(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】飛行体を用いた消火方法
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20240828BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20240828BHJP
B64C 19/00 20060101ALI20240828BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240828BHJP
B64D 1/16 20060101ALI20240828BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20240828BHJP
A62C 3/02 20060101ALN20240828BHJP
【FI】
A62C27/00 507
B64C13/18 Z
B64C19/00
B64C39/02
B64D1/16
G08G5/00 A
A62C3/02
(21)【出願番号】P 2021070739
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】阿部 仁一
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 悠平
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141481(JP,A)
【文献】特開2019-83829(JP,A)
【文献】登録実用新案第3224081(JP,U)
【文献】特開2019-51839(JP,A)
【文献】特開2019-185433(JP,A)
【文献】特開2017-142551(JP,A)
【文献】特開2020-108982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0205845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
B64C 13/18
B64C 19/00
B64C 39/02
B64D 1/16
G08G 5/00
A62C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己の位置を認識する機能と自己の位置情報を送信する機能を備え、目標地点の位置情報が与えられると目標地点へ向かって自律飛行可能な1つの第1飛行体と、
消火剤を搭載し、自己の位置を認識する機能と、前記第1飛行体から送信された位置情報を受信する機能と、周囲をセンシングする機能とを備え、受信した位置情報が示す地点へ向かって自律飛行可能な複数の第2飛行体と、が連携して火災を鎮火する飛行体を用いた消火方法であって、
前記第1飛行体へ目標地点の位置情報を付与する準備工程と、
前記目標地点の位置情報を付与された前記第1飛行体が自己の位置情報を送信しながら前記目標地点へ向かって飛行する工程と、
前記複数の第2飛行体が前記第1飛行体から受信した位置情報が示す地点へ向かって、互いに一定以上の距離をおいて飛行する工程と、
前記第1飛行体が前記目標地点に到達した後、前記複数の第2飛行体に対して搭載している消火剤を投下させる投下指令を送信する工程と、
前記複数の第2飛行体が、前記第1飛行体が送信した前記投下指令を受信して搭載している消火剤を投下する工程と、
前記複数の第2飛行体による消火剤の投下の後、前記第1飛行体と前記複数の第2飛行体が発進地点へ帰投する工程と、
を有することを特徴とする飛行体を用いた消火方法。
【請求項2】
前記第1飛行体は、前記目標地点に到達した後、前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令と共に投下位置情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の飛行体を用いた消火方法。
【請求項3】
前記第1飛行体は、前記目標地点に到達した際に、次第に半径が小さくなるように旋回飛行を行い、旋回軌跡円の中心の近傍にて前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令を送信することを特徴とする請求項1に記載の飛行体を用いた消火方法。
【請求項4】
前記第1飛行体は、消火剤を搭載して飛行可能であり、前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令を送信すると同時に自己に搭載されている消火剤を投下することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の飛行体を用いた消火方法。
【請求項5】
前記第1飛行体は、リモートコントロール機能を備えており、前記目標地点に到達した際に、所定のコントローラから消火剤の投下の指示を受けると、前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令を送信することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の飛行体を用いた消火方法。
【請求項6】
前記第1飛行体が故障した場合に、前記複数の第2飛行体のいずれか1つが前記目標地点の位置情報を取得して前記第1飛行体として自己の位置情報を送信しながら前記目標地点へ向かって飛行することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の飛行体を用いた消火方法。
【請求項7】
火災発見とその発生位置の連絡を受けて、前記発生位置を、火災状況検知装置を搭載し自己の位置を認識する機能と自己の位置情報を送信する機能を備え目標地点の位置情報が与えられると目標地点へ向かって自律飛行可能な第3飛行体へ、前記目標地点の位置情報として送信して飛行させる工程と、
前記第3飛行体が前記目標地点に到達した際に、前記火災状況検知装置により検知した火源の位置情報を送信する工程と、
をさらに備え、前記準備工程においては前記第3飛行体が送信した前記火源の位置情報を、目標地点の位置情報として前記第1飛行体へ付与することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の飛行体を用いた消火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飛行体を用いた消火方法に関し、特に森林火災など消防車両や消防士の近づけない火災を複数の飛行体を用いて鎮火させるのに有効な消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、森林火災(山火事)などに対しては飛行機やヘリコプターなどの飛行体を用いて空から水や消火剤を投下する消火活動が実施されているが、火災規模が大きい場合には飛行体の数が足りず効果が限定的であるとともに、低空飛行するヘリコプターの場合、プロペラが巻き起こす旋風によって火災を広げるおそれがあるため、火源に近づくことができず充分な消火が行えないことがあった。また、飛行機の場合、飛行速度が速いため正確な位置に消火剤を投下するのが困難であり効率が悪いという課題がある。
また、従来、森林火災などの消火に適用して有効な発明として、例えば特許文献1や2に記載されているように、マルチコプターを用いて消火を行うようにした技術がある。なお、本明細書においては、ヘリコプター型、マルチコプター型、固定翼型を含むすべての自律飛行体をドローンと称する。
【0003】
上記先行発明のうち、特許文献1に記載されている発明は、ドローンに多数の消火弾を搭載した消火弾投下モジュールを設けるようにしたものである。また、特許文献2に記載されている発明は、消火剤を収納した容器をワイヤーで飛行体により吊り下げて火災現場に移送し投下するようにしたものである。
また、これらの発明以外にも、ドローンの下部に放水ノズルを有するキャリアユニットを装着し、地上に待機している送水ポンプ車と放水ノズルとの間をホースで接続して、連続して放水できるようにしたものもある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-185433号公報
【文献】特開2017-142551号公報
【文献】特開2020-108982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載されている発明によれば、ある程度連続して放水することができるため火災が大規模である場合にも有効であるものの、放水ノズルの照準を火源に合わせる高度な制御機構が必要であるとともに、キャリアユニットの重量の他にホースの重量も支える必要があるため、ドローンが大型化するとともに送水ポンプ車が近づけない山地での火災には使用できないという課題がある。
また、特許文献1や2に記載されている発明も、一度に投下できる消火剤の量を多くしようとするとドローンが大型化し高価になるという課題がある。
【0006】
そこで、ドローンを小型で安価なもので構成し、比較的少量の消火弾や消火剤を収納した容器を搭載した多数のドローンを火災現場へ飛行させて消火することが考えられる。しかし、多数のドローンを同時に飛行させるとドローン同士が衝突するおそれがあるという課題が生じる。
本発明は上記のような背景の下になされたもので、その目的とするところは、火災が消防士の近づけないような大規模火災である場合や森林等の消防車両の近づけない場所で火災が発生している場合に、速やかに鎮火させることができる飛行体を用いた消火方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、大型で高価な飛行体を使用せずに火災を鎮火させることができる飛行体を用いた消火方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本出願に係る発明は、
自己の位置を認識する機能と自己の位置情報を送信する機能を備え、目標地点の位置情報が与えられると目標地点へ向かって自律飛行可能な1つの第1飛行体と、
消火剤を搭載し、自己の位置を認識する機能と、前記第1飛行体から送信された位置情報を受信する機能と、周囲をセンシングする機能とを備え、受信した位置情報が示す地点へ向かって自律飛行可能な複数の第2飛行体と、が連携して火災を鎮火する飛行体を用いた消火方法において、
前記第1飛行体へ目標地点の位置情報を付与する準備工程と、
前記目標地点の位置情報を付与された前記第1飛行体が自己の位置情報を送信しながら前記目標地点へ向かって飛行する工程と、
前記複数の第2飛行体が前記第1飛行体から受信した位置情報が示す地点へ向かって、互いに一定以上の距離をおいて飛行する工程と、
前記第1飛行体が前記目標地点に到達した後、前記複数の第2飛行体に対して搭載している消火剤を投下させる投下指令を送信する工程と、
前記複数の第2飛行体が、前記第1飛行体が送信した前記投下指令を受信して搭載している消火剤を投下する工程と、
前記複数の第2飛行体による消火剤の投下の後、前記第1飛行体と前記複数の第2飛行体が発進地点へ帰投する工程と、を有するようにしたものである。
【0008】
上記のような方法によれば、複数の第2飛行体(子機ドローン)が目標地点で一斉に消火剤の投下するため、火災が消防士の近づけないような大規模火災である場合や森林等の消防車両の近づけない場所で火災が発生している場合に、速やかに鎮火させることができる。また、消火剤を搭載した1つ1つの飛行体として小型のものを使用したとしても、数多くの飛行体を火災現場へ飛行させて消火剤を投下させることで火災を鎮火させることができるため、大型で高価な飛行体を使用せずに火災を鎮火させることができる。
【0009】
また、消火剤を搭載した第2飛行体(子機ドローン)は、目標地点へ向かって飛行する第1飛行体(親機ドローン)を追跡するようにして飛行するため、発進直前あるいは発進後に目標地点を変更したいような場合、第1飛行体(親機ドローン)へのみ変更後の目標地点の位置情報を送信すればよいため、目標地点の変更を容易に行うことができる。さらに、各飛行体が周囲をセンシングする機能を備えるため、複数の飛行体が集団で飛行しても互いに衝突するのを回避することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記第1飛行体は、前記目標地点に到達した後、前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令と共に投下位置情報を送信するようにする。
かかる方法によれば、第1飛行体(親機ドローン)が後続の複数の第2飛行体(子機ドローン)に消火剤の投下指令と投下位置情報を送信することで、1か所に集中的に消火剤を投下することができる。そのため、1つのドローンで鎮火する場合に比べて速やかに火災を鎮火させることができる。
【0011】
あるいは、前記第1飛行体は、前記目標地点に到達した際に、次第に半径が小さくなるように旋回飛行を行い、旋回軌跡円の中心の近傍にて前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令を送信するようにする。
かかる方法によれば、複数の第2飛行体(子機ドローン)が広い範囲に亘って分散した状態で一斉に消火剤を投下させることができるため、火災範囲が広い場合にも速やかに火災を鎮火させることができる。また、第1飛行体(親機ドローン)が火災規模に応じて旋回半径を決定することによって、火災規模に応じた消火を行うことができる。
【0012】
また、望ましくは、前記第1飛行体は、消火剤を搭載して飛行可能であり、前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令を送信すると同時に自己に搭載されている消火剤を投下するようにする。
かかる方法によれば、第1飛行体も消火剤を搭載して火災現場へ飛行し消火剤を投下するため、消火効率が向上するとともに、第1飛行体と第2飛行体の基体の共通化が可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0013】
また、望ましくは、前記第1飛行体は、リモートコントロール機能を備えており、前記目標地点に到達した際に、所定のコントローラから消火剤の投下の指示を受けると、前記複数の第2飛行体に対して消火剤の投下指令を送信するようにする。
かかる方法によれば、火災現場にいる管理者等からの指示によって複数の第2飛行体から消火剤を投下させることができ、例えば火災範囲が広いような場合に、建物や施設など優先度の高い箇所に対して消火剤を投下させることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記第1飛行体が故障した場合に、前記複数の第2飛行体のいずれか1つが前記目標地点の位置情報を取得して前記第1飛行体として自己の位置情報を送信しながら前記目標地点へ向かって飛行するようにする。
かかる方法によれば、第1飛行体が故障したとしても消火剤を搭載した複数の第2飛行体を目標地点へ向かってそのまま飛行を続けさせ、火災現場で消火剤を投下させることができる。
【0015】
また、望ましくは、火災発見とその発生位置の連絡を受けて、前記発生位置を、火災状況検知装置を搭載し自己の位置を認識する機能と自己の位置情報を送信する機能を備え目標地点の位置情報が与えられると目標地点へ向かって自律飛行可能な第3飛行体へ、前記目標地点の位置情報として送信して発進させる工程と、
前記第3飛行体が前記目標地点に到達した際に、前記火災状況検知装置により検知した火源の位置情報を送信する工程と、
をさらに備え、前記準備工程においては前記第3飛行体が送信した前記火源の位置情報を、目標地点の位置情報として前記第1飛行体へ付与して発進させるようにする。
【0016】
上記のような方法によれば、火災発生位置に関する正確な情報がない場合においても、第3飛行体を偵察機として飛行させ、偵察機により火災発生現場の正確な位置情報を取得して消火部隊である第1飛行体と第2飛行体を火災発生現場へ向かって飛行させて、消火剤を投下させて火災を鎮火させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の飛行体を用いた消火方法によれば、火災が消防士の近づけないような大規模火災である場合や森林等の消防車両の近づけない場所で火災が発生している場合に、速やかに鎮火させることができる。また、消火剤を搭載した1つ1つの飛行体として小型のものを使用したとしても、数多くの飛行体を火災現場へ飛行させて消火剤を投下させることで火災を鎮火させることができるため、大型で高価な飛行体を使用せずに火災を鎮火させることができる。また、第2飛行体の機数を変化させることにより、火災の規模に応じた消火能力の調整が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る飛行体を用いた消火方法の実施形態を示す概念図である。
【
図2】(A)~(C)は実施形態の消火方法における親機と子機の動作を順番に示す図である。
【
図3】(A),(B),(C)は実施形態の消火方法に用いる親機と子機と偵察機のそれぞれの構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態の消火方法の第1の具体例の手順を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態の消火方法の第2の具体例の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係る飛行体を用いた消火方法の実施形態の概念図が示されている。本実施形態の消火方法は、それぞれが消火剤を搭載している多数のドローンを地上基地11またはトラックや飛行機などの移動基地12に配備しておいて、火災が発生した場合に多数のドローンが火災現場へ集団で飛行して火源の上方にて消火剤を投下するようにしたものである。
【0020】
なお、各ドローンはジャイロスコープとGPS受信装置を搭載しており、GPS情報に基づいて自立飛行できるように構成される。消火剤の搭載方法は特に限定されるものでないが、例えば特許文献1に記載されているように、落下時の衝突で破壊する小型容器に消火剤を充填して消火弾として構成したものを複数搭載することが考えられる。また、ドローンを構成する機体は、故障で落下した際に燃えて火災を助長することがないように、軽量で強度が高く不燃性もしくは難燃性または自己消火性を有する素材で形成されるのが望ましい。さらに、樹脂の場合には生分解性を有するものであればなお良い。
【0021】
また、複数のドローンを集団飛行させる際には、いずれか1のドローンを親機21とし、残りのドローンを子機22として設定し、
図2(A)に示すように、親機21を最初に火災現場へ向けて飛行させ、子機22は
図2(B)に示すように、親機21を追跡して飛行し、親機21からの投下指令によって消火弾を投下する。親機21は飛行中に子機22に対して、自身の位置情報と飛行速度情報、飛行方向情報を短い周期で繰り返し送信する。また、これらの情報は時刻情報と関連付けて送信される。これらの情報を受信することで、子機22は、親機の飛行経路Rに沿って追跡飛行することができる。親機21が子機22へ投下指令を送信する際に、自身が実行した投下位置の情報を合わせて送信するようにしても良い。
【0022】
なお、親機21が投下を実行する位置は、飛行の目標地点でも良いが、親機にサーモカメラを搭載し、温度の高い箇所を検知して飛行目標地点とは別に投下位置を決定するようにしても良い。さらに、各ドローンは、レーザスキャナのようなセンサ(測域センサ)を備え、周囲をセンシングして他のドローンや木々等の障害物から一定距離以上離れるように飛行する機能を持たせる。これにより、ドローン同士の衝突を回避することができる。測域センサの代わりに近接センサを用いても良い。また、センサは、上下、左右および前後の3方向すべてを高精度にセンシングできるように複数搭載しても良い。
【0023】
親機21の飛行目標である火災現場の位置情報は、監視衛星23または偵察ドローン24から送信され、親機21は受信した位置情報に基づいて飛行する。あるいは、監視衛星23または偵察ドローン24からの画像を受信した地上基地等にある指令室の端末の表示装置に表示された画像を見て管理者が飛行目標地点を決定し、目標地点の位置情報を指令端末から親機21へ送信して火災現場へ向けて飛行させるようにしても良い。
また、飛行経路は親機21自身が地図情報に基づいて決定しても良いが、指令室において飛行目標地点と飛行経路も決定して、指令端末から親機21へ送信するようにしてもよい。なお、火災現場で消火弾を投下した親機21は、発進した基地へ帰投し、子機22は
図2(C)に示すように親機21を追跡しながら帰投する。そして、一回の消火飛行で火災が鎮火しなかった場合には、再度ドローンに消火弾を搭載して上記動作を繰り返す。
【0024】
さらに、望ましい形態として、火災現場に到達した親機21は、火災範囲の外側から旋回を始めて、徐々に半径が小さくなるように飛行し、投下地点の中心付近に達したときに、自身が保有する消火弾を投下するとともに、後続のすべての子機22に対して消火弾の投下指令を同時に送信する。このとき、子機22の群は互いに一定以上の距離をおいて親機21を追跡しながら飛行しているので、親機21が旋回すると追いかけている子機22の群も旋回することとなる。
【0025】
そのため、親機21が投下地点の中心付近に達したとき、子機22の群は投下地点の中心から異なる半径に分散するとともに旋回方向にも分散しているので、親機21からの指令で一斉に消火弾を投下すると、親機21の投下地点を中心とする大きな円の内側の広い範囲にわたってほぼ均等に消火弾を投下することができる。
また、子機22は、目標地点へ向かって飛行する親機21を追跡するようにして飛行するため、発進直前あるいは発進後に目標地点を変更したいような場合にも、親機21へのみ変更後の目標地点の位置情報を送信すればよいため、目標地点の変更を容易に行うことができる。
【0026】
図3(A)~(C)には、各ドローンの制御システムの構成例を表わしたブロック図が示されている。このうち、(A)は親機21の構成、(B)は子機22の構成、(C)は偵察機(24)の構成を示す。
親機21は、
図3(A)に示すように、自身の姿勢や向きを検知するジャイロスコープ(慣性計測手段)31、回転ブレード及びロータからなる飛行装置32、周囲をセンシングする測域センサ33、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信装置34、映像を撮影する撮像装置(映像カメラ)35、指令室の端末または偵察機との間の無線通信を行う無線通信装置36、子機に対して自機の位置や飛行速度等の情報を発信する自機情報発信装置37を備える。撮像装置35で撮影した画像は無線通信装置36により送信することができる。
【0027】
また、親機21は、測域センサ33やGPS受信装置34、撮像装置35からの信号に基づいて飛行装置32を制御したり偵察機通信装置36および自機情報発信装置37による通信を実行したりする制御装置38、上記各デバイスに対する電源を供給する電源装置(バッテリー)39を備える。制御装置38は、CPUとCPUが実行するプログラムや固定データを不揮発的に記憶したROM、データを一時的に記憶可能なRAMなどからなる一般的なマイクロコンピュータを使用して構成することができる。
さらに、上記デバイス31~39の他、消火弾を投下させる消火弾投下装置(電磁ソレノイド等)41やサーモカメラのような火災状況検知装置42を備えるようにしても良い。
【0028】
子機22は、
図3(B)に示すように、ジャイロスコープ(慣性計測手段)31、飛行装置32、測域センサ33、GPS受信装置34、撮像装置(映像カメラ)35、制御装置38、電源装置(バッテリー)39、消火弾投下装置(電磁ソレノイド等)41、親機情報受信装置43を備えている。
さらに、偵察機(24)は、
図3(C)に示すように、ジャイロスコープ(慣性計測手段)31、飛行装置32、測域センサ33、GPS受信装置34、撮像装置(映像カメラ)35、無線通信装置36、自機情報発信装置37、制御装置38、電源装置(バッテリー)39、火災状況検知装置(サーモカメラ)42を備えている。
【0029】
次に、
図4~
図5のフローチャートを用いて、上記実施形態の消火方法を適用した具体例について説明する。
(具体例1)
第1の具体例では、
図4に示すように、先ず、監視衛星からの画像等により火災が発見されると、指令室の端末から地上基地に待機している親機となるドローンに対して火災現場の位置情報と共に発進指令が送信される(ステップS1)。親機は、発進指令を受信すると、GPS情報に基づいて自身の位置を算出し地図情報を参照して火災現場の位置情報と比較して飛行方向を決定し、自己位置や飛行方向もしくは飛行経路の情報の子機への送信を開始する(ステップS2)。なお、発進時点でドローンには消火弾が搭載されている。
【0030】
次に、親機からの情報を受信した複数の子機ドローンも基地より発進し、GPS情報に基づいて自身の位置を算出し親機からの位置情報または飛行方向もしくは飛行経路の情報に基づいて自身の飛行方向を決定し、飛行を開始するとともに周囲の障害物を検知するセンシングを開始する(ステップS3)。なお、子機が発信する際には、衝突を回避するため予めソフトウェア等で設定された順番(タイマ時間)に従って数秒おきに発進を開始するようにしても良い。
【0031】
その後、親機が火災現場に到着すると、カメラの映像に基づいて消火弾の投下位置を決定し、決定した位置に移動して消火弾を投下するとともに投下位置情報と投下指令を子機へ送信する(ステップS4)。
この際、親機は、全部の子機が火災現場に到着するまで火災現場の上空にとどまり、消火弾の投下位置情報を子機へ送信し続け、全部の子機が火災現場に到着した時点で消火弾を自ら投下を実行するとともに投下指令を子機へ送信するようにしても良い。
【0032】
また、ステップS4において、親機は、火災現場に到着すると、カメラの映像に基づいて火災の範囲を認識し、消火弾の投下中心点を決定して火災の範囲の外側から旋回を開始し、次第に半径が小さくなるように旋回飛行して中心点に達した時点で、自ら消火弾を投下すると同時に全部の子機に対して消火弾の投下指令を送信するようにしても良い。すると、子機22の群は、互いに一定以上の距離をおいて飛行しているため、投下地点の中心から異なる半径に分散するとともに旋回方向にも分散しているので、親機21からの指令で一斉に消火弾を投下すると、投下地点を中心とする大きな円の内側の広い範囲にわたってほぼ均等に消火弾を投下することができる。
【0033】
その後、親機は自身の位置情報および飛行方向もしくは飛行経路の情報を送信しながら発進した基地へ帰投し、情報を受信した子機群も親機に追従して帰投する(ステップS5)。なお、ステップS5においては、親機は、火災の状態を確認し、鎮火していない場合には火災現場の上空にとどまり、子機に対して帰投指令を送信し、子機群のみを帰投させるようにしても良い。子機は、目標地点までの飛行経路の情報を記憶しておくことで、親機がいなくても帰投することができる。
【0034】
そして、子機は、基地に帰投するとエネルギー(電力または燃料)が補給され消火弾が搭載された後、前回飛行時の経路の情報に基づいて再び火災現場へ飛行し火災現場で親機からの指令によって消火弾を投下する。一方、親機は、火災現場の上空にとどまった場合は、火災の鎮火を確認したときまたはエネルギーの残量が帰投に必要なエネルギー量を考慮した計算値に達したと判定したときに基地へ帰投する。そして、基地に帰投した際にまだ火災が鎮火していない場合には、エネルギーが補給、消火弾が搭載された後、再び火災現場へ向かって飛行することを繰り返す(ステップS5→S1orS2)。
【0035】
(具体例2)
第2の具体例は、例えば監視衛星からの画像により火災の発生を発見できない状況において、火災発見の電話通報があったような場合の手順であり、
図5にそのフローチャートが示されている。
この具体例では、先ず、指令室の端末から地上基地に待機している偵察機となるドローンに対して火災発生地点のおおよその位置情報と共に発進指令が送信される(ステップS11)。偵察機は発進指令を受信すると、GPS情報に基づいて自身の位置を算出し火災発生地点の位置情報と比較して飛行方向を決定し、飛行を開始する(ステップS12)。
【0036】
次に、偵察機は、火災発生地点の上空に到達すると、サーモカメラ等の画像により火災現場の位置を確認し、基地に待機している親機に対して火災現場の位置情報と共に発信指令を送信する(ステップS13)。なお、ステップS13においては、偵察機に搭載されたサーモカメラの画像等を地上の指令室の端末へ送信し、端末の表示装置に表示された画像を見て管理者が親機に対して指令端末から火災現場の位置情報と共に発信指令を送信するようにしても良い。ステップS13の後、ステップS14へ進んで、ステップS14~S17を実行する。なお、ステップS14~S17は、
図4のフローチャートにおけるステップS2~S5と同じであるので、説明を省略する。
【0037】
(具体例3)
第3の具体例は、上記第1の具体例と第2の具体例の親機および子機が火災現場に到着して、親機が子機へ消火弾の投下指令を送信する場面(ステップS4)において、火災現場に待機していたドローン管理者等がコントローラを操作することで消火弾を搭載する指令を送信するようにしたものである。なお、この具体例は、親機が自律飛行可能な機能の他、リモートコントロール機能を備えていることが前提となる。
【0038】
この具体例では、親機は自機に搭載されている撮像装置で撮影した画像を送信し、ドローン管理者はコントローラに設けられている表示装置に表示された画像により火源の位置を確認して消火弾を投下する位置を決定し、コントローラを操作して親機に対して投下指令の送信を指示することができる。そして、このような機能を持たせることにより、例えば火災範囲が広いような場合に、建物や施設など優先度の高い箇所に対して消火剤を投下させることができる。
【0039】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、複数のドローンを集団飛行させる際に、いずれか1のドローンを親機とし、他のドローンを子機として設定すると説明したが、親機が故障して子機に対して情報を送信できなくなった場合には、複数の子機の中からいずれか一つ(例えば予め設定器あるいはソフトウェアで設定された子機)を親機に昇格させて、飛行および消火活動を継続するように構成しても良い。なお、これを実現するためには、
図3(B)の子機22のシステム構成において、例えば他の子機(ドローン)との通信を行うドローン間通信装置を追加する。
【0040】
さらに、前記実施形態では、ドローンに複数の消火弾を搭載すると説明したが、消火弾の代わりに消火剤もしくは水を収納した容器を搭載して飛行させるようにしても良い。
また、以上の説明では、本発明を、消火弾を投下する飛行体としてマルチロータのドローンを使用した場合を例にとって説明したが、本発明はシングルロータのドローンもしくはヘリコプター、固定翼機などの飛行体を使用する場合にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
11 地上基地
12 移動基地
21 親機ドローン
22 子機ドローン
23 監視衛星
24 偵察機ドローン
31 ジャイロスコープ(姿勢制御、慣性計測手段)
32 飛行装置
33 測域センサ
34 GPS受信装置
35 撮像装置(映像カメラ)
36 無線通信装置
37 自機情報発信装置
38 制御装置
39 電源装置(バッテリー)
41 消火弾投下装置(電磁ソレノイド等)
42 火災状況検知装置(サーモカメラ)