(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ポンプユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 23/02 20060101AFI20240828BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
F04B23/02 B
F04B53/16 A
(21)【出願番号】P 2021064130
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593056543
【氏名又は名称】株式会社タカコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】辻井 喜勝
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-107445(JP,A)
【文献】特開2005-036744(JP,A)
【文献】特開2000-303949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/281697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/02
F04B 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液を貯留するタンクと、
駆動源によって回転駆動されて作動液を吸い込み吐出するポンプ部と、を備え、
前記タンクは、
内外を連通する窓部を有し前記ポンプ部を収容するハウジングと、
前記窓部を覆うように前記ハウジングに取り付けられ前記ポンプ部が前記タンクから作動液を吸い込み吐出するのに応じて拡縮する弾性部と、を有することを特徴とするポンプユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプユニットであって、
前記ポンプ部は、前記駆動源によって回転する駆動軸と共に回転するシリンダブロックを有し、
前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間には、前記弾性部の収縮による前記シリンダブロックと前記弾性部との接触を防止する仕切部が設けられることを特徴とするポンプユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプユニットであって、
前記ポンプ部は、前記駆動軸の径方向における前記シリンダブロックと前記仕切部との間において前記タンクの前記ハウジングの内部に開口する吸込口を通じて前記タンクから作動液を吸い込み、
前記仕切部は、前記ポンプ部を囲うように前記ポンプ部の径方向外側に設けられる筒状に形成され、
前記仕切部には、前記仕切部の内外を連通する連通孔が形成されることを特徴とするポンプユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のポンプユニットであって、
前記連通孔は、前記駆動軸の軸方向における前記仕切部の両端部にそれぞれ形成されることを特徴とするポンプユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のポンプユニットであって、
前記仕切部は、前記駆動軸に垂直な断面形状が多角形状に形成され、
前記連通孔は、前記仕切部の多角形状を構成する、交差する二つの側面部にわたって形成されることを特徴とするポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作動液を貯留するリザーバタンクがポンプハウジングに一体に結合されたタンク一体型ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなポンプユニットは、限られたスペースに設置するために小型化の要望があったが、小型化を充分に実現できていなかった。
【0005】
また、ポンプユニットでは、例えば、タンク内の作動液の容量変化に伴うタンク内圧の変化を防ぐために、タンクにエア抜き口が設けられることがある。タンク内のエアは鉛直方向上方に溜まるため、タンクのエア抜き口は、相対的に鉛直方向上方に位置させる必要がある。したがって、ポンプユニットでは、タンクの向き(姿勢)が制限されることがあった。
【0006】
以上のように、ポンプユニットでは、サイズや取付姿勢の制限などが原因で、設置スペースに制限があるような設備や装置へは、適用し難いことがあった。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、種々の設備等へ容易に適用できるポンプユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポンプユニットであって、作動液を貯留するタンクと、駆動源によって回転駆動されて作動液を吸い込み吐出するポンプ部と、を備え、タンクは、内外を連通する窓部を有しポンプ部を収容するハウジングと、窓部を覆うようにハウジングに取り付けられポンプ部がタンクから作動液を吸い込み吐出するのに応じて拡縮する弾性部と、を有することを特徴とする。
【0009】
この発明では、タンクのハウジングが、ポンプ部を収容するハウジングとしても機能するため、タンクとポンプとでそれぞれハウジングを有し互いのハウジングを連結させるような従来のポンプユニットと比較して小型化することができる。また、この発明では、ポンプ部の作動によってタンク内の作動液の容量が変化すると、タンクのハウジングに取り付けられた弾性部が拡縮する。これにより、作動液の容量変化による内圧の変化を防ぐためのエア抜き口をタンクに設ける必要がないため、タンクの向き、ひいては、ポンプユニットの取付姿勢が制限されない。
【0010】
また、本発明は、ポンプ部が、駆動源によって回転する駆動軸と共に回転するシリンダブロックを有し、ハウジングとシリンダブロックとの間には、弾性部の収縮によるシリンダブロックと弾性部との接触を防止する仕切部が設けられることを特徴とする。
【0011】
この発明では、仕切部によってシリンダブロックと弾性部との接触が防止されるため、回転するシリンダブロックとの接触により弾性部が損傷することを回避できる。
【0012】
また、本発明は、ポンプ部が、駆動軸の径方向におけるシリンダブロックと仕切部との間においてタンクのハウジングの内部に開口する吸込口を通じてタンクから作動液を吸い込み、仕切部は、ポンプ部を囲うようにポンプ部の径方向外側に設けられる筒状に形成され、仕切部には、仕切部の内外を連通する連通孔が形成されることを特徴とする。
【0013】
この発明では、駆動軸が鉛直に対して傾斜するような姿勢でポンプユニットが使用されると、仕切部の内側のエアは、連通孔を通じて仕切部の外側へと導かれる。ポンプ部は、仕切部の内側にある吸込口を通じてタンクの作動液を吸い込むように構成される。このため、ポンプ部のエアの吸い込みが抑制される。
【0014】
また、本発明は、連通孔が、駆動軸の軸方向における仕切部の両端部にそれぞれ形成されることを特徴とする。
【0015】
この発明では、駆動軸が水平に対して傾斜するような姿勢でポンプユニットが使用されると、仕切部の内側のエアは、仕切部の内壁を通じて仕切部の端部のいずれかに導かれる。よって、仕切部の両端部に連通孔が設けられることで、仕切部の内側のエアを外側へと導きやすくなる。したがって、ポンプ部のエアの吸込みをより一層抑制できる。
【0016】
また、本発明は、仕切部が、駆動軸に垂直な断面形状が多角形状に形成され、連通孔は、仕切部の多角形状を構成する、交差する二つの側面部にわたって形成されることを特徴とする。
【0017】
この発明では、仕切板の内側のエアは、仕切板の内壁を通じて側面部の交差部分に導かれる。よって、仕切部の交差する二つの側面部にわたって連通孔が設けられることで、仕切部の内側のエアを外側へと導きやすくなる。したがって、ポンプ部のエアの吸込みをより一層抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、種々の設備等に対してポンプユニットを容易に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るポンプユニットが適用されるシリンダ制御装置の油圧回路である。
【
図2】本発明の実施形態に係るポンプユニットを示す断面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るポンプユニットのスリーブの平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るポンプユニットのゴム膜が収縮した状態を示す断面図であり、
図3に対応する断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るポンプユニットの一つの使用状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るポンプユニットのスリーブの変形例を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るポンプユニットのスリーブの変形例を示す側面図であり、
図7のA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るポンプユニット100について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0021】
ポンプユニット100は、
図1に示すように、アクチュエータとしての油圧シリンダ1の駆動を制御するシリンダ制御装置101に適用される。
図1のうち点線で囲った範囲がポンプユニット100である。
【0022】
油圧シリンダ1は、シリンダチューブ2と、シリンダチューブ2内に摺動自在に挿入され、シリンダチューブ2内をロッド側室1aと反ロッド側室1bに区画するピストン3と、一端がピストン3に連結され他端がシリンダチューブ2の外部へと突出するピストンロッド4と、を備える片ロッド型シリンダである。
【0023】
シリンダ制御装置101は、駆動源としてのモータ5と、モータ5の回転に伴って駆動され作動液としての作動油を吐出して油圧シリンダ1を駆動するポンプユニット100と、油圧シリンダ1の反ロッド側室1bとポンプユニット100とを接続する第1給排通路6と、油圧シリンダ1のロッド側室1aとポンプユニット100とを接続する第2給排通路7と、を備える。
【0024】
ポンプユニット100は、作動油が貯留されるタンク10と、モータ5の回転に伴って回転し、タンク10に貯留される作動油を回転方向に応じて第1及び第2ポンプポート21,22の2つのポートの一方から吸い込んで他方から吐出するポンプ部20と、ポンプ部20と油圧シリンダ1との間の作動油の流れを制御するバルブブロック30と、を備える。
【0025】
ポンプ部20の第1ポンプポート21は、第1給排通路6を通じて油圧シリンダ1の反ロッド側室1bに接続される。ポンプ部20の第2ポンプポート22は、第2給排通路7を通じて油圧シリンダ1のロッド側室1aに接続される。
【0026】
また、シリンダ制御装置101は、第1及び第2給排通路6,7にそれぞれ接続されるリリーフ弁32,33と、ポンプ部20の第1及び第2ポンプポート21,22の一方から吐出される作動油によって駆動し、第1及び第2ポンプポート21,22の他方とタンク10とが連通するように動作するシャトル弁31と、をさらに備える。
【0027】
ポンプ部20と片ロッド型の油圧シリンダ1とを
図1に示すように閉回路で接続すると、油圧シリンダ1の伸長作動時と収縮作動時でシリンダチューブ2の容積にピストンロッド4の体積分だけ差が生じる。シャトル弁31は、油圧シリンダ1の伸長作動時と収縮作動時でのシリンダチューブ2の容積差を補償して、油圧シリンダ1を安定して伸縮作動させるためのものである。また、シャトル弁31は、ポンプ部20の高圧部から作動油がリークして閉回路中の作動油が減少したときに、タンク10から閉回路中に作動油を補給して閉回路中の作動油の不足を防止する機能も有する。
【0028】
具体的には、シャトル弁31は、ポンプ部20の第1及び第2ポンプポート21,22の一方から吐出される作動油によって駆動して、タンク10と第1及び第2ポンプポート21,22の一方との連通を遮断し他方とタンク10とが連通するように連動して動作する。これにより、油圧シリンダ1の伸長作動時と収縮作動時でのシリンダチューブ2の容積差を補償して、油圧シリンダ1を安定して伸縮作動させる。
【0029】
油圧シリンダ1を伸長作動させる場合には、モータ5の駆動によりポンプ部20が一方の方向に回転される。ポンプ部20が一方の方向に回転すると、シャトル弁31が一方へ切り換わり、ポンプ部20は、第2給排通路7から第2ポンプポート22を通じて作動油を吸い込み、第1ポンプポート21から吐出する。ポンプ部20の第1ポンプポート21から吐出された作動油は、第1給排通路6を通じて油圧シリンダ1の反ロッド側室1bに供給される。これにより、油圧シリンダ1は伸長作動する。
【0030】
反対に、油圧シリンダ1を収縮作動させる場合には、モータ5の駆動によりポンプ部20が他方の方向に回転される。ポンプ部20が他方の方向に回転すると、シャトル弁31が他方へ切り換わり、ポンプ部20は、第1給排通路6から第1ポンプポート21を通じて作動油を吸い込み、第2ポンプポート22から吐出する。ポンプ部20の第2ポンプポート22から吐出された作動油は、第2給排通路7を通じて油圧シリンダ1のロッド側室1aに供給される。これにより、油圧シリンダ1は収縮作動する。
【0031】
なお、油圧シリンダ1は、片ロッド型シリンダに限られるものではなく、両ロッド型シリンダであってもよい。また、油圧シリンダ1に代えて、油圧モータを適用するようにしてもよい。
【0032】
次に、
図2~
図6を参照して、ポンプユニット100の具体的構成について説明する。
【0033】
図2に示すように、タンク10は、内外を連通する窓部12を有するハウジング11と、窓部12を覆うようにハウジング11に取り付けられる弾性部としてのゴム膜15と、を有する。
【0034】
ハウジング11は、金属又は樹脂によって形成される。ハウジング11は、
図2及び
図3に示すように、内部空間S1を有する筒状に形成され、ハウジング11の軸方向に垂直な断面形状は、六角形に形成される。ハウジング11の軸方向の両端部は、底部11a,11bによって閉塞される。ハウジング11の一端部には、バルブブロック30が取り付けられる。ハウジング11の他端部には、モータ5が取り付けられる。
【0035】
窓部12は、ハウジング11の外部と内部空間S1とを連通するようにして、ハウジング11の断面の六角形状の各面に形成される。
【0036】
なお、ハウジング11の断面形状は、六角形状に限定されず、その他の多角形状でもよい。また、ハウジング11の断面形状は、円形であってもよい。ハウジング11の断面形状が多角形状である場合、窓部12は、多角形を構成する各面に設けられることが望ましいが、これに限らず、一部の面にだけ設けられてもよい。ハウジング11の断面形状が円形状である場合には、窓部12は、周方向に等間隔を空けて複数設けられることが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0037】
ゴム膜15は、弾性部材であるニトリルゴム(NBR)で形成される膜部材(ダイアフラム)であり、外力によって拡縮可能である。ゴム膜15によって、窓部12を通じたハウジング11の外部と内部空間S1との連通が遮断される。これにより、ハウジング11の内部空間S1が密閉される。ハウジング11の内部空間S1は、作動油で満たされている。
【0038】
ゴム膜15は、ハウジング11内の作動油の容量が変化するのに伴って、後述するポンプ部20のシャフト23の径方向に拡縮する。
【0039】
ポンプ部20は、タンク10のハウジング11の内部空間S1内に収容される。つまり、タンク10のハウジング11は、ポンプ部20のハウジングとしても機能する。このため、ポンプユニット100は、タンクとポンプとでそれぞれハウジングを有するような従来のものと比較して小型化することができる。ポンプ部20は、バルブブロック30側におけるハウジング11の底部11aに取り付けられる。
【0040】
ポンプ部20は、例えばピストンポンプであって、モータ5によって回転される駆動軸としてのシャフト23と、シャフト23と共に回転するシリンダブロック24と、を有する。シャフト23には、モータ5のモータ軸(図示省略)が連結され、モータ軸の回転が伝達される。シャフト23は、シリンダブロック24を挿通し、ハウジング11の両端の底部11a,11bに回転自在に支持される。ピストンポンプとしてのポンプ部20は、公知の構成を採用できるため、さらなる詳細な説明及び図示は省略し、各図においては簡略化して図示する。なお、ポンプ部20は、ピストンポンプに限定されず、例えばギヤポンプなど、その他のポンプであってもよい。
【0041】
タンク10のハウジング11及びゴム膜15とポンプ部20のシリンダブロック24との間には、仕切部としての筒状のスリーブ25が設けられる。言い換えると、スリーブ25は、シャフト23に対する径方向の外側であってシリンダブロック24を囲うようにしてハウジング11の内部空間S1内に設けられる。スリーブ25は、ハウジング11の両端の底部11a,11bに挟まれるようにしてハウジング11に取り付けられる。
【0042】
ゴム膜15が径方向内側に向けて収縮しても、スリーブ25に接触するため、回転するシリンダブロック24との接触が回避される。これにより、ゴム膜15の損傷が回避される。
【0043】
また、スリーブ25には、
図2から
図4に示すように、スリーブ25の内外を連通するようにスリーブ25を径方向に貫通する複数の連通孔25aが形成される。複数の連通孔25aは、局所的に形成されるのではなく、スリーブ25の全体にわたって均等に配置されるのが望ましい。
【0044】
本実施形態では、
図4に示すように、スリーブ25には、軸方向に等間隔を空けて並ぶ3つの連通孔25aを1列として、複数列の連通孔25aが周方向に等間隔を空けて形成される。より具体的には、1列中において、スリーブ25の両端部にそれぞれ連通孔25aが形成され、軸方向におけるスリーブ25の中央に1つの連通孔25aが形成される。つまり、スリーブ25の両端部に形成される連通孔25aは、ハウジング11の底部11a,11bに面している(
図2参照)。
【0045】
バルブブロック30は、略直方体形状に形成されるブロック体である。
図2に示すように、バルブブロック30とバルブブロック30が取り付けられるハウジング11の底部11aとには、両者にわたって吸込口13が形成される。ポンプ部20は、吸込口13を通じてタンク10内の作動油を吸い込む。なお、図示及び詳細な説明は省略するが、バルブブロック30には、
図1に示すシャトル弁31及びリリーフ弁32,33が内蔵される。
【0046】
吸込口13は、シャフト23の径方向において、スリーブ25の内側であってポンプ部20のシリンダブロック24の外側となる位置で、タンク10の内部空間S1に開口する。
【0047】
次に、ポンプユニット100の作用について説明する。
【0048】
ポンプ部20は、モータ5(
図1参照)によって駆動されると、吸込口13を通じてタンク10から作動油を吸い込んで吐出する。ここで、油圧シリンダ1の伸長作動時と収縮作動時とでシリンダチューブ2に容積差が生じるため、これに伴ってタンク10内の作動油の容量も変化する。
図2は、タンク10内の容量が相対的に大きい状態を示す。
【0049】
油圧シリンダ1が伸長作動する場合、ポンプ部20が作動油を吸い込むのに伴い、タンク10の内部に貯留された作動油の量(タンク10の内容量)が減少する。これにより、
図5に示すように、タンク10のゴム膜15は、内容量の減少に伴い径方向内側へ収縮する。反対に、油圧シリンダ1が収縮作動する場合、油圧シリンダ1から排出される作動油がタンク10に還流されると、タンク10の内部に貯留される作動油の量が増加する。これにより、タンク10のゴム膜15は、内容量の増加に伴い
図5に示す状態から径方向外側へ拡張して、
図2に示す状態へと戻る。
【0050】
このように、タンク10のハウジング11には、窓部12が形成され、窓部12を覆うゴム膜15が取り付けられるため、タンク10の内容量の増加に伴ってゴム膜15が拡縮する。これにより、内容量の変化によるタンク10の内圧の変化が吸収されるため、タンク10にエア抜き口等を設ける必要がない。したがって、ポンプユニット100では、取付姿勢が限定されない。
【0051】
例えば、ポンプユニット100は、
図6に示すように、シャフト23が鉛直方向及び水平方向に対してそれぞれ傾斜するような姿勢で使用することもできる。このような場合、スリーブ25の内側の作動油に含まれるエアは、鉛直方向の上方へ向けて移動する。ポンプユニット100では、スリーブ25に連通孔25aが形成されるため、スリーブ25の内側のエアは、鉛直方向の上方へ移動するのに伴ってスリーブ25の外側へと導かれる。
【0052】
特に、スリーブ25の内側のエアは、鉛直方向の上方へ移動して、スリーブ25と底部11aとの間の角部周辺に溜まりやすい。本実施形態では、スリーブ25の両端部に連通孔25aが形成されることで、両端部の連通孔25aを相対的に鉛直方向の上方に位置させやすくなり、スリーブ25の内側のエアを外側へと導きやすくなる(
図6中矢印参照)。このように、本実施形態では、スリーブ25内のエアは、連通孔25aを通じてスリーブ25の外側へと導かれる。
【0053】
また、本実施形態では、吸込口13は、スリーブ25とポンプ部20のシリンダブロック24との間においてタンク10の内部空間S1に開口する。つまり、ポンプ部20は、吸込口13を通じてスリーブ25の内側の作動油を吸い込む。スリーブ25の内側のエアは、連通孔25aを通じてスリーブ25の外側へと導かれるため、ポンプ部20はエアを含んでいない作動油を吸い込むことができる。したがって、ポンプ部20のエアの吸い込みが抑制される。
【0054】
また、ゴム膜15が収縮してスリーブ25に接触しても、連通孔25aによってスリーブ25の内外が連通するため、スリーブ25にゴム膜15が接触することでハウジング11内の作動油が吸込口13へ導かれる流れが阻害される、という事態も防止される。
【0055】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0056】
ポンプユニット100では、タンク10のハウジング11が、ポンプ部20を収容するハウジング11としても機能するため、タンクとポンプとでそれぞれハウジングを有し互いのハウジングを連結させるような従来のポンプユニットと比較して小型化することができる。また、ポンプユニット100では、ポンプ部20の作動によってタンク10内の作動油の容量が変化すると、タンク10のハウジング11に取り付けられたゴム膜15が拡縮する。これにより、エア抜き口等をタンク10に設ける必要がなく、タンク10の向き、ひいては、ポンプユニット100の取付姿勢が制限されない。以上より、ポンプユニット100は、設置スペースが制限されるような設備等に対しても容易に適用できる。
【0057】
また、ポンプユニット100は、ゴム膜15とポンプ部20のシリンダブロック24との間にスリーブ25を備えるため、スリーブ25によってゴム膜15とシリンダブロック24との接触が回避され、回転するシリンダブロック24との接触によるゴム膜15の損傷を防止できる。
【0058】
また、ポンプユニット100では、スリーブ25の内外を連通する連通孔25aが、少なくともスリーブ25の端部に設けられる。また、タンク10内の作動油をポンプ部20に導く吸込口13は、スリーブ25の径方向の内側においてハウジング11の内部区間に開口する。スリーブ25の内側の作動油に含まれるエアは、連通孔25aを通じてスリーブ25の外側に導かれるため、ポンプ部20には、エアが含まれない作動油が吸い込まれる。よって、ポンプユニット100の吸込性能を向上させることができる。
【0059】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0060】
【0061】
上記実施形態では、スリーブ25は、断面形状が円形である。これに対し、スリーブ25の断面形状は、円形に限らず、例えば多角形状など任意の形状とすることができる。
図7及び
図8に示す変形例では、スリーブ125は、断面が四角形状の略角柱に形成される。この場合、連通孔125aは、上記実施形態と同様にスリーブ125の両端部に形成されることに加えて、
図8に示すように、四角形状を構成する側面部126どうしが交差する部分(四角形状の角部に相当する部分)のそれぞれに連通孔125aが形成されることが望ましい。つまり、交差する二つの側面部126にわたって連通孔125aが形成されることが望ましい。
【0062】
交差する二つの側面部126にわたって連通孔125aが形成されることで、スリーブ125の内側のエアは、二つの側面部126のそれぞれをつたって鉛直方向の上方へ案内され連通孔125aを通じてスリーブ125の外側に導かれる。よって、スリーブ125の内側のエアを外側へと導きやすくなるため、ポンプユニット100の吸込性能を向上させることができる。なお、スリーブ125の断面が多角形状である場合、連通孔125aは、二つの側面部126にわたって形成される構成に限定されるものではない。
【0063】
以下、その他の変形例について説明する。
【0064】
ポンプユニット100は、タンク10のハウジング11の外側にハウジング11を囲うアウターケースをさらに備えていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ポンプユニット100は、仕切部としてのスリーブ25を備える。これに対し、仕切部は必須の構成ではなく、ポンプユニット100は、ゴム膜15がポンプ部20のシリンダブロック24に接触するおそれがない場合等には、仕切部を備えていなくてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、弾性部は、ニトリルゴムで形成されるゴム膜15である。これに対し、弾性部の材質は、ニトリルゴムに限定されず、例えばシリコンなど、その他の材質でもよい。また、弾性部は、弾性材料によって形成されるものに限定されず、例えば、蛇腹形状や折り曲げた形状を有することで弾性を発揮する弾性構造によって構成されるものでもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ゴム膜15は、ハウジング11の窓部12を覆うようにハウジング11の内側に設けられる。ゴム膜15とハウジング11との間に形成される空間に窓部12を通じて空気が流出入することで、タンク10内の作動油の容量が変化に伴ってゴム膜15が拡縮する。これに対し、図示は省略するが、ゴム膜15は、ハウジング11の窓部12を覆うようにハウジング11の外側に設けられてもよい。この場合であっても、ハウジング11内の作動油の容量が変化すると、窓部12を通じて作動油がハウジング11の内部とハウジング11とゴム膜15との間の空間との間を流れて、ゴム膜15が拡縮する。このような場合であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。この変形例の場合には、ハウジング11によってゴム膜15とポンプ部20のシリンダブロック24との接触が回避されるため、スリーブ25を設けなくてよい。また、この変形例では、ゴム膜15を保護するために、ハウジング11及びゴム膜15を囲うアウターケースをゴム膜15の拡縮を阻害しないように設けることが望ましい。
【0068】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0069】
ポンプユニット100は、作動油を貯留するタンク10と、モータ5によって回転駆動されて作動油を吸い込み吐出するポンプ部20と、を備え、タンク10は、内外を連通する窓部12を有しポンプ部20を収容するハウジング11と、窓部12を覆うようにハウジング11に取り付けられポンプ部20がタンク10から作動液を吸い込み吐出するのに応じて拡縮するゴム膜15と、を有する。
【0070】
この構成では、タンク10のハウジング11が、ポンプ部20を収容するハウジング11としても機能するため、タンクとポンプとでそれぞれハウジングを有し互いのハウジングを連結させるような従来のポンプユニットと比較して小型化することができる。また、ポンプユニット100では、ポンプ部20の作動によってタンク10内の作動油の容量が変化すると、タンク10のハウジング11に取り付けられたゴム膜15が拡縮する。これにより、作動油の容量変化による内圧の変化を防ぐためのエア抜き口をタンク10に設ける必要がないため、タンク10の向き、ひいては、ポンプユニット100の取付姿勢が制限されない。したがって、ポンプユニット100は、種々の設備等に対して容易に適用できる。
【0071】
また、ポンプユニット100では、ポンプ部20が、モータ5によって回転するシャフト23と共に回転するシリンダブロック24を有し、ハウジング11とシリンダブロック24との間には、ゴム膜15の収縮によるシリンダブロック24とゴム膜15との接触を防止するスリーブ25が設けられる。
【0072】
この構成では、スリーブ25によってシリンダブロック24とゴム膜15との接触が防止されるため、回転するシリンダブロック24との接触によりゴム膜15が損傷することを回避できる。
【0073】
また、ポンプユニット100では、ポンプ部20が、シャフト23の径方向におけるシリンダブロック24とスリーブ25との間においてタンク10のハウジング11の内部に開口する吸込口13を通じてタンク10から作動液を吸い込み、スリーブ25は、ポンプ部20を囲うようにポンプ部20の径方向外側に設けられる筒状に形成され、スリーブ25には、スリーブ25の内外を連通する連通孔25aが形成される。
【0074】
この構成では、シャフト23が鉛直に対して傾斜するような姿勢でポンプユニット100が使用されると、スリーブ25の内側のエアは、連通孔25aを通じてスリーブ25の外側へと導かれる。ポンプ部20は、スリーブ25の内側にある吸込口13を通じてタンク10の作動液を吸い込むように構成される。このため、ポンプ部20のエアの吸い込みが抑制される。
【0075】
また、ポンプユニット100では、連通孔25aが、シャフト23の軸方向におけるスリーブ25の両端部にそれぞれ形成される。
【0076】
この構成では、シャフト23が水平に対して傾斜するような姿勢でポンプユニット100が使用されると、スリーブ25の内側のエアは、スリーブ25の内壁を通じてスリーブ25の端部のいずれかに導かれる。よって、スリーブ25の両端部に連通孔25aが設けられることで、スリーブ25の内側のエアを外側へと導きやすくなる。したがって、ポンプ部20のエアの吸込みをより一層抑制できる。
【0077】
また、変形例に係るポンプユニット100では、スリーブ125は、シャフト23に垂直な断面形状が多角形状に形成され、連通孔125aは、スリーブ125の多角形状を構成する、交差する二つの側面部126にわたって形成される。
【0078】
この構成では、スリーブ125の内側のエアは、スリーブ125の内壁を通じて側面部126の交差部分に導かれる。よって、スリーブ125の交差する二つの側面部126にわたって連通孔25aが設けられることで、スリーブ125の内側のエアを外側へと導きやすくなる。したがって、ポンプ部20のエアの吸込みをより一層抑制できる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0080】
100…ポンプユニット、5…モータ(駆動源)、10…タンク、11…ハウジング、12…窓部、13…吸込口、15…ゴム膜(弾性部)、20…ポンプ部、21…シャフト(駆動軸)、22…シリンダブロック、25,125…スリーブ(仕切部)、25a,125a…連通孔、126…側面部