(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ゴム輪
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240828BHJP
F16L 21/02 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16L21/02 F
F16J15/10 N
F16J15/10 P
(21)【出願番号】P 2021082467
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
(72)【発明者】
【氏名】中島 修一
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-130226(JP,A)
【文献】特開2002-089713(JP,A)
【文献】特開2020-060199(JP,A)
【文献】特開2002-022015(JP,A)
【文献】特開2000-297889(JP,A)
【文献】特開平04-224387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0277879(US,A1)
【文献】米国特許第05114162(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の受口の内周面に形成されるゴム輪溝に装着され、前記受口の内周面と前記受口に挿入される接続管の差口の外周面との間の隙間を封止するゴム輪であって、
前記ゴム輪溝に装着される本体部と、
前記接続管の挿入方向に沿って傾斜するリップ部とを備えており、
前記本体部に、中空部が形成されており、
前記リップ部の根元部が、前記本体部の前記中空部に対応する位置に設けられており、
前記中空部における前記リップ部側の面に、凹形状の溝部が設けられていること、を特徴とす
るゴム輪。
【請求項2】
前記リップ部の前記根元部が、前記凹形状の溝部に対応する位置に設けられている、ことを特徴とする請求項
1に記載のゴム輪。
【請求項3】
管の受口の内周面に形成されるゴム輪溝に装着され、前記受口の内周面と前記受口に挿入される接続管の差口の外周面との間の隙間を封止するゴム輪であって、
前記ゴム輪溝に装着される本体部と、
前記接続管の挿入方向に沿って傾斜するリップ部とを備えており、
前記本体部に、中空部が形成されており、
前記リップ部の根元部が、前記本体部の前記中空部に対応する位置に設けられており、
前記本体部における前記ゴム輪溝に接する面が、部分的に分離している、ことを特徴とす
るゴム輪。
【請求項4】
管の受口の内周面に形成されるゴム輪溝に装着され、前記受口の内周面と前記受口に挿入される接続管の差口の外周面との間の隙間を封止するゴム輪であって、
前記ゴム輪溝に装着される本体部と、
前記接続管の挿入方向に沿って傾斜するリップ部とを備えており、
前記本体部に、中空部が形成されており、
前記リップ部の根元部が、前記本体部の前記中空部に対応する位置に設けられており、 前記リップ部における前記本体部とは反対側に位置する先端部が、分岐している、ことを特徴とす
るゴム輪。
【請求項5】
前記リップ部における前記先端部は、第一先端部、及び第二先端部に分岐しており、
前記第一先端部が、前記接続管の挿入方向に対して交差する方向に沿って延びるように設けられており、
前記第二先端部が、前記接続管の挿入方向に沿って延びるように設けられている、ことを特徴とする請求項
4に記載のゴム輪。
【請求項6】
管の受口の内周面に形成されるゴム輪溝に装着され、前記受口の内周面と前記受口に挿入される接続管の差口の外周面との間の隙間を封止するゴム輪であって、
前記ゴム輪溝に装着される本体部と、
前記接続管の挿入方向に沿って傾斜するリップ部とを備えており、
前記本体部に、中空部が形成されており、
前記リップ部の根元部が、前記本体部の前記中空部に対応する位置に設けられており、
前記リップ部における前記接続管と接触しない側の面に、圧着補強部が設けられている、ことを特徴とす
るゴム輪。
【請求項7】
前記圧着補強部は、前記リップ部に対して径方向外側から内側に向かう方向に弾性力を付与する弾性部材である、ことを特徴とする請求項
6に記載のゴム輪。
【請求項8】
前記受口に対する前記接続管の挿入方向手前側に前記リップ部の前記根元部が位置し、前記接続管の前記挿入方向奥側に前記リップ部の先端側が向くように取り付けられるものであり、
前記リップ部は、前記根元部を起点として先端側に向けて前記受口の径方向内側に突出するように傾斜するとともに、前記受口に挿入された前記接続管との接触に伴い、前記根元部を起点として前記受口の径方向外側に揺動可能とされており、
前記リップ部が前記受口の径方向外側に揺動した状態において、前記圧着補強部が、前記リップ部と前記受口の内周面との間をシールすること、を特徴とする請求項
6又は
7に記載のゴム輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム輪に関し、特に、管の接合部において受口の内周面と差口の外周面との隙間を封止するゴム輪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管の接合部において受口の内周面と差口の外周面との隙間を封止するゴム輪が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、管の端部に形成された受口の内周面と、受口に挿入された接続管の端部に形成された差口の外周面との隙間を封止するゴム輪が開示されている。上記特許文献1においては、受口(管)の内周面にゴム輪溝が形成されており、このゴム輪溝にゴム輪が装着されて差口(接続管)が接続(挿入)されている。
【0004】
また、上記特許文献1に開示されたゴム輪は、本体部と、本体部から径方向内側に向けて延びるリップ部とを備えている。また、上記のゴム輪は、本体部の外周面には環状溝が形成されており、環状溝はリップ部の基端部分の挿入方向奥側の端縁よりも挿入方向手前側に形成されている。また、上記のゴム輪では、環状溝における挿入方向奥側の端縁から本体における挿入方向奥側の端縁までの長さが、環状溝における挿入方向手前側の端縁から本体における挿入方向手前側の端縁までの長さよりも大きいことによって、差口を受口に挿入する際の挿入抵抗が低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、受口の内周面と差口の外周面との隙間を封止するゴム輪については、水等の液体や気体に対するシール性、特に止水性を確保しつつ、差口(接続管)の挿入力を低減するという相反する対策が必要である。すなわち、シール性の確保を優先すると差口の挿入抵抗が増加する一方で、差口の挿入抵抗の低減を優先するとシール性が低下するという関係になる。これらの点において、上記特許文献1では、差口(接続管)の挿入抵抗を低減する対策が取られているが、シール性を確保するために挿入抵抗が生じるという問題点があるため、さらなる挿入抵抗の低減が望まれている。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消すべくなされたものであって、接続管の挿入抵抗を低減しつつ、接続後のシール性を確保することが可能なゴム輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、次のように構成されている。
【0009】
(1)本発明によるゴム輪は、管の受口の内周面に形成されるゴム輪溝に装着され、前記受口の内周面と前記受口に挿入される接続管の差口の外周面との間の隙間を封止するゴム輪であって、前記ゴム輪溝に装着される本体部と、前記接続管の挿入方向に沿って傾斜するリップ部とを備えており、前記本体部に、中空部が形成されており、前記リップ部の根元部が、前記本体部の前記中空部に対応する位置に設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、菅の受口に接続管の差口を接続(挿入)する際に、差口がリップ部に接触することによりリップ部が挿入方向奥側に圧縮されることに伴って、リップ部の根元部が中空部を押しつぶす(押圧する)ように径方向外側に広がる。すなわち、リップ部が挿入方向奥側及び径方向外側の両方に広がる(移動する)ため、接続管の挿入抵抗を低減することができる。また、上記構成によれば、差口がリップ部に接触することにより、リップ部の根元部を起点として受口の径方向外側に揺動することによって、受口と差口との間の隙間がシールされるため、接続後のシール性を確保することができる。これらの結果、上記構成によれば、接続管の挿入抵抗を低減しつつ、接続後のシール性を確保することができる。
【0011】
(2)本発明によるゴム輪において、好ましくは、前記中空部における前記リップ部側の面に、凹形状の溝部が設けられているとよい。このように構成すれば、凹形状の溝部における挿入方向手前側の端縁が中空部(径方向外側)に向かって折れ曲がり易くなる。このため、差口の挿入時に差口がリップ部に接触した際に、リップ部の根元部が中空部を径方向外側に向かって押しつぶし易くなる。その結果、リップ部に対する接続管の挿入抵抗をより低減することができる。
【0012】
(3)本発明によるゴム輪において、好ましくは、前記リップ部の前記根元部が、前記凹形状の溝部に対応する位置に設けられているとよい。このように構成すれば、中空部における凹形状の溝部に対応する位置が他の部分と比べて薄肉に形成されているため、リップ部の根元部が中空部を径方向外側に向かって押しつぶし易くなる。その結果、接続管の挿入抵抗をより効果的に低減することができる。
【0013】
(4)本発明によるゴム輪において、好ましくは、前記本体部における前記ゴム輪溝に接する面が、部分的に分離しているとよい。このように構成すれば、本体部におけるゴム輪溝に接する面に隙間が形成されるため、差口の挿入時に、本体部におけるゴム輪溝に接する面が変形し易くなる。その結果、接続管の挿入抵抗を低減することができる。
【0014】
(5)本発明によるゴム輪において、好ましくは、前記リップ部における前記本体部とは反対側に位置する先端部が、分岐しているとよい。このように構成すれば、分岐したリップ部の先端部と差口とが複数の位置で接触するため、分岐したリップ部により差口に対する圧着力を増大させることができる。その結果、シール性を向上させることができる。
【0015】
(6)この場合において、好ましくは、前記リップ部における前記先端部は、第一先端部、及び第二先端部に分岐しており、前記第一先端部が、前記接続管の挿入方向に対して交差する方向に沿って延びるように設けられており、前記第二先端部が、前記接続管の挿入方向に沿って延びるように設けられているとよい。このように構成すれば、受口に対する差口の挿入時に、差口の外周面が第一先端部に接触することにより第一先端部が第二先端部側に揺動するとともに、第二先端部が受口の内周面側に揺動することにより第二先端部が受口の内周面に接触する。このため、第一先端部及び第二先端部によって、受口と差口との間をシールすることができるとともに、差口に対する圧着力を増大させることができる。その結果、シール性を向上させることができる。
【0016】
(7)本発明によるゴム輪において、好ましくは、前記リップ部における前記接続管と接触しない側の面に、圧着補強部が設けられているとよい。このように構成すれば、差口を受口に挿入する際に、リップ部が受口の径方向外側に揺動した状態において、圧着補強部によってリップ部における差口に対する圧着力を補強できる。その結果、シール性を向上させることができる。
【0017】
(8)この場合において、好ましくは、前記圧着補強部は、前記リップ部に対して径方向外側から内側に向かう方向に弾性力を付与する弾性部材であるとよい。このように構成すれば、弾性部材がリップ部に対して径方向外側から内側に向かう方向に弾性力を付与するため、リップ部を差口の外周面に対して密着させることができる。その結果、リップ部による差口に対する圧着力が増大するため、シール性を向上させることができる。
【0018】
(9)上記圧着補強部が設けられる構成において、好ましくは、前記受口に対する前記接続管の挿入方向手前側に前記リップ部の前記根元部が位置し、前記接続管の前記挿入方向奥側に前記リップ部の先端側が向くように取り付けられるものであり、前記リップ部は、前記根元部を起点として先端側に向けて前記受口の径方向内側に突出するように傾斜するとともに、前記受口に挿入された前記接続管との接触に伴い、前記根元部を起点として前記受口の径方向外側に揺動可能とされており、前記リップ部が前記受口の径方向外側に揺動した状態において、前記圧着補強部が、前記リップ部と前記受口の内周面との間をシールするとよい。このように構成すれば、リップ部と受口の内周面との間のシール性を向上できるとともに、受口と差口との間のシール性も向上できる。
【0019】
(10)上記圧着補強部が設けられる構成において、好ましくは、前記弾性部材は、ゴム材料により製造されたOリングであるとよい。このように構成すれば、ゴム材料により製造されたOリングを用いることによって、容易に、リップ部に対して径方向外側から内側に向かう方向に弾性力を付与できる。このため、リップ部を差口の外周面に対して密着させることができる。その結果、リップ部による差口に対する圧着力が増大するため、シール性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る態様によれば、接続管の挿入抵抗を低減しつつ、接続後のシール性を確保することができるゴム輪を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゴム輪を軸線方向から見た図である。
【
図4】管(受口)に接続管(差口)を挿入した状態を示す図である。
【
図5】管(受口)への接続管(差口)の挿入時にゴム輪が圧縮した状態を示す図である。
【
図6】管(受口)に対して接続管(差口)が偏芯した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るゴム輪を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。
【0023】
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態におけるゴム輪10について説明する。
【0024】
図1~
図6に示すように、本実施形態によるゴム輪10は、管100と、管100に挿入(接続)される接続管200との間の隙間を封止するものである。具体的には、管100の端部に形成された受口101の内周面102と、受口101に挿入(接続)された接続管200の端部に形成された差口201の外周面202との隙間を封止するものである。
【0025】
図4~
図6に示すように、受口101の内周面102にはゴム輪溝103が形成されており、ゴム輪溝103にゴム輪10が装着されて使用される。なお、ゴム輪10を用いて接続される管の材質、用途、及び口径等は、特に限定されない。
【0026】
(ゴム輪)
図1~
図3に示すように、ゴム輪10は、本体部20と、リップ部30と、圧着補強部40とを備えている。ゴム輪10は、主にSBR(スチレンブタジエンゴム)や、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等のゴム材料や弾性を有する材料等を用い、射出成形すること等によって製造されるが、材料については特に限定されない。
【0027】
(本体部)
本体部20は、ゴム輪溝103内に装着される部分である。本体部20は、円環状に形成されている。本体部20の外径は、ゴム輪溝103の内径とほぼ同じ大きさである。本体部20の幅(軸線方向の長さ)は、ゴム輪溝103の幅とほぼ同じ大きさである。また、本体部20の内径は、接続管200の差口201の外径よりやや大きい。
【0028】
図3に示すように、本体部20は、内周部21と、第一傾斜部22と、第一外周部23と、第一突起部24と、第二傾斜部25と、第二外周部26と、第二突起部27とを備えている。ここで、本実施形態では、本体部20には、中空部28が形成されている。この中空部28は、内周部21と、第一傾斜部22と、第一外周部23と、第二傾斜部25と、第二外周部26とにより囲まれた部分に形成されている。また、中空部28は、断面視において、ほぼC字形状に形成されている。また、本体部20は、後述する内周部21の溝部21aに対して、軸線方向において線対称形状に形成されている。
【0029】
(内周部)
内周部21は、軸線方向に沿って延びるように形成されている。内周部21の軸線方向の長さは、ゴム輪溝103の外径とほぼ同じ大きさである。また、中空部28におけるリップ部30側の面には、凹形状の溝部21a(薄肉部)が設けられている。言い換えると、凹形状の溝部21aは、内周部21における軸線方向のほぼ中央に設けられている。溝部21aは、径方向外側から径方向内側に向かって縮径する(先細る)ように形成されている。内周部21は、溝部21aが形成されている部分を除いて、ほぼ同じ厚みである。
【0030】
(第一傾斜部)
内周部21における軸線方向の一方端部(挿入方向手前側の端部)には、第一傾斜部22が設けられている。第一傾斜部22は、内周部21から径方向外側(内周部21から離れる方向)に延びているとともに、挿入方向奥側に向かって所定の角度で傾斜している。第一傾斜部22は、全体的にほぼ同じ厚みである。
【0031】
(第一外周部)
第一傾斜部22における径方向外側の端部22aには、第一外周部23が設けられている。第一外周部23は、第一傾斜部22の端部22aから挿入方向奥側に向かって延びている。第一外周部23は、内周部21とほぼ平行に配置されている。第一外周部23における軸線方向の長さは、内周部21における軸線方向の長さの半分以下である。
【0032】
(第一突起部)
第一外周部23における径方向外側の面には、第一突起部24が設けられている。第一突起部24は、第一外周部23から径方向外側に向けて突出するように先細り状に設けられている。第一突起部24は、第一平坦面241と、第一垂直面242と、第一傾斜面243とを有している。第一平坦面241は、第一外周部23とほぼ平行な面である。第一垂直面242は、第一平坦面241に対して挿入方向手前側に形成されているとともに、径方向に沿って延びる面である。第一傾斜面243は、第一平坦面241に対して挿入方向奥側に形成されているとともに、第一平坦面241及び第一外周部23に対して所定の角度傾斜して延びる面である。第一突起部24は、ゴム輪溝103に形成される溝等に嵌合されていてもよいし、ゴム輪溝103によって圧縮されるようにしてもよい。
【0033】
(第二傾斜部)
内周部21における軸線方向の他方端部(挿入方向奥側の端部)には、第二傾斜部25が設けられている。第二傾斜部25は、内周部21から径方向外側(内周部21から離れる方向)に延びているとともに、挿入方向手前側に向かって所定の角度で傾斜している。第二傾斜部25は、全体的にほぼ同じ厚みである。
【0034】
(第二外周部)
第二傾斜部25における径方向外側の端部25aには、第二外周部26が設けられている。第二外周部26は、第二傾斜部25の端部25aから挿入方向手前側に向かって延びている。第二外周部26は、内周部21とほぼ平行に配置されている。第二外周部26における軸線方向の長さは、内周部21における軸線方向の長さの半分以下である。
【0035】
また、本体部20におけるゴム輪溝103に接する面は、部分的に分離している。具体的には、第一外周部23の端部23aと第二外周部26の端部26aとは、所定の間隔を隔てて配置されており、端部23aと端部26aとの間には隙間が形成されている。この隙間における軸線方向の長さは、溝部21aの外径よりも小さく、溝部21aの内径よりも大きい。
【0036】
(第二突起部)
第二外周部26における径方向外側の面には、第二突起部27が設けられている。第二突起部27は、第二外周部26から径方向外側に向けて突出するように先細り状に設けられている。第二突起部27は、第二平坦面271と、第二垂直面272と、第二傾斜面273とを有している。第二平坦面271は、第二外周部26とほぼ平行な面である。第二垂直面272は、第二平坦面271に対して挿入方向奥側に形成されているとともに、径方向に沿って延びる面である。第二傾斜面273は、第二平坦面271に対して挿入方向手前側に形成されているとともに、第二平坦面271及び第二外周部26に対して所定の角度傾斜して延びる面である。第二突起部27は、ゴム輪溝103に形成される溝等に嵌合されていてもよいし、ゴム輪溝103によって圧縮されるようにしてもよい。
【0037】
(リップ部)
リップ部30は、接続管200の差口201の外周面202に密着する部分である。リップ部30は、本体部20の内周面20aから突出するとともに、接続管200の挿入方向奥側に向かって傾斜している。リップ部30は、基部31と、第一先端部32と、第二先端部33とを備えている。
【0038】
リップ部30は、受口101に対する差口201の挿入方向手前側にリップ部30の根元部31aが位置し、差口201の挿入方向奥側にリップ部30の先端側(第二先端部33)が向くように取り付けられるものである。リップ部30は、根元部31aを起点として先端側に向けて受口101の径方向内側に突出するように傾斜するとともに、受口101に挿入された差口201との接触に伴い、根元部31aを起点として受口101の径方向外側に揺動可能とされている。
【0039】
(基部)
基部31は、挿入方向手前側から挿入方向奥側に向かって縮径するように形成されている。ここで、本実施形態では、基部31における径方向外側の根元部31aは、本体部20の中空部28における凹形状の溝部21aに対応する位置に設けられている。具体的には、基部31の根元部31aは、内周部21における軸線方向のほぼ中央で、かつ、溝部21aにおける径方向内側に隣接する部分に接続されている。また、基部31の厚みは、径方向外側から径方向内側に向かって徐々に薄くなっている。
【0040】
リップ部30の基部31における本体部20とは反対側に位置する先端部31bは、分岐している。すなわち、リップ部30の基部31における径方向内側の先端部31bは、第一先端部32と、第二先端部33とに分岐している。
【0041】
(第一先端部)
第一先端部32は、差口201の挿入方向(軸線方向)に対して直交する方向に沿って延びるように設けられている。具体的には、第一先端部32は、基部31の先端部31bから径方向内側に向かって延びている。第一先端部32の厚みは、全体的にほぼ同じである。第一先端部32の長さは、基部31、及び第二先端部33の長さよりも短い。
【0042】
(第二先端部)
第二先端部33は、基部31の先端部31bから挿入方向奥側に向かって延びている。第二先端部33は、軸線方向とほぼ平行である。第二先端部33の長さは、基部31の長さよりも短く、かつ第一先端部32の長さよりも長い。第二先端部33における挿入方向奥側の端部には、突出部331が設けられている。突出部331は、第二先端部33から径方向外側に向かって突出している。
【0043】
(圧着補強部)
圧着補強部40は、リップ部30に対して径方向外側から径方向内側に向かう方向に弾性力を付与する弾性部材である。圧着補強部40は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)や、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)等のゴム材料や弾性を有する素材によって形成するのが好ましい。圧縮補強部40は、本体部20よりも圧縮力を受ける部材であるため、本体部20を構成する素材に比べて撓みやすい素材で形成されるのが好ましい。さらに具体的には、本体部20をSBRによって構成した場合には、SBRよりも撓みやすいEPDM等の素材を用いて圧着補強部40を構成するのが好ましい。また、圧着補強部40は、様々な形状に形成することが可能であり、例えばOリングのように全周に亘って形成された環状のもの等とするのが好ましい。圧着補強部40は、リップ部30における接続管200と接触しない側の面に設けられている。具体的には、圧着補強部40は、第二先端部33の突出部331における挿入方向手前側の傾斜面331a、及び第二先端部33における径方向外側の面33aに装着されている。圧着補強部40は、リップ部30が受口101の径方向外側に揺動した状態において、リップ部30と受口101の内周面102との間をシールするように構成されている。また、圧着補強部40により、第二先端部33における接続管200の差口201に対する圧着力が強化される。
【0044】
次に、
図3、及び
図4~
図6を参照して、管100の受口101に対する接続管200の差口201の挿入時(接続時)におけるゴム輪10の挙動(動作)について説明する。
【0045】
図4に示すように、管100の受口101に対する接続管200の差口201の挿入時(接続時)には、差口201の先端がゴム輪10のリップ部30の基部31に接触する。
【0046】
さらに、差口201を挿入方向奥側に向けて挿入すると、
図5に示すように、リップ部30の根元部31aを起点としてリップ部30の基部31、第一先端部32、及び第二先端部33が挿入方向奥側に撓む。このとき、
図3に示す本体部20の凹部21aにおける挿入方向手前側の端縁Xが中空部28を押しつぶすように径方向外側に向かって変形する(
図5に示す矢印F1)。これにより、差口201を受口101に挿入する際の初期挿入力が低減される。
【0047】
さらに、差口201を受口101に対して挿入すると、
図5に示すように、リップ部30の第一先端部32が挿入方向奥側及び径方向外側の両方向に向かって圧縮される(
図5に示す矢印F2)。このとき、第二先端部33が差口201によって径方向外側に向かって圧縮され、第二先端部33の突出部331(
図3参照)が受口101の内周面102に接触する。これと同時に、圧着補強部40も径方向外側に向かって圧縮されるが、圧着補強部40の径方向内側への締め付け力(弾性力)によりリップ部30が差口201の外周面202に対して圧着される。
【0048】
また、
図6に示すように、接続管200(差口201)の軸心C1が管100(受口101)の軸心C2に対して、径方向の一方側に偏芯した(ずれた)場合には、ゴム輪10における径方向の一方側のリップ部30(
図6における下側のリップ部)は、
図5における状態から、さらに差口201によって矢印F1及びF2の力を受けて、受口101側に圧縮される。
【0049】
その一方で、ゴム輪10における径方向の他方側のリップ部30(
図6における上側のリップ部)は、差口201から受ける矢印F1及びF2の力が弱まるが、差口201及び受口101に接触した状態を維持しながら、
図5における状態から径方向内側に揺動する。このとき、リップ部30の第一先端部32が差口201の外周面202と接触した状態が維持され、リップの30の第二先端部33が受口101の外周面102と接触した状態が維持され、シール性が確保される。
【0050】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果(1)~(9)を得ることができる。
【0051】
(1)上記実施形態によるゴム輪10では、リップ部30の根元部31aを本体部20の中空部28に対応する位置に設けた。上記実施形態によれば、管100の受口101に接続管200の差口201を接続(挿入)する際に、差口201がリップ部30に接触することにより、リップ部30が挿入方向奥側に圧縮されることに伴って、リップ部30の根元部31aが中空部28を押しつぶすように径方向外側に広がる。すなわち、リップ部30が挿入方向奥側及び径方向外側の両方に広がる(移動する)ため、接続管200の挿入抵抗を低減することができる。また、上記実施形態によれば、差口201がリップ部30に接触することにより、リップ部30の根元部31aを起点として受口101の径方向外側に揺動することによって、受口101と差口201との間の隙間がシールされるため、接続後のシール性を確保することができる。これらの結果、上記実施形態によれば、接続管200の挿入抵抗を低減しつつ、接続後のシール性を確保することができる。
【0052】
(2)上記実施形態によるゴム輪10では、中空部28におけるリップ部30側の面に、凹形状の溝部21aを設けた。これにより、凹形状の溝部21aにおける挿入方向手前側の端縁(接続部X)が中空部28(径方向外側)に向かって折れ曲がり易くなる。このため、差口201の挿入時に差口201がリップ部30の第一先端部32に接触した際に、リップ部30の基部31の根元部31aが中空部28を径方向外側に向かって押しつぶし易くなる。その結果、リップ部20に対する接続管200の挿入抵抗をより低減することができる。
【0053】
(3)上記実施形態によるゴム輪10では、リップ部30の根元部31aを凹形状の溝部21aに対応する位置に設けた。これにより、中空部28における凹形状の溝部21aに対応する位置が他の部分と比べて薄肉に形成されているため、リップ部30の根元部31aが中空部28を径方向外側に向かって押しつぶし易くなる。その結果、接続管200の挿入抵抗をより効果的に低減することができる。
【0054】
(4)上記実施形態によるゴム輪10では、本体部20におけるゴム輪溝103に接する面を部分的に分離した。これにより、本体部20におけるゴム輪溝103に接する面に隙間が形成されるため、管100(受口101)に対する接続管200(差口201)の挿入時に、本体部20におけるゴム輪溝103に接する面が変形し易くなる。その結果、管(受口101)に対する接続管200(差口201)の挿入時の挿入抵抗を低減することができる。
【0055】
(5)上記実施形態によるゴム輪10では、第一先端部32を接続管200の挿入方向に対して交差する方向に沿って延びるように設けるとともに、第二先端部33を接続管200の挿入方向に沿って延びるように設けた。これにより、受口101に対する差口201の挿入時に、差口201の外周面202が第一先端部32に接触することにより第一先端部32が第二先端部33側に揺動するとともに、第二先端部33が受口101の内周面102側に揺動することにより第二先端部33が受口101の内周面202に接触する。このため、第一先端部32及び第二先端部33によって、受口101と差口201との間をシールすることができるとともに、差口201に対する圧着力を増大させることができる。その結果、シール性を向上させることができる。
【0056】
(6)上記実施形態によるゴム輪10では、リップ部30における接続管200と接触しない側の面に圧着補強部40を設けた。これにより、差口201を受口101に挿入する際に、リップ部30が受口101の径方向外側に揺動した状態において、圧着補強部40によってリップ部30における差口201に対する圧着力を補強できる。その結果、シール性を向上させることができる。
【0057】
(7)上記実施形態によるゴム輪10では、圧着補強部40として、リップ部30に対して径方向外側から内側に向かう方向に弾性力を付与する弾性部材40を設けた。これにより、弾性部材40がリップ部30に対して径方向外側から内側に向かう方向に弾性力を付与するため、リップ部30を差口201の外周面202に対して密着させることができる。その結果、リップ部30による差口201に対する圧着力が増大するため、シール性を向上させることができる。
【0058】
(8)上記実施形態によるゴム輪10では、弾性部材40としてゴム材料により製造されたOリングを用いた。これにより、ゴム材料により製造されたOリングを用いることによって、容易に、リップ部30に対して径方向外側から内側に向かう方向に弾性力を付与できる。このため、リップ部30を差口201の外周面202に対して密着させることができる。その結果、リップ部30による差口201に対する圧着力が増大するため、シール性を向上させることができる。
【0059】
(9)上記実施形態によるゴム輪10では、リップ部30が受口101の径方向外側に揺動した状態において、圧着補強部40によってリップ部30と受口101の内周面102との間をシールするようにした。これにより、リップ部30と受口101の内周面102との間のシール性を向上できるとともに、受口101と差口201との間のシール性も向上できる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態は、以下のように変更した構成とすることもできる。
【0061】
上記実施形態では、リップ部の根元部が、凹形状の溝部に対応する位置に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リップ部の根元部が凹形状の溝部に対して軸線方向にずれた位置に設けられていてもよい。また、本発明では、凹形状の溝部が設けられていない構成とすることも可能である。
【0062】
上記実施形態では、リップ部の先端が2つの先端部(第一先端部及び第二先端部)に分岐する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リップ部の先端を3つ以上に分岐させてもよい。
【0063】
上記実施形態では、圧着補強部の一例として、ゴム材料等により製造されたOリング等の弾性部材を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リップ部が受口の径方向外側に揺動した状態において、リップ部と受口の内周面との間をシールすることが可能であれば、上記以外の圧着補強部であってもよい。
【0064】
上記実施形態は、いずれも本発明の適応の例示であり、特許請求の範囲に記載の範囲内におけるその他いかなる実施形態も、発明の技術的範囲に含まれることは当然のことである。
【符号の説明】
【0065】
10 :ゴム輪
20 :本体部
21a :溝部
28 :中空部
30 :リップ部
31a :根元部
32 :第一先端部
33 :第二先端部
40 :圧着補強部、弾性部材
100 :管
101 :受口
102 :内周面
103 :ゴム輪溝
200 :接続管
201 :差口
202 :外周面