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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
H03H9/145 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021553647
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040408
(87)【国際公開番号】W WO2021085465
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019197792
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 泰伸
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】高野 洋
【審判官】土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009373(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H9/00-9/76
H03H3/007-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に形成されている電極と、を備え、
前記電極は、
AlとCuとを含む第1層と、
前記第1層の前記圧電性基板側とは反対側に形成されており、Alを含む第2層と、を有し、
前記第1層は、
前記圧電性基板の厚さ方向に直交する方向において並んでいるAl結晶とCuAl結晶粒の少なくとも一部とを有し、
前記電極では、
前記CuAl結晶粒は、前記第2層の前記第1層側とは反対側の主面までは至っておらず、
前記第1層のCu濃度が、前記第2層のCu濃度よりも高く、
前記第1層のCu濃度が、15wt%以上であり、
前記第1層のCu濃度が、30wt%以下である、
弾性波装置。
【請求項2】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に形成されている電極と、を備え、
前記電極は、
AlとCuとを含む第1層と、
前記第1層の前記圧電性基板側とは反対側に形成されており、Alを含む第2層と、を有し、
前記第1層は、
前記圧電性基板の厚さ方向に直交する方向において並んでいるAl結晶とCuAl 結晶粒の少なくとも一部とを有し、
前記電極では、
前記CuAl 結晶粒は、前記第2層の前記第1層側とは反対側の主面までは至っておらず、
前記Al結晶及び前記CuAl 結晶粒は、前記第1層における前記圧電性基板側の下面まで至っており、
前記第1層は、前記Al結晶の一部同士の間に挟まれた前記CuAl 結晶粒を有する、
弾性波装置。
【請求項3】
前記第2層のCu濃度が、10wt%以下である、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項4】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に形成されている電極と、を備え、
前記電極は、
AlとCuとを含む第1層と、
前記第1層の前記圧電性基板側とは反対側に形成されており、Cuを含む第2層と、を有し、
前記第1層は、
前記圧電性基板の厚さ方向に直交する方向において並んでいるAl結晶とCuAl 結晶粒とを有し、
前記電極では、
前記CuAl 結晶粒は、前記第2層の前記第1層側とは反対側の主面までは至っておらず、
前記Al結晶及び前記CuAl 結晶粒は、前記第1層における前記圧電性基板側の下面まで至っており、
前記第1層は、前記Al結晶の一部同士の間に挟まれた前記CuAl 結晶粒を有する、
弾性波装置。
【請求項5】
前記電極は、前記第1層と前記第2層との間に位置している中間層を更に有し、
前記中間層の材料は、Ti、Cr、NiCr、Mo及びAlTiの群から選択される1種を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に弾性波装置に関し、より詳細には、電極を備える弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波装置として、圧電基板と、圧電基板上に形成された電極と、を備える弾性表面波素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された弾性表面波素子では、電極は、アルミニウム及び銅を含む層を有している。この層には、アルミニウムからなる柱状の結晶粒の結晶粒界にアルミニウム銅合金からなる柱状の結晶粒が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-13815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された弾性表面波素子では、耐電力性を更に向上させるために電極の銅濃度を高めた場合、電気抵抗が増加し、弾性表面波素子の特性が低下しやすいという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、特性低下を抑制しつつ耐電力性を向上させることが可能な弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る弾性波装置は、圧電性基板と、電極と、を備える。前記電極は、前記圧電性基板上に形成されている。前記電極は、第1層と、第2層と、を有する。前記第1層は、AlとCuとを含む。前記第2層は、前記第1層の前記圧電性基板側とは反対側に形成されており、Alを含む。前記第1層は、前記圧電性基板の厚さ方向に直交する方向において並んでいるAl結晶とCuAl結晶粒の少なくとも一部とを有する。前記電極では、前記CuAl結晶粒は、前記第2層の前記第1層側とは反対側の主面までは至っていない。前記電極では、前記第1層のCu濃度が、前記第2層のCu濃度よりも高く、前記第1層のCu濃度が、15wt%以上であり、前記第1層のCu濃度が、30wt%以下である。
本発明の一態様に係る弾性波装置は、圧電性基板と、電極と、を備える。前記電極は、前記圧電性基板上に形成されている。前記電極は、第1層と、第2層と、を有する。前記第1層は、AlとCuとを含む。前記第2層は、前記第1層の前記圧電性基板側とは反対側に形成されており、Alを含む。前記第1層は、前記圧電性基板の厚さ方向に直交する方向において並んでいるAl結晶とCuAl 結晶粒の少なくとも一部とを有する。前記電極では、前記CuAl 結晶粒は、前記第2層の前記第1層側とは反対側の主面までは至っていない。前記電極では、前記Al結晶及び前記CuAl 結晶粒は、前記第1層における前記圧電性基板側の下面まで至っている。前記第1層は、前記Al結晶の一部同士の間に挟まれた前記CuAl 結晶粒を有する。
【0008】
本発明の一態様に係る弾性波装置は、圧電性基板と、電極と、を備える。前記電極は、前記圧電性基板上に形成されている。前記電極は、第1層と、第2層と、を有する。前記第1層は、AlとCuとを含む。前記第2層は、前記第1層の前記圧電性基板側とは反対側に形成されており、Cuを含む。前記第1層は、前記圧電性基板の厚さ方向に直交する方向において並んでいるAl結晶とCuAl結晶粒とを有する。前記電極では、前記CuAl結晶粒は、前記第2層の前記第1層側とは反対側の主面までは至っていない。前記電極では、前記Al結晶及び前記CuAl 結晶粒は、前記第1層における前記圧電性基板側の下面まで至っている。前記第1層は、前記Al結晶の一部同士の間に挟まれた前記CuAl 結晶粒を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様に係る弾性波装置は、特性低下を抑制しつつ耐電力性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る弾性波装置の平面図である。
図2図2は、同上の弾性波装置の断面図である。
図3図3は、同上の弾性波装置の電極の縦断面図である。
図4図4は、同上の弾性波装置の電極の横断面図である。
図5図5は、同上の弾性波装置のSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)像の模式図である。
図6図6A~6Fは、同上の弾性波装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
図7図7は、同上の弾性波装置の製造方法の説明図である。
図8図8は、同上の弾性波装置のCu濃度と規格化抵抗率及び耐電力との関係を示すグラフである。
図9図9は、実施形態1の変形例に係る弾性波装置の電極の縦断面図である。
図10図10は、実施形態2に係る弾性波装置の縦断面図である。
図11図11は、同上の弾性波装置の製造方法の説明図である。
図12図12は、実施形態3に係る弾性波装置の断面図である。
図13図13は、実施形態4に係る弾性波装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態等において参照する図1~4、6A~6F、7及び9~13は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(実施形態1)
(1)弾性波装置の全体構成
以下、実施形態1に係る弾性波装置1について、図1~5を参照して説明する。
【0013】
弾性波装置1は、圧電性基板2と、IDT(Interdigital Transducer)電極6と、を備える。IDT電極6は、圧電性基板2上に形成されている。IDT電極6は、2つの電極60を有する。
【0014】
また、弾性波装置1は、2つの反射器7を更に備える。2つの反射器7は、圧電性基板2上に形成されている。2つの反射器7は、弾性波装置1の弾性波の伝搬方向に沿った方向においてIDT電極6の一方側及び他方側それぞれに1つずつ位置している。
【0015】
また、弾性波装置1は、IDT電極6に接続されている配線部8を更に備える。配線部8は、圧電性基板2上に形成されている。
【0016】
また、弾性波装置1は、圧電性基板2上でIDT電極6、各反射器7及び各配線部8を覆っている保護膜9(図2参照)を更に備える。図1では、保護膜9の図示を省略してある。なお、弾性波装置1は、保護膜9を備えていない構成であってもよい。
【0017】
弾性波装置1では、圧電性基板2上に1つのIDT電極6が形成されているが、IDT電極6の数は1つに限らず、複数であってもよい。つまり、弾性波装置1は、複数のIDT電極6を備えてもよい。この場合、弾性波装置1では、例えば、複数のIDT電極6それぞれを含む複数の弾性表面波共振子が電気的に接続されて帯域通過型のフィルタが構成されていてもよい。
【0018】
(2)弾性波装置の各構成要素
(2.1)圧電性基板
実施形態1に係る弾性波装置1では、圧電性基板2は、圧電基板である。圧電基板の材料は、例えば、リチウムタンタレート(LiTaO)である。圧電基板は、例えば、Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶から形成されている。Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶は、LiTaO圧電単結晶の3つの結晶軸をX軸、Y軸、Z軸とした場合に、X軸を中心軸としてY軸からZ軸方向にΓ°回転した軸を法線とする面で切断したLiTaO単結晶であって、X軸方向に弾性表面波が伝搬する単結晶である。圧電基板のカット角は、カット角をΓ[°]、圧電基板のオイラー角を(φ,θ,ψ)をすると、Γ=θ+90°である。ただし、Γと、Γ±180×nは同義である(結晶学的に等価である)。ここにおいて、nは、自然数である。圧電基板は、Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶に限定されず、例えば、Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電セラミックスであってもよい。
【0019】
圧電性基板2は、互いに対向する第1主面21及び第2主面22を有する。第1主面21と第2主面22とは、圧電性基板2の厚さ方向D1において対向している。圧電性基板2の厚さ方向D1からの平面視で、圧電性基板2は長方形状であるが、これに限らず、例えば正方形状であってもよい。
【0020】
圧電基板の材料は、リチウムタンタレート(LiTaO)に限定されず、例えば、リチウムニオベイト(LiNbO)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であってもよい。圧電基板が、例えば、YカットX伝搬LiNbO圧電単結晶又は圧電セラミックスからなる場合、弾性波装置1は、ラブ波を弾性波として利用することにより、SH波を主成分とするモードをメインモードとして使用することができる。なお、圧電基板の単結晶材料、カット角については、例えば、フィルタの要求仕様(通過特性、減衰特性、温度特性及び帯域幅等のフィルタ特性)等に応じて、適宜、決定すればよい。
【0021】
(2.2)IDT電極
IDT電極6は、圧電性基板2上に形成されている。より詳細には、IDT電極6は、圧電性基板2の第1主面21上に形成されている。
【0022】
IDT電極6は、上述のように2つの電極60を有する。2つの電極60の各々は、導電性を有する。2つの電極60は、互いに離れており、互いに電気的に絶縁されている。以下では、2つの電極60を互いに区別して説明する場合、2つの電極60のうち一方の電極60を第1電極60Aと称し、他方の電極60を第2電極60Bと称する。
【0023】
第1電極60Aは、圧電性基板2の厚さ方向D1からの平面視で櫛形状である。第1電極60Aは、第1バスバー61と、複数の第1電極指63と、を有する。第1バスバー61は、複数の第1電極指63を同じ電位にするための導体部である。第2電極60Bは、圧電性基板2の厚さ方向D1からの平面視で櫛形状である。第2電極60Bは、第2バスバー62と、複数の第2電極指64と、を有する。第2バスバー62は、複数の第2電極指64を同じ電位(等電位)にするための導体部である。IDT電極6では、第1バスバー61と第2バスバー62とが互いに対向している。
【0024】
複数の第1電極指63は、第1バスバー61に接続されており、第2バスバー62側に延びている。複数の第1電極指63は、第1バスバー61と一体に形成されており、第2バスバー62とは離れている。
【0025】
複数の第2電極指64は、第2バスバー62に接続されており、第1バスバー61側に延びている。複数の第2電極指64は、第2バスバー62と一体に形成されており、第1バスバー61とは離れている。
【0026】
IDT電極6は、例えば、正規型のIDT電極である。以下、IDT電極6について、より詳細に説明する。
【0027】
IDT電極6の第1バスバー61及び第2バスバー62は、圧電性基板2の厚さ方向D1(第1方向)に直交する第2方向D2を長手方向とする長尺状である。言い換えれば、IDT電極6の第1バスバー61及び第2バスバー62は、弾性波伝搬方向である第2方向D2を長手方向とする長尺状である。IDT電極6では、第1バスバー61と第2バスバー62とは、圧電性基板2の厚さ方向D1と第2方向D2との両方に直交する第3方向D3において対向し合っている。言い換えれば、第1バスバー61と第2バスバー62とは、後述の第1電極指63及び第2電極指64が延びる方向である第3方向D3において対向し合っている。
【0028】
複数の第1電極指63は、第1バスバー61に接続され第2バスバー62に向かって延びている。ここにおいて、複数の第1電極指63は、第1バスバー61から第3方向D3に沿って延びている。複数の第1電極指63の先端と第2バスバー62とは離れている。例えば、複数の第1電極指63は、互いの長さが同じであり、互いの幅が同じである。
【0029】
複数の第2電極指64は、第2バスバー62に接続され第1バスバー61に向かって延びている。ここにおいて、複数の第2電極指64は、第2バスバー62から第3方向D3に沿って延びている。複数の第2電極指64のそれぞれの先端は、第1バスバー61とは離れている。例えば、複数の第2電極指64は、互いの長さが同じであり、互いの幅が同じである。図1の例では、複数の第2電極指64の長さは、複数の第1電極指63の長さと同じである。また、図1の例では、複数の第2電極指64の幅は、複数の第1電極指63の幅と同じである。
【0030】
IDT電極6では、複数の第1電極指63と複数の第2電極指64とが、第2方向D2において、1本ずつ交互に互いに離隔して並んでいる。したがって、隣り合う第1電極指63と第2電極指64とは離れている。複数の第1電極指63と複数の第2電極指64とを含む一群の電極指は、複数の第1電極指63と複数の第2電極指64とが、第2方向D2において、離隔して並んでいる構成であればよく、複数の第1電極指63と複数の第2電極指64とが交互に互いに離隔して並んでいない構成であってもよい。例えば、第1電極指63と第2電極指64とが1本ずつ離隔して並んでいる領域と、第1電極指63又は第2電極指64が第2方向D2において2つ並んでいる領域と、とが混在してもよい。
【0031】
IDT電極6は、複数の第1電極指63と複数の第2電極指64とで規定される交差領域を有している。交差領域は、複数の第1電極指63の先端の包絡線と複数の第2電極指64の先端の包絡線との間の領域である。IDT電極6は、交差領域において、圧電性基板2に弾性波を励振する。
【0032】
IDT電極6は、正規型のIDT電極であるが、これに限らず、例えば、アポダイズ重み付けが施されているIDT電極であってもよいし、傾斜IDT電極であってもよい。アポダイズ重み付けが施されているIDT電極では、弾性波の伝搬方向の一端部から中央に近づくにつれて交差幅が大きくなり、弾性波の伝搬方向の中央から他端部に近づくにつれて交差幅が小さくなる。
【0033】
IDT電極6の電極指ピッチP1は、図1に示すように、複数の第1電極指63のうち隣り合う2つの第1電極指63の中心線間の距離、又は、複数の第2電極指64のうち隣り合う2つの第2電極指64の中心線間の距離で定義される。隣り合う2つの第2電極指64の中心線間の距離は、隣り合う2つの第1電極指63の中心線間の距離と同じである。
【0034】
実施形態1に係る弾性波装置1のIDT電極6では、第1電極指63と第2電極指64との対数は、一例として100である。つまり、IDT電極6は、一例として、100本の第1電極指63と、100本の第2電極指64と、を有している。
【0035】
2つの電極60の各々の具体的な構造については、後述の「(3)電極の構造」の欄で説明する。
【0036】
(2.3)反射器
弾性波装置1では、2つの反射器7が圧電性基板2の第1主面21上に形成されている。2つの反射器7の各々は、導電性を有する。2つの反射器7の各々は、例えば、短絡グレーティングである。各反射器7は、弾性波を反射する。
【0037】
2つの反射器7の各々は、複数の電極指71を有し、複数の電極指71の一端どうし短絡され、他端どうしが短絡されている。2つの反射器7の各々では、電極指の数は、一例として20である。実施形態1に係る弾性波装置1では、各反射器7が短絡グレーティングであるが、これに限らず、例えば、開放グレーティング、正負反射型グレーティング、短絡グレーティングと開放グレーティングとが組み合わされたグレーティング等であってもよい。
【0038】
弾性波装置1では、各反射器7とIDT電極6とが同じ材料で同じ厚さに設定されている場合、弾性波装置1の製造時に各反射器7とIDT電極6とを同じ工程で形成することができる。弾性波装置1の製造方法については、後述の「(4)弾性波装置の製造方法」の欄で説明する。
【0039】
弾性波装置1では、各反射器7が短絡グレーティングであるが、これに限らず、例えば、開放グレーティング、正負反射型グレーティング等であってもよい。
【0040】
(2.4)配線部
弾性波装置1では、図1に示すように、配線部8が、圧電性基板2の第1主面21上に形成されている。配線部8は、導電性を有する。
【0041】
配線部8は、IDT電極6の第1バスバー61に接続された第1配線部81と、IDT電極6の第2バスバー62に接続された第2配線部82と、を含む。第1配線部81と第2配線部82とは、互いに離れており、互いに電気的に絶縁されている。
【0042】
第1配線部81は、第1バスバー61から複数の第1電極指63側とは反対側へ延びている。第1配線部81は、圧電性基板2の厚さ方向D1において第1バスバー61と一部重複するように形成されていてもよいし、第1バスバー61と同じ材料かつ同じ厚さで第1バスバー61と一体に形成されていてもよい。また、第1配線部81は、第1バスバー61と一体に形成された第1下層と、この第1下層上に形成された第1上層と、の積層構造を有していてもよい。
【0043】
第2配線部82は、第2バスバー62から複数の第2電極指64側とは反対側へ延びている。第2配線部82は、圧電性基板2の厚さ方向D1において第2バスバー62と一部重複するように形成されていてもよいし、第2バスバー62と同じ材料かつ同じ厚さで第2バスバー62と一体に形成されていてもよい。また、第2配線部82は、第2バスバー62と一体に形成された第2下層と、この第2下層上に形成された第2上層と、の積層構造を有してもよい。
【0044】
第1配線部81の第1上層及び第2配線部82の第2上層の材料は、例えば、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Pt(白金)、Au(金)、Ti(チタン)、Cr(クロム)又はこれらの金属のいずれかを主体とする合金である。第1配線部81の第1上層及び第2配線部82の第2上層の材料は、例えば、NiCrであってもよい。
【0045】
弾性波装置1は、第1配線部81を介して第1バスバー61に接続された第1端子と、第2配線部82を介して第2バスバー62に接続された第2端子と、を更に備えていてもよい。また、弾性波装置1は、2つの反射器7の各々に1つずつ接続された2つの第3配線部を更に備えていてもよい。この場合、2つの反射器7の各々は、少なくとも第3配線部を介して第3端子と接続されていてもよい。第1端子と第2端子と第3端子とを含む複数の外部接続端子は、弾性波装置1において、回路基板、パッケージ用の実装基板(サブマウント基板)等と電気的に接続するための電極である。また、弾性波装置1は、IDT電極6には電気的に接続されていない複数のダミー端子を更に備えていてもよい。複数のダミー端子は、回路基板、実装基板等に対する弾性波装置1の平行度を高めるための端子であり、電気的接続を目的とした端子とは異なる。つまり、ダミー端子は、弾性波装置1が回路基板、実装基板等に対して傾いて実装されるのを抑制するための端子であり、外部接続端子の数及び配置、弾性波装置1の外周形状等によっては必ずしも設ける必要はない。
【0046】
第1端子は、例えば、第1配線部81と同じ材料かつ同じ厚さで第1配線部81と一体に形成されている。第2端子は、例えば、第2配線部82と同じ材料かつ同じ厚さで第2配線部82と一体に形成されている。第3端子は、例えば、第3配線部と同じ材料かつ同じ厚さで第3配線部と一体に形成されている。第3配線部は、例えば、第1配線部81及び第2配線部82と同じ材料かつ同じ厚さで形成されている。
【0047】
(2.5)保護膜
保護膜9は、圧電性基板2の第1主面21上のIDT電極6、第1配線部81、第2配線部82、第3配線部及び各反射器7と、圧電性基板2の第1主面21の一部と、を覆っている。
【0048】
保護膜9の材料は、酸化ケイ素であるが、これに限らず、例えば、窒化ケイ素でもよい。保護膜9は、単層構造に限らず、例えば、2層以上の多層構造であってもよい。
【0049】
実施形態1に係る弾性波装置1では、保護膜9の厚さがIDT電極6の厚さよりも薄く、保護膜9の表面が、保護膜9の下地の形状に沿った凹凸形状を有している。弾性波装置1では、保護膜9の表面が、平坦化されて平面状となっていてもよい。また、弾性波装置1では、保護膜9の厚さがIDT電極6の厚さよりも厚く、保護膜9の表面が、保護膜9の下地の形状に沿った凹凸形状を有していてもよい。
【0050】
(3)電極の構造
2つの電極60の各々は、図3及び4に示すように、第1層601と、第2層602と、を有する。第1層601は、第2層602に比べて圧電性基板2側に形成されており、Al(アルミニウム)とCu(銅)とを含む。第2層602は、第1層601の圧電性基板2側とは反対側に形成されており、Alを含む。第2層602は、第1層601側とは反対側の主面621を有する。2つの電極60の各々は、圧電性基板2と第1層601との間に介在する密着層600を更に有するのが好ましい。密着層600の材料は、例えば、Ti(チタン)であるが、これに限らず、例えば、Cr又はNiCrであってもよい。2つの電極60の各々では、密着層600、第1層601及び第2層602の厚さが、それぞれ、12nm、78nm及び78nmである。密着層600、第1層601及び第2層602の厚さは、一例であり、これらの数値に限定されない。
【0051】
第1層601は、圧電性基板2の厚さ方向D1に直交する方向において並んでいるAl結晶611とCuAl結晶粒612とを有する。ここで、「Al結晶611とCuAl結晶粒612とが厚さ方向D1に直交する方向において並んでいる」とは、第1の場合と第2の場合との少なくとも一方の場合を含む。第1の場合は、電極60の、上述の弾性波伝搬方向である第2方向D2に沿った断面を第3方向D3から見て、Al結晶611の少なくとも一部と少なくとも1つのCuAl結晶粒612とが、厚さ方向D1ではなく、厚さ方向D1に直交する第2方向D2に沿って配置されている箇所が第1層601中にある場合を指す。第2の場合は、電極60の、第3方向D3に沿った断面を第2方向D2から見て、Al結晶611の少なくとも一部と少なくとも1つのCuAl結晶粒612とが、厚さ方向D1ではなく、厚さ方向D1に直交する第3方向D3に沿って配置されている箇所が第1層601中にある場合を指す。このとき、Al結晶611の少なくとも一部とCuAl結晶粒612とが必ずしも直線上に配置されている必要はない。また、CuAl結晶粒612は、CuとAlとの金属化合物であり、Cu濃度が54±10wt%程度となっている。圧電性基板2の厚さ方向D1からの平面視で、Al結晶611は、2つのCuAl結晶粒612の間に挟まれた部分を有する。第1層601は、Al結晶611の一部同士の間に挟まれたCuAl結晶粒612を有する。第1層601は、アルミニウム銅合金として、少なくともCuAl結晶粒612を含んでいればよく、CuAl結晶粒612の他にCuAl結晶粒を含んでいてもよい。Al結晶611は、Al単結晶でもよいし、複数のAl結晶粒を含むAl多結晶であってもよい。複数のAl結晶粒の各々は、圧電性基板2の厚さ方向D1に沿った方向に延びている柱状である。圧電性基板2の厚さ方向D1に沿った方向は、圧電性基板2の第1主面21に略直交する方向である。圧電性基板2の厚さ方向D1からの平面視で、CuAl結晶粒612の粒径は、第2方向D2における電極60の幅よりも小さい。実施形態等において称している「CuAl結晶粒」は、完全な結晶構造を有する物質に限られない。「CuAl結晶粒」は、非晶質体ではない物質、言い換えれば、結晶の配向性が少しでも認められる物質であればよい。
【0052】
2つの電極60の各々では、CuAl結晶粒612は、第2層602の主面621までは至っていない。この点については、例えば、弾性波装置1のサンプルの電極60をSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)により観察したときのSTEM像によって確認することができる。
【0053】
2つの電極60の各々では、弾性波装置1の耐電力性を向上させる観点から、第1層601のCu濃度が15wt%以上であるのが好ましい。また、2つの電極60の各々では、電極60の電気抵抗の増加による弾性波装置1の特性低下を抑制する観点から、第1層601のCu濃度が30wt%以下であるのが好ましい。第1層601のCu濃度と抵抗率及び耐電力との関係については、後述の「(5)弾性波装置の動作及び特性」で説明する。2つの電極60の各々では、ストレスマイグレーションによる特性劣化を抑制する観点から、第2層602のCu濃度は、0.1wt%以上であるのが好ましい。ただし、2つの電極60の各々では、第2層602のCu濃度が、0wt%であって、Al濃度が100wt%であってもよい。2つの電極60の各々では、電極60の電気抵抗の増加による弾性波装置1の特性低下を抑制する観点から、第2層602のCu濃度は、10wt%以下であるのが好ましい。
【0054】
一実施例に係る弾性波装置1では、第1層601のCu濃度が20wt%、第2層602のCu濃度が、1wt%である。図5は、一実施例の弾性波装置1の電極60のSTEM像の模式図である。
【0055】
第1層601のCu濃度及び第2層602のCu濃度は、例えば、弾性波装置1のサンプルの電極60をSTEMにより観察して得ることができる。第1層601のCu濃度は、STEM像において、第1層601の第1特定領域内をEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により分析して得た値の平均値である。第2層602のCu濃度は、STEM像において、第2層602の第2特定領域内をEDXにより分析して得た値の平均値である。第1特定領域は、第1層601の下面613と第1基準面RP1との間の領域である。第1基準面RP1は、第1層601の下面613から見て、第1層601と第2層602との合計厚さの10%だけ上の面である。図5では、電極60の右側に、第1層601と第2層602との合計厚さを10等分したスケールを図示してある。第2特定領域は、第2層602の主面621と第2基準面RP2との間の領域である。第2基準面RP2は、第2層602の主面621から見て、第1層601と第2層602との合計厚さの10%だけ下の面である。
【0056】
なお、電極60が第1層601を含むことは、電極60を第2方向D2又は第3方向D3に直交する断面で見た場合に、Al結晶611とCuAl結晶粒612とが厚さ方向D1に直交する方向において並んでいる箇所を有することにより確認可能である。また、電極60が第2層602を含むことは、電極60を第2方向D2又は第3方向D3に直交する断面で見た場合に、上述の第2特定領域において、Al結晶611とCuAl結晶粒612とが厚さ方向D1に直交する方向において並んでいる箇所を有しない、もしくは、Al結晶611のみが厚さ方向D1に直交する方向において存在していることにより確認可能である。
【0057】
(4)弾性波装置の製造方法
以下では、弾性波装置1の製造方法について図6A~6Fに基づいて説明する。
【0058】
弾性波装置1の製造方法では、第1工程~第7工程を行う。
【0059】
第1工程では、互いに対向する第1主面21及び第2主面22を有する圧電性基板2を準備する(図6A参照)。
【0060】
第2工程では、図6Bに示すように、圧電性基板2の第1主面21に、レジスト層11を形成する。ここにおいて、第2工程では、圧電性基板2の第1主面21のうち、各電極60の形成予定領域を露出させるようにパターニングされたレジスト層11を形成する。ここにおいて、レジスト層11は、各電極60の形成予定領域の他に、各反射器7の形成予定領域を露出させるようにパターニングされている。
【0061】
第3工程では、図6Cに示すように、密着層600の元になる密着膜630と、第1層601の元になる第1AlCu膜631と、第2層602の元になる第2AlCu膜632と、の積層膜を蒸着法により形成する。密着膜630の材料は、例えば、Tiである。密着膜630の厚さは、例えば、12nmである。第1AlCu膜631のCu濃度は、例えば、15wt%以上30wt%以下である。第1AlCu膜631の厚さT1(図7)は、例えば、78nmである。第2AlCu膜632のCu濃度は、例えば、0.5wt%以上1wt%以下である。第2AlCu膜632の厚さT2(図7参照)は、例えば、78nmである。第1AlCu膜631の厚さT1と第2AlCu膜632の厚さT2とは第1層601の重さと第2層602の重さとが略等しくなるように設定されているが、特に限定されない。第1AlCu膜631の厚さT1と第2AlCu膜632の厚さT2との比率は、厚さT1と厚さT2とのいずれかがT1+T2の100%とならない範囲で適宜変えてもよい。
【0062】
第4工程では、リフトオフを行うことにより、レジスト層11及びレジスト層11上の不要膜を除去することで、積層膜をパターニングする(図6D参照)。これにより、第4工程では、圧電性基板2の第1主面21上に、積層膜のうち各電極60に対応する部分を残す。また、第4工程では、積層膜のうち、各反射器7に対応する部分も残す。ここにおいて、不要膜は、第3工程で形成した積層膜のうちレジスト層11上に形成されていた部分である。
【0063】
第5工程では、熱処理を行うことにより、各電極60の第1層601及び第2層602等を形成する(図6E参照)。要するに、第5工程では、上記の熱処理を行うことにより、各電極60等を形成する。熱処理は、例えば、Nガス雰囲気中で行う。熱処理の条件としては、例えば、熱処理温度が270℃、熱処理時間が4時間であるが、これの数値に限らない。熱処理温度及び熱処理時間は、第5工程の熱処理によってAl結晶611とCuAl結晶粒612とを含む第1層601が形成されるように、適宜設定すればよい。
【0064】
第6工程では、第1配線部81、第2配線部82、第3配線部、第1端子、第2端子及び第3端子を形成する。第1配線部81、第2配線部82、第3配線部、第1端子、第2端子及び第3端子は、例えば、薄膜形成技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して形成するが、これに限らず、リフトオフ法を利用して形成してもよい。また、上述の第3工程において、第1配線部81、第2配線部82、第3配線部、第1端子、第2端子及び第3端子を形成してもよい。また、上述の第3工程において、第1配線部81、第2配線部82、第3配線部、第1端子、第2端子及び第3端子それぞれの下層部を形成しておき、第6工程において、第1配線部81、第2配線部82、第3配線部、第1端子、第2端子及び第3端子それぞれの上層部を形成してもよい。
【0065】
第7工程では、図6Fに示すように、圧電性基板2の第1主面21上のIDT電極6、第1配線部81、第2配線部82、第3配線部及び各反射器7と、圧電性基板2の第1主面21の一部と、を覆う保護膜9を形成する。
【0066】
弾性波装置1の製造方法では、第1工程において圧電性基板2を準備する際には、圧電性基板2として複数の弾性波装置1を製造可能な圧電体ウェハを準備する。弾性波装置1の製造方法では、第7工程よりも後で、複数の弾性波装置1を含むウェハをダイシングすることで、複数個の弾性波装置1(チップ)を得る。弾性波装置1の製造方法は、一例であり、特に限定されない。第5工程は、第4工程よりも後であればよく、例えば、第6工程の後又は第7工程の後で行ってもよい。また、弾性波装置1が、パッケージの一部として樹脂部を備える場合、第5工程が、樹脂部の元になる樹脂層を熱硬化させる熱処理を兼ねていてもよい。
【0067】
(5)弾性波装置の動作及び特性
図8は、弾性波装置1において、第2層602のCu濃度を1wt%として、第1層601のCu濃度を変化させた場合の、Cu濃度と、第1層601の規格化抵抗率及び弾性波装置1の耐電力と、の関係を示す。図8において、横軸は第1層601のCu濃度であり、左側の縦軸は第1層601の規格化抵抗率であり、右側の縦軸は弾性波装置1の耐電力である。ここにおいて、規格化抵抗率は、Cu濃度が1wt%の第1層601の抵抗率を1.0として規格化した抵抗率である。図8では、黒丸が規格化抵抗率のデータであり、白丸が耐電力のデータである。
【0068】
図8から、弾性波装置1の耐電力性をより向上させる観点からは、第1層601のCu濃度は、15wt%以上であるのが好ましい。また、図8から、電極60の電気抵抗の増加を抑制する観点からは、第1層601のCu濃度は、30wt%以下であるのが好ましい。
【0069】
(6)まとめ
実施形態1に係る弾性波装置1は、圧電性基板2と、電極60と、を備える。電極60は、圧電性基板2上に形成されている。電極60は、第1層601と、第2層602と、を有する。第1層601は、AlとCuとを含む。第2層602は、第1層601の圧電性基板2側とは反対側に形成されており、Alを含む。第1層601は、圧電性基板2の厚さ方向D1に直交する方向において並んでいるAl結晶611とCuAl結晶粒612の少なくとも一部とを有する。電極60では、CuAl結晶粒612は、第2層602の第1層601側とは反対側の主面621までは至っていない。
【0070】
実施形態1に係る弾性波装置1では、特性低下を抑制しつつ耐電力性を向上させることが可能となる。
【0071】
実施形態1に係る弾性波装置1では、電力が印加されているときに第1層601と第2層602とのうち、より大きな応力が加わる第1層601が引張強度の高いCuAl結晶粒612を含んでいるので、耐電力性を向上させることができる。また、実施形態1に係る弾性波装置1では、CuAl結晶粒612が第2層602の第1層601側とは反対側の主面621までは至っていないので、CuAl2結晶粒のCu濃度を増加させて電極60の耐電力性を向上させた場合においても、第2層602の電気抵抗の増加を抑制でき、弾性波装置1の特性の低下を抑制することができる。
【0072】
(実施形態1の変形例)
実施形態1の変形例に係る弾性波装置1aについて、図9を参照して説明する。実施形態1の変形例1に係る弾性波装置1aに関し、実施形態1に係る弾性波装置1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
変形例に係る弾性波装置1aでは、複数の電極60の各々が、第1層601と第2層602との間に位置している中間層603を更に有する点で、実施形態1に係る弾性波装置1と相違する。中間層603は、第1層601と第2層602との間に介在し、第1層601と第2層602との間の拡散を抑制するバリア層としての機能を有する。
【0074】
中間層603は、導電性を有する。中間層603の材料は、例えば、Tiであるが、これに限らず、例えば、Cr、NiCr、Mo、AlTiのいずれかであってもよい。中間層603の厚さは、例えば、5nmである。中間層603の厚さは、電極60の電気抵抗の増加を抑制する観点から30nm以下であるのが好ましい。また、中間層603の厚さは、厚さの均一性及び再現性の観点から4nm以上であるのが好ましい。
【0075】
実施形態1の変形例に係る弾性波装置1aの製造方法は、実施形態1に係る弾性波装置1の製造方法と略同じであり、第3工程において密着層600の元になる密着膜と、第1層601の元になる第1AlCu膜と、中間層603の元になるバリア膜と、第2層602の元になる第2AlCu膜と、の積層膜を蒸着法により形成する点で相違する。これにより、第5工程において熱処理を行ったときに形成される第1層601のCuAl結晶粒612が第2層602に至るのを抑制することが可能となる。つまり、第5工程での熱処理を行ったときに、析出したCuAl結晶粒が中間層603でストップされるので、CuAl結晶粒612が第2層602に析出するのを中間層603により抑制することができる。
【0076】
変形例に係る弾性波装置1aでは、複数の電極60の各々が、第1層601と第2層602との間に位置している中間層603を更に有するので、耐電力性を向上させることができる。また、変形例に係る弾性波装置1aは、中間層603を有するので、圧電性基板2の厚さ方向D1におけるCuAl結晶粒612の大きさのばらつきを抑制でき、特性ばらつきを抑制することが可能となる。
【0077】
(実施形態2)
実施形態2に係る弾性波装置1bについて、図10を参照して説明する。実施形態2に係る弾性波装置1bに関し、実施形態1に係る弾性波装置1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
実施形態2に係る弾性波装置1bは、電極60の第2層602がCuを含む。第2層602のCu濃度は、例えば、100wt%である。第2層602のAl濃度は、EDXによる検出限界以下である。第2層602は、Cuの他にAlを含んでいてもよい。この場合でも、Cu濃度は、95wt%以上であるのが好ましい。
【0079】
実施形態2に係る弾性波装置1bの製造方法は、実施形態1に係る弾性波装置1の製造方法と略同じであり、第3工程において、圧電性基板2の第1主面21上に図11に示すような積層膜を蒸着法によって形成している点で、実施形態1に係る弾性波装置1の製造方法と相違する。ここにおいて、積層膜は、密着層600の元になる密着膜630と、第1層601の元になる第1AlCu膜631と、第2層602の元になるCu膜633と、の積層膜である。密着膜630、第1AlCu膜631及びCu膜633の厚さは、それぞれ、12nm、78nm及び24nmである。第1AlCu膜631の厚さT1とCu膜633の厚さT3とは第1層601の重さと第2層602の重さとが略等しくなるように設定されているが、特に限定されない。第1AlCu膜631の厚さT1とCu膜633の厚さT3との比率は、厚さT1と厚さT3とのいずれかがT1+T3の100%とならない範囲で適宜変えてもよい。実施形態2に係る弾性波装置1bの製造方法では、第3工程以外は、実施形態1に係る弾性波装置1の製造方法と同じである。
【0080】
実施形態2に係る弾性波装置1bは、圧電性基板2と、電極60と、を備える。電極60は、圧電性基板2上に形成されている。電極60は、第1層601と、第2層602と、を有する。第1層601は、圧電性基板2側に形成されており、AlとCuとを含む。第2層602は、第1層601の圧電性基板2側とは反対側に形成されており、Cuを含む。第1層601は、圧電性基板2の厚さ方向D1に直交する方向において並んでいるAl結晶611とCuAl結晶粒612とを有する。電極60では、CuAl結晶粒612は、第2層602の第1層601側とは反対側の主面621までは至っていない。
【0081】
実施形態2に係る弾性波装置1bでは、特性低下を抑制しつつ耐電力性を向上させることが可能となる。
【0082】
(実施形態3)
以下、実施形態3に係る弾性波装置1cについて図12を参照して説明する。
【0083】
実施形態3に係る弾性波装置1cは、実施形態1に係る弾性波装置1の圧電性基板2の代わりに、圧電性基板2cを備える点で、実施形態1に係る弾性波装置1と相違する。実施形態3に係る弾性波装置1cに関し、実施形態1に係る弾性波装置1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
弾性波装置1cの圧電性基板2cは、実施形態1に係る弾性波装置1の圧電性基板2のような圧電基板ではなく、積層型基板である。具体的には、圧電性基板2cは、支持基板20と、低音速膜4と、圧電体層5と、を含む積層型基板である。
【0085】
低音速膜4は、支持基板20上に設けられている。ここにおいて、「支持基板20上に設けられている」とは、支持基板20上に直接的に設けられている場合と、支持基板20上に間接的に設けられている場合と、を含む。圧電体層5は、低音速膜4上に設けられている。ここにおいて、「低音速膜4上に設けられている」とは、低音速膜4上に直接的に設けられている場合と、低音速膜4上に間接的に設けられている場合と、を含む。IDT電極6の各電極60は、圧電体層5上に形成されている。
【0086】
以下、圧電性基板2cについて、より詳細に説明する。
【0087】
支持基板20は、互いに対向する第1主面201及び第2主面202を有する。第1主面201と第2主面202とは、圧電性基板2cの厚さ方向D1において対向している。圧電性基板2cの厚さ方向D1からの平面視で、支持基板20は長方形状であるが、これに限らず、例えば正方形状であってもよい。
【0088】
支持基板20では、圧電体層5を伝搬する弾性波の音速よりも、支持基板20を伝搬するバルク波の音速が高速である。ここにおいて、支持基板20を伝搬するバルク波は、支持基板20を伝搬する複数のバルク波のうち最も低音速なバルク波である。
【0089】
支持基板20は、例えば、シリコン基板である。支持基板20の厚さは、10λ(λ:電極指ピッチP1により定まる弾性波の波長)以上180μm以下が好適であり、一例として、例えば、120μmである。支持基板20がシリコン基板の場合、支持基板20の第1主面201の面方位は、例えば、(100)面であるが、これに限らず、例えば、(110)面、(111)面等であってもよい。弾性波の伝搬方位は、支持基板20の第1主面201の面方位に制約されずに設定することができる。
【0090】
支持基板20は、シリコン基板に限定されない。支持基板20は、シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サファイア、リチウムタンタレート、リチウムニオベイト、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、及びダイヤモンドからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含んでいればよい。
【0091】
圧電体層5は、互いに対向する第1主面51及び第2主面52を有する。第1主面51と第2主面52とは、圧電性基板2cの厚さ方向D1において対向している。
【0092】
圧電体層5は、例えば、Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶から形成されている。Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶は、LiTaO圧電単結晶の3つの結晶軸をX軸、Y軸、Z軸とした場合に、X軸を中心軸としてY軸からZ軸方向にΓ°回転した軸を法線とする面で切断したLiTaO単結晶であって、X軸方向に弾性表面波が伝搬する単結晶である。圧電体層5のカット角は、カット角をΓ[°]、圧電体層5のオイラー角を(φ,θ,ψ)をすると、Γ=θ+90°である。ただし、Γと、Γ±180×nは同義である(結晶学的に等価である)。ここにおいて、nは、自然数である。圧電体層5は、Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶に限定されず、例えば、Γ°YカットX伝搬LiTaO圧電セラミックスであってもよい。
【0093】
圧電体層5の厚さは、例えば、IDT電極6の電極指ピッチP1(図1参照)で定まる弾性波の波長をλとしたときに、3.5λ以下である。圧電体層5の厚さが3.5λ以下である場合、Q値が高くなる。また、圧電体層5の厚さを2.5λ以下とすることで、TCF(Temperature Coefficient of Frequency)を小さくすることができる。さらに、圧電体層5の厚さを1.5λ以下とすることで、弾性波の音速の調整が容易になる。なお、圧電体層5の厚さは、3.5λ以下であることに限定されず、3.5λより大きくてもよい。
【0094】
ところで、圧電体層5の厚さが3.5λ以下である場合、上述したようにQ値が高くなるが、高次モードが発生する。弾性波装置1cでは、圧電体層5の厚さが3.5λ以下であっても、高次モードを低減させるように、上述の低音速膜4が設けられている。
【0095】
弾性波装置1cでは、圧電体層5を伝搬する弾性波のモードとして、縦波、SH波、若しくはSV波、又はこれらが複合したモードが存在する。弾性波装置1cでは、SH波を主成分とするモードをメインモードとして使用している。高次モードとは、圧電体層5を伝搬する弾性波のメインモードよりも高周波数側に発生するスプリアスモードのことである。圧電体層5を伝搬する弾性波のモードが「SH波を主成分とするモードをメインモード」であるか否かについては、例えば、圧電体層5のパラメータ(材料、オイラー角及び厚さ等)、IDT電極6のパラメータ(材料、厚さ及び電極指ピッチ等)、低音速膜4のパラメータ(材料、厚さ等)等のパラメータを用いて、有限要素法により変位分布を解析し、ひずみを解析することにより、確認することができる。圧電体層5のオイラー角は、分析により求めることができる。
【0096】
圧電体層5の材料は、リチウムタンタレート(LiTaO)に限定されず、例えば、リチウムニオベイト(LiNbO)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であってもよい。圧電体層5が、例えば、YカットX伝搬LiNbO圧電単結晶又は圧電セラミックスからなる場合、弾性波装置1cは、ラブ波を弾性波として利用することにより、SH波を主成分とするモードをメインモードとして使用することができる。なお、圧電体層5の単結晶材料、カット角については、例えば、フィルタの要求仕様(通過特性、減衰特性、温度特性及び帯域幅等のフィルタ特性)等に応じて、適宜、決定すればよい。
【0097】
低音速膜4は、圧電体層5を伝搬するバルク波の音速よりも、低音速膜4を伝搬するバルク波の音速が低速となる膜である。
【0098】
実施形態3に係る弾性波装置1cでは、低音速膜4は、支持基板20と圧電体層5との間に設けられている。低音速膜4が支持基板20と圧電体層5との間に設けられていることにより、弾性波の音速が低下する。弾性波は、本質的に低音速な媒質にエネルギーが集中するという性質を有する。したがって、圧電体層5内及び弾性波が励振されているIDT電極6内への弾性波のエネルギーの閉じ込め効果を高めることができる。その結果、低音速膜4が設けられていない場合に比べて、損失を低減し、Q値を高めることができる。
【0099】
低音速膜4の材料は、例えば、酸化ケイ素である。低音速膜4の材料は、酸化ケイ素に限定されない。低音速膜4の材料は、例えば、酸化ケイ素、ガラス、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化ケイ素にフッ素、炭素、若しくはホウ素を加えた化合物、又は、上記各材料を主成分とする材料であってもよい。
【0100】
低音速膜4が酸化ケイ素の場合、温度特性を改善することができる。リチウムタンタレートの弾性定数は負の温度特性を有し、酸化ケイ素は正の温度特性を有する。したがって、弾性波装置1cでは、TCFの絶対値を小さくすることができる。
【0101】
低音速膜4の厚さは、上述の電極指ピッチP1で定まる弾性波の波長をλとすると、2.0λ以下であることが好ましい。低音速膜4の厚さは、例えば670nmである。低音速膜4の厚さを2.0λ以下とすることにより、膜応力を低減させることができ、その結果、弾性波装置1cの製造時に支持基板20の元になるシリコンウェハの反りを低減させることができ、良品率の向上及び特性の安定化が可能となる。
【0102】
また、弾性波装置1cでは、圧電性基板2cが、例えば低音速膜4と圧電体層5との間に介在する密着層を含んでいてもよい。これにより、低音速膜4と圧電体層5との密着性を向上させることができる。密着層は、例えば、樹脂(エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等)、金属等からなる。また、弾性波装置1cでは、圧電性基板2cが、密着層に限らず、誘電体膜を、低音速膜4と圧電体層5との間、圧電体層5上、又は低音速膜4下のいずれかに備えていてもよい。
【0103】
(実施形態4)
実施形態4に係る弾性波装置1dについて、図13を参照して説明する。実施形態4に係る弾性波装置1dに関し、実施形態3に係る弾性波装置1cと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0104】
実施形態4に係る弾性波装置1dは、実施形態3に係る弾性波装置1cの圧電性基板2cの代わりに圧電性基板2dを備える点で、実施形態3に係る弾性波装置1cと相違する。
【0105】
圧電性基板2dは、高音速膜3を更に有する点で、圧電性基板2cと相違する。
【0106】
高音速膜3は、支持基板20と低音速膜4との間に設けられている。ここにおいて、高音速膜3は、支持基板20上に設けられている。「支持基板20上に設けられている」とは、支持基板20上に直接的に設けられている場合と、間接的に設けられている場合と、を含む。低音速膜4は、高音速膜3上に設けられている。「高音速膜3上に設けられている」とは、高音速膜3上に直接的に設けられている場合と、間接的に設けられている場合と、を含む。
【0107】
高音速膜3は、圧電体層5を伝搬する弾性波の音速よりも、高音速膜3を伝搬するバルク波の音速が高速となる膜である。高音速膜3の厚さは、例えば200nm、300nm、400nmである。
【0108】
高音速膜3は、メインモードの弾性波のエネルギーが高音速膜3より下の構造に漏れるのを抑制するように機能する。弾性波装置1dでは、高音速膜3の厚さが十分に厚い場合、メインモードの弾性波のエネルギーは圧電体層5及び低音速膜4の全体に分布し、高音速膜3の低音速膜4側の一部にも分布し、支持基板20には分布しないことになる。高音速膜3により弾性波を閉じ込めるメカニズムは非漏洩なSH波であるラブ波型の表面波の場合と同様のメカニズムであり、例えば、文献「弾性表面波デバイスシミュレーション技術入門」、橋本研也、リアライズ社、p.26-28に記載されている。上記メカニズムは、音響多層膜によるブラッグ反射器を用いて弾性波を閉じ込めるメカニズムとは異なる。
【0109】
高音速膜3の材料は、例えば、ダイヤモンドライクカーボン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリコン、サファイア、圧電体(リチウムタンタレート、リチウムニオベイト、又は水晶)、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、及びダイヤモンドからなる群から選択される少なくとも1種の材料である。高音速膜3の材料は、上述したいずれかの材料を主成分とする材料、又は、上述したいずれかの材料を含む混合物を主成分とする材料であってもよい。
【0110】
高音速膜3の厚さに関しては、弾性波を圧電体層5及び低音速膜4に閉じ込める機能を高音速膜3が有するため、高音速膜3の厚さは厚いほど望ましい。圧電性基板2dは、高音速膜3、低音速膜4及び圧電体層5以外の他の膜として密着層、誘電体膜等を有していてもよい。
【0111】
上記の実施形態1~4等は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態1~4等は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0112】
例えば、実施形態3に係る弾性波装置1cの電極60及び実施形態4に係る弾性波装置1dの電極60は、実施形態1に係る弾性波装置1の電極60と同じであるが、これに限らず、実施形態1の変形例1に係る弾性波装置1aの電極60又は実施形態2に係る弾性波装置1bの電極60であってもよい。
【0113】
また、弾性波装置1の製造方法では、電極60の元になる積層膜を蒸着法とリフトオフとを利用して形成しているが、これに限らず、例えば、蒸着法又はスパッタ法と、フォトリソグラフィ技術と、エッチング技術と、を利用して形成してもよい。
【0114】
また、弾性波装置1、1a、1bは、圧電性基板2上にIDT電極6を複数備えたラダー型フィルタであってもよいし、縦結合共振子型フィルタであってもよい。また、弾性波装置1c、1dは、圧電性基板2c、2d上にIDT電極6を複数備えたラダー型フィルタであってもよいし、縦結合共振子型フィルタであってもよい。
【0115】
また、実施形態3に係る弾性波装置1c又は実施形態4に係る弾性波装置1dにおいて、圧電体層5が支持基板20上に直接的に設けられていてもよい。
【0116】
(態様)
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0117】
第1の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)は、圧電性基板(2;2c;2d)と、電極(60)と、を備える。電極(60)は、圧電性基板(2;2c;2d)上に形成されている。電極(60)は、第1層(601)と、第2層(602)と、を有する。第1層(601)は、AlとCuとを含む。第2層(602)は、第1層(601)の圧電性基板(2;2c;2d)側とは反対側に形成されており、Alを含む。第1層(601)は、圧電性基板(2;2c;2d)の厚さ方向(D1)に直交する方向において並んでいるAl結晶(611)とCuAl結晶粒(612)の少なくとも一部とを有する。電極(60)では、CuAl結晶粒(612)は、第2層(602)の第1層(601)側とは反対側の主面(621)までは至っていない。
【0118】
第1の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、特性低下を抑制しつつ耐電力性を向上させることが可能となる。
【0119】
第2の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、第1の態様において、第1層(601)のCu濃度が、第2層(602)のCu濃度よりも高い。
【0120】
第2の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)は、耐電力性をより向上させやすくなる。
【0121】
第3の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、第2の態様において、第1層(601)のCu濃度が、15wt%以上である。
【0122】
第3の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、耐電力性を向上させやすい。
【0123】
第4の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、第3の態様において、第1層(601)のCu濃度が、30wt%以下である。
【0124】
第4の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、電極(60)の電気抵抗が大きくなりすぎるのを抑制できる。
【0125】
第5の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、第1~4の態様のいずれか一つにおいて、第2層(602)のCu濃度が、10wt%以下である。
【0126】
第5の態様に係る弾性波装置(1;1a;1c;1d)では、電極(60)の電気抵抗が大きくなりすぎるのを抑制できる。
【0127】
第6の態様に係る弾性波装置(1b)は、圧電性基板(2;2c;2d)と、電極(60)と、を備える。電極(60)は、圧電性基板(2;2c:2d)上に形成されている。電極(60)は、第1層(601)と、第2層(602)と、を有する。第1層(601)は、AlとCuとを含む。第2層(602)は、第1層(601)の圧電性基板(2;2c;2d)側とは反対側に形成されており、Cuを含む。第1層(601)は、圧電性基板(2;2c;2d)の厚さ方向(D1)に直交する方向において並んでいるAl結晶(611)とCuAl結晶粒(612)とを有する。電極(60)では、CuAl結晶粒(612)は、第2層(602)の第1層(601)側とは反対側の主面(621)までは至っていない。
【0128】
第6の態様に係る弾性波装置(1b)では、特性低下を抑制しつつ耐電力性を向上させることが可能となる。
【0129】
第7の態様に係る弾性波装置(1;1a;1b;1c;1d)では、第1~6の態様のいずれか一つにおいて、電極(60)は、中間層(603)を更に有する。中間層(603)は、第1層(601)と第2層(602)との間に位置している。中間層(603)の材料は、Ti、Cr、NiCr、Mo及びAlTiの群から選択される1種を含む。
【0130】
第7の態様に係る弾性波装置(1;1a;1b;1c;1d)は、第1層(601)と第2層(602)との間の拡散を抑制でき、耐電力性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0131】
1、1a、1b、1c、1d 弾性波装置
2、2c、2d 圧電性基板
21 第1主面
22 第2主面
20 支持基板
201 第1主面
202 第2主面
3 高音速膜
4 低音速膜
5 圧電体層
51 第1主面
52 第2主面
6 IDT電極
60 電極
60A 第1電極
60B 第2電極
61 第1バスバー
62 第2バスバー
63 第1電極指
64 第2電極指
600 密着層
601 第1層
611 Al結晶
612 CuAl結晶粒
602 第2層
621 主面
603 中間層
630 密着膜
631 第1AlCu膜
632 第2AlCu膜
633 Cu膜
7 反射器
71 電極指
8 配線部
81 第1配線部
82 第2配線部
9 保護膜
11 レジスト層
D1 厚さ方向(第1方向)
D2 第2方向
D3 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13