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特許7545399測定ロールを介して案内される帯状の物品の特性を検出するために用いられる測定ロール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】測定ロールを介して案内される帯状の物品の特性を検出するために用いられる測定ロール
(51)【国際特許分類】
   B21B 38/02 20060101AFI20240828BHJP
   B21B 27/00 20060101ALI20240828BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20240828BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20240828BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240828BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20240828BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20240828BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240828BHJP
   C23C 2/34 20060101ALI20240828BHJP
   G01L 1/00 20060101ALI20240828BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B21B38/02
B21B27/00 C
B21C51/00 L
B22F10/25
B22F10/28
B23K9/04 R
B23K15/00 502
B23K26/34
C23C2/34
G01L1/00 G
G01L5/00 C
G01L5/00 101Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021547777
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020055016
(87)【国際公開番号】W WO2020174001
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】102019001354.9
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514019291
【氏名又は名称】ファオデーエーハー-ベトリープスフォルシュングスインスティトゥート ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VDEh-Betriebsforschungsinstitut Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Sohnstrasse 69,40237 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ミュッケ
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン クレーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン クラムベア
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ノイアー
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-125889(JP,A)
【文献】特開平09-003617(JP,A)
【文献】特開平07-198313(JP,A)
【文献】特開2004-009075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0183516(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101497084(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
B21C 51/00
B22F 10/20
G01L 1/00
G01L 5/00
B23K 9/04
B23K 15/00
B23K 26/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ロールを介して案内される金属帯材の幾何学的特性を検出するために用いられる測定ロール(1)であって、
-周面(3)を有する測定ロール体(2)と、
-前記測定ロール体(2)内に設けられた、凹部壁を有する少なくとも1つの凹部(4)と、
-前記凹部(4)内に配置された力センサ(5)と、
を備える測定ロール(1)において、
前記凹部(4)を覆うように肉盛り層(10)が形成されており、
前記力センサ(5)を前記凹部(4)内に締め付けるカバー(6)を備え、前記肉盛り層(10)は、前記カバー(6)を覆うように形成されており、
前記凹部壁に対して間隙を置いて前記凹部(4)内に前記カバー(6)が配置されている、
ことを特徴とする、測定ロール(1)。
【請求項2】
前記肉盛り層(10)の第1の層は、前記測定ロール体(2)および/または前記カバー(6)に溶接されていることを特徴とする、請求項記載の測定ロール(1)。
【請求項3】
前記肉盛り層(10)の複数ある層の少なくとも幾層かは、互いに溶接されていることを特徴とする、請求項1または2記載の測定ロール(1)。
【請求項4】
前記肉盛り層(10)は、溶接に好適な少なくとも1種類の金属、溶接に好適な少なくとも1種類の合金および/またはセラミックの強化粒子を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の測定ロール(1)。
【請求項5】
前記肉盛り層(10)は、互いに異なる組成の積層した複数の層を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の測定ロール(1)。
【請求項6】
前記肉盛り層(10)は、前記カバー(6)の上で、少なくとも前記凹部(4)の前記周面(3)側の開口を間隙なしに覆うように形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の測定ロール(1)。
【請求項7】
前記測定ロール体(2)の長手方向に沿ってまたは前記長手方向に対して横方向に沿って、前記測定ロール体(2)上に複数の異なる肉盛り層(10)および/または被覆体が存在することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の測定ロール(1)。
【請求項8】
前記測定ロール体(2)自体が肉盛り層から製造されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の測定ロール(1)。
【請求項9】
測定ロールを介して案内される金属帯材の幾何学的特性を検出するために用いられる測定ロール(1)を製造する方法であって、
-周面(3)を有する測定ロール体(2)を提供するステップと、
-前記測定ロール体(2)の周面(3)からアクセスでき、凹部壁を有する少なくとも1つの凹部(4)を前記測定ロール体(2)に設けるステップと、
を備える方法において、
前記凹部(4)内にカバー(6)によって力センサ(5)を締め付け、肉盛り層(10)を前記凹部(4)および前記カバー(6)を覆うように形成し、
前記凹部(4)および前記カバー(6)を覆うように肉盛り層(10)を形成し、前記凹部壁に対して間隙を置いて前記凹部(4)内に前記カバー(6)が配置されているように、力センサ(5)を配置する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記肉盛り層(10)を前記凹部(4)および/または前記カバー(6)を覆うように
-3Dプリント、
-レーザビーム溶融、
-電子ビーム溶融、
-レーザ粉体肉盛溶接、
-溶射、
-肉盛溶接、
-肉盛ろう接、
-ワイヤレーザ肉盛溶接、
-パウダベッド法、
-レーザメタルデポジション(LMD)、
-超高速レーザ肉盛溶接(EHLA)および/または
-ワイヤ送りを伴うアーク溶接、
により形成することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記パウダベッド法は、「選択的レーザ焼結(SLS)」またはいわゆる「選択的レーザ溶融(SLM)」法である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記肉盛り層(10)の第1の層を前記測定ロール体(2)および/または前記カバー(6)に溶接することを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記肉盛り層(10)を形成するために3Dモデルを使用することを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記肉盛り層(10)のために複数種類の異なる素材を使用することを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記凹部(4)の前記周面(3)側の開口を間隙なしに覆うように前記肉盛り層(10)を形成することを特徴とする、請求項9から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
測定ロール(1)を介して案内される金属帯材の幾何学的特性を検出するための、請求項1からまでのいずれか1項記載の測定ロール(1)の使用。
【請求項17】
前記金属帯材の前記幾何学的特性が、前記金属帯材の平坦度である、請求項16記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定ロールを介して案内される帯状の物品、特に金属帯材の特性を検出するために用いられる測定ロールに関する。さらに本発明は、測定ロールを介して案内される帯状の物品、特に金属帯材の特性を検出するために用いられる測定ロールを製造する方法に関する。本発明は、前述の測定ロールの使用にも関する。
【0002】
測定ロールは、金属帯材の冷間圧延および熱間圧延時に使用され、例えば独国特許出願公開第4236657号明細書において公知である。
【0003】
特に帯材の圧延時の、平坦度の従来慣用の測定の場合、主として、力センサを装備した測定ロールを介して帯材を所定の巻き掛け角度で案内する方法が使用される。
【0004】
独国特許出願公開第4236657号明細書において、薄い帯材の圧延時の応力分布を求める変向測定ロールが公知である。この変向測定ロールは、円柱状の測定ロールを有し、測定ロールの周内には、複数の測定箇所が配置されていて、測定ロールの、測定箇所が設けられた区間の応力曲線を表示するようになっている。調査対象となる帯材は、運転状態で測定ロールと、力測定ピックアップの、半径方向で荷重が加えられるカバーとにその表面でもって直接当接している。カバーは、測定ロールの軸線に関して凹部内でのみ摺動可能である。
【0005】
力センサを包囲する囲壁から間隔を置いて力センサを配置し、かつOリングまたは十分に弾性的なプラスチックを用いて環状間隙を閉鎖すること(独国特許出願公開第19616980号明細書)は、圧延中、測定ロールの本体内で作用する横方向力が、外乱として力センサあるいは測定結果に影響してしまうことを防止する。この種の外乱力は、測定ロールに作用する帯材引っ張りと、これに伴う測定ロールの撓曲との結果である。測定ロールの横断面は、このとき、楕円の形状をとり、楕円の長軸は、帯材に対して平行に延びている。測定ロールの撓曲は、それが力の分路により測定ピックアップに伝達されてしまうと、力センサに帯材が非平坦であると誤認させる。このような力の分路は、シールが環状間隙内で使用される場合、シール力が必然的に力センサに作用するため、完全には回避されない。
【0006】
こうして、独国特許出願公開第4236657号明細書に記載の測定ロールの場合、力測定ピックアップ、または力測定ピックアップの、測定ロール表面に向かって開いた測定ロールの半径方向の凹部内に配置されたカバーと、帯材との間に接触が生じる。それぞれの凹部内の底に固定された力センサと、力センサを包囲する凹部囲壁との間には、円柱状の間隙が存在している。この間隙は、異物、例えば帯材粒子および潤滑剤が力センサと測定ロール体との間の環状間隙内に侵入するのを防止すべく、Oリングにより肩でシールされて、またはプラスチック層により面でシールされて閉鎖されていることができる。独国特許出願公開第4236657号明細書の図1cに示されているように、測定ピックアップを、一体に加工されたダイヤフラムによってカバーされるソリッドロールの凹部内に配置することも可能である。独国特許出願公開第4236657号明細書に記載の測定ロールは、極めて良好な結果を達成するが、実際の使用に際しては困難が生じる。凹部とカバーとの間の間隙によって、測定ロール内で作用する力およびモーメントがカバーを介して力センサに作用してしまうことは防止される。環状に延びる間隙をシール素材で満たしたとはいえ、例えば異物が測定ロールにより押されて帯状の物品上に跡を残すなど、帯状の物品に悪影響を及ぼすことがわかっている。
【0007】
独国特許出願公開第19838457号明細書は、金属帯材の圧延時に平坦度偏差を検出するために用いられる測定ロールを開示している。凹部内に配置された測定ピックアップが設けられている。間隙は、測定ピックアップと凹部の囲壁との間を環状に延びている。さらに外套、例えばロール外套が設けられている。帯状の物品を通して管または管区間に熱が入熱すると、管または管区間の直径は、熱膨張に基づいて測定ロール体より速く拡大することがわかっている。管幾何学形状の変化によって、帯状の物品から力センサへの力伝達は、変化してしまうことがある。さらに、測定ロール体と外套との間の温度差が比較的大きいとき、大抵の場合は収縮ばめによって測定ロール体への被着がなされている結合は、解除されてしまうことがある。外套あるいは被覆管は、測定ロール体に対して回動してしまうことがある。
【0008】
これに伴い本発明の根底にある課題は、測定ロールを介して案内される帯状の物品の特性に関する、測定ロールにより実施される調査の説得力を高め、かつ/または帯状の物品に及ぼされる影響をできる限り少なく抑えることである。
【0009】
上記課題は、互いに並列の関係にある複数の独立請求項の対象により解決される。有利な実施の形態については、従属請求項および以下の説明において詳しく説明する。
【0010】
本発明は、凹部を肉盛り層により少なくとも実質的に、好ましくは完全に覆うという基本思想から出発している。肉盛り層と測定ロール体との間に堅固な結合を形成する製造方法が使用され得る。得られた測定ロールには、肉盛り層と測定ロール体との間に素材結合が存在し得る。
【0011】
測定ロールを介して案内される帯状の物品、特に金属帯材の特性を検出するために用いられる測定ロールが提供される。測定ロールは、周面を有する測定ロール体と、測定ロール体内に設けられた少なくとも1つの凹部と、凹部内に配置された力センサとを備えている。凹部を覆うように肉盛り層が形成されている。肉盛り層は、例えば測定ロール体の、凹部を包囲する表面区間において始端して、この凹部に架橋するオーバハングとして構成されていてもよい。この種のオーバハングは、例えば3Dプリントにより製造可能である。しばしばこの種のオーバハングは、複数の層からなっており、それぞれ下位の層は、その次の上位の層より突出分が小さいように凹部上に突出している。それぞれ下位の層は、それぞれその次の上位の層を支持し、上位の層が若干大きく凹部上に張り出すことを可能にする。
【0012】
好ましい一実施の形態において、凹部を少なくとも部分的に、好ましくは完全に閉鎖するカバーが設けられている。このような一実施の形態の場合、本発明により凹部を覆う肉盛り層の配置は、この肉盛り層がカバーを覆うように形成されるように達成され得る。好ましい一実施の形態において、力センサは、カバーにより凹部内に締め付けられる。
【0013】
本発明は、それゆえ、測定ロールの周区間、特に測定ロールの完全なる周区間の製造を、できる限り閉じた表面を凹部上に形成する方法によってなすことに想到した。肉盛り層が、凹部内の別の要素、例えばカバーに支持されることなく、凹部に掛け渡されているとき、肉盛り層は、測定ロール体の、凹部を包囲する表面区間に堅固に結合されている。カバーまたは別の要素が凹部内に設けられているとき、肉盛り層は、凹部内のカバーまたは別の要素の表面に堅固に結合されていることが可能である。それどころか、肉盛り層が力センサの表面上、例えばピエゾ素子のセンサ面上に造形される実施の形態も可能である。力センサを入熱から保護すべく、力センサに保護層を設けることも可能である。
【0014】
肉盛り層は、製造方法に際して、あるいは層の肉盛に際して、測定ロール体内へ僅かな入熱しか引き起こさない。この僅かな入熱は、複数の力センサあるいは1つの力センサの形態の、測定ロール体内に配置されるセンサシステムにとってクリティカルでない。肉盛り層は、その高さに関して可変に選択されることができ、ユーザの設定にしたがって構成されていることができる。肉盛り層に際し、複数の素材の組み合わせからなる可変の構成も可能である。凹部および/またはカバーを覆う肉盛り層は、熱的な変化に実質的に影響を受けないため、力センサによる測定も、実質的に阻害されないか、あるいは影響を受けない。
【0015】
本発明に係る測定ロールは、測定ロール体を備えている。好ましくは、測定ロール体は、実質的に閉じた周面を有している。好ましい一実施の形態において、測定ロール体は、長手方向軸線に沿って延在するソリッドロールである。
【0016】
本発明は、本発明に係る測定ロールが、周面を有する測定ロール体と、凹部(および好ましい一実施の形態では、好ましい一実施の形態において設けられるカバー)を覆うように形成される肉盛り層とを備えることを教示する。測定ロール体は、これにより、その周面に肉盛り層が実施される基体である。肉盛り層が凹部の領域でのみ測定ロール体の周面上に肉盛される実施の形態が可能である。肉盛り層を肉盛した後、測定ロールは、これにより、測定ロール体の周面により形成される表面区間(測定ロール体の周面上に肉盛り層が肉盛されなかった領域)と、肉盛り層の、外を向いた表面によって形成される表面区間とを備えている。この種の実施の形態は、層構造が測定ロール体の全周面にわたって造形される必要がないため、より低廉に製造可能であるという利点を有している。測定ロール体の周面が肉盛り層の造形前は一貫した円柱形でなく、凹部の領域に、凹部を包囲する窪みを有している実施の形態が可能である。肉盛り層は、この場合、この窪み内で実施され、窪みの底で、測定ロールの周面のそこに存在する部分と接触させられ、層構造がこのポケットを完全に満たし、その結果、測定ロールが、層構造の肉盛(と、場合によっては後続の作業、例えば移行部を加工する研削と)の後、閉じた、好ましくは円柱状の表面を有するように造形され得る。しかし、好ましい一実施の形態において、層構造は、測定ロール体の全周面上に肉盛される。測定ロールの外表面は、このような一実施例において、層構造の肉盛後、完全に、層構造の、外を向いた表面によって形成される。好ましい一実施の形態において、測定ロールは、層構造の被着後、閉じた周面を備えている。
【0017】
好ましい一実施の形態において、測定ロール体は、円柱形に構成されている。ソリッドロールとは、1ピースであって、その形状が一次成形法、例えば鋳造により製造され、かつ/またはその幾何学的な形状が除去加工法、特に切削、特に旋削、穴あけ、フライス削りまたは研削により1ピースの半製品から製造される測定ロール体と解される。測定ロール体自体を肉盛り層から製造し、測定ロール体自体を、例えば本明細書において説明する肉盛り層のための方法の1つ、例えば3Dプリント法により製造することも可能である。好ましい一実施の形態において、ソリッドロールとして形成されるこのような測定ロール体の場合、測定ロールを回転可能に軸承、例えば玉軸受内で軸承するための、測定ロールの端面にそれぞれ配置される測定ロールジャーナルも、1ピースの測定ロール体の一部である。しかし、例えば独国実用新案第202014006820号明細書の図2に示されるような、測定ロール体の主部分が、円柱形のソリッドロールとして構成され、端面に配置されるキャップを有し、キャップに測定ロールジャーナルが構成されている構造形態も可能である。
【0018】
好ましい一実施の形態において、測定ロール体は、凹部を除いて閉じた周面を有し、端面ではそれぞれ1つの端面により閉鎖され、端面には、特に少なくとも1つのケーブル通し案内部あるいはケーブル通路が設けられていることができる。ケーブル通し案内部あるいはケーブル通路以外には、その他の開口が端面に存在しないようにしてもよい。好ましい一実施の形態において、端面は、周面に対して90°の角度をなして配置されている。
【0019】
好ましい一実施の形態において、測定ロールは、軸受ジャーナルを備えている。好ましい一実施の形態において、軸受ジャーナルは、端面を備える測定ロールの実施の形態では、端面に形成されている。
【0020】
本発明に係る測定ロールの測定ロール体内には、少なくとも1つの凹部が設けられている。測定ロール体内に単一の凹部があれば既に、本発明の効果を奏し得ることがわかっている。而して、平坦度測定時、測定ロールを介して案内される帯状の物品の平坦度についての情報を測定ロールの一回転につき一回提供することができる。
【0021】
好ましい一実施の形態において、測定ロール体は、複数の凹部を有している。好ましい一実施の形態において、凹部は、測定可能な体の長手方向軸線に対して同じ半径方向の間隔を置いて構成されている。好ましい一実施の形態において、すべての凹部は、周方向で互いに等距離に分配配置されている。しかし、第1の群の凹部が設けられており、第1の群の凹部は、特に好ましくは長手方向軸線に対して同じ半径方向の間隔を有し、周方向では等距離に分配配置されており、そしてこの第1の群の凹部に対して付加的に、少なくとも1つの別の凹部(別の群の形態の凹部)が設けられており、この少なくとも1つの別の凹部は、長手方向軸線に対する半径方向の間隔に関して、第1の群の凹部とは異なって構成されており、かつ/または周方向で残りの凹部に対して、これらの残りの凹部が互いに有しているのと同じ間隔は有していない実施の形態も可能である。
【0022】
測定ロール体内に設けられた凹部には、肉盛り層の被着前、測定ロール体の周面からアクセスが可能であってもよい。凹部は、さらにケーブル通路またはケーブル通し案内部として構成されていてもよいアクセス口を有していてもよい。ケーブル通路またはケーブル通し案内部は、特に一部区間で実質的に測定ロール体の長手方向軸線の方向で、あるいはこれに対して実質的に平行にずらされて延在していてもよい。ケーブル通路またはケーブル通し案内部は、測定ロールあるいは測定ロール体の端面の領域に、測定ロールの長手方向軸線に対して実質的に横方向に延びる区間を有していてもよい。凹部は、これにより、測定ロール体の長手方向軸線に対して横方向に配置されているように方向付けられていてもよい。好ましい一実施の形態において、凹部の長手方向は、測定ロール体の長手方向に対して、60°より大きい、特に好ましくは70°より大きい、特に好ましくは75°より大きい、特に好ましくは80°より大きい、特に好ましくは85°より大きい角度をなしている。好ましい一実施の形態において、凹部の長手方向は、測定ロール体の長手方向軸線に対して垂直である。好ましい一実施の形態において、凹部は、半径方向で延びる凹部として構成されている。凹部は、例えば独国特許出願公開第19838457号明細書に記載されているように、ポケットとして構成されていてもよい。本実施の形態では、半径方向で延びる凹部は、その横断面に関し、複数の力センサを収容することができる大きさに構成されていてもよい。特に複数の力センサを1つの凹部内に収容する場合、力センサは、周方向に対して実質的に横方向に配置されてもよい。代替的または付加的に、その中に1つだけ力センサが設けられる凹部が設けられていてもよい。
【0023】
本明細書の意味での「力センサ」なる概念は、センサ面を有し、このセンサ面の位置が変化したときにセンサ信号を発生させることができるように構成されているセンサを包含している。本明細書の意味での力センサは、大抵の場合、力センサに属する基準系を有し、この基準系内でのセンサ面の位置の変化に対して反応する。力センサは、ハウジングを有していてもよい。基準系は、この場合、ハウジングであることが多い。力センサは、ハウジングを有する一実施の形態では、例えばハウジングに対して相対的にセンサ面の位置が変化したか否かを確認し得る。力センサが例えば圧電式の力センサとして構成されている場合、力センサは、ピエゾクオーツを有し、ピエゾクオーツは、ピエゾクオーツの一方の表面の位置が、基準面、例えばピエゾクオーツの、反対側に位置する表面に対して相対的に変化し、それゆえピエゾクオーツが例えば圧縮されると、電気信号を発生させることができる。ひずみゲージとして構成される力センサの場合は、力センサの表面の位置変化により、1つの測定線の長さあるいは複数の測定線から形成される測定グリッドの長さが変化、大抵の場合は伸長し、一部では収縮もする。光学式の力センサとして構成される力センサの場合は、力センサの光学的な特性、例えば屈折率または反射特性が、表面の位置変化によって変化する。
【0024】
力センサのセンサ面が、力センサの表面であるか、またはセンサ面が、力センサ内で使用され、センサ信号を発生させるためにその特性が変化させられる要素の表面、例えばピエゾクオーツ自体の表面である実施の形態が可能である。しばしば、この種の力センサの場合、しかし、センサ面が形成された中間部材が設けられている。しばしばこの種の中間部材は、剛体のブロックであり、剛体のブロックの一方の表面の位置の変化は、ブロックの剛性に基づき、直接、反対側に位置する面の位置の変化に至る。この種の中間部材は、センサ面を力センサの残りの部分、特にハウジングから張り出すように形成するために使用され得る。力センサの別の部分に対して張り出したセンサ面により、明確に規定された面が提供され、この面に対して周囲から作用が働くことができるので、測定精度は向上する。張り出したセンサ面により、例えば力の分路による測定エラーは防止され得る。使用可能な力センサは、独国特許出願公開第1773551号明細書に記載されており、ハウジング内に配置され、複層の結晶配列からなるピエゾ素子を有しており、ピエゾ素子は、2つの力伝達ディスク間に配置されている。力センサのこの種の構成の場合、センサ面は、独国特許出願公開第1773551号明細書の図1で見て上側の力伝達ディスクの外表面または独国特許出願公開第1773551号明細書の図1で見て下側の力伝達ディスクの外表面である。
【0025】
好ましい一実施の形態において、センサ面は、平らに構成されている。好ましい一実施の形態において、力センサの平らなセンサ面の面法線は、周面に向かっている。力センサの平らなセンサ面の面法線は、測定ロール体の半径線に対して、センサ面の、センサ面と半径線とが交差する点に関して、45°未満、特に好ましくは20°未満、特に好ましくは10°未満、特に好ましくは5°未満の角度をなしていることができる。
【0026】
好ましい一実施の形態において、力センサのセンサ面は、測定ロール体の長手方向軸線と交差するとともに、力センサのセンサ面とも交差する平面であって、この平面内にセンサ面の面法線も位置している平面に関して、対称に構成されている。
【0027】
好ましい一実施の形態において、センサ面は、リング形、特に円環形に構成されている。同じく好ましいのは、センサ面が円形または楕円に構成されている実施の形態である。長方形、正方形または多角形のセンサ面も可能である。好ましい一実施の形態において、センサ面は平らに構成されている。
【0028】
好ましい一実施の形態において、センサ面は、力センサの残りの要素から際立った面であって、凹部の画定面と接触している面あるいは凹部を周面に向かって少なくとも部分的に閉鎖するカバーと接触している面である。
【0029】
力センサ自体を肉盛り層から製造し、力センサ自体を、例えば本明細書において説明する肉盛り層のための方法の1つ、例えば3Dプリント法により製造することも可能である。
【0030】
好ましい一実施の形態において、測定ロール内で使用される少なくとも2つの力センサ、特に好ましくは、測定ロール内で使用される複数の力センサ、特に好ましくは、測定ロール内で使用されるすべての力センサは、同系に構成され、したがって同タイプ、特に同シリーズの力センサにより構成されている。
【0031】
「カバー」は、本明細書の意味で、凹部内に配置される力センサの上方に配置される構成要素である。カバーは、力センサに物理的に接触していることができる。しかし、カバーが力センサから間隔を置いて配置されている実施の形態も、例えば光学式の測定方法を使用すれば可能であり、この測定方法の場合、作用する力を求めるために、この作用する力によって誘起されるカバーの変形あるいはこの作用する力によって誘起されるカバーの位置変化が観察される。好ましい一実施の形態において、カバーは、凹部壁に対して間隙を置いて凹部内に配置されてもよい。カバーは、これにより凹部内に存在していてもよく、カバーは、このカバーが凹部内に、凹部から突出することなく配置されているように、配置されていてもよい。カバーは、特に締め付けねじにより凹部内に固定されていてもよい。リングとして形成される力センサは、その際、締め付けねじを包囲していてもよい。「カバー」は、凹部を少なくとも部分的に、好ましくは完全に閉鎖し、縁部でもって凹部の縁部上に載置されるキャップであってもよい。しかし、このようなキャップは、半径方向で作用する力の力導入に対し影響を及ぼすことが予測され得るので、好ましいのは、カバーが凹部の縁部に支持されないか、または弾性的な要素、例えばシールを介して間接的にのみ支持される実施の形態である。
【0032】
好ましい一実施の形態において、カバーは、層構造の、カバーに隣接する層とは別の材料からなっている。
【0033】
本明細書の意味での「肉盛り層」は、1つの層あるいは積重した複数の層の形態の3次元のオブジェクトを形成すべく、層、特に金属からなる層を、まずは点状、線状もしくは列状および/またはラスタ状に肉盛し得る材料肉盛を包含している。肉盛り層時、目下肉盛される層は、その下に位置する層に、またはその層が測定ロール体上に肉盛される最初の層である場合は測定ロール体に、堅固に結合され得る。材料肉盛は、層ごとにコンピュータ制御されて1種類または複数種類の液体または固体の素材から、予め決められた寸法および形状にしたがって実施され得る。材料肉盛時、物理的または化学的な硬化プロセスまたは溶融プロセスが行われ得る。肉盛り層により、閉じた略平滑な表面が生成可能である。肉盛り層は、単一の層からなっていることができる。単一の層は、層が点状、線状もしくは列状および/またはラスタ状に一度肉盛されることにより生成され得る。このような構造の場合、一度生成された第1の層上に、さらなる層は、点状、線状もしくは列状および/またはラスタ状に肉盛されない。好ましい一実施の形態において、層構造は、しかし、好ましくは相前後して製造された複数の層からなっている。「点状」とは、測定ロール体の周面に沿った相対運動を含まない一度の作業工程での層の被着あるいは層の一部分の被着と解される。「点状」なる概念は、この作業工程で被着される層の大きさあるいは層の部分の大きさを限定するものと解すべきではない。「点状」は、この作業ステップが測定ロール体の周面に沿った相対運動なしに可能である限り、大面積の層の肉盛あるいは層の大面積の部分の肉盛も意味し得る。
【0034】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層は、カバーと直接的な接触状態にある。肉盛り層は、カバーと直接接触している。これにより、特に素材結合がカバーと肉盛り層との間に存在し得る。肉盛り層の他にはカバーを覆うものがない一実施の形態が形成され得る。肉盛り層の他には凹部を覆うものがない、つまりカバーもない一実施の形態が形成され得る。
【0035】
測定ロールを介して案内される帯状の物品の特性は、特に帯状の物品の平坦度であることができる。
【0036】
帯状の物品は、特に金属帯材、特に金属帯材の冷間圧延または熱間圧延時に測定ロールを介して案内され得る金属帯材であることができる。測定ロールは、例えば後圧延スタンド(調質圧延スタンド)、帯材焼鈍ライン、ガルバナイジングラインまたはストレッチ-ベンド-レベリング設備等の後処理ライン内に配置されていてもよい。
【0037】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層は、3Dプリンタによるプリント、レーザビーム溶融(LBM)、電子ビーム溶融(EBM)、レーザ粉体肉盛溶接、ワイヤ送りを伴うアーク溶接、溶射、肉盛溶接、ワイヤレーザ肉盛溶接、パウダベッド法、特に好ましくは、いわゆる「選択的レーザ焼結」(SLS)またはいわゆる「選択的レーザ溶融」(SLM)、レーザメタルデポジション(LMD)、超高速レーザ肉盛溶接(EHLA)および/または肉盛ろう接により形成されている。これにより、3Dモデルをベースとする加法的製造による肉盛り層が可能である。肉盛り層の製造の例を挙げるならば、3Dモデルをベースとするこの加法的製造は、自由噴流結合剤肉盛(バインダジェット)、指向性のエネルギ投入による材料肉盛(指向性エネルギ堆積)、材料押出、自由噴流材料肉盛(材料噴射)、パウダベッドベースの溶融(粉末床溶融結合)、層ラミネーション(シート積層)、浴ベースの光重合(液槽光重合)および前述の方法の組み合わせを包含している。凹部単独、またはカバーと力センサとを有する凹部は、これにより少なくとも部分的に閉鎖、好ましくは完全に閉鎖され得る。上述の方法は、肉盛り層のための材料供給部を直動軸またはロボットによって測定ロール体の上方を移動させることが可能であるという利点を提供する。この場合、材料ミックスまたは実質的に1種類の純粋な材料の使用が可能である。溶融物の生成が可能である。特にレーザビームまたは電子ビームにより、供給された材料の溶融物が生成されることができ、溶融物は、測定ロール体上に、あるいは測定ロール体上に既に存在する層上に肉盛され得る。肉盛り層のための材料は、粉末としてシールドガス流とともに、またはワイヤ送りにより、材料溶融物が生成される領域に搬送されてもよい。特に上述の方法により、接合原理が実施可能であり、この接合原理は、特に融接である。これにより素材結合が可能である。
【0038】
本明細書の意味での肉盛り層は、好ましい一実施の形態において、特に、本明細書で挙げた方法が、相応に構成された設備内で3Dデータを用いて動作制御することで3Dプリント法として使用される点で秀逸であり得る。
【0039】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層の第1の層、あるいは単一の層しか存在しない場合は、その単一の層が、測定ロール体に結合されており、その結果、安定した結合が測定ロール体と肉盛り層との間に存在し得る。結合は、以下の作用メカニズムのうちの1つまたは以下の作用メカニズムの組み合わせにより達成可能である:分子レベルでの機械的な絡み合い、接着、拡散プロセス、表面エネルギおよび/または静電力。溶接により、肉盛り層、ここでは測定ロール体上の第1の層の安定した接合結合が可能である。
【0040】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層の複数ある層の少なくとも幾層か(肉盛り層が複数の層を有している場合)が互いに結合、特に溶接されており、その結果、肉盛り層自体の安定した結合も可能である。これにより、測定ロール幾何学形状が熱に起因して変化したときに剥離が起こることは防止し得る。
【0041】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層は、溶接に好適な少なくとも1種類の金属、溶接に好適な少なくとも1種類の合金および/またはセラミックの強化粒子を含んでいる。肉盛り層のための材料の好適な選択により、測定ロールに課される要求に対応することができ、かつ/または良好な熱安定性と同時に、良好な製造性を考慮することができる。特に好ましいのは、高い強度と靭性とを有する金属である。特に好ましいのは、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、モリブデン、バナジウムおよびそれらの合金、例えばクロム-モリブデン-合金(CrMo)、例えば42CrMo4またはクロム-モリブデン-バナジウム-合金(CrMoVa)、例えば86CrMoV7または例えばタングステン-ニッケル-クロム-合金(WCNiCr)である。
【0042】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層は、互いに異なる組成の積層した複数の層を有しており、その結果、測定ロール体におけるその位置に関してこれらの層に課される異なる要求を考慮することができる。例えば1つの層または複数の層は、直接、凹部を覆うように同じ素材で形成されていることができ、この素材は、特に測定ロール体のための素材と同じまたは類似の素材であることができる。肉盛り層の、直接凹部を覆うように配置されている層の上の1つの層または複数の層は、極めて摩耗の少ない素材により形成されていることができる。特に好ましいのは、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、チタンカーバイド、タンタルカーバイドおよび/またはクロムカーバイドである。
【0043】
好ましい一実施の形態において、好ましい一実施の形態による複層の層構造の複数の層は、同じ方法で製造される。しかし、好ましい一実施の形態による複層の層構造の複数の層が、異なる製造手法により生成される実施の形態、あるいは第1の層の群が第1の製造方法で製造され、第2の層の群が第2の製造方法で製造される実施の形態も可能である。この種のアプローチは、特に、これらの層が異系であり、例えば異なる材料から製造され、それぞれ、ある製造方法が特に良好に第1の層の生成に好適である一方、別のある製造方法が特に良好に第2の、第1の層との関係において異系の層の生成に好適であるとき、考慮に値する。例えば第1の製造方法により、その材料が測定ロール体の材料と同じか、または少なくとも同系、例えば金属である層を肉盛する一方、別の製造方法により、層構造の別の層として保護層、例えばプラスチック層またはゴム層を肉盛することが可能である。タングステンカーバイドからなる保護層を最も外側の層として肉盛することも可能である。
【0044】
好ましい一実施の形態において、層構造が1つの層しか有しない実施の形態では、層構造の単一の層が金属の材料またはセラミックの材料からなっている。好ましい一実施の形態において、層構造が複数の層を有する実施の形態では、層構造の、測定ロール体に最も近い層(最も下側の層;最も内側の層)が、金属の材料またはセラミックの材料からなっている。
【0045】
好ましい一実施の形態において、層構造が1つの層しか有しない実施の形態では、層構造の単一の層は、あるいは層構造が複数の層を有する実施の形態では、少なくとも層構造の、測定ロール体に最も近い層(最も下側の層;最も内側の層)は、その材料特性、特に膨張係数および/または引っ張り強さに関して測定ロール体の材料に合わせて調整されている。特に好ましくは、層構造が1つの層しか有しない実施の形態では、層構造の単一の層において、あるいは層構造が複数の層を有する実施の形態では、少なくとも層構造の、測定ロール体に最も近い層(最も下側の層;最も内側の層)において、
-材料は、材料の10-6/Kで測定される膨張係数が、測定ロール体の材料の10-6/Kで測定される膨張係数の0.5倍を下回らない、特に好ましくは0.6倍を下回らない、特に好ましくは0.7倍を下回らない、特に好ましくは0.8倍を下回らない、特に好ましくは0.9倍を下回らないように選択されている(測定ロール体が鋼からなるとき、10-6/Kで測定される膨張係数は、凡そ11~13・10-6/Kの範囲にあり、この場合、単一の層あるいは最も下側/最も内側の層の材料の10-6/Kで測定される膨張係数は、好ましい一実施の形態において、5.5・10-6/K(11の0.5倍)を下回らないことが望ましい)、かつ/または
-材料は、材料の10-6/Kで測定される膨張係数が、9・10-6/Kを下回らない、好ましくは10・10-6/Kを下回らないように選択されている、かつ/または
-材料は、材料のMPaで測定される引っ張り強さが、測定ロール体の材料のMPaで測定される引っ張り強さの0.7倍を下回らない、特に好ましくは0.8倍を下回らない、特に好ましくは0.9倍を下回らないように選択されている(測定ロール体が鋼からなるとき、MPaで測定される引っ張り強さは、凡そ700~1100MPaの範囲にあり、この場合、単一の層あるいは最も下側/最も内側の層の材料のMPaで測定される引っ張り強さは、好ましい一実施の形態において、490MPa(700の0.7倍)を下回らないことが望ましい)、かつ/または
-材料は、材料のMPaで測定される引っ張り強さが、600MPaを下回らない、好ましくは650MPaを下回らないように選択されている。
【0046】
その際、前述の材料特性は、肉盛された状態の層に関する。測定ロール体上に被着された状態の層の材料についての前述の設計ルールにより、層、特に凹部の領域における層が脆くなったり、剥がれ落ちたりしないことが達成され得る。
【0047】
好ましい一実施の形態による複層の層構造の複数の層が、異なる延在規模を有している実施の形態が可能である。例えば、測定ロール体が、凹部を取り巻く窪みを有し、窪みは、第1の層の肉盛あるいは第1の群の層の肉盛により満たされることが可能である。この第1の層あるいはこの第1の群の層は、而して窪みの幾何学的な形状を有している。この第1の層あるいはこの第1の群の層上に造形されて、層構造は、而して第2の層または第2の群の層を有していることができ、第2の層または第2の群の層は、窪みより大きな延在規模を有し、例えば測定ロール体の残された周面全体を、第1の層/第1の群の層で満たされた窪みの周面も含め、カバーする。
【0048】
層構造の1つの層(層構造が1つの層しか有しない場合)あるいは複層の層構造の少なくとも1つの層、特に好ましくは複数の、特に好ましくは大半の、特に好ましくはすべての層が、揃った層厚みを有している実施の形態が可能である。代替的には、層構造の1つの層(層構造が1つの層しか有しない場合)あるいは複層の層構造の少なくとも1つの層、特に好ましくは複数の、特に好ましくは大半の、特に好ましくはすべての層が、層の延在にわたって変化する層厚みを有し、例えば段または突出部を有している実施の形態が可能である。例えば、凹部内に、セットバックして配置されたカバーが設けられており、第1の層により凹部内においてカバー上方に残された空間が満たされるとともに、同じ層により測定ロール体の周面も一様な厚さの層でカバーされる一実施の形態が可能である。これによりこの層は、測定ロール体の残りの周面の領域では、一定の厚さを有しているが、凹部の領域では、カバー上方の凹部の残された空間をカバーすべく、突出部(増大された層厚さ)を有している。測定ロール体に次層として配置される第1の層を、測定ロール体が適当な形状でない周面、例えば円柱状でない周面を有している場合に、適当な形状の周面、例えば円柱状の周面を形成するために使用する実施の形態も可能である。
【0049】
肉盛り層により、測定ロール体と、被着された肉盛り層とからなる得られた測定ロールは、「ソリッドロール」と見なされ得る。特に肉盛り層のための材料として、測定ロール体のための材料と同じ材料が選択されると、測定ロール体から肉盛り層へ、滞りない移行がなされることができ、その結果、特に測定ロール体と肉盛り層との間に明確な境界としての系の境界は存在しない。特に肉盛り層が、測定ロール体の原子の格子と結び付き、その結果、少なくとも測定ロール体と同じ材料を有する肉盛り層の領域に、明確な境界が見て取れないようになっていてもよい。
【0050】
肉盛り層は、好ましい一実施の形態において、測定ロール体との結び付きために、測定ロール体と同じ材料を有していてもよい。異なる要求に対応するために、肉盛り層の高さ内で材料が変化するようにしてもよい。
【0051】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層は、カバーを覆うように少なくとも一方向で間隙なしに凹部を覆うように形成されている。これにより、できる限り閉じた面がカバーを覆うように生成されることができ、その結果、実質的に粒子、特に異物は、凹部内に入り込み得ない。特に好ましい一実施の形態において、肉盛り層は、カバーを覆うように全般的に間隙なしであり、その結果、カバー上に、カバーと凹部壁との間に存在する間隙等のこの種の間隙は、存在しない。
【0052】
好ましい一実施の形態において、測定可能な体の長手方向で測定ロール体上に複数の異なる肉盛り層および/または被覆体が存在し得る。この好ましい実施の形態によれば、凹部の領域には、ある肉盛り層が存在するが、例えば凹部が設けられていないところには、別の肉盛り層あるいは別の形態の被覆体が存在するようにしてもよい。これにより、凹部についての特別な要求に応えることができる。測定ロール内に、測定ロール体の長手方向でまたは長手方向に対して横方向で凹部を有しない領域が設けられている場合、確かに、凹部を覆う肉盛り層と類似または同一の肉盛り層が、測定ロール体を覆うように被着されていてもよいが、凹部なしの領域については、被覆体、特に肉盛り層の厚さに相当する被覆体が測定ロール体上に配置され、測定ロール体に結合されているようにしても構わない。
【0053】
本発明は、測定ロールを介して案内される帯状の物品、特に金属帯材の特性を検出するために用いられる測定ロールを製造する方法も提供する。当該方法は、周面を有する測定ロール体を提供するステップと、測定ロール体の周面からアクセスが可能な少なくとも1つの凹部を測定ロール体内に提供し、このとき、凹部の提供には、測定ロール体における凹部の形成も含むステップと、力センサを凹部内にカバーにより締め付けるステップとを備えている。当該方法は、さらに凹部および/またはカバーを覆うように肉盛り層を形成するステップを備えている。
【0054】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層を凹部および/またはカバーを覆うように3Dプリント、レーザビーム溶融、電子ビーム溶融、レーザ粉体肉盛溶接および/またはワイヤ送りを伴うアーク溶接により形成する。
【0055】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層の第1の層を測定ロール体に溶接する。これにより肉盛り層および/またはカバーの特に安定した結合が形成される。
【0056】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層を形成するために3Dモデルを使用し、3Dモデルによって、1つの層あるいは複数の層を狙い通り測定ロール体上に3次元的に生成することが可能である。特に正確な加法的製造が可能である。例えば3Dモデルにより、肉盛り層の高さは可変に構成されていることができる。3Dモデルを考慮する制御装置により、肉盛り層の被着あるいは形成は制御可能である。肉盛り層の厚さは、肉盛り層の組成と同様、制御部により形成時に考慮することができる。例えば10マイクロメートル~10ミリメートルの肉盛り層の厚さが可能である。測定ロールに対するユーザの要求は、考慮され得る。測定ロールのユーザの設定は、入力部により入力され、制御部により実現され得る。特に好ましくは、肉盛り層は、強度、靭性、耐摩耗性および耐食性に関して選択される。
【0057】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層のために、測定ロール体のために使用されるのと同じ素材が使用される。測定ロール体と肉盛り層との間の材料同一性に基づき、測定ロールは、少なくとも部分的にソリッドロールと見なされ得る。この限定は、肉盛り層が、測定ロール体と同じ素材からなる肉盛り層に対して付加的に、別の素材をこれらの層の上に有している場合があることに一部基づいている。
【0058】
好ましい一実施の形態において、肉盛り層のために複数種類の異なる素材が使用され、素材は、特に肉盛り層の厚さにわたって変更可能である。複数の層の形成が可能であり、このとき、異なる素材が1つの同じ層のために使用されてもよい。これらの素材は、肉盛り層の層を形成するために同じステップで溶融され、測定ロール体上に、あるいは肉盛り層の既に先だって被着された層上に被着され得る。これにより異なる要求に対処することができる。できる限り自動化された、測定ロールを製造する方法は、これにより、例えば異なるマガジンあるいは貯蔵容器から素材が被着装置に供給されることにより可能である。
【0059】
好ましい一実施の形態において、凹部を覆うように少なくとも一方向で間隙なしに肉盛り層を形成し、その結果、実質的に一方向で、粒子あるいは異物は、凹部内、あるいはカバーと凹部壁とに間に形成される間隙内に入り込み得ない。好ましい一実施の形態において、肉盛り層を全般的に間隙なしに凹部を覆うように形成する。
【0060】
本発明は、測定ロールを介して案内される帯状の物品、特に金属帯材の特性を検出するための、特に帯状の物品の平坦度を検出するための、上述したような測定ロールの使用も提供する。
【0061】
本明細書の範囲内で数値表示がなされる場合、その数値表示には、それぞれ表示した数値の上下に10%の公差によって限定された、この特定数値表示を含む範囲が含まれる。この特定数値によった範囲表示の意味は、製造公差および/または根底にあるそれぞれの量の測定精度を考慮したものである。具体的に表示した数値は、それゆえ、当業者であれば、自然の変動あるいは製造上の変動の範囲内にある数値に実質的に相当する凡その表示であることを理解する。
【0062】
本明細書の意味での「有する/備える」なる概念は、「有する/備える」という意味内容を含んでおり、表示される要素とはさらに別の要素が存在していてもよく、その結果、表示される要素の他にさらに別の要素が設けられていてもよい。しかし、「有する/備える」なる概念は、本明細書の意味で「からなる」という意味の閉鎖的な概念も含んでいる。
【0063】
本発明について、以下に図面に示した複数の実施例を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】複数の力センサが互いに間隔を置かずに1つの凹部内に測定ロールの長手方向で配置されている測定ロールを示す図である。
図2】複数の力センサがそれぞれの凹部内に互いにずらされて配置されている測定ロールを示す図である。
図3】複数の力センサがそれぞれの凹部内に互いにずらされて配置されている測定ロールを示す図である。
図4】力センサが1つずつそれぞれ1つの凹部内に配置されており、複数の力センサが互いにずらされて配置されている測定ロールを示す図である。
図5】複数の力センサが1つの凹部内に互いにずらされて配置されており、複数の力センサを有する複数の凹部が設けられている測定ロールを示す図である。
図6】複数の力センサが互いに間隔を置かずに1つの凹部内に測定ロールの長手方向で配置されている測定ロールを示す図である。
図7】凹部と、突出部を有する層構造の層とを備える測定ロールの一部を切断し、側方から見た図である。
【0065】
図1は、測定ロール1の概略断面図を示している。測定ロール1は、測定ロール1を介して案内される帯状の物品(図示せず)の特性を検出するように構成されている。測定ロール1は、周面3を有する測定ロール体2を備えている。
【0066】
さらに測定ロール体2内には、1つの凹部4が設けられており、凹部4には、測定ロール体2の周面3からアクセスすることができる。この凹部4内には、複数の力センサ5が配置されている。このために凹部4は、半径方向に方向付けられた線形の凹部として形成されており、測定ロール体2あるいは測定ロール1の長手方向軸線Lに沿って略同じ深さを有している。
【0067】
1ピースのカバー6が配設けられており、このカバー6により力センサ5は、凹部4内に締め付けねじ7を介して締め付けられている。カバー6あるいは凹部4と、測定ロール体2の(端面の領域における)部分とを覆うように、肉盛り層10が形成されている。
【0068】
力センサ5の接点接続のために、半径方向で延びるケーブル通路8が設けられており、ケーブル通路8内には、ケーブル9が案内されている。ケーブル9は、力センサ5を測定エレクトロニクスに機能的に接続している。
【0069】
図2は、測定ロール1あるいは測定ロール体2の長手方向軸線Lに沿った測定ロールの概略断面図を示している。測定ロール1の本実施の形態で設けられた凹部4は、長手方向軸線Lに沿って見ても、半径方向で見ても、互いにずらして形成された複数の孔であり、力センサ5は1つずつ、それぞれの凹部4内に存在している。力センサ5は、締め付けねじ7によりそれぞれの凹部4内で締め付けられている。凹部4およびカバー6の上に、肉盛り層10が形成されている。
【0070】
図3は、複数の力センサ5が少なくとも部分的に1つの共通の凹部4内に配置されている測定ロール1の別の一実施例を示している。力センサ5は、測定ロール体2の周面3において、半径方向に凹設された、凹部4を形成する溝内に配置されている。凹部4内には、力センサ5がカバー6と締め付けねじ7とにより締め付けられている。凹部4およびカバー6を覆うように、肉盛り層10が形成されている。
【0071】
図4ないし6は別の実施例を示しており、主に、図4ないし6の実施例の肉盛り層10に関して、測定ロール体2の素材と同じ素材を肉盛り層10に使用した点で、図1ないし3の実施の形態とは相違している。図4ないし6には、測定ロール体2と肉盛り層10との間の境界を象徴的に示す線を記入したが、測定ロール体2の材料と同じ材料を使用したことで、測定ロール体2と肉盛り層10との間に明確な境界は存在しない。
【0072】
図7は、測定ロール体2の凹部4内に力センサ5が配置されている一実施の形態を示している。凹部4内には、さらにカバー6が設けられており、カバー6は、締め付けねじ7により測定ロール体2にねじ止めされており、力センサ5にプリロードを加えている。測定ロール体2の周面3上に造形された肉盛り層10は、(単一の)層11を有している。この層11は、層11の延在方向に沿って変化する層厚さを有している。而して層11は、突出部12を有している。カバー6は、凹部4内にセットバックして配置されている。凹部4内においてカバー6上方に残された空間は、突出部12によって満たされる。これにより層11は、測定ロール体2の残りの周面3の領域では、一定の厚さを有しているが、凹部4の領域では、カバー6上方の凹部4の残された空間を充足すべく、突出部12(増大された層厚さ)を有している。この層構造の図示の(第1の)層11上に、さらに1つ以上の別の(図示しない)層を肉盛することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7