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特許7545413短い凝結時間のアルミネートで強化されたタイプIポルトランドセメントおよびそれから生産されたセメントボード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】短い凝結時間のアルミネートで強化されたタイプIポルトランドセメントおよびそれから生産されたセメントボード
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20240828BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 14/42 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240828BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C04B28/04
B28B11/24
C04B14/04 Z
C04B14/10 Z
C04B14/28
C04B14/42 Z
C04B14/48 Z
C04B16/02 Z
C04B16/06 A
C04B16/06 B
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B18/14 Z
C04B40/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021561892
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020027894
(87)【国際公開番号】W WO2020214515
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】62/834,997
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/801,083
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ、チンファ
(72)【発明者】
【氏名】ペン、ヤンフェイ
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500228(JP,A)
【文献】特開2005-343740(JP,A)
【文献】国際公開第86/04376(WO,A1)
【文献】国際公開第91/11406(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1794107(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントボードであって、
水性セメント質スラリーの凝結から形成された連続層を備え、前記水性セメント質スラリーが、
水と、
セメント質反応性粉末であって、
80~100重量%のタイプIポルトランドセメント、
前記セメント質反応性粉末にはスルホアルミン酸カルシウムセメントが実質的に含まれず、またアルミン酸カルシウムセメントも実質的に含まれず、
任意選択で最大20重量%のポゾラン材料、を含み、および
アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、前記セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量の、凝結促進剤を含、セメント質反応性粉末と、を含み、
前記アルミン酸塩添加剤はアルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルミン酸塩、または水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、およびそれらの任意の組み合わせからなるアルミン酸塩前駆体を含み、
前記セメント質反応性粉末には硫酸アルミニウムが存在しないことを特徴とするセメントボード。
【請求項2】
前記アルミン酸塩添加剤が、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルミン酸塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のセメントボード。
【請求項3】
前記アルミン酸塩添加剤が、前記水性セメント質スラリー内のアルミン酸塩前駆体から形成され、前記アルミン酸塩前駆体が、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のセメントボード。
【請求項4】
前記セメント質反応性粉末が、合計で最大10重量%のタイプIIポルトランドセメントおよびタイプIIIポルトランドセメントを有することを特徴とする請求項1に記載のセメントボード。
【請求項5】
前記水性セメント質スラリーの凝結から形成された連続層は、少なくとも1つの多孔質支持体を有することを特徴とする請求項1に記載のセメントボード。
【請求項6】
前記セメント質反応性粉末には、タイプIIポルトランドセメントが存在せず、タイプIIIセメントが存在せず、
前記アルミン酸塩添加剤は、水性セメント質スラリーの固化時間を10分以下にするのに有効な量のアルミン酸ナトリウムであり、
前記鉱物充填剤および鉱物骨材が存在する場合、それはバーミキュライトおよび/または開放多孔性が0.10未満のコーティングされたパーライトであることを特徴とする請求項1に記載のセメントボード。
【請求項7】
前記セメント質反応性粉末には、ホウ酸バリウムが存在せず、ポリビニルアルコールが存在せず、ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルが存在せず、ポリヒドロキシ芳香族化合物が存在せず、ポリカルボン酸含有化合物が存在せず、ポリカルボン酸含有化合物の塩が存在せず、アスコルビン酸が存在せず、アスコルビン酸の塩が存在せず、炭酸リチウムが存在せず、硫酸アルミニウムが存在しないことを特徴とする請求項1に記載のセメントボード。
【請求項8】
請求項1に記載のセメントボードを製造するためのセメント質組成物を加工するための方法であって、
水とセメント質反応性粉末とを組み合わせて、水性セメント質スラリーを形成することを含み、
前記セメント質反応性粉末が、
80~100重量%のタイプIポルトランドセメント、および
前記セメント質反応性粉末にはスルホアルミン酸カルシウムセメントが実質的に含まれず、またアルミン酸カルシウムセメントも実質的に含まれず、
任意選択で最大20重量%のポゾラン材料、を含み、および
アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、前記セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量で提供される凝結促進剤を含み、
前記アルミン酸塩添加剤が、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルミン酸塩を含み、
前記セメント質反応性粉末には硫酸アルミニウムが存在せず、
移動する多孔質支持体の間にスラリーを供給し、
前記スラリーを凝結させ、
前記凝結したスラリーを切断してボードを形成することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記アルミン酸塩添加剤が、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルミン酸塩を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミン酸塩添加剤が、水性セメント質スラリーの中のアルミン酸塩前駆体から形成され、アルミン酸塩前駆体は、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群れから選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸塩添加剤で強化されて、短縮された凝結時間を得るタイプIポルトランドセメントに関する。セメントボード、およびそのようなアルミネートで強化されたタイプIポルトランドセメントを使用してセメントボードを生産するための方法もまた、本明細書で提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
セメントボードは、繊維ガラススクリムまたは他の高多孔質材料など、2つの多孔質支持体の間に典型的にキャストされるセメントの層を備える薄い鉄筋コンクリートパネルを指す。そのようなセメントボードは、浴室、台所、シャワー、および浴槽領域などの湿った領域におけるセラミックタイルのための耐久性および耐水性の下葺きとして建設で一般的に使用されている。
【0003】
セメントボードは、水性セメント質スラリーが移動する多孔質支持体(例えば、繊維ガラススクリム)上の連続セメント層にキャストされる連続プロセスで製造され得る。水性セメント質スラリーの拡散が起こった後、次いで第2の多孔質支持体が、拡散されたセメント質スラリーの上部に堆積され得る。多孔質支持体間の連続セメント層の十分な凝結に続いて、セメントボードのシートは、所定のサイズに切断され得る。上部および/または下部の支持体を欠いている裸のセメントボードも知られている。
【0004】
セメントボードを製造するための連続プロセスを支持するために、典型的には、急速な凝結時間を有する水性セメント質スラリーが必要とされる。凝結時間が急速であればあるほど、セメントボードをより迅速にサイズに合わせて切断し、組立ラインから外すことができる。水性セメント質スラリーの所与のバッチの分配のための有用な作業寿命を維持するために、過度に急速な凝結時間は避けるべきである。
【0005】
比較的急速な凝結時間の必要性を考えると、セメントボードの従来の製造プロセスは、典型的には、より一般的で安価なタイプIポルトランドセメントではなく、タイプIIIポルトランドセメントを用いる。ASTM C150は、ポルトランドセメントをタイプI~Vに分類するために使用される。タイプIIIポルトランドセメントは、タイプIポルトランドセメントと同様の組成を有するが、タイプIIIは、粒子サイズがより小さく(微細粉砕)、結果としての凝結時間がタイプIで得られるよりもはるかに短いということを特徴とする。さらに、タイプIIIポルトランドセメントは、タイプIポルトランドセメントよりもわずかに多くのCSを有し得る(表1を参照されたい)。タイプIIIポルトランドセメントのセメント粒子の細かさは、水と接触するセメント表面積の増加によって凝結時間を減少させ、それによって、より速い水和をもたらす。より速い水和は、硬化の最初の7日間の強度の発達を促し、初期の硬化期間中により多くの熱を放出し得る。表1は、タイプIおよびタイプIIIポルトランドセメントに見られる特定の構成成分の典型的な量を比較する。CCNは、「Cement Chemist Notation」の頭字語で、一般的なセメント構成成分の省略表記である。
【表1】
【0006】
Perez-Penaらの米国特許第6,869,474号、Dubeyの同第8,298,332号、およびPerez-Penaの同第9,994,484号は、タイプIポルトランドセメントを含有し、フライアッシュまたは他のポゾラン材料を含むセメント質反応性粉末を開示している。アルカノールアミン促進剤が存在して、減少された凝結時間を得ることができる。タイプIポルトランドセメントのより低いコストおよびより容易な入手可能性を考えると、過剰量のアルカノールアミン促進剤が存在することなく、セメントボード製造プロセスにおいてこのタイプのセメントを利用することが望ましいであろう。
【0007】
BerkeらのUS8,277,556は、(i)ポリカルボキシレート界面活性剤と、(ii)泡を安定化するのに有効な量の、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、またはそれらの混合物を含む泡安定剤とを含むセメント質泡スラリー、ボレート、サルフェート、アルミネート、またはそれらの混合物を含む、該泡安定剤を架橋するのに有効な量の架橋剤、およびセメント質泡スラリーの硬質化時に、該構成成分を発泡セメント物品に組み込むことを開示している。
【0008】
WangのUS2019/0382308は、水硬性セメント質材料、ポリヒドロキシ芳香族化合物、ポリカルボン酸含有化合物もしくはその塩、アスコルビン酸もしくはその塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物、を含むセメント質組成物を開示しており、この化合物と相互作用する粒子状材料または水溶性シリケート含有材料が本明細書に記載される。ポリヒドロキシ芳香族化合物は、2~30個のヒドロキシル基を有する水溶性化合物であり得る。粒子状材料は、粒子の少なくとも約90重量%が2mm未満の直径を有する粒子サイズ分布を示すことができる。好適な粒子状材料には、ナノ粒子およびマイクロ粒子が含まれる。セメント質組成物は、建築材料を形成するために使用され得る。
【0009】
ArcherらのUS2019/0010092は、水硬性組成物用の液体硬質化促進剤を作製する方法を開示しており、この方法は、(a)水に糖および炭酸リチウムを添加して、糖溶液中の炭酸リチウムの分散液を形成することと、(b)分散液に硫酸アルミニウムを添加して、液体硬質化促進剤を形成することと、を含む。
【0010】
SakaiのUS2010/0068458は、ポルトランドセメント、スラグセメント、アルミナセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、およびポルトランドブラスト炉スラグセメントなどのセメント;ケイ砂、シラス、シリケート顔料、シリカ岩粉末、およびシリカフュームなどのシリカ含有物質を上記のセメントと混合したセメント-シリカ含有物質混合物;石膏;ならびに炭酸マグネシウムを含む自己硬質化性無機材料の例を開示している。塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、または水ガラスなどの硬質化促進剤、およびベントナイトまたはパーライトなどの鉱物粉末が、その組成物に添加され得る。
【0011】
この背景技術の説明は、読者を補助するために作成されており、従来技術の引用でも、示された課題のうちのいずれもそれ自体が当該技術分野において認識されたことを示すものでもないことが認識されるであろう。記載される原理は、いくつかの点および実施形態では、他のシステムに固有の問題を軽減することができるが、保護される技術革新の範囲は、本明細書に記述される任意の特定の問題を解決する特許請求される発明の能力によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解されるであろう。
【0012】
本発明のセメント質組成物は、建物内の湿った場所および乾いた場所で使用するための優れた耐湿性を有するセメントボードなどのプレキャストコンクリート製品を製作するために使用され得る。セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品は、好ましくは、以下で考察される標準的なギルモア針試験方法でくぼみが特定されない場合など、セメント質組成物の急速な最終凝結を容易にする条件下で作製される。急速な最終凝結によって、連続製造プロセスなど、プレキャストコンクリート製品の製作後の初期の取り扱いが容易になり得る。
【0013】
本発明は、水性セメント質スラリー中に凝結促進剤としてアルミン酸塩添加剤を含めることによって容易になるように、主にタイプIポルトランドセメントから形成されたセメントボードに関する。水性セメント質スラリーを形成するための方法は、水、セメント質反応性粉末、およびアルミン酸塩添加剤を組み合わせることを含み得る。続いて、水性セメント質スラリーを1つ以上の多孔質支持体上に配置して、セメントボードを形成することができる。アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩である。セメントボードの連続製造プロセスを容易にするために、本発明では10分以下の凝結時間が実現され得る。
【0014】
したがって、一態様では、本発明は、主にタイプIポルトランドセメントと、アルミン酸カルシウムおよびスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤とを含む水性セメント質スラリーの凝結から形成される連続層を備えるセメントボードを提供する。
【0015】
重量パーセントは、水性セメント質スラリーまたはセメント質反応性粉末中に存在するすべての固体に対する乾燥重量ベースで本明細書に表される。
【0016】
特に、本発明は、
水性セメント質スラリーの凝結から形成された連続層を備えるセメントボードを提供し、水性セメント質スラリーは、
水、
セメント質反応性粉末であって、
60~100重量%のタイプIポルトランドセメント、および
アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量の、凝結促進剤を含む、セメント質反応性粉末を含む。
【0017】
好ましくは、セメント質反応性粉末は、遅延剤および高性能減水剤を含む。
【0018】
好ましくは、連続層は、繊維ガラススクリムなどの2つの多孔質支持体の間に挟まれている。単一の支持体を特徴とするセメントボードおよび支持されていないセメントボードもまた、本開示の範囲内にある。
【0019】
水性セメント質スラリー中のタイプIポルトランドセメントの量は、60~100重量%の範囲である。好ましくは、タイプIポルトランドセメントの量は、80~100重量%、より好ましくは80~100重量%であり、さらにより好ましくは100重量%のポルトランドセメントが存在する。同様の量が、水性セメント質スラリーの凝結後に形成された連続層中に存在する。好ましくは、タイプIポルトランドセメントは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中に存在する唯一のタイプのセメントである。
【0020】
任意選択で、他のタイプのポルトランドセメントおよび他の異なるクラスのセメントを、優勢なタイプIポルトランドセメントと組み合わせることができる。ゼロ以外の量のタイプIIIポルトランドセメントが最大20重量%存在し得る。好ましくは、最大10重量%のタイプIIIポルトランドセメントが存在し得、さらにより好ましくは最大5重量%のタイプIIIポルトランドセメントが、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中に存在し得る。好ましくは、タイプIIIポルトランドセメントが存在しない。ゼロ以外の量のタイプIIポルトランドセメントおよびタイプIIIポルトランドセメントが、合計で最大20重量%存在し得る。好ましくは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中に、合計で最大10重量%のタイプIIポルトランドセメントおよびタイプIIIポルトランドセメントが存在し得、さらにより好ましくは合計で最大5重量%のタイプIIポルトランドセメントおよびタイプIIIポルトランドセメントが存在し得る。好ましくは、タイプIIセメントが存在しない。最も好ましくは、タイプIIセメントが存在せず、タイプIIIセメントが存在しない。
【0021】
アルミン酸塩添加剤の量は、水性セメント質スラリー中、0.1~10重量%の範囲であり得る。好ましくは、アルミン酸塩添加剤の量は1~10重量%であり、さらにより好ましくは、アルミン酸塩添加剤の量は5~10重量%または2~8重量%である。同様の量が、水性セメント質スラリーの凝結後に形成された連続層中に存在する。
【0022】
アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸カルシウムおよびスルホアルミン酸カルシウム以外のものである。アルミン酸塩添加剤は、無機化合物である。好適なアルミン酸塩添加剤には、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上のアルミン酸塩が含まれ得る。また、アルミン酸塩前駆体を使用して、水性セメント質スラリー中にその場でアルミン酸塩添加剤を形成することもできる。好適なアルミン酸塩前駆体には、例えば、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。好ましくは、アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸ナトリウムを含む。
【0023】
フライアッシュまたは他のポゾラン材料は、水性セメント質スラリーまたはセメント質反応性粉末中に存在し得るが、それらは必須ではない。典型的には、0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~10重量%のポゾラン材料が存在する。好ましくは、セメント質反応性粉末は、フライアッシュ以外のポゾラン材料を含まないか、または実質的に含まない。より好ましくは、セメント質反応性粉末は、ポゾラン材料を含まないか、または実質的に含まない。より好ましくは、セメント質反応性粉末は、ポゾラン材料およびタイプIIIポルトランドセメントを含まないか、または実質的に含まない。あるいは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、クラスCフライアッシュ、クラスFフライアッシュ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0024】
好ましくは、セメント質反応性粉末は、アルミン酸カルシウムおよびスルホアルミン酸カルシウムを含まない。
【0025】
最大5重量%のアルカリ性添加剤が、水性セメント質スラリーまたはセメント質反応性粉末中に存在し得る。好適なアルカリ性添加剤には、例えば、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、一リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、およびトリメタリン酸ナトリウム(STMP)が含まれ得る。
【0026】
好ましくは、セメント質反応性粉末は、スルホアルミン酸カルシウムを含まない。
【0027】
本発明はまた、望ましくは短い凝結時間を有するようにセメント質組成物を加工するための方法を提供する。好ましくは、短い凝結時間は、水性セメント質スラリーが凝結するときにエトリンガイト形成を促すと考えられているアルミン酸塩添加剤によって容易になる。エトリンガイトは、式CaAl(SO・32HOまたは代替的に3CaO・Al・3CaSO・32HOを有する硫酸カルシウムアルミニウム化合物である。エトリンガイトは、長い針状の結晶として形成され、凝結時に急速な初期強度を提供する。このように、顕著なエトリンガイト形成を特徴とするセメントボードは、連続製造プロセスで製作された後、比較的すぐに取り扱うことができる。
【0028】
特に、本発明は、
水、セメント質反応性粉末、および凝結促進剤を組み合わせて、水性セメント質スラリーを形成することを含むセメント質組成物を加工するための方法を提供し、
セメント質反応性粉末は、
60~100重量%のタイプIポルトランドセメントを含み、
凝結促進剤は、アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含み、凝結促進剤は、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量で提供される。
【0029】
さらに、セメント質組成物を加工するための方法は、
水性セメント質スラリーを未凝結の連続層として配置することと、
未凝結の連続層を凝結させて、約10分以下の所望の最終凝結時間でセメントボードを形成することと、を含み得る。
【0030】
本明細書が本発明の組成物の凝結時間を指す場合、別途記載のない限り、それは、ギルモア針試験手順による水硬性セメントペーストの凝結時間のためのASTM C266-18標準試験方法に従って測定した場合の最終凝結時間を指す。
【0031】
水性セメント質スラリーは、連続層の第1の面または第2の面のうちの少なくとも1つが支持材料と接触するように、少なくとも1つの支持材料上に配置されて、連続層を形成し得る。好ましくは、水性セメント質スラリーは、セメントボードを製作するときに2つの多孔質支持体材料の間に配置される。水性セメント質スラリーは、支持材料上に連続層として配置される場合、発泡または非発泡として堆積され得る。
【0032】
水性セメント質スラリーまたはそれから形成される連続層中のタイプIポルトランドセメントの量は、60~100重量%の範囲である。好ましくは、タイプIポルトランドセメントの量は、80~100重量%、より好ましくは90~100重量%であり、さらにより好ましくは100重量%のポルトランドセメントが、水性セメント質スラリーまたは連続層中に存在する。
【0033】
水性セメント質スラリーまたはそれから形成される連続層中のアルミン酸塩添加剤の量は、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量の範囲であり得る。したがって、100重量部のセメント質反応性粉末が存在する場合、0.1~10重量部のアルミン酸塩添加剤が存在し得る。好ましくは、アルミン酸塩添加剤の量はセメント質反応性粉末の1~10重量%に等しく、さらにより好ましくは、アルミン酸塩添加剤の量はセメント質反応性粉末の5~10重量%または2~8重量%に等しい。
【0034】
アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸カルシウムおよびスルホアルミン酸カルシウム以外のものである。それらは、1つ以上のアルミン酸塩またはアルミン酸塩前駆体を含み得る。好適なアルミン酸塩には、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。好適なアルミン酸塩前駆体には、例えば、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。好ましくは、アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸ナトリウムを含む。
【0035】
本発明の利点は、実施例および添付の特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明の検討から、当業者に明らかになり得る。しかしながら、本発明は様々な形態を提示する一方で、本開示は、例示的なものとして意図されており、本発明を限定することを意図するものではないことに留意すべきである。
【0036】
したがって、本発明は、一般に、速く凝結するセメント質組成物、ならびにセメント質組成物を作製および使用するための方法に関する。より具体的には、本発明は、セメントボード、ならびに急速な最終凝結および初期の強度達成を促すためにアルミン酸塩添加剤も含むセメント質反応性粉末を利用することによってセメントボードを製作するための方法に関する。急速な凝結を促すためのアルミン酸塩添加剤の使用は、アルカノールアミンなどの他の凝結促進剤と比較して有利であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A図1Aは、本発明により作製された例示的なセメントボードの図を示す。
図1B図1Bは、本発明により作製された例示的なセメントボードの図を示す。
図2図2は、本発明のセメントボードを作製するために使用され得る例示的な装置の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、セメントボードおよび同様のプレキャストコンクリート製品を製作するときに、主にまたは排他的にタイプIポルトランドセメントを利用する機会を提供する。通常の状況では、タイプIポルトランドセメントは、セメントボードおよび同様のプレキャストコンクリート製品を製作するための連続製造プロセスとの適合性を確保するのに十分な速さで凝結しない。本発明を使用することによって、10分未満の望ましい凝結時間を実現することができ、それによって、低コストのタイプIポルトランドセメントをセメントボードおよび他のタイプのプレキャストコンクリート製品に広く使用することが可能になる。
【0039】
アルミン酸カルシウムはエトリンガイトの形成を促し、これは、長い針状の結晶として形成され、水性セメント質スラリーの凝結時に急速な初期強度が得られる。理論またはメカニズムに拘束されることなく、本発明は、アルミン酸カルシウムを利用せずにエトリンガイト形成を助長すると考えられている。
【0040】
驚くべきことに、アルミン酸塩添加剤をタイプIポルトランドセメントと組み合わせると、水性セメント質スラリーの凝結の促進が提供されて、セメントボードを製造するための連続プロセスと適合する凝結時間を提供する。好適なアルミン酸塩添加剤は、アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩またはアルミン酸前駆体であり、これらのいずれかのタイプは、乾燥固体または液体としてセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーと組み合わせることができる。10分以下の凝結時間は、本明細書に開示される水性セメント質スラリーにおいて実現され得る。
【0041】
セメントボードを製作する際に、水性セメント質スラリーは、1つの多孔質支持体上に、2つの多孔質支持体の間に、または支持されずに(自立型)連続層として配置され得る。
【0042】
任意選択で、水性セメント質スラリーは、連続層として配置されて、セメントボードを形成しながら発泡され得る。水性セメント質スラリーを発泡させると、連続層内に多孔性が保持され、それによって、ボードの重量が減少し、より容易な取り扱いを得ることができる。
【0043】
したがって、本発明は、セメントボード、およびアルミン酸塩添加剤で強化された主にタイプIポルトランドセメントを利用することによるセメントボードを製作するための方法を提供する。アルミン酸塩添加剤は、10分以下の望ましい凝結時間で水性セメント質スラリーの凝結を促す。10分未満の凝結時間は、セメントボードを製造するための連続プロセスとかなり適合し、それによって、低コストのタイプIポルトランドセメントをセメントボードの製造プロセスで広く使用することが可能になる。
【0044】
セメントボードおよびセメントボードを製造するための連続プロセス
図1Aおよび1Bは、それぞれの本発明に従って作製されたセメントボード10の斜視図および側面断面図を示す。図1Bを参照すると、セメントボード10は、多孔質支持体14aと14bとの間に配置された凝結セメント質組成物を含む連続層12を含み得る。凝結したセメント質組成物は、本明細書の他の場所でさらに詳細に記載されるように、アルミン酸塩添加剤を含む水性セメント質スラリーの凝結の後に形成され得る。
【0045】
図2は、2つの多孔質支持体の間に本発明の水性セメント質スラリーを配置することによってセメントボードを作製するために使用され得る例示的な装置の図を示す。上で参照したように、セメントボードは、代替的に、単一の多孔質支持体を含むか、または支持されていない場合がある。
【0046】
図2を参照すると、連続層12が形成される乾燥成分(図示せず)が予混合され、次いでミキサー30に供給される。連続層12を作製する際に使用される水および他の液体構成物質(図示せず)は、ミキサー30に計量投入され、それらは、乾燥成分と組み合わされて、水性セメント質スラリー28を形成する。泡は、ミキサー30内に誘導されるか、またはミキサー30に導入されて、連続層12の密度を制御し得る。次いで、水性セメント質スラリー28が、ローラー20から分配される底部多孔質支持体22上に分配される。
【0047】
多孔質支持体32は、ローラー29から水性セメント質スラリー28の上部に供給され、それによって、2つの移動する多孔質支持体の間にスラリーを挟んで、セメントボード10の面を形成する。次いで、得られたサンドイッチ構造は、成形ロール34および36を通過し、その後、コンベヤーベルト38で受容される。従来のウォールボードエッジガイドデバイス40は、形状を保持するのに十分な凝結が行われるまで、サンドイッチ構造のエッジを成形および維持する。セメントボードが取り扱いに対して十分に頑丈になると、ボードの連続する長さをウォーターナイフ44によって切断する。次に、個々のセメントボード10は、フィーダーロール46に沿って移動され、それがさらに凝結するのを可能にし、任意選択でヒーター48で加熱する。任意選択で、噴霧器49は、シリコーン油、追加のコーティング、または難燃剤などのさらなる処理をボードの外面に導入し得る。
【0048】
セメント質反応性粉末および水性セメント質スラリー構成成分
本開示は、主にまたは完全にタイプIポルトランドセメントと、アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤とを含むセメント質組成物を提供する。特に、本開示は、水と、60~100重量%のタイプIポルトランドセメントを含むセメント質反応性粉末と、アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量の、凝結促進剤と、を含む水性セメント質スラリーを提供する。有利なことに、本開示の水性セメント質スラリーは、約10分以下の最終凝結時間を特徴とし得、それによって、特に連続製造プロセスによるセメントボードおよび他のキャストコンクリート製品の便利な製作を容易にする。
【0049】
本開示では、タイプIポルトランドセメント、およびアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤の量は、セメント質反応性粉末またはそれから生じる水性セメント質スラリー中の総固体に対して乾燥(水を含まない)重量ベースで表される。同様の量のタイプIポルトランドセメントおよびアルミン酸塩添加剤が、水性セメント質スラリーの凝結後に得られる凝結セメント層中に存在し得る。セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中の他の構成成分の量は、同様に、総固体に対して乾燥重量ベースで表される。別途記載のない限り、本明細書で表されるすべてのパーセンテージは、重量パーセントである。
【0050】
好ましくは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中のタイプIポルトランドセメントの量は、80~100重量%、またはより好ましくは90~100重量%、またはさらにより好ましくは100重量%である。
【0051】
水性セメント質スラリーで提供されるアルミン酸塩添加剤の量は、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しくてもよい。好ましくは、アルミン酸塩添加剤の量は、セメント質反応性粉末の1~10重量%に等しい。さらにより好ましくは、アルミン酸塩添加剤の量は、セメント質反応性粉末の5~10重量%または2~8重量%に等しい。例えば、セメントボードの連続層を形成する場合、水性セメント質スラリーの凝結後も、同様の量のアルミン酸塩添加剤が残る。
【0052】
「アルミネート」という用語は、AlO 5-、AlO 、およびAl 2-などの、アルミニウムのいずれかのオキシアニオン、ならびに代替的なアルミニウムオキシアニオンを広く指す。好ましくは、本開示の水性セメント質スラリーおよびセメント質反応性粉末に組み込まれたアルミネートは、AlO の式を有する。
【0053】
好適なアルミン酸塩添加剤は、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルミン酸塩を含み得る。好ましくは、アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸ナトリウムを含む。
【0054】
代替的に、アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸塩前駆体から水性セメント質スラリー内のその場で形成され得る。好適なアルミン酸塩前駆体には、例えば、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。水性セメント質スラリー中に存在し得る好適な量のアルミン酸塩前駆体には、上記で指定された範囲内の量のアルミン酸塩を形成するために必要なものが含まれる。
【0055】
アルミン酸塩またはアルミン酸塩前駆体を含むセメント質反応性粉末は、水と組み合わせて、スラリーの最終凝結時間が10分以下である水性セメント質スラリーを形成することができる。参照により本明細書に組み込まれるPerez-Penaらの米国特許第9,994,484号に説明されているように、水性セメント質スラリーの凝結は、ギルモア針を用いるASTM C266-18試験手順で指定されるように、最初および最終凝結時間によって特徴付けられ得る。最終凝結時間はまた、セメントボードなどのセメントベースの製品が十分に硬質化して取り扱いすることができるようになる時点にも対応する。当業者は、硬化反応が最終凝結時間に達した後も長期間継続し得ることを理解するであろう。
【0056】
ギルモア針試験に従って測定される場合、本明細書に開示される水性セメント質スラリーの最終凝結時間は、好ましくは最大10分、またはより好ましくは最大5分である。凝結時間は、セメント質反応性粉末を好適な量の水と組み合わせた後に測定され得る。より短い凝結時間およびより高い初期圧縮強度は、生産量の増加および製造コストの削減を助長し得る。
【0057】
本開示によれば、セメント質反応性粉末を水和し、エトリンガイト、アルミン酸カルシウム化合物および/またはリン酸カルシウムの他の水和物の形成を促すために、好適な量の水が提供され得る。一般に、添加される水の量は、セメント質反応性粉末の完全な水和に理論的に必要とされる量よりも多い。水の量が増加すると、特定のプロセスのニーズに応じて、水性セメント質スラリーの作業性が容易になり得る。セメント質反応性粉末を水と組み合わせて、水性セメント質スラリーを形成し得る好適な比率は、重量ベースで、約0.30:1~0.60:1、または好ましくは約0.4:1~0.5:1の範囲である。
【0058】
セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中のタイプIポルトランドセメントの量は、80~100重量%の範囲であり得る。好ましくは、タイプIポルトランドセメントの量は、90~100重量%の範囲であり得る。さらにより好ましくは、100重量%のポルトランドセメントが存在する。したがって、好ましくは、タイプIポルトランドセメントは、場合によっては、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中に存在する唯一のタイプのセメントであり得る。
【0059】
セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、任意選択で、少量の他のタイプのポルトランドセメントおよび/または他のクラスのセメントを含有し得る。
【0060】
セメント質反応性粉末は、最大約20重量%のタイプIIIポルトランドセメント、より好ましくは最大約10重量%のタイプIIIポルトランドセメント、さらにより好ましくは最大約5重量%のタイプIIIポルトランドセメントを含み得る。セメント質反応性粉末は、合計で最大約20重量%のタイプIIおよびタイプIIIポルトランドセメント、より好ましくは合計で最大約10重量%のタイプIIおよびタイプIIIポルトランドセメント、さらにより好ましくは合計で最大約5重量%のタイプIIおよびタイプIIIポルトランドセメントを含み得る。最も好ましくは、タイプIIポルトランドセメントが存在しない。最も好ましくは、タイプIIIポルトランドセメントが存在しない。同様に、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、他のタイプのポルトランドセメントが存在しないことを特徴とし得る。好ましくは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、非ポルトランドセメントタイプが存在しないことを示し得る。
【0061】
セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、任意選択で、最大約20重量%のフライアッシュなどのポゾラン材料を含有し得る。好ましくは、セメント質反応性粉末は、最大約10重量%のポゾラン材料、またはさらにより好ましくは最大約5重量%のポゾラン材料を含有し得る。ポゾラン材料が存在する場合、セメント質反応性粉末は、典型的には、1重量%の最小量のポゾラン材料を有する。最も典型的には、セメント質反応性粉末は、ポゾラン材料が存在しないことを示し得る。
【0062】
あるいは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、少なくとも1つのフライアッシュ以外のポゾラン材料が存在しないことを示し得る。フライアッシュは、存在する場合、最大約20重量%、またはより好ましくは最大約10重量%、またはさらにより好ましくは最大約5重量%の量でセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーに含まれ得る。好適なフライアッシュには、クラスCフライアッシュ、クラスFフライアッシュ、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0063】
より好ましくは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、ポゾラン材料およびタイプIIIポルトランドセメントの両方を実質的に含まなくてもよい。代替的に、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、フライアッシュ以外のポゾラン材料およびタイプIIIポルトランドセメントの両方を実質的に含まなくてもよい。
【0064】
セメント質反応性粉末はまた、スルホアルミン酸カルシウムセメントを実質的に含まなくてもよい。本明細書の文脈において、任意の成分についての「実質的に含まない」という用語は、1重量%未満を意味する。
【0065】
セメント質反応性粉末はまた、アルミン酸カルシウムセメントを実質的に含まなくてもよい。
【0066】
本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、最大5重量%のアルカリ性添加剤をさらに含み得る。好適なアルカリ性添加剤には、例えば、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、一リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0067】
セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中にさらに存在し得る任意の添加剤には、例えば、砂、鉱物骨材、非鉱物骨材、促進剤、遅延剤、可塑剤、発泡剤、石膏、アルカノールアミン、例えば、エタノールアミンまたはトリエタノールアミン、ポリアクリルアミド、二クロム酸カリウム、高性能減水剤、粘土、雲母、炭酸カルシウム、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中にまた存在し得る他の添加剤には、凝結促進剤、凝結遅延剤、収縮制御剤、スラリー粘度調整剤(増粘剤)、着色剤、および内部硬化剤のうちの1つ以上が含まれ、それらは、特定の用途構成に関する所望に応じて含められ得る。好ましくは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、追加の添加剤として少なくとも遅延剤および高性能減水剤を含む。
【0068】
ポゾラン(ポゾラン材料)
ASTM C618-97は、ポゾランを、それ自体はセメントの価値をほとんどまたはまったく有さないが、微細に分割された形態で、かつ水の存在下で、常温で水酸化カルシウムと化学的に反応して、セメント特性を有する化合物を形成する、幅広いクラスのケイ質またはケイ質/アルミニウム材料として定義する。水酸化カルシウムおよび水と反応するポゾランの能力の定量化は、ポゾラン活性を測定することによって与えられる。
【0069】
様々な天然および人工の材料は、ポゾラン特性を備えるポゾラン材料と呼ばれてきた。ポゾランは、火山起源の天然に存在するポゾランである。本開示での使用に好適なポゾラン材料の他の例には、例えば、軽石、ケイ藻土、シリカフューム、火山性凝灰岩、籾殻、メタカオリン、粉砕された粒状ブラスト炉スラグ、フライアッシュ、バーミキュライト粘土、炭酸カルシウム、および圧砕雲母が含まれる。これらのポゾラン材料のいずれも、本明細書に開示されるセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーにおいて、単独でまたは組み合わせて使用され得る。ポゾラン材料の使用は、本発明では必要とされないが、必要に応じて、改善された凝結時間および初期の圧縮強度を得るために使用され得る。
【0070】
ポゾラン材料が存在する場合、フライアッシュが好ましいポゾラン材料であり得る。クラスCフライアッシュのようなフライアッシュ添加剤の使用は、通常、セメント質反応性粉末の約10重量%以下に制限される。好ましくは、フライアッシュおよび他のポゾラン材料は、完全に避けられる。
【0071】
好ましくは、存在する場合、ポゾラン材料の少なくとも50重量%はフライアッシュ、より好ましくは、ポゾラン材料の少なくとも80%はフライアッシュであり、最も好ましくは、クラスCフライアッシュまたはクラスFフライアッシュである。クラスCフライアッシュは、一般に、石灰を含有する。したがって、クラスCフライアッシュを用いる場合、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、典型的には、外部から添加された石灰を含まない。存在する場合、フライアッシュの少なくとも半分は、好ましくはクラスCフライアッシュである。フライアッシュは、最も好ましくは少なくとも80%のクラスCフライアッシュまたは少なくとも80%のクラスFフライアッシュである。
【0072】
フライアッシュは、セメント質反応性粉末および水性セメント質スラリーには必要なく、フライアッシュが存在しない場合がある。フライアッシュは、発泡に悪影響を有し得、必要に応じて発泡を可能にするために空気連行剤の量を大幅に増加する必要があり得る。
【0073】
骨材および鉱物充填剤
ポゾラン材料とは対照的に、骨材および充填剤は、不活性である。例えば、フライアッシュ、シリカフュームなどの鉱物添加剤は、ポルトランドセメントと反応するが、骨材および填剤は反応しない。例えば、炭酸カルシウムは、不活性でポゾランではない鉱物添加剤である。開示されたセメント質反応性粉末および水性セメント質スラリーは、急速凝結構成成分を定義し得るが、当業者には、使用目的および用途に応じて他の材料が含まれ得ることが理解されるであろう。
【0074】
本明細書の目的に関して、充填剤は、軽量充填剤であるパーライトなどの微細な粒状材料(粒径サイズ<5mm)である。「骨材」という用語は、比較的より大きな粒子(粒径サイズ>5mmおよび数インチまで)を有する充填剤を意味する。好ましくは、存在する場合、骨材および充填剤の少なくとも80重量%は、コーティングされたパーライトである。
【0075】
例えば、セメントボード用途の場合、連続層の所望の機械的特性を過度に損なうことなく軽量ボードを生産することが望ましい場合がある。この目的は、軽量の骨材および充填剤を添加することで達成され得る。有用な軽量骨材および充填剤の例には、砂、膨張形態の粘土、火山性タフト、頁岩、パーライト、中空セラミック球、中空プラスチック球、膨張プラスチックビーズなどが挙げられる。セメントボードを生産する場合、膨張粘土および頁岩の骨材が特に有用であり得る。膨張プラスチックビーズおよび中空プラスチック球は、使用される場合、それらのかさ密度値が非常に低いため、典型的には、重量ベースで非常に少量で使用される。
【0076】
選択した軽量骨材または充填剤の選択に応じて、軽量骨材または充填剤対セメント質反応性粉末の重量比は、約1:100~200:100、好ましくは約2:100~125:100であり得る。例えば、軽量セメントボードを作製するために、軽量骨材または充填剤対セメント質反応性粉末の重量比は、好ましくは、約2:100~125:100であり得る。軽量製品の特徴が重大ではない用途では、コンクリート構造で通常使用されるように川砂および粗骨材が利用され得る。
【0077】
本開示で用いられる骨材または充填剤は、閉鎖多孔性を有し得、これは、0.10未満の開放多孔性、好ましくは0.05未満の開放多孔性、より好ましくは0.02未満の開放多孔性、および最も好ましくは約ゼロの開放多孔性を意味する。所望の開放多孔性の範囲は、0.05~0.02である。開放多孔性は、「アクセス可能な穴」、つまり粒子表面からアクセス可能な穴スペースの総量を意味する。
【0078】
膨張形態の粘土、頁岩、またはスレートなどの材料から生産され、粒子の外表面を密封する特別なプロセスによって生産され、それによって、閉鎖多孔性を有する粒子を生成する軽量骨材が、本明細書で使用され得る。閉鎖多孔性は、水性セメント質スラリーが骨材粒子に浸透するのを防ぐ。バーミキュライトおよびコーティングされたパーライトは、閉鎖多孔性を有して生産されている場合は、代替品として使用され得る。
【0079】
好ましくは、充填剤または骨材は、存在する場合、0~0.2:1のパーライト対セメント質反応性粉末の重量比で添加されるコーティングされたパーライトである。好ましくは、0.05~0.2:1.0のコーティングされたパーライト対セメント質反応性粉末の重量比が使用され得る。パーライトは、好ましくは、直径が20~60ミクロンの粒子サイズの中央値を有する粒子から構成される。好ましくは、パーライトは、0.30g/cc未満の粒子密度を有する。コーティングされたパーライトは、パーライト粒子の内部細孔への吸水を防ぐために、シラン、シロキサン、シリコーン、またはそれらの混合物のコーティングなどのコーティングを有する。したがって、コーティングされたパーライトは、0.10未満の開放多孔性、好ましくは0.05未満の開放多孔性、より好ましくは0.02未満の開放多孔性、および最も好ましくはゼロの開放多孔性を達成する。望ましい多孔性は、0.05~0.02である。参照により組み込まれるStrussの米国特許第4,657,594号は、アミノ官能性シロキサンおよびシリコーン湿潤剤でコーティングされたパーライトの例を記載している。
【0080】
遅延剤
本発明では、遅延剤を好ましく使用することができる。好適な遅延剤には、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、グルコネート、およびそれらの混合物からなる群の少なくとも1つのメンバーが含まれ得る。好ましくは、遅延剤は、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウムなどのクエン酸のアルカリ金属塩から選択される。好ましいクエン酸アルカリ金属は、クエン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウム、ならびに特にクエン酸トリカリウム一水和物およびクエン酸トリナトリウム一水和物である。そのような遅延剤は、比較的良好な流動性を有し、あまりに速く硬くならない(すなわち、室温を超える温度で混合した後、5~10分より速く硬くならない)水性セメント質スラリーをもたらし、同時に良好な初期圧縮強度を達成する。
【0081】
セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリー中のクエン酸アルカリ金属または同様の遅延剤の量は、好ましくは乾燥固体ベースで約1.0~4.5重量%、またはより好ましくは約3.0~4.5重量%の範囲である。
【0082】
促進剤
任意選択で、無機凝結促進剤は、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーに含まれ得る。そのような無機凝結促進剤の例には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、硫酸アルミニウム、ポリホスフェートなどが含まれる。セメントボードの留め具の腐食が懸念される場合は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを避ける必要がある。しかしながら、本発明には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、硫酸アルミニウム、ポリホスフェートなどのうちのいずれか1つ以上が存在しない。本発明には、硫酸アルミニウムが存在しない場合がある。本発明には、炭酸リチウム、硫酸アルミニウム、またはそれらの組み合わせが存在しない場合がある。本発明には、塩化カルシウム、ケイ酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせが存在しない場合がある。本発明には、糖と炭酸リチウムとの組み合わせが存在しない場合がある。
【0083】
有機凝結促進剤も好適に使用され得る。好ましい有機凝結促進剤は、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカノールアミンを含む。トリエタノールアミンが最も好ましい。
【0084】
セメント質反応性粉末の100重量部に対する無機凝結促進剤の重量比は、典型的には、約1.0重量%未満、および好ましくは約0.25重量%未満である。
【0085】
好ましくは、セメント質反応性粉末および水性セメント質スラリーには、促進剤としての水溶性カルシウム塩が存在せず、特に塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、および硝酸カルシウムが存在しない。「水溶性カルシウム塩」という用語は、20℃の水中で2g/100mL超の溶解度を有する塩を指す。硫酸カルシウムは、水溶性カルシウム塩ではない。
【0086】
高性能減水剤
減水剤(高性能減水剤)は、好ましくは、本明細書に開示されるセメント質反応性粉末および水性セメント質スラリーに用いられる。高範囲減水剤としても既知の高性能減水剤は、十分に分散した粒子懸濁液が必要な場合に使用される化学混和剤である。これらのポリマーは、粒子の分離(砂利、粗い砂、および微細な砂)を避け、本明細書に開示される水性セメント質スラリー内の流動特性(レオロジー)を改善するための分散剤として使用される。高性能減水剤を含めることによって、スラリーの作業性に実質的に影響を与えることなく、水対セメントの比率を低減することが可能である。
【0087】
高性能減水剤は、4つのグループに広く分類されている:スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物(SNF)(一般に、ナトリウム塩)、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物(SMF)、修飾リグノスルホネート(MLS)、その他。より最近の高性能減水剤には、ポリアクリレートポリマーなどのポリカルボキシレート化合物が含まれる。高性能減水剤は、好ましくは、グラフト鎖としてポリエチレングリコール、およびポリカルボン酸エーテルなどの主鎖にカルボン酸官能基を含有するコポリマーである。ポリカルボン酸-ポリスルホン酸ナトリウムおよびポリアクリル酸ナトリウムも使用され得る。
【0088】
好ましくは、本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、PCE高性能減水剤を含む。「PCE」という用語は、ポリカルボン酸エーテルベースの高性能減水剤を指す。そのような化学物質は、セメント粒子の正イオン種を錯化し、静電反発力による分散を促す負電荷を提供するため、水性セメント質スラリーの大幅な水分低減を可能にする。好適なPCE高性能減水剤には、参照により組み込まれる、Liuらの米国特許第7,767,019号に開示されているようなポリカルボキシレート分散剤ポリマーが含まれ得る。
【0089】
しかしながら、本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーには、ポリヒドロキシ芳香族化合物、ポリカルボン酸含有化合物またはその塩、アスコルビン酸またはその塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるヒドロキシル含有化合物が存在しない場合がある。本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーには、ポリフェノール、ポリヒドロキシフェノール、またはそれらの組み合わせであるポリヒドロキシ芳香族化合物が存在しない場合がある。本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーには、芳香族環上または多環式化合物の芳香族環のうちの少なくとも1つの上に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する単環式または多環式ポリヒドロキシ芳香族化合物が存在しない場合がある。いくつかの例では、ポリヒドロキシ芳香族化合物は、芳香環上または多環式芳香族化合物中に2つ以上のヒドロキシル基を含み得る。
【0090】
本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーには、タンニン、プロアントシアニジン、カテコール、没食子酸、またはそれらの組み合わせを含むポリヒドロキシ芳香族化合物が存在しない場合がある。本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーには、アスコルビン酸またはその塩が存在しない場合がある。本開示のセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーには、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上のカルボン酸基、例えば、クエン酸またはその塩を有するヒドロキシ含有化合物が存在しない場合がある。
【0091】
本明細書に開示されるセメント質反応性粉末および水性セメント質スラリーは、好ましくは、消泡剤を含まない。いくつかの市販の高性能減水剤は、消泡剤を含有し得、本開示での使用にはあまり好ましくない可能性がある。
【0092】
空気連行剤
任意選択で、1つ以上の空気連行剤(液体発泡剤としても既知)をセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーに添加して、その場での気泡(泡)形成を促すことができる。空気連行剤は、典型的には、凝結後にコンクリート内の微細な気泡を意図的に捕捉するために使用される界面活性剤である。あるいは、空気連行剤を用いて、泡(泡水)を外部から生成することができ、これは、生成物の密度を低減するために、本明細書に開示される水性セメント質スラリーを形成するために使用され得る。好ましくは、外部から泡を生成するために、空気連行剤、空気、および水が混合されて、好適な泡生成装置内で泡を形成する。
【0093】
泡が水性セメント質スラリーに添加される前に、ポリビニルアルコール(PVOH)が泡安定剤として泡に添加され得る。しかしながら、本発明はまた、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、またはそれらの混合物が存在しない組成物を含む。本発明はまた、泡安定剤を架橋するための架橋剤が存在しない、特に一切のボレートが存在しない、より具体的には一切のホウ酸バリウムが存在しない組成物を含む。
【0094】
好適な空気連行剤は、一般に、石鹸としても既知の界面活性剤である。好ましい空気連行剤は、アルファ-オレフィン気相スルホン化および連続中和によって処理される一種のアニオン性界面活性剤であるアルファ-オレフィンスルホネート(AOS)である。好適な空気連行剤/発泡剤の他の例には、とりわけ、スルホン酸アルキル、アルキルベンゼンスルホネート、および硫酸アルキルエーテルオリゴマーが含まれる。これらのタイプの発泡剤に関する詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,643,510号に見ることができる。
【0095】
ASTM C260“Standard Specification for Air-Entraining Admixtures for Concrete”(2006年8月1日)に記述されている規格に適合するような空気連行剤(発泡剤)を用いることができる。そのような空気連行剤は、当業者に周知されており、Kosmatkaらの“Design and Control of Concrete Mixtures,”Fourteenth Edition,Portland Cement Association、具体的には第8章の表題“Air Entrained Concrete”(米国特許出願公開第2007/0079733号に引用されている)に記載されている。市販の空気連行材料には、ヴィンソル木質樹脂、スルホン化炭化水素、脂肪酸および樹脂酸、脂肪族置換スルホン酸アリール、例えば、スルホン化リグニン塩および通常アニオン性もしくは非イオン性表面活性剤の形態をとる多数の他の界面的な活性材料、アビエチン酸ナトリウム、飽和もしくは不飽和脂肪酸およびそれらの塩、テンシド、アルキル-アリール-スルホネート、フェノールエトキシレート、リグノスルホネート、樹脂石けん、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、硫酸ラウリル、ABS(アルキルベンゼンスルホネート)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホネート)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、硫酸エステルポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルもしくはその塩、リン酸エステルポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルもしくはその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホサクシネート、アルファ-オレフィンスルホネート、アルファ-オレフィンスルホネートのナトリウム塩、またはラウリル硫酸ナトリウムもしくはラウリルスルホン酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物が含まれる。好ましい発泡剤は、スルホン酸アルファオレフィンおよびラウリルエトキシ硫酸ナトリウム、すなわちポリプロポキシ-ポリエトキシ-デシル硫酸ナトリウムである。
【0096】
他の化学添加剤
所望される場合、収縮制御剤、着色剤、粘度調整剤(増粘剤)、および内部硬化剤などの他の化学混和剤が、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーに添加され得る。
【0097】
凝結および圧縮強度
水性セメント質スラリーの凝結は、ASTM C266試験手順で指定されたギルモア針を使用して測定される場合、最初および最終凝結時間によって特徴付けられる。最終凝結時間はまた、コンクリート製品、例えば、コンクリートパネルが十分に硬質化し、そのためコンクリート床または道路の場合、取り扱うことまたは輸送することができる時間に対応する。比較的高い初期(3~5時間)の圧縮強度は、変形することなくより高い応力に耐えることができるため、コンクリート材料にとって有利であり得る。当業者には、最終凝結時間に達した後、硬化反応が長期間継続し得ることが理解されるであろう。
【0098】
初期の強度は、ASTM C109で指定されるように、24時間後または7日間の硬化後に圧縮強度を測定することによって特徴付けられ得る。高い初期強度を実現することで、積み重ねられたパネルの取り扱いが容易になる。
【0099】
凝結後、水性セメント質スラリーは、キャストの7日後に測定すると、500psi~約5000psi、好ましくは500~3000psi、より好ましくは500~2000psi、および最も好ましくは600~1000psiの圧縮強度を示し得る。
【0100】
セメントボード
本明細書に記載のセメントボードは、
水性セメント質スラリーの凝結から形成された連続層を備え得、水性セメント質スラリーは、
水、
セメント質反応性粉末であって、
60~100重量%のタイプIポルトランドセメント、および
アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量の、凝結促進剤を含む、セメント質反応性粉末を含む。
【0101】
本明細書に開示されるセメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーのいずれかはセメントボードの製作に利用され得るが、好ましくは、セメント質反応性粉末または水性セメント質スラリーは、遅延剤および高性能減水剤を含む。
【0102】
好ましくは、セメントボードは、タイプIポルトランドセメントのみから形成される。しかしながら、本明細書の開示の観点において、最大約20重量%のタイプIIIポルトランドセメントなどの他のタイプのセメントが、セメント質反応性粉末中に存在し得ることが理解されるべきである。他のセメントを含めることは、凝結時間を所望の程度に調整するために実行され得る。
【0103】
好ましくは、アルミン酸塩添加剤は、アルミン酸ナトリウムである。
【0104】
好ましくは、水性セメント質スラリーの凝結時間は、10分以下である。
【0105】
製造方法
水性セメント質スラリーを操作するための方法、例えば、セメントボードを製作するための方法もまた、本明細書で企図される。本明細書の開示に従ってセメントボードは有利に製作され得るが、他のタイプのプレキャストコンクリート製品もまた好適に製作され得ることが理解されるべきである。
【0106】
本開示の方法は、
水、セメント質反応性粉末、および凝結促進剤を組み合わせて、水性セメント質スラリーを形成することを含み得、
セメント質反応性粉末は、
60~100重量%のタイプIポルトランドセメント、および
アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量で提供される、凝結促進剤を含む。
【0107】
本開示のさらなる方法は、
水性セメント質スラリーを未凝結の連続層として配置することと、
未凝結の連続層を凝結させて、約10分以下の最終凝結時間でセメントボードを形成することと、を含み得る。
【0108】
セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品は、セメント質反応性粉末が骨材、充填剤、および他の必要な成分とブレンドされ、続いて水および他の化学添加剤を添加し、直後に得られた水性セメント質スラリーを金型内または連続キャストおよび成形ベルト上に配置し得る連続プロセスで最も効率的に製造される。
【0109】
本明細書に開示される水性セメント質スラリーの急速な凝結特性のために、セメント質反応性粉末と水および空気との混合は、通常、キャスト操作の直前に行われることが理解されるべきである。アルミノケイ酸アルカリ水和物および/もしくはアルミノケイ酸の他の水和物、ならびに/またはアルミノケイ酸カルシウム化合物の形成の結果として、セメントボードは堅くなり、さらなる硬化のための切断、取り扱い、および積み重ねの準備ができている。本開示によるアルミン酸塩添加剤の使用は、急速な凝結を促すためにエトリンガイト形成を促し得る。
【0110】
本開示の魅力的な特徴は、アルミン酸塩添加剤を含めることによって、図2に例示的に示されるような既存の製造ラインを使用する能力が損なわれないことである。そのため、アルミン酸塩添加剤を使用すると、特別な機器を開発する必要はなく、セメントボードを主にタイプIポルトランドセメントから低コストで作製することを可能にし得る。
【実施例
【0111】
実施例1.水性セメント質スラリーを以下の表2に指定されているように調製した。各ミックスのセメントは、タイプIポルトランドセメントまたはタイプIIIポルトランドセメントのうちの1つであった。使用される場合、アルミン酸ナトリウムを45重量%の水溶液として導入した。メタリン酸ナトリウムは、促進剤である。スルホン酸ナフタレンは、可塑剤である。以下の表の液体重量は、配合物中に導入された液体重量を表し、その中の有効成分の重量ではない。流動性を相対的な尺度で評価し、5が最も実行可能で、1が最も実行可能ではなかった。頭字語TEAは、トリエタノールアミンを指す。頭字語CCSは、24時間の立方体の圧縮強度を指す。立方体の圧縮強度を、ASTM C109-16に従って測定した。立方体は、典型的なセメントボードの製造中、高温を模倣するためにキャストした後、約65℃を保った。実施例では、凝結時間は、ギルモア針試験手順による水硬性セメントペーストの凝結時間のためのASTM C266-18標準試験方法に従って測定した場合の最終凝結時間を指す。
【表2】
【0112】
ミックス1は、タイプIIIポルトランドセメントを用いた対照であった。固体は、セメント100部、フライアッシュ30部、および粉末石膏12部の相対量で存在していた。総固体重量に対する軽量骨材およびパーライトの比率はそれぞれ、0.65および0.065であった。トリエタノールアミン(TEA)およびメタリン酸ナトリウムをそれぞれ、0.25重量%および0.2重量%の促進剤として導入した。クエン酸ナトリウムを0.2重量%の遅延剤として導入した。スルホン酸ナフタレン可塑剤を0.15重量%の可塑剤として導入した。総水性セメント質スラリーに対する水の有効比は、0.59であった。
【0113】
ミックス2は、タイプIポルトランドセメントを用いたことを除いて、ミックス1と同じであった。示されるように、凝結時間は20分でかなり長く、圧縮強度は523psiで対照の50%未満であった。
【0114】
ミックス3~5は、一定量(総セメント混合物の2重量%)のアルミン酸ナトリウムを用いた。メタリン酸ナトリウムを一定に保ちながら、トリエタノールアミンの量を3つのミックスすべてで0.1重量%まで下げた。より低い液体温度を使用して、流動性を改善した。
【0115】
ミックス3に関して、23℃の液体温度をスルホン酸ナフタレン可塑剤の量の増加と組み合わせて使用した。流動性は乏しく、評価は2であり、凝結時間は16分超と長かった。1281psiのCCS値は、対照と比較して改善された。
【0116】
ミックス4に関して、凝結時間を低減するために、液体温度を40℃まで増加した。流動性を改善するために、クエン酸ナトリウムを0.3重量%まで増加した。流動性は乏しいままであり、評価は2であった。しかしながら、対照ミックス1と同様に、凝結時間は6分に大幅に低減された。CCS値もまた、1281psiで対照と同様であった。
【0117】
ミックス5に関して、30℃の液体温度を使用し、クエン酸ナトリウムをなおも0.4重量%までさらに増加した。流動性はわずかに良好になり、評価は3であった。しかしながら、凝結時間は、10分に遅延した。CCS値もまた、1206psiで対照と同様であった。
【0118】
実施例2.水性セメント質スラリーを以下の表3に指定されているように調製した。PCEは、ポリカルボン酸エーテル可塑剤の略語である。液体の重量および流動性は、上の表2のように指定される。表3のCCS値は、72時間の値である。
【表3】
【0119】
ミックス6は、タイプIIIポルトランドセメントを用いる対照であり、上の実施例1で指定されたミックス1と同様の組成を有する。液体を促進凝結のために75℃まで加熱した。流動性は優れており、評価は5であり、凝結時間は9.5分であった。3日間のCCS値は、3026psiであった。
【0120】
ミックス7は、より低いクエン酸ナトリウムを用いることを除いて、実施例1のミックス4に最も厳密に対応する。流動性は乏しく、評価は2.5であった。凝結もまた、対照よりもゆっくりであった。3日間のCCSは2548psiであり、これもまた、対照よりも低かった。
【0121】
ミックス8は、ミックス7よりも高いクエン酸ナトリウムを用いた。流動性は3でわずかに改善され、凝結時間は9分で対照と匹敵した。3日間のCCS値は、2144psiで対照よりも低かった。
【0122】
他のすべての構成成分をミックス8と同じに保ちながら、流動性を改善するためにカオリン粘土をミックス9に添加した。流動性は、3で同じままであった。凝結時間はわずかに10分まで増加し、これは対照およびミックス8よりもわずかに長い。3日間のCCSもまた、2118psiでミックス8と同様であった。
【0123】
ミックス10は、PCE可塑剤が含まれていることを除いて、ミックス8と同じであった。流動性は4に大幅に改善され、凝結時間は対照と同様に9分であった。3日間のCCSは2006psiであったが、この実施例では5つのミックスの中で最も低かった。
【0124】
実施例3.水性セメント質スラリーを以下の表4に指定されているように調製した。表4のCCS値は、72時間の値である。この実施例は、水性セメント質スラリーに反応性の低いクラスFフライアッシュを使用した場合の効果を調べるために実施された。
【表4】
【0125】
ミックス11は、クラスCフライアッシュの半分をクラスFフライアッシュに置き換えたことを除いて、実施例2のミックス10に最も類似していた。クラスFフライアッシュの反応性が低いことを考慮して、より多くのTEAを使用した。クラスFフライアッシュを使用して添加すると、流動性が4.5の値にわずかに改善されたが、凝結時間はわずかに10分遅延した。3日間のCCSは、おそらくより高いTEA含有量のために、実施例2のミックス10よりもわずかに高かった(2252psi)。
【0126】
ミックス12では、すべてのクラスCフライアッシュをクラスFフライアッシュに取り換え、他のすべての構成成分はミックス11と同じままであった。実施例2の対照と同じように、流動性は優れており、評価は5であった。凝結時間は10分でミックス11と同様であり、3日間のCCS値は2389psiであり、ミックス11よりわずかに高かった。
【0127】
ミックス13および14は、CaO源として余分な石灰を導入して、促進されたエトリンガイト形成を促した。他の構成成分をミックス12と同じに保ちながら、1.5部の石灰をミックス13に添加した。ミックスは非常に硬く、実行可能でなかったため、流動性評価は1になった。凝結時間は13分に遅延され、3日間のCCS値は1533psiに低減し、これは、タイプIIIセメントを有する対照ミックス(実施例2のミックス)のわずか50%であった。ミックス14に関して、0.3部の石灰を添加した。流動性は良好であり、評価は4であり、凝結時間は10分であった。3日間のCCSは、石灰を有さないミックス12よりもわずかに低かった(2115psi対2389psi)。示されるように、促進されたエトリンガイト形成を促すために余分な石灰は必要ではなかった。
【0128】
ミックス15~17は、液体温度の効果、およびより高い液体温度がTEAの効果を補うことができるかどうかを調べた。ミックス15は、50℃のより高い液体温度を使用したことを除いてミックス12と同じであった。流動性はわずかに低減されたが(4.5対5)、凝結時間はわずかに改善された(9対10分)。3日間のCCSもまた、ミックス12よりも低かった(1932対2389psi)。ミックス16に関して、液体温度をさらに60℃まで増加しながら、TEAをミックス12の半分に低減(0.51対1.02g)し、ポリカルボン酸可塑剤をわずかに増加して、液体温度が高くなるにつれて予想される流動性の損失を補った。流動性は公平であり、3.5の値を有し、凝結時間は8分まで低減された。3日間のCCSは、ミックス12よりもわずかに低かった(2140対2389psi)。ミックス17はTEA含有量が低く(0.51対1.02g)、液体温度を50℃に保った。流動性は良好であり、4の値を有するが、凝結時間は11分に遅延した。3日間のCCSもまた、1899psiと低かった。
【0129】
この例に示されるように、アルミン酸ナトリウムを使用して、初期のエトリンガイト形成を促進する場合、反応性の低いクラスFフライアッシュを許容できる範囲で使用することができる。より高い液体温度を使用して、TEAによって促進される促進を補うことができる。さらに、促進された初期のエトリンガイト形成を促すために余分な石灰は必要ない。
【0130】
実施例4.以下の表5に指定されるように水性セメント質スラリーを調製して、様々な鉱物添加剤の効果を調べた。表5のCCS値は、72時間の値である。
【表5】
【0131】
ミックス18は、約11ミクロンの平均直径を有する粗いカーボネート添加剤を使用した。実施例3のミックス15と同じTEA含有量(1.02g)を使用した。炭酸カルシウムが不規則な形状をしており、かつそれを分散させるのが難しいため、より高いPCE可塑剤の負荷が使用された(4.22対3.26g)。流動性は良好であり、評価は4であり、凝結時間は9分であり、実施例3の混合物15と同じであった。3日間のCCSは1727psiであり、実施例3のミックス15よりわずかに低かった。したがって、炭酸カルシウムは不活性であり、システム内の石灰への寄与はごくわずかであるため、セメント水和からの石灰は、初期のエトリンガイト形成の促進に適している。
【0132】
ミックス19は、約3ミクロンの平均直径を有する微細なカーボネート源を使用した。より高いPCE可塑剤負荷(4.83g)を使用して、所望の流動性を得た。流動性は良好であり、評価は4であり、凝結時間は8分とさらに速く、タイプIIIポルトランドセメントを有する対照混合物(実施例2のミックス6)の9.5分よりも速かった。3日間のCCSは1887psiであり、これは実施例3のミックス15(1932psi)に匹敵する。この場合、凝結時間の促進は、炭酸カルシウムの非常に微細な粒子によって提供されるエトリンガイト形成のための播種の結果であり得る。
【0133】
ミックス20は、反応性の高いポゾラン材料であるシリカフュームを含む添加剤を使用した。ミックス20では、シリカフュームの反応性が高いことから、0.51gのTEAを使用した。シリカフュームは球形であり、改善した流動性を導く傾向があるため、3.62gのPCE可塑剤を使用した。測定された流動性は乏しく、評価は2.5であり、これは、おそらくシリカフュームの表面積が非常に大きく、より高い含水量で補う必要があるためである。凝結時間は7分と優れており、3日間のCCSは2839psiであり、タイプIIIポルトランドセメントから形成された対照(実施例2のミックス6)の強度と同様であった。
【0134】
上記は、本発明の単なる例である。これら各実施例が、本明細書で提供される他の態様の様々な組み合わせにおいて使用される場合があることも、当業者に理解されるであろう。
【0135】
本発明の条項
本発明の様々な態様が、以下の条項によって記載される。
条項1.セメントボードであって、
水性セメント質スラリーの凝結から形成された連続層を備え、水性セメント質スラリーが、
水と、
セメント質反応性粉末であって、
60~100重量%のタイプIポルトランドセメント、および
アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量の、凝結促進剤を含む、セメント質反応性粉末と、を含む、セメントボード。
【0136】
条項2.アルミン酸塩添加剤が、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルミン酸塩を含む、条項1に記載のセメントボード。
【0137】
条項3.アルミン酸塩添加剤が、水性セメント質スラリー内のアルミン酸塩前駆体から形成され、アルミン酸塩前駆体が、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項1に記載のセメントボード。
【0138】
条項4.セメント質反応性粉末が、80~100重量%のタイプIポルトランドセメントを含む、条項1~3のいずれか一項に記載のセメントボード。
【0139】
条項5.セメント質反応性粉末が、最大10重量%のタイプIIIポルトランドセメントを有する、条項1~4のいずれか一項に記載のセメントボード。
【0140】
条項6.セメント質反応性粉末には、タイプIIIポルトランドセメントが存在しない、条項1~4のいずれか一項に記載のセメントボード。
【0141】
条項7.セメント質反応性粉末が、アルミン酸カルシウムを実質的に含まない、条項1~6のいずれか一項に記載のセメントボード。
【0142】
条項8.セメント質反応性粉末が、スルホアルミン酸カルシウムを実質的に含まない、条項1~7のいずれか一項に記載のセメントボード。
【0143】
条項9.セメント質反応性粉末が、0~30重量%のポゾラン材料を含む、条項1~8のいずれか一項に記載のセメントボード。
【0144】
条項10.ポゾラン材料が、クラスCフライアッシュ、クラスFフライアッシュ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、先行条項のいずれかに記載のセメントボード。
【0145】
条項11.水性セメント質スラリーが、砂、鉱物骨材、非鉱物骨材、粘土、雲母、炭酸カルシウム、およびそれらの任意の組み合わせから選択される添加剤を含む、先行条項のいずれかに記載のセメントボード。
【0146】
条項12.セメント質反応性粉末が、最大5重量%のアルカリ性添加剤を含む、先行条項のいずれかに記載のセメントボード。
【0147】
条項13.アルカリ性添加剤が、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、一リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、およびトリメタリン酸ナトリウム(STMP)からなる群から選択される、条項11に記載のセメントボード。
【0148】
条項14.水性セメント質スラリーが、促進剤、遅延剤、可塑剤、高性能減水剤、発泡剤、石膏、トリエタノールアミン、ポリアクリルアミド、重クロム酸カリウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、先行条項のいずれかに記載のセメントボード。
【0149】
条項15.タイプIポルトランドセメントが、セメント質反応性粉末中に存在する唯一のセメントである、先行条項のいずれかに記載のセメントボード。
【0150】
条項16.セメント質組成物を加工するための方法であって、
水とセメント質反応性粉末とを組み合わせて、水性セメント質スラリーを形成することを含み、
セメント質反応性粉末が、
60~100重量%のタイプIポルトランドセメント、および
アルミン酸カルシウムまたはスルホアルミン酸カルシウム以外のアルミン酸塩添加剤を含む凝結促進剤であって、セメント質反応性粉末の0.1~10重量%に等しい量で提供される、凝結促進剤を含む、方法。
【0151】
条項17.アルミン酸塩添加剤が、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルミン酸塩を含む、条項16に記載の方法。
【0152】
条項18.アルミン酸塩添加剤が、水性セメント質スラリー内のアルミン酸塩前駆体から形成され、アルミン酸塩前駆体が、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH))、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項16に記載の方法。
【0153】
条項19.セメント質反応性物質が、最大10重量%のタイプIIIポルトランドセメントを含む、条項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
条項20.セメント質組成物が、タイプIIIポルトランドセメントを含まず、アルミン酸カルシウムを含まず、スルホアルミン酸カルシウムを含まない、条項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
条項21.セメント質反応性粉末が、最大5重量%のアルカリ性添加剤を含む、条項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
条項22.セメント質反応性粉末が、遅延剤および高性能減水剤を含む、条項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
条項23.アルミン酸塩添加剤が、スラリーを固体として形成するために添加される、条項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
条項24.アルミン酸塩添加剤が、スラリーを液体溶液として形成するために添加される、条項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0159】
条項25.タイプIポルトランドセメントが、セメント質反応性粉末中に存在する唯一のタイプのセメントである、条項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
条項26.
水性セメント質スラリーを未凝結の連続層として配置することと、
未凝結の連続層を凝結させて、約10分以下の最終凝結時間でセメントボードを形成することと、をさらに含む、条項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
条項27.セメントボードが、第1の面および第2の面を有し、第1の面および第2の面のうちの少なくとも1つが、多孔質支持体材料に接触している、条項26に記載の方法。
【0162】
条項28.水性セメント質スラリーが、未凝結の連続層として配置されるときに発泡される、条項26または27に記載の方法。
【0163】
条項29.セメント質反応性粉末が、合計で最大10重量%のタイプIIポルトランドセメントおよびタイプIIIポルトランドセメントを有する、条項1~15のいずれかに記載のセメントボード。
【0164】
条項30.セメント質反応性粉末には、タイプIIポルトランドセメントが存在せず、タイプIIIセメントが存在しない、条項1~15および29のいずれかに記載のセメントボード。
【0165】
条項31.セメント質反応性粉末には、炭酸リチウムが存在せず、硫酸アルミニウムが存在しない、条項1~15および29~30のいずれかに記載のセメントボード。
【0166】
条項32.セメント質反応性粉末が、合計で最大20重量%の硫酸カルシウム半水和物および硫酸カルシウム二水和物、好ましくは合計で最大10重量%の硫酸カルシウム半水和物および硫酸カルシウム二水和物、より好ましくは合計で最大5重量%の硫酸カルシウム半水和物および硫酸カルシウム二水和物を有する、条項1~15および29~31のいずれかに記載のセメントボード。
【0167】
条項33.セメント質反応性粉末には、硫酸カルシウム半水和物が存在せず、硫酸カルシウム二水和物が存在しない、条項1~15および29~32のいずれかに記載のセメントボード。
【0168】
条項34.セメント質反応性粉末には、クエン酸ナトリウムが存在せず、クエン酸カリウムが存在しない、条項1~15および29~33のいずれかに記載のセメントボード。
【0169】
条項35.セメント質反応性粉末には、トリエタノールアミンが存在しない、条項1~15および29~34のいずれかに記載のセメントボード。
【0170】
本発明を実施するための本発明者らに既知の最良の様式を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変形は、上記の記載を読むことで当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形を必要に応じて用いることを期待し、本発明者らは、本発明が、本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用される法律により許容される、本明細書に添付の特許請求の範囲において列挙される主題のすべての修正物および同等物を含む。さらに、すべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが、本明細書で別途記載のない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【0171】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0172】
本発明を記載する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」、および「an」、および「the」、および「少なくとも1つ」という用語、ならびに同様の指示語の使用は、本明細書で別途記載のない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含するよう解釈されるものである。1つ以上の項目のリストが後に続く「少なくとも1つ」という用語(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書で別途記載のない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(AまたはB)から選択された1つの項目、または列挙された項目(AおよびB)のうちの2つ以上の任意の組み合わせを意味するよう解釈されるものである。「結合関係」は、2つの層が直接接触していることを意味しない。「備えること」、「有すること」、「含むこと」、および「含有すること」という用語は、特に断りのない限り、非限定的な用語(すなわち、「含むがこれに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内にある各個別の値を個々に参照する簡単な方法として役立つことを単に意図し、各個別の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別途記載のない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例または例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明の理解をより容易にすることを意図し、特許請求の範囲に別途記載されない限り、本発明の範囲に制限を課さない。本明細書における用語は、特許請求されていない要素を本発明の実施にとって不可欠であるとして示すものと解釈されるべきではない。
【0173】
別段の定めがない限り、すべてのパーセンテージ、比率、および平均分子量は重量ベースである。
図1A
図1B
図2