(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】施設価値推定装置、公共設備影響評価システム、及び公共設備影響評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240828BHJP
【FI】
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2021038216
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都 恭平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩仁
(72)【発明者】
【氏名】荒木 良輔
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-033731(JP,A)
【文献】特開2013-021781(JP,A)
【文献】特開2019-108798(JP,A)
【文献】特表2021-518889(JP,A)
【文献】特開2009-115650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及びメモリを有し、
指定エリアの属性情報、前記指定エリアに属する各施設の属性情報、及び前記指定エリアにおける人の時系列な移動を示す人流データを記憶する前記メモリから、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を読み込み、施設の属性情報及び当該施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、前記施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の評価値及び当該評価値の分散の逆数である算出精度を算出する推定部と、
前記
指定エリアに属する各施設
の評価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、前記指定エリアに前記評価値の算出精度が所定の閾値未満の施設である低精度施設があるか否かを判定し、
前記指定エリアに前記低精度施設があると判定した場合には、所定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデルに、前記メモリから読み込んだ前記指定エリアにおける人流データに基づく前記指定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する再推定部と、
前記算出した又は前記再算出した施設の評価値の情報を表示する表示部と、
を備え
、
前記第2の学習済みモデルは、前記指定エリア以外の他のエリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値の教師データとし、前記他のエリアにおける施設の評価値を出力値の教師データとする学習処理により作成される、
施設価値推定装置。
【請求項2】
前記再推定部は、前記再算出した低精度施設の評価値に対する修正の入力をユーザから受け付ける、請求項1に記載の施設価値推定装置。
【請求項3】
前記第2の学習済みモデルは、前記所定エリアにおける、人的結合を基礎とした施設間の依存関係からつながりが密な部分集合を抽出することにより、前記所定エリアに属する各施設を複数のグループに再構成した前記人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とし、
前記再推定部は、前記低精度施設があると判定した場合には、
前記指定エリアにおける、人的結合を基礎とした施設間の依存関係からつながりが密な部分集合を抽出することにより、前記指定エリアに属する各施設を複数のグループに再構成した前記人的結合の情報を作成し、作成した前記人的結合の情報を前記第2の学習済みモデルに入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する、
請求項1に記載の施設価値推定装置。
【請求項4】
施設の属性情報は、施設の人的価値を示すパラメータ、及び、施設の経済的価値を示すパラメータを含み、
エリアの属性情報は、エリアにおける人的側面と経済的側面の相対的重要性を示すパラメータを含み、
前記推定部は、
施設の属性情報を入力値とし、前記施設の人的価値を出力値とする人的第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の人的価値を算出し、
施設の属性情報を入力値とし、前記施設の経済的価値を出力値とする経済的第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の経済的価値を算出し、
前記指定エリアにおける人的側面と経済的側面の相対的重要性を示すパラメータを用いて、前記指定エリアに属する各施設の人的価値及び各施設の経済的価値の線形和で前記指定エリアに属する各施設の評価値を算出する、
請求項1に記載の施設価値推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、病院、学校、保育施設、介護施設、避難所、住宅、オフィスビル、工場、又は産業施設の少なくともいずれかの施設の名称、種類、座標、面積、収容人数、従業員数、病床数、売上、又は公示価格の少なくともいずれか
を含む、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を、前記第1の学習済みモデルに入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の評価値及び当該評価値の分散の逆数である算出精度を算出する、
請求項1に記載の施設価値推定装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記各施設のうち、前記評価値の算出精度が前記所定の閾値未満の施設である施設の情報を第1の表示形式で表示し、その他の施設の情報を第2の表示形式で表示する、請求項1に記載の施設価値推定装置。
【請求項7】
プロセッサ及びメモリを有し、
指定エリアの属性情報、前記指定エリアに属する各施設の属性情報、及び前記指定エリアにおける人の時系列な移動を示す人流データを記憶する前記メモリから、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を読み込み、施設の属性情報及び当該施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、前記施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の評価値及び当該評価値の分散の逆数である算出精度を算出する推定部と、
前記
指定エリアに属する各施設
の評価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、前記指定エリアに前記評価値の算出精度が所定の閾値未満の施設である低精度施設があるか否かを判定し、
前記指定エリアに前記低精度施設があると判定した場合には、所定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデルに、前記メモリから読み込んだ前記指定エリアにおける人流データに基づく前記指定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する再推定部と、
公共設備の配置の情報と、前記算出した又は再算出した各施設の施設価値と、当該各施設の位置の情報とに基づき、前記公共設備の当該各施設に対する影響の大きさを表すインフラ影響度を算出する評価部と、
前記算出した又は前記再算出した施設の評価値の情報と、前記算出したインフラ影響度とを表示する表示部と、
を備え
、
前記第2の学習済みモデルは、前記指定エリア以外の他のエリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値の教師データとし、前記他のエリアにおける施設の評価値を出力値の教師データとする学習処理により作成される、
公共設備影響評価システム。
【請求項8】
所定の情報処理システムから、前記公共設備の破損のリスクの情報を取得し、前記算出したインフラ影響度と、前記取得した破損のリスクの情報とに基づき、前記破損のリスクに対する対応の必要性の高さを示す評価値を算出する公共設備管理部を備える、請求項
7に記載の公共設備影響評価システム。
【請求項9】
情報処理装置が、
指定エリアの属性情報、前記指定エリアに属する各施設の属性情報、及び前記指定エリアにおける人の時系列な移動を示す人流データを記憶するメモリから、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を読み込み、施設の属性情報及び当該施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、前記施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の評価値及び当該評価値の分散の逆数である算出精度を算出する推定処理と、
前記
指定エリアに属する各施設
の評価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、前記指定エリアに前記評価値の算出精度が所定の閾値未満の施設である低精度施設があるか否かを判定し、
前記指定エリアに前記低精度施設があると判定した場合には、所定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデルに、前記メモリから読み込んだ前記指定エリアにおける人流データに基づく前記指定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する再推定処理と、
公共設備の配置の情報と、前記算出した又は再算出した各施設の施設価値と、当該各施設の位置の情報とに基づき、前記公共設備の当該各施設に対する影響の大きさを表すインフラ影響度を算出する評価処理と、
前記算出した又は前記再算出した施設の評価値の情報と、前記算出したインフラ影響度とを表示する表示処理と、
を実行し
、
前記第2の学習済みモデルは、前記指定エリア以外の他のエリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値の教師データとし、前記他のエリアにおける施設の評価値を出力値の教師データとする学習処理により作成される、
公共設備影響評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設価値推定装置、公共設備影響評価システム、及び公共設備影響評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地域社会に存在する様々な施設の価値を所定の観点により評価することで、社会インフラ(例えば水道管路)の社会への影響度を定量化するためのシステム(公共設備影響評価システム)が存在する。この公共設備影響評価システムを用いた社会インフラの保守業務では、社会インフラの複数の箇所が破損した場合、どこから優先して修理すべきか、という意思決定が必要になる。
【0003】
その意思決定は社会インフラが影響を与える周辺の施設の価値によってなされる。しかし、施設の価値を定量化するのは難しい。そこで特許文献1には、施設種類ごとに価値を人の手で定義することで施設の価値を定量化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2020/0111039号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、インフラの社会への影響度を定量化するという課題に対し、施設種類ごとの価値を利用者が手動で定量化し、定量化した施設価値、施設の水道利用、及び修理時間を組み合わせて社会への影響度を定量化するという解決手段で問題の解決を試みたものである。この点、特許文献1は施設の種類ごとに利用者が施設価値のデータを入力するものであるから、これを個々の施設ごとに入力することで、個々の施設の施設価値の定量化の精度を向上させることが可能と思われる。しかしながら、都市に多数存在する施設のそれぞれについて利用者が価値を定量化することは入力者(利用者)の労力が大きく、実効性に乏しいと考えられる。
【0006】
そこで、例えば、施設の価値の定量化を効率良く行うために、過去の都市データと施設の評価値を用いて機械学習を行うことが考えられる。しかし、個々の施設の情報(例えば、病院の病床数)といった一部の情報が公開されていないか又は情報が整備されていない等の理由により、機械学習に必要なデータが不足する場合が多い。また、機械学習に必要な施設価値の教師ラベルは人手で作成する必要があるが、施設価値の多寡の判断は専門性が高い業務であり、その妥当性の検証が難しい。したがって、機械学習を用いる場合には教師ラベルにはばらつきがあることも考慮する必要がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、精度の高い施設価値を安定的に算出することが可能な施設価値推定装置、公共設備影響評価システム、及び公共設備影響評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一つは、プロセッサ及びメモリを有し、指定エリアの属性情報、前記指定エリアに属する各施設の属性情報、及び前記指定エリアにおける人の時系列な移動を示す人流データを記憶する前記メモリから、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を読み込み、施設の属性情報及び当該施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、前記施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の評価値及び当該評価値の分散の逆数である算出精度を算出する推定部と、前記指定エリアに属する各施設の評価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、前記指定エリアに前記評価値の算出精度が所定の閾値未満の施設である低精度施設があるか否かを判定し、前記指定エリアに前記低精度施設があると判定した場合には、所定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデルに、前記メモリから読み込んだ前記指定エリアにおける人流データに基づく前記指定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する再推定部と、前記算出した又は前記再算出した施設の評価値の情報を表示する表示部と、を備え、前記第2の学習済みモデルは、前記指定エリア以外の他のエリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値の教師データとし、前記他のエリアにおける施設の評価値を出力値の教師データとする学習処理により作成される、施設価値推定装置、とする。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明の一つは、プロセッサ及びメモリを有し、指定エリアの属性情報、前記指定エリアに属する各施設の属性情報、及び前記指定エリアにおける人の時系列な移動を示す人流データを記憶する前記メモリから、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を読み込み、施設の属性情報及び当該施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、前記施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の評価値及び当該評価値の分散の逆数である算出精度を算出する推定部と、前記指定エリアに属する各施設の評価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、前記指定エリアに前記評価値の算出精度が所定の閾値未満の施設である低精度施設があるか否かを判定し、前記指定エリアに前記低精度施設があると判定した場合には、所定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデルに、前記メモリから読み込んだ前記指定エリアにおける人流データに基づく前記指定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する再推定部と、公共設備の配置の情報と、前記算出した又は再算出した各施設の施設価値と、当該各施設の位置の情報とに基づき、前記公共設備の当該各施設に対する影響の大きさを表すインフラ影響度を算出する評価部と、前記算出した又は前記再算出した施設の評価値の情報と、前記算出したインフラ影響度とを表示する表示部と、を備え、前記第2の学習済みモデルは、前記指定エリア以外の他のエリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値の教師データとし、前記他のエリアにおける施設の評価値を出力値の教師データとする学習処理により作成される、公共設備影響評価システム、とする。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の一つは、情報処理装置が、指定エリアの属性情報、前記指定エリアに属する各施設の属性情報、及び前記指定エリアにおける人の時系列な移動を示す人流データを記憶するメモリから、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を読み込み、施設の属性情報及び当該施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、前記施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデルに、前記指定エリアに属する各施設の属性情報及び前記指定エリアの属性情報を入力することにより、前記指定エリアに属する各施設の評価値及び当該評価値の分散の逆数である算出精度を算出する推定処理と、前記指定エリアに属する各施設の評価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、前記指定エリアに前記評価値の算出精度が所定の閾値未満の施設である低精度施設があるか否かを判定し、前記指定エリアに前記低精度施設があると判定した場合には、所定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデルに、前記メモリから読み込んだ前記指定エリアにおける人流データに基づく前記指定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する再推定処理と、公共設備の配置の情報と、前記算出した又は再算出した各施設の施設価値と、当該各施設の位置の情報とに基づき、前記公共設備の当該各施設に対する影響の大きさを表すインフラ影響度を算出する評価処理と、前記算出した又は前記再算出した施設の評価値の情報と、前記算出したインフラ影響度とを表示する表示処理と、を実行し、前記第2の学習済みモデルは、前記指定エリア以外の他のエリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値の教師データとし、前記他のエリアにおける施設の評価値を出力値の教師データとする学習処理により作成される、公共設備影響評価方法、とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精度の高い施設価値を安定的に算出することができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る公共設備影響評価システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】施設価値推定装置及びデータ管理装置が備える機能の一例を説明する図である。
【
図6】各情報処理装置が備えるハードウェアの一例を示す図である。
【
図7】公共設備影響評価処理の概要を説明するシーケンス図である。
【
図8】第1分析モデル及び第2分析モデルを作成する学習処理の概要を説明するシーケンス図である。
【
図9】施設価値推定処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図11】データ入力処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図12】データ入力処理において表示されるデータ入力画面の一例である。
【
図13】再推定処理の詳細を説明するフローチャートである。
【
図14】再推定処理の詳細を説明するイメージ図である。
【
図15】施設間接続関係テーブルの一例を示す図である。
【
図16】ネットワーク構造テーブルの一例を示す図である。
【
図17】新ネットワーク構造テーブルの一例を示す図である。
【
図18】インフラ影響度算出処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図19】インフラが水道管路である場合のインフラ影響度算出処理の一例を説明する図である。
【
図20】インフラ影響度テーブルの一例を示す図である。
【
図21】第1分析モデルの学習時に際して表示されるモデル学習画面の一例を示す図である。
【
図23】再推定結果表示画面の一例を示す図である。
【
図24】最終推定結果表示画面の一例を示す図である。
【
図25】影響度評価表示画面の一例を示す図である。
【
図26】災害復旧支援処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図27】年間保守計画支援処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図28】統合リスク評価情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。同一の符号を付した部分は同一物を表し、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0015】
--システム構成--
図1は、本実施形態に係る公共設備影響評価システム1の構成の一例を示す図である。公共設備影響評価システム1は、施設価値推定装置10及びデータ管理装置20を有する施設価値推定システム30と、センサ状態検知システム113、破損リスク予測システム114、及び修理復旧計画立案システム115を有する外部システム40とを含んで構成されている。
【0016】
施設価値推定装置10、データ管理装置20、センサ状態検知システム113、破損リスク予測システム114、及び修理復旧計画立案システム115の間は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、又は専用線等の有線
若しくは無線の通信ネットワーク5、6により接続される。
【0017】
公共設備影響評価システム1は、各エリア(都市等)に設けられている公共設備(水道、ガス、電気等の公共インフラ設備。以下、単にインフラともいう。)を管理する情報処理システムである。
【0018】
公共設備影響評価システム1は、インフラを管理するにあたり、ユーザ(システム管理者等)から指定されたエリア(以下、指定エリアという)を含む各エリア内の各施設の、インフラに対する関係での評価値(以下、施設価値という)を、エリアごとに、後述する2つの分析モデルを用いて推定する。
【0019】
そして、公共設備影響評価システム1は、推定した施設価値に基づき、指定エリア内での、インフラの各施設への影響(例えば、インフラのメンテナンスが各施設に与える影響)の情報であるインフラ影響度を算出する。
【0020】
次に、
図2は、施設価値推定装置10及びデータ管理装置20が備える機能の一例を説明する図である。
【0021】
施設価値推定装置10は、表示部101と、施設価値を推定する推定部102と、推定部102で推定した施設価値の算出精度を判定する判定部103と、施設価値の算出精度が低い場合に再推定を行う再推定部104と、推定部102又は再推定部104に基づき施設価値の算出処理を行う計算部105と、インフラ影響度を算出する評価部106と、公共設備の管理を行う公共設備管理部116とを含むアプリケーション部117とを備える。
【0022】
また、施設価値推定装置10は、データを格納する格納部107及び各種データを設定する設定部108を含む基盤部118と、外部システム40と通信する通信部112と、データ管理装置20と通信する通信部119とを備える。
【0023】
推定部102は、各施設の評価値(施設価値)を算出すると共に評価値の算出精度を算出する。本実施形態では、推定部102は、エリアごとに第1の学習済みモデルを用いることによって、評価値及び算出精度を算出するものとする。
【0024】
すなわち、推定部102は、施設及び施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデル(以下、第1分析モデルという)に、指定された施設の属性情報及びその施設の所属エリアの属性情報を入力することにより、その指定された施設の評価値及び評価値の算出精度を算出する。
【0025】
再推定部104は、各施設のうち推定部102が算出した評価値の算出精度が所定の閾値未満の施設(低精度施設)があるか否かを判定し、低精度施設がある場合には、低精度施設を含む複数の施設からなるグループ(コミュニティ)と所定要素(次述)において類似性の高い、複数の施設からなる他のグループ(コミュニティ)を特定し、特定した他のグループの施設の評価値に基づき低精度施設の評価値を再算出する。
【0026】
例えば、上記所定要素の類似性に関して、再推定部104は、低精度施設を含む複数の施設からなるグループにおける施設間の人的結合(施設間の人流等)と類似性の高い人的結合を有する、複数の施設からなる他のグループの施設の評価値に基づき、低精度施設の評価値を算出する。
【0027】
本実施形態では、再推定部104は、指定エリアを含む各エリアについて第2の学習済みモデルを用いることによって、指定エリアにおける評価値及び算出精度を再算出するものとする。
【0028】
すなわち、再推定部104は、低精度施設がある場合には、所定エリア(指定エリア以外の他のエリア)における施設間の人的結合(施設間の人流等)の情報を入力値とし、上記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデル(以下、第2分析モデルという)に、低精度施設を含むエリア(すなわち、指定エリア)における施設間の人的結合の情報を入力することにより、低精度施設の評価値を再算出する。なお、この人的結合は、後述するように、上記のコミュニティの基礎となるネットワークである。
【0029】
なお、再推定部104は、再算出した低精度施設の評価値(施設価値)に対するさらなる修正の入力をユーザから受け付ける。
【0030】
次に、評価部106は、インフラが各施設に与える影響に関する計算を行う。
【0031】
例えば、評価部106は、公共設備の配置の情報と、推定部102及び再推定部104による各施設の施設価値と、各施設の位置の情報とに基づき、公共設備の施設に対する影
響の大きさを表すインフラ影響度を算出する。
【0032】
公共設備管理部116は、インフラの管理に関する計算を行う。
【0033】
例えば、公共設備管理部116は、センサ状態検知システム113から、公共設備のうち異常部分の情報を取得することで、インフラ影響度に基づき、異常部分の修復の必要性を示す情報(復旧計画の情報)を作成する。
【0034】
また、公共設備管理部116は、破損リスク予測システム114から、公共設備の破損のリスクの情報を取得することで、インフラ影響度に基づき、破損のリスクに対する対応の必要性の高さを示す評価値(統合リスク評価値)を算出する。
【0035】
次に、表示部101は、各施設の施設価値、及びインフラ影響度といった各種の情報を画面に表示する。
【0036】
例えば、表示部101は、評価値の算出精度が所定の閾値以上である各施設(低精度施設でない施設)の評価値の情報と、再算出した低精度施設の評価値の情報とを表示する。この際、表示部101は、各施設のうち、評価値の算出精度が所定の閾値以下の施設であった施設の情報を第1の表示形式で表示し、その他の施設の情報を第2の表示形式で表示する。
【0037】
次に、データ管理装置20は、各エリアにおける各施設の属性のデータである都市データ109と、各エリアにおける人の属性のデータ(各人の各日時における位置のデータ)である人流データ110と、各エリアにおけるインフラの属性のデータであるインフラデータ111とを含む各データを記憶している。
【0038】
(都市データ)
図3は、都市データ109の一例を示す図である。都市データ109は、施設ID1091、施設の名称1092、施設の種類1093、施設の緯度1094、施設の経度1095、施設の面積1096、施設の従業員数1097、施設の収容人数1098、施設の病床数1099、施設の年間売上10991、及び施設の地価公示価格10992の各データ項目を有する。なお、ここで説明したデータ項目は一例であり、これらのデータ項目の一部が省略されても、又はその他の項目が追加されていてもよい。また、都市データ109のデータの中には、所定の組織外に公開されていない等の理由により、欠損値が存在している場合がある。なお、施設の種類としては、例えば、病院、学校、保育施設、介護施設、避難所、住宅、オフィスビル、工場、又は産業施設がある。
【0039】
(人流データ)
図4は、人流データ110の一例を示す図である。人流データ110は、ユーザのID1101、日時1102、緯度1103、及び経度1104の各データ項目を有する。このデータは携帯電話等の端末が発する位置情報等により取得される。なお、人流データ110は、人の時系列な移動を示す情報であればよい。なお、ここで説明したデータ項目は一例であり、これらのデータ項目の一部が省略されても、又はその他の項目が追加されていてもよい。
【0040】
(インフラデータ)
図5は、インフラデータ111の一例を示す図である。本実施形態では、インフラデータ111は、各エリアにおける水道管路に関連したデータであるものとするが、後述するように、他のインフラに対しても本発明は適用可能である。
【0041】
すなわち、本実施形態のインフラデータ111は、水道需要量テーブル201、管路ネットワーク構造テーブル202、及び教師ラベル203を有する。
【0042】
水道需要量テーブル201は、水道の各施設に対する需要のデータである。水道需要量テーブル201は、水道を利用する施設のID2011、その施設の平均水道使用量2012、及びその施設の平均水道使用料金2013の各データ項目を有する。
【0043】
管路ネットワーク構造テーブル202は、水道管路の位置及び配置構成のデータである。管路ネットワーク構造テーブル202は、管路のID2021、その管路の始点ノード(管路の一端)のID2022、その管路の終点ノード(管路の他端)のID2023、その管路の始点ノードの緯度2024、その管路の始点ノードの経度2025、その管路の終点ノードの緯度2026、及びその管路の終点ノードの経度2027の各データ項目を有する。ここで、ノードとは、管路同士の接続部に相当する。
【0044】
教師ラベル203は、各分析モデルの作成(学習)に利用される、各施設の施設価値の教師ラベル(正解データ)である。施設価値は、本実施形態では、施設の人的価値及び経
済的価値を合算したものとする。
【0045】
すなわち、教師ラベル203は、施設のID2031、その施設の人的価値204、及びその施設の経済的価値205の各データ項目を有する。教師ラベル203は、例えば、インフラサービス事業者等により設定される。
【0046】
なお、以上に説明したインフラデータ111のデータ項目は一例であり、これらのデータ項目の一部が省略されても、又はその他の項目が追加されていてもよい。例えば、インフラデータ111は、インフラの使用量と構造を示すデータであればよい。
【0047】
次に、
図1に示すように、センサ状態検知システム113は、公共設備の各所に予め取り付けたセンサの情報を取得することで、公共設備の異常箇所を特定する。
【0048】
破損リスク予測システム114は、時間軸に対応した公共設備の破損確率を算出する。破損確率は、公共設備の異常部分に対する修復の必要性の高さを示す評価値である。
【0049】
修理復旧計画立案システム115は、平常時又は災害が発生した場合における公共設備の修理又は復旧に関する情報を画面に表示する。
【0050】
ここで、
図6は、施設価値推定装置10、データ管理装置20、センサ状態検知システム113、破損リスク予測システム114、及び修理復旧計画立案システム115の各情報処理装置が備えるハードウェアの一例を示す図である。各情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置11、RAM(Random Access Memory)、ROM
(Read Only Memory)等の主記憶装置12、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid
State Drive)等の補助記憶装置13、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置14、モニタ(ディスプレイ)等の出力装置15、及び他の装置と通信を行う通信装置16を備える。
【0051】
各情報処理装置が行う処理は、処理装置11が、主記憶装置12に記憶されているプログラムを実行することによって実現される。これらのプログラムは、例えば、二次記憶デバイスや不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSDなどの記憶デバイス、又は、ICカード、SDカード、DVDなどの、各ノードで読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納される。
【0052】
次に、公共設備影響評価システム1で行われる処理について説明する。
【0053】
-処理の概要-
まず、公共設備影響評価システム1で行われる処理の概要を説明する。
【0054】
図7は、各施設の施設価値を推定して公共設備への影響評価を行う公共設備影響評価処理の概要を説明するシーケンス図である。公共設備影響評価処理は、例えば、次述する学習処理の実行後に、又は学習処理と共に、ユーザから施設価値推定装置10に所定の入力があったことを契機に実行される。
【0055】
まず、施設価値推定装置10の推定部102は、データ管理装置20からデータを取得し(s1)、取得したデータに基づき、各施設の施設価値及び施設価値の算出精度等を算出する(s2)。この際、推定部102は、第1分析モデルを利用して施設価値及び施設価値の算出精度を算出する。
【0056】
再推定部104は、推定部102の処理結果の情報に基づき、算出精度が低かった施設について、その施設価値を、後述するコミュニティ抽出法に基づき再計算する(s4)。この際、再推定部104は、第2分析モデルに、上記コミュニティのデータを入力することで施設価値を再計算する。
【0057】
評価部106は、推定部103及び再推定部104による各施設の施設価値の算出結果(及び再算出結果)、及び公共設備の配置構成(施設間のネットワーク)の情報に基づきインフラ影響度を算出し(s6)、インフラ影響度の算出結果を、所定のテーブルに格納する(s7)。以上で、公共設備影響評価処理は終了する。
【0058】
次に、
図8は、第1分析モデル及び第2分析モデルを作成する学習処理の概要を説明するシーケンス図である。
【0059】
同図に示すように、施設価値推定装置10の推定部102は、データ管理装置20から取得したデータに基づき、所定の機械学習を行い、第1分析モデルを作成する(s11)。また、施設価値推定装置10の再推定部104は、データ管理装置20から取得したデータに基づき施設間ネットワークを作成し、作成した施設間ネットワークを、後述するコミュニティ抽出法によりコミュニティ(グループ)に再構成し、再構成したコミュニティのデータに基づき所定の機械学習を行うことで、第2分析モデルを作成する(s12)。その後、学習処理は終了する。
【0060】
次に、施設価値推定装置10が行う、各施設の施設価値を推定する価値推定処理について説明する。
【0061】
-施設価値推定処理-
図9は、施設価値推定処理の一例を説明するフローチャートである。
【0062】
まず、施設価値推定装置10の推定部102は、データ管理装置20の各データを設定するデータ入力処理を実行する(s301)。また、推定部102は、ユーザが施設価値を算出したいエリア(指定エリア)の指定を受け付ける。データ入力処理の詳細は後述する。
【0063】
推定部102は、施設価値を評価するための第1分析モデルを作成し、作成した第1分析モデルを用いて、指定エリアにおける各施設の施設価値の評価値を算出する(s302)。本実施形態では、推定部102は、各エリアについて、人的価値に関する第1分析モ
デル(人的第1分析モデル)及び経済的価値に関する第1分析モデル(経済的第1分析モデル)を作成するものとする。
【0064】
例えば、まず、推定部102は、各エリアについて、都市データ109の各データを入力値の教師データとし、インフラデータ111の教師ラベル203の人的価値204の各データを出力値の教師データとする学習処理を行う(例えば、過去の都市データ109及びインフラデータ111を用いる)ことで、人的第1分析モデルを作成する。なお、この分析モデルは、例えば、入力層、中間層、及び出力層からなるニューラルネットワークとして構築される。なお、出力層からは、出力値の確率分布(平均と分散を有する確率分布)が出力される。このようなニューラルネットワークは、例えば、ベイズ線形回帰法やガウス過程回帰法等により作成される。
【0065】
推定部102は、同様に、各エリアについて、都市データ109の各データを入力値の教師データとし、インフラデータ111の教師ラベル203の経済的価値205の各データを出力値の教師データとする学習処理を行う(例えば、過去の都市データ109及びインフラデータ111を用いる)ことで、経済的第1分析モデルを作成する。なお、これらの第1分析モデルの作成は、施設価値推定処理を実行する前に(例えば、学習処理で)で行ってもよい。
【0066】
そして、推定部102は、このようにして作成しておいた、人的第1分析モデル及び経済的第1分析モデルのそれぞれに、指定エリアにおける各施設の現在の都市データ109を入力することにより、対応する各施設の、人的価値の評価値(人的評価値)の確率分布及び経済的価値の評価値(経済的評価値)の確率分布を出力する。
【0067】
そして、判定部103は、s302で出力した評価値に基づき、各第1分析モデルについて、各施設価値の算出精度を判定する。すなわち、判定部103は、各施設価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定する(s303)。
【0068】
例えば、判定部103は、s302で出力した人的評価値の確率分布の分散の逆数及び経済的評価値の確率分布の分散の逆数を算出することで、人的第1分析モデル及び経済的第1分析モデルによる、施設価値の算出精度をそれぞれ算出する。判定部103は、これらの第1分析モデルについて、各施設価値の算出精度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0069】
各第1分析モデルについて、各施設の施設価値の算出精度が所定の閾値以上である場合は(s303:精度高)、判定部103は、その施設の施設価値についてs304の処理を実行し、各施設の施設価値の算出精度が所定の閾値未満である場合は(s303:精度低)、判定部103は、その施設の施設価値について再推定処理s305を実行する(後述)。その後は、s304の処理が行われる。
【0070】
s304において判定部103は、s302で出力した各評価値を施設価値テーブル702に設定する。
【0071】
(施設価値テーブル)
図10は、施設価値テーブル702の一例を示す図である。施設価値テーブル702は、施設のID7021、その施設の人的価値平均7022(人的評価値の平均値)、その施設の人的評価値の算出精度7023、その施設の経済的価値平均7024(経済的評価値の平均値)、その施設の経済的評価値の算出精度7025、その施設の施設価値平均7026(詳細は次述)、及び、その施設の施設価値精度7027(詳細は次述)の各データ項目を有する。なお、施設価値平均7026、及び施設価値精度7027は次述する処
理s306により設定される。
【0072】
次に、
図9のs306に示すように、計算部105は、各施設の最終的な施設価値を算出し、施設価値テーブル702に設定する。すなわち、この施設価値は、人的評価値平均と経済的評価平均の線形和で算出される。例えば、計算部105は、各施設の施設価値を、人的要素と経済的要素の相対的重要性を示す重み係数a,bを用いて、以下の式により算出する。
【0073】
施設価値=(a×人的評価値平均)+(b×経済的評価値平均)
(aは人的要素の重み係数、bは経済的要素の重み係数、a+b=1)
【0074】
なお、施設価値精度は人的評価値平均の算出精度の逆数と経済的評価値平均の算出精度の逆数との線形和の逆数で算出される。これは、精度という値が分散の逆数であり、2つの独立の確率分布の和の分散は各確率分布の分散の和と等しいことに基づく。
【0075】
このように、各評価値に対する重み係数a,bを考慮することで、都市の経済状況及び社会状況に応じた施設の価値評価が可能となる。例えば、平常時は、経済的損失が大きい施設につながるインフラを重要視すべく、各重み係数を(a,b)=(0.2,0,8)のように設定し、災害時は人命に関わるような施設につながるインフラを重要視すべく、(a,b)=(0.8,0.2)のように設定する。
【0076】
次に、評価部106は、s306で算出した各施設の施設価値に基づき、インフラ影響度を算出するインフラ影響度算出処理を実行する(s307)。表示部101は、算出したインフラ影響度の情報を画面に表示する(s308)。
【0077】
ここで、データ入力処理s301、再推定処理s305、及びインフラ影響度算出処理307の詳細を説明する。
【0078】
-データ入力処理-
図11は、データ入力処理の一例を説明するフローチャートである。また、
図12は、データ入力処理において表示されるデータ入力画面1101の一例である。
【0079】
図11に示すように、設定部108は、ユーザから、データ入力画面1101により、エリアの選択を受け付ける(s1107)。設定部108は、選択されたエリアに係る都市データ109及び人流データ110を、データ管理装置20から取得する(s1108)。また、設定部108は、インフラデータ111のデータの入力をデータ入力画面1101によりユーザから受け付ける。格納部107は、都市データ109、人流データ110、インフラデータ111に、これらの取得した又は入力されたデータを設定する(s1109)。
【0080】
図12に示すように、データ入力画面1101は、ユーザからエリアの選択を受け付けるエリア選択欄1103と、インフラデータ111の管路ネットワーク構造テーブル202を読み込む管路構造データ選択欄1104と、インフラデータ111の水道需要量テーブル201を読み込む水道利用料データ選択欄1105と、選択されたエリアに係るデータの設定を完了する新規エリア作成ボタン1106とを備える。なお、データ入力画面1101には、都市データ109及び人流データ110を編集する欄が設けられていてもよい。
【0081】
-再推定処理-
図13は、再推定処理s305の詳細を説明するフローチャートである。また、
図14
は、再推定処理s305の詳細を説明するイメージ図である。
【0082】
これらの図に示すように、再推定部104は、人流データ110及び、s304で作成した施設価値テーブル702を取得する(s401)。そして、再推定部104は、人流データ110及び施設価値テーブル702を統合したデータである施設間接続関係テーブル601を作成する(s402)。
【0083】
さらに、再推定部104は、施設間接続関係テーブル601を、各施設を示すノード504、各施設間の人流の関係を示すエッジ503、及びその人流の関係の強さ(人的結合の強さ)を示す重み505の要素を含んだネットワーク構造テーブル602に変換する(s403)。
【0084】
図14に示すように、エッジの重み505には、ノード504間の接続の強さを表す値が設定される。例えば、「住宅C」に居住する人のうち、「病院A」に行く人の割合は少ないが「病院B」に行く人の割合が多い場合、ノード504間の接続関係は「住宅C」-「病院B」間の方が「住宅C」-「病院A」間の方が強いため、「住宅C」-「病院B」間に係るエッジ503の重み505の値(5.2)は、「住宅C」-「病院A」間の重みの値(0.9)より大きくなっている
【0085】
ここで、施設間接続関係テーブル601及びネットワーク構造テーブル602の詳細を説明する。
【0086】
(施設間接続関係テーブル)
図15は、施設間接続関係テーブル601の一例を示す図である。施設間接続関係テーブル601は、施設間の人流のデータを記憶している。施設間接続関係テーブル601は、施設間の始点となる施設のID6011、施設間の終点となる施設のID6012、及びこれらの施設間の単位時間当たりの人の移動人数6013の各データ項目を有する。なお、ここで説明したデータ項目は一例であり、これらのデータ項目の一部が省略されても、又はその他の項目が追加されていてもよい。
【0087】
(ネットワーク構造テーブル602)
図16は、ネットワーク構造テーブル602の一例を示す図である。ネットワーク構造テーブル602は、施設間の人流のデータと共に、各施設の施設価値を記憶している。すなわち、ネットワーク構造テーブル602は、人的結合を基礎とした施設間の依存関係(ネットワーク)を示した情報である。具体的には、ネットワーク構造テーブル602は、施設間の関係(エッジ)のIDであるエッジID6021、エッジの始点のノードID6022(施設IDと同様)、エッジの終点のノードID6023(施設IDと同様)、エッジの重み6024、始点のノードの施設価値平均6025、及び終点のノードの施設価値平均6026の各データ項目を有する。なお、重み505は、施設間接続関係テーブル601における各施設(ノード)間の人流に基づき算出される。
【0088】
なお、始点のノードの施設価値平均6025、及び終点のノードの施設価値平均6026には、それぞれ値が設定される場合とされない場合がある。すなわち、施設価値推定処理において推定精度が高い(s303:精度高)と判定された施設(ノード)に関しては、その施設の施設価値の情報が設定される(データは施設価値テーブル702から取得される)。一方、施設価値推定処理において推定精度が低い(s303:精度低)と判定された施設に関しては、値が設定されず(ブランクとなる)、後述する再推定処理により値が設定される。
【0089】
続いて、
図13、14のs404に示すように、再推定部104は、指定エリアを含む
各エリアについて、ネットワーク構造テーブル602に基づき、エリア内の各施設(ノード)を複数のグループ(コミュニティ507)に、再構成することで、新ネットワーク構造テーブル603を作成する。例えば、再推定部104は、コミュニティ抽出法に基づき再構成を行う。なお、後述するように、指定エリアを除くエリアの新ネットワーク構造テーブル603の作成及びこれによる第2分析モデルの学習は、予め行っておいてもよい。
【0090】
(新ネットワーク構造テーブル)
図17は、新ネットワーク構造テーブルの一例を示す図である。新ネットワーク構造テーブル603は、ネットワーク構造テーブル602に対してコミュニティの情報を付加したテーブルである。新ネットワーク構造テーブル603は、エッジID6031、エッジの始点ノードID6032、エッジの終点ノードID6033、エッジの重み6034、始点のノードの施設価値平均6035、終点のノードの施設価値平均6036、及びエッジが属するコミュニティのID6037の各データ項目を有する。
【0091】
なお、前記のコミュニティ抽出法とは、ネットワーク構造からつながりが密な部分集合を抽出する手法のことである。コミュニティ抽出法には、ラベル伝播法、モジュラリティ最適化、又はエッジ媒介中心性に基づくコミュニティ抽出法などがある。なお、ここで挙げたコミュニティ抽出法の項目は一例であり、ネットワーク構造から部分集合を取り出すことができれば、その手法は特に限定されない。本実施形態では、エッジ媒介中心性に基づくコミュニティ抽出法を用いるものとする。すなわち、再推定部104は、ネットワーク構造データ602を用いてエッジ媒介中心性を算出し、エッジ媒介中心性最大のエッジの除去を繰り返すことでつながりの密なコミュニティ(複数の施設のグループ)を抽出することで、新ネットワーク構造テーブル603を作成する。
【0092】
なお、コミュニティ抽出法を採用する理由は2つある。1つ目は、母集団をつながりが密なコミュニティ単位に分割することで、コミュニティ内での施設間の関係性を抽出しやすくするためである。再推定処理s504は、施設間の関係性という特徴量による第2分析モデルにより未知の施設価値を推定する。仮にコミュニティ抽出を行わず再推定処理s504を実行すると、つながりが疎な関係が多く含まれてしまうため施設間の関係性を表現する特徴量を抽出するのが難しい。そこで、コミュニティ抽出法によりつながりが密なコミュニティ単位に分割し後述する第2分析モデルによる施設価値推定の処理(s405)に用いることでこの問題に対処する。2つ目は、母集団をコミュニティ単位に分割することで、同一の第2分析モデルを異なるエリアにも用いることができるためである。例えば、分析モデルの機械学習に用いた「エリアA」と、その分析モデルを用いて施設価値を推定したい「エリアB」とでは、エリア内の施設の数、規模、又は施設間の関係性が異なるため、一般的には、エリア全体の情報を使った施設価値の推定は難しい。ここで、つながりが密な各コミュニティ単位では、施設の数又は規模等は異なるが施設価値の関係性はおおよそ同じであると仮定できる。例えば、付近の多くの住宅施設とつながりが強い病院は重要であり、このような関係性はコミュニティ又はエリアが異なっても同様である。この仮定に従えば、つながりが密な各コミュニティでは、施設間の関係性はおおよそ同じになる。その結果、エリアが異なっても、コミュニティ単位であれば同一モデルによる施設価値の推定が可能になる。
【0093】
次に、
図13に示すように、再推定部104は、s404で作成した新ネットワーク構造テーブル603に基づき、推定精度が低い施設(低精度施設)の施設価値を推定する(s405)。
【0094】
具体的には、例えば、再推定部104は、指定エリア以外のエリアについて、新ネットワーク構造テーブル603の各レコードの始点ノードID6032に対応する施設の種類、終点ノードID6033に対応する施設の種類、及びエッジの重み6034を入力値の
教師データとし、新ネットワーク構造テーブル603の各レコードの終点ノードの施設価値の平均値6036を出力値の教師データとする学習処理を行うことで、第2分析モデルを作成する。なお、この第2分析モデルは、例えば、入力層、中間層、及び出力層からなるグラフベイズニューラルネットワークとして構築される。なお、出力層からは、出力値の確率分布(平均と分散を有する確率分布)が出力される。なお、第2分析モデル及びその前提となる新ネットワーク構造テーブル603の作成は、予め(学習処理)作成しておいてもよい。
【0095】
そして、再推定部104は、指定エリア以外の他のエリアに係る第2分析モデルに対して、s404で作成した、指定エリアに係る新ネットワーク構造テーブル603のデータ(低精度施設に係るレコードのデータを除く)を入力することにより、低精度施設の施設価値平均及び施設価値精度を算出する。
【0096】
なお、指定エリア以外のエリアが複数ある場合は、再推定部104は、例えば、算出精度が最も高かった第2分析モデルの出力結果を採用する。
【0097】
再推定部104は、s405で推定した低精度施設の情報を第2分析モデルによる推定結果で更新する(s406)。
【0098】
例えば、再推定部104は、ネットワーク構造テーブル602の低精度施設に係るレコードの始点のノードの施設価値平均6025及び終点のノードの施設価値平均6026(ブランクとなっている)に、再算出された施設価値平均を設定する。また、再推定部104は、施設価値テーブル702の低精度施設に係るレコードの施設価値平均7026及び施設価値精度7027に、再推定された施設価値平均及び施設価値精度を設定する。以上で、再推定処理は終了する。
【0099】
なお、再推定部104は、再推定した施設価値の推定精度に対しても、ユーザから、施設価値等の情報の修正の入力を受け付け、入力されたデータにより施設価値テーブル702を更新する。この場合、第2分析モデルは施設価値の推定精度の情報を出力しているので、修正すべき箇所はユーザにとって明瞭である。これによりユーザは、より少ない労力(修正量)でより妥当性の高い施設価値の設定が可能となる。
【0100】
-インフラ影響度算出処理-
次に、
図18は、インフラ影響度算出処理s307の一例を説明するフローチャートである。また、
図19は、インフラが水道管路である場合のインフラ影響度算出処理の一例を説明する図である。
【0101】
まず、評価部106は、都市データ109から各施設の座標を取得し、また、管路ネットワーク構造テーブル202に基づき各管路903の代表座標905(代表地点)を算出する(s801)。代表座標905は、本実施形態では、管路の始点及び終点の間の中間点の座標とするが、これに限られるわけではない。
【0102】
評価部106は、s801で取得した座標のデータに基づき、各管路の周辺施設影響度を算出する(s802)。評価部106は、算出した周辺施設影響度をインフラ影響度テーブル907に設定する(s806)。
【0103】
周辺施設影響度は、管路の代表座標と近い各施設904(例えば、管路の代表座標から所定距離以内の施設)の施設価値平均の和である。
【0104】
例えば、
図19に示すように管路A,管路B,管路C,住宅A,住宅B,住宅C,病院Aがある場合
において、管路Aに対しては住宅A、管路Bに対しては住宅B、管路Cに対しては病院A及び住宅Cが、それぞれ周辺施設影響度の算出要素となる。
【0105】
また、
図18に示すように評価部106は、s802で算出した周辺施設影響度に基づき、接続影響度を算出する(s803、s804)。例えば、評価部106は、各管路の周辺施設影響度を示す行列と、接続影響度を示す可到達行列との積を計算する。評価部106は、算出した接続影響度をインフラ影響度テーブル907に設定する(s806)。
【0106】
接続影響度は、ある管路が他の管路に与える影響の大きさを示すパラメータである。本実施形態では、接続影響度は、ある管路がその下流の管路に与える影響を示すパラメータとする。例えば、
図19に示すように、管路Aは管路B、管路Cに到達可能なので、可到達
行列902の対応する行列要素は1であり、その逆は流れ方向の関係上成り立たないので、対応する行列要素は0である。
【0107】
さらに、評価部106は、s802で算出した周辺施設影響度とs804で算出した接続影響度とを加算することで、インフラ影響度を算出する(s805)。評価部106は、算出したインフラ影響度をインフラ影響度テーブル907に設定する(s806)。
【0108】
(インフラ影響度テーブル)
図20は、インフラ影響度テーブル907の一例を示す図である。インフラ影響度テーブル907は、管路のID9071、管路の周辺施設影響度9072、管路の接続影響度9073、及び管路の管路影響度9074の各データ項目を有する。
【0109】
以下、公共設備影響評価処理において施設価値評価装置10等が表示する画面について説明する。
【0110】
(モデル学習画面)
図21は、第1分析モデルに係る学習処理において表示されるモデル学習画面1000の一例を示す図である。モデル学習画面1000は、学習に必要な教師データの入力をユーザから受け付けるデータ入力画面1001と、学習の実行をユーザから受け付ける学習ボタン1005と、学習後の第1分析モデルの実行をユーザから受け付ける検証ボタン1006と、第1分析モデルの実行結果の表示をユーザから受け付ける検証結果画面1007及びデータ一覧1008とを備える。
【0111】
データ入力画面1001は、指定エリアの選択を受け付け、その指定エリアに係る都市データ109及び人流データ110を読み込むエリア選択欄1002と、インフラデータ111の水道需要量テーブル201の選択を受け付ける水道データ選択欄1003と、教師ラベル203の選択を受け付ける教師ラベル選択欄1004とを備える。
【0112】
データ入力画面1001にデータ入力がなされた状態で、学習ボタン1005及び検証ボタン1006が順に選択されると、検証結果画面1007及びデータ一覧1008に検証結果が出力される。
【0113】
検証結果画面1007には、第1分析モデルに関する検証結果の情報が表示される。例えば、第1分析モデルによるエリア内の全施設の施設価値の平均二乗和誤差又は平均精度等が出力される。なお、検証結果画面1007に表示される情報はこれらに限らず、第1分析モデルの検証結果に関する情報であれば特に限定されない。
【0114】
また、データ一覧1008には、エリア内の施設のうち推定精度が低い施設(低精度施設)のデータ一覧が表示される。推定精度が低い施設はデータが不足している施設である
可能性が高いため、ユーザは、データ一覧1008に表示されている施設を確認し、その施設に関する情報を都市データ109に追加等することで、第1分析モデルを追加学習し更新することができる。
【0115】
続いて、施設価値推定処理において表示される画面について説明する。
【0116】
-推定結果表示画面-
図22は、推定結果表示画面1201の一例を示す図である。推定結果表示画面1201は、例えば、s304の処理の際に表示される。推定結果表示画面1201には、指定エリアの地
図1203と、施設価値推定結果表1204とが表示される。地
図1203には、施設1205、水道管路1206、及び施設詳細情報1207が表示される。施設1205は、その種類に応じたアイコンにより表示される。また、アイコンは、その施設価値の大きさに応じて彩色される(符号1208)。また、施設1205の施設価値の推定精度が低い場合には、そのアイコンの近傍に、精度が低いことを示すマーク1209が表示される。例えば、精度が低いほどより多くの数のマーク(<*>)が表示される。
【0117】
施設価値推定結果表1204には、施設ID、施設価値、施設価値の精度、及び判定結果の各項目が表示される。施設価値推定処理により施設価値の推定精度が低いと判定された施設(低精度施設)の表示欄に対しては、所定の彩色1211が施されると共に、地
図1203の施設1205にも対応する表示がなされる。一方、低精度施設以外の施設の表示欄に対しては、彩色や地
図1203の表示もない。このように、表示形式を異ならせることで、ユーザに分かりやすく情報を提示することができる。なお、彩色に代えて、濃淡表示等の視覚的に差異化されるあらゆる表示形態が採用可能である。
【0118】
なお、地
図1203では、施設1205の施設詳細情報1207が、その施設1205のアイコンを選択すると表示される。
【0119】
また、地
図1203の任意のアイコン又は施設価値推定結果表1204の任意の施設が選択されると、ユーザは、対応する施設の施設価値を修正することができる。
【0120】
また、修正案表示ボタン1209が選択されると、低精度施設(彩色1211のある施設)を対象に施設価値の再推定(再推定処理s305)が行われた後、次述する再推定結果表示画面1202が表示される。
【0121】
-推定結果表示画面-
図23は、再推定結果表示画面1202の一例を示す図である。再推定結果表示画面1202は、推定結果表示画面1201と同様の指定エリアの地
図1203及び、施設価値推定結果表1204が表示される。この際、施設価値推定結果表1204では、再推定により低精度施設の施設価値と推定精度が修正されている(符号1212、1213)。しかし、再推定によっても施設価値の推定精度が低いと判定された施設1213については、ユーザが、地
図1203を用いて施設価値を修正入力することができる。
【0122】
このように、ユーザが施設価値を確認するのは、施設価値の推定精度の低い施設のみで良いため、作業上の労力を減らすことができる。その後、例えばユーザが施設価値の精度が低いと判定された全ての施設を編集すると、次述する最終推定結果表示画面1301が表示される。
【0123】
-最終推定結果表示画面-
図24は、最終推定結果表示画面1301の一例を示す図である。最終推定結果表示画面1301は、再推定結果表示画面1202と同様の指定エリアの地
図1304及び施設
価値推定結果表1305と、影響度評価ボタン1303とが表示される。影響度評価ボタン1303が選択されると、インフラ影響度算出処理307が実行され、影響度評価表示画面1302が表示される。
【0124】
-影響度評価表示画面-
図25は、影響度評価表示画面1302の一例を示す図である。影響度評価表示画面1302は、最終推定結果表示画面1301と同様の指定エリアの地
図1304及び、管路影響度評価結果1305が表示される。管路影響度評価結果1305には、各管路の管路ID、インフラ影響度算出処理により算出された管路影響度、及び、管路影響度を離散化した影響度レベルが、影響度レベルが高い順に表示される。影響度レベルは管路影響度に従って離散化された値であり、同図の例では3つの「影響度レベル」に離散化している。なお、管路影響度に基づいた離散化指標は、この「影響度レベル」に限られない。
【0125】
指定エリアの地
図1304には、影響度レベルに対応して彩色された管路1306と、管路の詳細情報1307とが表示される。以上の指定エリアの地
図1304及び管路影響度評価結果1305により、ユーザは、施設に対する影響が大きいインフラを判断しその後のインフラの保守又は復旧計画等に利用することができる。
【0126】
次に、施設価値推定処理を利用した、公共設備の管理に関する処理(災害復旧支援処理、及び年間保守計画支援処理)について説明する。
【0127】
-災害復旧支援処理-
図26は、施設価値推定処理を利用して災害復旧を行うための処理である災害復旧支援処理の一例を説明するフローチャートである。
【0128】
まず、施設価値推定装置10の推定部102は、センサ状態検知システム113から、異常が発生している管路の情報を取得する。具体的には、センサ状態検知システム113は、水道管路の各所に予め取り付けた振動センサの情報を取得することで、水道管路の異常箇所を特定する。推定部102は、センサ状態検知システム113が特定した異常箇所の情報を受信する。
【0129】
その後、施設価値推定装置10は、施設価値推定処理を実行する(s1402)。例えば、施設価値推定装置10は、データ管理装置20のデータを取得し、各施設の施設価値の推定(推定処理)を行う。施設価値推定装置10は、施設価値の精度が低いと判定された施設については、施設価値を再推定する(再推定処理)。施設価値推定装置10は、推定処理及び再推定処理の結果に基づき、施設価値テーブル702を作成する。この際、施設価値推定装置10は、災害の状況に応じて適当な値が設定された重みa,bに基づき各施設の施設価値を算出する。施設価値推定装置10は、各施設の施設価値と、インフラ影響度テーブル907とに基づき、異常のある管路のインフラ影響度を算出する。
【0130】
施設価値推定装置10は、s1402で算出したインフラ影響度を表示する。また、施設価値推定装置10は、算出したインフラ影響度の情報を修理復旧計画立案システム115に送信する(s1403)。修理復旧計画立案システム115はこの情報に基づきイン
フラの復旧計画の情報を作成し、これを画面に表示する。これにより、ユーザは、水道管路システムへの影響が小さくなるように、水道管路の復旧計画を立てることが可能となる。
【0131】
-年間保守計画支援処理-
図27は、施設価値推定処理を利用して平常時の年間保守計画を行うための処理である年間保守計画支援処理の一例を説明するフローチャートである。
【0132】
まず、施設価値推定装置10の推定部102は、破損リスク予測システム114から、各管路の破損確率の情報を取得する。具体的には、破損リスク予測システム114は、センサ状態検知システム113等から取得したセンサ等の情報に基づき、各水道管路の破損確率を算出する。推定部102は、破損リスク予測システム114が取得した破損確率の情報を受信する。
【0133】
その後、施設価値推定装置10は、災害復旧支援処理と同様に、施設価値推定処理を実行し、インフラ影響度を算出する(s1502)。
【0134】
施設価値推定装置10は、s1501で取得した破損確率とs1502で算出したインフラ影響度とを管路単位で掛け合わせることにより統合リスク評価値を算出し、また、統合リスク評価情報を作成する(s1503)。施設価値推定装置10は、作成した統合リスク評価情報を修理復旧計画立案システム115に送信し、修理復旧計画立案システム115がこの情報に基づき保守計画の情報を作成してこれを画面に表示する。これにより、ユーザは、例えば、管路の統合リスクが小さくなるように平常時の年間の保守計画を立てることが可能となる。
【0135】
(統合リスク評価情報)
図28は、統合リスク評価情報1505の一例を示す図である。統合リスク評価情報1505は、各管路のID15051、各管路の破損確率15052、各管路のインフラ影響度15053、及び各管路の統合リスク評価値15054の各データ項目を有する。
【0136】
以上に説明したように、本実施形態の施設価値推定装置10は、各施設の施設価値とその算出精度を算出し、施設価値の算出精度が低い低精度施設がある場合には、低精度施設を含む複数の施設からなるグループ(コミュニティ)と所定要素において類似性の高い他のコミュニティを特定し、特定したコミュニティの施設価値に基づき低精度施設の施設価値を再算出し、これらの各施設の施設価値の情報を表示する。
【0137】
すなわち、本実施形態の施設価値推定装置10は、各施設の施設価値を算出した上で、ある施設の施設価値の推定精度が低い場合には、他のコミュニティの施設の施設価値に基づいて施設価値の再推定を行う。
【0138】
このように、本実施形態の施設価値推定装置10によれば、精度の高い施設価値を安定的に算出することができる。すなわち、施設価値推定装置10は、個々の施設の価値を定量的に推定するので、施設価値を施設の種類ごとに定量化していた従来の方法と比べて精度の高い施設価値を算出することができる。また、これにより、算出された施設価値の修正を行うユーザの労力を大きく減少させることができる。
【0139】
本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明のより良い理解のために詳細に説明したものであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0140】
例えば、本実施形態の各装置が備える各機能の一部は他の装置に設けてもよいし、別装置が備える機能を同一の装置に設けてもよい。
【0141】
また、本実施形態では、施設価値は、施設の人的価値及び経済的価値を合算したものとしたが、これは一例であり、それ以外の要素(公共的価値、又は文化的価値等)を考慮してもよい。
【0142】
また、本実施形態では、ネットワーク構造テーブル602のエッジ重み6024は、施設間の人流に基づくものとしたが、その他の要素(例えば、都市データ901に規定されるような各施設の属性、又はエリアの属性)に基づいて算出するものとしてもよい。
【0143】
また、本実施形態では、インフラが水道管路であることを前提としたが、その他のインフラに対して公共設備管理システム1を適用することができる。例えば、インフラデータ111を、対象施設及びインフラの使用量と、インフラのネットワーク構造とに関する情報とすることで、他のインフラに対して公共設備管理システム1を適用することができる。
【0144】
例えば、インフラが道路の場合は、インフラデータ111として、交通量テーブル及び道路ネットワーク構造テーブルを設ける。交通量テーブルは、道路ごとの交通量を示す情報であり、道路ID、道路種類、又は平均交通量等が含まれる。道路ネットワーク構造テーブルは、道路のグラフネットワーク構造を示す情報であり、道路ID、始点ノードID、終点ノードID、始点、終点の緯度、又は経度等が含まれる。ここでノードとは、道路同士の接続部(道路の分岐)である。
【0145】
また、インフラが電力網の場合は、インフラデータ111として、電力需要量テーブル及び電力施設ネットワーク構造テーブルを設ける。電力需要量テーブルは、電力の供給先施設の需要量を示す情報であり、施設ID、平均電力使用量、又は平均電力使用料金等が含まれる。電力ネットワーク構造テーブルは、電力ネットワーク構造を示す情報であり、エッジID、始点電力施設ID、終点電力施設ID、始点及び終点電力施設の緯度、又は経度等が含まれる。ここで、エッジとは電力施設(ノード)を結ぶ電線などの電力輸送経路である。
【0146】
以上の本明細書の記載により少なくとも以下の事項が明らかにされる。すなわち、本実施形態の施設価値推定装置10の前記再推定部は、前記再算出した低精度施設の評価値に対する修正の入力をユーザから受け付ける、としてもよい。
【0147】
すなわち、再算出された低精度施設の評価値に対する修正の入力をユーザから受け付けることで、より精度の高い施設価値を設定することができる。例えば、施設価値の算出又は再算出に必要なデータが欠損していた場合、特に施設価値の算出又は再算出に学習済みモデルを利用した場合において教師ラベルにばらつき(ノイズ)がある場合には、施設価値の算出精度が低くなる傾向がある。その場合には、ユーザが最終的に施設価値を修正することができる。なお、施設価値推定装置10は、施設価値の推定精度(例えば、分散の確率分布)を算出しているので、算出結果が定量化されており、ユーザは精度の高い検証を行うことができる。
【0148】
また、本実施形態の施設価値推定装置10の前記推定部は、施設及び当該施設が属するエリアの属性情報を入力値とし、前記施設の評価値を出力値とする第1の学習済みモデルに、前記各施設及び当該各施設が属するエリアの属性情報を入力することにより、前記各施設の評価値及び当該評価値の算出精度を算出する、としてもよい。
【0149】
このように、少なくとも都市データ109を入力値とし、施設価値を出力値とする第1分析モデルを用いて、施設価値を算出することで、指定エリア等における施設価値を合理的に算出することができる。
【0150】
また、本実施形態の施設価値推定装置10の前記再推定部は、前記低精度施設があると判定した場合には、前記低精度施設を含む複数の施設からなるグループにおける施設間の人的結合と類似性の高い人的結合を有する、複数の施設からなる他のグループの施設の評
価値に基づき、前記低精度施設の評価値を再算出する、としてもよい。
【0151】
このように、低精度施設に対しては、低精度施設が属するコミュニティと人的結合(例えば、人流)のパターンが類似する他のコミュニティ(特に、指定エリアと異なるエリアのコミュニティ)の施設価値に基づき、低精度施設の評価値を再算出することで、先に算出した施設価値の算出精度が低かった場合、より算出精度が高い施設価値を再計算することができる。
【0152】
すなわち、複数の施設からなる各コミュニティにおいては、その属するエリアが異なっていても、施設間での人的結合の形態が類似していれば、そのコミュニティ内での各施設の施設価値は類似している可能性が高い。例えば、どのようなコミュニティであっても、周囲の施設との人流が高い施設(例えば、病院)は、重要な施設であり施設価値が高い傾向にある。係る性質に着目すれば、上記のような再計算を行うことで、より算出精度が高い施設価値を再計算できる可能性が高い。
【0153】
また、本実施形態の施設価値推定装置10の前記再推定部は、前記低精度施設があると判定した場合には、所定エリアにおける施設間の人的結合の情報を入力値とし、前記所定エリアにおける施設の評価値を出力値とする第2の学習済みモデルに、前記低精度施設を含むエリアにおける施設間の人的結合の情報を入力することにより、前記低精度施設の評価値を再算出する、としてもよい。
【0154】
このように、施設価値の再推定においては、あるエリアにおける施設間の人的結合(人流に対応したエッジ重み等)を少なくとも入力値とし、施設価値を出力値とする第2分析モデルを用いて、施設価値を再計算することで、指定エリア等における施設価値を精度よく算出することができる。
【0155】
さらに、本実施形態の施設価値推定装置10の前記推定部は、前記施設の人的価値を示すパラメータ、前記施設の経済的価値を示すパラメータ、及び、前記施設が属するエリアにおける人的側面と経済的側面の相対的重要性を示すパラメータに基づき前記施設の評価値を算出する、としてもよい。
【0156】
このように、施設価値を人的価値、経済的価値、及び重み係数(a,b)等により算出することで、施設の施設価値を社会の属性等に鑑みて合理的に算出することができる。
【0157】
また、本実施形態の施設価値推定装置10の前記推定部は、病院、学校、保育施設、介護施設、避難所、住宅、オフィスビル、工場、又は産業施設の少なくともいずれかの施設の名称、種類、座標、面積、収容人数、従業員数、病床数、売上、又は公示価格の少なくともいずれかと、前記施設が属するエリアの公共設備の需要又は配置構成とに基づき、前記施設の評価値を算出する、としてもよい。
【0158】
これらの情報に基づいて施設価値を算出することで、社会の実態に即した施設価値の算出が可能となる。
【0159】
また、本実施形態の施設価値推定装置10の前記表示部は、前記各施設のうち、前記評価値の算出精度が前記所定の閾値未満の施設である施設の情報を第1の表示形式で表示し、その他の施設の情報を第2の表示形式で表示する、としてもよい。
【0160】
このように、低精度施設かそれ以外の施設かによって表示形式を異ならせることで、ユーザは、施設価値の修正又は再計算の必要について容易に認識することができる。
【0161】
また、本実施形態の公共設備影響評価システム1は、所定の情報処理システムから、前記公共設備のうち異常部分の情報を取得し、前記異常部分の配置の情報と、前記算出したインフラ影響度とに基づき、前記異常部分の修復の必要性の高さを示す評価値を算出する公共設備管理部を備える、としてもよい。
【0162】
このように、センサ状態検知システム113等から取得したインフラの異常部分の情報と、インフラ影響度とに基づき、復旧計画の情報を作成することで、地域等における各施設の現状に応じた適切なインフラ復旧計画を策定することができる。
【0163】
また、本実施形態の公共設備影響評価システム1は、所定の情報処理システムから、前記公共設備の破損のリスクの情報を取得し、前記算出したインフラ影響度と、前記取得した破損のリスクの情報とに基づき、前記破損のリスクに対する対応の必要性の高さを示す評価値を算出する公共設備管理部を備える、としてもよい。
【0164】
このように、破損リスク予測システム114等から取得したインフラの補損の情報と、インフラ影響度とに基づき、統合リスク評価情報1505を作成することで、地域等における各施設の現状に応じた適切なインフラ保守計画を策定することができる。
【符号の説明】
【0165】
1 公共設備影響評価システム、10 施設価値推定装置、20 データ管理装置、30
施設価値推定システム、113 センサ状態検知システム、114 破損リスク予測システム、115 修理復旧計画立案システム