(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】運土計画管理装置、運土計画管理方法および運土計画管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240828BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021050896
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】山根 浩二
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 善一
(72)【発明者】
【氏名】堀川 和利
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-129923(JP,A)
【文献】特開2021-101316(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象領域が複数の施工エリアに区分された施工エリアデータを取得する施工エリアデータ取得部と、
前記施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを取得する施工区分データ取得部と、
前記施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する施工用道路データ取得部と、
前記施工用道路を前記施工エリアごとに分割し、生成された分割施工用道路と前記施工エリアとを対応付け、前記分割施工用道路のそれぞれに対して対応付けられた前記施工エリアの施工度合に基づいた、前記分割施工用道路の使用可能期間を取得する使用可能期間取得部と、
前記施工エリアのうち着目する着目施工エリアの施工時点における、前記施工エリアのすべての施工度合を取得する施工度合取得部と、
前記施工度合と前記分割施工用道路の前記使用可能期間とに基づいて、前記着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路である使用可能道路を抽出する抽出部と、
抽出された前記使用可能道路を経路として前記着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、前記着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付ける運土対象選択部と、
を備えた運土計画管理装置。
【請求項2】
前記分割施工用道路の前記使用可能期間は、前記分割施工用道路のそれぞれに対応付けられた前記施工エリアの前記施工度合が、施工開始前か施工完了後かによって定められている請求項1に記載の運土計画管理装置。
【請求項3】
前記運土対象選択部は、全ての前記施工エリアに前記運土先施工エリアを対応付けるまで、前記着目施工エリアを選択し直す着目施工エリア選択部をさらに備えた請求項1または2に記載の運土計画管理装置。
【請求項4】
前記施工区分データ取得部は、前記施工対象領域の現況の3次元地形を示す現況3次元地形データおよび前記施工対象領域の施工完了後の3次元地形を示す設計3次元地形データを取得する地形データ取得部と、
前記施工エリアデータ、前記現況3次元地形データおよび前記設計3次元地形データを用いて、前記施工エリアのそれぞれの現況地盤高および設計地盤高を導出する地盤高導出部と、
前記現況地盤高および前記設計地盤高から、前記施工エリアのそれぞれが切土領域か盛土領域かを判定し、前記施工エリアのそれぞれに前記施工区分データを付与する施工区分データ付与部と、
を備えた請求項1~3のいずれか1項に記載の運土計画管理装置。
【請求項5】
前記着目施工エリアに対して対応付けられた前記切土領域の施工エリアと前記盛土領域の施工エリアとの計画切土量または計画盛土量に基づいて、前記切土領域の施工エリアおよび前記盛土領域の施工エリアに対して運土可能な運土量を算出し、少なくとも施工時期、運土対象となる切土領域の施工エリア、運土対象となる盛土領域の施工エリアおよび運土量を含む運土データを生成する運土データ生成部をさらに備えた請求項1~4のいずれか1項に記載の運土計画管理装置。
【請求項6】
施工開始から任意時点までの前記運土データを抽出し、前記施工エリアのそれぞれに対しての運土量を積算した積算運土量を算出する積算運土量算出部と、
前記積算運土量と、前記計画切土量または前記計画盛土量と、を比較することで、前記任意時点における前記施工エリアの前記施工度合を算出する施工度合算出部と、
をさらに備えた請求項
5に記載の運土計画管理装置。
【請求項7】
前記運土対象選択部は、前記着目施工エリアの施工時点において、前記積算運土量が前記計画切土量または前記計画盛土量に到達した前記施工エリアを、前記着目施工エリアに対して運土対象となる施工エリアから除外して、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付け、
前記運土データ生成部は、前記切土領域の施工エリアと前記盛土領域の施工エリアの計画切土量または計画盛土量から前記積算運土量を減算して算出した運土可能な運土量に基づいて、前記施工時点以降の運土データを生成する、請求項
6に記載の運土計画管理装置。
【請求項8】
前記施工エリアデータを用いて、前記施工エリアのそれぞれの面積を導出する面積導出部と、
前記施工対象領域の現況の3次元地形を示す現況3次元地形データおよび前記施工対象領域の施工完了後の3次元地形を示す設計3次元地形データを取得する地形データ取得部と、
前記施工エリアデータ、前記現況3次元地形データおよび前記設計3次元地形データを用いて、前記施工エリアのそれぞれの現況地盤高および設計地盤高を導出する地盤高導出部と、
前記施工エリアのそれぞれの前記現況地盤高、前記設計地盤高および前記面積を用いて、前記施工エリアのそれぞれについて、計画切土量または計画盛土量を算出する計画運土量算出部と、
をさらに備えた請求項5~7のいずれか1項に記載の運土計画管理装置。
【請求項9】
前記施工エリアのそれぞれに施工の優先順位を設定する優先順位設定部をさらに備え、
前記運土対象選択部は、前記優先順位に基づいて、前記着目施工エリアを選択して、前記切土領域の施工エリアと前記盛土領域の施工エリアとを対応付ける、請求項1~8のいずれか1項に記載の運土計画管理装置。
【請求項10】
抽出された前記使用可能道路の勾配に基づいて、前記切土領域の施工エリアと前記盛土領域の施工エリアとの間で、運土する場合の運土負荷を算出する運土負荷算出部をさらに備え、
前記運土対象選択部は、さらに、前記運土負荷に応じて、前記着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付ける請求項1に記載の運土計画管理装置。
【請求項11】
施工エリアデータ取得部が、施工対象領域が複数の施工エリアに区分された施工エリアデータを取得する施工エリアデータ取得ステップと、
施工区分データ取得部が、前記施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを取得する施工区分データ取得ステップと、
施工用道路データ取得部が、前記施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する施工用道路データ取得ステップと、
使用可能期間取得部が、前記施工用道路を前記施工エリアごとに分割し、生成された分割施工用道路と前記施工エリアとを対応付け、前記分割施工用道路のそれぞれに対して対応付けられた前記施工エリアの施工度合に基づいた、前記分割施工用道路の使用可能期間を取得する使用可能期間取得ステップと、
施工度合取得部が、前記施工エリアのうち着目する着目施工エリアの施工時点における、前記施工エリアのすべての施工度合を取得する施工度合取得ステップと、
抽出部が、前記施工度合と前記分割施工用道路の前記使用可能期間とに基づいて、前記着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路である使用可能道路を抽出する抽出ステップと、
運土対象選択部が、抽出された前記使用可能道路を経路として前記着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、前記着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付ける運土対象選択ステップと、
を含む運土計画管理方法。
【請求項12】
施工対象領域が複数の施工エリアに区分された施工エリアデータを取得する施工エリアデータ取得ステップと、
前記施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを取得する施工区分データ取得ステップと、
前記施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する施工用道路データ取得ステップと、
前記施工用道路を前記施工エリアごとに分割し、生成された分割施工用道路と前記施工エリアとを対応付け、前記分割施工用道路のそれぞれに対して対応付けられた前記施工エリアの施工度合に基づいた、前記分割施工用道路の使用可能期間を取得する使用可能期間取得ステップと、
前記施工エリアのうち着目する着目施工エリアの施工時点における、前記施工エリアのすべての施工度合を取得する施工度合取得ステップと、
前記施工度合と前記分割施工用道路の前記使用可能期間とに基づいて、前記着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路である使用可能道路を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記使用可能道路を経路として前記着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、前記着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付ける運土対象選択ステップと、
をコンピュータに実行させる運土計画管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運土計画管理装置、運土計画管理方法および運土計画管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、橋梁やトンネル、ダム、土工、河川等の土木公共工事の分野では、各種の建設物を建設する際に、2次元図面から3次元モデルへの移行による業務変革や、或いは初期の工程(フロント)において負荷をかけて事前に集中的に検討し、後工程で生じそうな手戻りを未然に防いで、品質の向上や工期の短縮化を図ることを可能にするフロントローディングにより、合意形成の迅速化、業務の効率化、品質の向上、ひいては生産性の向上等を図ることを目的として、国土交通省では、CIM(Construction Information Modeling/Management)を円滑に導入できるように、ガイドラインを整備して、体系的な推進を試みている。このため、3次元のCIMモデルを作成するための種々の三次元モデル解析プログラムやソフトウェアが開発されている。
【0003】
また、2次元の図面を作成してから3次元の形状を組み立て、CGでシミュレーションするといった従来の3DCADとは異なり、当初から3次元で設計して3次元モデルを作成することが可能な、BIM(Building Information Modeling)によって作成されるBIMモデルが開発されている。BIMモデルでは、3次元オブジェクトの集合体であることから、これらのオブジェクトにコストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加することが可能であり、建築物の設計、施工から維持管理に至るまでの、建築物のライフサイクルの全体で、モデルに蓄積された情報を活用することが可能になる。BIMモデルを作成可能なBIMツールとして、「ArchiCAD」や「Revit」等の、種々の3次元CADソフトが知られている。
【0004】
さらに、定められた工期内に工事が完了するように、例えば、公共工事における工程の計画と実施を管理するための種々の工程管理ソフトが知られており、特に制約条件の理論であるTOC(Theory of Constraints)の考えに基づいて、全体最適の視点で開発されたクリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を採用した工程管理ソフトも開発されている。ここで、クリティカルチェーンは、プロジェクトにおいて各タスクの実行順序を考えたときに、作業工程上の従属関係を考慮するクリティカルパス法による従来の手法に加えて、必要リソースが限られているために発生する従属関係をも考慮する手法であり、プロジェクトマネジメントは、要員の人間心理や行動特性、及び社会的・組織的問題も考慮して、工期の短縮、納期の順守を目的としてプロジエクト管理を行う実践的手法であり、各々のタスクから除去した安全余裕を、「バッファ」に集約して管理するようになっている。
【0005】
丘陵地や山間地における造成工事において、効率の良い施工を行うために、運土計画を策定する必要がある。運土計画においては、施工対象領域の2次元設計図等を用いて、切土領域の施工現場の土砂を運搬する運搬先である盛土領域の施工現場が選択される。切土領域の施工現場と盛土領域の施工現場との間における土砂の運搬先の選択は、両者間で使用可能な施工用道路に基づいて行われることが理想であるが、運土計画策定による負荷を低減するため、実際の施工用道路ではなく、便宜的に両者間を直線的に接続した経路に基づいて行われることが多い。
【0006】
しかしながら、施工対象領域の地形や施工内容が複雑な場合は、地形の高低差等の影響により直線的な経路を選択することが困難な場合も多々ある。また、使用可能な施工用道路の状況や仮設道路の状況によっては、直線的な経路よりも非直線的な経路を選択した方が、運土負荷を低減できる場合や効率的な場合もある。したがって、使用可能な施工用道路や仮設道路の状況に応じた運土計画の策定が必要となるとともに、このような運土計画を現場作業員の経験などに基づいて手作業で行うのは、正確性に欠けるうえに、多大な時間を要することとなっていた。このように、適切な運土計画を策定するためには、施工途中の現況地形を推定し、施工時点における施工用道路の使用の可否を判定する必要があった。
【0007】
一方、上記技術分野において、特許文献1には、ドローンによるカメラ撮影により取得した現況地形データと施工現場の設計地形を示す設計地形データとの差分および作業機械の条件を示す原単位データに基づいて、施工計画データを算出して出力する技術が開示されている(同文献段落[0082]~[0092]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、施工途中の現況地形を再現するためには、その都度ドローンによるカメラ撮影等が必要となるため、簡易な手法により施工時点の地形を推定し、施工用道路の使用の可否を判定することができず、適切な運土計画を策定できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る運土計画管理装置は、
施工対象領域が複数の施工エリアに区分された施工エリアデータを取得する施工エリアデータ取得部と、
前記施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを取得する施工区分データ取得部と、
前記施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する施工用道路データ取得部と、
前記施工用道路を前記施工エリアごとに分割し、生成された分割施工用道路と前記施工エリアとを対応付け、前記分割施工用道路のそれぞれに対して対応付けられた前記施工エリアの施工度合に基づいた、前記分割施工用道路の使用可能期間を取得する使用可能期間取得部と、
前記施工エリアのうち着目する着目施工エリアの施工時点における、前記施工エリアのすべての施工度合を取得する施工度合取得部と、
前記施工度合と前記分割施工用道路の前記使用可能期間とに基づいて、前記着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路である使用可能道路を抽出する抽出部と、
抽出された前記使用可能道路を経路として前記着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、前記着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付ける運土対象選択部と、
を備えた。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る運土計画管理方法は、
施工対象領域が複数の施工エリアに区分された施工エリアデータを取得する施工エリアデータ取得ステップと、
前記施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを取得する施工区分データ取得ステップと、
前記施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する施工用道路データ取得ステップと、
前記施工用道路を前記施工エリアごとに分割し、生成された分割施工用道路と前記施工エリアとを対応付け、前記分割施工用道路のそれぞれに対して対応付けられた前記施工エリアの施工度合に基づいた、前記分割施工用道路の使用可能期間を取得する使用可能期間取得ステップと、
前記施工エリアのうち着目する着目施工エリアの施工時点における、前記施工エリアのすべての施工度合を取得する施工度合取得ステップと、
前記施工度合と前記分割施工用道路の前記使用可能期間とに基づいて、前記着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路である使用可能道路を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記使用可能道路を経路として前記着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、前記着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付ける運土対象選択ステップと、
を含む。
【0012】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係る運土計画管理プログラムは、
施工対象領域が複数の施工エリアに区分された施工エリアデータを取得する施工エリアデータ取得ステップと、
前記施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを取得する施工区分データ取得ステップと、
前記施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する施工用道路データ取得ステップと、
前記施工用道路を前記施工エリアごとに分割し、生成された分割施工用道路と前記施工エリアとを対応付け、前記分割施工用道路のそれぞれに対して対応付けられた前記施工エリアの施工度合に基づいた、前記分割施工用道路の使用可能期間を取得する使用可能期間取得ステップと、
前記施工エリアのうち着目する着目施工エリアの施工時点における、前記施工エリアのすべての施工度合を取得する施工度合取得ステップと、
前記施工度合と前記分割施工用道路の前記使用可能期間とに基づいて、前記着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路である使用可能道路を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記使用可能道路を経路として前記着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、前記着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、前記着目施工エリアと前記運土先施工エリアとを対応付ける運土対象選択ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工用道路の使用の可否を考慮した適切な運土計画を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置の動作の概要を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3A】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置が有する施工用道路テーブルの一例を示す図である。
【
図3B】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置が有する施工エリアテーブルの一例を示す図である。
【
図3C】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置が有する運土データテーブルの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図5A】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5B】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置の各種データ取得処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5C】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置の計画運土量取得処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5D】本発明の第1実施形態に係る運土計画管理装置の施工エリア選択および運土量算出処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る運土計画管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る運土計画管理装置が有する施工用道路テーブルの一例を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る運土計画管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図9A】本発明の第2実施形態に係る運土計画管理装置の各種データ取得処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図9B】本発明の第2実施形態に係る運土計画管理装置の勾配補正距離算出処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図9C】本発明の第2実施形態に係る運土計画管理装置の施工エリア選択および運土量算出処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
[第1実施形態]
【0016】
本発明の第1実施形態としての運土計画管理装置100について、
図1~
図5Dを参照して説明する。運土計画管理装置100は、使用可能な施工用道路を抽出して、着目施工エリアとの間で運土可能な運土先施工エリアを選択して、両者を対応付ける装置である。まず、
図1を参照して、運土計画管理装置100の動作の概要を説明する。
【0017】
図1に示したように、造成工事等を行う施工対象領域が、2次元平面図上において複数の施工エリアとして領域分割されており、それぞれ施工エリアを識別する施工エリアID(1~9)が付与されている。さらに、各施工エリアは切土エリア(1~3、8~9)と盛土エリア(4~7)とに区分されている。切土エリアは、切土施工を行う土砂の運搬元となる施工エリアで、盛土エリアは、盛土施工を行う土砂の運搬先となる施工エリアである。切土エリアの施工エリアから盛土エリアの施工エリアに土砂を運搬する運土計画を策定することになる。なお、
図1に示したように、切土エリア、盛土エリア毎に区分されている施工エリアのそれぞれは、異なる形状となっているが、同じ形状となっていてもよく、施工対象領域の形状や施工用道路の敷設状況、施工エリアの高低差などの施工条件に合わせて様々な形状とすることができる。
【0018】
また、施工対象領域内には施工用道路が敷設されており、それらは施工エリア毎に区間が分割されていて、それぞれの道路区間を識別する道路区間ID(11~29)が付与されている。施工用道路は分割された区間毎に、通過する施工エリアの施工開始前に使用可能な施工用道路(施工前道路:11~15)と、施工完了後に使用可能な施工用道路(施工後道路:25~29)とに区分されている。施工エリアの施工開始前に使用可能な施工用道路(11~15)は、切土施工や盛土施工をされるため施工完了後には消滅する地盤に設定される道路であり、施工エリアの施工後に使用可能な施工用道路(25~29)は、切土施工や盛土施工の結果出現する地盤に設定される施工用道路である。
【0019】
そして、運土計画管理装置100においては、例えば、いずれの施工エリアも施工開始前の状態においては、着目する切土エリア(1)からの土砂を運搬する盛土エリアを選択する場合には、施工用道路として、いずれも施工開始前に使用可能な施工用道路(12,13)を抽出し、抽出された施工用道路を経由して切土エリア(1)と接続可能な盛土エリアの中から盛土エリア(5)を選択して対応付ける。同様に、例えば、切土エリア(1)および盛土エリア(5)の施工が完了した後に、次の切土エリア(2)に着目して土砂を運搬する盛土エリアを選択する場合には、使用可能な施工用道路として、施工開始前の施工エリアにある施工用道路(13)と、施工完了後の施工エリアにある施工用道路(25)とを抽出し、抽出された施工用道路を経由して切土エリア(2)と接続可能な盛土エリアの中から盛土エリア(7)を選択して対応付ける。
【0020】
このように、運土計画管理装置100において、例えば、各施工エリアにおいて施工が施工開始前か施工完了後かを区分できる施工度合に基づいて、施工時点における使用可能な施工用道路の可否を判断して抽出し、抽出された施工用道路を経由して接続可能な施工対象領域内の全ての切土エリア(1~3,8~9)と全ての盛土エリア(4~7)とを対応付けることにより、現実的かつ効率的な運土計画を策定することが可能となる。このように、運土計画管理装置100は、切土エリア(1~3,8~9)と盛土エリア(4~7)とを、施工度合に基づいた使用の可否判断により抽出された施工用道路を経由して、接続可能な施工エリアの組み合わせを選択することで、現実的かつ効率的に土砂を運搬できるような運土計画を策定する。
【0021】
次に、
図2を参照して運土計画管理装置100の構成について説明する。
図2に示したように、運土計画管理装置100は、施工エリアデータ取得部201、施工区分データ取得部202、施工用道路データ取得部203、使用可能期間取得部204、施工度合取得部205、抽出部206、運土対象選択部207、地形データ取得部208、着目施工エリア選択部209、地盤高導出部210、施工区分データ付与部211、面積導出部212、計画運土量算出部213、運土データ生成部214、積算運土量算出部215、施工度合算出部216、優先順位設定部217および運土データ出力部218を有する。
【0022】
施工エリアデータ取得部201は、施工対象領域が複数の施工エリアに区分された施工エリアデータを取得する。施工エリアは、施工対象領域の2次元平面図上において区分されており、施工エリアのそれぞれが同じ形状であっても、異なる形状であってもよい。施工エリアデータは、施工エリアの領域を示す平面座標から構成される2次元ポリゴンデータとなっており、さらに、各施工エリアを識別する施工エリアIDが付与されていて、例えば、シェープファイル形式等で作成されている。施工エリアは切土領域と盛土領域のそれぞれで区分されており、これらの形状は、例えば、施工対象領域中の施工用道路や河川の形状、土地の高低差等に合わせて区分されている。なお、施工エリアデータ取得部201は、入出力機器を通じて施工エリアデータを取得するが、例えば、オペレータが画面上に表示された施工対象領域の図面に基づいて、マウス操作等により施工エリアの領域を入力し生成されたデータを受け付けてもよい。さらに、施工エリアデータ取得部201は、施工エリアのそれぞれの施工エリアIDに関連付けて、施工エリアの各種情報を記憶する施工エリアテーブルを生成する。
【0023】
施工区分データ取得部202は、施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを取得する。施工区分データは、当該施工エリアが、切土施工を行う切土領域(切土エリア)か、盛土施工を行う盛土領域(盛土エリア)かを示す識別子であり、施工エリアのそれぞれに、この識別子が付与されている。したがって、この識別子により、施工エリアが、切土領域か盛土領域かを判別することができる。なお、施工区分データ取得部202は、入出力機器を通じて施工エリア毎の施工区分データを直接取得してもよいし、例えば、施工対象領域の施工前後の3次元地形データをそれぞれ取得し、施工エリア毎に両者を比較することで施工区分を導出して取得してもよい。取得した施工区分データは、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブルに記憶させる。
【0024】
地形データ取得部208は、施工対象領域の現況の3次元地形を示す現況3次元地形データおよび施工対象領域の施工完了後の3次元地形を示す設計3次元地形データを取得する。現況3次元地形データは、例えば、施工対象領域を無人航空機により空撮した映像から生成した3次元地形データであっても、測量により取得されたデータから生成した3次元地形データであってもよい。設計3次元地形データは、例えば、設計用プログラムを用いて設計された施工対象領域の施工完了後または造成後の設計図であり、現場作業員は、この設計図に従って施工を実施する。また、取得する現況3次元地形データおよび設計3次元地形データにおいては、座標系およびデータ形式を、予め施工エリアデータと同一の形式で作成しておくか、または、当該形式に変換する。これにより、施工エリアデータ、現況3次元地形データ、設計3次元地形データをいずれも同じプラットフォーム上で使用することが可能となる。
【0025】
地盤高導出部210は、施工エリアデータ取得部201により取得された施工エリアデータ、地形データ取得部208により取得された現況3次元地形データおよび設計3次元地形データを用いて、施工エリアのそれぞれの現況地盤高および設計地盤高を導出する。地盤高導出部210は、2次元座標で構成されている施工エリアデータと、3次元座標で構成されている現況3次元地形データまたは設計3次元地形データとを、GIS(Geographic Information System)上におけるオーバーレイ処理を使って重ね合わせることにより、各施工エリアと同一の領域内にある3次元地形データの3次元座標を抽出し、それらが持つ高さの情報を取得することで、施工エリアのそれぞれの現況地盤高および設計地盤高を導出する。例えば、現況地盤高の導出は、現況3次元地形データが持っている高さ情報を用いて導出される。例えば、施工エリアにおける、最高地点と最低地点の中間(例えば、1/2)の高さを地盤高としてもよい。また、施工エリアにおける複数の点の地盤高の平均値をその施工エリアの地盤高としてもよい。設計地盤高は、設計3次元地形データが有する高さ情報から導出される。導出された現況地盤高および設計地盤高は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブルに記憶させる。
【0026】
施工区分データ付与部211は、地盤高導出部210により取得された施工エリアのそれぞれの設計地盤高と現況地盤高との差分から、施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを判定する。すなわち、施工区分データ付与部211は、設計地盤高と現況地盤高との差分が、マイナスとなっていれば、切土領域、プラスとなっていれば、盛土領域と判定する。そして、施工区分データ付与部211は、施工エリアのそれぞれに、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを付与する。ここで付与された施工区分データは、施工区分データ取得部202における施工区分データとなり、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブルに記憶させる。
【0027】
面積導出部212は、施工エリアデータを用いて、施工エリアのそれぞれの面積を導出する。施工エリアデータは、施工対象領域を複数の施工エリアに区分したデータであり、2次元平面データである。そのため、面積導出部212は、各施工エリアの領域を示す平面座標からGISの機能等を使用して、区分された施工エリアのそれぞれの面積[m2]を導出するが、施工エリアの面積を、外部からデータとして取得してもよい。導出した施工エリアの面積は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブルに記憶させる。
【0028】
計画運土量算出部213は、施工エリアのそれぞれの現況地盤高、設計地盤高および面積を用いて、現況地形から設計地形に造成するために必要となる、施工エリアのそれぞれの計画切土量または計画盛土量のいずれかを含む計画運土量を算出する。計画運土量算出部213は、取得または導出された、設計地盤高と現況地盤高との差分[m]、および施工エリアのそれぞれの面積[m2]から、例えば、計算式、(設計地盤高[m]-現況地盤高[m])×面積[m2]=計画運土量[m3]を用いて、施工エリアのそれぞれの計画運土量を算出する。計画運土量がマイナスの時(設計地盤高<現況地盤高)は計画切土量が算出され、計画運土量がプラスの時(設計地盤高>現況地盤高)は計画盛土量が算出される。導出した計画運土量は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブルに記憶させる。あるいは、施工エリア毎の計画運土量を、外部からデータとして取得し、そのまま施工エリアテーブルに記憶させてもよい。
【0029】
例えば、ある施工エリアについて、設計地盤高と現況地盤高との差分がマイナスとなる場合、当該施工エリアは切土領域となる。したがって、面積導出部212で導出された当該施工エリアの面積を地盤高の差分の絶対値に掛けることにより、当該施工エリアの計画切土量が計算できる。同様に、ある施工エリアの設計地盤高と現況地盤高との差分がプラスとなる場合、当該施工エリアは盛土領域となる。したがって、当該施工エリアの面積を地盤高の差分の絶対値に掛けることにより、当該施工エリアの計画盛土量が計算できる。
【0030】
<土量変化率について>
ここで、土量変化率について説明する。上述の説明では、計画運土量は切土領域でも盛土領域でも、双方の土量が等しいものとして計算を行っていたが、より正確な運土計画を策定する場合には、土量変化率を考慮しなければならない。施工エリアにおける施工開始前(掘削前)の状態の土砂は、締め固められているため密度が大きいが、掘削後、運搬車等に積載される際には、土砂がほぐされて密度が小さくなり、盛土領域にある施工エリアに運搬後、盛土施工され、その後締固められると土砂の密度は再び大きくなる。このように、同一の土砂(運土)であっても体積が異なることがあり、土砂の状態に合わせて体積を補正する必要がある。
【0031】
「地山土量」は、掘削(切土施工)前の状態の土量(切土量)である、もともとの地盤の体積をいう。「ほぐし土量」は、掘削(切土施工)した後の状態の運搬中の土量(運土量)であり、ほぐされた状態の土砂の体積をいう。「締固め土量」は、盛土施工した後に転圧され締め固まった状態の土量(盛土量)であり、再び締め固められた状態の土砂の体積をいう。ここで、土量変化率であるほぐし率L、締固め率Cは、地山土量を基準として以下のように表される。
【0032】
ほぐし率 L=ほぐし土量[m3]/地山土量[m3](ほぐした土量を地山土量で除したもの)
締固め率 C=締固め土量[m3]/地山土量[m3](締め固めた土量を地山土量で除したもの)
そして、ほぐし率Lおよび締固め率Cは、運土計画策定の際に土量変化率として利用される。
【0033】
次に、土量変化率の計算例について説明する。例えば、地山土量(切土量)が100[m3]の土砂のほぐし率および締固め率をそれぞれ、ほぐし率L=1.20、締固め率C=0.90とする。この場合の(A)ほぐし土量(運土量)、(B)締固め土量(盛土量)は以下のように計算できる。
(A)運土量=100[m3]×1.20=120[m3]
(B)盛土量=100[m3]×0.90=90[m3]
【0034】
そして、計画運土量算出部213においては、土量変化率を考慮に入れて計画運土量を計算することで、より正確な土量変化を導出する。土量変化率を考慮に入れると、地盤高の差分(設計地盤高と現況地盤高との差分)[m]、および、施工エリアの面積[m2]から切土エリア、盛土エリアそれぞれの計画運土量は、次の計算式で算出できる。
(切土エリア)計画運土量[m3]=地盤高の差分[m]×面積[m2]×ほぐし率
(盛土エリア)計画運土量[m3]=地盤高の差分[m]×面積[m2]/締固め率×ほぐし率
なお、ほぐし率、締固め率は、施工エリアの土砂の性質によって変わるため、例えば、切土領域の施工エリア毎のほぐし率、締固め率を、予めオペレータがキーボード等により入力しておく。このように、計画運土量算出部213は、土量変化率を加味して計画運土量を算出するので、より正確な運土計画の策定が可能となる。
【0035】
施工用道路データ取得部203は、施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する。施工用道路データは、施工対象領域に敷設されている施工用道路に関するデータである。施工用道路データは、2次元または3次元のポリラインデータとなっており、例えば、シェープファイル形式等で作成されている。また、取得する施工用道路データは、通過する施工エリアが、施工開始前であれば使用可能な道路であるか、施工完了後であれば使用可能な道路であるかを区分して作成されていて、それぞれ、別の図形として構成されていることが好適である。さらに、使用可能期間が施工開始前か施工完了後かを識別する属性データが、施工用道路データに付与されていてもよい。なお、施工用道路データ取得部203は、入出力機器を通じて施工用道路データを取得するが、例えば、オペレータが画面上に表示された施工対象領域の図面に基づいて、マウス操作等により施工用道路の形状を入力し生成されたデータを受け付けてもよい。また、施工用道路データにおいては、座標系を、施工エリアデータと同一の形式で作成するか、または、当該形式に変換する。これにより、施工エリアデータと施工用道路データとを同じプラットフォーム上で使用することが可能となる。さらに、施工期間中において、施工の進捗に合わせて途中で施工用道路データを変更してもよい。
【0036】
使用可能期間取得部204は、施工用道路データと施工エリアデータとを重ね合わせ、施工エリアの領域毎に施工用道路データを分割して分割施工用道路データを生成し、生成された分割施工用道路データと施工エリアとを対応付けて、分割施工用道路データの属性データとして、対応する施工エリアを識別する施工エリアIDを取得する。分割施工用道路と施工エリアとの対応付けは、例えば、施工用道路データと施工エリアデータとをGIS上にてオーバーレイ処理をして、分割施工用道路のそれぞれが含まれる施工エリアを抽出することにより行われる。また、使用可能期間取得部204は、分割した施工用道路の各区間に、各区間を識別する識別子である道路区間IDを付与し、道路区間IDに関連付けて、当該道路区間の様々な情報を記憶する施工用道路テーブルを生成し、取得した施工エリアIDを、道路区間IDに関連付けて施工用道路テーブルに記憶させる。
【0037】
そして、使用可能期間取得部204は、分割された施工用道路(分割施工用道路)のそれぞれについての使用可能期間を取得する。使用可能期間は、分割施工用道路のそれぞれの通過する施工エリアの施工度合に応じて、使用可能か否かを判定するもので、例えば、通過する施工エリアの進捗度合が施工開始前であれば使用可能なもの、施工完了後であれば使用可能なものかを区分する識別情報である。使用可能期間取得部204は、外部から入出力機器を通じて分割施工用道路毎に使用可能期間が記録された使用可能期間データを取得してもよく、あるいは、オペレータが、施工エリアデータ等とともに画面上に表示された施工用道路の図面に基づいて、マウスおよびキーボード操作等により使用可能期間を入力してもよい。分割前の施工用道路データの属性情報として使用可能期間が付与されている場合は、そのまま適用して分割施工用道路の使用可能期間としてもよい。取得した使用可能期間は、道路区間IDに関連付けて施工用道路テーブルに記憶させる。
【0038】
着目施工エリア選択部209は、施工エリアのうち、運土先施工エリアの検索を行う着目施工エリアを選択する。着目施工エリアは、オペレータが画面上におけるマウス操作やキーボード等により任意に選択してもよく、例えば、後述する優先順位設定部217において設定する、各施工エリアに付けられた優先順位に基づいて、順番に選択してもよい。なお、着目施工エリアは、切土領域の施工エリアであっても盛土領域の施工エリアであってもよい。
【0039】
優先順位設定部217は、施工エリアのそれぞれに、着目施工エリアとして選択する順番である施工の優先順位を設定する。設定すべき優先順位は、優先順位設定部217による設定に先立って施工エリアデータ取得部201により取得しても、優先順位設定部217が外部から取得しても、オペレータが入力した優先順位を取得してもよい。そして、着目施工エリア選択部209は、設定された優先順位に基づいて、全ての施工エリアの中から着目施工エリアを選択し、運土対象選択部207により、切土領域の施工エリアと盛土領域の施工エリアとを対応付ける。すなわち、施工エリアのそれぞれについて、施工順を設定しておき、設定した施工順に基づいて、着目施工エリアを選ぶ。例えば、施工の初期の段階で施工を完了しておきたい施工エリアや、施工の終盤の段階で施工を開始したい施工エリアなどがある場合に、施工の順序も考慮して着目施工エリアを選ぶことにより、効率的な施工や、現場の事情に合わせた施工が可能となる。なお、優先順位は全ての施工エリアに施工の順番を示す一連の番号が付与されていてもよく、優先グループとして同一の番号が複数の施工エリアに付与されていてもよい。また、切土エリアと盛土エリアとで別々に付与されていることが好ましい。さらに、施工中に進捗に合わせて変更してもよい。取得した優先順位は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブルに記憶させる。
【0040】
施工度合取得部205は、着目施工エリアの施工時点における、すべての施工エリアの施工度合を取得する。施工度合は、施工エリア毎の施工の進捗度合を表す指標で、当該施工エリア内にある分割施工用道路の使用の可否を判定する際の、使用可能期間に含まれるか否かの判定を行うために利用する。そのため、使用可能期間取得部204で取得された使用可能期間の可否判定の設定に合わせて、例えば、当該施工エリアが施工開始前(施工前)か施工完了後(施工後)かを表してもよく、また、進捗率として%表示であってもよい。なお、施工度合は着目施工エリアの施工時点が変わるたびに取得する必要があり、施工度合取得部205は、入出力機器を通じて施工エリア毎に施工度合が記録されたデータとして直接取得したり、着目施工エリアの施工時点における施工対象領域の3次元地形データと、施工完了後の3次元地形を示す設計3次元地形データとを取得し、施工エリア毎に両者を比較することで施工度合を導出したりする。あるいは、後述する施工度合算出部216で、積算運土量と計画運土量とを比較することにより施工度合を算出し取得してもよい。取得した施工度合は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブルに記憶させる。
【0041】
抽出部206は、施工度合取得部205で取得した着目施工エリアの施工時点における各施工エリアの施工度合と、使用可能期間取得部204で取得した分割施工用道路の使用可能期間とに基づいて、着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路である使用可能道路を抽出する。分割施工用道路には、施工度合に応じた使用可能期間が定められており、抽出部206は、分割施工用道路の各区間が通過する施工エリアについて、施工エリアテーブルに格納されている施工度合と、施工用道路テーブルに格納されている使用可能期間とを照合し、通過する施工エリアの施工度合が、分割施工用道路の使用可能期間に含まれているか否かの判定を行う。施工度合が使用可能期間内に含まれている場合、使用可能な分割施工用道路の区間として抽出し、それらの全てを結合させて使用可能道路とする。例えば、使用可能期間が「施工前」の分割施工用道路の場合、通過する施工エリアの施工度合が「施工前」ないしは「0%」のものを、使用可能期間が「施工後」の分割施工用道路の場合、通過する施工エリアの施工度合が「施工後」ないしは「100%」のものをそれぞれ抽出する。なお、抽出部206は、着目施工エリアの施工時点が変わる度に各施工エリアの施工度合を取得しなおし、施工度合が更新される度に使用可能道路の抽出をやりなおす。
【0042】
運土対象選択部207は、抽出部206で抽出された使用可能道路を経路として着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、着目施工エリアと運土先施工エリアとを対応付ける。運土先施工エリアの選択は、着目施工エリアが切土領域の施工エリアの場合、使用可能道路を経由して着目施工エリアに接続している盛土領域の施工エリアを抽出し、進捗度合が「施工後」のものを除外した上で、優先順位が最も高いもの、あるいは、着目施工エリアに最も近接しているもの等の任意に設定された条件に従って行う。なお、着目施工エリアが盛土エリアの場合は、切土領域の施工エリアから運土先施工エリアを選択する。なお、選択される運土先施工エリアは、1つであっても、複数であってもよい。すなわち、着目施工エリアである切土エリアから運び出される土砂は、1つの盛土エリアに運び出されても、複数の盛土エリアに運び出されてもよい。また、同様に、着目施工エリアである盛土エリアに運び込まれる土砂は、1つの切土エリアから運び込まれても、複数の切土エリアから運び込まれてもよい。
【0043】
運土データ生成部214は、着目施工エリアに対して対応付けられた切土領域の施工エリアと盛土領域の施工エリアとの計画切土量または計画盛土量に基づいて、切土領域の施工エリアおよび盛土領域の施工エリアに対して運土可能な運土量を算出する。算出する運土量は、着目施工エリアの計画運土量と対応付けられた運土先施工エリアの計画運土量とのいずれか小さい方を上限として設定する。また、すでに施工が進んでいる施工エリアについては、計画運土量から既に行った運土量(積算運土量)を差し引いた値が、運土可能な運土量となる。そして、運土データ生成部214は、少なくとも施工時期、運土対象となる切土領域の施工エリア、運土対象となる盛土領域の施工エリアおよび運土量を含む運土データを生成する。施工時期は、工程が決まっている場合は具体的な日時、決まっていない場合は施工の順番等でもよい。
【0044】
運土データ出力部218は、施工対象領域内のすべての施工エリアに関する運土データを生成したら、少なくとも施工時期、切土エリアの施工エリアID、盛土エリアの施工エリアID、および、運土量を含む運土データを出力する。
【0045】
運土計画管理装置100は、積算運土量算出部215および施工度合算出部216をさらに有する。
【0046】
積算運土量算出部215は、施工開始から任意時点までの運土データより、施工エリアのそれぞれに対して運土量を積算した積算運土量を算出する。積算運土量算出部215は、運土データ生成部214で生成された運土データから、施工時期が施工開始から任意時点、例えば、着目施工エリアの施工時点までの運土データを抽出する。施工エリアのそれぞれについて、抽出された運土データより、切土施工エリアIDまたは盛土施工エリアIDに該当しているものをさらに抽出し、当該時点までに発生した切土施工または盛土施工された運土量を積算し、着目施工エリアの施工時点における積算運土量を算出する。積算運土量算出部215は、例えば、施工エリアが切土領域であれば、それまでに切土施工されて運土された運土量を積算運土量として算出し、施工エリアが盛土領域であれば、それまでに運土されて盛土施工された運土量を積算運土量として算出する。また、施工エリアが切土領域であればマイナスの運土量を、盛土領域であればプラスの運土量を、それぞれ積算して積算運土量としてもよい。算出された積算運土量は、施工エリアテーブルに記憶させる。
【0047】
施工度合算出部216は、積算運土量算出部215で算出された積算運土量と、計画運土量とを比較することで、任意時点における施工エリアの施工度合を算出する。つまり、施工度合算出部216は、実際に運土された積算運土量と、施工開始前に計画された切土量または盛土量とを比較して、施工エリアにおける施工がどの程度進んでいるかを示す施工度合を算出する。施工度合は、積算運土量を計画運土量で除した数値の%表示としてもよいが、例えば、積算運土量が0の時は「施工前」、積算運土量が計画運土量と等しいときは「施工後」、それ以外の時は「施工中」と区分するだけでもよい。算出された施工度合は、施工エリアテーブルに記憶させる。
【0048】
また、運土対象選択部207は、着目施工エリアの施工時点において、積算運土量が計画切土量または計画盛土量に到達した施工エリア、即ち、施工度合が100%進行して施工完了となった施工エリアを、運土先施工エリアの候補から除外して、それ以外の施工エリアから運土先施工エリアを選択する。
【0049】
また、着目施工エリア選択部209は、選択していた着目施工エリアの施工度合が100%進行して施工完了となった場合、施工度合が施工完了となっていない次の着目施工エリアを選択する。つまり、選択した着目施工エリアの施工度合が100%になった場合、次の着目施工エリアを選択するために、各施工エリアの施工度合を確認し、施工度合が100%になっていない施工エリアが残っている場合は、次の着目施工エリアを選択し、全ての施工エリアの施工度合が100%に到達するまで繰り返す。
【0050】
そして、運土データ生成部214は、切土領域の施工エリアと盛土領域の施工エリアのそれぞれの計画運土量から積算運土量を減算して算出された運土可能な運土量に基づいて、施工時点以降の運土データを生成する。すなわち、算出する運土量は、着目施工エリアと対応付けられた運土先施工エリアのそれぞれの、計画運土量から積算運土量分を減算した運土可能な土量のいずれか小さい方を上限として設定される。
【0051】
さらに、運土データ生成部214は、生成された運土データを使って、各施工エリアの積算運土量を更新する。具体的には、各施工エリアの積算運土量に対して、運土データで切土エリアに選択された施工エリアの運土量を減算し、盛土エリアに選択された施工エリアの運土量を加算する処理を行う。双方の施工エリアのいずれかの積算運土量が計画切土量または計画盛土量に等しくなった段階で、着目施工エリアの場合は次の着目施工エリアに、運土先施工エリアの場合は次の運土先施工エリアにそれぞれ変更して、次の運土データを作成する。これらの処理を、全ての施工エリアの積算運土量が計画運土量と等しくなるまで繰り返し、作成された全ての運土データが、本施工対象領域における運土計画となる。
【0052】
なお、施工対象領域内で発生した切土領域の土砂を、同一施工対象領域内の盛土領域に直接運搬せず、一旦仮置き場に運搬し仮置き(盛土)しても良い。その場合、仮置き場としての施工エリアを追加し、盛土領域の施工エリアと同様に運土データを生成する。また、仮置き場から、最終的な盛土領域に運搬する場合は、仮置き場の施工エリアから切土施工をして盛土領域まで運土する運土データを生成する。また、切土施工された土砂を、施工対象領域外に搬出してもよい。その場合は、盛土領域と同様の搬出用の施工エリアを追加して運土データを生成する。さらに、外部から土砂を搬入する場合は、切土領域と同様の搬入用の施工エリアを追加して運土データを生成する。このようにして、全ての施工エリアの施工度合が100%になるまで運土の生成を繰り返す。
【0053】
図3Aは、運土計画管理装置100が有する施工用道路テーブル301の一例を示す図である。施工用道路テーブル301は、分割施工用道路の道路区間毎に構成され、道路区間ID311に関連付けて施工エリアID312および使用可能期間313を記憶する。道路区間ID311は、分割施工用道路を識別するための識別子である。施工エリアID312は、当該道路区間が通過する施工エリアを識別するための識別子である。使用可能期間313は、各分割施工用道路の使用可能な期間を、当該道路の通過する施工エリアの施工度合に応じて判定する区分で、例えば、施工開始前(施工前)か施工完了後(施工後)かを表す区分である。
【0054】
図3Bは、運土計画管理装置100が有する施工エリアテーブル302の一例を示す図である。施工エリアテーブル302は、施工エリア毎に構成され、施工エリアID321に関連付けて、優先順位322、施工エリア情報323、施工区分324、計画運土量325、積算運土量326および施工度合327を記憶する。施工エリアID321は、施工エリアのそれぞれを識別するための識別子である。優先順位322は、着目施工エリアや運土先施工エリアを選択する際の優先順位を示す。施工エリア情報323は、各施工エリアの面積や現況地盤高、設計地盤高などを含む。施工区分324は、各施工エリアが、切土領域か盛土領域かを示す。計画運土量325は、各施工エリアに対して施工完了までに予定されている運土量の総量である。積算運土量326は、施工開始から任意時点までに各施工エリアに対して行われる運土量を積算したものである。施工度合327は、各施工エリアにおける、施工の進捗を表す。ここでは、進捗に合わせて施工度合を%で表示しているが、「施工前」「施工中」「施工後」といった表示でもよい。
【0055】
図3Cは、運土計画管理装置100が有する運土データテーブル303の一例を示す図である。運土データテーブル303は、発生する運土計画の情報を、施工時期331、切土施工エリアID332、盛土施工エリアID333および運土量334を記憶する。施工時期331は、各施工エリアに対して施工が行われる時期を示す。切土施工エリアID332は、切土施工の対象となる施工エリアを識別する識別子である。盛土施工エリアID333は、盛土施工の対象となる施工エリアを識別する識別子である。運土量334は、切土エリアと盛土エリアとの間で運搬される土砂の量である。
【0056】
次に、
図4を参照して、運土計画管理装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2の運土計画管理装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0057】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。施工エリアデータ441は、施工対象領域を複数の小エリアに区分したエリアのそれぞれの識別データや座標データなどである。分割施工用道路データ442は、施工対象領域に敷設されている、あるいは、敷設される施工用道路についてのデータである。使用可能期間データ443は、施工用道路のそれぞれについての使用可能な期間を示すデータである。施工度合データ444は、施工エリアのそれぞれについて、着目施工エリアの施工時点における、施工の進捗度合を示すデータである。
【0058】
3次元地形データ445は、施工対象領域の現況の3次元地形を示す現況3次元地形データおよび施工対象領域の施工後の3次元地形を示す設計3次元地形データである。現況3次元地形データは、無人航空機などによるレーザ計測や、空撮により撮影された画像や現地測量などから生成された3次元地形データである。また、設計3次元地形データは、施工対象領域の施工後または造成後の地形を示す設計図(完成図)などから生成された3次元地形データである。
【0059】
地盤高データ446は、施工エリアのそれぞれの現況地盤高および設計地盤高を示すデータである。
【0060】
計画運土量447は、着目施工エリアが切土領域の施工エリアである場合には、切土施工される土量を示し、着目施工エリアが盛土領域の施工エリアである場合には、盛土施工される土量を示すデータである。
【0061】
運土データ448は、運土データ生成部214により生成された、施工対象領域の運土計画を構成する、施工時期、運土対象となる切土領域の施工エリア、運土対象となる盛土領域の施工エリアおよび運土量等を示すデータである。
【0062】
優先順位データ449は、施工エリアIDと優先順位とが関連付けられた施工エリアのそれぞれに付された施工順に関するデータである。
【0063】
送受信データ471は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域472を有する。
【0064】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、施工用道路テーブル301、施工エリアテーブル302および運土データテーブル303を格納する。施工用道路テーブル301は、
図3Aに示した、道路区間ID311と使用可能期間313などとの関係を管理するテーブルである。施工エリアテーブル302は、
図3Bに示した、施工エリアID321と優先順位322などとの関係を管理するテーブルである。運土データテーブル303は、
図3Cに示した、施工時期331と運土量334などとの関係を管理するテーブルである。
【0065】
ストレージ450は、さらに、各種モジュール451を格納する。各種モジュール451は、施工エリアデータ取得モジュール、施工区分データ取得モジュール、地形データ取得モジュール、地盤高導出モジュール、施工区分データ付与モジュール、面積導出モジュール、計画運土量算出モジュール、施工用道路データ取得モジュール、使用可能期間取得モジュール、着目施工エリア選択モジュール、優先順位設定モジュール、施工度合取得モジュール、抽出モジュール、運土対象選択モジュール、運土データ生成モジュール、積算運土量算出モジュール、施工度合算出モジュール、運土データ出力モジュールを含む。
【0066】
施工エリアデータ取得モジュールは、施工エリアデータを取得するモジュールである。施工区分データ取得モジュールは、施工エリアのそれぞれが、切土領域か盛土領域かを識別するための施工区分データを取得するモジュールである。地形データ取得モジュールは、現況3次元地形データおよび設計3次元地形データを取得するモジュールである。地盤高導出モジュールは、施工エリアのそれぞれの現況地盤高および設計地盤高を導出するモジュールである。施工区分データ付与モジュールは、施工エリアのそれぞれが切土領域か盛土領域かを判定し、施工エリアのそれぞれに施工区分データを付与するモジュールである。面積導出モジュールは、施工エリアのそれぞれの面積を導出するモジュールである。計画運土量算出モジュールは、施工リアのそれぞれについて、計画切土量または計画盛土量を算出するモジュールである。施工用道路データ取得モジュールは、施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得するモジュールである。使用可能期間取得モジュールは、分割施工用道路の使用可能期間を取得するモジュールである。着目エリア選択モジュールは、施工エリアのうち、着目施工エリアを選択するモジュールである。優先順位設定モジュールは、施工エリアのそれぞれに施工順である優先順位を設定するモジュールである。施工度合取得モジュールは、着目施工エリアの施工時点における、施工エリアの全ての施工の進み具合を示す施工度合を取得するモジュールである。抽出モジュールは、着目施工エリアの施工時点における、使用可能な分割施工用道路を抽出するモジュールである。運土対象選択モジュールは、着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択し、着目施工エリアと運土先施工エリアとを対応付けるモジュールである。運土データ生成モジュールは、施工時期、運土対象となる切土領域の施工エリア、運土対象となる盛土領域の施工エリアおよび運土量を含む運土データを生成するモジュールである。積算運土量算出モジュールは、任意時点までの運土量を積算するモジュールである。施工度合算出モジュールは、任意時点における施工エリアの施工度合を算出するモジュールである。運土データ出力モジュールは、運土データを出力するモジュールである。
【0067】
これらのモジュールは、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域472に読み出され、実行される。制御プログラム452は、運土計画管理装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0068】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部(図示せず)が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、運土計画管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0069】
図5A~
図5Dに示したフローチャートを参照して、運土計画管理装置100の処理手順について説明する。これらのフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2の運土計画管理装置100の各機能構成を実現する。
【0070】
まず、
図5Aを参照して、運土計画管理装置100による全体の処理について説明する。
【0071】
ステップS501において、運土計画管理装置100は、各種データを取得する。詳細は後述する。
【0072】
ステップS503において、運土計画管理装置100は、施工エリアのうち、運土先施工エリアの検索を行う着目施工エリアを選択する。全ての施工リアのうち、施工度合が100%(積算運土量=計画運土量:施工完了)に到達していない施工エリアの中から着目施工エリアを選択する。着目施工エリアは、例えば、運土計画管理装置100において、オペレータが、施工エリアが表示されている画面上で任意に選択してもよい。また、施工エリア毎の優先順位データを取得した場合は、優先順位データに従って着目施工エリアを選択してもよい。切土エリアを着目施工エリアとするが、盛土エリアを着目施工エリアとしてもよい。なお、施工開始時点で選択する着目施工エリアは、施工開始前に使用可能な施工用道路に接続している施工エリアから選択することが好ましい。
【0073】
ステップS505において、運土計画管理装置100は、着目施工エリアに対して運土対象となる施工エリアの選択と運土可能な運土量の算出を行い、施工時期とともに運土データを生成する。詳細は後述する。
【0074】
そして、ステップS507において、運土計画管理装置100は、全ての施工エリアの施工度合が100%に到達したか否かを判断する。いずれかの施工エリアの施工度合が100%に到達していないと判断した場合(ステップS507のNO)、運土計画管理装置100は、ステップS503へ戻り、次の着目施工エリアを選択する。つまり、選択した着目施工エリアの施工度合が100%になったので、次の着目施工エリアを選択するために、各施工エリアの施工度合を確認し、施工度合が100%になっていない施工エリアが残っている場合は、次の着目施工エリアの選択のために、ステップS503へ戻り、次の着目施工エリアを選択し新たな運土データを生成する。そして、全ての施工エリアの施工度合が100%に到達したと判断した場合(ステップS507のYES)、運土計画管理装置100は、ステップS509へ進む。
【0075】
ステップS509において、運土計画管理装置100は、全ての施工エリアに対しての運土データが生成されたので、生成された運土データを出力する。これらの運土データは、運土計画策定用の情報として活用される。
【0076】
次に、
図5Bを参照して、ステップS501の各種データ取得に関する詳細について説明する。
【0077】
ステップS511において、運土計画管理装置100は、施工対象領域を複数の施工エリアに区分した施工エリアデータ(図形データ)を取得する。施工エリアデータは、外部から入出力機器を通じて取得するが、例えば、オペレータが画面上に表示された施工対象領域の図面に基づいて、マウス操作等により施工エリアの領域を入力し生成されたデータを受け付けてもよい。さらに、取得した施工エリアのそれぞれを識別する施工エリアIDをキーとした施工エリアテーブル302を生成する。
【0078】
ステップS513において、運土計画管理装置100は、施工エリアデータから各施工エリアの面積を導出し、施工エリアテーブル302に記憶させる。施工エリアの面積は、各施工エリアの領域を示す平面座標からGISの機能等を使用して導出するが、外部から入出力機器を通じてデータとして取得してもよい。導出した施工エリアの面積は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブル302に記憶させる。
【0079】
ステップS515において、運土計画管理装置100は、各施工エリアの計画運土量(計画切土量または計画盛土量)を取得し、施工エリアテーブル302に記憶させる。各施工エリアの計画運土量は、外部から入出力機器を通じてデータとして取得しても、施工エリアデータの属性情報として付与されたものから取得してもよい。また、計画運土量を施工エリアのそれぞれの設計地盤高と現況地盤高と面積とを取得して導出してもよく、その場合の詳細は後述する。取得または導出した施工エリアの計画運土量は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブル302に記憶させる。
【0080】
ステップS517において、運土計画管理装置100は、各施工エリアが切土領域か盛土領域かを識別するための施工区分データを取得し、施工エリアテーブル302に記憶させる。施工区分データは、外部から入出力機器を通じてデータとして取得しても、施工エリアデータの属性情報として付与されたものから取得してもよい。また、設計地盤高と現況地盤高とを取得して導出してもよい。取得した設計地盤高と現況地盤高が、[設計地盤高<現況地盤高]の場合は切土領域、[設計地盤高>現況地盤高]の場合は盛土領域と判定してもよい。あるいは、計画切土量を取得した施工エリアは切土領域、計画盛土量を取得した施工エリアは盛土領域として判定してもよい。導出した施工区分データは、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブル302に記憶させる。
【0081】
ステップS519において、運土計画管理装置100は、全てのまたは一部の施工エリアに施工の優先順位が付けられている場合は、各施工エリアの優先順位データを取得する。優先順位とは、施工エリアの施工の順番を定めたものである。取得した優先順位は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブル302に記憶させる。優先順位データは、外部からデータとして取得しても、施工エリアデータの属性情報として付与されていてもよい。また、オペレータが画面等を見ながら、運土計画管理装置100において入力したものを取得してもよい。
【0082】
ステップS521において、運土計画管理装置100は、施工対象領域における施工用道路の施工用道路データを取得する。施工用道路データは、外部からデータとし取得しても、オペレータが、施工エリアデータ等が表示された画面等を見ながら、運土計画管理装置100において入力したものを取得してもよい。
【0083】
ステップS523において、運土計画管理装置100は、施工用道路データと施工エリアデータとを重ね合わせ、施工エリアの領域毎に施工用道路データを分割して分割施工用道路データを生成する。すなわち、施工用道路データと施工エリアの境界線の交点上で施工用道路データを分割する処理を行う。次に、生成された分割施工用道路データと施工エリアとを対応付けて、分割施工用道路データの属性データとして、対応する施工エリアを識別する施工エリアIDを取得する。さらに、分割施工用道路の各区間に、各区間を識別する識別子である道路区間ID311を付与し、取得した施工エリアIDを関連付けて施工用道路テーブル301に記憶させる。
【0084】
ステップS525において、運土計画管理装置100は、分割施工用道路のそれぞれに対して使用可能期間を取得し、道路区間ID311に関連付けて施工用道路テーブル301に記憶させる。使用可能期間は、外部から入出力機器を通じて分割施工用道路毎に使用可能期間が記録された使用可能期間データとして取得してもよく、オペレータが、施工エリアデータ等が表示された画面等を見ながら、運土計画管理装置100において入力したものを取得してもよい。当初より、施工用道路データの属性情報として使用可能期間データが付与されている場合は、そのまま適用して分割施工用道路の使用可能期間としてもよい。
【0085】
次に、
図5Cを参照して、ステップS515の計画運土量取得の詳細について説明する。
【0086】
ステップS531において、運土計画管理装置100は、施工対象領域の現況の3次元地形を示す現況3次元地形データを取得する。現況3次元地形データは、外部から入出力機器を通じて取得する。また、取得する現況3次元地形データの座標系およびデータ形式が施工エリアデータと異なる場合は、同一の形式に変換する。
【0087】
ステップS533において、運土計画管理装置100は、施工後の3次元地形を示す設計3次元地形データを取得する。設計3次元地形データは、外部から入出力機器を通じて取得する。また、取得する設計3次元地形データの座標系およびデータ形式が施工エリアデータと異なる場合は、同一の形式に変換する。
【0088】
ステップS535において、運土計画管理装置100は、施工エリアデータ、現況3次元地形データ、設計3次元地形データを用いて、施工エリアのそれぞれの現況地盤高および設計地盤高を導出する。まず、取得した現況3次元データおよび設計3次元データと施工エリアデータとを重ね合わせる。双方の座標系が異なる場合は、いずれかの平面座標に合わせて重なるように調整する。次に、各施工エリアの領域内の標高データを、現況3次元地形データと設計3次元地形データとから導出する。地形が平坦でない場合は、中庸点や平均値等の代表値を設定する。全ての施工エリアの現況地盤高と設計地盤高とを導出する。導出した施工エリアの現況地盤高と設計地盤高は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブル302に記憶させる。
【0089】
ステップS537において、運土計画管理装置100は、ステップS535で導出した現況地盤高および設計地盤高から、施工エリアのそれぞれの施工区分データを付与する。取得した施工エリアのそれぞれの設計地盤高と現況地盤高との差分が、マイナスとなっていれば切土領域、プラスとなっていれば盛土領域と判定し、施工エリアのそれぞれに、切土領域か盛土領域かを識別するための識別子である施工区分データを付与し、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブル302に記憶させる。
【0090】
ステップS539において、運土計画管理装置100は、施工エリアのそれぞれの計画運土量を算出する。施工エリアのそれぞれの設計地盤高と現況地盤高との差に、施工エリアの面積を乗ずる形で、計画運土量(計画切土量/計画盛土量)を算出する。また、必要に応じて、土量変化率を反映させる。算出された計画運土量がマイナスの場合は計画切土量となり、プラスの場合は計画盛土量となる。算出された計画運土量は、施工エリアIDに関連付けて施工エリアテーブル302に記憶させる。
【0091】
次に、
図5Dを参照して、ステップS505の運土先施工エリアの選択、運土可能な運土量の算出、および、運土データの生成に関する詳細について説明する。
【0092】
ステップS551において、運土計画管理装置100は、着目施工エリアの施工区分(切土エリアか盛土エリアか)を取得する。着目施工エリアの施工区分は、ステップS503で選択した着目施工エリアについて、施工エリアテーブル302を参照し、着目施工エリアの施工エリアIDと同一の施工エリアIDに関連付けられている施工区分を読み出すことで取得する。
【0093】
ステップS553において、運土計画管理装置100は、着目施工エリアの施工時点における、全ての施工エリアの施工度合を取得する。施工エリアの施工度合は、施工エリアのそれぞれについて、施工エリアテーブル302から読み出すことで取得する。施工エリアテーブル302の施工度合の時点が、着目施工エリアの施工時点と異なっている場合は、改めて施工度合の情報を取得して同一時点に合わせる。
【0094】
ステップS555において、運土計画管理装置100は、着目施工エリアの施工時点において、使用可能な分割施工用道路を抽出する。使用可能な分割施工用道路は、まず、施工用道路テーブル301と施工エリアテーブル302とを施工エリアID321に基づいて関連付け、施工用道路テーブル301の分割施工用道路のそれぞれの使用可能期間が、施工エリアテーブル302の施工度合を含んでいるか否かの判定を行い、含んでいる分割施工用道路を使用可能な状態にある分割施工用道路として抽出する。例えば、分割施工用道路の使用可能期間が「施工前」であれば、当該道路の属する施工エリアが「施工前(=施工度合が0%)」の場合、抽出される。なお、施工エリアの進捗度合が「施工中」の場合は、使用可能期間が「施工前」、「施工後」のいずれの道路も使用できないことになる。さらに、抽出された分割施工用道路の全てを結合して使用可能道路データを生成する。
【0095】
ステップS557において、運土計画管理装置100は、着目施工エリアに対して運土可能な施工エリアを抽出する。まず、ステップS555で抽出された使用可能道路を経路として着目施工エリアと接続可能な施工エリアから、着目施工エリアとの間で運土可能な一つまたは複数の運土先施工エリア(着目施工エリアが切土エリアならば盛土エリア、着目施工エリアが盛土エリアならば切土エリア)を抽出する。次に、抽出された運土先施工エリアについて施工エリアテーブル302を参照して、ステップS553で取得した着目施工エリアの施工時点において施工度合が「施工後」になっているものを除外し運土可能施工エリアとする。
【0096】
ステップS559において、運土計画管理装置100は、抽出された運土可能施工エリアから運土先施工エリアを選択する。運土先施工エリアは、予め定めたルールに基づいて順番に選択しても、オペレータが画面上から適宜選択するようにしてもよい。また、ステップS519において取得した優先順位に従って選択したり、着目施工エリアに最も近接している運土先施工エリアを選択したりしてもよい。あるいは、施工用道路の勾配を加味して、施工用道路の距離を補正した勾配補正距離が最も小さい施工エリアを選択してもよい。さらに、全ての施工エリア同士の全ての組み合わせをシミュレーションし、最も[運土量×距離]、あるいは、[運土量×勾配補正距離]の総和が小さくなるように切土エリアと盛土エリアとを組み合わせてもよい。
【0097】
ステップS561において、運土計画管理装置100は、運土先施工エリアに対して運土可能な運土量を算出する。まず、ステップS559で選択された運土先施工エリアの受け入れ可能な運土量である残運土量を、計画運土量から積算運土量を減算することで算出する。その際、着目施工エリアの残運土量が運土先施工エリアの残運土量を超えている場合は、運土可能な運土量は運土先施工エリアの残運土量となる。また、着目施工エリアの残運土量が運土先施工エリアの残運土量以下の場合は、運土可能な運土量は、着目施工エリアの残運土量となる。さらに、施工期間(工期)ごとに運土計画を策定する場合であって、1工期における最大運土量を規定している場合(例えば、最大のダンプの運搬能力等)には、運土可能な運土量は、工期毎の最大運土量を上限として算出する。
【0098】
ステップS563において、運土計画管理装置100は、施工時期、切土施工エリアID、盛土施工エリアID、運土量の4項目からなる運土データを生成し、運土データテーブル303に記憶させる。ここでは、着目施工エリアが切土エリアの時は、盛土エリアが運土先施工エリアとなり、着目施工エリアが盛土エリアの時は、切土エリアが運土先施工エリアとなる。上述したように、1工期における最大運土量を規定しており、同一の切土エリアと盛土エリアとの組み合わせで時期が異なる場合でも、運土データは2レコード作成して、同一の切土エリアと盛土エリアとの組み合わせで施工時期が異なるデータが生成される。その際の各レコード(各施工時期)の運土量は同一であっても異なっていてもよい。また、同一施工時期で並行して複数の施工エリアで切土施工または盛土施工が行われる場合は、施工時期が同一で切土エリアと盛土エリアとの組み合わせが異なる運土データが生成されてもよい。
【0099】
ステップS565において、運土計画管理装置100は、切土エリアと盛土エリア双方の施工エリアの積算運土量に、上記運土データの運土量を、切土エリアの場合は減算、盛土エリアの場合は加算する。また、合わせて施工度合の数値を更新する。
【0100】
ステップS567において、運土計画管理装置100は、双方の施工エリアの施工度合を更新した後、着目施工エリアの施工度合の確認を行う。着目施工エリアの施工度合が100%に到達していない場合(ステップS567のNO)、運土計画管理装置100は、ステップS553に戻り全ての施工エリアの施工度合を再度取得し、ステップS557において、新しい施工度合に応じた分割施工用道路を再度抽出し、ステップS559において、運土先施工エリアの選択を再度行う。着目施工エリアの施工度合が100%に到達している場合(ステップS567のYES)、運土計画管理装置100は、運土先施工エリアの選択、運土可能な運土量の算出、および、運土データの生成に関する処理を終了し、ステップS503の次の着目施工エリアの選択に戻る。全ての施工エリアの進捗度合が100%になるまで上記処理を繰り返す。
【0101】
本実施形態によれば、施工の進捗に合わせて施工用道路の使用の可否を考慮するので、適切な運土計画を生成できる。
[第2実施形態]
【0102】
次に本発明の第2実施形態に係る運土計画管理装置600について、
図6~
図9Cを参照して説明する。本実施形態に係る運土計画管理装置600は、上記第1実施形態と比べると、勾配情報取得部および運土負荷算出部を有している点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0103】
図6に示したように、運土計画管理装置600は、勾配情報取得部601および運土負荷算出部602を有する。
【0104】
勾配情報取得部601は、施工用道路の勾配情報を取得する。施工用道路の勾配情報は、分割施工用道路の各区間の勾配で、当該区間の使用可能期間における3次元地形に基づいた勾配となる。勾配情報取得部601は、施工用道路データを取得するときに合わせて勾配情報を外部から取得するか、あるいは、施工用道路データと、取得した設計3次元地形データまたは現況3次元地形データとを重ね合わせることで、施工用道路データの区間毎に標高データを付与し、それらの標高データから施工用道路の勾配を算出してもよい。標高データは、当該施工用道路の使用可能期間が施工開始前であれば、現況3次元地形データの、施工完了後であれば、設計3次元地形データのそれぞれの標高データを取得し勾配を算出する。勾配は、分割施工用道路毎に設定することが好ましい。分割施工用道路の勾配は、全区間の平均を用いても、全区間を上り勾配、下り勾配に分けた上で、上りの平均勾配、下りの平均勾配を用いてもよく、これらには限定されない。
【0105】
さらに、勾配情報取得部601は、取得した分割施工用道路の勾配情報に基づいて、分割施工用道路の距離を補正して勾配補正距離を算出する。まず、分割施工用道路の各区間の距離を、施工用道路データの座標値から導出する。次に、導出した距離に対して、平坦の区間については補正無しの数値で、勾配がある区間については、勾配に応じた補正数値を適用し、分割施工用道路の距離に乗ずることで補正する。補正された距離が、分割施工用道路の勾配補正距離となる。勾配に応じた補正数値は、状況に応じて適宜定めてよい。例えば、分割施工用道路が下り勾配の場合は、距離に1以下の数値を乗じて短縮させ、上り勾配の場合は、距離に1以上の数値を乗じて延長させる。勾配の程度により、複数段階の補正数値を適用してもよい。また、単に三角関数を用いて道路上の実際の距離を求めてもよく、さらに勾配に応じて負荷を割り増ししてもよい。
【0106】
運土負荷算出部602は、抽出部206で抽出された使用可能道路を経路として、着目施工エリアと接続可能な施工エリアのそれぞれに対して運土負荷を算出する。ここで、運土負荷は、運土負荷=距離×運土量 で算出されるが、施工用道路が下り勾配の場合は、算出された運土負荷に1以下の数値を乗じて運土負荷を軽減し、上り勾配の場合は、算出された運土負荷に1以上の数値を乗じて運土負荷を加重させる。すなわち、勾配を反映させた運土負荷は、運土負荷=距離×勾配補正×運土量 で表すことができ、即ち、勾配補正運土負荷=勾配補正距離×運土量 で計算される。
【0107】
従って、運土負荷算出部602は、勾配情報取得部601で算出された勾配補正距離に運土量を乗ずることにより、勾配補正を行った運土負荷を算出する。着目施工エリアと接続可能な施工エリアのそれぞれに対して接続する分割施工用道路を抽出し、それらの勾配補正距離を積算し、運土量を乗ずることで、接続可能な施工エリアのそれぞれに対する勾配を反映させた運土負荷が算出される。
【0108】
そして、第2実施形態に係る運土対象選択部207は、算出された運土負荷に応じて、着目施工エリアとの間で運土可能な運土対象となる運土先施工エリアを選択して、着目施工エリアと運土先施工エリアとを対応付ける。この時、切土エリアから盛土エリアへの方向が、上り方向になる運土先施工エリアは運土負荷が大きくなり、下り方向の運土先施工エリアは、運土負荷が小さくなるため、同様の距離であれば、下り方向の運土先施工エリアを選択することになる。着目施工エリアに対する運土先施工エリアの選択は、例えば、算出された運土負荷の小さい運土先施工エリアから選択するように行われるが、これには限定されない。
【0109】
図7は、運土計画管理装置600が有する施工用道路テーブル701の一例を示す図である。施工用道路テーブル701は、分割施工用道路の道路区間毎に構成され、道路区間ID311に関連付けて勾配711、距離712および勾配補正距離713を記憶する。勾配711は、施工用道路のそれぞれの傾斜を表しており、例えば、施工用道路のそれぞれにおける全行程の平均勾配や最大勾配、最小勾配などで表されるが、勾配の表し方はこれらには限定されない。距離712は、分割施工用道路の各区間の距離であり、施工用道路データの座標値から導出される。勾配補正距離713は、各分割施工用道路の勾配711に応じた補正を、距離712に乗じて算出された距離である。
【0110】
次に、
図8を参照して、運土計画管理装置600のハードウェア構成について説明する。RAM840は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM840には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。勾配データ841は、施工用道路のそれぞれの勾配(傾斜)についてのデータである。勾配は、例えば、施工用道路のそれぞれの平均勾配などを用いて表されるデータである。
【0111】
ストレージ850には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ850は、施工用道路テーブル701を格納する。施工用道路テーブル701は、
図7に示した、道路区間ID311と勾配711との関係を管理するテーブルである。
【0112】
ストレージ850は、さらに、各種モジュールを格納する。各種モジュール851には、勾配情報取得モジュールおよび運土負荷算出モジュールが含まれる。勾配情報取得モジュールは、施工用道路の勾配を取得するモジュールである。運土負荷算出モジュールは、施工用道路のうち使用可能な道路として抽出された使用可能道路の勾配に基づいて、切土領域の施工エリアと盛土領域の施工エリアとの間で、運土する場合の運土負荷を算出するモジュールである。この各種モジュール851は、CPU410によりRAM840のアプリケーション実行領域472に読み出され、実行される。
【0113】
図9A、
図9Bおよび
図9Cに示したフローチャートを参照して、運土計画管理装置600の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図8のCPU410がRAM840を使用して実行し、
図6の運土計画管理装置600の各機能構成を実現する。本実施形態に係る運土計画管理装置600は、上記第1実施形態と比べると、ステップS901の勾配補正距離算出の処理と、ステップS951の運土負荷算出処理をさらに有している点で異なる。また、ステップS559の、運土先施工エリア選択の処理方法が異なる。
【0114】
ステップS901において、運土計画管理装置600は、各分割施工用道路に対して距離情報を取得してテーブルに記憶させる。
【0115】
次に、
図9Bを参照して、ステップS901の勾配補正距離算出処理の詳細について説明する。
【0116】
ステップS911において、運土計画管理装置600は、各分割施工用道路に対して施工用道路データの道路形状データの座標値より当該区間の距離を算出し、道路区間ID311に関連付けて、施工用道路テーブル701に記憶させる。
【0117】
ステップS913において、運土計画管理装置600は、分割施工用道路データと現況3次元地形データとを、または、分割施工用道路データと計画3次元地形データとを、それぞれ重ね合わせる。分割施工用道路の使用可能期間が施工開始前の場合は、現況3次元地形データと重ね合わせ,使用可能期間が施工後の場合は、計画3次元地形データと重ね合わせる。
【0118】
ステップS915において、運土計画管理装置600は、分割施工用道路とステップS913で重ね合わせたそれぞれの3次元地形データより、分割施工用道路の当該区間の勾配を導出する。分割施工用道路の勾配は、道路形状の平面座標値に、重ね合わせた3次元地形データから高さ情報を付与し、区間の平均勾配を取得したり、勾配毎にさらに区間を分割してそれぞれに勾配を取得したりして導出する。導出した分割施工用道路の勾配は、道路区間ID311に関連付けて、施工用道路テーブル701に記憶させる。
【0119】
ステップS917において、運土計画管理装置600は、分割施工用道路データの当該区間の距離に、別に定めた勾配に対応する補正率を乗じて勾配補正距離を算出し、道路区間ID311に関連付けて、施工用道路テーブル701に記憶させる。全ての分割施工用道路データに対して勾配補正をかけた勾配補正距離を算出する。
【0120】
次に、
図9Cを参照して、ステップS951の運土負荷算出処理、および、ステップS559の運土先施工エリア選択の詳細について説明する。
【0121】
ステップS951において、運土計画管理装置600は、ステップS557で抽出された運土可能施工エリアのそれぞれに対して運土負荷を算出する。運土負荷は、着目施工エリアと運土可能施工エリアのそれぞれを接続する分割施工用道路を抽出し、ステップS917において算出された勾配補正距離を積算し、勾配補正距離の総和に運土量を乗することで算出される。この時、運土量は一定でもよい。運土負荷は、着目施工エリアに接続する全ての運土可能施工エリアに対して算出する。
【0122】
ステップS559において、運土計画管理装置600は、算出された運土負荷に応じて、着目施工エリアとの運土対象となる運土先施工エリアを選択して、着目施工エリアと運土先施工エリアとを対応付ける。運土先施工エリアは、例えば、施工用道路の勾配を加味して、施工用道路の距離を補正した勾配補正距離から算出した運土負荷が最も小さい施工エリアを選択してもよい。さらに、施工区分別に全ての施工エリア同士の組み合わせをシミュレーションし、最も[運土量×勾配補正距離]の総和が小さくなるように切土エリアと盛土エリアとを組み合わせてもよい。
【0123】
本実施形態によれば、施工用道路の勾配を反映させた運土負荷を算出して、運土先施工エリアを選択し運土計画を策定するので、運土負荷の少ない運土計画を策定することが可能となる。
[他の実施形態]
【0124】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0125】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。