(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】冷却構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6566 20140101AFI20240828BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240828BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240828BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240828BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
(21)【出願番号】P 2021088932
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 博亮
(72)【発明者】
【氏名】福澤 由紀
(72)【発明者】
【氏名】宮田 大資
(72)【発明者】
【氏名】服部 正吾
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/175010(WO,A1)
【文献】特開2018-016143(JP,A)
【文献】特開2007-172939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6566
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を冷却する冷却構造であって、
前記蓄電装置に向けて吸気するための吸気口と、
羽を有し、前記羽の回転によって前記吸気口から気体を吸い込み、前記気体を前記蓄電装置に向けて送風する送風機と、
前記吸気口と前記送風機とを接続する流路と、
前記吸気口に設けられ、かつ、異物が前記吸気口から前記流路に侵入することを抑制する異物侵入抑制部材と、
前記流路において前記異物侵入抑制部材と前記送風機との間に設置され、前記羽の回転による棒状異物の振動を抑制可能に設けられた振動抑制部材と、を備え、
前記異物侵入抑制部材は、前記気体を前記流路に吸い込むための複数の第1の開口部を有し、
前記振動抑制部材は、前記流路に設置された状態において複数の第2の開口部が形成されるように構成されている、冷却構造。
【請求項2】
前記棒状異物は、前記棒状異物の先端部が前記羽に接触することにより移動し、
前記送風機は、前記羽を回転させる回転軸を有し、
前記振動抑制部材は、前記回転軸の軸方向に交差する向きにおいて前記棒状異物の移動範囲を制限する、請求項1に記載の冷却構造。
【請求項3】
各前記第2の開口部の開口は、前記第1の開口部の開口よりも大きい、請求項1または2に記載の冷却構造。
【請求項4】
前記振動抑制部材は、互いに交差する複数の桟または一本の桟を含む、請求項3に記載の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される蓄電装置を冷却する冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電装置と、当該蓄電装置を冷却する冷却構造とを備える車両が知られている。たとえば、特開2007-172939号公報(特許文献1)には、蓄電装置としての電池スタックと、冷却構造としての冷却ファンおよび吸気口とを有する電池パックが開示されている。吸気口は、冷却ファンの近傍に位置する側面に設けられている。吸気口の前面には異物混入防止のルーバーが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池パックでは、吸気口から冷却ファンまで到達する長さを有する棒状異物がルーバーを介して電池パックの内部に侵入した場合、冷却ファンの回転によって棒状異物が振動する。これにより、異音が生じたり、棒状異物が外部に飛び出したりする可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、吸気口から送風機まで到達する長さを有する棒状異物が冷却構造内に侵入した場合に、棒状異物による異音の大きさを低減し、かつ棒状異物の外部への飛び出しを抑制可能な冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、蓄電装置を冷却する冷却構造は、蓄電装置に向けて吸気するための吸気口と、羽を有し、羽の回転によって吸気口から気体を吸い込み、気体を蓄電装置に向けて送風する送風機と、吸気口と送風機とを接続する流路と、吸気口に設けられ、かつ、異物が吸気口から流路に侵入することを抑制する異物侵入抑制部材と、流路において異物侵入抑制部材と送風機との間に設置され、羽の回転による棒状異物の振動を抑制可能に設けられた振動抑制部材と、を備える。異物侵入抑制部材は、気体を流路に吸い込むための複数の第1の開口部を有する。振動抑制部材は、流路に設置された状態において複数の第2の開口部が形成されるように構成されている。
【0007】
このような構成によれば、振動抑制部材によって、送風機の羽の回転に基づく、棒状異物の振動を抑制できる。したがって、冷却構造によれば、棒状異物の振動による異音の大きさを低減できるとともに、棒状異物の外部への飛び出しを抑制することができる。
【0008】
好ましくは、棒状異物は、棒状異物の先端部が羽に接触することにより移動する。送風機は、羽を回転させる回転軸を有する。振動抑制部材は、回転軸の軸方向に交差する向きにおいて棒状異物の移動範囲を制限する。このような構成によれば、振動抑制部材によって、棒状異物の振動を抑制することができる。
【0009】
好ましくは、各第2の開口部の開口は、第1の開口部の開口よりも大きい。このような構成よれば、第2の開口部によって、棒状異物の振動を抑制できる。さらに、振動抑制部材によって空気の吸気効率が低下してしまうことを防止できる。
【0010】
好ましくは、振動抑制部材は、互いに交差する複数の桟または一本の桟を含む。このような構成によれば、振動抑制部材の構造を簡素化できる。
【発明の効果】
【0011】
上記の開示によれば、棒状異物による異音の大きさを低減し、かつ棒状異物の外部への飛び出しを抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】振動抑制部材の具体的構成を例示した図である。
【
図5】送風機が駆動していない状態において、棒状異物の一部が冷却構造の内部に侵入した状態を表している。
【
図6】送風機が駆動したときの棒状異物の振動状態を表した図である。
【
図7】振動抑制部材の振動抑制効果を説明するための図である。
【
図8】他の形態の振動抑制部材を流路に設置した状態を示す図である。
【
図9】さらに他の形態の振動抑制部材を流路に設置した状態を示す図である。
【
図10】さらに他の形態の振動抑制部材を流路に設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0014】
図1は、実施の形態の冷却構造を示す概略図である。
図1を参照して、実施の形態の冷却構造を備えた車両および、冷却構造の概略構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、実施の形態に係る冷却構造10は、蓄電装置2が搭載された車両に搭載される。具体的には、本実施の形態の冷却構造10は、モータとエンジンとの少なくとも一方の駆動力を用いて走行可能なハイブリッド車両、または、電気エネルギによって得られたモータの駆動力で走行する電動車両等の車両に搭載される。
【0016】
蓄電装置2は、上記モータに電力を供給する。一方で、回生制動等によってモータで発電された電力が、蓄電装置2に充電される。蓄電装置2は、たとえば、後部座席70の下方に設けられている。なお、蓄電装置2の設置位置は、後部座席70の下方に限定されず、後部座席70の後方側であってもよく、蓄電装置2は、適宜設置することができる。
【0017】
蓄電装置2は、車両幅方向に沿って延在する長手形状を有する。蓄電装置2は、収容ケース3および蓄電モジュール4を含む。蓄電モジュール4は、収容ケース3内に収容されている。蓄電モジュール4は、複数の蓄電セル5が直列して接続されることにより構成されている。なお、蓄電セル5の個数は、特に限定されない。
【0018】
蓄電セル5は、たとえば、ニッケル水素電池、またはリチウムイオン電池等の二次電池である。蓄電セル5は、たとえば角型形状を有する。二次電池は、液状の電解質を用いるものであってもよいし、固体状の電解質を用いるものであってもよい。なお、蓄電セル5は、二次電池に限定されず、蓄電可能に構成されたキャパシタ等であってもよい。
【0019】
冷却構造10は、蓄電装置2を冷却する。冷却構造10は、後部座席70の下部側であって、車両外側における後部座席70の側面側から車両室内の空気を吸い込み可能に構成されている。冷却構造10は、吸気口90と、異物侵入抑制部材50と、ダクト31,32と、送風機60とを備える。
【0020】
異物侵入抑制部材50は、吸気口90に設けられている。異物侵入抑制部材50は、異物が吸気口90からダクト31内に侵入することを抑制する。異物侵入抑制部材50は、典型的には、吸気用のルーバー、吸気用のグリルである。
【0021】
ダクト31,32は、車両室内の空気を蓄電モジュール4に導く。ダクト31,32は、送風機60に接続されている。ダクト31は、吸気口90から吸い込まれた車両室内の空気を送風機60に導く。ダクト32は、送風機60から吹き出される空気を蓄電装置(詳しくは、蓄電モジュール4)に導く。
【0022】
送風機60を駆動させることにより、車両室内の空気が収容ケース3内に送風される。詳しくは、送風機60は、羽を有し、羽の回転によって吸気口90から車室内の空気を吸い込み、空気を蓄電装置2に向けて送風する。
【0023】
冷却構造10は、車両の左右方向の両端側にそれぞれ設けられている。送風機60は、後部座席70の下部側であって、蓄電モジュール4の前方側に配置されている。2つの送風機60の間には、蓄電モジュールを制御するための電子機器が収容された機器ボックス40が配置されている。
【0024】
図2は、
図1のII-II線矢視断面図である。
図2に示されているように、冷却構造10は、ダクト31と、吸気口90と、異物侵入抑制部材50と、振動抑制部材80と、送風機60と、流路100とを備える。
【0025】
吸気口90は、蓄電装置2に向けて吸気するために設けられている。流路100は、吸気口90と送風機60とを接続する。吸気口90は、車室内に面するように設けられている。本例では、吸気口90は、車両のドアスカッフ20に設けられている。
【0026】
送風機60は、モータ61と、翼部63とを含む。モータ61は、回転軸(シャフト)611を含む。翼部63は、複数の羽631を有する。翼部63は、回転軸611に接続されており、モータ61の回転に伴い回転する。このように、回転軸611は、モータ61の回転によって、羽631を回転させる。本例では、送風機60として、シロッコファンを用いている。送風機60の種類は、これに限定されず、たとえばターボファン等の他の種類のファンであってもよい。なお、本例では、送風機60とダクト31とは、車両のボディ99上に設置されている。
【0027】
異物侵入抑制部材50には、複数の開口部51が設けられている。複数の開口部51は、行列状に並ぶように設けられている(
図1参照)。送風機60の駆動により、複数の開口部51から車室内の空気が吸い込まれる。異物侵入抑制部材50は、異物が吸気口90から流路100に侵入することを抑制する。
【0028】
振動抑制部材80は、吸気口90と送風機60とを接続する流路100に設けられている。振動抑制部材80は、流路100において異物侵入抑制部材50と送風機60との間に設置されている。振動抑制部材80は、複数の開口部81を有する。振動抑制部材80は、異物の振動を抑制可能に設けられている。振動抑制部材80は、送風機60と対向する状態で設置されている。振動抑制部材80は、複数の開口部81が送風機60側を向くように構成されている。
【0029】
図3は、振動抑制部材80の具体的構成を例示した図である。
図3に示されるように、振動抑制部材80は、複数の開口部81と、枠体82と、枠体82に設けられ上記複数の開口部81を規定する格子状部分83とを備える。複数の開口部81は、行列状に並ぶように設けられている。振動抑制部材80では、枠体82内に複数の開口部81が行列状に並ぶように構成されている。各開口部81の開口の大きさは、異物侵入抑制部材50の開口部51の開口よりも大きい。
【0030】
図4は、翼部63の具体的構成を例示した図である。
図4に示されているように、翼部63は、複数の羽631を有する。複数の羽631は、翼部63の回転方向に沿って、一定の間隔で配置されている。
【0031】
図5は、送風機60が駆動していない状態において、棒状異物200の一部が冷却構造10の内部に侵入した状態を表している。
図5に示すように、吸気口90から送風機60まで到達する長さを有する棒状異物200が、上記複数の開口部51のうちの1つを介して流路100に侵入する場合がある。棒状異物200は、複数の開口部81のうちの1つを介して送風機60に到達する位置まで侵入している。
【0032】
図5の例では、棒状異物200は、上記1つの開口部51の下部側を規定する部分の異物侵入抑制部材50の壁部と、上記1つの開口部81の下部側を規定する部分の振動抑制部材80の壁部と、羽631とで支持されている。
【0033】
棒状異物200としては、串状の形態を有する異物が挙げられる。たとえば、棒状異物200として、バーベキューで使用する金属製または非金属製の串が挙げられる。棒状異物200の直径および長さは、一例として、それぞれ2.3mm、300mmである。
【0034】
図6は、送風機60が駆動したときの棒状異物200の振動状態を表した図である。
図6に示されるように、棒状異物200の両端部220,230のうち羽631に接した端部220(以下、「先端部220」とも称する)は、羽631の回転により力を受ける。先端部220に対して送風機60による力が作用する。先端部220は、作用点となる。したがって、先端部220は、羽631に接触することにより移動する。
【0035】
上述したように、開口部81の開口の大きさは、開口部51の開口の大きさよりも大きい。また、送風機60が停止しているときには、棒状異物200は、開口部81と開口部51とによって支持されている。このため、送風機60が駆動したときには、棒状異物200は、開口部51に位置する部分(後述する被支持部210)を支点として振動する。
【0036】
この場合、先端部220の軌跡は、所定の回転軸まわりに回転した形状となる。
図6では、先端部220の軌跡が円になる場合を例示している。たとえば、ある局面においては、棒状異物200は、開口部51に位置し、異物侵入抑制部材50に支持された被支持部210が円錐面の頂点となり、当該被支持部210から先端部220までの棒状部分の軌跡が円錐面となるように振動する。
【0037】
振動抑制部材80は、棒状異物200の羽631の回転に基づく振動を抑制する。振動抑制部材80は、モータ61の回転軸611の軸方向Cに交差する向きにおいて棒状異物200の移動範囲を制限する。振動抑制部材80は、開口部81によって、棒状異物200の移動範囲を制限する。
【0038】
棒状異物200が開口部81を通過して先端部220が羽631に接触した場合、開口部81の箇所では、棒状異物200の移動範囲が制限される。開口部81の箇所では、少なくとも、棒状異物200は、開口部81を規定する振動抑制部材80の壁部によって車両上下方向および車両前後方向の移動範囲が制限される。
【0039】
図7は、振動抑制部材80の振動抑制効果を説明するための図である。
図7に示されるように、冷却構造10に振動抑制部材80を設置した場合の棒状異物200の振動状態を実線で示している。冷却構造10から振動抑制部材80を取り除いた場合(冷却構造に振動抑制部材80を設置しなかった場合)における棒状異物200の振動状態を破線で示している。
【0040】
冷却構造10に振動抑制部材80を設けたことにより、開口部81を規定する振動抑制部材80の壁部に棒状異物200の一部分が接触する。それゆえ、冷却構造10では、振動抑制部材80がないとき(破線の場合)に比べて、棒状異物200の動き(振動)が抑制される。振動抑制部材80によって、円錐面の頂角θの値を小さくすることができる。このように、振動抑制部材80によって棒状異物200の振動が抑制されるため、振動抑制部材80を備えない構成に比べて、異音の大きさを低減できる。
【0041】
棒状異物200が羽631の回転により受ける遠心力の分力により、棒状異物200が車室内へ飛び出してしまうおそれがある。特に、棒状異物200の車室内に飛び出た部分の長さが、冷却構造10内に侵入した部分の長さよりも長い場合には、当該飛び出た部分の遠心力の分力が大きくなる。振動抑制部材80によれば、棒状異物200の後端部230の軌跡である円の直径を小さくすることができる。たとえば、図示しているように、円の直径をD2からD1(<D2)にすることができる。このため、遠心力の分力を小さくすることができる。したがって、羽631の回転によって棒状異物200が車室内に飛び出してしまうことを抑制することが可能となる。
【0042】
ところで、異物侵入抑制部材50の開口部51の大きさを小さくすると、棒状異物200が開口部51を通過することを防止できる。その一方で、送風機60による空気の単位時間当たりの吸入量が低下するため、冷却効果は低下する。そこで、上記のように、振動抑制部材80を設けることにより、開口部51の大きさを小さくすることなく、冷却効果の低下を抑制できる。
【0043】
以上のように、蓄電装置2を冷却する冷却構造10は、蓄電装置2に向けて吸気するための吸気口90と、羽631を有し、羽631の回転によって吸気口90から空気を吸い込み、空気を蓄電装置2に向けて送風する送風機60と、吸気口90と送風機60とを接続する流路100と、吸気口90に設けられ、かつ、異物が吸気口90から流路100に侵入することを抑制する異物侵入抑制部材50と、流路100において異物侵入抑制部材50と送風機60との間に設置され、羽631の回転による棒状異物の振動を抑制可能に設けられた振動抑制部材80と、を備える。異物侵入抑制部材50は、空気を流路100に吸い込むための複数の開口部51を有する。振動抑制部材80は、流路100に設置された状態において複数の開口部81が形成されるように構成されている。このような構成によれば、棒状異物200の振動による異音の大きさを低減できるとともに、棒状異物200の車室内への飛び出しを抑制することができる。
【0044】
上述したように、振動抑制部材80は、吸気口90から送風機60まで到達する長さを有する棒状異物200が複数の開口部51のうちの1つを介して流路100に侵入した場合に、羽631の回転に基づく棒状異物200の振動を抑制する。
【0045】
上述したように、棒状異物200は、棒状異物200の先端部220が羽631に接触することにより移動する。送風機60は、羽631を回転させる回転軸611を有する。振動抑制部材80は、回転軸611の軸方向Cに交差する向きにおいて棒状異物200の移動範囲を制限する。このような構成によれば、棒状異物200の振動を抑制することができる。
【0046】
上述したように、各開口部81の開口は、開口部51の開口よりも大きい。このような構成よれば、開口部81によって、棒状異物200の振動を抑制できる。さらに、振動抑制部材80によって空気の吸気効率が低下してしまうことを防止できる。
【0047】
異物侵入抑制部材50と送風機60とは、上記のような長さの棒状異物200の半分以上が流路100に侵入するだけ離れていることが好ましい。これによれば、棒状異物200の車室内に飛び出た部分の遠心力の分力を、冷却構造10内に侵入した部分の遠心力の分力よりも小さくなる。その結果、棒状異物200の飛び出しを防止することができる。
【0048】
<変形例>
(1)振動抑制部材80の形状は、
図3に示した形状に限定されない。
図8は、振動抑制部材80の第1の変形例である振動抑制部材80Aを流路100に設置した状態を示す図である。
図9は、振動抑制部材80の第2の変形例である振動抑制部材80Bを流路100に設置した状態を示す図である。
図10は、振動抑制部材80の第3の変形例である振動抑制部材80Cを流路100に設置した状態を示す図である。
【0049】
図8に示されるように、振動抑制部材80Aは、複数の桟が格子状に組み合わされた構造を有している。振動抑制部材80Aは、各桟の端部がダクト31の内壁面31aに固定されている。振動抑制部材80Aが内壁面31aに設置された状態において、開口部81が行列状に形成されている。
【0050】
図9に示されるように、振動抑制部材80Bは、2本の桟が十字状に組み合わされた構造を有している。振動抑制部材80Bは、各桟の4つの端部がダクト31の内壁面31aに固定されている。この場合も、振動抑制部材80Bが内壁面31aに設置された状態において、開口部81が行列状に形成されている。
【0051】
図10に示されるように、振動抑制部材80Cは、1本の桟である。振動抑制部材80Bは、一本の桟の両端部がダクト31の内壁面31aに固定されている。この場合も、振動抑制部材80Cが内壁面31aに設置された状態において、開口部81が行列状に形成されている。
【0052】
振動抑制部材80A,80B,80Cによっても、振動抑制部材80と同様の効果を得ることができる。また、振動抑制部材80A,80B,80Cによれば、振動抑制部材80よりも構造を簡素化できる。
【0053】
(2)上記においては、ダクト31と送風機60とが接続され、かつ送風機60とダクト32とが接続されている構成を例に挙げて説明した。これに限定されず、吸気口90から蓄電装置2に及ぶ1つダクトに送風機60が内蔵されるように、冷却構造10を構成してもよい。
【0054】
(3)上記においては、開口部81の開口が開口部51の開口よりも大きい場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されず、開口部81の開口は、開口部51の開口よりも小さくてもよい。また、開口部81の開口と開口部51の開口とは同じ大きさであってもよい。このような構成であっても、棒状異物200の振動による異音の大きさを低減できるとともに、棒状異物200の車室内への飛び出しを抑制することができる。
【0055】
なお、開口部81の開口が開口部51の開口よりも小さい場合には、送風機60が駆動したときには、棒状異物200は、開口部51に位置する部分(
図7に示した被支持部210)を支点とせずに、開口部81に位置する部分を支点して振動する。
【0056】
(4)上記においては、車両に搭載された蓄電装置を冷却する構成を例に挙げて説明したが、車両以外に設置された蓄電装置を冷却する用途にも用いることができる。このような場合、空気以外の気体を用いて蓄電装置を冷却してもよい。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
2 蓄電装置、3 収容ケース、4 蓄電モジュール、5 蓄電セル、10 冷却構造、20 ドアスカッフ、31,32 ダクト、31a 内壁面、40 機器ボックス、50 異物侵入抑制部材、51,81 開口部、60 送風機、61 モータ、63 翼部、70 後部座席、80,80A,80B,80C 振動抑制部材、82 枠体、90 吸気口、100 流路、200 棒状異物、220 先端部、230 後端部、611 回転軸、631 羽。