(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ドラムブレーキのための減速モータ
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20240828BHJP
F16D 51/50 20060101ALI20240828BHJP
F16D 65/22 20060101ALI20240828BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20240828BHJP
F16H 1/12 20060101ALI20240828BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240828BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20240828BHJP
F16D 125/52 20120101ALN20240828BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D51/50
F16D65/22
F16H1/06
F16H1/12
H02K7/116
F16D121:24
F16D125:52
(21)【出願番号】P 2021536817
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 FR2019053158
(87)【国際公開番号】W WO2020136325
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-07
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517271212
【氏名又は名称】ヒタチ アステモ フランス
【氏名又は名称原語表記】Hitachi Astemo France
【住所又は居所原語表記】126 Rue de Stalingrad, 93700 Drancy, France
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】モリナーロ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ギニョン,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】デュパ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クアズグエル,ガエタン
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/148245(WO,A1)
【文献】実開昭59-048690(JP,U)
【文献】実開昭51-012873(JP,U)
【文献】特表2017-502230(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00632213(EP,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02400793(FR,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0011038(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
F16D 51/50
F16D 65/22
F16H 1/06
F16H 1/12
H02K 7/116
F16D 121/24
F16D 125/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ(21)及び減速ギヤボックス(32)を備えた、ドラムブレーキの機械式パーキングブレーキアクチュエータ(7)用のギヤードモータであって、前記電気モータ(21)が、第1軸に沿って延在する出力シャフト(24)を有し、前記減速ギヤボックス(32)が、第2軸に沿って延在する出力軸を含み、前記ギヤードモータが、
第1角度伝達部(4
4)を、前記電気モータ(21)と前記減速ギヤボックス(32)との間
に備えており、前記
第1角度伝達部(44
)がクラウンギヤ
(34a)を含
み、
前記ギヤードモータが、第2角度伝達部(46)を、前記減速ギヤボックス(32)の出力部に備えており、前記第2角度伝達部(46)がクラウンギアを含む、
ギヤードモータ。
【請求項2】
電気モータ(21)及び減速ギヤボックス(32)を備えた、ドラムブレーキの機械式パーキングブレーキアクチュエータ(7)用のギヤードモータであって、前記電気モータ(21)が、第1軸に沿って延在する出力シャフト(24)を含み、前記減速ギヤボックス(32)が、第2軸に沿って延在する出力軸を含み、前記ギヤードモータが、また、少なくとも1つの角度伝達部(46)を、前記減速ギヤボックス(32)の出力部に備えており、前記角度伝達部(46)が、
前記ドラムブレーキの前記機械式アクチュエータ(7)の歯付きホイール(48)と噛み合うためのピニオン(38b)を含み、前記ピニオン(38b)が、歯付きホイール
(38a)の面により担持されているリングギヤを形成しており、前記リングギヤ(38b)と前記歯付きホイール(
38a)とが段付きギヤを形成している、ギヤードモータ。
【請求項3】
前記
第1角度伝達部(44)がピニオン(25)及び前記クラウンギヤ(34a)を含み、前記ピニオン(25)が、前記電気モータ(21)の前記出力シャフト(24)に係合されており、且つ、前記減速ギヤボックス(32)の一部である前記クラウンギヤ(34a)と噛み合っている、請求項
1に記載のギヤードモータ。
【請求項4】
前記クラウンギヤ(34a)
とピニオン(34b)
が一体的に回転可能であり、
前記クラウンギヤ(34a)が前記ピニオン(34b)と共に段付きギヤ(34)を形成している、請求項
3に記載のギヤードモータ。
【請求項5】
前記
第2角度伝達部(46)が、前記ドラムブレーキの前記機械式アクチュエータ(7)の歯付きホイール(48)と噛み合うためのピニオン(38b)を含み、前記ピニオン(38b)が、歯付きホイール
(38a)の面により担持されているリングギヤを形成しており、且つ、前記リングギヤ(38b)と前記歯付きホイール(38a)とが段付きギヤを形成している、請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項6】
前記第1角度伝達部(44)がピニオン(25)及び前記クラウンギヤ(34a)を含み、前記ピニオン(25)が、前記電気モータ(21)の前記出力シャフト(24)に係合され、且つ、前記減速ギヤボックス(32)の一部である前記クラウンギヤ(34a)と噛み合っており、且つ、 前記第2角度伝達部(46)が、前記ドラムブレーキの前記機械式アクチュエータ(7)の歯付きホイール(48)と噛み合うためのピニオン(38b)を含み、前記ピニオン(38b)が、歯付きホイール
(38a)の面により担持されているリングギヤを形成しており、前記リングギヤ(38b)と前記歯付きホイール(38a)とが段付きギヤを形成している、請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項7】
前記減速ギヤボックスが1以上の段付きギヤ(34,35,36,38,38)を含み、前記ギヤの各々が歯付きホイール及びピニオンを含み、前記歯付きホイールと前記ピニオンとが同軸である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項8】
前記段付きギヤ(34,35,36,38,38)の軸が電気モータ(21)の第1軸と直交している、請求項
7に記載のギヤードモータ。
【請求項9】
4個~6個の前記段付きギヤを含む、請求項
8に記載のギヤードモータ。
【請求項10】
前記第1軸と前記第2軸とが交差している、請求項1~
9のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項11】
ドラム、バッキングプレート(2)、2つのシュー(3,4)、及び、パーキングブレーキ用の前記バッキングプレート(2)に取り付けられた機械式アクチュエータ(7)と、請求項1~
10のいずれか一項に記載のギヤードモータと、を備えたドラムブレーキ。
【請求項12】
段付きギヤの軸が前記ドラムの軸に平行である、請求項
11に記載のドラムブレーキ。
【請求項13】
前記減速ギヤボックスが、ブレーキバッキングプレートに平行に延在する2つの平行な平面を有するハウジング(54)を含む、請求項
12に記載のドラムブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車両ブレーキの分野に関し、より具体的には、ドラムブレーキのシューを操作するための、全体寸法が縮小されたギヤードモータアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車業界において、電気機械式パーキングブレーキの機能は、静止している車両を、不測の移動防止のために停止させておくことである。このブレーキは、さらに、車両内の一般的に油圧式の常用ブレーキシステムとは独立の第2ブレーキシステムの法的要件を満たし、そして、その他の快適性及び安全性の機能を、特にブレーキシステムの自己診断機能により果たす。
【0003】
特許文献1から、ドラムブレーキに機械式アクチュエータを、最初から設置されている油圧アクチュエータに加えて設置できることが知られている。
図1に符号1で示されているこのようなドラムブレーキは、軸AXを中心に回転するバッキングプレート2を備え、バッキングプレート2に、円弧状の第1シュー3及び第2シュー4が設けられている。シュー3とシュー4とは、ドラム(図示せず)の円筒状内面に押し付けることができるように半径方向に移動可能である。
【0004】
シュー3及びシュー4は、各々、平坦なシート金属から作られた円形のリング部の形態のウェブ3a、ウェブ4aを有し、ウェブ3a、ウェブ4aは、ブレーキライニング3b、ブレーキライニング4bを担持している。シュー3及びシュー4の端部が、バッキングプレート2に担持されている油圧ホイールシリンダ6及び機械式アクチュエータ7の両方に支持された状態で、直径方向に対向して取り付けられている。これらのシュー3及びシュー4は、さらに、2つの戻りばね8及び戻りばね9により互いに向かって付勢され、且つ、各々、ばね10、ばね11によりバッキングプレート2に押し付けられている。
【0005】
摩耗吸収ロッド12がホイールシリンダ6に沿って延在し、摩耗吸収ロッド12の第1端部が第1シュー3のウェブ3aに支持され、第2端部が第2シュー4のウェブ4aに支持されている。
【0006】
ホイールシリンダ6は、ドラムブレーキ1の使用時に、「シンプレックス」として知られる第1の動作モードに従って作動される。この動作モードは、走行中の車両を制動するために特に適合された漸進的制動を行う。ホイールシリンダ6は、油圧が増大すると互いに遠ざかるように移動する、2つのピストンによりその端部が閉じられた油圧室を含み、シュー3及びシュー4の関連する端部を押す。
【0007】
一方、機械式アクチュエータ7は、パーキングブレーキ及び緊急ブレーキを提供する。これは、特にホイールシリンダ6が非作動状態のときに、シューの関連する端部を互いに遠ざけることにより行われて、車両のホイールの迅速且つ強力なロックを、いわゆる「デュオサーボ」動作モードに従って提供する。このアクチュエータは、軸AYを有する電気モータ21により駆動される。
【0008】
実際、機械式アクチュエータの使用に関する問題の1つは、電気モータの低トルクに関連する高回転速度を、十分な負荷を有する低変位に変換する必要があることにある。この目的のために、特許文献1は、モータ21の回転(より正確には、このモータにより直接駆動される軸AYモータピニオンの回転)を機械式アクチュエータ7に伝達する減速モジュールを提供することを教示している。この減速モジュールは軸AYを中心とし、且つ、軸AYの遊星ギヤトレインの複数の段を含む。これは、機械式アクチュエータ7に接続している軸AY出力ギヤにて測定される減速モジュールの出力と、モータピニオンにて測定される減速モジュールの入力との間の効率的な減速を提供するためである。さらに、モータ21と減速モジュールとは、共に円筒状ハウジング内に収容されている。
【0009】
ギヤードモータのこのような構造、すなわち、モータ21と減速モジュールとの組合せは、モータの軸が遊星ギヤトレインの軸に平行に配置されること、及び、減速モジュールの軸が機械式アクチュエータ7の歯付きホイールの軸に平行に配置されることを必要とする。従って、減速モジュールに対するモータの配置は、ドラムブレーキプレートに対するギヤードモータの向きと同じになるように設定される。
【0010】
しかし、その構造が車輪の利用可能なスペースの異なる構造に適合され得るギヤードモータを作成できることが望ましい。さらに、先行技術のギヤードモータは全体寸法が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、様々な構造の車輪に容易に適合され得る、例えばドラムブレーキのパーキングブレーキを作動させるためのギヤードモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、クラウンギヤにより形成された少なくとも1つの角度伝達部を含むギヤードモータにより達成される。
【0014】
また一方で、角度伝達部の実装は、ギヤードモータの構成及び/又は前記ドラムブレーキの機械式アクチュエータに対する角度伝達部の向きの自由度を増大させる。また一方で、クラウンギヤを有する角度伝達部の実装は、前記減速ギヤボックスに対する前記モータの出力軸の向きの選択の自由度を増大させる。
【0015】
さらに、前記クラウンギヤ内で、前記クラウンギヤの歯に対するピニオンの歯の噛み合い位置が、前記角度伝達部の向きを変えずに変更されることができ、前記ギヤードモータの構成にさらなる自由度をもたらす。
【0016】
有利には、前記ギヤードモータの全体寸法が縮小され得る。
【0017】
非常に有利には、クラウンギヤを備えた角度伝達部が、前記モータと前記減速ギヤボックスとを接続している。例えば、ピニオンが前記電気モータの前記出力シャフトに取り付けられて、前記減速ギヤボックスの一部を形成しているクラウンギヤと噛み合う。例えば、ピニオンが前記クラウンギヤと同軸状に配置され、且つ前記クラウンギヤと回転可能に一体であり、前記減速ギヤボックスの歯付きホイールを駆動する。
【0018】
有利には、角度伝達部が、前記減速ギヤボックスの出力部と前記パーキングブレーキアクチュエータとを接続し、且つ、クラウンギヤを含む。
【0019】
好ましくは、前記減速ギヤボックスは、外部に接触する、並置された段付きギヤトレインを含み、これらのギヤの各々がピニオン及び歯付きホイールを含み、各段付きギヤにおいて前記ピニオンと前記歯付きホイールとは同軸であり、互いに回転可能に一体に重ねて配置されている。1つのギヤの前記ピニオンが、隣接する段付きギヤの歯付きホイールと噛み合っている。
【0020】
このような減速ギヤボックスを作成することにより、ギヤードモータの構成の自由度がさらに増大する。
【0021】
従って、本発明の主題の1つは、電気モータ及び減速ギヤボックスを備えた、ドラムブレーキの機械式パーキングブレーキアクチュエータ用のギヤードモータを提供することであり、前記電気モータは、第1軸に沿って延在する出力シャフトを含み、前記減速ギヤボックスは、第2軸に沿って延在する出力軸を含む。前記ギヤードモータはまた、少なくとも1つの角度伝達部を、前記電気モータと前記減速ギヤボックスとの間に、或いは、前記減速ギヤボックスの出力部に備えており、前記角度伝達部はクラウンギヤを含む。
【0022】
有利には、前記角度伝達部がピニオン及びクラウンギヤを含み、前記ピニオンが前記電気モータの前記出力シャフトに係合されており、且つ、前記減速ギヤボックスの一部である前記クラウンギヤと噛み合っている。
【0023】
前記クラウンギヤはピニオンと回転可能に一体であり得、且つ、前記ピニオンと共に段付きギヤを形成している。
【0024】
前記角度伝達部は、前記ドラムブレーキの前記機械式アクチュエータの歯付きホイールと噛み合うためのピニオンを含むことができ、前記ピニオンは、歯付きホイールの面により担持されているリングギヤを形成している。そして、前記リングギヤと前記歯付きホイールとが、段付きギヤを形成している。
【0025】
有利には、前記ギヤードモータは、第1角度伝達部及び第2角度伝達部を備え、前記第1角度伝達部は、ピニオン及びクラウンギヤを含み、前記ピニオンは、前記電気モータの前記出力シャフトに係合され、且つ、前記減速ギヤボックスの一部である前記クラウンギヤと噛み合っている。そして、前記第2角度伝達部は、前記ドラムブレーキの前記機械式アクチュエータの歯付きホイールと噛み合うためのピニオンを含み、前記ピニオンは、歯付きホイールの面により担持されているリングギヤを形成しており、前記リングギヤと前記歯付きホイールとが、段付きギヤを形成している。
【0026】
例えば、前記減速ギヤボックスは1以上の(例えば4個~6個の)段付きギヤを含み、前記段付きギヤの各々が、歯付きホイール及びピニオンを含み、前記歯付きホイールと前記ピニオンとは同軸である。
【0027】
有利には、前記段付きギヤの軸は電気モータの第1軸と直交している。
【0028】
有利には、前記第1軸と前記第2軸とは交差している。
【0029】
本発明の別の主題は、ドラム、バッキングプレート、2つのシュー、及び、パーキングブレーキ用の前記バッキングプレートに取り付けられた機械式アクチュエータと、本発明によるギヤードモータと、を備えたドラムブレーキである。
【0030】
好ましくは、段付きギヤの軸は前記ドラムの軸に平行である。
【0031】
前記減速ギヤボックスは、ブレーキバッキングプレートに平行に延在する2つの平行な平面を有するハウジングを含み得る。
【0032】
本発明は、以下の説明及び添付図面を参照してより良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】先行技術による電気パーキングブレーキアクチュエータを備えたドラムブレーキの斜視図である。
【
図2】本発明の例示的な一実施形態によるギヤードモータが取り付けられたドラムブレーキの、ギヤードモータハウジングのドラム及びカバーが図示されていない斜視図である。
【
図3】モータ出力部での角度伝達部における
図2の詳細図である。
【
図5】本発明の例示的な実施形態によるギヤードモータを有するドラムブレーキを車両のシャーシに取り付ける状態の、ドラム及びハウジングのカバーが省略されている斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図2に、電気パーキングブレーキアクチュエータ7を備えたドラムブレーキ1に関する、本発明によるギヤード(歯車)モータMR1の有利な一例の斜視図が見られる。
【0035】
ギヤードモータMR1は、電気モータ21、及び、伝達モジュール又は減速ギヤボックス32を含む。
【0036】
示されている例において、電気モータ21及びその出力シャフト24は軸AYに沿って延在し、伝達モジュールの出力軸は、軸AY及びAZに直交する軸AZに沿って延在している。
【0037】
この例において、伝達モジュールは、バッキングプレート2に平行に延在することを意図している。
【0038】
示されている例において、有利には、伝達モジュールの運動学的チェーンは、いわゆる複合減速の形態であり、この形態において、ギヤ要素は、外部に接触する段付きギヤ(好ましくは4個~6個)の線状列(トレイン)の形態である。
図2の例において、5個の段付きギヤ34,35,36,37,及び38が存在している。
【0039】
段付きギヤ34,35,36及び37は、それぞれ、歯付きホイール34a,35a,36a,37aの形態の第1の段と、ピニオン34b,35b,36b,37bの形態の第2の段とを含み、ピニオンは、対応する歯付きホイールに堅固に接続され、歯付きホイールよりも直径が小さい。ギヤ38は、歯付きホイール38a及びリングギヤ38bを含む。
【0040】
段付きギヤ34,35,36,37,及び38は、各々、別個の固定軸AX34,AX35,AX36,AX37及びAX38を中心に回転可能に取り付けられるように配置され、これらの軸の各々が互いに平行であり、且つ、この数字の順番で減速方向(すなわち、モータピニオンから機械式アクチュエータ7への方向)に沿って配置されている。これらのギヤは、1つのギヤの出力を形成するピニオンが、次のギヤの歯付きホイールと噛み合うように特に寸法が決められており、歯付きホイール34aが運動学的チェーンの入力要素を形成し、一方、ピニオン38bがこのチェーンの出力要素を形成している。
【0041】
代替的に、伝達モジュールがピニオン及び単一歯ホイール、又は、シングルピニオン及び歯付きホイール並びに段付きピニオンを含む。これらの個数、及び、これらの各々の歯の数は、所望の減速により設定される。
【0042】
さらに、ギヤードモータMR1は、モータ21と伝達モジュール32とを接続している第1角度伝達部44と、伝達モジュールの出力部とアクチュエータ7とを接続している第2角度伝達部46とを有する。
【0043】
第1角度伝達部44は、有利にはクラウンギヤタイプであり、ピニオン25及びクラウンギヤ34aを含み、ピニオン25がクラウンギヤ34aと噛み合っている。ピニオン25は電気モータ21の出力シャフト24に係合している。
【0044】
クラウンギヤ34aは、ホイールを有し、その片側に歯がリング状に形成されている。
図3では、クラウンギヤが単独で示されている。
【0045】
クラウンギヤを有する角度伝達部は、ピニオン25の軸を歯付きホイール34aの軸に対して方向付ける際の自由を提供する(すなわち、角度伝達部の角度選択における自由度を大きくする)という利点を提供する。実際、AX34軸と軸AYとの間の角度αは30度から135度まで変化し得る。これにより、モータと伝達モジュールとの方向付けを幅広く選択できるため、ギヤードモータの形状を利用可能なスペースの形状に適合させ得る。さらに、取り付け精度に関する要件が軽減される。
【0046】
さらに、歯付きホイール34aの歯に対するピニオン25の歯の位置が変化し得る。
図4において、噛み合い長さLeは、ピニオンの歯が歯付きホイール34aの歯に係合するゾーンの長さに対応している。ピニオン25は、クリアランスjを備えた歯付きホイールに対して配置され得る。クリアランスjは、±1/100mm~±10mm、有利には、±1/10mm~±5mm、好ましくは±1mm~±3mm、さらにはより好ましくは、±2mmの間である。
【0047】
クラウンギヤにより許容されるこのアセンブリクリアランスは、ギヤードモータの様々な要素の配置の自由度を高めることに寄与する。取り付け精度の要件も緩和される。
【0048】
さらに、クラウンギヤによる角度伝達は、97%~99%の効率を提供する。比較すると、ベベルギヤを使用した角度伝達の効率は、クラウンギヤを使用した角度伝達の効率よりも約30%低い。
【0049】
有利には、示されている例において、第2角度伝達部もクラウンギヤを有する。ピニオン37bにより駆動される歯付きホイール38aは、その面の1つ(
図2における上面)において、ピニオン38b(ギヤードモータの回転をアクチュエータ7に伝達する伝達ギヤ52の歯付きホイール48と噛み合う)を担持している。伝達ギヤ52は、平行軸を有するホイール48,50を含む。
【0050】
ピニオン38bはリングギヤを含む。ピニオン38bと歯付きホイール48とが、アクチュエータの第2角度伝達部のクラウンギヤを形成している。
【0051】
示されている例において、伝達ギヤ55が歯付きホイール48及び歯付きホイール52を含み、これが、ブレーキシューの端部に支持されているピストンをドラムに向かって移動させる。
【0052】
或いは、ギヤードモータは、クラウンギヤ及び円錐状角度伝達部を有する角度伝達部を含む。
【0053】
図5に、本発明によるギヤードモータの別の例であるMR2が見られ、MR2は、角度伝達部46を出力部のみに含む。この例においては、電気モータの出力シャフトが歯付きホイール34aを直接駆動する。歯付きホイール/ピニオンの噛み合っている各ペアの減速は、全体の減速が予測通りになるように適合される。実際、この例では、
図2の例と比較して、1つの減速ステップが削減されている。
【0054】
示されていない別の例において、出力部における歯付きホイールが、アクチュエータの歯付きホイールの歯と直接噛み合う。この場合、段付きギヤの軸は、
図2の段付きギヤの軸と直交する。
【0055】
さらに、減速ギヤボックスを段付きギヤトレインの形態で実装することは、減速ギヤボックスが有し得る形態での大きい自由度を提供する。段付きギヤの軸の相対的配置は自由であり、ピニオンと歯付きホイールとの接線方向の噛み合いを保証するために軸間距離が設定されるだけである。その結果、ギヤトレインは、形状の範囲が少なからず広がり、従って、ホイール周囲の利用可能な環境に適合できる。例えば、ギヤトレインは、湾曲形状又はS字形状を有し得る。
【0056】
有利には、シャフトは、ギヤトレインを収容しているハウジング54の底部に取り付けられたプレート53と一体である。例えば、これらの部品は、成形によりプレート53と一体に形成され、或いは、又はこれらの部品は、金属材料から作られてプラスチック材料製のプレートにオーバーモールドされる。
【0057】
ハウジング54は、有利には、ギヤードモータの全体寸法をさらに低減するためにギヤの輪郭に可能な限り沿うように構成される。
【0058】
示されている例において、ハウジングは2つの部分を含む。第1部分54.2は底部を含み、この底部上に、段付ギヤの軸を担持しているプレート53が載っている。第2部分(図示せず)はカバーを形成している。
【0059】
有利には、第1部分及び第2部分は平坦な底部を含む。或いは、カバーは複数のギヤの輪郭に従う。
【0060】
第1部分と第2部分とは、第1部分と第2部分との間の接合ゾーンを通る面に関して対称であり得る。
【0061】
ハウジングは、有利には、プラスチック材料を成形することにより作られる。
【0062】
有利には、ハウジング54は、損傷し得る及び/又は望ましくないノイズを発生し得るギヤードモータの運動を制限するようにギヤードモータをドラムブレーキに(より詳細にはバッキングプレートに)取り付けるための手段56を含む。例えば、ギヤードモータをプレートに取り付けるための手段56は、ギヤの外側からX方向にハウジング54を通るねじ穴58を含み、このねじ穴58に、プレートに設けられた対応する穴と協働するねじが取り付けられる。
【符号の説明】
【0063】
1 ドラムブレーキ
2 バッキングプレート
3 第1シュー
4 第2シュー
3a,4a ブレーキウェブ
3b,4b ブレーキライニング
6 油圧ホイールシリンダ
7 機械式アクチュエータ
8,9 戻りばね
10,11 側方ばね
12 摩耗吸収ロッド
21 電気モータ
24 出力シャフト
25 ピニオン
32 減速ギヤボックス
34,35,36,37,38 段付きギヤ
34a,35a,36a,37a,38a 歯付きホイール
34b,35b,36b,37b,38b ピニオン
44 第1角度伝達部
46 第2角度伝達部
48 伝達ギヤ
50,52 伝達ギヤの歯付きホイール
53 プレート
54 ハウジング
54.1 ハウジングの第1部分
56 ギヤードモータをプレートに取り付けるための手段
58 ねじ穴
AX,AY 軸
AX34,AX35,AX36,AX37,AX38 ギヤ34,35,36,37,38の軸
Le 噛み合い長さ
MR1,MR2 ギヤードモータ