(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】カメラシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/617 20230101AFI20240828BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20240828BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20240828BHJP
【FI】
H04N23/617
H04N23/66
G03B17/56 Z
(21)【出願番号】P 2021156310
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】柴原 道輝
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特許第5736341(JP,B2)
【文献】特開2010-273254(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180573(WO,A1)
【文献】特開2018-182367(JP,A)
【文献】特開2016-116003(JP,A)
【文献】特開2014-191646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/617
H04N 23/66
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像を行うカメラと、
前記カメラと接続され、前記カメラから受信した映像信号から映像を取得し、取得した映像を外部に出力するマルチユニットと、
を具備するカメラシステムであって、
前記マルチユニットは、
ソフトウェアを更新させる制御信号を、前記カメラへ送信する制御部と、
前記制御信号を送信後、前記ソフトウェアの更新前のカメラの映像と、更新後のカメラの映像を共に含む評価用映像を出力する評価用映像作成部と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
前記カメラは、前記制御信号を前記マルチユニットから受信すると、前記ソフトウェアの更新前に、映像信号を前記マルチユニットへ送信し、
前記マルチユニットは、当該映像信号を受信すると、当該映像信号から前記ソフトウェアの更新前のカメラの映像を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記マルチユニットは、前記制御信号を送信する前に前記カメラから受信した映像信号から取得した映像を予め記憶し、当該映像を前記ソフトウェアの更新前のカメラの映像とした評価用映像を出力することを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像を行うカメラから得られた映像信号を出力するカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、列車のホームの監視用等、監視のために用いられるカメラは、これと離間した箇所に設置され、これを制御する機能やカメラから得られた映像信号を外部に出力する機能等を有するマルチユニットと接続されて用いられる。この際、単一のマルチユニットに複数のカメラを接続することもできる。例えば前記のホームの監視用の場合には、カメラは、ユーザが操作することは容易ではないが監視の対象を撮像しやすい場所(例えばホームの天井)に設置されるのに対し、マルチユニットは操作者が操作しやすい場所に設置され、両者はケーブルで接続される。
【0003】
この場合、カメラとマルチユニットはそれぞれ別体の装置として製造された後でケーブルを介して接続されるが、以降はこれらは一体化されたカメラシステムとして動作する。このため、例えばこれらの動作に関わるソフトウェア(ファームウェア)の変更(更新)がある場合には、この変更を行う操作や変更に伴う設定の変更等の操作は、カメラとマルチユニットの両方で必要となる場合がある。しかしながら、前記のようにこれらは本来は別装置であるため、従来は変更に伴う作業を両者で独立して行った上で、両者を設置してからケーブルを介して接続する作業が必要とされた。この際、設置後には、ユーザは、操作しやすい場所にあるマルチユニットを直接操作することは容易であるのに対して、一般的にはカメラを直接操作することは容易ではない。
【0004】
これに対して、特許文献1には、カメラ(監視カメラ装置)とマルチユニット(監視カメラ制御端末)とがネットワークを介して接続される場合において、予め2つのソフトウェア(プロトコル)が準備され、カメラ側でプロトコルの変更があった場合に、マルチユニット側でこの変更を認識し、以降は自動的にプロトコルが切り替えられて動作するカメラユニットが記載されている。すなわち、この技術においては、プロトコルの変更に対して必要となる作業の大部分が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術においては、予め準備された複数(2つ)のプロトコルの切替を行う場合の切替動作が容易となったが、例えばカメラ側におけるファームウェアの更新のように、新たなソフトウェアを導入する場合には、従来と同様に、カメラ側とマルチユニット側とで独立した操作が必要となった。
【0007】
更に、このようなファームウェアの更新が行われた場合、カメラシステム全体としての動作の確認作業が必要となった。すなわち、実際には、カメラ側における作業を個別に行うことに加え、カメラとマルチユニットを接続した上で動作を確認する作業も必要になった。
【0008】
こうした作業全体を簡易化するために、実際には、例えばカメラにおけるファームウェアの更新を行う代わりに、カメラ全体を新たなものに交換するということが一般的に行われた。しかしながら、カメラの交換を行う場合には、カメラシステム全体のコストが高くなった。
【0009】
このため、上記のようにカメラとマルチユニットとが組み合わされたカメラシステムにおいて、ファームウェアの更新に伴う作業を容易にする技術が求められた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、撮像を行うカメラと、前記カメラと接続され、前記カメラから受信した映像信号から映像を取得し、取得した映像を外部に出力するマルチユニットと、を具備するカメラシステムであって、前記マルチユニットは、ソフトウェアを更新させる制御信号を、前記カメラへ送信する制御部と、前記制御信号を送信後、前記ソフトウェアの更新前のカメラの映像と、更新後のカメラの映像を共に含む評価用映像を出力する評価用映像作成部と、を具備する。
本発明において、前記カメラは、前記制御信号を前記マルチユニットから受信すると、前記ソフトウェアの更新前に、映像信号を前記マルチユニットへ送信し、前記マルチユニットは、当該映像信号を受信すると、当該映像信号から前記ソフトウェアの更新前のカメラの映像を取得してもよい。
本発明において、前記マルチユニットは、前記制御信号を送信する前に前記カメラから受信した映像信号から取得した映像を予め記憶し、当該映像を前記ソフトウェアの更新前のカメラの映像とした評価用映像を出力してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、カメラシステムにおいて、ファームウェアの更新に伴う作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る、あるいは従来のカメラシステムの全体の構成を示す図である。
【
図2】従来のカメラシステムにおけるカメラとマルチユニットの構成を示す図である。
【
図3】実施の形態に係るカメラシステムにおけるカメラとマルチユニットの構成を示す図である。
【
図4】実施の形態に係るカメラシステムにおける、ファームウェア更新の際の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態に係るカメラシステムにおいて用いられる評価用映像の構成の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るカメラシステム1の全体構成を示す図である。このカメラシステム1においても、特許文献1に記載の技術と同様にカメラ10とマルチユニット30が用いられている。マルチユニット30には、複数種類のフォーマットの映像信号に基づく映像を表示させることができる表示装置50が接続されている。また、パーソナルコンピュータ(PC)60がカメラ10、マルチユニット30に接続されている。カメラ10は監視の対象を撮像するのに適した場所(例えばホームの天井等)に設置されているのに対し、マルチユニット30、表示装置50は、操作者がアクセスしやすい場所に設置されている。また、後述するように、PC60はこのカメラシステム1が監視のために用いられている通常使用時には接続されている必要はない。
【0015】
カメラ10とマルチユニット30は同軸ケーブル100で接続されており、一般的にはカメラ10とマルチユニット30は離間しているため、同軸ケーブル100は長くなる。一方、PC60とカメラ10、マルチユニット30はシリアル通信用ケーブル200で接続され、ここでは例えばこのシリアル通信としてはRS232CやRS485が用いられる。ただし、PC60は上記のカメラシステム1においては補助的に使用され、このカメラシステム1が監視動作のために使用されている通常の状態では不要である。また、カメラ10のファームウェアの更新時においても、PC60は一時的には使用されるが、少なくともこの更新作業に伴う動作確認の際には不要である。このため、前記の通り、通常使用時(監視動作を行う場合)においてはカメラ10、マルチユニット30にシリアル通信用ケーブル200が接続されている必要はなく、PC60も不要である。
【0016】
カメラ10で得られた映像信号は、HD-SDI信号として同軸ケーブル100を介してマルチユニット30に入力する。また、このカメラシステム1においては、定電圧重畳伝送方式が採用されており、マルチユニット30側から同軸ケーブル100を介してカメラ10側に電源電圧(直流24V)が供給される。このため、カメラ10とマルチユニット30は同軸ケーブル100を介して接続されることによって、マルチユニット30側への映像信号の伝達と、カメラ10への電力供給が行われる。あるいは、カメラ10とマルチユニット30が同軸ケーブル100を介して接続されていれば、このカメラシステム1を監視用として動作させることができる。
【0017】
また、マルチユニット30から各種のデータをカメラ10側に転送する制御信号も、この同軸ケーブル100を介して伝送される。このため、カメラ10におけるファームウェアの更新の際には、ファームウェアのデータはPC60側からシリアル通信用ケーブル200を介してマルチユニット30に伝送されて記憶され、その後にマルチユニット30側から同軸ケーブル100を介してカメラ10側に伝送される。このため、カメラ10におけるファームウェアの更新作業を行わせる主体はマルチユニット30となる。
【0018】
この作業を、カメラ10、マルチユニット30が設置されたままの状態(同軸ケーブル100等が接続された状態)で行わせることができ、マルチユニット30がファームウェアのデータを入手した後は、PC60は不要となる。また、ファームウェアの更新作業に伴うカメラシステム1全体の動作の確認作業もこのままの状態で即時行うことができるため、ファームウェアの更新あるいはそれに伴う作業を簡略化することができる。
【0019】
以下に、この動作及びこの動作を実現するためのカメラ、マルチユニットの具体的構成について説明する。まず、比較のために、従来のカメラシステム9におけるカメラ910、マルチユニット930の構成を
図2に示す。このカメラシステム9は、
図1のカメラシステム1におけるカメラ10、マルチユニット30がそれぞれカメラ910、マルチユニット930に置換されて形成される。このため、カメラ910とマルチユニット930は同軸ケーブル100で接続され、PC60がこれらとシリアル通信用ケーブル200で接続される点についても同様である。この際、通常の動作時においてはPC60、シリアル通信用ケーブル200は不要であることも同様であり、表示装置50も同様に用いられる。
【0020】
カメラ910においては、結像のための光学系(レンズ)11を通過した光線を2次元の撮像素子12が受光して一定のフォーマットで2次元の映像信号が生成される。この映像信号は、FPGA(Field Programmable Gate Array)13に入力する。FPGA13は、入力した映像信号に対する圧縮等、各種の処理を行う機能や、カメラ910全体を制御するCPU(Central Processing Unit)としての機能を有するロジック回路であり、これらの動作を行うプログラムがファームウェアとして設定される。
【0021】
FPGA13から出力された映像データは、SDIドライバ14によって同軸ケーブル100で伝送可能な映像信号であるHD-SDI信号として出力される。FPGA13が上記の動作をするにあたり、揮発性のメモリであるSRAM15、不揮発性のメモリであるフラッシュROM16が設けられる。SRAM15はフレームメモリとして、あるいは前記のプログラムの格納用に用いられる。フラッシュROM16は、FPGA13のコンフィギュレーションデータ、カメラ910のファームウェアのプログラム等、各種のデータを記憶するために用いられ、ファームウェアの更新時のバックアップデータを記憶するためにも用いられる。なお、FPGA13は、HD-SDI信号と共に、カメラ910の状態、例えば各部が正常に動作しているか否か、ファームウェアの更新動作が正常に終了したか否か等を示すリターン信号もマルチユニット930側に同軸ケーブル100を介して送信する。
【0022】
また、これらのメモリは、ファームウェアの更新の際に新しいファームウェアをFPGA13に書き込む際に用いられ、この際にデバッグ等を行うためのJTAGインターフェース17もFPGA13に接続される。
【0023】
一方、カメラ910の各部へ供給される直流電力を生成する直流電力生成部18が設けられる。直流電力生成部18は、入力された直流電圧をDC-DCコンバータで変換して適正電圧の直流電力を生成する。直流電力生成部18に入力される直流電圧は、同軸ケーブル100を介して前記の定電圧重畳伝送方式によって伝達される24Vの電圧と、外部電源(図示せず)から入力される12Vの電圧がある。同軸ケーブル100を介した直流電圧は、電圧分離用フィルタ回路19によって同軸ケーブル100から得られる。この直流電圧と、外部電源から入力した直流電圧は、電源選択回路20で切り替えられて直流電力生成部18に入力する。また、このように同軸ケーブル100側からの入力における直流電圧とその他の制御信号等の交流信号を分離するために、結合コンデンサ21が、電圧分離用フィルタ回路19とFPGA13の間に設けられている。
【0024】
この構成により、通常の使用時(監視動作が行われている場合)においては、カメラ910においては同軸ケーブル100を介した電力供給が行われるため、これ以外の外部電源による電力の供給は不要である。一方、例えばカメラ910におけるファームウェアを更新するために同軸ケーブル100をカメラ910から取り外してカメラ910を移動し、PC60の近くでシリアル通信用ケーブル200を介してPC60と接続した場合には、カメラ10に外部電源を接続することによって、カメラ910に対する電力供給を行うことができる。これによってカメラ910におけるファームウェアの更新作業を行うことができる。
【0025】
また、このカメラ910においては、撮像された映像をコンポジット信号(VBS信号)として出力するために、VBSエンコーダ22も用いられる。これにより、マルチユニット930を介さなくとも、カメラ910で得られた映像をモニターすることが可能であり、例えばカメラ910におけるファームウェアを更新するためにカメラ910を同軸ケーブル100から取り外した場合でも、この映像をモニターすることができる。また、PC60との間のシリアル通信用ケーブル200を介した通信のために、シリアル通信部23が設けられている。
【0026】
一方、マルチユニット930においては、カメラ910側から同軸ケーブル100を介して入力したHD-SDI信号から認識された映像信号に対する各種の処理を行う機能や、マルチユニット930におけるCPUとしての機能を有するロジック回路であるFPGA31が、SDIレシーバ32、結合コンデンサ33を介して設けられる。FPGA31には、カメラ910の場合と同様に、SRAM34、フラッシュROM35、FPGA31のファームウェアの更新の際に用いられるJTAGインターフェース36が同様に設けられる。
【0027】
また、このマルチユニット930は商用交流電源(AC100、200V等)で駆動される。このため、マルチユニット930の各部に供給される直流電力を生成する直流電力生成部37が設けられる。この際、この直流電力生成部37は、前記のように定電圧重畳伝送方式によってカメラ10側に伝達する24Vの直流電圧も生成する。この直流電圧は、電圧重畳用フィルタ回路38を介して同軸ケーブル100側に入力する。また、カメラ910と同様に、PC60とシリアル通信を行うためのシリアル通信部39が設けられる。
【0028】
前記のように、このマルチユニット930には、複数種類のフォーマットの映像信号に基づく映像を表示させることができる表示装置50が接続される。このため、FPGA13で処理後の映像信号を各種のフォーマット(DVI-D、アナログRGB、VBS)で出力するフォーマット変換IC40が設けられる。また、この映像信号を再びHD-SDI信号として出力するSDIドライバ41も設けられる。また、マルチユニット930には、通常の電気機器と同様に、タッチパネルディスプレイ等によってユーザからの各種の操作を受け付ける操作部も設けられるが、本願発明とは無関係であるため、その記載は省略されている。
【0029】
この構成により、監視動作の際には、前記のように、カメラ910で得られた映像信号(HD-SDI信号)は同軸ケーブル100を介してマルチユニット930に伝わり、これによる映像を表示装置50、あるいはこれ以外のディスプレイでも表示させることができる。また、カメラ910の電源(直流電力)もマルチユニット930から同軸ケーブル100を介して供給することができるため、カメラ910に対するこれ以外の電力供給は不要である。更に、上記の監視動作においては
図1におけるPC60、シリアル通信用ケーブル200は不要である。このため、マルチユニット930をアクセスが容易である場所に設置し、この場所から監視に適した場所(ホームの天井等)まで同軸ケーブル100を敷設した上でカメラ910を設置して接続すれば、このカメラシステムを監視のために用いることができる。
【0030】
一方、カメラ910、マルチユニット930におけるファームウェアの更新は、PC60とシリアル通信用ケーブル200を介した通信を行うことによって行われる。通常の監視動作を行う場合とは異なり、この作業はカメラ910、マルチユニット930で個別に行われる。前記のように、通常はカメラ910はアクセスが容易ではない場所に設置されるため、この作業においては、カメラ910への同軸ケーブル100の接続を取り外し、使用されている場所からカメラ910をPC60の近くに搬送する作業が必要となる。この場合においては同軸ケーブル100(マルチユニット930)からの電力供給はできなくなるため、前記のように外部電源を別途用いてこの作業は行われる。また、例えばファームウェアの更新の前後の映像は、例えばVBSエンコーダ22から出力された映像信号を用いて、実際にカメラ910で撮像された映像を外部のディスプレイで確認することができる。
【0031】
一方、マルチユニット930のファームウェアの更新を行う場合には、前記のように、カメラ910とは異なりマルチユニット930はユーザが操作しやすい場所に設置されているため、PC60をマルチユニット930に接続する作業は容易であり、この作業を容易に行うことができる。
【0032】
例えばカメラ910におけるファームウェアの更新を行った場合には、更新後の映像の確認は、カメラ910からの直接的な出力ではなく、マルチユニット930を組み合わせた上でのマルチユニット930からの出力を用いて行うことが望ましい。更に、この場合の映像は、例えばこのカメラシステム9が監視用に用いられている場合には、実際に使用されている状況でのものを用いることが好ましい。この場合、この確認作業はカメラ910を再びマルチユニット930と組み合わせて行うことが必要になるため、ファームウェアの更新に伴う作業が非常に煩雑となる。
【0033】
これに対して、
図3は、本発明の実施の形態に係るカメラシステム1におけるカメラ10、マルチユニット30の構成を
図2に対応させて示す図である。このカメラ10においても、光学系(レンズ)11、撮像素子12、FPGA13、SDIドライバ14、SRAM15、フラッシュROM16、JTAGインターフェース17、直流電力生成部18、電圧分離用フィルタ回路19、電源選択回路20、結合コンデンサ21、VBSエンコーダ22、シリアル通信部23が、同様に設けられており、これらの機能も上記と同様である。このため、映像データがHD-SDI信号として同軸ケーブル100を介してマルチユニット30に伝達されること、カメラ10への電力供給がマルチユニット30側から同軸ケーブル100を介して行われることについても、前記のカメラ910と同様である。
【0034】
ただし、このカメラ10とマルチユニット30との間では、映像信号と共に各種の制御信号が多重化され、同軸ケーブル100を介して伝達される。すなわち、マルチユニット30側からカメラ10側には、前記の直流電力と共に制御信号も伝達される。この制御信号は、例えばファームウェアの更新時においてシリアル通信用ケーブル200を介してPC60から送信される制御信号と同様のものである。このため、この制御信号を用いて、ファームウェアのデータを伝送すること、及びファームウェアの更新の指示等を、カメラ10に対してマルチユニット30が行うことができる。このため、前記のカメラ910とは異なり、この制御信号を同軸ケーブル100側から分離して入手する制御信号分離用フィルタ回路24が
図3においてカメラ10に設けられている。
【0035】
図3のマルチユニット30における、SDIレシーバ32、結合コンデンサ33、SRAM34、フラッシュROM35、JTAGインターフェース36、直流電力生成部37、電圧重畳用フィルタ回路38、シリアル通信部39、SDIドライバ41は、前記のマルチユニット930におけるものと同様であり、同様に機能する。
【0036】
ただし、ここでは、特にカメラ10におけるファームウェアの更新動作を制御する、あるいはファームウェアのデータ自身を送信する信号である制御信号を生成する動作を、FPGA(制御部)42がFPGA31の代わりに行う。また、この制御信号を同軸ケーブル100で伝搬させるための制御信号重畳回路43が設けられる。
【0037】
また、このマルチユニット30も、カメラ10側から得られた映像データを表示ユニット50で表示させるために、この映像データを各種のフォーマットに変換して出力する。ただし、この際に、ある時点で入力された映像データに基づく映像を単に表示させるだけでなく、以下に説明するように、ファームウェアの更新前後の映像が比較できるように、ファームウェアの更新の前と後の、それぞれの映像(静止画像)を共に表示する評価用映像を出力する。このような動作を、前記のフォーマット変換IC40が行う動作に加えて行う表示制御用IC(評価用映像作成部)44が、フォーマット変換IC40の代わりに用いられる。表示制御用IC44には、メモリ(SDRAM等)が内蔵され、例えば静止画像(映像における1フレームの画像)のデータを一時的に記憶させて処理を行うことができる。また、この動作で表示される映像データ等の記憶をするための、不揮発性の画像記録用フラッシュROM45も設けられる。
【0038】
このカメラシステム1においては、カメラ10におけるファームウェアの更新を行う際に主として機能するのは、マルチユニット30となる。この際、ファームウェアの更新の前後において得られた画像を評価用映像として同時に表示装置50で表示させる動作が行われる。このようなカメラ10のファームウェアの更新作業及び更新の前後における映像の確認作業を、カメラ10が監視のために所定の場所に設置され、同軸ケーブル100のみが接続された状態で行うことができる。このため、カメラ10のファームウェアの更新に伴う作業が容易となる。
【0039】
特にこのような画像を表示させる動作について以下に説明する。
図4は、この場合における動作を示すフローチャートであり、この動作は主にFPGA(制御部)42により、表示制御用IC44、画像記録用フラッシュROM45を用いて行われる。ここでは、予めマルチユニット30において、新しいファームウェアのプログラムはPC60から入手され、SRAM34やフラッシュROM35で記憶される。このため、その後において実際にカメラ10側で更新動作が行われる際にはPC60は不要である。
【0040】
図4において、マルチユニット30がユーザの操作によりカメラ10におけるファームウェアの更新の指示を受けると(S1)、FPGA42は、すぐにはこの更新動作を行わせずに、通常の動作をカメラ10に継続させる。これによって、この時点でカメラ10によって得られた映像信号をマルチユニット30が入手することができる。FPGA42は、この映像信号による静止画像(更新前画像)のデータを画像記録用フラッシュROM45に記憶させる(S2)。
【0041】
その後、FPGA42は、カメラ10側への制御信号によって、新しいファームウェアのプログラムを送信してこの更新を行わせる(S3)。これによって、カメラ10側では通常動作が停止してこの更新動作が行われる。この際、必要となるバックアップデータはフラッシュROM16に記憶される。更新動作が終了したら、カメラ10はその旨をリターン信号として発し、通常の監視動作を再開させる。このリターン信号を受信することによって、マルチユニット30側では更新動作が終了したことを認識する。
【0042】
その後、FPGA42は、ファームウェアの更新後における映像信号を入手し、前記の更新前画像の場合と同様に、この映像信号による静止画像(更新後画像)を取得する(S4)。FPGA42は、表示制御用IC44に、この更新後画像と、画像記録用フラッシュROM45に記憶された更新前画像とを同一画面で表示させた評価用映像を作成させ、通常の映像と同様に、表示装置50側に出力させる(S5)。ユーザは、この映像を目視して、更新前画像と更新後画像を詳細に対比し、ファームウェアの変化による影響を確認することができる。この際、この評価用映像も、前記のように複数種類のフォーマットで出力されるため、ユーザは確実にこの評価用映像を視認することができる。
【0043】
これにより、更新によって問題が発生した場合には、ユーザは、マルチユニット30を再び操作して対応をする、例えば更新後に映像が劣化した場合にはファームウェアを元のバージョンに戻す等の作業をすることができる。この場合には、カメラ10においてフラッシュROM16に記憶されたバックアップデータを用いることができる。この作業を含め、
図4のフローチャートの動作は、PC60を接続せず、カメラ10が設置されたままの状態で行うことができる。
【0044】
図5は、このような評価用映像(S5)の構成の例を示す。
図5(a)は、表示装置50における表示画面50D中において、更新後画像G2中にウィンドウとして更新前画像G1を表示させる例である。前記のように、このカメラシステム1が監視用に用いられる場合には、撮像される対象は変化せず、更に、上記の更新動作の際にカメラ10は移動しないために、更新の前後における視野の変化も実質的にはない。このため、このように更新後画像G2と更新前画像G1とを同時に表示させることによって、両者の違いを容易に認識することができる。
【0045】
この際、
図5(b)に示されるように、
図5(a)の例における更新後画像G2中における更新前画像G1の位置、大きさは、これらの対比が容易となるように、調整可能とすることが好ましい。すなわち、表示制御用IC44は、ユーザからの操作によって更新前画像G1の位置、大きさを変更することができる。
【0046】
また、
図4のフローチャートでは、更新前画像は更新動作(S3)の直前に1回取得される(S2)ものとしたが、例えば、前記のように更新前画像を予め定期的に取得・記憶しておくこともできる。また、過去のファームウェアの更新の度に取得した画像を更新前画像として記憶することもできる。このような場合には、画像記録用フラッシュROM45等には複数の更新前画像を記憶させることができる。このような場合には、更新前画像には、これを取得した日時やファームウェアのバージョンNo.を対応付けて記憶させることができる。
【0047】
この場合、
図5(c)に示されるように、更新後画像を含めて、複数(
図5(c)においては4つ:更新後画像G2、更新前画像G11~G13)の画像を評価用映像として同時に表示させることができる。この場合においても、各画像の位置、大きさを調整可能とすることができる。
【0048】
このように評価用映像を用いてファームウェアの更新に伴う映像の変化をユーザが確認できる構成は、このカメラシステム1が監視用に用いられる場合のように、撮像の対象が変化しない場合には特に有効である。特に、上記の構成においては、ファームウェアの更新時及びその後の映像の確認作業において、カメラ10に対するユーザの直接的な操作は不要となるため、監視用のカメラシステムとして上記の構成は特に有効である。
【0049】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0050】
1、9 カメラシステム
10、910 カメラ
11 光学系(レンズ)
12 撮像素子
13、31 FPGA(Field Programmable Gate Array)
14、41 SDIドライバ
15、34 SRAM
16、35 フラッシュROM
17、36 JTAGインターフェース
18、37 直流電力生成部
19 電圧分離用フィルタ回路
20 電源選択回路
21、33 結合コンデンサ
22 VBSエンコーダ
23、39 シリアル通信部
24 制御信号分離用フィルタ回路
30、930 マルチユニット
32 SDIレシーバ
38 電圧重畳用フィルタ回路
40 フォーマット変換IC
42 FPGA(制御部)
43 制御信号重畳回路
44 表示制御用IC(評価用映像作成部)
45 画像記録用フラッシュROM
50 表示装置
50D 表示画面
60 パーソナルコンピュータ(PC)
100 同軸ケーブル
200 シリアル通信用ケーブル
G1、G11~G13 更新前画像
G2 更新後画像