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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20240828BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240828BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240828BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M10/052
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021567290
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046643
(87)【国際公開番号】W WO2021131881
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019237804
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 修治
(72)【発明者】
【氏名】細川 尚士
(72)【発明者】
【氏名】細川 誉史
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156727(JP,A)
【文献】特開2016-66535(JP,A)
【文献】特開2015-35250(JP,A)
【文献】特開2009-289570(JP,A)
【文献】特表2011-511398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 4/13
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セパレータと正極板と第2セパレータと負極板とが、少なくとも前記正極板及び前記負極板の間に前記第1セパレータまたは前記第2セパレータを介在させるように重なり合って、10巻き以上で巻回された電極体を備え、
前記電極体は、外周面が平坦な平坦部と、前記平坦部の第1方向両端に配置され外周面が曲面である2つの曲面部とを有する非水電解質二次電池であって、
前記電極体の最外周面に前記電極体の巻き終わり端を固定するように、前記電極体の最外周面に貼着された巻き終わりテープと、
前記正極板の内周側の巻き始め側端部に貼り付けられた正極保護テープとを備え、
前記巻き終わりテープが、前記2つの曲面部の一方の曲面部に配置され、
前記正極保護テープが、前記2つの曲面部の一方または他方の曲面部において、前記正極板の前記巻き始め側端部の曲面に沿って配置される、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池において、
前記正極板の正極密度が2.600g/cm以上、3.000g/cm以下である、
非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載の非水電解質二次電池において、
前記正極密度が、2.753g/cm以上、2.902g/cm以下である、
非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池において、
前記負極板の内周側の巻き始め側端を、前記正極板の巻き始め側端より1.0層内周側に位置させる、
非水電解質二次電池。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池において、
前記負極板の負極密度が1.52g/cm以上であって、前記正極板の巻方向に沿う長手方向の長さが4895mm以上であり、前記負極板の巻方向に沿う長手方向の長さが5115mm以上である、
非水電解質二次電池。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記第1セパレータと前記正極板と前記第2セパレータと前記負極板とを、少なくとも前記正極板及び前記負極板の間に前記第1セパレータまたは前記第2セパレータを介在させるように重なり合わせて、10巻き以上で巻回することによりプレス前電極体を形成するプレス前電極体形成工程と、
前記プレス前電極体形成工程の後に、前記第1方向と直交する方向に前記プレス前電極体を加圧して扁平状の前記電極体を成形する成形プレス工程とを含む、
非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力及び高エネルギ密度を実現する二次電池として、リチウムイオン電池に代表される非水電解質二次電池が広く利用されている。
【0003】
特許文献1には、正極板と負極板とがセパレータを介して巻回された扁平巻状の電極体がケースに収容されている角形の非水電解質二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-56742号公報
【発明の概要】
【0005】
非水電解質二次電池においてエネルギ密度をさらに高くするために、正極板の正極密度を高くすることが考えられる。一方、正極密度が高くなると電極体の剛性が高くなって、巻数が多い扁平巻状の電極体を形成する際の成形性が悪くなる。これにより、電極体の製造時の厚み等の寸法ばらつきが大きくなる。このことは、非水電解質二次電池の生産性の低下の原因となる。また、電極体の最外周に巻き止めのための巻き終わりテープを固定する場合がある。この場合に、巻き終わりテープの位置によって、電極体を形成する際の成形性が悪くなる場合があるので、電極体の寸法ばらつきが大きくなる可能性がある。また、正極板の内周側の巻き始め側端部がセパレータ等の他の部材に直接接触することによっても、成形性が悪くなり、電極体の寸法ばらつきが大きくなる可能性がある。
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、第1セパレータと正極板と第2セパレータと負極板とが、少なくとも正極板及び負極板の間に第1セパレータまたは第2セパレータを介在させるように重なり合って、10巻き以上で巻回された電極体を備え、電極体は、外周面が平坦な平坦部と、平坦部の第1方向両端に配置され外周面が曲面である2つの曲面部とを有する非水電解質二次電池であって、電極体の最外周面に電極体の巻き終わり端を固定するように、電極体の最外周面に貼着された巻き終わりテープと、正極板の内周側の巻き始め側端部に貼り付けられた正極保護テープとを備え、巻き終わりテープが、2つの曲面部の一方の曲面部に配置され、正極保護テープが、2つの曲面部の一方または他方の曲面部において、正極板の巻き始め側端部の曲面に沿って配置される、非水電解質二次電池である。
【0007】
本開示の一態様である非水電解質二次電池の製造方法は、本開示の非水電解質二次電池の製造方法であって、第1セパレータと正極板と第2セパレータと負極板とを、少なくとも正極板及び負極板の間に第1セパレータまたは第2セパレータを介在させるように重なり合わせて、10巻き以上で巻回することによりプレス前電極体を形成するプレス前電極体形成工程と、プレス前電極体形成工程の後に、第1方向と直交する方向にプレス前電極体を加圧して扁平状の電極体を成形する成形プレス工程とを含む、非水電解質二次電池の製造方法である。
【0008】
本開示の一態様の非水電解質二次電池及びその製造方法によれば、電極体の巻数が多い構成で電極体の成形性を高くできることにより、製造時の電極体の寸法ばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の一例の非水電解質二次電池の断面図である。
図2図2は、図1の非水電解質二次電池の平面図である。
図3図3は、図1の非水電解質二次電池を構成する電極体において、図1のA-A断面に相当する図である。
図4図4は、図3の電極体において、正極板の巻き始め側端部及び正極保護テープを示す図である。
図5図5は、図3の電極体において負極板の巻き始め側端が正極板の巻き始め側端より0.5層内周側に位置すると仮定した場合において、正極板及び負極板の巻き始め側端部の位置関係を示す図である。
図6図6は、実施形態の一例の非水電解質二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
図7図7は、正極板の巻き始め側端部に貼り付けられた別例の正極保護テープを示す図である。
図8図8は、比較例1の非水電解質二次電池を構成する電極体において、図3に対応する図である。
図9図9は、比較例2の非水電解質二次電池を構成する電極体において、図3に対応する図である。
図10図10は、比較例3の非水電解質二次電池を構成する電極体において、図3に対応する図である。
図11図11は、比較例4の非水電解質二次電池を構成する電極体において、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、第1セパレータと正極板と第2セパレータと負極板とが、少なくとも正極板及び負極板の間に第1セパレータまたは第2セパレータを介在させるように重なり合って、10巻き以上で巻回された電極体を備え、電極体は、外周面が平坦な平坦部と、平坦部の第1方向両端に配置され外周面が曲面である2つの曲面部とを有する構成であって、電極体の最外周に固定された巻き終わりテープと、正極板の内周側の巻き始め側端部に貼り付けられた正極保護テープとを備え、巻き終わりテープが、2つの曲面部の一方の曲面部に配置され、正極保護テープが、2つの曲面部の一方または他方の曲面部において、正極板の巻き始め側端部の曲面に沿って配置されることにより、電極体の成形性を高くできることにより、製造時の電極体の寸法ばらつきを抑制できることを見出した。これについて、以下、詳しく説明する。
【0011】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。以下では、巻回型の電極体が角形の金属製ケースである電池ケースに収容された角形電池を説明する。
【0012】
図1は、非水電解質二次電池10の断面図であり、図2は、非水電解質二次電池10の平面図である。図3は、非水電解質二次電池10を構成する電極体13において、図1のA-A断面に相当する図である。以下では、非水電解質二次電池10は、電池10と記載する。電池10は、上方に開口を有する角形の外装体11と、当該開口を塞ぐ封口板12を備える。外装体11は、底面視略長方形状の底部、及び底部の周縁に立設した側壁部を有する。側壁部は、底部に対して略垂直に形成される。外装体11及び封口板12により電池ケース100が構成されている。外装体11及び封口板12はいずれも金属製であり、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0013】
電池10は、偏平状の巻回型の電極体13と、非水電解質とを備える。図3に示すように、電極体13は、第1セパレータ30と正極板14と第2セパレータ31と負極板15とが、少なくとも正極板14及び負極板15の間に第1セパレータ30または第2セパレータ31を介在させるように重なり合って、10巻き以上で巻回されることにより形成される。図3では、電極体13の構成要素の関係を分かりやすくするために実際とは巻数を極端に減らして示しており、黒太線が正極板14を示し、内部に斜線を付した線が負極板15を示し、破線が第1セパレータ30及び第2セパレータ31を示している。第2セパレータ31は、外周側の巻き終わり端部のみを図示している。電極体13及び非水電解質は、電池ケース100内に収容されている。電極体13において、電極板(正極板14、負極板15)の短手方向が巻軸方向となり、その巻軸方向は図1の左右方向に沿っている。さらに、電極体13は、10巻き以上、例えば30~40巻きで巻回されている。
【0014】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。
【0015】
正極板14は、金属製の正極芯体と、正極芯体の両面に形成された正極合剤層とを有する長尺体である。正極板14は、展開した状態での短手方向における一方の端部に、長手方向に沿って正極芯体が露出することにより、帯状の正極芯体露出部14aが形成されている。ここで、正極板14の正極密度は、2.600g/cm以上、3.000g/cm以下である。同様に、負極板15は、金属製の負極芯体と、負極芯体の両面に形成された負極合剤層とを有する長尺体であって、展開した状態での短手方向における他方の端部に、長手方向に沿って負極芯体が露出する帯状の負極芯体露出部15aが形成されている。電極体13は、巻回軸方向一端側(図1の右側)に正極芯体露出部14aが、巻回軸方向他端側(図1の左側)に負極芯体露出部15aがそれぞれ配置された状態で、正極板14及び負極板15が扁平状に巻回された構造を有する。これによって、図3の巻軸に直交する平面での断面で示すように、電極体13は、外周面が平坦な平坦部13bと、平坦部13bの第1方向(図3の左右方向)両端に配置された外周面が曲面である2つの曲面部13aを有する。各曲面部13aは、内周側が窪むように湾曲している。例えば各曲面部13aは、外周面が断面円弧形の曲面状となっていてもよい。
【0016】
図1に示すように、正極芯体露出部14aの積層部には正極集電体16が、負極芯体露出部15aの積層部には負極集電体18がそれぞれ接続される。好適な正極集電体16は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製である。好適な負極集電体18は、銅又は銅合金製である。正極端子17は、封口板12の電池外部側に配置される鍔部17a(図2)と、封口板12に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有し、正極集電体16と電気的に接続されている。また、負極端子19は、封口板12の電池外部側に配置される鍔部19a(図2)と、封口板12に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有し、負極集電体18と電気的に接続されている。
【0017】
正極端子17及び正極集電体16は、それぞれ内側絶縁部材20及び外側絶縁部材21を介して封口板12に固定される。内側絶縁部材20は、封口板12と正極集電体16の間に配置され、外側絶縁部材21は封口板12と正極端子17の間に配置される。同様に、負極端子19及び負極集電体18は、それぞれ内側絶縁部材22及び外側絶縁部材23を介して封口板12に固定される。内側絶縁部材22は封口板12と負極集電体18の間に配置され、外側絶縁部材23は封口板12と負極端子19の間に配置される。
【0018】
電極体13は、外装体11内に収容される。封口板12は、外装体11の開口縁部にレーザー溶接等により溶接接続される。封口板12は電解液注液孔26を有し、この電解液注液孔26は電池ケース100内に非水電解質を注液した後、封止栓27により封止される。
【0019】
さらに、図3に示すように、電極体13は、最外周に固定された巻き終わりテープ33と、正極板14の内周側の巻き始め側端部に貼り付けられた正極保護テープ35とを備える。巻き終わりテープ33は、電極体13の最外周面に電極体13の巻き終わり端を固定するように、電極体13の最外周面に貼着されている。本例の場合、電極体13の最外周面には第1セパレータ30が配置される。巻き終わりテープ33は、電極体13の最外周に位置する第1セパレータ30の巻き終わり端を、巻方向に跨ぐように、第1セパレータ30の最外周面に貼着される。これにより、電極体13の巻き戻りが防止される。巻き終わりテープ33の材質は、特に限定しないが、例えば、ポリプロピレン等の基材層である樹脂フィルムの片面の全面に粘着層が形成されたものが用いられる。基材層として、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等を用いることもできる。
【0020】
正極保護テープ35は、正極板14、または各セパレータ30,31、または負極板15の端部の損傷を防止すると共に、正極合剤層が正極芯体から剥がれることを防止する。図4は、電極体13において、正極板14の巻き始め側端部及び正極保護テープ35を示す図である。正極保護テープ35は、図3に示すように、2枚が互いに向き合って、それぞれの内側面の粘着層が正極板14の端部の側面に貼着され、正極板14の端部からはみ出した部分同士が互いに重なり合って貼着される。これにより、正極板14の巻き始め側端部が2枚の正極保護テープ35により覆われる。正極保護テープ35の材質は、特に限定しないが、例えば、ポリプロピレン等の基材層である樹脂フィルムの片面の全面に粘着層が形成されたものが用いられる。基材層として、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等を用いることもできる。
【0021】
本例の場合には、巻き終わりテープ33が、電極体13の外周面における2つの曲面部13aの一方(図3の右側)の曲面部13aに配置される。図3では一方の曲面部13aは上側に配置されるが、下側に配置されてもよい。さらに、正極保護テープ35が、電極体13の2つの曲面部13aの、巻き終わりテープ33と同じ側の一方の曲面部13aにおいて、正極板14の巻き始め側端部の曲面となる側面に沿って配置される。これにより、後述のように、電極体13の巻数が多い構成で電極体13の成形性を高くできることにより、製造時の電極体13の寸法ばらつきを抑制できる。
【0022】
以下、電極体13を構成する正極板14、負極板15、各セパレータ30,31について詳説する。
【0023】
[正極板]
正極板14は、上述のように、正極芯体と、正極芯体の両面に形成された正極合剤層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金など、正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、導電材、及び結着剤等を含む。正極板14は、正極芯体上に正極活物質、導電材、結着剤、及び分散媒等を含む正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて分散媒を除去した後、圧縮して正極合剤層を正極芯体の両面に形成することにより製造できる。
【0024】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム遷移金属酸化物が例示できる。リチウム遷移金属酸化物は、例えばLixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4、LiMPO4、Li2MPO4F(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)である。これらは、1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。電池10の高容量化を図ることができる点で、正極活物質は、LixNiO2、LixCoyNi1-y2、LixNi1-yyz(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)等のリチウムニッケル複合酸化物を含むことが好ましい。
【0025】
正極合剤層に用いる導電材は、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛等のカーボン系粒子などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。正極合剤層に用いる導電材として、好ましくはカーボンブラックが用いられる。
【0026】
正極合剤層に用いる結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。正極合剤層に用いる結着剤として、好ましくはポリフッ化ビニリデンが用いられる。
【0027】
正極板14の正極密度は、2.600g/cm以上、3.000g/cm以下であり、好ましくは、2.753g/cm以上、2.902g/cm以下である。また、正極板14の巻方向に沿う長手方向の長さは、4895mm以上である。本例の場合には、このように正極密度が高い構成であっても、電極体13の巻数が多い構成で電極体13の成形性を高くできる。
【0028】
[負極板]
負極板15は、負極芯体と、負極芯体の両面に形成された負極合剤層とを有する。負極合剤層は、負極活物質、及び結着剤を含む。
【0029】
負極芯体には、銅、銅合金など、負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極板15は、負極芯体上に負極活物質、結着剤、及び分散媒等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させ分散媒を除去した後、圧縮して負極合剤層を負極芯体の両面に形成することにより製造できる。
【0030】
負極合剤層には、負極活物質として、例えばリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛当の炭素材料、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のリチウムと合金化する金属、又はSi,Sn等の金属元素を含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質としては、炭素材料が好ましく、天然黒鉛がさらに好ましい。負極活物質は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0031】
負極板15の負極密度は、1.52g/cm以上である。また、負極板15の巻方向に沿う長手方向の長さは、5115mm以上である。
【0032】
[セパレータ]
各セパレータ30,31には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ30,31の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータ30,31は、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、各セパレータ30,31は、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータ30,31の表面にアラミド系樹脂、セラミック等の材料が塗布されたものを用いてもよい。例えば、各セパレータ30,31は、ポリエチレン層/ポリプロピレン層/ポリエチレン層の3層セパレータとしてもよい。
【0033】
[正極板及び負極板の巻き始め端位置]
また、負極板15の内周側の巻き始め側端は、正極板14の巻き始め側端より1.0層内周側に位置している。図5は、図3の電極体13において負極板15の巻き始め側端が正極板の巻き始め側端より0.5層内周側に位置すると仮定した場合において、正極板14及び負極板15の巻き始め側端部の位置関係を示す図である。図5に示す例では、図3の矢印Aで示す範囲に位置する負極板15の巻き始め側端部を示している。図5では、負極板15が矢印Aの範囲で直線状になっていると仮定している。この場合に、矢印Aの範囲が1.0層となり、図3の例では、負極板15の巻き始め側端が正極板14の巻き始め側端より1.0層内周側に位置している。これにより、上記のように、正極保護テープ35が、電極体13の一方の曲面部13aにおいて、正極板14の巻き始め側端部の曲面となる側面に沿って配置されることにより、正極板14の巻き始め側端が一方の曲面部13aまたはその付近に位置する場合に、負極板15の巻き始め側端を他方の曲面部13aまたはその付近に位置させることができる。これにより、平坦部13bの長手方向(図3の左右方向)の中央部の近くに負極板15の巻き始め側端が配置されない。このため、外周面が円筒状になるように巻回されたプレス前電極体を一方向にプレス加工機で押圧して扁平状の電極体13を形成する場合に、平坦部13bを形成しやすくなるので、電極体13の成形性を高くできる。
【0034】
[電池の製造方法]
図6は、実施形態の一例の電池の製造方法を示すフローチャートである。電池10の製造方法は、プレス前電極体形成工程と、その後の成形プレス工程とを有する。具体的には、まず図6のステップS1において、第1セパレータ30と正極板14と第2セパレータ31と負極板15とを、少なくとも正極板14及び負極板15の間に第1セパレータ30または第2セパレータ31を介在させるように重なり合わせて、10巻き以上、例えば30~40巻きで巻回することにより、外周面が円筒状のプレス前電極体を形成するプレス前電極体形成工程を行う。その後、ステップS2において、第1方向と直交する図3の上下方向に押し潰すようにプレス前電極体を常温でプレス加工機により加圧して、図3に示す扁平状の電極体13を成形する成形プレス工程を行う。
【0035】
なお、図3の構成では、正極板14の巻き始め側端部に貼り付ける正極保護テープ35を2枚重ね合わせているが、これに限定するものではない。図7は、正極板14の巻き始め側端部に貼り付けられた別例の正極保護テープ35aを示している。図7の別例の構成では、1枚の正極保護テープ35aの両端側部分を正極板14の巻き始め側端部の両側面に貼り付けるように、正極保護テープ35aを中間部で折り返して断面U字形に形成し、その正極保護テープ35aで正極板14の巻き始め側端部を覆っている。
【0036】
上記の電池10及びその製造方法によれば、電極体13の巻数が10巻き以上と多い構成で、電極体13の成形性を高くできることにより、製造時の電極体13の寸法ばらつきを抑制できる。具体的には、電極体13の最外周面に貼着された巻き終わりテープ33が、電極体13の一方の曲面部13aに配置される。これにより、電極体13の押し潰し方向に面する平坦部13bに巻き終わりテープ33が配置されないので、電極体13が均一に押し潰されやすくなり、電極体13の厚み方向に効率よく圧力を加えることができるので、平坦部13bを形成しやすくなる。さらに、正極板14の巻き始め側端部に正極保護テープ35が貼り付けられることにより、この巻き始め側端部がセパレータ30,31等の他の部材との間で滑りやすくなるので、電極体13のプレスに対する応答性を高くできる。これによって、外周面が円筒状のプレス前電極体から扁平状の電極体13に成形されやすくなる。また、正極保護テープ35が、一方の曲面部13aにおいて正極板14の巻き始め側端部の曲面に沿って配置されることによっても、電極体13が均一に押し潰されやすくなるので、平坦部13bをより形成しやすくなる。このため、電極体13の巻数が多い構成で、電極体13の成形性を高くできることにより、製造時の電極体13の厚み等の寸法ばらつきを抑制できる。
【0037】
さらに、負極板15の内周側の巻き始め側端を、正極板14の巻き始め側端より1.0層内周側に位置させるので、これによっても、上述のように、平坦部13bを形成しやすくなることにより、電極体13の成形性をより高くできる。また、この構成によれば、電極体13の内周側部分のクッション性を高くできる。さらに電極体13の成形性を高くできるので、低いプレス圧で寸法ばらつきが少ない電極体13の生産が可能となる。
【0038】
以下、実施例により本開示の電池10の電極体13をさらに説明すると共に、比較例1~4の電池の電極体を説明する。
【0039】
<実施例>
[正極板の作製]
正極活物質として、LiNi0.35Co0.35Mn0.30で表されるリチウム含有金属複合酸化物と、導電材としてのカーボンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、96:3:1の固形分質量比で混合したものにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて混練して正極合剤スラリーを調製した。当該正極合剤スラリーを厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮ローラーを用いて塗膜を圧縮し、所定の電極サイズに切断して、正極芯体の両面に正極合剤層が形成された正極板14を作製した。正極合剤層の厚みは、圧縮処理後で、片面側で76μmとした。正極板14の短手方向の長さは131.8mmとした。正極板14の短手方向の一端部における正極芯体露出部14aの幅(短手方向における長さ)は、15.2mmとした。正極板14の巻方向に沿う長手方向の長さは4950mmとした。さらに、正極板14の正極密度は、2.800g/cmとした。
【0040】
[負極板の作製]
負極活物質としての黒鉛粉末と、カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)のディスパージョンとを、固形分質量比で、98:1:1で混合し水を分散媒として用いて負極合剤スラリーを調製した。当該負極合剤スラリーを厚みが10μmの銅箔からなる負極芯体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮ローラーを用いて塗膜を圧縮し、所定の電極サイズに切断して、負極芯体の両面に負極合剤層が形成された負極板15を作製した。負極合剤層の厚みは、圧縮処理後で、片面側で67μmとした。負極板15の短手方向の長さは133.8mmとした。負極板15の短手方向の他端部における負極芯体露出部15aの幅(短手方向における長さ)は、10.0mmとした。負極板15の巻方向に沿う長手方向の長さは5150mmとした。
【0041】
[セパレータの作製]
第1セパレータ30及び第2セパレータ31として、それぞれポリエチレン層/ポリプロピレン層/ポリエチレン層の3層セパレータを用いた。各セパレータ30,31の厚みは14μmとし、短手方向における長さ(幅)は127mmとした。
【0042】
[電極体の作製]
第1セパレータ30と正極板14と第2セパレータ31と負極板15とを、正極板14及び負極板15の間に第1セパレータ30または第2セパレータ31を介在させるように重なり合わせて、10巻き以上で外周面が円筒状になるように巻回した後、プレス加工により径方向に押し潰して巻回型の扁平形状の電極体13を作製した。このとき、正極板14の芯体露出部と、負極板15の芯体露出部とはそれぞれに対向する電極板の活物質層と重ならないようにずらし、電極体13の巻軸方向の一方端部側に正極板14の芯体露出部を配置し、巻軸方向の他方端部側に負極板15の芯体露出部を配置した。また、電極体13の最外周面に電極体13の巻き終わり端を固定するように、電極体13の最外周面に巻き終わりテープ33を貼着した。その巻き終わりテープ33は、電極体13の一方の曲面部13aに配置した。また、正極板14の内周側の巻き始め側端部に正極保護テープ35を貼り付けた。その正極保護テープ35は、電極体13の一方の曲面部13aにおいて、正極板14の巻き始め側端部の曲面に沿って配置した。また、負極板15の内周側の巻き始め側端を、正極板14の巻き始め側端より1.0層内周側に位置させた。
【0043】
<比較例1>
図8は、比較例1の電池を構成する電極体40において、図3に対応する図である。図8に示すように、比較例1の電極体40は、電極体40の最外周面に貼着した巻き終わりテープ33を、電極体40の平坦部13bの外側面に配置した。また、正極板14の巻き始め側端部に正極保護テープ35を貼り付けると共に、その正極保護テープ35を電極体40の平坦部13bの内周側部分に配置した。さらに、負極板15の内周側の巻き始め側端を、正極板14の巻き始め側端より0.5層内周側に位置させた。その他の構成を実施例と同様にして比較例1の電極体40を作製した。
【0044】
<比較例2>
図9は、比較例2の電池を構成する電極体40aにおいて、図3に対応する図である。図9に示すように、比較例2の電極体40aは、正極板14の巻き始め側端部に正極保護テープ35を貼り付けると共に、その正極保護テープ35を電極体40aの平坦部13bの内周側部分に配置した。さらに、負極板15の内周側の巻き始め側端を、正極板14の巻き始め側端より0.5層内周側に位置させた。その他の構成を実施例と同様にして比較例2の電極体40aを作製した。
【0045】
<比較例3>
図10は、比較例3の電池を構成する電極体40bにおいて、図3に対応する図である。図10に示すように、比較例3の電極体40bは、正極板14の巻き始め側端部に正極保護テープ35を貼り付けると共に、その正極保護テープ35を電極体40bの平坦部13bの内周側部分に配置した。さらに、負極板15の内周側の巻き始め側端を、正極板14の巻き始め側端より0.8層内周側に位置させた。その他の構成を実施例と同様にして比較例3の電極体40bを作製した。
【0046】
<比較例4>
図11は、比較例4の電池を構成する電極体40cにおいて、図3に対応する図である。図11に示すように、比較例4の電極体40cは、正極板14の巻き始め側端部に正極保護テープ35を貼り付けると共に、その正極保護テープ35を電極体40cの平坦部13bの内周側部分に配置した。さらに、負極板15の内周側の巻き始め側端を、正極板14の巻き始め側端より1.2層内周側に位置させた。その他の構成を実施例と同様にして比較例4の電極体40cを作製した。
【0047】
[評価方法]
上記の実施例及び比較例1~4の5つの種類の電極体13,40,40a~40cを用いて、電極体13,40,40a~40cの厚みのばらつきσを測定し、ばらつきσの比較の評価を行った。具体的には、実施例及び比較例1~4の電極体13,40,40a~40cのそれぞれで、外周面が円筒状のプレス前電極体をプレス加工機により、所定のプレス圧と所定の時間で径方向に押し潰すように扁平状の電極体13,40,40a~40cを成形した。成形された電極体13,40,40a~40cを治具で挟んで10gfの荷重を加えた状態で、レーザー変位計により電極体13,40,40a~40cの押し潰し方向の厚みを測定した。このような電極体13,40,40a~40cの成形を5種類で10個ずつ連続で行って、電極体13,40,40a~40cの厚みを測定し記録を行って、5種類のそれぞれで厚みのばらつき(標準偏差)σを確認した。
【0048】
[評価結果]
表1は、実施例及び比較例1~4の電極体13,40,40a~40cの厚みのばらつきσと、正極密度と、巻き終わりテープ33の位置及び正極保護テープ35の位置と、正極保護テープ35の有無と、内周部の余剰負極、すなわち正極板14の巻き始め端に対し負極板15の巻き始め端が内周側に延びる長さを示している。
【0049】
【表1】
【0050】
表1では、「R部」は、電極体13,40,40a~40cの一方または他方の曲面部13aを意味し、「平坦」は、電極体13,40,40a~40cの平坦部13bを意味する。
【0051】
表1に示した評価結果から、実施例の場合には、電極体13の厚みのばらつきを、各比較例1~4の電極体40,40a~40cの厚みのばらつきより大幅に小さくできた。この理由は、実施例では、巻き終わりテープ33及び正極保護テープ35を、電極体13の一方の曲面部13aに配置し、負極板15の内周側の巻き始め側端を、正極板14の巻き始め側端より1.0層内周側に位置させたことにより、成形性が高くなったためと考えられる。
【0052】
なお、上記の実施形態及び実施例では、巻き終わりテープ33及び正極保護テープ35が、電極体13の同じ側の曲面部13aに配置される場合を説明したが、本開示はこれに限定するものではなく、巻き終わりテープ33及び正極保護テープ35が、電極体13の2つの曲面部13aの異なる曲面部13aに配置されてもよい。例えば、巻き終わりテープ33が2つの曲面部13aの一方の曲面部13aに配置され、正極保護テープ35が、他方の曲面部13aにおいて、正極板14の巻き始め側端部の曲面に沿って配置されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 非水電解質二次電池(電池)
11 外装体
12 封口板
13 電極体
13a 曲面部
13b 平坦部
14 正極板
14a 正極芯体露出部
15 負極板
15a 負極芯体露出部
16 正極集電体
17 正極端子
18 負極集電体
19 負極端子
20,22 内側絶縁部材
21,23 外側絶縁部材
24 絶縁シート
26 電解液注液孔
27 封止栓
30 第1セパレータ
31 第2セパレータ
33 巻き終わりテープ
35,35a 正極保護テープ
40,40a~40c 電極体
100 電池ケース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11