物の外壁面を画定する場合に、パネルに対する均圧化と水分排出機能を実現し、パネルが強風の間増加する大気の空圧に対して均圧化でき、硬化セメント質外層65の亀裂や開口部、例えばコンクリートの細孔を通して、水分を含んだ空気を強制的に追いやる傾向がある。そのような状況下では、硬化セメント質層を通るいずれの生じた水分も、重力によってチャネルを通ってパネルの底部に移動し、外部に排出される。
【0053】
硬化セメント質外層65はまた、断熱シート12の外面20の表面領域に実質的に広がるメッシュの形態の補強基板77を含む。
パネル10を形成する方法は、下向きの断熱材の外面20を、水平鋳造床のフォームによって含まれる固化していない複合セメント質材料の本体へと下げることによって、溝56を伴う断熱材12を配置するステップを含む。シート状の断熱材12が固化していない複合セメント質材料に降ろされると、断熱シートの周囲から離間した位置(複数可)で断熱材12と固化していない複合セメント質材料との間に空気が閉じ込められ得、空気のポケットが形成され得る。しかし、この閉じ込められた空気は、溝56に沿ってパネルの外側に逃がすことができる。さらに、溝56のグリッドによって画定された流体通路のネットワークは、断熱材の外面20上の実質的に任意の場所に非常に近接した放出経路を設け、閉じ込められた空気は、空気を押し出すためにパネルに加えられる重大な(外部の)下向きの圧力なしでパネルの外側に容易に放出され得る。このようにして、複合セメント質材料は、断熱材の外面20の全表面領域にわたって結合することができる。
【0054】
これを行った後、また断熱材の外面にある複合セメント質材料が硬化した後、上向きの断熱材12の反対側の内面19に鋳造フォームを配置し、その上に複合セメント質材料の層を鋳造する。第2のセメント質層のこの上向きの鋳造では、固化していない複合セメント質材料が、最初にトラフ47の中及び棚面34の上方に注がれ、断熱材12に結合するように硬化するために放置される。これらの領域には、断熱材の内面19と水平に硬化セメント質材料が含まれているため、均一な厚さの固化していない複合セメント質材料が内面19の表面領域全体に注がれ、棚面34とトラフ47で以前に硬化した部分を覆い、それにより、断熱材の内面でパネルを覆う。
【0055】
複合セメント質材料66が硬化して断熱材の外面20に結合された後、パネルを上げることによってパネル10を鋳造床から取り除く。硬化セメント質外層の外面70は、その後、塗料、アクリルスタッコ、コルクスタッコ、磁器タイル、サイディング、石及びレンガベニヤなどで処理して、複合セメント質材料に装飾の仕上げを施し、その中の開口部をシールすることができる。例えば、アクリルスタッコが所望の装飾の仕上げである場合、適切なアクリルスタッコプライマーが、硬化セメント質層の外面70に塗布され、その後にアクリルスタッコが塗布される。
【0056】
このようにして、工場で製造され、それぞれのパネルを形成するための追加の組み立てが現場で不要で、不燃性であり、外装が完成しており、パネルに形成された開口部67に挿入される工場で設置される窓を含め得る、耐荷重性のプレハブ断熱建築用パネルが提供される。
【0057】
図6及び図7には、パネルの長手方向に対して斜めになるように、溝が一方の側部14または15からその端部17または18に向かう方向(一端部17から反対側の端部18)に直線に延びている溝のグリッドのアレイが示されている。例えば、図6に示される溝56Eは、長手方向に対して斜めの角度で側部15と端部17との間に延在し、溝56Fは、長手方向に対して斜めの角度で側部15と端部18との間に延在する。したがって、各溝56は、図示の配置では45度の傾斜角で断熱材20のそれぞれの側部または端部と交わる。結局、特にパネルが図6及び図7に示すように使用時に直立している場合、交差する溝のこのような配置では、チャネルの水平方向の長さはない。それにおいては水分が溜まるまたは静止でき、パネルのいずれの側部または端部がパネルの直立状態で上部にあるかに関係なく、各溝の全長に沿ったそれぞれのパネルの外側に重力が水を運ぶことができる。
【0058】
いくつかの配置では、特にパネルを壁の形成に使用する場合、溝とチャネルはパネルの端部にのみ到達し得、側部から離間した位置で終了し得、グリッドまたはチャネルの交差するアレイが重力によって水を下向きに運び、水平に隣接するパネル間の接合部で強化されたシーリングのための連続した途切れのない側部を実現することが理解されよう。
【0059】
図6及び図7は、例えば窓またはドアなどのパネルにおける「貫通」を受け入れるのに適したパネル10の中央に形成された開口部79も示すことが理解されよう。
このように、パネル10は、硬化複合セメント質層23と65の間に挟まれた剛性断熱材20を含み、そのそれぞれは、断熱材の面19、20で結合作用によって接続され、したがって、同じであってよい複合セメント質材料の厚さを備える。
【0060】
本明細書で説明するパネルの配置は、プレキャストコンクリートとSIPの両方であるユニット化されたパネルを提供する。超高性能コンクリートなどの複合セメント質材料を採用することで、パネルは耐荷重壁、床、屋根、及びバルコニーを形成できる。硬化セメント質層の厚さに起因して、これらの層は「ウェットキャスト」でき、そのため硬化セメント質層と断熱材の間にいずれの接着剤もなしで複合セメント質材料の結合作用により剛性断熱材に関連して支えられる。
【0061】
本明細書で説明するパネルの構成は、簡便な言及のためにプレキャスト建築コンクリート(PAC)SIPと呼ばれる場合があるものであり、先行技術のプレキャストコンクリートサンドイッチパネルと異なって、結合作用だけで十分なため、剛性断熱材とパネル構成要素とを含むパネルの残りの部分に硬化セメント質層を接続するための機械的な結合を省くことができる。
【0062】
超高性能コンクリートなどの複合セメント質材料の高い圧縮及び曲げ特性により、複数階の建物の耐荷重性としてパネルを積み重ねることができる。さらに、軽量のため、パネルは以前のすべてのパネルよりもはるかに大きくなり得る。
【0063】
外部コンクリート層の背後にある空気チャネルを均圧化することで、風力駆動式の水分の管理ができる。
硬化セメント質層23、65にTビームと補強基板シートを組み込むと、パネルが追加の強度をもたらし、パネルが支えることができる荷重が増加する。構造は、パネルが以下の方法で使用される場合に組み込まれることが好ましい:
i.土のフィルが地上の壁よりも高い極端な圧力を加える外部構造壁の場合のように、垂直である;
ii.地上の垂直な壁が2階を超える階を支える。建物が高くなるほど、下の階にかかる圧力が高くなる;
iii.15フィート(4.57m)を超える非常に高い壁としての垂直パネル;
iv.極端な風の荷重がある領域の外壁としての垂直パネル;
v.内部耐荷重性消失の壁;
vi.エレベータシャフトの壁;
vii.商業能力を有するまたは積雪による屋根の増加した積載量を支える水平な床または屋根用パネル;
viii.駐車場で使用される水平パネル;
ix.積雪荷重を含む長い範囲のバルコニー。
【0064】
内部構造層23の厚い縁部分40は、接合部を間に形成するように隣接するパネルを互いに接続するのに適した表面を備える。厚い縁部分40はまた、火災の場合に接合部を保護するのに機能する。
【0065】
チャネル68は、外層65に浸透する水分の排出以外の他目的で使用できる。例えば、チャネル68は、電気配線、下水管及び給水管などの配管導管、床内放射加熱管、消火用スプリンクラー給水管、及びセンサーを受け入れることができる。
【0066】
隣接するパネル間の接合部は、次の方法で形成できる。
a)幅1/8インチ(0.32cm)、深さ1/4インチ(0.64cm)の垂直接合部の縁の溝が、パネルの周辺に沿って硬化セメント質材料に深く切り込む。
【0067】
b)設置している間、隣接するパネルは約3/8インチ(0.95cm)離間している。
c)第2のパネルを設置する前に、両面フォームシールテープを剛性断熱材に貼り付ける。第2のパネルが隣接する場所に配置されると、引かれてフォームシールテープに対して圧縮される。これにより、パネルの接合部が水密と気密の両方になる。
【0068】
d)パネルの前面で、事前に仕上げられた板金のストリップが、パネルの上部から両方のパネルのコンクリートベニアに切り込まれた溝に滑り落ちる。これは、金属ストリップの真後ろにあるフォームシールを保護するために、太陽と火の視覚的なシールと実用的なシールを設ける。
【0069】
e)パネル接合部の内側のフォームシールには、スプレーフォームが接合部に注入される。
f)フォームロッドが接合部に押し込まれ、注入されたスプレーフォームを隠し、仕上げの深さを一定にする。
【0070】
g)ポリウレタンがコーキングされ、内側の隙間のある接合部に工具で固定されて、シールが完成する。
内部構造層が長方形の金属ベースフレーム82を複合セメント質材料の硬化層の代わりに含む、パネル10’として示されている、前述したパネル10の変形例を、図8及び図9に示している。
【0071】
長方形の金属ベースフレーム82は、フレームの両側の側部部材83A、83Bと、フレームの周囲を形成するフレームの両端部の端部部材83C、83Dと、を含む、複数の細長い金属部材83で形成されている。これらのフレーム周囲部材は管状である。中間金属部材83Eは、側部部材83A、83Bに対して平行な向きで、端部部材83C、83D間に亘るフレームの側部の間に等間隔で配置される。フレームの周囲の内側に位置するこれらの内部フレーム部材は、フレームの質量を低減するために、3つの側部と、第4の側部の両端にある内側に突出するフランジ部分を備えたC字型の断面であり得る。典型的には、鋼部材が、荷重を支えるのに十分な強度をもたらすフレームを形成するために使用される。したがって、フレームは、フレームの側部部材、中間部材、及び端部部材の狭い面89Aに沿って内側及び外側の平面87及び88を画定し、そのような各部材の厚さを画定する。したがって、壁を形成する際に使用される場合、フレーム82は、プレハブパネルの最も内側の層を形成し、その結果、面87の1つに、シート状の石膏(石膏ボード)Gを設置して、装飾的な内面を設けることができる。金属フレーム部材は、ねじファスナーを使用して互いに接続される場合と比較して、耐久性及び強度を高めるために、融合によって、すなわち溶接によって一緒に接続されてもよい。
【0072】
剛性断熱材12は、フレームの外面88に当接する内面19で金属フレーム82に接続される。
パネル10’は、フレーム82を組み立て、組み立てられたフレームに剛性断熱材12の層を固定することによって構成される。剛性断熱材は、断熱材の厚さを通って、フレーム部材13に固定されるねじファスナー89によってフレームの面88で所定の位置に保持され、プラスチック傘座金90がファスナー89の頭部から分岐して、フレーム部材83の狭い面89Aに塗布されたポリウレタン接着剤91が硬化して断熱材の内面をフレーム82に結合するまで、ファスナーによるフレームでの断熱材の保持を強化する。座金90とファスナー89のヘッドの両方が剛性断熱材の外面20から窪んでいるので、外側セメント質層の鋳造中に、固化していないセメント質材料と接触して配置されず、パネルのサーマルブリッジの形成を防ぐ。
【0073】
次に、フレーム82を含む部分的に形成されたパネルと断熱材12を、パネルの外側層65を形成するための固化していない複合セメント質材料の本体内への下向きの断熱材の外面20と下げる。
【0074】
特許請求の範囲は、例に記載されている好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈がなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9