(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】粉末状褐藻類
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20240828BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240828BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20240828BHJP
A21D 2/36 20060101ALN20240828BHJP
A21D 13/00 20170101ALN20240828BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20240828BHJP
【FI】
A23L17/60 B
A23L5/00 D
A23L17/60 W
A23L17/60 102
A23L7/109 C
A21D2/36
A21D13/00
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2021092343
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2021051133
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591124385
【氏名又は名称】理研食品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】吉永 恵子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-071455(JP,A)
【文献】特開昭62-178520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上、かつナトリウムが1.5質量%以下であることを特徴とする粉末状褐藻類の製造方法であって、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程と、多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する工程と、洗浄された褐藻類を乾燥する工程とを有する粉末状褐藻類の製造方法
(但し、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程の前に、褐藻類を酸処理する工程を有する製造方法を除く)。
【請求項2】
多価金属イオンが、塩化カルシウム、塩化カルシウムの水和物、酢酸カルシウム及び酢酸カルシウムの水和物からなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオン源から発生する多価金属イオンである、請求項1に記載の粉末状褐藻類の製造方法。
【請求項3】
粉末状褐藻類中に含まれる多価金属を2質量%以上、かつナトリウムを1.5質量%以下にすることを特徴とする粉末状褐藻類の水分散性の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状褐藻類に関する。
【背景技術】
【0002】
わかめ、こんぶ等の褐藻類は、味噌汁、酢の物、サラダ、うどん、そば、佃煮等の多種多様な加工食品に用いられる日本人にとってなじみの深い食材である。最近では、褐藻類に含まれる栄養成分に関する研究も進み、例えば、整腸作用やコレステロール低下作用に関与する食物繊維、免疫機能の向上に貢献するフコイダン、血圧低下能を有するペプチド等の褐藻類に豊富に含まれる栄養成分に注目が集まっている。一方で、褐藻類は独特の形態、粘り、磯臭さ等を有するため、様々なバリエーションの加工食品に配合しやすくする等の目的で、塩蔵処理、乾燥処理、カット処理、粉末化処理等が施された商品が開発されている。なかでも、粉末状褐藻類は、保存性やハンドリング性にも優れ、加工食品に用いられる他の粉末原料と混合して使用することができるため、広い用途での応用が試みられている。
【0003】
しかし、粉末状褐藻類は、褐藻類中に含まれるアルギン酸ナトリウムの高い吸水性の影響により、水と接触した部分が急激に吸水、増粘するため、水と接触していない部分が水に分散しづらくなる、いわゆる継粉が発生する課題を有している。継粉が発生すると加工食品の製造工程に影響を及ぼすだけではなく、加工食品中の粉末状褐藻類の均質性や粉末飲料、粉末スープのような水と混合することを想定した加工食品の水分散性に影響を及ぼし、品質の低下を招く恐れがある。そのため、消費者の嗜好の多様化が進むなか、褐藻類の加工食品への応用の幅を広げるためにも、継粉が発生しづらく、水分散性に優れた粉末状褐藻類に関する技術が求められている。
【0004】
粉末状褐藻類に関する技術としては、例えば、水洗して塩分を5%以下になるまで塩抜きした後、乾燥させて60~800メッシュの網目を通過させながら均質化させて、直径20~140ミクロン程度になるまで粉砕化させた粉末わかめ食品(特許文献1)、わかめとアルカリ金属塩と酒粕とを含有することを特徴とするわかめ粉末(特許文献2)、表面に水分を保つ性質を有する水溶性材料粉末10部に対して該水溶性材料粉末よりも粒子径が小さい微粉末食品を0.5部~5部の割合で混合し、微粉末食品を水溶性材料粉末の表面に付着させたことを特徴とする複合食品(特許文献3)等が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2の技術では、粉末わかめの風味は向上しても、水分散性の向上は見込まれない。また、特許文献3の技術では、粉末わかめの水分散性効果は必ずしも十分とはいえず、水溶性材料を別途混合することの手間やわかめの風味への影響も懸念される。そのため、より実用性があり、水分散性に優れた粉末状褐藻類に関する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-54670号公報
【文献】特開2010-110263号公報
【文献】特開2003-259818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水と接触した際の継粉の発生が抑制され、水中へと容易に分散することができる水分散性に優れた粉末状褐藻類を提供することを目的とする。なお、継粉とは、粉体を水に投入した際に、水と接触した表面部分が急激に吸水、増粘し、粉体が水に分散しづらくなる塊状の形態をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題に対して鋭意検討を行った結果、褐藻類中に含まれるナトリウムを多価金属で置換することで、粉末状褐藻類中の多価金属含有量及びナトリウム含有量を所定量とすることにより、前記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上、かつナトリウムが1.5質量%以下であることを特徴とする粉末状褐藻類、
(2)褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程と、多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する工程と、洗浄された褐藻類を乾燥する工程とを有する(1)記載の粉末状褐藻類の製造方法、
(3)(1)記載の粉末状褐藻類を含有する飲食品、
から成っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粉末状褐藻類は、水と接触した際の継粉の発生が抑制されるため、水分散性に優れている。また、本発明の粉末状褐藻類は、水分散性が優れていることから、飲食品中に粉末状褐藻類を均質に含有させることができ、粉末状褐藻類を含有する飲食品の品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粉末状褐藻類に用いられる褐藻類は、特に制限はないが、例えば、わかめ、こんぶ、もずく、あかもく等を挙げることができ、このなかでもわかめ、こんぶが好ましく、わかめがより好ましい。わかめとしては、例えば、ワカメ、ヒロメ、アオワカメ等を挙げることができる。こんぶとしては、例えば、マコンブ、リシリコンブ、ナガコンブ等を挙げることができる。本発明の粉末状褐藻類の原料として用いられる褐藻類の部位に特に制限はないが、例えば、わかめの場合、葉、茎、芽かぶ等を挙げることができ、このなかでも葉が好ましい。本発明の粉末状褐藻類の原料として用いられる褐藻類の産地に特に制限はないが、例えば、日本産、韓国産、中国産等を挙げることができる。
【0012】
本発明の粉末状褐藻類に用いられる褐藻類は、生の褐藻類(原藻)、生の褐藻類をボイルしたもの、これらに冷蔵、冷凍、塩蔵、乾燥、カット等の加工処理を施したもの等を挙げることができ、このなかでも原藻、カット加工処理を施したものが好ましい。加工処理を施したものとしては、例えば、塩蔵わかめ、ボイル塩蔵わかめ、乾燥わかめ、カットわかめ、ボイル塩蔵こんぶ、乾燥こんぶ、カットこんぶ等を挙げることができる。
【0013】
ボイルわかめ、ボイルこんぶは、例えば、原藻を加温した海水等でボイルすることで得ることができ、これに食塩を添加し脱水させることでボイル塩蔵わかめ又はボイル塩蔵こんぶを得ることができる。乾燥わかめ、乾燥こんぶは、例えば、ボイル塩蔵わかめ又はボイル塩蔵こんぶを水で洗浄し、脱塩処理を施した後、自体公知の乾燥処理により得ることができる。
【0014】
本発明の粉末状褐藻類に用いられる褐藻類の大きさは、特に制限はないが、後述する多価金属イオンとの接触面積を広くする観点から、縦横それぞれ50mm以下が好ましく、縦横それぞれ20mm以下がより好ましい。本発明の粉末状褐藻類に用いられる褐藻類の形状は、特に制限はなく、多角形、不定形、粉末状等であってもよい。本発明では、褐藻類を1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明の粉末状褐藻類は、粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上であり、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましい。多価金属としては、例えば、2~3価の金属イオンを発生する金属を挙げることができ、具体的には、カルシウム、マグネシウム等の2族元素の金属を挙げることができ、好ましくはカルシウムである。
【0016】
本発明の粉末状褐藻類は、粉末状褐藻類中に含まれるナトリウムが1.5質量%以下であり、1質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明の粉末状褐藻類中に含まれる多価金属とナトリウムの質量比(多価金属/ナトリウム)は、7以上が好ましく、12以上がより好ましく、25以上がさらに好ましい。本発明の粉末状褐藻類中に含まれるカルシウムとナトリウムの質量比(カルシウム/ナトリウム)は、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。
【0018】
本発明の粉末状褐藻類中に含まれる多価金属含有量及びナトリウム含有量は、例えば、本発明の粉末状褐藻類に硝酸を加えマイクロ波試料前処理装置(型式:ETHOS TC;マイルストーンゼネラル社製)で湿式分解後、ICP発光分析装置(型式:VISTA-MPX;VARIAN社製)を用いて測定することができる。なお、粉末状褐藻類中に含まれるこれらの含有量を測定する際、粉末状褐藻類に食品素材等の他の成分が別途混合、或いは付着している場合は、これを洗浄等により除去した上で測定することができる。
【0019】
本発明の粉末状褐藻類の水分含有量は、特に制限はないが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。水分含有量は、例えば、常圧加熱乾燥法(105℃、3~5時間乾燥)により測定することができる。
【0020】
本発明の粉末状褐藻類は、粉末状の形態であれば、粒子の大きさに特に制限はないが、例えば、目開き0.5mmの篩を通過する大きさが好ましく、目開き0.3mmの篩を通過する大きさがより好ましく、目開き0.2mmの篩を通過する大きさがさらに好ましい。
【0021】
本発明の粉末状褐藻類は、少なくとも褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程、多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する工程、洗浄された褐藻類を乾燥する工程を取ることで製造することができる。
【0022】
褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程で用いられる多価金属イオンは、例えば、2~3価の金属イオンを挙げることができ、このなかでも2族元素のイオンが好ましく、カルシウムイオン、マグネシウムイオンがより好ましく、カルシウムイオンがさらに好ましい。多価金属イオンを発生する多価金属イオン源は、安全衛生上、食品に用いることができ、水等の溶媒に溶解するものであれば、特に制限はないが、カルシウム塩、マグネシウム塩等の多価金属塩等を挙げることができる。カルシウム塩としては、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム及びこれらの水和物等を挙げることができる。マグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム及びこれらの水和物等を挙げることができる。これら多価金属イオン源のなかでも、塩化カルシウム、塩化カルシウムの水和物、酢酸カルシウム、酢酸カルシウムの水和物、塩化マグネシウム、塩化マグネシウムの水和物が好ましく、塩化カルシウム、塩化カルシウムの水和物、酢酸カルシウム、酢酸カルシウムの水和物がより好ましい。本発明では、多価金属イオン及び多価金属イオン源を1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明の粉末状褐藻類の製造方法における工程の1つである褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程は、褐藻類中のナトリウムをカルシウムで置換できる方法であれば、特に制限はないが、例えば、多価金属イオン源を水等の溶媒に溶解した溶液に褐藻類を投入し浸漬する方法、褐藻類と水等の溶媒との混合物に多価金属イオン源を添加し浸漬する方法、褐藻類を充填した容器に多価金属イオン源を水等の溶媒に溶解した溶液を通液し浸漬する方法、原藻等の水分含有量の多い褐藻類に直接多価金属イオン源を添加する方法等を挙げることができる。前記した方法を行う際は、振とう、攪拌、混合等の操作をしてもよい。
本発明では、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理させ、多価金属イオンを含む溶液を濾過、脱水等により除去した後、さらに褐藻類と多価金属イオンとを接触処理させることにより、複数回、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理させることが好ましい。
【0024】
多価金属イオンを水等の溶媒を介して褐藻類と接触処理する場合、多価金属イオン源と水等の溶媒との溶液における多価金属イオン濃度は、特に制限はないが、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する際の多価金属イオンと褐藻類の質量比(多価金属イオン/褐藻類)は、特に制限はないが、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。なお、多価金属イオン源と水等の溶媒との溶液における多価金属イオン濃度は、溶媒の質量をA、多価金属イオン源の質量をB、多価金属イオン源1モルあたりの質量をM、多価金属イオン源1モル中の多価金属の質量をmとすると、下記式によって算出することができる。
【0025】
多価金属イオン濃度(質量%)=B×(m/M)×100/(A+B)
【0026】
褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する時間は、特に制限はないが、10分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましい。褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する際の温度は、特に制限はないが、室温(25±5℃)以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。
【0027】
本発明の粉末状褐藻類の製造方法における工程の1つである多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する工程は、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程で用いた多価金属イオンを含む溶液を濾過、脱水等により除去した褐藻類(以下、処理済み褐藻類ともいう)に付着している余分な多価金属イオンや食塩、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程で生成したナトリウム塩等を洗浄液により十分に洗い流すことができれば、特に制限はないが、例えば、洗浄液に処理済み褐藻類を投入し浸漬する方法、処理済み褐藻類を充填した容器に洗浄液を通液し浸漬する方法等を挙げることができ、浸漬する際に、振とう、攪拌、混合等の操作をしてもよい。本発明では、処理済み褐藻類の洗浄後、洗浄液を濾過、脱水等により除去した後、さらに洗浄工程を取ることで、複数回、処理済み褐藻類を洗浄することが好ましい。また、十分な洗浄の目安として、濾過、脱水等により除去した最後の洗浄液中のナトリウム濃度を測定してもよい。この場合、ナトリウム濃度は、0.005質量%未満が好ましい。洗浄液は、特に制限はないが、水、エタノール等のアルコール類を挙げることができ、このなかでも水が好ましい。
【0028】
多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する際の洗浄液と処理済み褐藻類の質量比(洗浄液/処理済み褐藻類)は、特に制限はないが、4以上が好ましく、10以上がより好ましい。多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する時間は、特に制限はないが、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましい。
【0029】
本発明の粉末状褐藻類の製造方法における工程の1つである洗浄された褐藻類を乾燥する工程は、洗浄工程を経た処理済み褐藻類を乾燥することができれば、特に制限はないが、例えば、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等の方法を挙げることができ、1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程における条件は、例えば、熱風乾燥の場合、80~100℃、1~5時間が好ましく、真空乾燥の場合、60~80℃、3~20時間が好ましい。
【0030】
また、本発明の粉末状褐藻類の製造方法では、粉末化工程を取ることもできる。粉末化工程は、特に制限はないが、ピンミル粉砕、気流式粉砕、剪断摩擦式粉砕、衝撃式粉砕、ロール式粉砕、凍結粉砕、超音波粉砕、超遠心粉砕等を挙げることができ、1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
このようにして得られた本発明の粉末状褐藻類は、粉末状褐藻類中に所定の多価金属含有量及びナトリウム含有量を有することで、水分散性に寄与する素材を別途配合することなく、それ自身が水と接触した際の継粉の発生を抑制し、水中へと容易に分散することができる。これは、褐藻類に豊富に含有する吸水性に優れたアルギン酸ナトリウムについて、ナトリウムが多価金属に置換、排出され、水に溶解しづらい架橋構造を有するアルギン酸の多価金属塩が生成し、粉末状褐藻類表面の急激な吸水が抑制されることが1つの要因と考えられる。
【0032】
このようにして得られた本発明の粉末状褐藻類は、飲食品に用いることもできる。本発明の粉末状褐藻類を飲食品に用いることで、粉末状褐藻類を飲食品中に均質に含有させることができ、飲食品の品質向上を図ることができる。
【0033】
本発明の粉末状褐藻類の飲食品への使用量は、特に制限はないが、飲食品中に好ましくは0.01~100質量%、より好ましくは0.1~100質量%含有させるのがよい。
【0034】
本発明の粉末状褐藻類の使用方法は、特に制限はないが、飲食品の製造工程で直接添加する方法、他の粉末原料にあらかじめ添加する方法等を挙げることができる。
【0035】
本発明の粉末状褐藻類を含有する飲食品は、特に制限はないが、例えば、パン、菓子、麺、米飯、豆腐、水産練り製品、飲料、乳製品、スープ、調味料、プレミックス、介護食、離乳食等の一般食品の他、健康食品等を挙げることができる。パンは、食パン、菓子パン、デニッシュ、ペストリー、クロワッサン、ブリオッシュ、フランスパン等を挙げることができる。菓子は、ガム、キャンディ、グミ、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パンケーキ、カステラ、バームクーヘン、ドーナツ、スナック菓子、米菓、氷菓、アイスクリーム等を挙げることができる。麺は、中華麺、うどん、そば、パスタ、餃子の皮等を挙げることができ、生麺の他、茹で麺、蒸し麺、即席麺、冷蔵麺、冷凍麺等の調理済みの麺も含まれる。米飯は、炊き込みご飯、ピラフ、ドライカレー、リゾット等を挙げることができる。水産練り製品は、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、つみれ、さつま揚げ等を挙げることができる。飲料は、茶、コーヒー、インスタントコーヒー、果汁飲料、野菜飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、粉末スポーツ飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、栄養ドリンク、青汁、粉末青汁等を挙げることができ、固形状、粉末状、ペースト状、液状等のいずれの形態であってもよい。
【0036】
乳製品は、ヨーグルト、クリーム、チーズ、バター、粉乳、練乳等を挙げることができる。スープは、コーンスープ、コンソメスープ、中華スープ、ラーメンスープ、オニオンスープ、ミネストローネ、クラムチャウダー、ポタージュ、わかめスープ、味噌汁等を挙げることができ、固形状、粉末状、ペースト状、液状等のいずれの形態であってもよい。調味料は、醤油、味噌、ソース、たれ、つゆ、魚醤、エキス、ドレッシング、シーズニング等を挙げることができ、固形状、粉末状、ペースト状、液状等のいずれの形態であってもよい。プレミックスは、原料の一部があらかじめ混合された食品をいい、パン用プレミックス、ケーキ用プレミックス、パンケーキ用プレミックス、アイスクリーム用プレミックス、麺用プレミックス等を挙げることができる。健康食品は、栄養機能食品、栄養補助食品、健康補助食品、機能性食品、機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメント、流動食等を挙げることができ、錠剤、カプセル、固形状、粉末状、ペースト状、液状等のいずれの形態であってもよい。本発明の粉末状褐藻類を含有する飲食品の製造方法は、特に制限はなく、自体公知の方法を用いて製造することができる。
【0037】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0038】
[粉末状褐藻類の作製1:わかめ(葉部、茎部)]
(1)粉末状褐藻類の作製方法
1)実施例1
2Lステンレスビーカーに水900g、酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)14.4gを投入し、65℃で3分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.35質量%)を得た。この溶液に韓国産乾燥わかめ60gを投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、1次処理済み褐藻類216gを得た。次に、2Lステンレスビーカーで水900gに酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)3.6gを溶解した多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.09質量%)に1次処理済み褐藻類全量を投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、2次処理済み褐藻類189gを得た。次に、2Lステンレスビーカーに2次処理済み褐藻類全量、洗浄液として水900gを投入後、室温で3分間攪拌して洗浄し、濾過にて洗浄液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を1回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度を測定したところ0.005質量%未満であり、十分に洗浄できていることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類を熱風乾燥機(テスト用乾燥炉;細山熱器社製)で、90℃、2時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類1を44.6g得た。粉末状褐藻類1の水分含有量は4.2質量%であった。
【0039】
2)実施例2
3Lステンレスビーカーに水1000g、塩化カルシウム二水和物(商品名:粒状塩化カルシウム;トクヤマ社製)15gを投入し、室温で10分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.4質量%)を得た。この溶液に韓国産乾燥わかめ50gを投入後、22℃で30分間攪拌した後、濾過後に遠心脱水により溶液を除去することで、処理済み褐藻類111.2gを得た。次に、3Lステンレスビーカーに処理済み褐藻類全量、洗浄液として水1000gを投入後、室温で15分間攪拌して洗浄し、濾過後に遠心脱水により洗浄液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を1回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度を測定したところ0.005質量%未満であり、十分に洗浄できていることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類熱風乾燥機(テスト用乾燥炉;細山熱器社製)で、90℃、2時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類2を37.1g得た。粉末状褐藻類2の水分含有量は4.1質量%であった。
【0040】
3)実施例3
3Lステンレスビーカーに水1000g、塩化カルシウム二水和物(商品名:粒状塩化カルシウム;トクヤマ社製)12.5gを投入し、22℃で10分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.34質量%)を得た。この溶液に韓国産乾燥わかめ50gを投入後、室温で30分間攪拌した後、濾過後に遠心脱水により溶液を除去することで、処理済み褐藻類110.6gを得た。これ以降は、実施例2と同様な方法で、粉末状褐藻類3を37.9g得た。粉末状褐藻類3の水分含有量は4.4質量%であった。
【0041】
4)実施例4
3Lステンレスビーカーに水1000g、塩化カルシウム二水和物(商品名:粒状塩化カルシウム;トクヤマ社製)10gを投入し、22℃で10分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.27質量%)を得た。この溶液に韓国産乾燥わかめ50gを投入後、室温で30分間攪拌した後、濾過後に遠心脱水により溶液を除去することで、処理済み褐藻類123.8gを得た。これ以降は、実施例2と同様な方法で、粉末状褐藻類4を38.3g得た。粉末状褐藻類4の水分含有量は4.6質量%であった。
【0042】
5)実施例5
3Lステンレスビーカーに水1000g、塩化カルシウム二水和物(商品名:粒状塩化カルシウム;トクヤマ社製)5gを投入し、22℃で10分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.14質量%)を得た。この溶液に韓国産乾燥わかめ50gを投入後、室温で30分間攪拌した後、濾過後に遠心脱水により溶液を除去することで、処理済み褐藻類205.2gを得た。これ以降は、実施例2と同様な方法で、粉末状褐藻類5を37.5g得た。粉末状褐藻類5の水分含有量は4.8質量%であった。
【0043】
6)実施例6
2Lステンレスビーカーに水500g、酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)2.5gを投入し、22℃で10分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.11質量%)を得た。この溶液に韓国産ボイル塩蔵わかめを海水で洗浄し、海水を除去した後、縦横それぞれ約20mmに細断したもの83.8gを投入後、75℃で1時間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、1次処理済み褐藻類132.7gを得た。次に、2Lステンレスビーカーで水500gに酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)2.5gを溶解した多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.11質量%)に1次処理済み褐藻類全量を投入後、75℃で1時間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、2次処理済み褐藻類87.6gを得た。次に、2Lステンレスビーカーに2次処理済み褐藻類全量、洗浄液として水500gを投入後、室温で3分間攪拌して洗浄し、濾過にて洗浄液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を1回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度測定したところ0.005質量%未満であることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類を熱風乾燥機(テスト用乾燥炉;細山熱器社製)で、90℃、2時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類6を11.8g得た。粉末状褐藻類6の水分含有量は4.0質量%であった。
【0044】
7)実施例7
3Lステンレスビーカーに水1200g、塩化カルシウム二水和物(商品名:粒状塩化カルシウム;トクヤマ社製)9.0gを投入し、22℃で10分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.2質量%)を得た。この溶液に三陸産わかめ原藻194.1gを投入後、室温で30分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、1次処理済み褐藻類165.1gを得た。次に、3Lステンレスビーカーで水1200gに塩化カルシウム二水和物(商品名:粒状塩化カルシウム;トクヤマ社製)5.0gを溶解した多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.11質量%)に1次処理済み褐藻類全量を投入後、室温で30分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、2次処理済み褐藻類121.3gを得た。次に、3Lステンレスビーカーに2次処理済み褐藻類全量、洗浄液として水1500gを投入後、室温で5分間攪拌して洗浄し、濾過にて洗浄液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を1回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度を測定したところ0.005質量%未満であることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類を熱風乾燥機(テスト用乾燥炉;細山熱器社製)で、90℃、2時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類7を15.3g得た。粉末状褐藻類7の水分含有量は3.6質量%であった。
【0045】
8)実施例8
3Lステンレスビーカーに水1200g、酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)11.02gを投入し、22℃で10分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.21質量%)を得た。この溶液に三陸産冷凍わかめの茎を除去し葉のみを縦横それぞれ約20mmに細断したもの201.65gを投入後、室温で30分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、1次処理済み褐藻類172.1gを得た。次に、3Lステンレスビーカーで水1200gに酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)6.09gを溶解した多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.11質量%)に1次処理済み褐藻類全量を投入後、室温で30分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、2次処理済み褐藻類127.97gを得た。次に、3Lステンレスビーカーに2次処理済み褐藻類全量、洗浄液として水1500gを投入後、室温で5分間攪拌して洗浄し、濾過にて洗浄液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を1回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度を測定したところ0.005質量%未満であることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類を熱風乾燥機(テスト用乾燥炉;細山熱器社製)で、95℃、2時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類8を13.9g得た。粉末状褐藻類8の水分含有量は4.0質量%であった。
【0046】
9)比較例1
韓国産乾燥わかめ20gを超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類9を19.4g得た。粉末状褐藻類9の水分含有量は4.8質量%であった。
【0047】
[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]
(1)多価金属含有量の測定
粉末状褐藻類1~9それぞれについて、硝酸を加えマイクロ波試料前処理装置(型式:ETHOS TC;マイルストーンゼネラル社製)で湿式分解後、ICP発光分析装置(型式:VISTA-MPX;VARIAN社製)を用いて、カルシウム含有量、マグネシウム含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
(2)ナトリウム含有量の測定
粉末状褐藻類1~9それぞれについて、硝酸を加えマイクロ波試料前処理装置(型式:ETHOS TC;マイルストーンゼネラル社製)で湿式分解後、ICP発光分析装置(型式:VISTA-MPX;VARIAN社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0049】
[粉末状褐藻類の水分散性試験1]
(1)試験方法
回転子(直径10mm長さ40mm)を入れた300mLビーカーに水200gを投入し、マグネティックスターラーを用いて、550rpmで攪拌し、ここに粉末状褐藻類1~9それぞれ0.5gを一度に投入してから、粉末状褐藻類の継粉が消失して均一に分散するまでの時間を測定し、下記基準にて評価した。分散時間が短い方が、水分散性に優れていることを示し、「SS」、「S」、「A」及び「B」を本発明の効果を満足するものとした。結果を表1に示す。
SS:分散時間が、25秒間未満
S :分散時間が、25秒間以上50秒間未満
A :分散時間が、50秒間以上100秒間未満
B :分散時間が、100秒間以上200秒間未満
C :分散時間が、200秒間以上
【0050】
【0051】
表1の通り、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理し、洗浄工程、乾燥工程を取ることで、粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が増加し、ナトリウムが減少した。そして、粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上であり、かつナトリウムが1.5質量%以下である実施例の粉末状褐藻類1~8は、比較例の粉末褐藻類9よりも水分散性に優れていることがわかった。褐藻類中に含まれるアルギン酸ナトリウム中のナトリウムが多価金属に置換、排出され、水に溶解しづらい架橋構造を有するアルギン酸の多価金属塩が生成したことが、水分散性に優れる要因の一つと考えられる。
【0052】
[粉末状褐藻類の作製2:わかめ(芽かぶ)]
(1)粉末状褐藻類の作製方法
1)実施例9
1Lステンレスビーカーに水300g、酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)4.8gを投入し、65℃で3分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.36質量%)を得た。この溶液に韓国産乾燥芽かぶ20gを投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、1次処理済み褐藻類53.7gを得た。次に、1Lステンレスビーカーで水300gに酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)1.2gを溶解した多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.09質量%)に1次処理済み褐藻類全量を投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、2次処理済み褐藻類46.6gを得た。次に、1Lステンレスビーカーに2次処理済み褐藻類全量、洗浄液として水300gを投入後、室温で3分間攪拌して洗浄し、濾過にて洗浄液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を1回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度を測定したところ0.005質量%未満であり、十分に洗浄できていることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類を熱風乾燥機(テスト用乾燥炉;細山熱器社製)で、90℃、2時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類10を7.3g得た。粉末状褐藻類10の水分含有量は5.0質量%であった。
【0053】
2)比較例2
韓国産乾燥芽かぶ20gを超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類11を18.7g得た。粉末状褐藻類11の水分含有量は7.1質量%であった。
【0054】
[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定2]
(1)多価金属含有量の測定
粉末状褐藻類10及び11それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて、カルシウム含有量、マグネシウム含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
(2)ナトリウム含有量の測定
粉末状褐藻類10及び11それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0056】
[粉末状褐藻類の水分散性試験2]
(1)試験方法
回転子(直径10mm長さ40mm)を入れた300mLビーカーに水200gを投入し、マグネティックスターラーを用いて、550rpmで攪拌し、ここに粉末状褐藻類10及び11それぞれ0.5gを一度に投入してから、粉末状褐藻類の継粉が消失して均一に分散するまでの時間を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
表2の通り、実施例の粉末状褐藻類10は、比較例の粉末褐藻類11よりも水分散性に優れていることがわかった。
【0059】
[粉末状褐藻類の作製3:こんぶ]
(1)粉末状褐藻類の作製方法
1)実施例10
韓国産乾燥芽かぶを国産乾燥こんぶに変更する以外は、実施例9と同様な方法で、粉末状褐藻類12を作製した。作製過程で得られた1次処理済み褐藻類は59.0g、2次処理済み褐藻類は54.1gであり、最終的に粉末状褐藻類12を8.4g得た。粉末状褐藻類12の水分含有量は4.8質量%であった。
【0060】
2)比較例3
国産乾燥こんぶ20gを超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類13を18.2g得た。粉末状褐藻類13の水分含有量は4.8質量%であった。
【0061】
[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定3]
(1)多価金属含有量の測定
粉末状褐藻類12及び13それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて、カルシウム含有量、マグネシウム含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0062】
(2)ナトリウム含有量の測定
粉末状褐藻類12及び13それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0063】
[粉末状褐藻類の水分散性試験3]
(1)試験方法
回転子(直径10mm長さ40mm)を入れた300mLビーカーに水200gを投入し、マグネティックスターラーを用いて、550rpmで攪拌し、ここに粉末状褐藻類12及び13それぞれ0.5gを一度に投入してから、粉末状褐藻類の継粉が消失して均一に分散するまでの時間を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
表3の通り、実施例の粉末状褐藻類12は、比較例の粉末褐藻類13よりも水分散性に優れていることがわかった。
【0066】
[粉末状褐藻類の作製4:あかもく]
(1)粉末状褐藻類の作製方法
1)実施例11
韓国産乾燥芽かぶを国産乾燥あかもくに変更する以外は、実施例9と同様な方法で、粉末状褐藻類14を作製した。作製過程で得られた1次処理済み褐藻類は57.5g、2次処理済み褐藻類は57.4gであり、最終的に粉末状褐藻類14を10.0g得た。粉末状褐藻類14の水分含有量は5.8質量%であった。
【0067】
2)比較例4
国産乾燥あかもく20gを超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類15を18.3g得た。粉末状褐藻類15の水分含有量は7.6質量%であった。
【0068】
[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定4]
(1)多価金属含有量の測定
粉末状褐藻類14及び15それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて、カルシウム含有量、マグネシウム含有量を測定した。結果を表4に示す。
【0069】
(2)ナトリウム含有量の測定
粉末状褐藻類14及び15それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0070】
[粉末状褐藻類の水分散性試験4]
(1)試験方法
回転子(直径10mm長さ40mm)を入れた300mLビーカーに水200gを投入し、マグネティックスターラーを用いて、550rpmで攪拌し、ここに粉末状褐藻類14及び15それぞれ0.5gを一度に投入してから、粉末状褐藻類の継粉が消失して均一に分散するまでの時間を測定した。結果を表4に示す。
【0071】
【0072】
表4の通り、実施例の粉末状褐藻類14は、比較例の粉末褐藻類15よりも水分散性に優れていることがわかった。
【0073】
[粉末状褐藻類の作製5:もずく]
(1)粉末状褐藻類の作製方法
1)実施例12
3Lステンレスビーカーに水1200g、酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)9.6gを投入し、65℃で3分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.18質量%)を得た。この溶液に国産乾燥もずく40gを投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、遠心分離機(型式:HP-20XP;BECKMAN COULTER社製)で、5000rpm、15分の条件で遠心分離し、溶液を除去することで、1次処理済み褐藻類713.1gを得た。次に、3Lステンレスビーカーで水1000gに酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)6.4gを溶解した多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.14質量%)に1次処理済み褐藻類全量を投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、遠心分離機(型式:HP-20XP;BECKMAN COULTER社製)で、5000rpm、15分の条件で遠心分離し、溶液を除去することで、2次処理済み褐藻類775.9gを得た。次に、3Lステンレスビーカーに2次処理済み褐藻類全量、洗浄液として水700gを投入後、室温で3分間攪拌して洗浄し、遠心分離機(型式:HP-20XP;BECKMAN COULTER社製)で、5000rpm、15分の条件で遠心分離し、溶液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を2回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度を測定したところ0.005質量%未満であり、十分に洗浄できていることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類を真空乾燥機(型式:VOS-301SD;EYELA社製)で、65℃、17時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類16を27.5g得た。粉末状褐藻類16の水分含有量は3.9質量%であった。
【0074】
2)比較例5
国産乾燥もずく20gを超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類17を17.5g得た。粉末状褐藻類17の水分含有量は12.2質量%であった。
【0075】
[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定5]
(1)多価金属含有量の測定
粉末状褐藻類16及び17それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて、カルシウム含有量、マグネシウム含有量を測定した。結果を表5に示す。
【0076】
(2)ナトリウム含有量の測定
粉末状褐藻類16及び17それぞれについて、[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定1]と同様の方法を用いて測定した。結果を表5に示す。
【0077】
[粉末状褐藻類の水分散性試験5]
(1)試験方法
回転子(直径10mm長さ40mm)を入れた300mLビーカーに水200gを投入し、マグネティックスターラーを用いて、550rpmで攪拌し、ここに粉末状褐藻類16及び17それぞれ0.5gを一度に投入してから、粉末状褐藻類の継粉が消失して均一に分散するまでの時間を測定した。結果を表5に示す。
【0078】
【0079】
表5の通り、実施例の粉末状褐藻類16は、比較例の粉末褐藻類17よりも水分散性に優れていることがわかった。
【0080】
[粉末状褐藻類を含有する飲食品の作製]
(1)錠剤の作製
100gの粉末状褐藻類1と水79.5ml又は水119.2mlを混合し、顆粒状に成型後、打錠機を用いて直径8mm、0.25g/粒の錠剤を作製した。それぞれ、打錠前の前記混合物は継粉の発生が抑制されており、水分散性が良好であった。また、打錠障害の少ない錠剤を得ることができた。
【0081】
(2)味噌汁の作製
インスタント味噌汁[商品名:いつものおみそ汁赤だし(三つ葉入り);アマノフーズ社製]にお湯160mlと、1g、1.5g又は2gの粉末状褐藻類1を混合し、味噌汁を作製した。それぞれ、粉末状褐藻類が均質に分散した味噌汁を得ることができた。
【0082】
(3)パンの作製
強力粉150g、ドライイースト4g、牛乳120ml、バター6g、塩1g、砂糖2gを混合した後、生地を50gに分割した。生地50gに対して、1gの粉末状褐藻類1を混合し、発酵室にて40分間発酵させた後、一度、生地中の空気を除き、再度、20分間発酵させた。次に200℃のオーブンで13分間焼成し、パンを作製した。生地中に粉末状褐藻類が均質に分散したパンを得ることができた。
【0083】
(4)うどんの作製
強力粉150g、薄力粉150g、塩15gを混合した。前記混合物100gに対して、2gの粉末状褐藻類1と水50mlを混合し、生地を2時間ねかせた。ねかした生地を麺棒で薄く伸ばし、幅3~5mmにカットした後、熱湯で5分間茹で、うどんを作製した。生地中に粉末状褐藻類が均質に分散したうどんを得ることができた。