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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】撮像装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/18 20210101AFI20240828BHJP
   G03B 7/20 20210101ALI20240828BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20240828BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240828BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20240828BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240828BHJP
   H04N 23/62 20230101ALI20240828BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20240828BHJP
【FI】
G03B17/18
G03B7/20
G03B11/00
G03B17/02
G03B17/14
H04N23/60
H04N23/62
H04N23/66
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021004499
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022109139
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉江 和彦
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-125873(JP,A)
【文献】特開2020-126181(JP,A)
【文献】特開2016-184101(JP,A)
【文献】特開平10-268380(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035643(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039146(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0068137(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017109254(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/18
G03B 7/20
G03B 11/00
G03B 17/02
G03B 17/14
H04N 23/60
H04N 23/62
H04N 23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞りを介して入射した被写体の光束を撮像可能な撮像手段を備えた撮像装置であって、
前記絞りの開口径に関する第1の値を設定する設定手段と、
前記撮像装置において現在設定されている前記第1の値を含む、設定可能な複数の前記第1の値を表示手段に表示させる際の表示制御を行う表示制御手段と、を有し、
前記表示制御手段は、前記設定手段により設定可能な複数の前記第1の値として、前記第1の値の変化と前記第1の値とは異なるレンズの明るさを示す第2の値の変化とが比例する第1の範囲と、比例しない第2の範囲が存在する場合、前記第2の範囲において、前記第2の値の変化を基準として前記第1の値の変化が離散的に表示されるように制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記第1の値が前記第1の範囲に含まれる場合に、前記第1の値が所定の間隔で選択可能に表示される第1の表示領域と、前記第1の値が前記第2の範囲に含まれる場合に、前記第2の値が所定の間隔で変化する場合の選択可能な前記第1の値が離散的に表示される第2の表示領域とを前記表示手段に表示させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像装置に装着されたレンズから、前記レンズの前記第1の値と前記第2の値の対応関係を示す変換テーブルを取得する取得手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記取得手段により取得された変換テーブルに基づいて前記第2の表示領域において前記第2の値が所定の間隔で変化する場合の選択可能な前記第1の値の間隔を決定することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記取得手段が前記変換テーブルを取得できない場合、前記撮像装置に装着されたレンズの前記第2の値と前記第1の値の変換テーブルを生成する生成手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記生成手段により生成された変換テーブルに基づいて前記第2の表示領域において前記第2の値が所定の間隔で変化する場合の選択可能な前記第1の値の間隔を決定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記第1の表示領域において選択可能な前記第1の値を所定の間隔で表示する第1の表示モードと、前記第2の表示領域において前記第2の値が所定の間隔で変化する場合の選択可能な前記第1の値の変化を離散的に表示する第2の表示モードのいずれかに切り替え可能であることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記撮像装置の電源をオフする際に設定されている表示モードを、前記撮像装置の起動時の表示モードとして設定することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の値は前記絞りの開口径に係るF値であり、前記第2の値は前記レンズを透過する光の透過率に係るT値であり、前記レンズは、前記撮像装置に対して着脱可能であり、アポダイゼーション(APD)フィルタが装着されたレンズであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1の値を設定するためにユーザ操作を受け付けることができる操作手段をさらに備え、
前記操作手段は、ユーザのタッチ操作またはダイヤル操作を検出可能であって、
前記表示制御手段は、ユーザによる前記操作手段の1操作に対する前記第1の値の変化が、前記設定手段により設定されている前記第1の値が前記第1の範囲に含まれるか前記第2の範囲に含まれるかで異なるように制御することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
絞りを介して入射した被写体の光束を撮像可能な撮像手段を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記絞りの開口径に関する第1の値を設定する設定ステップと、
前記撮像装置において現在設定されている前記第1の値を含む、設定可能な複数の前記第1の値を表示手段に表示させる際の表示制御を行う表示制御ステップと、を有し、
前記表示制御ステップでは、前記設定ステップにおいて設定可能な複数の前記第1の値として、前記第1の値の変化と前記第1の値とは異なるレンズの明るさを示す第2の値の変化とが比例する第1の範囲と、比例しない第2の範囲が存在する場合、前記第2の範囲において、前記第2の値の変化を基準として前記第1の値の変化が離散的に表示されるように制御することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の撮像装置の制御方法をコンピュータで実行させるための、コンピュータで読み込み可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの明るさの表示制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズに装着される、ボケ像を良好にするための光学フィルタの一例として、アポダイゼーション(APD)フィルタ(以下、APDフィルタ)がある。APDフィルタは、光軸中心から光軸と垂直な方向に離れるに従って透過率が低下するように構成されており、APDフィルタを用いるとボケ像の輪郭がなだらかになり、2線ボケやリングボケが緩和される。ポートレート撮影やマクロ撮影等の被写界深度の浅いことが望まれるシーンにおいて、背景像は輪郭の柔らかなボケ像となり、焦点の合った主被写体が引き立った品位の高い画像が得られる。
【0003】
APDフィルタは、上述したように光軸中心に対して周辺部の透過率が低下する特性、すなわち、レンズの明るさを示すF値とT値において、F値が開放になるほどF値の変化に対するT値(レンズのF値に透過率を加味した値)の変化量が低下する特性を有している。このため、APDフィルタが装着されたレンズは、F値の変化とT値の変化の関係が比例していない範囲が存在する。
【0004】
特許文献1には、F値の変化に対するT値の変化の比のずれに対してAF制御とAE制御を分離して行う技術が記載されている。また、APDフィルタが装着されたレンズのF値に透過率を加味したT値を表示することで、ユーザに光学的な明るさの状態を知らせる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6154081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カメラではレンズの光学的な明るさの状態をF値で表示する場合が多いが、APDフィルタのようにレンズの光学的な明るさがT値で表示されてしまうと、レンズのF値(絞り)の状態がわからなかったり、ユーザが設定したF値との関係がわかりにくくなったりする可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、ユーザが絞りの開口径に関する第1の値と第1の値とは異なるレンズの明るさを示す第2の値との関係を容易に把握しながら、第1の値の設定を行うことが可能となる技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の撮像装置は、絞りを介して入射した被写体の光束を撮像可能な撮像手段を備えた撮像装置であって、前記絞りの開口径に関する第1の値を設定する設定手段と、前記撮像装置において現在設定されている前記第1の値を含む、設定可能な複数の前記第1の値を表示手段に表示させる際の表示制御を行う表示制御手段と、を有し、前記表示制御手段は、前記設定手段により設定可能な複数の前記第1の値として、前記第1の値の変化と前記第1の値とは異なるレンズの明るさを示す第2の値の変化とが比例する第1の範囲と、比例しない第2の範囲が存在する場合、前記第2の範囲において、前記第2の値の変化を基準として前記第1の値の変化が離散的に表示されるように制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザが絞りの開口径に関する第1の値と第1の値とは異なるレンズの明るさを示す第2の値との関係を容易に把握しながら、第1の値の設定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のカメラとレンズの構成を示すブロック図。
図2】本実施形態のAPDフィルタの説明図。
図3】APDフィルタが装着されたレンズのF値とT値の関係を例示する図。
図4】本実施形態のカメラにおけるレンズ装着時の処理を示すフローチャート。
図5】本実施形態のT値F値変換テーブルを例示する図。
図6】本実施形態のカメラにおける絞り変更操作時の処理を示すフローチャート。
図7】本実施形態のカメラにおける絞り設定画面を例示する図。
図8】本実施形態のカメラにおける絞り変更操作時の処理の変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
[実施形態1]
以下に、本発明の撮像装置を、レンズ交換式のデジタルカメラに適用した実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
なお、本発明の撮像装置はレンズ交換式のデジタルカメラに限定されるものではなく、例えば、レンズがカメラに内蔵されていてもよい。また、本発明の撮像装置はデジタルカメラに限定されるものではなく、絞りの開口径に関するF値やレンズを透過する光の透過率に係るT値を設定可能なカメラ機能を有する装置であれば適用可能である。
【0014】
<装置構成>図1を参照して、本実施形態のデジタルカメラ(以下、カメラ)およびレンズの構成および機能について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のカメラ100およびレンズユニット200の構成を示すブロック図である。
【0016】
まず、レンズユニット200の構成および機能について説明する。
【0017】
図1において、レンズユニット200は、レンズマウント201、レンズ202、APDフィルタ203、絞り204、レンズ駆動部205、絞り駆動部206、レンズ制御部207を有し、カメラ100に対して着脱可能である。レンズマウント201は、レンズユニット200をカメラ100に機械的に接続するための接続機構と、レンズユニット200をカメラ100と通信可能に接続するための通信端子を有する。レンズ202は、ズームレンズやフォーカスレンズなどの複数枚のレンズから構成されている。レンズ制御部207は、レンズユニット200の全体を制御する、例えばCPUやMPUなどの演算処理装置である。レンズ制御部207は、レンズマウント201およびカメラ100のカメラマウント101を介してカメラ100のカメラ制御部107と通信し、絞り駆動部206を制御して絞り204の開口径を調整することで適正な露出状態とし、レンズ駆動部205を制御してレンズ202の位置を変位させることで焦点を合わせる。
【0018】
また、レンズユニット200は、レンズ202の後段であって、絞り204の前段の光路上に、APD(アポダイゼーション)フィルタ203が装着される。
【0019】
図2は、APDフィルタ203の説明図である。APDフィルタ203の光学特性を表す指標として光学濃度あるいは光透過率が用いられる。APDフィルタ203の光透過率Pと絞り口径F値から光量T値は以下の式1で表される。
(式1)
T=F/P1/2
式1において、光透過率Pは、絞り204が形成する光束通過開口内の全領域における平均値が用いられる。
【0020】
APDフィルタ203は、光軸中心に対してレンズ202の周辺部の光透過率が低下するという光学特性、すなわち、APDフィルタ203の光透過率は絞り204の開口径に依存し、F値が開放になるほどF値の変化に対するT値の変化量が低下する光学特性を有している。このため、F値の変化とT値の変化の関係が比例している第1の範囲と、F値の変化とT値の変化の関係が比例していない第2の範囲(例えば、F値の変化が線形であるのに対して、T値が非線形に変化する範囲)が存在する。
【0021】
図3はレンズユニット200にAPDフィルタ203が装着されている場合のF値とT値の関係を説明する図である。図3において、横軸は絞り204の開口径によって決まるF値である。縦軸はAPDフィルタ203の光透過率Pと絞り204のF値によって決まるT値である。
【0022】
図3に示すように、絞り204の開口径が小さい(F値が大きい)ほどT値とF値の差が小さくなり、F値が8のあたりでT値とF値は一致して線形に変化する。反対に、絞り204の開口径が大きい(F値が小さい)ほどF値が8より開放側でT値とF値の差が大きくなり、F値が線形に変化するのに対してT値は非線形に変化する。そして、開放絞り時は、APDフィルタ203の効果は最大となるが、光量の損失も最大となる一方、小絞り時はF値が大きくなるほど減光段数は減少し、APDフィルタ203の効果も減少する。
【0023】
次に、カメラ100の構成および機能について説明する。
【0024】
図1において、カメラマウント101は、レンズユニット200をカメラ100に機械的に接続するための接続機構と、レンズユニット200をカメラ100と通信可能に接続するための通信端子を有する。
【0025】
シャッター102は、カメラ制御部107の指示に応じて、レンズユニット200を介して入射した被写体の光束を撮像可能な撮像部103における露光時間を自由に制御できるフォーカルプレーンシャッターである。撮像部103は、レンズユニット200とシャッター102からなる撮像光学系により形成された被写体像を電気信号に変換するCCDやCMOS等の光電変換素子で構成されたイメージセンサと、イメージセンサから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を有する。本実施形態では、フォーカルプレーンシャッターにより撮像部103の露光時間を調節する構成であるが、これに限らず、例えば、撮像部103が電子シャッター機能を有し、制御パルスにより露光時間を調節する構成であってもよい。
【0026】
映像信号処理部104は、撮像部103から転送されるデジタル画像データに対して、ホワイトバランス、色補間、色補正、γ変換、エッジ強調、解像度変換、ノイズ低減などの処理や、画像の明るさ、コントラスト等の解析処理を行い、処理済みの画像データをメモリ105に出力する。映像信号処理部104から出力される解析結果データは、露出制御、オートフォーカス制御に利用される。
【0027】
メモリ105は、映像信号処理部104から出力される画像データ、不揮発性メモリ106から読み出したプログラムやデータなどを一時的に記憶するRAMである。不揮発性メモリ106は、カメラ制御部107の動作用の定数、プログラム等を記憶するROMである。ここでいう、プログラムとは、後述するフローチャートを実行するためのプログラムのことである。
【0028】
タイミング発生部108は、カメラ制御部107の制御に従い、撮像部103と映像信号処理部104にタイミング信号を供給する。また、タイミング発生部108は、撮像部103に蓄積された電荷のリセットタイミングを制御することで、撮像部103における電荷の蓄積および排出の動作を制御することができる。
【0029】
バス109は、カメラマウント101、メモリ105、不揮発性メモリ106、タイミング発生部108、電源部110、表示制御部111、タッチパネル112、記憶媒体インタフェース113、操作部114を相互にデータ通信可能に接続すると共に、各種のスイッチ類が接続される。なお、上述の各種のスイッチ類は、メインスイッチ121、第1シャッタースイッチ122、第2シャッタースイッチ123を含む。
【0030】
操作部114は、例えば、マウスやタッチパッドといったポインティングデバイス、決定ボタン、上下左右ボタン、ダイヤル、ジョイスティックなどを含む、ユーザ操作を受け付けるための入力デバイスである。
【0031】
電源部110は、カメラ100の内部に設けられている各路に電源供給を行う。
【0032】
表示制御部111は、バス109を介してタイミング発生部108から供給されるタイミング信号に応じて、メモリ105に保持されている表示用画像データをD/A変換部115においてデジタル画像データから表示用のアナログ画像データへ変換する。変換されたアナログ画像データは、LCDや有機ELなどの表示部116または、アナログ出力部117またはデジタル出力部118を介して外部の表示機器(不図示)などに表示される。アナログ出力部117は、例えば、コンポジット端子、S映像端子、D端子、コンポーネント端子、アナログRGB端子であり、デジタル出力部118は、例えば、DVI端子、HDMI(登録商標)端子である。
【0033】
タッチパネル112は、表示部116の表示面に一体的に構成され、表示部116の表示面に対するユーザのタッチ操作を検出可能であり、ユーザがタッチした位置を座標情報としてカメラ制御部107に通知する。
【0034】
記憶媒体スロット119は、メモリカード等の記憶媒体120を着脱可能である。記憶媒体120は、記憶媒体スロット119に装着された状態で記憶媒体インタフェース113と電気的に接続され、メモリ105に保持されている画像データを記憶媒体120へ記録すること、また、記憶媒体120に記録されているデータを読み出すことが可能である。
【0035】
カメラ制御部107は、カメラ100の全体を制御する、例えばCPUやMPUなどの演算処理装置である。カメラ制御部107は、不揮発性メモリ106に格納されたプログラムを実行することで、後述するフローチャートの各処理を実現する。メモリ105は、カメラ制御部107の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ106から読み出したプログラムなどを展開するワークメモリとしても使用される。また、カメラ制御部107は、後述する自動露出制御などを行う。
【0036】
本実施形態では、カメラ制御部107は、バス109を介して映像信号処理部104、タイミング発生部108、表示制御部111を制御することにより、カメラ100の各構成要素の動作を制御する。また、カメラ制御部107は、カメラマウント101の通信端子を介してレンズ制御部207へ指示を行う。なお、カメラ制御部107がカメラ100の各構成要素の動作を直接制御するような構成であってもよいし、映像信号処理部104、タイミング発生部108および表示制御部111が連動して制御(処理)を行うことでカメラ100の各構成要素の動作を制御してもよい。
【0037】
[カメラ100の基本動作]
次に、図1を参照して、本実施形態のカメラ100の基本動作について説明する。まず、ユーザによりメインスイッチ121がオンされることで、電源部110はカメラ100の各構成要素へ電力を供給する。
【0038】
カメラ100の各構成要素への電力供給が行われると、レンズユニット200の絞り204を介して入射した被写体の光束である被写体像が撮像部103のイメージセンサに結像される。次に、撮像部103から定期的(例えば60回/秒)に画像データが取り込まれ、各種処理を実行した後にメモリ105のVRAMへ配置する。これにより、撮像部103から取り込んだ画像データを表示部116に逐次表示(ライブビュー)することができる。
【0039】
ユーザは操作部114を操作することによって、カメラ100の表示部116に表示されたGUIにより各種のパラメータの選択と設定を行うことが可能である。例えば、ユーザは、F値、T値、シャッタースピードなどの露出に関する設定を行うことが可能である。
【0040】
第1シャッタースイッチ122は、カメラ100に設けられたシャッターボタン(不図示)の操作途中、いわゆる半押し(撮影準備指示)でオンとなり第1シャッタースイッチ信号SW1を発生する。カメラ制御部107は、第1シャッタースイッチ信号SW1により、レンズ制御部207に制御信号を供給し、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理等の撮影準備動作を開始する。
【0041】
第2シャッタースイッチ123は、シャッターボタン(不図示)の操作完了、いわゆる全押し(撮影指示)でオンとなり、第2シャッタースイッチ信号SW2を発生する。カメラ制御部107は、第2シャッタースイッチ信号SW2により、撮像部103からの信号読み出しから撮像された画像を画像ファイルとして記憶媒体120に書き込むまでの一連の撮影処理の動作を開始する。
【0042】
[レンズ装着時の制御処理]
次に、図4を参照して、本実施形態のカメラ100にレンズユニット200が装着された場合の制御処理について説明する。
【0043】
カメラ100に装着したレンズユニット200の種類によって、APDフィルタの有無、APDフィルタの特性が異なる。すなわち、図3のようなF値とT値の関係は、レンズユニット200の種類によって変化する。よって、レンズユニット200を交換した場合には、F値とT値の関係を更新する必要がある
なお、図4の処理は、カメラ制御部107が不揮発性メモリ106に格納されたプログラムをメモリ105に展開して実行し、カメラ100の各構成要素を制御することにより実現され、レンズユニット200が装着されたことを検出すると開始される。
【0044】
S401では、カメラ制御部107は、レンズユニット200にAPDフィルタ203が含まれているか否かを判定する。APDフィルタ203の有無は、カメラ制御部107が、レンズ制御部207へ問い合わせることで確認できる。カメラ制御部107は、APDフィルタ203があると判定した場合は処理をS402に進め、APDフィルタ203がないと判定した場合は処理を終了する。
【0045】
S402では、カメラ制御部107は、T値F値変換テーブルがあるか否かを判定する。T値F値変換テーブルはレンズユニット200の種類によって決まるF値とT値の対応関係を示すパラメータテーブルであり、詳細は後述する。複数のT値F値変換テーブルを予め不揮発性メモリ106に格納しておくことで、T値F値変換テーブルの生成処理を省略することができる。不揮発性メモリ106にT値F値変換テーブルを格納せず、常にT値F値変換テーブルの生成を行う前提で、S402を省略してもよい。カメラ制御部107は、不揮発性メモリ106にレンズユニット200に対応したT値F値変換テーブルがないと判定した場合は処理をS403に進め、T値F値変換テーブルがないと判定した場合は処理を終了する。
【0046】
S403では、カメラ制御部107は、ユーザ設定可能なT値のリストを生成する。例えば、ユーザが1/3段単位の一定間隔でT値を変更可能な場合、図5の左側の列に示すような、T値のリストが生成される。レンズユニット200に対して設定できる最小または最大のT値は、カメラ制御部107がレンズ制御部207に問い合わせることで取得できる。
【0047】
S404では、カメラ制御部107は、S403で生成したT値のリストにおけるそれぞれのT値に対応したF値へ変換する処理を行う。T値からF値への変換は、それぞれのT値に対して、カメラ制御部107が、レンズ制御部207に問い合わせて取得できる。または、カメラ制御部107が、レンズ制御部207からT値からF値への変換方法を取得し、カメラ制御部107でT値からF値への変換を行ってもよい。
【0048】
S405では、カメラ制御部107は、S404で行った変換結果を用いてT値F値変換テーブルを作成する。図5はT値F値変換テーブルの一例であり、それぞれのT値に対応したF値が記憶されている。
【0049】
上述した制御では、APDフィルタのないレンズではT値F値変換テーブルを生成していなかったが、APDフィルタのないレンズではT値=F値の変換テーブルを生成する制御としてもよい。
【0050】
[絞り変更操作時の制御処理]
次に、図6および図7を参照して、本実施形態のカメラ100に対してユーザがF値の設定を変更する絞り変更操作を行う場合の制御について説明する。
【0051】
なお、図6の処理は、カメラ制御部107が不揮発性メモリ106に格納されたプログラムをメモリ105に展開して実行し、カメラ100の各構成要素を制御することにより実現される。後述する図8も同様である。
【0052】
図6の処理を開始する際に、カメラ制御部107は予め表示制御部111を制御して表示部116にF値を設定するための絞り設定画面を表示する。図7(a)~図7(c)は表示部116に表示される絞り設定画面の一例である。図7(a)において、絞り設定画面701にはライブビュー画像が表示される。表示領域702は現在設定されているシャッタースピード、表示領域703は現在設定されているF値、表示領域704は現在設定されているISO感度をそれぞれ示している。
【0053】
図6において、S601では、カメラ制御部107は、タッチパネル112からの通知を監視し、F値を示す表示領域703がタッチされたかを判定する。カメラ制御部107は、F値を示す表示領域703がタッチされていないと判定した場合はS601に戻りタッチパネル112からの通知を監視し、F値を示す表示領域703がタッチされたと判定した場合は処理をS602に進める。
【0054】
S602では、カメラ制御部107はT値F値変換テーブルを取得する。T値F値変換テーブルはレンズユニット200が装着されたときに生成されたテーブルを利用する。T値F値変換テーブルをレンズユニット200装着時には生成せず、S602で同様の処理を実施して生成してもよい。
【0055】
S603では、カメラ制御部107は、表示制御部111を制御して表示部116に絞り設定画面を表示する。図7(a)の絞り設定画面701における第1の表示領域711および第2の表示領域712はF値を変更するための表示領域であり、現在設定されているF値を含む、ユーザが設定可能な目盛りとF値が表示される。第1の表示領域711では、F値を一定の間隔(例えば、1/3段単位)で選択可能である。第2の表示領域712には、T値が一定の間隔(例えば、1/3段単位)で変化する場合の現在設定されているF値を含む、ユーザが選択可能なF値がT値の変化を基準として離散的に表示される(つまり、一定の間隔ではない不定の間隔で表示される)。第2の表示領域712は、図5に示したT値F値変換テーブルから目盛りの間隔が決定される。ハイライト領域705は第1の表示領域711または第2の表示領域712においてユーザが選択したF値に対応する目盛り位置を識別可能に表示する。
【0056】
なお、第1の表示領域711と第2の表示領域712で目盛りの間隔が共通する範囲は第1の表示領域711と第2の表示領域712の両方に表示してもよいし、第1の表示領域711と第2の表示領域712のいずれかに表示してもよい。また、S603において、レンズユニット200にAPDフィルタ203が含まれる場合に、F値の変化とT値の変化の関係が比例していない第2の範囲が存在する場合だけ第2の表示領域712を表示する、つまり、ユーザが設定したF値が第2の範囲に含まれる場合に第2の表示領域712を表示し、第2の範囲に含まれない場合は非表示にするように制御してもよい。
【0057】
S604では、カメラ制御部107は、タッチパネル112の通知を監視し、絞り設定画面701における第1の表示領域711または第2の表示領域712の範囲内がタッチされたかを判定する。カメラ制御部107は、第1の表示領域711または第2の表示領域712の範囲内がタッチされていないと判定した場合はS604に戻り、再び通知を監視する。また、第1の表示領域711または第2の表示領域712の範囲内がタッチされたと判定した場合は処理をS605に進める。
【0058】
S605では、カメラ制御部107は、タッチパネル112のタッチ検出位置に基づいて、第1の表示領域711と第2の表示領域712のどちらの範囲内がタッチされたかを判定する。カメラ制御部107は、第1の表示領域711の範囲内がタッチされたと判定した場合は処理をS606に進め、第2の表示領域712の範囲内がタッチされたと判定した場合は処理をS607に進める。
【0059】
S606では、カメラ制御部107は、F値の変化が一定となる間隔でユーザがF値を設定できる第1の表示モードに切り替える。S607では、カメラ制御部107は、T値の変化が一定となる間隔でユーザがF値を設定できる第2の表示モードに切り替える。なお、第1の表示モードと第2の表示モードの切り替えは、F値の変化とT値の変化の関係が比例していない第2の範囲(図3参照)においてF値を変更する場合に可能としてもよい。
【0060】
S608では、カメラ制御部107は、S605で取得したタッチ検出位置に対して、最も近い第1の表示領域711または第2の表示領域712の目盛り位置を判定する。この目盛り位置からユーザが選択したF値を決定する。
【0061】
S609では、カメラ制御部107は、S608で決定したF値に基づいて、所定のプログラム線図を適用して露出量を決定する。S608で決定したF値は、撮影時の設定値として撮影処理が開始されるまでメモリ105に保持しておく。
【0062】
S610では、カメラ制御部107は、S609で決定した露出量に基づいて、撮像部103の露光量、またはゲインや、絞り204の絞り口径を調整し、ライブビュー表示の明るさに反映させ、処理を終了する。
【0063】
図6のS607で、ユーザが第2の表示モードに切り替えた後、再び絞りを変更する処理を開始した場合、図7(a)の状態から図7(b)の状態に、第1の表示領域711と第2の表示領域712の配置を入れ替えることで、第1の表示モードから第2の表示モードに切り替わったことをユーザに明示してもよい。
【0064】
また、図6の処理において、カメラ100の電源をオフする際に設定されている表示モードを記憶しておき、カメラ100の起動時のデフォルトの表示モードとして設定してもよい。
【0065】
また、図6の処理では、ユーザがタッチした領域によって第1の表示モードと第2の表示モードを切り替えていたが、予めユーザがメニュー画面等で選択してもよい。その場合は、図7(c)のように予め設定された表示領域のみが表示される。
【0066】
また、図6の処理では、タッチ操作によってF値を変更していたが、操作部114に含まれるダイヤル操作で行ってもよい。
【0067】
図8はダイヤル操作による絞り変更操作時の制御処理を例示している。
【0068】
図8の処理では、予めユーザによりメニュー画面等で第2の表示モードが設定されている状態で制御が開始されるものとする。
【0069】
S801では、カメラ制御部107は、操作部114のダイヤル操作を監視し、ダイヤル操作がないと判定した場合は処理をS801に戻し、ダイヤル操作の監視を継続する。また、カメラ制御部107は、ダイヤル操作を検出した場合は処理をS802に進める。
【0070】
S802では、カメラ制御部107は、ダイヤル操作量を取得する。
【0071】
S803では、カメラ制御部107は、S802で取得したダイヤル操作量をT値の変化量に変換する。例えば、ダイヤルの1操作量単位ごとに1/3段のT値の変更を行う場合、2単位分の操作を検出したら、2/3段のT値の変更を行う。この場合、例えば、変更前のT値が4.0であれば、変更後のT値は5.0となる。
【0072】
S804では、カメラ制御部107は、T値F値変換テーブルを取得する。例えば、図5のようなテーブルの場合、T値が5.0に対応するF値は4.0となるため、変更後のF値は4.0となる。
【0073】
S805では、カメラ制御部107は、表示制御部111を制御して、設定画面に変更後のF値を表示する。この場合、F値のみを表示できればよいため、例えば、図7(a)の表示領域703のように、表示部116の一部に表示してもよいし、別途F値のみを表示する部材をカメラ100に含んだ構成としてもよい。
【0074】
S806からS807は、図6のS609からS610と同様である。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザがレンズのF値とT値との関係を容易に把握しながら、F値の設定を行うことが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態では、レンズのT値とF値の関係を例に挙げて説明したが、これに限らず、他のパラメータを対象としてもよい。
【0077】
[他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0078】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0079】
100…デジタルカメラ、107…カメラ制御部、111…表示制御部、112…タッチパネル、114…操作部、116…表示部、200…レンズユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8