(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】支保材引抜き装置及び既設管の更生方法
(51)【国際特許分類】
B29C 63/26 20060101AFI20240828BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20240828BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20240828BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B29C63/26
E03F3/04 Z
E03F7/00
F16L1/00 P
(21)【出願番号】P 2021044079
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】高谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】三上 伝吉
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183885(JP,A)
【文献】特開2019-183632(JP,A)
【文献】特開2019-025839(JP,A)
【文献】特開2007-060766(JP,A)
【文献】特開2015-142479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/26
E03F 3/04
E03F 7/00
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管と前記既設管の内側の更生管との間に裏込め材を充填する際に前記更生管内に設置される支保工において、前記更生管の貫通穴を通り前記既設管の内面に当たるとともに前記裏込め材に埋没している支保材を、前記裏込め材の硬化後に引き抜く装置であって、
本体と、
前記本体に設けられ、前記支保材をクランプするクランプ機構と、
前記本体に設けられ、前記更生管または前記更生管内に配置された構造体を、前記支保材の軸線方向に押圧することにより、前記本体を前記更生管から離間する方向に移動させ、前記クランプ機構によりクランプされた前記支保材を、前記裏込め材との付着力に抗して引き抜く押圧機構と、
を備えたことを特徴とする支保材引抜き装置。
【請求項2】
前記クランプ機構は、前記本体に基端部が固定された第1挟持部材と、前記第1挟持部材の基端部に回動可能に連結された第2挟持部材と、前記第1挟持部材に一端部が回動可能に連結されたボルトと、前記ボルトの他端部に螺合されたナットと、を有し、
前記ナットを前記第2挟持部材の先端部に係止させた状態で締め付けることにより、前記第1、第2挟持部材の内周が前記支保材の外周に圧接し、前記支保材をクランプすることを特徴とする請求項1に記載の支保材引抜き装置。
【請求項3】
前記押圧機構は、前記本体に設けられた雌ネジ部と、前記雌ネジ部に螺合され前記支保材と平行に延びるネジ棒と、このネジ棒の先端に設けられ前記更生管または前記構造体に当接する当接部材と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の支保材引抜き装置。
【請求項4】
真直の支保材とジャッキを含む支保工を用意する工程と、
既設管の内側に更生管を設置する工程と、
前記更生管を設置した後、前記更生管内にその管軸方向に間隔をおいて前記支保工を設置する工程であって、前記支保材の一端部に設けたジャッキにより前記支保材を軸線方向に移動させることにより、前記支保材の他端部が前記更生管に形成された貫通穴に通して前記既設管の内面に当たり、前記ジャッキが腹起し材を介して前記更生管を前記既設管に向けて押さえ付ける工程と、
前記支保工の設置状態で前記既設管と前記更生管との間に裏込め材を充填する工程と、
前記裏込め材の充填硬化後に、前記ジャッキを前記支保材から外す工程と、
請求項1~3のいずれかに記載の支保材引抜き装置を前記支保材に設置し、前記支保材を前記クランプ機構によりクランプした状態で前記押圧機構により前記更生管を押圧することにより、前記裏込め材から前記支保材を引き抜く工程と、
を備えたことを特徴とする既設管の更生方法。
【請求項5】
真直の支保材と、ジャッキと、前記支保材をその軸線に沿って上下方向に移動可能に支持する環状フレームと、前記環状フレームに周方向に間隔をおいて設けられたサポートと、を含む支保工を用意する工程と、
既設管の内側に更生管を設置する工程と、
前記更生管を設置した後、前記更生管内にその管軸方向に間隔をおいて前記支保工を設置する工程であって、前記サポートを腹起し材を介して前記更生管に当てることにより前記環状フレームを保持し、前記支保材の下端部に設けたジャッキにより前記支保材を上方に移動させることにより、前記支保材の上端部が前記更生管の管頂部に形成された貫通穴に通して前記既設管の内面に当たり、前記ジャッキが腹起し材を介して前記更生管の管底部を下方に向けて押さえ付ける工程と、
前記支保工の設置状態で前記既設管と前記更生管との間に裏込め材を充填する工程と、
前記裏込め材の充填硬化後に、前記ジャッキを前記支保材から外す工程と、
請求項1~3のいずれかに記載の支保材引抜き装置を前記支保材に設置し、前記支保材を前記クランプ機構によりクランプした状態で前記押圧機構により前記環状フレームを押圧することにより、前記裏込め材
から前記支保材を引き抜く工程と、
を備えたことを特徴とする既設管の更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管と更生管との間に裏込め材を充填する際に更生管内に設置される支保工において、更生管を貫通して裏込め材に埋没している支保材を、裏込め材の硬化後に引き抜く装置およびこの引抜き装置を用いた既設管の更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の老朽化した既設管を更生するために、更生管を既設管の内側にライニングすることは公知である。更生管をライニングした後、既設管と更生管との間にモルタル等の裏込め材を充填するが、この充填時に裏込め材からの浮力により更生管が浮上するのを防止したり、更生管が変形したりするのを防止するために、更生管の管軸方向に間隔をおいて支保工が設置される。
【0003】
特許文献1に更生管浮上防止用の支保工が開示されている。この支保工は、上下方向に延びる真直の1本の支保材と、この支保材の下端部に設けられたジャッキとを有している。更生管の管底部に管軸方向に延びる腹起し材を設置した状態で、この腹起し材に載ったジャッキを操作することにより、支保材が上方に移動し、その上端部が更生管の管頂部に形成された貫通穴を通り、既設管の管頂部に当たる。一方、更生管の管底部は既設管の管底部に押し付けられる。この支保工により、既設管と更生管との間に裏込め材が充填された時に、更生管が浮上するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充填された裏込め材が硬化した後、支保工および腹起し材を更生管から撤去する必要がある。ジャッキや腹起し材は簡単に撤去できるが、支保材は、その上端部が硬化した裏込め材に埋没し、裏込め材に付着しているので、簡単に引き抜くことができない。そこで、支保材をレンチで挟み、支保材の軸線回りに回して裏込め材との付着を断ってから引き抜いている。しかし、裏込め材との付着が強固であると支保材を回すことができない。その場合には、支保材を咥えたレンチをハンマーで叩いたり、支保材を前後左右に揺らしたりして、裏込め材との付着を解除しなければならない。そのため、支保材の引抜き作業が煩雑であるばかりか、支保材の引抜きに際して更生管の貫通穴の周縁部が傷ついてしまい、貫通穴をキャップ等で封止する作業に手間がかかる。
【0006】
支保材を円滑に引抜くとともに貫通穴の周縁部が傷つくのを避けるために、裏込め材の充填工程を2日に分けて行なう場合もある。すなわち、1日目に裏込め材を支保材の上端部より下位のレベルまで注入する。2日目に裏込め材の注入直前に支保材を撤去して、貫通穴をキャップ等で封止する。この状態で残りの裏込め材を注入する。この方法によれば、支保材は、硬化した裏込め材に付着していない状態で、容易に引き抜くことができる。しかし、この方法では、裏込め材の充填工程の作業効率が著しく悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、既設管と前記既設管の内側の更生管との間に裏込め材を充填する際に前記更生管内に設置される支保工において、前記更生管の貫通穴を通り前記既設管の内面に当たるとともに前記裏込め材に埋没している支保材を、前記裏込め材の硬化後に引き抜く装置であって、本体と、前記本体に設けられ、前記支保材をクランプするクランプ機構と、前記本体に設けられ、前記更生管または前記更生管内に配置された構造体を、前記支保材の軸線方向に押圧することにより、前記本体を前記更生管から離間する方向に移動させ、前記クランプ機構によりクランプされた前記支保材を、前記裏込め材との付着力に抗して引き抜く押圧機構と、を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、支保材に軸線方向の引抜き力を加えることにより、更生管の貫通穴を傷つけずに、円滑に支保材を引き抜くことができる。
【0008】
好ましくは、前記クランプ機構は、前記本体に基端部が固定された第1挟持部材と、前記第1挟持部材の基端部に回動可能に連結された第2挟持部材と、前記第1挟持部材に一端部が回動可能に連結されたボルトと、前記ボルトの他端部に螺合されたナットと、を有し、前記ナットを前記第2挟持部材の先端部に係止させた状態で締め付けることにより、前記第1、第2挟持部材の内周が前記支保材の外周に圧接し、前記支保材をクランプする。
上記構成によれば、ナットとボルトのネジ作用により、小さな操作力で支保材を強くクランプすることができる。
【0009】
好ましくは、前記押圧機構は、前記本体に設けられた雌ネジ部と、前記雌ネジ部に螺合され前記支保材と平行に延びるネジ棒と、このネジ棒の先端に設けられ前記更生管または前記構造体に当接する当接部材と、を有する。
上記構成によれば、雌ネジ部とネジ棒のネジ作用により、小さな操作力で支保材に大きな引抜き力を付与することができる。
【0010】
本発明の他の態様は、既設管の更生方法において、真直の支保材とジャッキを含む支保工を用意する工程と、既設管の内側に更生管を設置する工程と、前記更生管を設置した後、前記更生管内にその管軸方向に間隔をおいて前記支保工を設置する工程であって、前記支保材の一端部に設けたジャッキにより前記支保材を軸線方向に移動させることにより、前記支保材の他端部が前記更生管に形成された貫通穴に通して前記既設管の内面に当たり、前記ジャッキが腹起し材を介して前記更生管を前記既設管に向けて押さえ付ける工程と、前記支保工の設置状態で前記既設管と前記更生管との間に裏込め材を充填する工程と、前記裏込め材の充填硬化後に、前記ジャッキを前記支保材から外す工程と、前記支保材引抜き装置を前記支保材に設置し、前記支保材を前記クランプ機構によりクランプした状態で前記押圧機構により前記更生管を押圧することにより、前記裏込め材から前記支保材を引き抜く工程と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、既設管の更生方法において、真直の支保材と、ジャッキと、前記支保材をその軸線に沿って上下方向に移動可能に支持する環状フレームと、前記環状フレームに周方向に間隔をおいて設けられたサポートと、を含む支保工を用意する工程と、既設管の内側に更生管を設置する工程と、前記更生管を設置した後、前記更生管内にその管軸方向に間隔をおいて前記支保工を設置する工程であって、前記サポートを腹起し材を介して前記更生管に当てることにより前記環状フレームを保持し、前記支保材の下端部に設けたジャッキにより前記支保材を上方に移動させることにより、前記支保材の上端部が前記更生管の管頂部に形成された貫通穴に通して前記既設管の内面に当たり、前記ジャッキが腹起し材を介して前記更生管の管底部を下方に向けて押さえ付ける工程と、前記支保工の設置状態で前記既設管と前記更生管との間に裏込め材を充填する工程と、前記裏込め材の充填硬化後に、前記ジャッキを前記支保材から外す工程と、前記支保材引抜き装置を前記支保材に設置し、前記支保材を前記クランプ機構によりクランプした状態で前記押圧機構により前記環状フレームを押圧することにより、前記裏込め材から前記支保材を引き抜く工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、更生管の貫通穴を傷つけずに、円滑に支保材を引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】既設管の内側に更生管をライニングした状態を示す横断面図である。
【
図1B】更生管内に支保工を設置し、既設管と更生管との間に裏込め材を充填した状態を示す
図1A相当図である。
【
図1C】裏込め材の充填硬化後に、本発明の一実施形態に係る引抜き装置を用いて更生管から支保工のパイプを引き抜く工程を示す
図1A相当図である。
【
図1D】パイプを引き抜いた後の状態を示す
図1A相当図である。
【
図5】他の形態をなす支保工を用いた場合のパイプ引抜き工程を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。最初に既設管1の更生作業の概略を、
図1A~
図1Dを参照しながら説明する。
更生管のライニング工程
図1Aに示す下水管等の既設管1は地中に埋設され、2つのマンホール間にわたって延びている。老朽化した既設管1は、その内側に更生管2をライニングすることにより、更生される。更生管2は、例えば塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製の帯状部材を螺旋状に巻き、隣接する巻き部分の縁どうしを嵌合することにより構成されるが、例えば他の製管工法で形成される更生管など種々の形態を採用可能である。
【0015】
支保工の設置工程
更生管2のライニングが完了した後、
図1Bに示すように、支保工5が更生管2の管軸方向に間隔をおいて複数設置される。本実施形態の支保工5は、直管形状のパイプ10(真直の支保材)と、このパイプ10の下端部に設けられたジャッキ20とを備えている。
図2に示すようにジャッキ20は、ネジ棒21と、このネジ棒21の下端に溶接された断面コ字形の押さえ部材22と、ネジ棒21に螺合されたレバー23a付きのナット23とを備えている。
【0016】
支保工5の設置に先立ち、更生管2の管底部には、管軸方向に延びる腹起し材6が設置され、更生管2の管頂部には管軸方向に間隔をおいて貫通穴2aがホールソーにて形成される。
ジャッキ20の押さえ部材22が腹起し材6に嵌合状態で載り、ネジ棒21が垂直に起立し、ネジ棒21の上部がパイプ10に挿入される。パイプ10は垂直に起立し、その下端がナット23の上面に載り、その上端が更生管2の貫通穴2aに接近して対向する。
この状態で、ジャッキ20のナット23を回してパイプ10を上方へ移動させると、パイプ10の上端が貫通穴2aを通って既設管1の管頂部に当たる。一方、更生管2の管底部は腹起し材6により下方に押され、既設管1の管底部に押し付けられる。
【0017】
裏込め材の充填工程
上記支保工5の設置が完了した後、
図1Bに示すように、既設管1と更生管2との間にモルタル等からなる裏込め材3が充填される。この裏込め材3の充填により更生管2には浮力が働くが、支保工5のパイプ10の上端が既設管1の管頂部に当たり、更生管2の管底部が腹起し材6により押さえられているので、更生管2の浮上を防止することができる。
【0018】
支保工撤去工程(パイプの引抜き工程)
上記のようにして裏込め材3が充填され硬化した後、支保工5および腹起し材6を撤去する。ジャッキ20のナット23を緩めて、腹起し材6をジャッキ20の押さえ部材22から外すとともに、ジャッキ20のネジ棒21をパイプ10の下端部から抜き取る。これにより、
図1Cに示すように、パイプ10が残される。パイプ10の上端部は硬化した裏込め材3に埋没しており、裏込め材3により保持されている。そこで、パイプ10の上端部近傍に本願発明に係る引抜き装置7を取り付け、この引抜き装置7を用いてパイプ10をその軸線方向に引き抜く。その結果、
図1Dに示すように、支保工5がパイプ10を含めて撤去される。
【0019】
貫通穴の封止工程
最後に、更生管2の貫通穴2aをキャップ等で封止することにより、既設管1の更生作業が完了する。
【0020】
引抜き装置の構成
次に、引抜き装置7の構成を
図3、
図4を参照しながら説明する。引抜き装置7は、本体30とクランプ機構40と押圧機構50とを主たる構成として備えている。
本体30は、L字形の平板からなる水平のベース板31と、細長い平板からなる垂直の支持板32とを有している。支持板32は、その上端がベース板31の屈曲部に形成された取付穴に挿入されて溶接され、下方に延びている。
【0021】
支持板32には、上下に離間して2つ(複数)のクランプ機構40が設けられている。各クランプ機構40は、基端部が支持板32に固定された挟持部材41(第1挟持部材)と、基端部が挟持部材41の基端部に回動軸線L1を中心に回動可能に連結された挟持部材42(第2挟持部材)と、一端部が挟持部材41の先端部に回動軸線L2を中心に回動可能に連結されたボルト43と、このボルト43の他端部に螺合されたナット44とを有している。挟持部材41,42は弧状をなし、内周側に円弧面を有している。
【0022】
挟持部材41は横断面がコ字形をなしており、一対の平行をなす側壁41aを有している。ボルト43の一端部には軸部材45が固定され、この軸部材45が一対の側壁41aの先端部間に回動可能に支持されている。挟持部材42の先端部は一対の平行な側壁42aに分かれており、これら側壁42a間にボルト43が挿脱可能に挿入されるようになっている。
【0023】
図3に示すように、ベース板31の屈曲部内側をパイプ10の上端部に近づけ、支持板32をパイプ10に沿わせるようにして本体30を配置させ、クランプ機構40の挟持部材41,42をパイプ10の両側に配置させる。この状態で上記回動軸線L1、L2は、パイプ10と略平行である。次に、挟持部材42を回動させることにより、挟持部材41,42によりパイプ10を挟んだ状態にする。挟持部材41,42の円弧面をなす内周はパイプ10の外周に接する。この状態で、ボルト43を回動軸線L2を中心に回動させて、挟持部材42の一対の側壁42a間に挿入する。最後に、ナット44を回して挟持部材42の側壁42aの縁に当て、さらに締め付けることにより、挟持部材41,42がパイプ10を強くクランプすることができる。
【0024】
ベース板31の両端部に押圧機構50が設けられている。各押圧機構50は、ベース板31の下面に溶接されたナット51(雌ネジ部)と、このナット51に螺合されて垂直に延びるネジ棒52と、このネジ棒52の上端に継手53を介して取り付けられた当接部材54とを有している。継手53により、当接部材54はネジ棒52の軸線を中心として回転可能、かつこの軸線に対して傾斜可能である。ネジ棒52の下端部には工具掛け部52aが形成されている。
【0025】
引抜き装置の作用
図4に示すように、引抜き装置7のクランプ機構40によりパイプ10の上端部をクランプした状態で、押圧機構50のネジ棒52はパイプ10と平行をなしている。一対のネジ棒52は、パイプ10の管軸に対し対称の位置に設けられている。ネジ棒52を回して上方へ移動させると、
図1Cに概略的に示すように当接部材54が更生管2の管頂部に当たる。さらにネジ棒52を回すと、ネジ棒52が更生管2の管頂部により上方への変位を禁じられているため、本体10が下方へ移動し、これに伴いクランプ機構40にクランプされているパイプ10も下方へ移動する。このようにして、裏込め材3に付着したパイプ10を、ネジの作用による小さな力で、その軸線方向に円滑に引き抜くことができる。
パイプ10が軸線方向に引き抜かれるので、貫通穴2aの周縁は傷つかず、封止作業も簡単に行うことができる。
【0026】
他の実施形態
図5に示す支保工8は、環状フレーム60と、この環状フレーム60の周方向に間隔をおいて設けられた複数のサポート70(構造体)と、環状フレーム60に支持された2本のパイプ10(支保材)と、パイプ10の下端部に設けられたジャッキ(図示しない)を備えている。
サポート70は、環状フレーム60に螺合されたネジ棒71と、ネジ棒71の先端に回転可能に連結されたコ字形の押さえ部材72とを有している。パイプ10は、環状フレーム60に上下方向に移動可能に貫通支持されている。
【0027】
更生管2のライニング後、裏込め材3の充填に先立って、支保工8が更生管2内に管軸方向に間隔をおいて複数設置される。パイプ10とジャッキは
図1~
図4に示す支保工5と同様に、パイプ1の上端部が更生管2の貫通穴2aを通って既設管1の管頂部に当たり、図示しないジャッキが腹起し材を介して更生管2の管底部を既設管1の管底部に押し付ける。サポート70の押さえ部材72に保持された腹起し材6は、更生管2に当たっている。
【0028】
裏込め材3の充填時に、パイプ10とジャッキと腹起し材により、更生管2の浮上が防止され、サポート70と腹起し材6により、更生管2の変形が防止される。
【0029】
裏込め材3の充填硬化後に、前述と同様にしてジャッキを緩めて腹起し材を外すとともにジャッキをパイプ10から外し、引抜き装置7をパイプ10に取り付ける。すなわち、引抜き装置7のクランプ機構40によりパイプ10をクランプする。次に、押圧機構50のネジ棒52を回してネジ棒52の先端の当接部材54を環状フレーム60の上枠部の下面に突き当てる。さらにネジ棒52を回して環状フレーム60を押圧することにより、パイプ10が下方に引き抜かれる。
【0030】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
パイプは、斜めに設置してもよいし、更生管の変形を防止する目的で水平に設置してもよい。
更生される既設管は下水管に限らず、上水管やその他の導水管等であってもよい。また、トンネルであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、地中に埋設された下水管等の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 既設管
2 更生管
3 裏込め材
5 支保工
6 腹起し材
7 支保材引抜き装置
8 支保工
10 パイプ(支保材)
20 ジャッキ
30 本体
40 クランプ機構
41 第1挟持部材
42 第2挟持部材
43 ボルト
44 ナット
50 押圧機構
51 ナット(雌ネジ部)
52 ネジ棒
54 当接部材
60 環状フレーム(構造体)
70 サポート