(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】車両用表示システム及び車両
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240828BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240828BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20240828BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20240828BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240828BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240828BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240828BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240828BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20240828BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B60K35/23
G09G5/00 510A
G09G5/00 510V
G09G5/00 550C
G09G5/377 100
G09G5/36 500
G09G5/38
G02B27/01
F21V14/04
F21V7/00 590
F21V9/40 400
B60Q1/00 G
(21)【出願番号】P 2021550656
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035783
(87)【国際公開番号】W WO2021065617
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019179483
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 政昭
(72)【発明者】
【氏名】柴田 佳典
(72)【発明者】
【氏名】神谷 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】滝井 直樹
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-149856(JP,A)
【文献】特開2019-094021(JP,A)
【文献】特開2016-055691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/23 ~ 35/235
G09G 5/00 ~ 5/38
G02B 27/00 ~ 27/01
F21V 14/04
F21V 7/00
F21V 9/40
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車両用表示システムであって、
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された第一表示装置と、
前記車両の内部に位置すると共に、
所定の画像を虚像として前記車両の乗員に向けて表示することで前記虚像が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように構成された第二表示装置と、
前記第一表示装置および前記第二表示装置を制御するように構成されている制御部と、を備えており、
前記制御部は、前記所定の画像および前記光パターンの両方を表示させる場合、前記乗員から前記
虚像までの距離と前記乗員から前記光パターンまでの距離とを一致させる、車両用表示システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記乗員から前記
虚像までの距離を前記乗員から前記光パターンまでの距離に一致させるように前記第二表示装置を制御する、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記乗員から前記光パターンまでの距離を前記乗員から前記
虚像までの距離に一致させるように前記第一表示装置を制御する、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の画像および前記光パターンの一方を表示している状態で前記所定の画像および前記光パターンの他方を表示させる場合、前記乗員から前記
虚像および前記光パターンの他方までの距離を前記乗員から前記
虚像および前記光パターンの一方までの距離に一致させる、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の車両用表示システムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示システム及び当該車両用表示システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国特開2016-55691号公報は、路面描画装置を用いて路面上に光パターンを照射することで、運転者(乗員)自身または歩行者・対向車等の他者(対象物)に対して車両の情報を通知および警告する車両用表示システムを開示している。また、この車両用表示システムは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を用いて車両のフロントガラス等上に所定の画像を投影することで、運転者に対して車両の情報を通知および警告している。運転者は、車両のフロントガラス等に投影された所定の画像をフロントガラス等の前方の所定の位置において形成された虚像として認識する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、乗員から虚像までの位置が乗員から路面上の光パターンまでの位置と異なる場合、乗員は虚像および光パターンの一方に焦点を合わせると、他方により示される情報を把握することが難しくなる場合がある。すなわち、このような状況下では、虚像および光パターンのいずれか一方に対する乗員の視認性が低下してしまう。
【0004】
本開示は、路面上に照射される光パターンおよび乗員に向けて表示された所定の画像に対する乗員の視認性を向上させることが可能な車両用表示システムおよび当該車両用表示システムを備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の車両用表示システムは、車両に設けられており、
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された第一表示装置と、
前記車両の内部に位置すると共に、所定の画像が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記所定の画像を前記車両の乗員に向けて表示するように構成された第二表示装置と、
前記第一表示装置および前記第二表示装置を制御するように構成されている制御部と、を備えている。
前記制御部は、前記所定の画像および前記光パターンの両方を表示させる場合、前記乗員から前記所定の画像までの距離と前記乗員から前記光パターンまでの距離とを一致させる。
【0006】
上記構成によれば、乗員から所定の画像までの距離と乗員から光パターンまでの距離が一致するため、乗員は、所定の画像により示される情報および光パターンにより示される情報を同時に把握することができる。すなわち、光パターンおよび所定の画像に対する乗員の視認性を向上させることができる。
【0007】
なお、「距離が一致する」とは、車両の前後方向において、所定の画像が表示される距離の範囲と光パターンが表示される距離の範囲が少なくとも部分的に重複している場合である。所定の画像が表示される距離の範囲とは、平面的に表示される所定の画像の場合にはその表示位置であり、また、立体的に表示される所定の画像の場合にはその表示距離範囲である。さらに、実質的には乗員が焦点距離を変更せずに所定の画像および光パターンを視認できれば、車両の前後方向において所定の画像の表示距離範囲と光パターンの表示距離範囲が重複していなくてもよい。例えば、車両の前後方向において乗員から所定の距離離れた位置付近に所定の画像および光パターンを表示する場合、所定の画像の表示距離範囲と光パターンの表示距離範囲が重複しないものの所定の距離の10%ずれた程度であれば、「距離が一致する」場合に含まれる。
【0008】
また、「両方を表示させる」とは、ある時点において所定の画像および光パターンの両方が表示されている場合である。したがって、表示させるタイミングが異なっているものの所定の画像および光パターンの表示期間が一部重なっているような場合も含まれる。
【0009】
また、車両用表示システムを備えた車両が提供される。
【0010】
上記構成によれば、路面上に照射される光パターンおよび乗員に向けて表示された所定の画像に対する乗員の視認性を向上させることが可能な車両が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、路面上に照射される光パターンおよび乗員に向けて表示された所定の画像に対する乗員の視認性を向上させることが可能な車両用表示システムおよび当該車両用表示システムを備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車両システムが搭載された車両の正面図である。
【
図3】車両システムに含まれるヘッドアップディスプレイの模式図である。
【
図4】第一実施形態に係る表示制御部の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】乗員の視界におけるHUD情報を示す図である。
【
図6】乗員の視界におけるHUD情報と光パターンを示す図である。
【
図7】車両の乗員の視点から枠パターンの形成位置および光パターンの形成位置までの距離を示す模式図である。
【
図8】第二実施形態に係る表示制御部の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】乗員の視界におけるHUD情報と光パターンを示す図である。
【
図10】車両の乗員の視点から枠パターンの形成位置および光パターンの形成位置までの距離を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。
【0015】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る車両システム2について以下に説明する。
図1は、車両システム2が搭載された車両1の正面図である。
図2は、車両システム2のブロック図である。車両1は、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0016】
図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、車両用表示システム4(以下、単に「表示システム4」という。)と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7とを備える。さらに、車両システム2は、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、記憶装置11と、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0017】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びTPU(Tensor Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有り又は教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラム(学習済みモデル)である。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。また、コンピュータシステムは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。さらに、コンピュータシステムは、ノイマン型コンピュータと非ノイマン型コンピュータの組み合わせによって構成されてもよい。
【0018】
表示システム4は、左側ヘッドランプ20Lと、右側ヘッドランプ20Rと、左側路面描画装置45Lと、右側路面描画装置45Rとを備える。さらに、表示システム4は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)42と、表示制御部43とを備える。
【0019】
図1に示すように、左側ヘッドランプ20Lは、車両1の左側前面に配置されており、ロービームを車両1の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。右側ヘッドランプ20Rは、車両1の右側前面に配置されており、ロービームを車両1の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。ロービームランプとハイビームランプの各々は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の1以上の発光素子と、レンズ及びリフレクタ等の光学部材を有する。また、以降では、説明の便宜上、左側ヘッドランプ20L及び右側ヘッドランプ20Rを単にヘッドランプ20と総称する場合がある。
【0020】
左側路面描画装置45L(第1表示装置の一例)は、左側ヘッドランプ20Lの灯室内に配置されている。左側路面描画装置45Lは、車両1の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。左側路面描画装置45Lは、例えば、光源部と、駆動ミラーと、レンズやミラー等の光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。光源部は、レーザ光源又はLED光源である。例えば、レーザ光源は、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。駆動ミラーは、例えば、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)ミラー、DMD(Digital Mirror Device)、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。光源駆動回路は、光源部を駆動制御するように構成されている。光源駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、光源部の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を光源部に送信するように構成されている。ミラー駆動回路は、駆動ミラーを駆動制御するように構成されている。ミラー駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、駆動ミラーの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を駆動ミラーに送信するように構成されている。光源部がRGBレーザ光源である場合、左側路面描画装置45Lは、レーザ光を走査することで様々の色の光パターンを路面上に描画することが可能となる。
【0021】
右側路面描画装置45R(第1表示装置の一例)は、右側ヘッドランプ20Rの灯室内に配置されている。右側路面描画装置45Rは、車両1の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。左側路面描画装置45Lと同様に、右側路面描画装置45Rは、光源部と、駆動ミラーと、レンズ等の光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。
【0022】
また、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rの描画方式は、ラスタースキャン方式、DLP(Digital Light Processing)方式又はLCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、光源部はLED光源であってもよい。また、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rの描画方式として、プロジェクション方式が採用されてもよい。プロジェクション方式が採用される場合、光源部は、マトリクス状に並んだ複数のLED光源であってもよい。さらに、本実施形態では、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rは、車体ルーフ100A上に配置されてもよい。この点において、1つの路面描画装置が車体ルーフ100A上に配置されてもよい。以降では、説明の便宜上、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rを単に路面描画装置45と総称する場合がある。また、以降の説明において、路面描画装置45は、左側路面描画装置45L、右側路面描画装置45R又は左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45Rの組み合わせを示すものとする。
【0023】
HUD42(第2表示装置の一例)は、車両1の内部に位置する。具体的には、HUD42は、車両1の室内の所定箇所に設置されている。例えば、HUD42は、車両1のダッシュボード内に配置されてもよい。HUD42は、車両1と乗員との間の視覚的インターフェースとして機能する。HUD42は、所定の情報(以下、HUD情報という。)が車両1の外部の現実空間(特に、車両1の前方の周辺環境)と重畳されるように当該HUD情報を乗員に向けて表示するように構成されている。このように、HUD42は、AR(Augmented Reality)ディスプレイとして機能する。HUD42よって表示されるHUD情報は、例えば、車両1の走行に関連した車両走行情報及び/又は車両1の周辺環境に関連した周辺環境情報(特に、車両1の外部に存在する対象物に関連した情報)である。
【0024】
図3に示すように、HUD42は、HUD本体部420を備えている。HUD本体部420は、ハウジング421と、出射窓422とを有する。出射窓422は光を透過させる透明板で構成されている。HUD本体部420は、ハウジング421の内部に、画像生成部(PGU:Picture Generation Unit)423と、レンズ424と、凹面鏡425と、制御基板426とを有する。
【0025】
画像生成部423は、車両1の乗員に向けて表示する所定の画像を生成するための光を出射するように構成されている。画像生成部423は、詳細な図示は省略するが、光源と、光学部品と、表示デバイスとを有する。光源は、例えば、レーザ光源またはLED光源である。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑光レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。光学部品は、プリズム、レンズ、拡散板、拡大鏡等を適宜有する。光学部品は、光源から出射された光を透過して表示デバイスに向けて出射する。表示デバイスは、液晶ディスプレイ、DMD(Digital Mirror Device)等である。画像生成部423の描画方式は、ラスタースキャン方式、DLP方式またはLCOS方式であってもよい。DLP方式またはLCOS方式が採用される場合、HUD42の光源はLED光源であってもよい。なお、液晶ディスプレイ方式が採用される場合、HUD42の光源は白色LED光源であってもよい。
【0026】
レンズ424は、画像生成部423と凹面鏡425との間に配置されている。レンズ424は、画像生成部423から出射された光の焦点距離を変化させるように構成されている。レンズ424は、画像生成部423から出射されて凹面鏡425に向かう光が通る位置に設けられている。レンズ424は、例えば、駆動部を含み、制御基板426により生成される制御信号によって画像生成部423との距離を変更できるように構成されていてもよい。レンズ424の移動により、画像生成部423から出射された光の焦点距離(見かけの光路長)が変化し、ウインドシールド18とHUD42によって表示される所定の画像との間の距離が変化する。なお、レンズに代わる光学要素として、例えばミラーを用いてもよい。
【0027】
凹面鏡425は、画像生成部423から出射される光の光路上に配置されている。凹面鏡425は、画像生成部423から出射され光をウインドシールド18(例えば、車両1のフロントウィンドウ)に向けて反射するように構成されている。凹面鏡425は、所定の画像を形成するために凹状に湾曲した反射面を有し、画像生成部423から出射されて結像された光の像を所定の倍率で反射させる。凹面鏡425は、駆動機構(図示省略)を有し、制御基板426から送信される制御信号に基づいて凹面鏡425の向きを回転させうる。
【0028】
制御基板426は、画像生成部423の動作を制御するように構成されている。制御基板426は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリが搭載され、メモリから読みだしたコンピュータプログラムをプロセッサが実行して、画像生成部423の動作を制御する。例えば、制御基板426は、表示制御部43を介して車両制御部3から送信されてくる車両走行情報や周辺環境情報等に基づいて、画像生成部423の動作を制御するための制御信号を生成し、当該生成された制御信号を画像生成部423に送信する。また、制御基板426は、凹面鏡425の向きを変更するように制御してもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、制御基板426と表示制御部43は別個の構成として設けられているが、制御基板426が表示制御部43の一部として構成されていてもよい。
【0030】
画像生成部423から出射された光は、凹面鏡425で反射されてHUD本体部420の出射窓422から出射される。HUD本体部420の出射窓422から出射された光は、ウインドシールド18に照射される。ウインドシールド18に照射された光の一部は、乗員の視点Eに向けて反射される。この結果、乗員は、HUD本体部420から出射された光をウインドシールド18の前方の所定の距離において形成される虚像(所定の画像の一例)として認識する。このように、HUD42によって表示される画像がウインドシールド18を通して車両1の前方の現実空間に重畳される結果、乗員は、虚像により形成される虚像オブジェクトIが車両外部に位置する道路上に浮いているように視認することができる。
【0031】
また、虚像オブジェクトIの距離(乗員の視点Eから虚像までの距離)は、レンズ424の位置を調整することによって適宜調整可能である。虚像オブジェクトIとして2D画像(平面画像)を形成する場合には、所定の画像を任意に定めた単一距離の虚像となるように投影する。虚像オブジェクトIとして3D画像(立体画像)を形成する場合には、互いに同一または互いに異なる複数の所定の画像をそれぞれ異なる距離の虚像となるように投影する。
【0032】
表示制御部43(制御部の一例)は、路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)、ヘッドランプ20(具体的には、左側ヘッドランプ20Lと右側ヘッドランプ20R)及びHUD42の動作を制御するように構成されている。この点において、表示制御部43は、路面上の所定の位置に光パターンが照射されるように路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)の動作を制御するように構成されている。さらに、表示制御部43は、HUD情報がウインドシールド18の所定の表示領域に表示されるようにHUD42の動作を制御するように構成されている。
【0033】
表示制御部43は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、CPU、MPU、GPU及びTPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0034】
本実施形態では、車両制御部3と表示制御部43は、別個の構成として設けられているが、車両制御部3と表示制御部43は一体的に構成されてもよい。この点において、表示制御部43と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。また、表示制御部43は、ヘッドランプ20と路面描画装置45の動作を制御するように構成された電子制御ユニットと、HUD42の動作を制御するように構成された電子制御ユニットの2つの電子制御ユニットによって構成されてもよい。
【0035】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ及びジャイロセンサのうち少なくとも一つを含む。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。
【0036】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6は、一以上の外部カメラ6Aと、内部カメラ6Bとを含む。外部カメラ6Aは、車両1の周辺環境を示す画像データを取得した上で、当該画像データを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された画像データに基づいて、周辺環境情報を取得する。ここで、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物(歩行者、他車両、標識等)に関する情報を含んでもよい。例えば、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物の属性に関する情報と、車両1に対する対象物の距離や位置に関する情報とを含んでもよい。外部カメラ6Aは、単眼カメラとしても構成されてもよいし、ステレオカメラとして構成されてもよい。
【0037】
内部カメラ6Bは、車両1の内部に配置されると共に、乗員を示す画像データを取得するように構成されている。内部カメラ6Bは、乗員の視点Eをトラッキングするトラッキングカメラとして機能する。ここで、乗員の視点Eは、乗員の左目の視点又は右目の視点のいずれかであってもよい。または、視点Eは、左目の視点と右目の視点を結んだ線分の中点として規定されてもよい。表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて、乗員の視点Eの位置を特定してもよい。乗員の視点Eの位置は、画像データに基づいて、所定の周期で更新されてもよいし、車両1の起動時に一回だけ決定されてもよい。
【0038】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ及びレーザーレーダ(例えば、LiDARユニット)のうちの少なくとも一つを含む。例えば、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を検出するように構成されている。特に、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を示す3Dマッピングデータ(点群データ)を取得した上で、当該3Dマッピングデータを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された3Dマッピングデータに基づいて、周辺環境情報を特定する。
【0039】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイ(HUDを除く)である。GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0040】
無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報等)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報等)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。また、無線通信部10は、歩行者が携帯する携帯型電子機器(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等)から歩行者に関する情報を受信すると共に、車両1の自車走行情報を携帯型電子機器に送信するように構成されている(歩車間通信)。車両1は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器とアドホックモードにより直接通信してもよいし、アクセスポイントを介して通信してもよい。さらに、車両1は、図示しない通信ネットワークを介して他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と通信してもよい。通信ネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)及び無線アクセスネットワーク(RAN)のうちの少なくとも一つを含む。無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LPWA、DSRC(登録商標)又はLi-Fiである。また、車両1は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と第5世代移動通信システム(5G)を用いて通信してもよい。
【0041】
記憶装置11は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置である。記憶装置11には、2次元又は3次元の地図情報及び/又は車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、3次元の地図情報は、3Dマッピングデータ(点群データ)によって構成されてもよい。記憶装置11は、車両制御部3からの要求に応じて、地図情報や車両制御プログラムを車両制御部3に出力するように構成されている。地図情報や車両制御プログラムは、無線通信部10と通信ネットワークを介して更新されてもよい。
【0042】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、車両1の走行を自動的に制御する。つまり、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0043】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0044】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0045】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0046】
(第一実施形態)
次に、
図4から
図7を参照して第一実施形態に係る表示制御部43の動作の一例について以下に説明する。
図4は、表示制御部43の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図5は、乗員の視界におけるHUD情報(具体的には、枠パターンM1)を示す図である。
図6は、乗員の視界におけるHUD情報(具体的には、枠パターンM2)と光パターンL1を示す図である。
図7は、車両1の乗員の視点Eから枠パターンM2の形成位置(枠パターンM2を形成する虚像の表示位置)および光パターンL1の形成位置(表示位置)までの距離を示す模式図である。
図5から
図7では、HUD情報を示す虚像オブジェクトの一例として枠パターンを示している。
【0047】
図4に示すように、表示制御部43は、車両制御部3からHUD表示指示信号を受信したかを判断する(ステップS1)。車両制御部3は、周辺環境情報に基づいて歩行者の存在を確認した場合、HUD情報をHUD42に表示させることを指示するHUD表示指示信号を表示制御部43へ送信する。HUD表示指示信号には、対象物(歩行者)の位置情報および乗員の視点Eの位置情報が含まれている。
【0048】
HUD表示指示信号が受信された場合(ステップS1でYES)、表示制御部43は、路面描画装置45により路面描画が実施されているかを判断する(ステップS2)。一方、HUD表示指示信号が受信されていない場合(ステップS1でNO)、本処理が終了する。
【0049】
路面描画が実施されていない場合(ステップS2でNO)、表示制御部43は、受信したHUD表示指示信号に応じて、HUD情報を表示するようにHUD42を制御する(ステップS3)。例えば、
図5に例示されるように、表示制御部43は、歩行者P1の位置情報および乗員の視点Eの位置情報に基づいて、枠パターンM1が歩行者P1を囲むように表示されるようにHUD42を制御する。また、枠パターンM1は、車両1の前後方向において乗員の視点Eから所定の距離離れた位置に形成される。すなわち、枠パターンM1を形成する虚像が乗員の視点Eから所定の距離離れた位置に表示される。例えば、枠パターンM1は、HUD42の画像生成部423から出射された光の光路長によって決定される車両1の前後方向における所定の位置に形成される。また、枠パターンM1は、HUD42の光学系の位置(例えば、レンズ424)を移動させて光の光路長を変化させることにより、歩行者P1の車両1の前後方向における位置と略一致する位置に形成されてもよい。車両1の前後方向における枠パターンM1の形成位置が歩行者P1の位置と略一致する場合は、乗員の視点Eが移動したとしても、乗員の視界における枠パターンM1と歩行者P1との間の位置関係を維持することが可能となる。
【0050】
一方、路面描画が実施されている場合(ステップS2でYES)、表示制御部43は、受信したHUD表示指示信号および路面上の光パターン表示位置情報に応じて、HUD情報を表示するようにHUD42を制御する(ステップS4)。例えば、
図6に例示されるように、表示制御部43は、歩行者P2の位置情報および乗員の視点Eの位置情報に基づいて、枠パターンM2が歩行者P2を囲むように表示されるようにHUD42を制御する。また、表示制御部43は、乗員の視点Eから枠パターンM2が形成される位置までの距離が乗員の視点Eから路面上に表示されている光パターンL1の位置までの距離と一致するようにHUD42の動作を制御する。例えば、
図7に例示されるように、枠パターンM2が2D画像の場合、枠パターンM2は、HUD42の光学系(例えば、レンズ424)の位置を移動させて光の光路長を変化させることにより、車両1の前後方向において、路面上に表示されている光パターンL1の距離の範囲(R
L1)内に形成される。乗員の視点Eから枠パターンM2を形成する虚像までの距離をD
M2、乗員の視点Eから光パターンL1の後端までの距離をD
L1とすると、D
L1≦D
M2≦D
L1+R
L1 が成立するように枠パターンM2が形成される。
【0051】
上述のように、第一実施形態によれば、表示制御部43は、HUD情報および光パターンの両方を表示させる場合、乗員からHUD情報の虚像までの距離と乗員から光パターンまでの距離とを一致させている。これにより、乗員は、HUD情報および光パターンにより示される情報を同時に把握することができる。すなわち、光パターンおよびHUD情報に対する乗員の視認性を向上させることができる。
【0052】
また、表示制御部43は、乗員からHUD情報の虚像までの距離を乗員から路面上に表示されている光パターンまでの距離に一致させるようにHUD42を制御している。これにより、光パターンを照射する路面上の位置を、HUD42により表示されるHUD情報の虚像の位置に関係なく設定することができる。例えば、光パターンが乗員に向けた情報を示している場合は、乗員が確認しやすい路面上の位置に光パターンを形成することができる。また、乗員は、光パターンを視認している状態でHUD情報が表示された場合でも、乗員が焦点距離を変更することなく、後から表示されたHUD情報を素早く把握することができる。
【0053】
(第二実施形態)
次に、
図8から
図10を参照して第二実施形態に係る表示制御部43の動作の一例について以下に説明する。
図8は、表示制御部43の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図9は、乗員の視界におけるHUD情報(具体的には、枠パターンM3)と光パターンL2を示す図である。
図10は、車両の乗員の視点Eから枠パターンM3の形成位置(枠パターンM3を形成する虚像の表示位置)および光パターンL2の形成位置(表示位置)までの距離を示す模式図である。
【0054】
図8に示すように、表示制御部43は、車両制御部3から路面描画指示信号を受信したかを判断する(ステップS11)。車両制御部3は、車両1の走行状態情報および/または周辺環境情報に基づいて、所定の光パターンを路面描画装置45に表示させることを指示する路面描画指示信号を表示制御部43へ送信する。
【0055】
路面描画指示信号が受信された場合(ステップS11でYES)、表示制御部43は、HUD42によりHUD情報が表示されているかを判断する(ステップS12)。一方、路面描画指示信号が受信されていない場合(ステップS11でNO)、本処理が終了する。
【0056】
HUD情報が表示されていない場合(ステップS12でNO)、表示制御部43は、受信した路面描画指示信号に応じて、光パターンを表示するように路面描画装置45を制御する(ステップS13)。例えば、表示制御部43は、車両1の走行状態情報および/または周辺環境情報に基づいて、車両1の前後方向において乗員の視点Eから所定の距離離れた位置の路面上に所定の光パターンが描画されるように路面描画装置45を制御する。
【0057】
一方、HUD情報が表示されている場合(ステップS12でYES)、表示制御部43は、受信した路面描画指示信号およびHUD情報の虚像表示位置情報に応じて、所定の光パターンを表示するように路面描画装置45を制御する(ステップS14)。表示制御部43は、車両1の前後方向において、乗員の視点Eから路面上に表示される光パターンの位置までの距離が乗員の視点EからHUD情報の虚像の表示位置までの距離と一致するように路面描画装置45の動作を制御する。例えば、
図9よび
図10に例示されるように、枠パターンM3が3D画像の場合、光パターンL2は、路面描画装置45の光学系を駆動制御することにより、車両1の前後方向において、その表示される距離の範囲(R
L2)が枠パターンM3を形成する虚像が表示されている距離の範囲(R
M3)に少なくとも部分的に重複する位置に形成される。乗員の視点Eから枠パターンM3を形成する後端側の虚像までの距離をD
M3、乗員の視点Eから光パターンL2の後端までの距離をD
L2とすると、D
L2≦D
M3+R
M3、D
M3≦D
L2+R
L2 が成立するように光パターンL2が形成される。
【0058】
上述のように、第二実施形態によれば、表示制御部43は、乗員から光パターンまでの距離を乗員からHUD情報の虚像までの距離に一致させるように路面描画装置45を制御している。これにより、HUD情報の虚像の表示位置を、光パターンを照射する路面上の位置に関係なく設定することができる。例えば、HUD情報が対象物(例えば、歩行者等)の存在を乗員に通知する画像(例えば、矢印や枠パターン)である場合は、対象物(歩行者等)の位置と略一致する位置に虚像を表示させることができる。これにより、乗員の視点の位置に依存せずに所定の画像(虚像)を表示させることができる。また、乗員は、HUD情報を視認している状態で光パターンが表示された場合でも、乗員が焦点距離を変更することなく、後から表示された光パターンの情報を素早く把握することができる。
【0059】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0060】
上記実施形態では、車両の前後方向において、HUD情報の虚像が表示される距離の範囲と光パターンが表示される距離の範囲が少なくとも部分的に重複している場合について述べているが、これに限られない。実質的には乗員が焦点距離を変更せずにHUD情報および光パターンを視認できれば、車両の前後方向において虚像の表示距離範囲と光パターンの表示距離範囲が重複していなくてもよい。例えば、車両の前後方向において乗員から所定の距離離れた位置付近にHUD情報の虚像および光パターンを表示する場合、虚像の表示距離範囲と光パターンの表示距離範囲が重複しないものの、所定の距離の10%ずれた程度であれば、「距離が一致する」場合に含まれる。
【0061】
上記実施形態では、HUD情報および光パターンの一方が表示されている状態で、HUD情報および光パターンの他方を表示する場合について述べているが、これに限られない。例えば、表示制御部43は、車両制御部3からHUD表示指示信号および路面描画表示信号を同時に受信し、HUD情報および光パターンの両方を表示する場合、HUD情報の虚像および光パターンの表示位置の一方に合わせて、HUD情報の虚像および光パターンの他方の表示位置を調整してもよい。この場合も、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
上記実施形態では、凹面鏡425は、画像生成部423から出射された光をウインドシールド18に向けて反射しているが、これに限られない。凹面鏡425は、ウインドシールド18の内側に設けられているコンバイナに向けて光を反射してもよい。また、反射部として凹面鏡425を使用しているが、その他の部材で反射部を形成してもよい。
【0063】
上記実施形態では、HUD42は、画像生成部423から出射された光の光路長を変化させる光学系部材としてレンズ424を有しているが、これに限定されない。HUD42は、例えば、複数のレンズや平面鏡から構成される光学系部材や、その他の部材を用いて光路長を変化させてもよい。
【0064】
本出願は、2019年9月30日出願の日本特許出願2019-179483号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。