(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】蛍光体、波長変換部材、および光源装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240828BHJP
F21V 7/26 20180101ALI20240828BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20240828BHJP
F21V 7/30 20180101ALI20240828BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240828BHJP
F21S 41/176 20180101ALI20240828BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20240828BHJP
F21S 41/141 20180101ALI20240828BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20240828BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240828BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20240828BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20240828BHJP
C09K 11/00 20060101ALN20240828BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240828BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240828BHJP
【FI】
G02B5/20
F21V7/26
F21V7/28 220
F21V7/30
F21S2/00 311
F21S41/176
F21S41/16
F21S41/141
H01S5/0239
H01L33/50
F21V29/502 100
F21V9/38
C09K11/00 A
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021093376
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
(72)【発明者】
【氏名】早川 絵里
(72)【発明者】
【氏名】高久 翔平
(72)【発明者】
【氏名】山内 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】勝 祐介
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198983(JP,A)
【文献】特開2015-220446(JP,A)
【文献】特表2017-502524(JP,A)
【文献】特開2020-060648(JP,A)
【文献】特開2013-084889(JP,A)
【文献】特開2020-196264(JP,A)
【文献】特開2016-141741(JP,A)
【文献】特開2019-145259(JP,A)
【文献】特開2020-019857(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110350066(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
F21V 7/26
F21V 7/28
F21V 7/30
F21S 2/00
F21S 41/176
F21S 41/16
F21S 41/141
H01S 5/0239
H01L 33/50
F21V 29/502
F21V 9/38
C09K 11/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体であって、
前記蛍光体は、
第1波長変換層と前記第1波長変換層に積層された第2波長変換層とを備え、
前記第1波長変換層は、
励起光によって前記励起光よりも長い波長の光を発する蛍光相
であって、
複数の蛍光性結晶粒子から構成される前記蛍光相と、
透光性結晶粒子から構成される透光相と、
前記蛍光相と前記透光相とに囲まれて形成される空隙と、からなり、
前記第2波長変換層は、
樹脂と、
前記樹脂内に含まれる、励起光によって前記蛍光相が発する光よりも長い波長の光を発する蛍光体粒子と、
前記樹脂内に含まれる、無機または金属の充填材とを含む、
ことを特徴とする、蛍光体。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光体であって、
前記第2波長変換層の熱伝導率は0.5W/(m・K)以上であることを特徴とする、蛍光体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蛍光体であって、
前記第2波長変換層のヤング率は1GPa以下であることを特徴とする、蛍光体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の蛍光体であって、
前記第2波長変換層の引張伸びが5%以上であることを特徴とする、蛍光体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の蛍光体であって、
前記第2波長変換層に含まれる前記蛍光体粒子は、無機物であることを特徴とする、蛍光体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の蛍光体であって、
前記第2波長変換層において、前記蛍光体粒子の平均粒径と、前記充填材の平均粒径との比が、0.3以上かつ3.0以下であることを特徴とする、蛍光体。
【請求項7】
波長変換部材であって、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の蛍光体と、
前記蛍光体に配置され、光を反射する反射部材と、
を備えることを特徴とする、波長変換部材。
【請求項8】
光源装置であって、
請求項7に記載の波長変換部材と、
前記蛍光体に前記励起光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする、光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、波長変換部材、および光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光の波長を変換する光波長変換部材を備える光波長変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された光波長変換部材は、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする蛍光相と、透光性を有する結晶粒子を主体とする透光相と、を有するセラミック焼結体から構成されている。特許文献2には、青色LED(Light Emitting Diode)または青色LD(Laser Diode)の補色に発光する蛍光体に用いられるセラミック焼結体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-46638号公報
【文献】特開2018-2488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LEDやLD等を光源とする照明において、例えば、青色LEDや青色LDの光を、青色の補色、すなわち黄色に発光する蛍光体に透過させて白色光を得る構成が知られている。この構成により得られる白色光は、青色と黄色との混色により得られた白色であるため、太陽光とは異なり、緑色や赤色の成分が乏しく、逆に青色の成分が強い。このような光源を用いると物体の色の見え方が、太陽光の下での見え方と異なる。そのため、このような光源が、高い演色性を求める場所として、例えば、食品の展示および販売を行う場所、医療現場などで用いられると、適切な光源ではないおそれがある。この点に対し、特許文献1,2には、演色性を高めるための技術について開示されていない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、高い演色性を実現した蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。蛍光体であって、前記蛍光体は、第1波長変換層と前記第1波長変換層に積層された第2波長変換層とを備え、前記第1波長変換層は、励起光によって前記励起光よりも長い波長の光を発する蛍光相であって、複数の蛍光性結晶粒子から構成される前記蛍光相と、透光性結晶粒子から構成される透光相と、前記蛍光相と前記透光相とに囲まれて形成される空隙と、からなり、前記第2波長変換層は、樹脂と、前記樹脂内に含まれる、励起光によって前記蛍光相が発する光よりも長い波長の光を発する蛍光体粒子と、前記樹脂内に含まれる、無機または金属の充填材とを含む、ことを特徴とする、蛍光体。そのほか、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、蛍光体が提供される。この蛍光体は、前記蛍光体は、第1波長変換層と前記第1波長変換層に積層された第2波長変換層とを備え、前記第1波長変換層は、励起光によって前記励起光よりも長い波長の光を発する蛍光相を備え、前記第2波長変換層は、樹脂と、励起光によって前記蛍光相が発する光よりも長い波長の光を発する蛍光体粒子と、無機または金属の充填材とを含む。
【0008】
この構成によれば、第2波長変換層に含まれる蛍光体粒子が、励起光を照射した際、第1波長変換層に含まれる蛍光相が発する光よりも長い波長の光を発する。この結果、蛍光相が発していない波長域の光が蛍光体粒子により発せられるため、蛍光体は、より太陽光に近い光を発することができる。すなわち、高い演色性を実現できる。また、無機物の充填材が第2波長変換層に含まれているため、蛍光体の放熱性を向上させることができる。これにより、蛍光体の温度消光を抑制できる。
【0009】
(2)上記態様の蛍光体において、前記第2波長変換層の熱伝導率は0.5W/(m・K)以上であってもよい。
この構成によれば、第2波長変換層の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上であるため、蛍光体は良好な放熱性を有している。これにより、蛍光体の温度消光をさらに抑制できる。
【0010】
(3)上記態様の蛍光体において、前記第2波長変換層のヤング率は1GPa以下であってもよい。
この構成によれば、第2波長変換層のヤング率は1GPa以下であるため、蛍光体では、熱応力が緩和され、反り等の変形が抑制される。
【0011】
(4)上記態様の蛍光体において、前記第2波長変換層の引張伸びが5%以上であってもよい。
この構成によれば、第2波長変換層の引張伸びが5%以上であるため、蛍光体では、熱応力が緩和され、反り等の変形が抑制される。
【0012】
(5)上記態様の蛍光体において、前記第2波長変換層に含まれる前記蛍光体粒子は、無機物であってもよい。
この構成によれば、蛍光体粒子が無機物であるため、蛍光体の耐熱性が向上し、さらに、蛍光体を備える装置の温度消光を抑制できる。
【0013】
(6)上記態様の蛍光体において、前記第2波長変換層において、前記蛍光体粒子の平均粒径と、前記充填材の平均粒径との比が、0.3以上かつ3.0以下であってもよい。
この構成によれば、蛍光体粒子の粒子径と、充填材の粒子径とが、一定の範囲に含まれる粒子径である。すなわち、各粒子径の差が過剰に大きくないため、蛍光体の光散乱を抑制し、蛍光体を備える装置の明るさを向上させることができる。
【0014】
(7)本発明の他の一態様によれば、波長変換部材が提供される。この波長変換部材は、上記形態の蛍光体と、前記蛍光体に配置され、光を反射する反射部材と、を備える。
この構成によれば、蛍光体へと照射されて、反射部材がない場合に蛍光体を透過する光は、反射部材に反射されて蛍光体に光が入射する入射面側へと反射される。これにより、蛍光体の入射面側により強度の高い光を発することができる。
【0015】
(8)本発明の他の一態様によれば、光源装置が提供される。この光源装置は、上記形態の波長変換部材と、前記蛍光体に前記励起光を照射する光源と、を備える。
この構成の光源装置は、光源から照射された励起光を、すなわち演色性の高い太陽光に近い光として発することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、蛍光体、波長変換部材、光源装置、発光装置、照明、およびこれらを備える部品、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の蛍光体を備える光源装置の模式図である。
【
図3】蛍光体粒子の吸収強度および発光強度についての説明図である。
【
図4】蛍光体の演色性の評価についての説明図である。
【
図5】蛍光体の演色性の評価についての説明図である。
【
図6】実施例1~4および比較例1に含まれる成分についての説明図である。
【
図7】実施例1~3および比較例1に対する演色性の評価結果を示す説明図である。
【
図8】実施例1~3および比較例1に対する演色性の評価結果を示す説明図である。
【
図9】充填材の有無についての評価の説明図である。
【
図10】充填材の有無についての評価の説明図である。
【
図14】第2波長変換層の熱伝導率についての評価の説明図である。
【
図15】第2波長変換層の引張伸びおよびヤング率についての評価説明図である。
【
図16】第2波長変換層の引張伸びおよびヤング率についての評価説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
1.蛍光体を備える光源装置の構成:
図1は、本発明の実施形態の蛍光体10を備える光源装置100の模式図である。本実施形態の蛍光体10は、光源装置100が備える発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD:Laser Diode)などの光源60が発する励起光としての光LT1が照射されると、光LT1とは異なる波長の光を蛍光として発する。蛍光体10が発する蛍光は、蛍光体10での蛍光の発生に寄与しなかった光とともに、光LT2として、所定の方向に放射される。本実施形態の光源装置100は、
図1に示されるように、反射部材20を備える反射型の光源装置であって、ヘッドランプ、照明、プロジェクタなどの各種光学機器において使用される。
【0019】
光源装置100は、光LT1を発する光源60と、光LT1が照射される波長変換部材50と、を備えている。波長変換部材50は、光LT1の少なくとも一部の波長を変換する蛍光体10と、蛍光体10に配置されて光を反射する反射部材20と、を備えている。なお、説明の便宜上、
図1における各部材のそれぞれの大きさの関係は、実際の関係とは異なるように図示されている。
【0020】
反射部材20は、Al(アルミニウム)を主成分とする平板部材であって、蛍光体10の裏面10bに形成されている。反射部材20は、光源60が発する光LT1のうち蛍光体10を透過した光と、蛍光体10が発した蛍光のうち裏面10bの方向に向かう蛍光と、を蛍光体10に光LT1が入射する入射面10aの方向に反射する。なお、反射部材20は、Ag(銀)を主成分とする薄膜や銀合金やAl合金、Cu(銅)、銅モリブデン合金、銅タングステン合金などの金属材料から形成されていてもよい。
【0021】
蛍光体10は、第1波長変換層11と、第1波長変換層11に積層された第2波長変換層12と、を備える。本実施形態の第1波長変換層11は、励起光としての光LT1によって励起光よりも長い波長の光を発する蛍光相11Aと、蛍光体10の内部において光を透過する透光相11Bと、から構成されている。
【0022】
図2は、第1波長変換層11の拡大断面図である。
図2に示されるように、第1波長変換層11は、蛍光相11Aと、透光相11Bと、空隙11Cと、を有している。蛍光相11Aは、複数の蛍光性結晶粒子から構成されている。本実施形態では、この蛍光性結晶粒子は、化学式A
3B
5O
12:Ceで表される組成(いわゆる、ガーネット構造)を有している。ここで、「A
3B
5O
12:Ce」とは、A
3B
5O
12中にCe(セリウム)が固溶し、元素Aの一部がCeに置換されていることを示す。各結晶粒子内と結晶粒界とに分布したCeは、各結晶粒子内の濃度より結晶粒界の濃度が高い。化学式A
3B
5O
12:Ce中の元素Aおよび元素Bは、それぞれ下記の元素群から選択される少なくとも1種類の元素から構成されている。
・元素A:Sc,Y,Ceを除くランタノイド(ただし、元素AとしてさらにGdを含んでいてもよい)
・元素B:Al(ただし、元素BとしてさらにGaを含んでいてもよい)
また、化学式A
3B
5O
12:Ceで表される成分の結晶粒子中のCeの濃度が、元素Aに対して10.0mol%以下(但し0を含まず)である。A
3B
5O
12:Ce結晶粒子中のCe濃度が、元素Aに対し0mol%であると、十分な蛍光強度が得られにくくなる。一方、前記Ce濃度が10mol%よりも多いと、濃度消光を起こしやすくなり、蛍光強度の低下を招く恐れがある。
なお、蛍光相11Aを構成する蛍光性結晶粒子の組成および元素の種類は、上述の組成および元素の種類に限定されず、1つの蛍光相11Aに、複数種の蛍光性結晶粒子から構成されていてもよい。
【0023】
透光相11Bは、複数の透光性結晶粒子から構成されている。この透光性結晶粒子は、化学式Al2O3で表される組成を有する。透光相11Bは、蛍光体10の内部において光を透過するとともに、蛍光相11Aが蛍光を発するときに発生する熱を放熱する役割を有する。透光相11Bの屈折率は、蛍光相11Aの屈折率よりも小さい。
【0024】
空隙11Cは、蛍光相11Aと透光相11Bとに囲まれて形成される。本実施形態では、蛍光体10は、
図2に示されるように、複数の空隙11Cを備えている。ここで、本実施形態での空隙11Cとは、
図2に示されるような蛍光体10の断面において、蛍光相11Aおよび透光相11Bのいずれもが存在しない領域、すなわち、空間である。空隙11Cは光の散乱を増大させ、第1波長変換層11の発光強度を高めることができる。
【0025】
図1に示される第2波長変換層12は、樹脂12Aと、蛍光体粒子12Bと、充填材12Cと、空隙12Dと、を有している。本実施形態の樹脂12Aは、シリコーン樹脂であり、接着剤として機能する。そのため、第2波長変換層12は、両面のそれぞれで接している第1波長変換層11および反射部材20に接着している。本実施形態の充填材12Cは、無機物のAl
2O
3(アルミナ)である。なお、充填材は熱伝導性を有する無機または金属であればよく、例えば、アルミナの他にシリカ、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、銀、銅、アルミニウム、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、カーボンナノチューブなどを使用できる。充填材の着色がなく、すなわち光の吸収が少ない点でアルミナとシリカが好ましく、熱伝導性が良い点でアルミナがより好ましい。充填材の粒子形状は、多量に充填し、熱伝導率を高めることができ、かつ、多量に充填しても塗布や塗工が可能な流動性を得られる点で、球状が好ましく、真球状がより好ましい。真球状の具体的な形状は、電子顕微鏡で粒子を観察したときの長径と短径の比(長径/短径)が、1.1以下であることが好ましい。充填材の平均粒子径は、0.1μm以上、500μm以下が好ましい。0.1μm以下では、混錬の際に粘度が大きく上昇することから、大量に充填することが困難になり、熱伝導率を高めることができない。500μm以上では、薄く塗布することが困難になり、均一な厚みでの接合が困難になる。より好ましい平均粒子径の範囲は1μm以上50μm以下である。なお、充填材や無機蛍光体の平均粒子径の測定は、公知の粒度分布測定器を用いて測定でき、例えば、マイクロトラック・ベル株式会社MT3000IIレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置マイクロトラックMT3300EXIIを使用できる。
【0026】
本実施形態の蛍光体粒子12Bは、化学式が(Sr,Ca)AlSiN
3(一般にSCASNとも記載される)を母体結晶として、これに光学活性な元素であるEu
2+を賦活した無機物の赤色蛍光体である。(Sr,Ca)AlSiN
3は、CaAlSiN
3のCaの一部がSrに置き換えたものである。
図3は、蛍光体粒子12Bの吸収強度および発光強度についての説明図である。
図3には、蛍光体粒子12Bの発光強度が曲線C1(実線)により示され、蛍光体粒子12Bの吸収強度が曲線C2(破線)により示され、第1波長変換層11の蛍光相11Aの発光強度が曲線C3(一点鎖線)により示されている。
図3に示される縦軸の数値は、各曲線C1~C3におけるピークを「1.0」として規格化した場合の数値である。
図3の曲線C1~C3に示されるように、蛍光体粒子12Bは、400nm~500nmの波長の光を吸収して、蛍光相11Aが発する光の波長よりも長い550nm~700nmの波長の光を発する。換言すると、蛍光体粒子12Bは、第1波長変換層11の蛍光相11Aが発する青白い光よりも長い波長の赤色の光を発する。赤色蛍光体の平均粒径(メジアン径、d50との記載する)は0.5~20μmの範囲であることが好ましく、また最大粒径は50μm以下であることが好ましい。赤色蛍光体の平均粒径が20μmを超えるかまたは0.5μm未満である場合、第2波長変換層12から出射する光の色ムラと配光色ムラが大きくなってしまうという問題が生じうる。これは、平均粒径が大きすぎるかまたは小さすぎると蛍光体層中での光分散に悪影響が出るためであると考えられる。
【0027】
本実施形態では、第2波長変換層12の各パラメータが所定の条件を満たすように、樹脂12Aと、蛍光体粒子12Bと、充填材12Cとの成分や量が調整される。本実施形態では、熱伝導率が0.5W/(m・K)以上、ヤング率が1GPa以下、引張伸びが5%以上となるように、第2波長変換層12が形成されている。また、第2波長変換層12に含まれる、無機物の蛍光体粒子12Bの平均粒子径と、充填材12Cの平均粒子径との比は、0.3以上3.0以下である。さらに、第2波長変換層12の放射率が第1波長変換層11の放射率よりも大きくなるように、第1波長変換層11が形成されている。
【0028】
次に、第1波長変換層11の製造方法について説明する。第1波長変換層11の製造方法では、最初に、秤量したY2O3と、CeO2と、造孔材、例えば、アクリルビーズと、に純水を加えて、粉砕混合を行い、スプレードライヤーで造粒する。次に、造粒粉に蛍光相11Aの割合が60体積%となるようにAl2O3を加え、バインダーと造孔材とを所定の量混合した後、せん断力を加えながら混練を行うことで、坏土を作製する。作製した坏土を押出成形機でシート状に成形した後、1700℃の大気雰囲気中で焼成を行うことで、第1波長変換層11が製造される。
【0029】
本実施形態で製造された第1波長変換層11は、平均面粗さ(算術平均粗さSa)0.1μmであった。第1波長変換層11の平均面粗さは、例えば0.001μm<Sa<0.5μmであってもよい。第1波長変換層11の平均面粗さSaが0.001μmより小さいと、表面での鏡面反射が起き、入射光を効率的に取り入れられず、蛍光特性(例えば蛍光強度)が低下することがある。一方、表面の平均面粗さSaが0.5μmより大きいと、表面での乱反射が起きることで、発せられる光を効率的に取り出せずに、蛍光特性(例えば蛍光強度)が低下することがある。従って、前記平均面粗さSaの範囲とすることで、高い蛍光特性が得られる。なお、平均面粗さ(算術平均粗さSa)とは、ISO25178で規定されたパラメータである。
【0030】
また、本実施形態で製造された第1波長変換層11は、表面粗さ(算術平均粗さRa)が0.1μmであった。第1波長変換層の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、例えば0.001μm<Ra<0.4μmであってもよい。第1波長変換層の表面粗さRaが0.001μmより小さいと、表面での鏡面反射が起き、入射光を効率的に取り入れられず、蛍光特性(例えば蛍光強度)が低下することがある。一方、表面粗さRaが0.4μmより大きいと、表面での乱反射が起きることで、発せられる光を効率的に取り出せずに、蛍光特性(例えば蛍光強度)が低下することがある。従って、前記表面粗さRaの範囲とすることで、高い蛍光特性が得られる。なお、表面粗さ(算術平均粗さRa)とは、JIS B 0601:2013で規定されたパラメータである。
【0031】
次に、第2波長変換層12の製造方法について説明する。第2波長変換層12の製造方法では、最初に、接着剤(例えば信越化学製一液性加熱硬化型シリコーン接着剤IKE-1825)に熱伝導性の充填材としてAl2O3を添加する。Al2O3が添加された接着剤を撹拌羽根で撹拌し、Al2O3を馴染ませた後、三本ロールで混錬した。なお、混練は三本ロールを用いた方法以外にも、自転・公転式ミキサー、プラネタリーミキサーなど公知の混錬装置を用いることができる。Al2O3は真球状で平均粒子径が10μmの物を使用した。充填材入りの接着剤ペーストに所定量の赤色蛍光体((Sr,Ca)AlSiN3:Eu)を添加し撹拌する。赤色蛍光体は、平均粒子径が10μmの物を使用した。ペーストに赤色蛍光体が均一に混ざり合った後に、硬化剤を添加し撹拌する。ペーストが所定時間撹拌された後に、脱泡されて坏土が作製される。作製した坏土を押出成形機でシート状に成形した後、所定温度の大気雰囲気中で焼成を行うことで、第2波長変換層12が製造される。
【0032】
接着剤は、ウレタン接着剤、アクリル接着剤、エポキシ接着剤、シリコーン接着剤、エン・チオール接着剤など公知の接着剤を使用できるが、耐熱性を有する点でエポキシ接着剤とシリコーン接着剤とエン・チオール接着剤が好ましい。さらに柔軟性を兼ね備える点でシリコーン接着剤が好ましい。エポキシ接着剤やシリコーン接着剤には硬化温度の違いで、室温硬化型と加熱硬化型があり、いずれも使用できる。シリコーン接着剤には硬化反応の違いで、付加硬化型と縮合硬化型があり、いずれも使用できる。付加硬化型は、硬化中に揮発性の副生成物が生じない、大気中の湿気を必要とせず均一な接着が可能という点で好ましい。縮合硬化型は、硬化阻害物質が少なく、幅広い材料組成の被着体に使用可能である点で好ましい。
【0033】
2.蛍光体の評価:
図4および
図5は、蛍光体10の演色性の評価についての説明図である。
図4には、実施形態の蛍光体10を用いた実施例Aの波長の強度分布を表す曲線C4(実線)が示され、
図5には、比較例Zの蛍光体10zにおける波長の強度分布を表す曲線C5(破線)が示されている。また、
図4,5には、太陽光の波長の強度分布を表す曲線C6(一点鎖線)が示されている。比較例Zの蛍光体10zは、実施形態の第2波長変換層12を有していない蛍光体10と同じである。
【0034】
図4に示される曲線C4と
図5に示される曲線C5とを比較すると、
図4に示される実施例Aの650nm付近の波長の強度分布は、太陽光の強度分布に近い。一方で、
図5に示される比較例Zの650nm付近の波長の強度分布は、太陽光の強度分布よりもかなり小さい。すなわち、実施例Aにおける赤色の演色性が高いが、比較例Zが発する光には赤色の成分が不足している。すなわち、実施例Aの演色性は、比較例Zの演色性よりも高い。
【0035】
次に、蛍光体10の第2波長変換層12に含まれる蛍光体粒子12Bと充填材12Cとの量を変化させた場合の実施例1~4および比較例1について評価した。
図6は、実施例1~4および比較例1に含まれる成分についての説明図である。
図6に示されるように、実施例1~3は、第2波長変換層12に含まれる蛍光体粒子の量が異なるサンプルである。実施例4は、実施例2に対して充填材12Cが含まれていないサンプルである。比較例1は、第2波長変換層12に蛍光体粒子12Bが含まれていないサンプルである。なお、
図6に示される数値の単位は、重合部である。充填材を含んでいない実施例4の蛍光体粒子12Bの量が、充填材を含んでいる実施例2よりも少ない理由は、同じ面積および厚みでの第2波長変換層12に含まれる蛍光体10の量を合わせるためである。
【0036】
実施例1~3と比較例1との4つサンプルに対して演色性を評価した。
図7および
図8は、実施例1~3および比較例1に対する演色性の評価結果を示す説明図である。
図7には、光LT1が照射された際に、実施例1~3と比較例1とのそれぞれから発せられる光LT2の波長に応じた発光強度が示されている。
図7では、実施例1の発光強度が曲線C9(一点鎖線)で示され、実施例2の発光強度が曲線C8(二点鎖線)で示され、実施例3の発光強度が曲線C7(実線)で示され、比較例1の発光強度が曲線C10(破線)で示されている。
図6,7に示されるように、蛍光体粒子12Bを多く含むサンプルほど、発光強度が最も高いピークの波長が大きくなっている(ピークの位置が右に移動している)。すなわち、蛍光体粒子12Bを多く含むサンプルほど、赤色の不足がない演色性の高い光を発している。なお、
図7,8の評価結果および後述する
図9,10の評価結果は、日本分光の蛍光分光光度計(FP-8500)の測定装置を用いることにより得られた結果である。この測定装置では、励起波長が450nm(青色)であり、検出波長域が350nm~750nmであり、積分球の検出方式が用いられている。
図7に示される縦軸の数値は、各曲線C7~C10におけるピークを「1」として規格化した場合の数値である。
図7,8の評価に用いられた各サンプルの厚さは、450μmである。
【0037】
図8には、各サンプルについて、演色性としての平均演色評価数(Ra)と、光源60からの光LT1の減衰率を表す内部QYs(%)(内部量子効率)とが示されている。
図8に示されるように、演色性について
図7の評価結果と同じように、蛍光体粒子12Bを多く含むサンプルほど、演色性が高い。また、実施例1~3と比較例1とのそれぞれのサンプルでは、減衰率がほぼ同じであり、蛍光体粒子12Bによる光LT1の減衰がないと考えられる。
【0038】
図9および
図10は、充填材12Cの有無についての評価の説明図である。
図9には、光LT1が照射された際に、実施例2,4のそれぞれから発せられる光LT2の波長に応じた発光強度が示されている。
図9では、充填材12Cを含んでいる実施例2の発光強度が曲線C11(実線)で示され、充填材12Cを含んでいない実施例4の発光強度が曲線C12(破線)で示されている。
図9に示されるように、実施例2と実施例4とでは、発光強度が最大となるピークの数値がほとんど変化していない。
【0039】
図10には、実施例2と実施例4との各サンプルについて、演色性としての平均演色評価数(Ra)と、蛍光体10が吸収した光LT1の吸収率(%)と、光源60からの光LT1の減衰率を表す内部QYs(%)とが示されている。
図10に示されるように、実施例2と実施例4とでは、いずれの評価項目においても差がほとんどない。そのため、
図9および
図10の評価結果から、充填材12Cを第2波長変換層12に加えても、蛍光体10の光学特性はほとんど変化しないと考えられる。
【0040】
図11から
図13までの各図は、充填材12Cについての説明図である。
図11には、第2波長変換層12に含まれるアルミナの添加量(wt%)と、第2波長変換層12の熱伝導率(W/(m・K))との関係が示されている。
【0041】
図12には、充填材12Cが電子顕微鏡で撮影された撮影画像が示されている。
図12に示されるように、本実施形態の充填材12Cとして用いられたアルミナは、大小様々な球形状を有している。
図13には、充填材12Cの各粒子の粒子径の分布を表すグラフが示されている。
図13に示されるように、本実施形態の充填材12Cは、粒子径が約0.8μmと、約9μmとで分布頻度のピークを有しており、平均粒子径は約10μmである。
【0042】
図14は、第2波長変換層12の熱伝導率についての評価の説明図である。
図14には、第2波長変換層12の熱伝導率が異なる実施例3,5~9および比較例1の蛍光体について、発光強度の評価結果が一覧表により示されている。実施例3,5~9では、充填材12Cを変えることにより、第2波長変換層12の熱伝導率が調整されている。なお、実施例3,5~9における各樹脂12Aおよび各蛍光体粒子12Bは、同じ材質が採用されている。
【0043】
熱伝導率の測定は、公知の熱伝導率計を用いて測定でき、例えば、京都電子工業製迅速熱伝導率計QTM-710を使用できる。熱伝導率の測定サンプルは第2波長変換層12のペーストを、長さ150mm、幅100mm、深さ50mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の容器に入れ、乾燥機によって所定の時間、所定の温度、例えば120℃で60分、で加熱することによって作製した。
【0044】
図14に示される発光強度の評価では、発光強度に顕著な低下がみられなかったサンプルを「A」と評価し、発光強度に顕著な低下がみられたサンプルを「B」と評価した。
図14に示されるように、第2波長変換層12の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上である実施例3,8,9の発光強度の評価結果は、「A」であった。一方で、第2波長変換層12の熱伝導率が0.5W/(m・K)未満の実施例5~7および比較例1の発光強度の評価結果は、「B」であった。発光強度の評価の相違について、評価結果が「A」である実施例3,8,9の熱伝導率が、充填材12Cを有さない比較例1の熱伝導率の約2倍であったためと考えられる。
図14に示される発光強度の評価から、第2波長変換層12の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であることが好ましいことがわかる。
【0045】
図15および
図16は、第2波長変換層12の引張伸びおよびヤング率についての評価説明図である。
図15には、第2波長変換層12の引張伸びおよびヤング率が異なる実施例3,10~17の蛍光体10について、第2波長変換層12の剥離の評価結果と、反射光の強度分布の評価とが一覧表により示されている。実施例3,10~17では、樹脂12Aの材質を変えることにより、第2波長変換層12の引張伸びおよびヤング率が調整されている。なお、実施例3,10~17における各樹脂12Aおよび各蛍光体粒子12Bには、同じ材質が採用されている。
【0046】
図15に示される第2波長変換層12の剥離評価では、剥離の有無について評価された。
図16には、第2波長変換層12の剥離が発生するメカニズムを説明するための蛍光体10および反射部材20の概略断面図が示されている。
図16には、光源装置100の使用時において各部材が昇温し、熱膨張した際の状態が示されている。第1波長変換層11は光源60からの光LT1が直接照射されるため、反射部材20よりも温度が上昇しやすく、仮に第1波長変換層11の熱膨張率と反射部材20の熱膨張率とが同じ場合、
図16に示されるように、第1波長変換層11は、反射部材20よりも大きく膨張する。この結果、
図16に示されるように、厚さt1の第2波長変換層12の端面では、歪みε1および伸びL1が発生する。伸びL1の発生により、第2波長変換層12の引張伸び率に応じて、第2波長変換層12が剥離する場合がある。
図16は第1波長変換層11が、反射部材20よりも膨張した例について図示したが、通常は、第1波長変換層11の熱膨張率と反射部材20の熱膨張率が異なり、かつ第1波長変換層11の温度と反射部材20の温度も異なるため、反射部材20が、第1波長変換層11よりも膨張する場合もありうる。
【0047】
図15に示される剥離評価および反射光の強度評価では、第1波長変換層11の熱膨張率(線膨張率)が7ppm/K、反射部材20の熱膨張率が24ppm/K、第2波長変換層12の直径が160mm、第2波長変換層12の厚さt1が0.5mmの波長変換部材50のサンプルについて評価した。
図15に示されるように、第2波長変換層12の引張伸びが7%以上の実施例3,10~16では、第2波長変換層12の剥離が発生しなかった。一方で、第2波長変換層12の引張伸びが4%以下の実施例17では、第2波長変換層12の剥離が発生した。この剥離評価から、第2波長変換層12の引張伸びは、5%以上であることが好ましいことがわかる。
【0048】
図15に示される反射光の強度評価は、円形の光源60から照射された第2波長変換層12の反射光の分布におけるひずみに応じて評価された。具体的には、反射光の強度分布が(長径)/(短径)の比が1.1未満の楕円形の場合に、反射光の分布が良好であるとして「A」と評価され、当該比が1.1以上の楕円形の場合に、反射光の分布が良好でないとして「B」と評価された。
図15に示されるように、第2波長変換層12のヤング率が500MPa以下の実施例3,10~16では、第2波長変換層12の端部に発生する応力が25MPa以下と小さく、反射光の強度評価が「A」であった。一方で、第2波長変換層12のヤング率が2000MPaの実施例17では、端部応力が100MPaであり、反射光の評価が「B」であった。この反射光の強度評価から、第2波長変換層12のヤング率は、1000MPa(1GPa)以下であることが好ましいことがわかる。ヤング率が小さいことにより、第1波長変換層11の凹型もしくは凸型への変形が小さく、反射光の分布が良好であったと考えられる。もし、第1波長変換層11が凹型もしくは凸型に変形した場合は、光源との距離が変化してしまうため、反射光の分布が変化してしまう。
【0049】
なお、ヤング率と引張伸び率の測定は、公知の引張試験機を用いて測定でき、例えば島津製作所製オートグラフAGS-5kNXを使用できる。第2波長変換層12のペーストをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に塗り広げる。塗り広げる方法は、公知の方法を用いることができ、剥離評価および反射光の強度評価では、ドクターブレードを用いる。次に、PETフィルムに塗り広げられた光波長変換部材のペーストを所定の大きさに切断し、その後、切断されたPETフィルム付の第2波長変換層12のペーストを乾燥機によって所定の時間、所定の温度、例えば120℃で60分、で加熱することによって第2波長変換層12のシートが形成される。なお、加熱中において、防塵などの必要に応じて、第2波長変換層12のペーストをカバーフィルムで覆ってもよい。ヤング率測定のための試験片は、上述の第2波長変換層12の製造方法により作製したシートを、幅10mm×長さ70mmの短冊状に切り出すことにより作製した。厚さは、例えば0.5mmとした。当該試験片の両端から長さ20mmの各部分を治具で保持し、中間の長さ30mmの部分でヤング率を測定した。当該試験片が破断するまで引張り速度50mm/分で引っ張りながら、サンプル長による荷重の変化を測定した。当該荷重を試験片の断面積(幅10mm×厚さ0.50mm)で除すことにより引張応力を算出した。ヤング率は、以下の式(1)により算出される歪みを横軸とし、上記引張応力を縦軸とするグラフにおいて、上記引張応力が0.2~0.5MPaとなる範囲の傾きを計算することにより算出した。元のサンプル長は、上記サンプルでは中間の長さ30mmである。引張伸び率は、当該試験片が破断するまで引っ張り、破断したときのサンプル長(mm)から元のサンプル長を引いた後、元のサンプル長(mm)で除すことにより算出した(下式(2)参照)。
歪み(%)=[引っ張り中のサンプル長(mm)-元のサンプル長(mm)]/元のサンプル長(mm)・・・(1)
引張伸び率(%)=[破断したときのサンプル長(mm)-元のサンプル長(mm)]/元のサンプル長(mm)・・・(2)
【0050】
以上説明したように、本実施形態の光源装置100は、第1波長変換層11と、第2波長変換層12とを備えている。第1波長変換層11は、励起光としての光LT1によって励起光よりも長い波長の光を発する蛍光相11Aを有する。第2波長変換層12は、第1波長変換層11の蛍光相11Aが発する青白い光よりも長い波長の赤色の光を発する蛍光体粒子12Bと、充填材12Cとしての無機物のアルミナと、を含んでいる。第2波長変換層12に含まれる蛍光体粒子12Bが、光LT1を、第1波長変換層11に含まれる蛍光相11Aよりも長い波長の光として発する。この結果、蛍光相11Aが発していない波長域の光が蛍光体粒子12Bにより発せられるため、蛍光体10を備える光源装置100は、より太陽光に近い光を発することができる。すなわち、蛍光体10を用いることにより、高い演色性を実現できる。また、充填材12Cとしてのアルミナが第2波長変換層12に含まれているため、蛍光体10の発光強度を低下させずに、蛍光体10の放熱性を向上させることができる。これにより、蛍光体10の温度消光を抑制できる。
【0051】
また、本実施形態の第2波長変換層12の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であるため、蛍光体10は良好な放熱性を有している。これにより、蛍光体10の温度消光をさらに抑制できる。
【0052】
また、本実施形態の第2波長変換層12のヤング率は1GPa以下である。そのため、本実施形態の蛍光体10では、熱応力が緩和され、反り等の変形が抑制される。さらに、本実施形態の第2波長変換層12の引張伸びが5%以上である。そのため、本実施形態の蛍光体10では、熱応力がさらに緩和され、反り等の変形がさらに抑制される。
【0053】
また、本実施形態の第2波長変換層12に含まれる蛍光体粒子12Bは、無機物の赤色蛍光体である。蛍光体粒子12Bが無機物であるため、蛍光体10の耐熱性が向上し、さらに、蛍光体10の温度消光を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態の第2波長変換層12では、第2波長変換層12に含まれる、無機物の蛍光体粒子12Bの平均粒子径と、充填材12Cの平均粒子径との比は、0.3以上3.0以下である。すなわち、第2波長変換層12に含まれる蛍光体粒子12Bの粒子径と、充填材12Cの粒子径とが、一定の範囲に含まれる粒子径である。すなわち、各粒子径をほぼ一致させることにより、塗布する場合に良好な流動性と平坦性が得られる。また、発光効率を高めたり、色むらを低減する点からも好ましい。無機蛍光体の平均粒子径が大きく、(熱伝導性充填材の平均粒子径/無機蛍光体の平均粒子径)>3.0の場合、発光効率が低下しやすい。また、蛍光体の粒子径が大きすぎる場合、塗布したときに粗大粒子の存在により色むらが発生しやすい。さらには、蛍光体の添加量に対し、表面積が小さくなってしまうため添加量当たりの発光効率が低下しやすい。逆に、蛍光体の粒子径が小さすぎ(熱伝導性充填材の平均粒子径/無機蛍光体の平均粒子径)<0.3の場合、粒子同士が凝集しやすくなり、分散性が低下するため、発光効率が低下、色のばらつき、色むらを発生する可能性がある。熱伝導性の充填材と無機蛍光体の平均粒子径を近いものにすることによって、混錬の際に、無機蛍光体を解砕、分散しやすくなり、第2波長変換層12の中で、均一に分散できるようになる。その結果、発光効率を高くかつ色むらを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態の波長変換部材50は、蛍光体10の裏面10b側に配置された反射部材20を備えている。そのため、蛍光体10へと照射されて、反射部材20がない場合に蛍光体10を透過する光は、反射部材20に反射されて蛍光体10の入射面10a側へと反射される。これにより、蛍光体10の入射面10a側により強度の高い光LT2を発することができる。
【0056】
また、本実施形態の光源装置100は、波長変換部材50と、蛍光体10に励起光としての光LT1を照射する光源60と、を備えている。そのため、光源装置100は、光源60から照射された光LT1を、太陽光に近い光LT2、すなわち演色性の高い光LT2を発することができる。
【0057】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
上記実施形態では、蛍光体10、蛍光体10を備える波長変換部材50、および波長変換部材50を備える光源装置100の一例について説明したが、蛍光体10、波長変換部材50、および光源装置100の構成等については、変形可能である。例えば、波長変換部材50は、さらに放熱部材を備えていてもよい。また、反射部材20と放熱部材とを接合する接合層を備えていてもよい。
【0059】
蛍光体10の第1波長変換層11に含まれる蛍光相11Aと、第2波長変換層12に含まれる蛍光体粒子12Bとの組み合わせについては、蛍光相11Aが発する光よりも長い波長の光を蛍光体粒子12Bが発する範囲で変形可能である。例えば、蛍光相11Aおよび蛍光体粒子12Bとして、YAG(Y3Al5O12:Ce3+)、LSN(La3Si6N11:Ce3+)、LYSN((La,Y)3Si6N11:Ce3+)、CASN(CaAlSiN3:Eu2+)、SCASN((Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+)、CSO(CaSc2O4:Ce3+)、β-SiAlON((Si,Al)3(O,N)4:Eu2+)、GYAG(Y3(Al,Ga)5O12:Ce3+)、LuAG(Lu3Al5O12:Ce3+)、SBCA((Sr,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+)、BaMgAl10O17:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Mn、(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu、(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu,Mn、Sr10(PO4)6・Cl2:Eu、CaWO4、LaPO4:Ce,Tb、CeMgAl11O19:Mn、Ce(Mg,Zn)Al11O19:Mn、Zn2SiO4:Mn,Y2O3:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、(Ba,Ca,Mg)10(PO4)6・Cl2:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Mn、Sr4Al14O25:Eu、(Sr,Mg)3(PO4)2:Sn、Sr2P2O7:Eu、Tb3Al5O12:Ce3+、CaGaS4:Eu2+、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu2+、Ca-α-SiAlON:Eu2+、(Sr,Ca)S:Eu2+、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+、(Sr,Ba)3SiO5:Eu2+、K2SiF6:Mn、SrGa2S4:Eu2+、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ca3Sc2O4:Ce3+、(Sr,Ba)SiO2N2:Eu2+、Ba3Si6O12N2:Eu2+のうちのいずれかが選択されてもよい。
【0060】
蛍光体10における第2波長変換層12の熱伝導率は、0.5W/(m・K)未満であってもよい。第2波長変換層12のヤング率は、1GPa未満であってもよい。第2波長変換層12の引張伸びは、5%未満であってもよい。第2波長変換層12に含まれる蛍光体粒子12Bは、無機物以外であって、有機物であってもよい。第2波長変換層12における蛍光体粒子12Bの平均粒径と、充填材12Cの平均粒径との比は、0.3未満であってもよいし、3.0よりも大きくてもよい。
【0061】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0062】
10,10z…蛍光体
10a…蛍光体の入射面
10b…蛍光体の裏面
11…第1波長変換層
11A…蛍光相
11B…透光相
11C…空隙
12…第2波長変換層
12A…樹脂
12B…蛍光体粒子
12C…充填材
12D…空隙
20…反射部材
50…波長変換部材
60…光源
100…光源装置
C1~12…曲線
LT1,LT2…光