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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】冷却用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20240828BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240828BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240828BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240828BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240828BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240828BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/647
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021571192
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000741
(87)【国際公開番号】W WO2021145317
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2020006054
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】王 鳴笛
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-190674(JP,A)
【文献】特開2012-190675(JP,A)
【文献】特開2016-035378(JP,A)
【文献】特開2009-272137(JP,A)
【文献】特開2011-049139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/6556
H01M 10/613
H01M 10/617
H01M 10/625
H01M 10/647
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気液混合状態の冷媒が通流し、車両用のバッテリセル(21)を冷却する冷却用熱交換器(30;30A;30B)であって、
前記バッテリセル(21)と熱交換する冷媒が流入する流入部(31)と、
前記流入部(31)を通過した冷媒が流入する流入ヘッダ(H1)と、
前記流入ヘッダ(H1)を通過した冷媒の一部が流入する上側第1チューブ(Ta1)と、
車両に搭載された状態で前記上側第1チューブ(Ta1)よりも下方に配置され、前記流入ヘッダ(H1)を通過した冷媒の残部が流入する下側第1チューブ(Tb1)と、
前記上側第1チューブ(Ta1)および前記下側第1チューブ(Tb1)を通過した冷媒が流入する中間ヘッダ(H2)と、
前記中間ヘッダ(H2)を通過した冷媒が流入する上側第2チューブ(Ta2)と、
車両に搭載された状態で前記上側第2チューブ(Ta2)よりも下方に配置され、前記中間ヘッダ(H2)を通過した冷媒が流入する下側第2チューブ(Tb2)と、
前記上側第2チューブ(Ta2)および前記下側第2チューブ(Tb2)を通過した冷媒が直接的または間接的に流入する流出ヘッダ(H4)と、
前記流出ヘッダ(H4)を通過した冷媒が流入し冷却用熱交換器(30;30A;30B)から冷媒を流出する流出部(32)と、
前記中間ヘッダ(H2)の内部を、前記上側第1チューブ(Ta1)と前記上側第2チューブ(Ta2)とに連通した上側空間(42a)と、前記下側第1チューブ(Tb1)と前記下側第2チューブ(Tb2)とに連通した下側空間(42b)とに仕切る仕切部材(S2)と、
を有することを特徴とする冷却用熱交換器(30;30A;30B)。
【請求項2】
前記中間ヘッダ(H2;H3)を複数有し、複数の前記中間ヘッダ同志は上側チューブ(Ta2;Ta3)および下側チューブ(Tb2:Tb3)を介して接続され、
複数の前記中間ヘッダ(H2:H3)の内部を、それぞれ、前記上側チューブ(Ta2;Ta3)のいずれかに連通した上側空間(42a;43a)と、前記下側チューブ(Tb2、Tb3)のいずれかに連通した下側空間(42b:43b)とに仕切る複数の仕切部材(S2;S3)と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の冷却用熱交換器(30;30A;30B)。
【請求項3】
前記流入ヘッダ(H1)は、当該流入ヘッダ(H1)の長手方向に交差する面において断面積よりも小さな面積の絞り孔(S1a)を有する絞り部材(S1)が備えられ、
前記絞り部材は(S1)、前記流入ヘッダ(H1)の内部を、前記上側第1チューブ(Ta1)に連通した上側空間(41a)と、前記下側第1チューブ(Tb1)に連通した下側空間(41b)とを連通しつつ区分けすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却用熱交換器(30A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された高温のバッテリセルを冷却する冷却用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車は、充電可能なバッテリに蓄積された電力により走行用モータを駆動して走行する。バッテリは充電時に発熱し、劣化の一因となる。そこで、バッテリの劣化を抑制するために、バッテリの冷却が行われる。特許文献1には、バッテリを冷却するための冷媒式の冷却用熱交換器が開示されている。
【0003】
特許文献1の冷却用熱交換器は、2本のヘッダ(マニホルド)の間に設けられてバッテリと接触する複数の平坦なチューブ(冷媒管)を有している。ヘッダは上下方向に延びるように配置され、チューブはバッテリの側面と熱的に結合している。すなわち、チューブとバッテリの側面とは、熱交換が可能となるように接触している。バッテリの冷却を行うとき、ヘッダおよびチューブにより形成される冷媒流路のうち、比較的上流側のチューブ内を流れる冷媒は、液体を十分に含む気液混合状態であり、バッテリの冷却能力を十分に有している。冷媒はチューブの中を流れてゆくときにバッテリの熱により加熱され、これにより、液体状態の冷媒が蒸発して減少し、気体状態の冷媒の割合が増加してゆく。
【0004】
特許文献2のバッテリモジュールは、バッテリパックケースの内部に複数のバッテリが配置されている。バッテリは上下方向や左右方向に積層されてそれぞれグループを形成しており、複数のグループが1つのバッテリパックケースの内部に配置されている。
【0005】
特許文献1の冷却用熱交換器を、特許文献2のバッテリパックケースの内部に配置してそれぞれのバッテリのグループを冷却する場合、冷却用熱交換器の形状に工夫が求められる。すなわち、特許文献1の冷却用熱交換器ではヘッダを2本としていたところ、ヘッダを3本以上に増やし、隣接するヘッダとの間にチューブを配置することが好ましい。ヘッダを2本のままとして、長いチューブを各バッテリのグループに接触させると、チューブの寸法が長いために容易に変形し、チューブとバッテリの側面との熱的な結合が困難となる。そこで、ヘッダを3本以上となるように冷却用熱交換器を構成し、中間ヘッダをバッテリのグループの間に配置することで、チューブの意図しない変形を抑制し、各バッテリのグループの側面と熱的な結合を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-035378号公報
【文献】特開2015-072819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、中間ヘッダを設けた場合、相対的に上方の位置でこの中間ヘッダの内部に侵入した液体の冷媒は、重力によって相対的に下方の位置に移動しやすい。このため、複数のチューブの内部を通流する気液混合状態の冷媒は、中間ヘッダの上流側と下流側とでその気液の混合割合が変化し、中間ヘッダよりも下流側では、上方のチューブに気相冷媒のみが集まりやすい。すなわち、上方のチューブは、気相冷媒の割合が高まりやすい。そして、気相冷媒の割合が高まると、液相冷媒が蒸発することによるバッテリの冷却能力が不足し、バッテリの温度分布の均一性を保てなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、中間ヘッダを有するバッテリの冷却モジュールにおいて、中間ヘッダの下流側に上下方向に配置された複数のチューブのうち上方のチューブを通流する冷媒について、気相冷媒の割合が高くなることを抑制し、もってバッテリの温度分布の均一性を保つことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明の一実施の形態によれば、
内部に気液混合状態の冷媒が通流し、車両用のバッテリセル(21)を冷却する冷却用熱交換器(30;30A;30B)であって、
前記バッテリセル(21)と熱交換する冷媒が流入する流入部(31)と、
前記流入部(31)を通過した冷媒が流入する流入ヘッダ(H1)と、
前記流入ヘッダ(H1)を通過した冷媒の一部が流入する上側第1チューブ(Ta1)と、
車両に搭載された状態で前記上側第1チューブ(Ta1)よりも下方に配置され、前記流入ヘッダ(H1)を通過した冷媒の残部が流入する下側第1チューブ(Tb1)と、
前記上側第1チューブ(Ta1)および前記下側第1チューブ(Tb1)を通過した冷媒が流入する中間ヘッダ(H2)と、
前記中間ヘッダ(H2)を通過した冷媒が流入する上側第2チューブ(Ta2)と、
車両に搭載された状態で前記上側第2チューブ(Ta2)よりも下方に配置され、前記中間ヘッダ(H2)を通過した冷媒が流入する下側第2チューブ(Tb2)と、
前記上側第2チューブ(Ta2)および前記下側第2チューブ(Tb2)を通過した冷媒が直接的または間接的に流入する流出ヘッダ(H4)と、
前記流出ヘッダ(H4)を通過した冷媒が流入し冷却用熱交換器(30;30A;30B)から冷媒を流出する流出部(32)と、
前記中間ヘッダ(H2)の内部を、前記上側第1チューブ(Ta1)と前記上側第2チューブ(Ta2)とに連通した上側空間(42a)と、前記下側第1チューブ(Tb1)と前記下側第2チューブ(Tb2)とに連通した下側空間(42b)とに仕切る仕切部材(S2)と、
を有することを特徴とする冷却用熱交換器(30;30A;30B)が提供される。
【0011】
冷却用熱交換器(30;30A;30B)は、
前記中間ヘッダ(H2;H3)を複数有し、複数の前記中間ヘッダ同志は上側チューブ(Ta2;Ta3)および下側チューブ(Tb2:Tb3)を介して接続され、
複数の前記中間ヘッダ(H2:H3)の内部を、それぞれ、前記上側チューブ(Ta2;Ta3)のいずれかに連通した上側空間(42a;43a)と、前記下側チューブ(Tb2、Tb3)のいずれかに連通した下側空間(42b;43b)とに仕切る複数の仕切部材(S2;S3)と
を有することが好ましい。流入ヘッダから上側チューブに流入した冷媒は、流出ヘッダに至るまでの経路で、重力の影響で液相冷媒の比率が低下することが回避される。
【0012】
冷却用熱交換器(30A)は、
前記流入ヘッダ(H1)は、当該流入ヘッダ(H1)の長手方向に交差する面において断面積よりも小さな面積の絞り孔(S1a)を有する絞り部材(S1)が備えられ、
前記絞り部材は(S1)、前記流入ヘッダ(H1)の内部を、前記上側第1チューブ(Ta1)に連通した上側空間(41a)と、前記下側第1チューブ(Tb1)に連通した下側空間(41b)とを連通しつつ区分けすることが好ましい。流入ヘッダに流入した気液混合冷媒が上側第1チューブおよび下側第1チューブに流入する割合を上昇し、上側チューブと下側チューブとにバランスよく冷媒を供給することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記の実施形態によれば、中間ヘッダを有するバッテリの冷却モジュールにおいて、中間ヘッダの下流側に上下方向に配置された複数のチューブのうち上方のチューブを通流する冷媒について、気相冷媒の割合が高くなることを抑制でき、もってバッテリの温度分布の均一性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1による冷却用熱交換器、この熱交換器が搭載されるバッテリパックおよびバッテリを示す、分解斜視図である。
図2】実施例1による冷却用熱交換器の、断面概略図である。
図3図2の冷却用熱交換器の内部に気液混合状態の冷媒を通流させ、バッテリを冷却する状態を説明する断面概略図である。
図4】実施例2による冷却用熱交換器の、断面概略図である。
図5】その他の実施例による冷却用熱交換器、この熱交換器が搭載されるバッテリパックおよびバッテリを示す、断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0016】
<実施例1>
図1を参照する。図1には、電力が蓄えられる3つのバッテリ積層体20と、これらのバッテリ積層体20を冷却するための冷却用熱交換器30と、バッテリ積層体20および冷却用熱交換器30とを収容するバッテリパックケース10とが示されている。これらのバッテリパックケース10、バッテリ積層体20及び冷却用熱交換器30は、例えば、電力で走行用モータを駆動して走行する電気自動車や、動力源が内燃機関とモータとからなるハイブリッド車両に搭載される。
【0017】
バッテリパックケース10は、車両に搭載されるもので、金属または樹脂により構成される。図1では、バッテリ積層体20と冷却用熱交換器30とを内部に収容し、上方が解放されている容器として示されているが、一般には、バッテリパックケース10の内部を一定の気密性が確保されるように密閉容器として構成される。気密性を確保することで、精密な製品であるバッテリセル21を、外界より飛来する塵埃や水、油脂等から隔離し、保護することができる。
【0018】
それぞれのバッテリ積層体20は、積層された複数のバッテリセル21と、冷却用熱交換器30に対向する面に配置された均熱層22とを有する。バッテリセル21の積層方向は、図1に示されるように上下方向に積層される場合だけでなく、左右方向や前後方向の場合(図示せず)もある。均熱層22を設けることにより、各バッテリセル21の温度分布のばらつきを縮小することができる。均熱層22には、例えばアルミニウム合金やステンレス合金など、高い熱伝導性を有する材料が用いられる。バッテリセル21は、車両走行用のモータ(図示せず)に供給する電力を蓄積する機能を有し、充電時には発熱して高温となる。バッテリ積層体20の均熱層22は、冷却用熱交換器30と熱的に結合され、高温となったバッテリセル21の熱を冷却用熱交換器30へ伝熱する。
【0019】
冷却用熱交換器30は図示しない冷凍サイクルに連結され、特に膨張装置の下流側に配置される。冷凍サイクルが稼働されると、内部に冷却用の熱媒体としての気液混合状態の冷媒が通流される。冷媒は、例えばフロン系冷媒(HFC-134a、R-1234yf、R-12)が用いられる。
【0020】
図2を参照する。冷却用熱交換器30は、例えば、アルミニウム合金や銅合金等の熱伝導率の高い材料によって構成される。冷却用熱交換器30は、筒状に形成され上下に延びる4本のヘッダH(流入ヘッダH1、中間ヘッダH2、中間ヘッダH3、流出ヘッダH4)と、これらのヘッダHによって支持され内部に冷媒が流れる熱交換チューブT(上側チューブTa1、Ta2、Ta3、下側チューブTb1、Tb2、Tb3)と、流入ヘッダH1の上部に接続され冷媒が流入する流入部31と、流出ヘッダH4の下部に接続され冷媒が流出する流出部32と、を有する。中間ヘッダH2の内部は、仕切部材S2によって、上側空間42aと、この上側空間42aの下方に位置する下側空間42bとに仕切られる。中間ヘッダH3の内部は、仕切り部材S3によって、上側空間43aと、この上側空間43aの下方に位置する下側空間43bとに仕切られる。
【0021】
流入部31は、金属の管に円周状のフランジ部が設けられ、流入ヘッダH1に形成された穴部に挿入される。流入部31の下流端は、流入ヘッダH1の内部空間41に開放している。
【0022】
流出部32は、金属の管に円周状のフランジ部が設けられ、流出ヘッダH4に形成された穴部に挿入される。流出部32の上流端は、流出ヘッダH4の内部空間44に開放している。
【0023】
熱交換チューブTは扁平状の筒体であり、内部には冷媒の流れ方向に沿って複数の壁を形成することもできる(図5参照)。製造に際し、押出し成型、2枚のチューブプレートの貼合わせ、1枚のチューブプレートのリールフォーミングなどの製造方法が用いられる。上側第1チューブTa1は、流入ヘッダH1の内部空間41と中間ヘッダH2の上側空間42aとを連絡する。下側第1チューブTb1は、流入ヘッダH1の内部空間41と中間ヘッダH2の下側空間42bとを連絡する。上側第2チューブTa2は、中間ヘッダH2の上側空間42aと中間ヘッダH3の上側空間43aとを連絡する。下側第2チューブTb2は、中間ヘッダH2の下側空間42bと中間ヘッダH3の下側空間43bとを連絡する。上側第3チューブTa3は、中間ヘッダH3の上側空間43aと流出ヘッダH4の内部空間44とを連絡する。下側第3チューブTb3は、中間ヘッダH3の下側空間43bと流出ヘッダH4の内部空間44とを連絡する。
【0024】
4本のヘッダH1、H2、H3、H4は、流入部31が配置された流入ヘッダH1と、流入ヘッダH1の下流側に配置されて上側第1チューブTa1および下側第1チューブTb1が連結した中間ヘッダH2と、中間ヘッダH2の下流側に配置されて上側第2チューブTa2および下側第2チューブTb2が連結した中間ヘッダH3と、中間ヘッダH3の下流側に配置されて上側第3チューブTa3および下側第3チューブTb3が連結した流出ヘッダH4と、を有する。図1乃至図3において4本のヘッダH1、H2、H3、H4は、すべて同じ長さ寸法を有するよう示されているが、本発明はこれに限らない。例えば複数のバッテリ積層体20の高さ寸法が異なる場合には、これに対応するように、各ヘッダH1、H2、H3,H4の長さ寸法を適宜変更させてもよい。また、これに応じて、上側チューブTaと下側チューブTbの上下方向の位置を、適宜変更させてもよい。バッテリ積層体20の局所的な冷却や偏った位置での冷却を回避して、バッテリ積層体20を均一な温度状態に維持することができる。
【0025】
冷却用熱交換器30は、4本のヘッダHと、8本の熱交換チューブTと、流入部31と、流出部32と、仕切部材S2、S3とを、ろう付けによって一体的に接合することが好ましい。これにより、高い剛性を確保することができる。
【0026】
図1および図3を参照する。図中の矢印は冷媒の流れ方向と流量を、黒丸は液状冷媒を示す。
【0027】
流入部31を通流し流入ヘッダH1に流入した気液混合の冷媒は、流入ヘッダH1の内部空間41を概ね上下方向に分かれて、一部は上側第1チューブTa1に、残りは下側第1チューブTb1に流入する。上側第1チューブTa1および下側第1チューブTb1を流れる冷媒は、均熱層21を介してバッテリセル21と熱交換を行う。上側第1チューブTa1を流出した冷媒は、中間ヘッダH2の上側空間42aに流入する。下側第1チューブTb1を流出した冷媒は、中間ヘッダH2の下側空間42bに流入する。
【0028】
中間ヘッダH2の上側空間42aに流入した気液混合の冷媒は、上側第2チューブTa2に流入する。中間ヘッダH2の下側空間42bに流入した気液混合状態の冷媒は、下側第2チューブTb2に流入する。上側第2チューブTa2および下側第2チューブTb2を流れる冷媒は、均熱層21を介してバッテリセル21と熱交換を行う。上側第2チューブTa2を流出した冷媒は、中間ヘッダH3の上側空間43aに流入する。下側第2チューブTb2を流出した冷媒は、中間ヘッダH3の下側空間43bに流入する。
【0029】
中間ヘッダH3の上側空間43aに流入した気液混合の冷媒は、上側第3チューブTa3に流入する。中間ヘッダH3の下側空間43bに流入した気液混合状態の冷媒は、下側第3チューブTb3に流入する。上側第3チューブTa3および下側第3チューブTb3を流れる冷媒は、均熱層21を介してバッテリセル21と熱交換を行う。上側第3チューブTa3を流出した冷媒は、流出ヘッダH4の内部空間44に流入する。下側第3チューブTb3を流出した冷媒は、流出ヘッダH4の内部空間44に流入する。
【0030】
上側第3チューブTa3から流出ヘッダH4に流入した冷媒と下側第3チューブTb3から流出ヘッダに流入した冷媒とは、流出ヘッダH4の内部空間44で合流したのち、流出部32を介して図示しない冷凍サイクルに流入する。
【0031】
流入ヘッダH1に流入した冷媒の気液混合状態は、比較的、液相冷媒の割合が高い。液相冷媒は気相冷媒よりも比重が重い。このため、図3に示されるように、質量の大きな液相冷媒ほど重力の影響を受けて、下方に移動しやすい傾向がある。
【0032】
中間ヘッダH2に流入した冷媒の気液混合状態は、流入ヘッダH1を通流する冷媒よりも、液相冷媒の割合が減少する。これは、冷媒が上側第1チューブTa1および下側第1チューブTb1を通流する際にバッテリセル21の熱を吸収し、液相冷媒の一部が蒸発して気相冷媒に変化するからである。しかしながら、中間ヘッダH2へ流入した冷媒は、依然として気液混合状態である。すなわち、ある程度の湿り度を有している。このため、図3に示されるように、中間ヘッダH2においても、質量の大きな液相冷媒ほど重力の影響を受けて下方に移動しやすい傾向がある。
【0033】
中間ヘッダH3に流入した冷媒の気液混合状態は、中間ヘッダH2を通流する冷媒よりも、液相冷媒の割合が更に減少する。これは、冷媒が上側第2チューブTa2および下側第2チューブTb2を通流する際にバッテリセル21の熱を吸収し、液相冷媒の一部が蒸発して気相冷媒に変化するからである。しかしながら、中間ヘッダH3へ流入した冷媒は、依然として気液混合状態である。すなわち、ある程度の湿り度を有している。このため、図3に示されるように、中間ヘッダH3においても、質量の大きな液相冷媒ほど重力の影響を受けて下方に移動しやすい傾向がある。
【0034】
流出ヘッダH4に流入した冷媒の気液混合状態は、中間ヘッダH3を通流する冷媒よりも、液相冷媒の割合が更に減少する。これは、冷媒が上側第3チューブTa3および下側第3チューブTb3を通流する際にバッテリセル21の熱を吸収し、液相冷媒の一部が蒸発して気相冷媒に変化するからである。流出ヘッダH4へ流入した冷媒は、図3に示すように液相冷媒をほとんど含まないか、あるいは完全に気相状態(図示せず)となる。すなわち、湿り度は、ほぼゼロである。
【0035】
ここで、中間ヘッダH2の内部には仕切部材S2が設けられ、上側空間42aと下側空間42bとは完全に仕切られている。これにより、中間ヘッダH2に流入した気液混合状態の冷媒のうち仕切部材S2よりも上方を通流する冷媒は、液相冷媒が重力の影響を受けて中間ヘッダH2の内部を下方に移動したとしても、仕切部材S2よりも下方へ移動することがない。このため、中間ヘッダH2の上部に連結されて中間ヘッダH2からの冷媒が流入する上側第2チューブTa2について、通流する冷媒は、液相冷媒の割合が一定の程度確保される。すなわち、気相冷媒の割合が高くなることが抑制される。
【0036】
これと同様に、中間ヘッダH3の内部にも仕切部材S3が設けられ、上側空間43aと下側空間43bとが完全に仕切られている。そして、中間ヘッダH3に流入した気液混合状態の冷媒のうち仕切部材S3よりも上方を通流する冷媒は、液相冷媒が重力の影響を受けて中間ヘッダH3の内部を下方に移動したとしても、仕切部材S3よりも下方へ移動することがない。このため、中間ヘッダH3の上部に連結されて中間ヘッダH3からの冷媒が流入する上側第3チューブTa3について、通流する冷媒は、液相冷媒の割合が一定の程度確保される。すなわち、気相冷媒の割合が高くなることが抑制される。
【0037】
そして、中間ヘッダH2の下流側に連結される複数のチューブのうち上方のチューブ(上側第2チューブTa2)や、中間ヘッダH3の下流側に連結される複数のチューブのうち上方のチューブ(上側第3チューブTa3)における、バッテリセル21の冷却能力の低下を抑制して、バッテリ積層体20の温度分布の均一性を保つことができる。
【0038】
<実施例2>
次に、実施例2による冷却用熱交換器30Aを、図面に基づいて説明する。
【0039】
図4を参照する。実施例2による冷却用熱交換器30Aは、バッテリパックケース10Aの内部に配置されており、実施例1の冷却用熱交換器30と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0040】
冷却用熱交換器30Aは、バッテリ積層体20を冷却するもので、実施例1の冷却用熱交換器30に対する相違点は、絞り部材S1が流入ヘッダH1に設けられている点である。
【0041】
冷却用熱交換器30Aは、4本のヘッダHと、8本の熱交換チューブTと、流入部31と、流出部32と、仕切部材S2、S3と、絞り部材S1とを、ろう付けによって一体的に接合することが好ましい。これにより、高い剛性を確保することができる。
【0042】
流入ヘッダH1の内部は、絞り部材S1によって、上側空間41aと下側空間41bとに区分けされる。絞り部材S1は、絞り孔S1aが形成されている。絞り孔S1aの面積は、流入ヘッダH1の長手方向に直交する方向に沿った内部空間の断面積よりも小さい。流入ヘッダH1の内部は、絞り孔S1aによって、上側空間41aと下側空間41bとが区分けされつつも、連通されている。
【0043】
上側第1チューブTa1は、流入ヘッダH1の上側空間41aと中間ヘッダH2の上側空間42aとを連絡する。下側第1チューブTb1は、流入ヘッダH1の下側空間41bと中間ヘッダH2の下側空間42bとを連絡する。
【0044】
流入部31は、金属の管に円周状のフランジ部が設けられ、流入ヘッダH1に形成された穴部に挿入される。流入部31の下流端は、流入ヘッダH1の上側空間41aに開放している。
【0045】
冷却用熱交換器30Aについて、冷媒の流れを説明する。
【0046】
流入部31は、絞り部材S1よりも上方の位置で、流入ヘッダH1に取り付けられている。流入部31を通流した気液混合冷媒は、流入ヘッダH1の上側空間41aに流入する。相対的に比重の重い液相冷媒は重力の影響を受けて上側空間41aの下方に移動し、絞り部材S1の近傍に集合する。絞り部材S1に到達した冷媒は、一部が絞り孔S1aを通過して、下側空間41bに移動する。絞り孔S1aを通過しなかった冷媒は、上側第1チューブTa1に流入する。
【0047】
上側空間41aに流入した冷媒は、上側第1チューブTa1と絞り孔S1aのいずれかを通過して流出する。上側チューブTa1、Ta2、Ta3を通過する経路の通路抵抗(上側チューブの通路抵抗)は、下側チューブTb1、Tb2,Tb3を通過する経路の通路抵抗(下側チューブの通路抵抗)に対し、絞り部材S1が設けられたことで相対的に低下する。このため、上側チューブTa1、Ta2、Ta3を通過する冷媒の割合を増加することができる。そして、絞り孔S1aの面積を調整することにより、上側チューブTa1、Ta2、Ta3を通過する冷媒の割合を所望する程度に上昇して、上側チューブTa1、Ta2、Ta3と下側チューブTb1、Tb2,Tb3とにバランスよく冷媒を供給することができる。そして、冷却用熱交換器30Aの温度分布の均一化を図ることができる。
【0048】
<その他の実施例>
以上、実施例1および実施例2により冷却用熱交換器30、30Aを説明したが、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は実施例1および実施例2に限られるものではない。例えば、中間ヘッダの本数を2本として説明したが、中間ヘッダは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。中間ヘッダが1本のとき、上側第2チューブTa2および下側第2チューブTb2を通過した冷媒は、流出ヘッダ(H4)に直接的に流入する。中間ヘッダが2本以上のとき、上側第2チューブTa2および下側第2チューブTb2を通過した冷媒は、流出ヘッダ(H4)に間接的に流入する。
【0049】
また、冷却用熱交換器が中間ヘッダを2本以上備える場合、すべての中間ヘッダに仕切部材が備えられていることが好ましいが、本発明の冷却用熱交換器はそれ以外の形態も含む。その場合、2本の中間ヘッダを有する冷却用熱交換器において、最も上流側の中間ヘッダH2に仕切部材S2が備えられている構成が好ましい。複数の中間ヘッダのうち最も上流側の中間ヘッダH2に流入する冷媒は、下流側に配置される中間ヘッダH3に流入する冷媒よりも液相冷媒の比率が高く、液相冷媒が重力の影響を受けて下方に移動しやすい。ここで、最も上流側の中間ヘッダH2に仕切部材S2を設けることで、上側第2チューブTa2に流入する液相冷媒の比率の低下を効果的に抑制することができる。
【0050】
また、絞り部材S1に設けられる絞り孔S1aは、複数の孔が設けられていてもよい。絞り孔S1aの形状についても、円形や楕円形など、適宜選択される。
【0051】
また、冷却用熱交換器30、30A、30Bの姿勢は、ヘッダHが垂直に立設するよう態様に限定されるものではない。上側チューブTaが下側チューブTbより上方となるよう位置するようにしつつ、冷却用熱交換器30Bの全体をバッテリ積層体20に向けて傾斜するように配置してもよい。図5を参照する。冷却用熱交換器30Bは、バッテリパックケース10の底面10aに対し、ヘッダHの延伸軸HXが角度θを有するように立設されている。上側チューブTaと下側チューブTbとは、バッテリ積層体20の均熱層22と面接触している。このとき角度θは、バッテリ積層体20の形状および本発明の効果をふまえて、角度θは70度から110度の範囲内になるよう組み立てられることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のバッテリ冷却装置は、電気自動車やハイブリッド車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0053】
10…バッテリパックケース
10a…底面
20…バッテリ積層体
21…バッテリセル
22…均熱層
30、30A、30B…冷却用熱交換器
31…流入部
32…流出部
41…内部空間
41a…上側空間
42b…下側空間
42a…上側空間
42b…下側空間
43a…上側空間
43b…下側空間
44…内部空間
H…ヘッダ
H1…流入ヘッダ
H2…中間ヘッダ
H3…中間ヘッダ
H4…流出ヘッダ
T…熱交換チューブ
Ta1…上側第1チューブ
Ta2…上側第2チューブ
Ta3…上側第3チューブ
Tb1…下側第1チューブ
Tb2…下側第2チューブ
Tb3…下側第3チューブ
S1…絞り部材
S1a…絞り孔
S2…仕切部材
S3…仕切部材
θ…底面に対するヘッダの延伸軸の角度
図1
図2
図3
図4
図5