IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキョーニシカワ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図1
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図2
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図3
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図4A
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図4B
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図4C
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図5A
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図5B
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図6
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図7
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図8
  • 特許-掛止装置およびコンソールボックス 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】掛止装置およびコンソールボックス
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021028681
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129842
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小手川 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰明
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-020850(JP,U)
【文献】特開2008-273366(JP,A)
【文献】特開2004-168220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0089217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス本体(10)に対して当該ボックス本体(10)の開口(11)を開閉する開閉体(20)を閉じた状態で掛け止める掛止装置であって、
前記ボックス本体(10)に設けられた被掛止部(15)と、
前記開閉体(20)に設けられた掛止爪(36)と、を備え、
前記掛止爪(36)は、所定の軸(32)周りに回転する動作によって、前記被掛止部(15)に引っ掛かるロック位置と、前記被掛止部(15)への引っ掛かりが解除される解除位置とに変位可能であり、且つ前記ロック位置に向けて常時付勢され、
前記掛止爪(36)のうち前記被掛止部(15)に引っ掛けられる引掛け面(39)は、前記被掛止部(15)に対する前記掛止爪(36)の掛かり量が正規の掛かり量であるときに、前記被掛止部(15)のうち前記掛止爪(36)が引っ掛けられる被引掛け面(16)と対向しない部分を有し、
前記被掛止部(15)および前記掛止爪(36)のうち一方には、前記被掛止部(15)に対する前記掛止爪(36)の掛かり量が前記正規の掛かり量よりも大きいと、前記掛止爪(36)を前記ロック位置にしたときに、他方に当たって接することで、前記被掛止部(15)に対する当該掛止爪(36)の引っ掛かりを半解除状態にする当接部(41)が設けられる
ことを特徴とする掛止装置。
【請求項2】
ボックス本体(10)に対して当該ボックス本体(10)の開口(11)を開閉する開閉体(20)を閉じた状態で掛け止める掛止装置であって、
前記ボックス本体(10)に設けられた被掛止部(15)と、
前記開閉体(20)に設けられた掛止爪(36)と、を備え、
前記掛止爪(36)は、所定の軸(32)周りに回転する動作によって、前記被掛止部(15)に引っ掛かるロック位置と、前記被掛止部(15)への引っ掛かりが解除される解除位置とに変位可能であり、且つ前記ロック位置に向けて常時付勢され、
前記被掛止部(15)および前記掛止爪(36)のうち一方には、前記被掛止部(15)に対する前記掛止爪(36)の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、前記掛止爪(36)を前記ロック位置にしたときに、他方に当たって接することで、前記被掛止部(15)に対する当該掛止爪(36)の引っ掛かりを半解除状態にする当接部(41)が設けられ、
前記当接部(41)は、前記被掛止部(15)のうち前記掛止爪(36)が正規の掛かり量で引っ掛けられる被引掛け面(16)に対して前記掛止爪(36)の先端が臨む奥側に設けられ、前記掛止爪(36)が前記半解除状態となるときに突き当てられる突当て面(42)を有し、
前記突当て面(42)は、前記被引掛け面(16)が臨む方向に向かって前記被掛止部(15)の奥側へ延びる
ことを特徴とする掛止装置。
【請求項3】
ボックス本体(10)に対して当該ボックス本体(10)の開口(11)を開閉する開閉体(20)を閉じた状態で掛け止める掛止装置であって、
前記ボックス本体(10)に設けられた被掛止部(15)と、
前記開閉体(20)に設けられた掛止爪(36)と、を備え、
前記掛止爪(36)は、所定の軸(32)周りに回転する動作によって、前記被掛止部(15)に引っ掛かるロック位置と、前記被掛止部(15)への引っ掛かりが解除される解除位置とに変位可能であり、且つ前記ロック位置に向けて常時付勢され、
前記被掛止部(15)および前記掛止爪(36)のうち一方には、前記被掛止部(15)に対する前記掛止爪(36)の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、前記掛止爪(36)を前記ロック位置にしたときに、他方に当たって接することで、前記被掛止部(15)に対する当該掛止爪(36)の引っ掛かりを半解除状態にする当接部(41)が設けられ、
前記当接部(41)は、前記掛止爪(36)のうち正規の掛かり量で前記被掛止部(15)に引っ掛けられる引掛け面(39)に対して爪基側に設けられ、前記被掛止部(15)が前記半解除状態となるときに突き当てられる突当て面(41)を有し、
前記突当て面(41)は、前記引掛け面(39)が臨む方向に向かって前記掛止爪(36)の爪基側へ延びる
ことを特徴とする掛止装置。
【請求項4】
上方に向けて開口するボックス本体(10)と、
前記ボックス本体(10)の開口を開閉するリッド(20)と、
前記リッド(20)を閉じた状態で前記ボックス本体(10)に掛け止める掛止装置(30)と、を備え、
前記掛止装置(30)として、請求項1~3のいずれか1項に記載された掛止装置(30)が用いられる
ことを特徴とするコンソールボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、掛止装置およびコンソールボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の室内に設けられるコンソールボックスは、上方に開口したボックス本体と、ボックス本体の開口を開閉する開閉体としてのリッドとを備える。コンソールボックスにおいては、リッドを閉じた状態でボックス本体に掛け止める掛止装置を用いることが知られている。例えば、特許文献1には、リッドのこじ開け防止を図る掛止装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の掛止装置は、ボックス本体に設けられた凹部と、凹部に対してリッドが閉じられた状態で引っ掛けられる掛止爪(係止爪)とを備える。掛止爪は、コイルばねにより凹部に対して引っ掛けられる方向へ常時付勢される。そして、凹部および掛止爪は、リッドを開く方向への力が掛止爪に作用したときに互いに食い込むように構成される。これにより、当該掛止装置では、リッドに開く方向への過大な荷重が加えられても、掛止爪と凹部との結合力が増して凹部に対する掛止爪の係止が解除されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-178467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなコンソールボックスでは、リッドが閉じた状態にあると、掛止装置の掛止爪はユーザから視認されないため、ユーザは、掛止爪が凹部に係止された状態(ロック状態)を解除せずにリッドを開けようとすることがある。このとき、凹部に対する掛止爪の掛かり量が成形時の寸法ばらつきや使用時の温度変化による収縮などの変形によって設計の狙いである正規の掛かり量よりも大きくなっていると、リッドを強制的に開放させようと掛止爪に過大な荷重がかけられた場合に、凹部に対する掛止爪の係止が解除されないため、掛止爪や凹部のうち掛止爪が引っ掛けられる被掛止部が破壊されるなどして、掛止装置の破損を招くおそれがある。
【0006】
本開示の技術の目的は、掛止装置が破損するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、被掛止部に対する掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、被掛止部に対する掛止爪の引っ掛かりを半解除状態にするようにした。
【0008】
具体的には、本開示の第1の態様は、ボックス本体に対して当該ボックス本体の開口を開閉する開閉体を閉じた状態で掛け止める掛止装置を対象とする。第1の態様に係る掛止装置は、ボックス本体に設けられた被掛止部と、開閉体に設けられた掛止爪とを備える。掛止爪は、所定の軸周りに揺動する動作によって、被掛止部に引っ掛かるロック位置と、被掛止部への引っ掛かりが解除される解除位置とに変位可能であり、且つロック位置に向けて常時付勢される。被掛止部および掛止爪のうち一方には、被掛止部に対する掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、掛止爪をロック位置にしたときに、他方に当たって接することで、被掛止部に対する当該掛止爪の引っ掛かりを半解除状態にする当接部が設けられる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様の掛止装置において、当接部が、被掛止部のうち掛止爪が正規の掛かり量で引っ掛けられる被引掛け面に対して掛止爪の先端が臨む奥側に設けられる、掛止装置である。当接部は、掛止爪が半解除状態となるときに突き当てられる突当て面を有する。突当て面は、被引掛け面が臨む方向に向かって被掛止部の奥側へ延びる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1の態様の掛止装置において、当接部が、掛止爪のうち正規の掛かり量で被掛止部に引っ掛けられる引掛け面に対して爪基側に設けられる、掛止装置である。当接部は、被掛止部が半解除状態となるときに突き当てられる突当て面を有する。突当て面は、引掛け面が臨む方向に向かって掛止爪の爪基側へ延びる。
【0011】
本開示の第4の態様は、コンソールボックスを対象とする。第4の態様に係るコンソールボックスは、上方に向けて開口するボックス本体と、ボックス本体の開口を開閉するリッドと、リッドを閉じた状態でボックス本体に掛け止める掛止装置とを備える。そして、掛止装置としては、第1~第3の態様のいずれか1つの掛止装置が用いられる。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の態様の掛止装置によれば、被掛止部に対する掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、被掛止部および掛止爪のうち一方に設けられた当接部が他方に当たって接することで、掛止爪の引っ掛かりが半解除状態になる。半解除状態では、開閉体に対して開く方向への過大な荷重が加えられたときに、被掛止部に対する掛止爪の引っ掛かりが解除されやすい。これにより、掛止装置が破損するのを抑制できる。
【0013】
上記第2の態様の掛止装置によれば、当接部のうち掛止爪が突き当てられる突当て面が、被掛止部の被引掛け面が臨む方向に向かって被掛止部の奥側へ延びる。そのことで、掛止爪は、被掛止部に対する掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなるほど、正規の掛かり量となる姿勢に対して大きな角度差をもった姿勢に傾斜する。そして、掛止爪の傾斜度合が大きいほど、掛止爪の引っ掛かりを解除するために必要な開閉体を開く方向への荷重が小さくなる。当該掛止爪の傾斜度合は、被引掛け面に対する突当て面の角度によって調整できる。よって、被引掛け面に対する突当て面の角度の設計次第で、掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなった場合に、正規の掛かり量との差の大小に依らず、半解除状態の掛止爪により開閉体が開くのを適度に規制できる。
【0014】
上記第3の態様の掛止装置によれば、当接部のうち被掛止部が突き当てられる突当て面が、引掛け面が臨む方向に向かって掛止爪の爪基側へ延びる。そのことで、掛止爪は、被掛止部に対する掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなるほど、正規の掛かり量となる姿勢に対して大きな角度差をもった姿勢に傾斜する。そして、掛止爪の傾斜度合が大きいほど、掛止爪の引っ掛かりを解除するために必要な開閉体を開く方向への荷重が小さくなる。当該掛止爪の傾斜度合は、引掛け面に対する突当て面の角度によって調整できる。よって、引掛け面に対する突当て面の角度の設計次第で、掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなった場合に、正規の掛かり量との差の大小に依らず、半解除状態の掛止爪により開閉体が開くのを適度に規制できる。
【0015】
上記第4の態様のコンソールボックスによれば、被掛止部に対する掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなった状態でリッドに対して開く方向への過大な荷重が加えられても、掛止装置が破損するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1のコンソールボックスの概略構成を例示する断面図である。
図2】実施形態1の掛止装置の概略構成を例示する断面図である。
図3】実施形態1の掛止装置の掛止凹部およびその内部の当接リブを例示する斜視図である。
図4A】実施形態1の掛止装置において掛止爪が最小の掛かり量である状態を例示する断面図である。
図4B】実施形態1の掛止装置において掛止爪が正規の掛かり量である状態を例示する断面図である。
図4C】実施形態1の掛止装置において掛止爪が最大の掛かり量である状態を例示する断面図である。
図5A】実施形態1の掛止装置において掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいときのリッドが閉状態にあるコンソールボックスの要部を例示する断面図である。
図5B】実施形態1の掛止装置において掛止爪の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいときのリッドに開く方向への過大な荷重をかけた際のコンソールボックスの要部を例示する断面図である。
図6】実施形態2の掛止装置の概略構成を例示する断面図である。
図7】実施形態2の掛止装置において掛止爪が最大の掛かり量である状態を例示する断面図である。
図8】変形例の掛止装置の要部を示す断面図である。
図9】比較例の掛止装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、コンソールボックスが自動車の車室内に設置された、リッドを閉じた状態での方向を基準として、車両の前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
【0018】
《実施形態1》
図1に、この実施形態1のコンソールボックス1の断面図を例示する。図1に示すコンソールボックス1は、リッド20を閉じて掛止爪36がロック位置にある状態である。図1では、開いた状態のリッド20の一部を二点鎖線で示す。
【0019】
図1に示すコンソールボックス1は、アームレストを兼ねたリッド20付きの物入れである。コンソールボックス1は、例えば、自動車の室内において運転席と助手席との間や、セパレートタイプの左右の後部座席の間に設置される。このコンソールボックス1は、上方に向けて開口したボックス本体10と、ボックス本体10の開口11を開閉するリッド20と、リッド20を閉じた状態でボックス本体10に掛け止める掛止装置30とを備える。
【0020】
ボックス本体10は、射出成形などによって成形された樹脂成形品である。このボックス本体10は、ポリプロピレン(PP)やアクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂などの合成樹脂からなる。ボックス本体10は、物を収容する収容部12を有する。収容部12の開口周縁には、リッド20を受ける受け部13が設けられる。そして、収容部12の前側には、受け部13の下側で前方に向けて開口した掛止凹部14が設けられる。
【0021】
掛止凹部14は、上下方向において互いに対向する上壁14aおよび下壁14bと、左右方向において互いに対向する一対の側壁14cと、掛止凹部14の底面を構成する奥壁14dとによって構成される。掛止凹部14の上壁14aは、受け部13によって構成される。当該上壁14aは、被掛止部15を構成する。被掛止部15は、ボックス本体10において後述する掛止爪36が引っ掛けられる部分である。
【0022】
リッド20は、開閉体の一例である。リッド20は、外装体21と、外装体21の内部に設けられたクッション材22とを有する。図示しないが、外装体21は、リッド20の裏側部分を構成する基材と、リッド20の表面を構成する表皮材との組み合わせにより構成される。基材は、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂からなる。表皮材は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂や皮革からなる。
【0023】
クッション材22は、発泡体を裁断したもの、または発泡成形した樹脂成形品によって構成される。クッション材22の材料としては、発泡ポリウレタンなどの発泡樹脂が挙げられる。クッション材22は、柔軟性と弾力性を有する。クッション材22は、表皮材にクッション性を付与し、リッド20表面の触感、ひいてはアームレストとしての使い心地を向上させる。
【0024】
リッド20の後側部分は、ヒンジ23を介してボックス本体10の後側部分の受け部13に取り付けられる。リッド20は、左右方向に延びるヒンジ23の軸としての軸体24周りに揺動する。リッド20は、軸体24周りに揺動する動作によって開閉される。具体的には、リッド20は、閉じた状態から後方上側に向けて引き上げることで開けられる(図1に二点鎖線で示す状態)。また、リッド20は、開けた状態から前方下側に押し倒すことで閉じられる(図1に実線で示す状態)。
【0025】
リッド20の前端部分には、前方および下方に向けて開放された収容凹部25が設けられる。収容凹部25は、上側に位置する上壁25aと、左右方向において互いに対向する一対の側壁25bと、当該収容凹部25の後面を構成する縦壁25cとによって構成される。収容凹部25の上壁25aは、リッド20を閉じた状態で前方下側に臨むように水平方向に対して傾斜する。収容凹部25は、リッド20を閉じた状態で掛止凹部14の開口の上側に位置する。
【0026】
図2に、この実施形態1の掛止装置30の断面図を例示する。図2に示す掛止装置30は、ボックス本体10に対して当該ボックス本体10の開口11を開閉するリッド20を閉じた状態で掛け止める装置である。図3に、掛止装置30の掛止凹部14およびその内部の当接リブ41を例示する。
【0027】
掛止装置30は、ボックス本体10に設けられた被掛止部15と、リッド20に設けられたロック機構31とを備える。ロック機構31は、収容凹部25内に配置される。ロック機構31にはリッド20の前端部分(上壁25a)が被さるので、ロック機構31がユーザから視認され難い。ロック機構31は、左右方向に延びる軸としての軸体32と、軸体32に揺動可能に設けられたラッチ部材33とを有する。軸体32は、一対の側壁25bに両端部を回転自在に支持される。
【0028】
ラッチ部材33は、軸体32が挿通される揺動軸部34と、揺動軸部34から突出したレバー35および掛止爪36とを有する。レバー35は、ユーザによって操作される部分である。レバー35の端部は、収容凹部25から前方に迫り出す。掛止爪36は、ラッチ部材33のうちボックス本体10に掛け止められる部分である。掛止爪36は、収容凹部25から下方に延び出る。掛止爪36は、揺動軸部34から延びるアーム37と、アーム37の先端から後方に向けて突出する爪部38とを有する。ラッチ部材33は、軸体32周りに揺動する。
【0029】
掛止爪36は、軸体32周りに揺動する動作によって、被掛止部15に引っ掛かるロック位置(図2に実線で示す位置)と、被掛止部15への引っ掛かりが解除される解除位置(図2に一点鎖線で示す位置)とに変位可能である。掛止爪36は、図示しない周知の付勢手段によりロック位置に向けて常時付勢される。付勢手段としては、例えばトーションばねが用いられる。トーションばねを用いる場合、トーションばねの一端は側壁25bに固定され、他端はラッチ部材33に固定される。
【0030】
リッド20が閉じた状態でレバー35が操作されていないと、掛止爪36がロック位置となり、掛止凹部14に挿入されて被掛止部15に引っ掛かる。このように掛止爪36がロック位置にあると、ユーザがリッド20を開けることが妨げられる。レバー35に上方に引き上げられる操作がされると、ラッチ部材33が揺動することで、掛止爪36が解除位置となり、掛止凹部14から抜けて被掛止部15に引っ掛からない。このように掛止爪36が解除位置にあると、ユーザがリッド20を開けることが可能になる。
【0031】
掛止爪36(爪部38)のうち被掛止部15に引っ掛けられる引掛け面39は、リッド20が閉じた状態でロック位置にあるときに、被掛止部15のうち掛止爪36が引っ掛けられる被引掛け面16と上下方向において互いに対向する。このとき、引掛け面39と被引掛け面16とは略水平な方向に延びる。被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量は、成形時の寸法ばらつきや車室内の温度変化による収縮などの変形によってばらつく。本例において、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量とは、引掛け面39と被引掛け面16とが互いに対向する面積を意味する。
【0032】
図4Aに、掛止爪36が最小の掛かり量である状態を例示する。図4Bに、掛止爪36が正規の掛かり量である状態を例示する。図4Cに、掛止爪36が最大の掛かり量である状態を例示する。図5Aに、掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいときのリッド20が閉状態にあるコンソールボックス1の要部を例示する。図5Bに、掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいときのリッド20に開く方向への過大な荷重をかけた際のコンソールボックス1の要部を例示する。
【0033】
被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量は、上述したばらつきを考慮して、図4Aに示すように最小の掛かり量となったときにも、被掛止部15への掛止爪36の引っ掛かりによってリッド20が開けられるのを規制できるように設定される。すなわち、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量として確保すべき最小の掛かり量を基準とし、上述したばらつきで生じ得る掛かり量の変化分を加味して、図4Bに示すような設計の狙いとする正規の掛かり量(ノミナル値)が設定される。
【0034】
図3に示すように、被掛止部15には、複数の当接リブ41が設けられる。各当接リブ41は、当接部の一例である。複数の当接リブ41は、左右方向において互いに間隔をあけて配置される。各当接リブ41は、左右方向に板面を向けた、側面視で三角形状の小片板状物である。各当接リブ41は、被掛止部15のうち掛止爪36が正規の掛かり量で引っ掛けられる被引掛け面16に対して掛止爪36の先端が臨む奥側に位置し、掛止凹部14の上壁14a(被掛止部15)と奥壁14dとに一体に形成される。
【0035】
図9に、比較例の掛止装置30の要部を示す。図9に示すように、当接リブ41が被掛止部15に設けられていない場合、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなった状態、例えば最大の掛かり量になった状態で、引掛け面39と被引掛け面16とが正対した状態であると、掛止爪36が被掛止部15に掛け止められた状態(ロック状態)を解除せずにリッド20を開けようとして、リッド20に対して開く方向への過大な荷重がかけられたときに、掛止爪36や被掛止部15が破壊されるおそれがある(図9に被掛止部15が折損する場合の折損部分をジグザグ線で例示する)。
【0036】
図4Cに示すように、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、掛止爪36をロック位置にしたときに、掛止爪36が各当接リブ41に乗り上げ、各当接リブ41が掛止爪36に当たって接する。そのことで、被掛止部15に対する掛止爪36の引っ掛かりを半解除状態にする。各当接リブ41は、半解除状態となるときに掛止爪36が突き当てられる突当て面42を有する。突当て面42は、上下方向および前後方向に対して傾斜し、前方に向かって下側に臨む平坦な傾斜面である。突当て面42は、被引掛け面16が臨む方向(下方)に向かって被掛止部15の奥側(後方)へ延びる。
【0037】
このような突当て面42に掛止爪36が突き当てられると、図5Aに示すように、ラッチ部材33は、掛止爪36が正規の掛かり量となる姿勢に対して解除位置側の姿勢に傾斜する。このときのラッチ部材33の姿勢は、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいほど、正規の掛かり量となる姿勢に対して大きな角度差を持つ。被掛止部15に対する掛止爪36の引っ掛かりが半解除状態であるときに、ロック状態を解除せずにリッド20が引き上げられると、掛止爪36の引掛け面39が被掛止部15の前端部に当たる。このときのリッド20を引き上げる力が所定の荷重以上であると、図5Bに示すように、リッド20を引き上げる力が作用して掛止爪36が解除位置側に変位するようにラッチ部材33が揺動する。それにより、被掛止部15への掛止爪36の引っ掛かりが解除され、リッド20を開けることができる。
【0038】
-実施形態1の特徴-
この実施形態1の掛止装置30によれば、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、被掛止部15に設けられた当接リブ41が掛止爪36に当たって接することで、掛止爪36の引っ掛かりが半解除状態になる。半解除状態では、リッド20に対して開く方向への過大な荷重が加えられたときに、被掛止部15に対する掛止爪36の引っ掛かりが解除されやすい。これにより、掛止装置30が破損するのを抑制できる。
【0039】
この実施形態1の掛止装置30によれば、当接リブ41のうち掛止爪36が突き当てられる突当て面42が、被掛止部15の被引掛け面16が臨む方向に向かって被掛止部15の奥側へ延びる。そのことで、掛止爪36は、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなるほど、正規の掛かり量となる姿勢に対して大きな角度差をもった姿勢に傾斜する。そして、掛止爪36の傾斜度合が大きいほど、掛止爪36の引っ掛かりを解除するために必要なリッド20を開く方向への荷重が小さくなる。当該掛止爪36の傾斜度合は、被引掛け面16に対する突当て面42の角度によって調整できる。よって、被引掛け面16に対する突当て面42の角度の設計次第で、掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなった場合に、正規の掛かり量との差の大小に依らず、半解除状態の掛止爪36によりリッド20が開くのを適度に規制できる。
【0040】
この実施形態1のコンソールボックス1によれば、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなった状態でリッド20に対して開く方向への過大な荷重が加えられても、掛止装置30が破損するのを抑制できる。
【0041】
《実施形態2》
この実施形態2に係る掛止装置30は、当接リブ41が設けられる構成要素が上記実施形態1と異なる。なお、この実施形態2では、当接リブ41が設けられる構成要素が上記実施形態1と異なる他は掛止装置30およびコンソールボックス1について上記実施形態1と同様に構成される。図6に、この実施形態2の掛止装置30の概略構成を例示する。
【0042】
図6に示すように、この実施形態2の掛止装置30では、複数の当接リブ41(図6には1つのみ図示)が掛止爪36に設けられる。複数の当接リブ41は、図示しないが、左右方向において互いに間隔をあけて配置される。各当接リブ41は、左右方向に板面を向けた、側面視で三角形状の小片板状物である。各当接リブ41は、掛止爪36のうち正規の掛かり量で被掛止部15に引っ掛けられる引掛け面39に対して爪基側に位置し、掛止爪36のアーム37と爪部38とに一体に形成される。
【0043】
図7に、この実施形態2の掛止装置30において掛止爪36が最大の掛かり量である状態を例示する。図7に示すように、各当接リブ41は、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、掛止爪36をロック位置にしたときに、被掛止部15に当たって接する。そのことで、被掛止部15に対する掛止爪36の引っ掛かりを半解除状態にする。各当接リブ41は、半解除状態となるときに掛止爪36が突き当てられる突当て面42を有する。突当て面42は、アーム37の延びる方向および爪部38が突出する方向に対して傾斜し、掛止爪36がロック位置にあるときにリッド20の裏面側から後方表側に臨む平坦な傾斜面である。突当て面42は、引掛け面39が臨む方向に向かって掛止爪36の爪基側へ延びる。
【0044】
このような突当て面42に掛止爪36が突き当てられると、ラッチ部材33は、掛止爪36が正規の掛かり量となる姿勢に対して解除位置側の姿勢に傾斜する。このときのラッチ部材33の姿勢は、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいほど、正規の掛かり量となる姿勢に対して大きな角度差を持つ。被掛止部15に対する掛止爪36の引っ掛かりが半解除状態であるときに、ロック状態を解除せずにリッド20が引き上げられると、掛止爪36が解除位置側に変位するようにラッチ部材33が揺動する。それにより、被掛止部15への掛止爪36の引っ掛かりが解除され、リッド20を開けることができる。
【0045】
-実施形態2の特徴-
この実施形態2の掛止装置30によれば、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいと、掛止爪36に設けられた当接リブ41が被掛止部15に当たって接することで、掛止爪36の引っ掛かりが半解除状態になる。半解除状態では、リッド20に対して開く方向への過大な荷重が加えられたときに、被掛止部15に対する掛止爪36の引っ掛かりが解除されやすい。これにより、掛止装置30が破損するのを抑制できる。
【0046】
この実施形態2の掛止装置30によれば、当接リブ41のうち被掛止部15が突き当てられる突当て面42が、引掛け面39が臨む方向に向かって掛止爪36の爪基側へ延びる。そのことで、掛止爪36は、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなるほど、正規の掛かり量となる姿勢に対して大きな角度差をもった姿勢に傾斜する。そして、掛止爪36の傾斜度合が大きいほど、掛止爪36の引っ掛かりを解除するために必要なリッド20を開く方向への荷重が小さくなる。当該掛止爪36の傾斜度合は、引掛け面39に対する突当て面42の角度によって調整できる。よって、引掛け面39に対する突当て面42の角度の設計次第で、掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きくなった場合に、正規の掛かり量との差の大小に依らず、半解除状態の掛止爪36によりリッド20が開くのを適度に規制できる。
【0047】
《変形例》
図8に、この変形例の掛止装置30の要部を示す。図8に示すように、各当接リブ41の突当て面42の形状は、湾曲した形状であってもよい。各当接リブ41には、前後方向における中程から後側にかけて凹状の肉抜き部43が形成される。各当接リブ41の肉抜き部43が形成された部分は、上下方向における高さが略一定の部分を含む。このような肉抜き部43が当接リブ41に形成されると、被掛止部15の表面にヒケが生じるのを抑制できる。肉抜き部43が形成された当接リブ41は、上記実施形態2の掛止装置30においても採用可能である。
【0048】
上記実施形態では、複数の当接リブ41が当接部として設けられた場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。当接リブ41は1つであってもよい。当接リブ41は当接部の一例に過ぎず、被掛止部15に対する掛止爪36の掛かり量が正規の掛かり量よりも大きいときに、ロック位置での当該掛止爪36の被掛止部15に対する引っ掛かりを半解除状態できるものであれば、ブロック状物などの他の任意形状の当接部を被掛止部15または掛止爪36に設けることができる。
【0049】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。上記実施形態について、本開示の技術の趣旨を逸脱しない範囲においてさらに色々な変形が可能なこと、またそうした変形も本開示の技術の範囲に属することは、当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本開示は、掛止装置およびコンソールボックスについて有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 コンソールボックス
10 ボックス本体
11 開口
12 収容部
13 受け部
14 掛止凹部
14a 上壁
14b 下壁
14c 側壁
14d 奥壁
15 被掛止部
16 被引掛け面
20 リッド(開閉体)
21 外装体
22 クッション材
23 ヒンジ
24 軸体
25 収容凹部
25a 上壁
25b 側壁
25c 縦壁
30 掛止装置
31 ロック機構
32 軸体
33 ラッチ部材
34 揺動軸部
35 レバー
36 掛止爪
37 アーム
38 爪部
39 引掛け面
41 当接リブ(当接部)
42 突当て面
43 肉抜き部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9