(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ツールホルダ用のクランピングデバイス
(51)【国際特許分類】
B23B 29/04 20060101AFI20240828BHJP
B23B 31/117 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B23B29/04 A
B23B31/117 601E
(21)【出願番号】P 2021573804
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2020065936
(87)【国際公開番号】W WO2020249550
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-10
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マトリック, グンナル
(72)【発明者】
【氏名】ワスタールンド, ヨナス
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-213402(JP,A)
【文献】特表平05-505349(JP,A)
【文献】特開2018-065229(JP,A)
【文献】特開2004-316918(JP,A)
【文献】特開2016-043478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/04
B23B 31/117
B23C 5/26
B23Q 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールホルダシャンクを解放可能に保持するためのクランピングデバイス(1)であって、
前端(3)と、後端(4)と、ボア(5)と、を有するハウジング(2)であって、前記ボア(5)が、前記前端に交差し、かつ前記前端から後方に伸長して、前記ボアの、前記前端にある載置部位において、前記ツールホルダシャンクを受容する、ハウジング(2)と、
その縦方向軸(L)に沿って、前記ボア(5)の内側に往復移動可能に載置されているドローバー(6)であって、前端にかみ合い手段(7)を含み、前記かみ合い手段(7)は、ロッキング位置になると、前記ツールホルダシャンクの端にて、かみ合いフォーメーションにてかみ合うよう適合されている、ドローバー(6)と、
前記ドローバー(6)を前記縦方向軸(L)に沿って変位させるためのアクチュエータ(8)と、
前記縦方向軸(L)に平行でないアクチュエータ軸(A)と、
前記縦方向軸(L)を含み、前記アクチュエータ軸(A)に平行な中心面(P)と、
を含むクランピングデバイス(1)であって、
前記クランピングデバイス(1)は、前記アクチュエータ軸(A)に沿って伸長するアパーチャを含み、
前記アパーチャは、
前記ハウジング(2)の内面の少なくとも一部によって含まれるアパーチャハウジング面(24)であって、前記後端(4)及び前記中心面(P)に向いているハウジングロッキング支持面(12)を含むアパーチャハウジング面(24)と、
前記アクチュエータ軸(A)に沿って前記ドローバー(6)の
表面を少なくとも部分的に横断して伸長するドローバー溝(25)であって、前記前端(3)に向いており、前記中心面(P)に背を向けている第1のロッキング受圧面(11)を含むドローバー溝(25)と、
により区切られ、
前記アクチュエータ(8)は、前記アパーチャ内に受容され、その中で前記アクチュエータ軸(A)に沿って移動可能であり、
前記アクチュエータは、
前記第1のロッキング受圧面(11)と接触するために、前記後端及び前記中心面(P)に向いている第1のロッキング加圧面(10)であって、前記アクチュエータ軸(A)に沿う第1の方向(D)に、前記アクチュエータ軸(A)に向かって傾斜している第1のロッキング加圧面(10)と、
前記ハウジングロッキング支持面(12)と接触するために、前記前端(3)に向いており、前記中心面(P)に背を向けているアクチュエータロッキング支持面(13)と、
を含み、
前記アクチュエータ及び前記アパーチャは、前記アクチュエータ(8)が、前記アパーチャを通して前記第1の方向(D)に移動する際に、前記第1のロッキング加圧面(10)が前記第1のロッキング受圧面(11)上をスライドしてこれを押し付け、前記アクチュエータロッキング支持面(13)が前記ハウジングロッキング支持面(12)上をスライドしてこれを押し付け、前記ドローバー(6)を、前記ボア(5)の内側において、後部に向けて変位させ、前記かみ合い手段(7)を前記ロッキング位置にするように配置されていることを特徴とする、
クランピングデバイス(1)。
【請求項2】
前記第1のロッキング受圧面に対する垂線は、前記中心面(P)に対する垂線に対して角度γを形成し、
55°≦γ≦75°である、
請求項1に記載のクランピングデバイス。
【請求項3】
前記アパーチャハウジング面は、前記アクチュエータ軸を横断する断面図にて、半円形状を有する、請求項1又は2に記載のクランピングデバイス。
【請求項4】
前記アクチュエータ軸は、前記縦方向軸に平行な線に鉛
直に伸長する、請求項1から3のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項5】
前記第1のロッキング加圧面は、前記アクチュエータ軸に沿う、前記第1のロッキング受圧面に対する垂線に平行な断面で見た際に、前記アクチュエータ軸に対してゼロでない角度αだけ傾斜している、請求項1から4のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項6】
前記角度αは、セルフロック閾値角度未満であり、
前記ドローバーが、前記ボアの内側を、後部に向かって変位していれば、前記アクチュエータが、前記ドローバーに関してセルフロッキング状態となり、前記かみ合い手段が前記ロッキング位置になる、
請求項
5に記載のクランピングデバイス。
【請求項7】
前記ドローバー溝は、前記前端に向いており、前記中心面(P)に背を向けて
おり、且つ前記第1のロッキング受圧面(11)に対して前記第1の方向(D)と反対側の方向側に位置している第2のロッキング受圧面(14)を含み、
前記アクチュエータは、前記第2のロッキング受圧面(14)と接触するために、前記後端及び前記中心面(P)に向いて
おり且つ前記第1のロッキング加圧面(10)に対して前記第1の方向(D)側に位置している第2のロッキング加圧面(15)を含み、
前記第2のロッキング加圧面は、前記第1の方向(D)に、前記アクチュエータ軸に向かって、前記第1のロッキング加圧面と比較して、より大きな傾斜角度にて傾斜している、
請求項1から6のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項8】
前記第2のロッキング加圧面は、前記アクチュエータ軸に沿う、前記第1のロッキング受圧面に対する垂線に平行な断面で見た際に、前記アクチュエータ軸(A)に対してゼロでない角度βだけ傾斜しており、
前記角度βは、前記角度αより大きく、
前記第1及び第2のロッキング加圧面並びに第1及び第2のロッキング受圧面のそれぞれは、連続して配置されており、前記アクチュエータ
が前記第1の方向(D)へ
移動する際に、前記第1のロッキング加圧面が前記第1のロッキング受圧面上をスライドしてこれを押し付ける前に、前記第2のロッキング加圧面が前記第2のロッキング受圧面上をスライドしてこれを押し付けるようになっている、
請求項5又は6のいずれか一項を引用する請求項7に記載のクランピングデバイス。
【請求項9】
前記アパーチャハウジング面は、前記前端及び前記中心面に向いているハウジング解放支持面(17)を含み、
前記ドローバー溝は、前記後端に向いており、かつ前記中心面に背を向けている第1の解放受圧面(16)を含み、
前記アクチュエータは、
前記第1の解放受圧面(16)と接触するために、前記前端及び前記中心面(P)に向いている第1の解放加圧面(18)であって、前記第1の方向
(D
)に、前記アクチュエータ軸から離れて傾斜している第1の解放加圧面(18)と、
前記ハウジング解放支持面と接触するために、前記後端に向いており、前記中心面に背を向けているアクチュエータ解放支持面(19)と、
を含み、
前記アクチュエータ及び前記アパーチャは、前記アクチュエータが、前記アパーチャを通して前記第1の方向(D)とは反対の方向に移動する際に、前記第1の解放加圧面が前記第1の解放受圧面上をスライドしてこれを押し付け、前記アクチュエータ解放支持面が前記ハウジング解放支持面上をスライドしてこれを押し付け、前記ドローバーを、前記ボアの内側において、前部に向けて変位させるように配置されている、
請求項1から8のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項10】
前記ドローバー溝は、前記後端に向いており、前記中心面(P)に背を向けて
おり、且つ前記第1の解放受圧面(16)に対して前記第1の方向(D)側に位置している第2の解放受圧面(20)を含み、
前記アクチュエータは、前記第2の解放受圧面(20)と接触するために、前記前端及び前記中心面(P)に向いて
おり、且つ前記第1の解放加圧面(18)に対して前記第1の方向(D)側に位置している第2の解放加圧面(21)を含み、
前記第2の解放加圧面は、前記第1の方向(D)に、前記アクチュエータ軸(A)から離れて、前記第1の解放加圧面と比較して、より大きな傾斜角度にて傾斜している、
請求項9に記載のクランピングデバイス。
【請求項11】
追加的アクチュエータを含み、
前記2つのアクチュエータは、前記ドローバーの向かい合う側上に置かれた2つの異なるアパーチャ内に受容され、
前記2つのアクチュエータ及びそれぞれの前記アパーチャのジオメトリは鏡像反転されている、
請求項1から10のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項12】
前記2つのアクチュエータは、前記アクチュエータ軸に平行な方向に関して互いに固定的に配置され、それらのそれぞれのアパーチャ内でのそれらの軸方向の移動が同期するようになっている、請求項11に記載のクランピングデバイス。
【請求項13】
前記ボアの、前記前端にある前記載置部位は、円錐状である、請求項1から12のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項14】
前記ボアの、前記前端にある前記載置部位は、非円形断面を有する、請求項1から
12のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールホルダ用のクランピングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
加工ツール及び金属切削の分野においては、切削ツール用のツールホルダを加工ツールに接続するために、クランピングメカニズムがしばしば使用される。多くのクランピングメカニズムは、ツールホルダをクランピング及び/又は解放するための、カムシャフトの作動などの手動操作を必要とする。例えば、クランピングメカニズムの状態を制御するために油圧ピストンが使用される、自動ツール交換プロセスに適合されているクランピングメカニズムもある。しかし、そのようなクランピングメカニズムは、通常、とてもかさばるものであり、多くのスペースを、特に、縦方向に必要とし、クランピングメカニズムのために利用可能な軸方向のスペースが限られている加工ツールのツールタレットでの使用に好適ではない。
【0003】
EP2987573は、比較的コンパクトなクランピングデバイスを開示する。ここでは、ドローバーにおけるアパーチャ内にカムシャフトが配置されており、このカムシャフトは、180°回転すると、ドローバーを変位させ、ツールホルダのクランピングをもたらす。しかし、このクランピングメカニズムは、手動での作動を必要とし、自動ツール交換のアプリケーションには好適ではない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の欠点を軽減し、自動ツール交換のアプリケーションに好適であり、加工ツールのツールタレットに関連する使用に好適な、ツールホルダ用のクランピングデバイスを提供することである。
【0005】
したがって、本発明は、ツールホルダシャンクを解放可能に保持するためのクランピングデバイスに関する。
クランピングデバイスは、
前端と、後端と、ボアと、を有するハウジングであって、該ボアが、前端に交差し、かつ前端から後方に伸長して、ボアの、前端にある載置部位において、ツールホルダシャンクを受容する、ハウジングと、
その縦方向軸に沿って、ボアの内側に往復移動可能に載置されているドローバーであって、前端にかみ合い手段を含み、かみ合い手段は、ロッキング位置になると、ツールホルダシャンクの端にて、かみ合いフォーメーションにてかみ合うよう適合されている、ドローバーと、
ドローバーを縦方向軸に沿って変位させるためのアクチュエータと、
縦方向軸に平行でないアクチュエータ軸と、
縦方向軸を含み、アクチュエータ軸に平行な中心面と、
を含む。
【0006】
クランピングデバイスは、アクチュエータ軸に沿って伸長するアパーチャを含む。
アパーチャは、
ハウジングの内面の少なくとも一部によって含まれるアパーチャハウジング面であって、後端及び中心面に向いているハウジングロッキング支持面を含むアパーチャハウジング面と、
アクチュエータ軸に沿ってドローバーの面を少なくとも部分的に横断して伸長するドローバー溝であって、前端に向いており、中心面に背を向けている第1のロッキング受圧面を含むドローバー溝と、
により区切られる。
【0007】
アクチュエータは、アパーチャ内に受容され、その中でアクチュエータ軸に沿って移動可能である。
アクチュエータは、
第1のロッキング受圧面と接触するために、後端及び中心面に向いている第1のロッキング加圧面であって、アクチュエータ軸に沿う第1の方向に、アクチュエータ軸に向かって傾斜している第1のロッキング加圧面と、
ハウジングロッキング支持面と接触するために、前端に向いており、中心面に背を向けているアクチュエータロッキング支持面と、
を含む。
【0008】
アクチュエータ及びアパーチャは、アクチュエータが、アパーチャを通して第1の方向に移動する際に、第1のロッキング加圧面が第1のロッキング受圧面上をスライドしてこれを押し付け、アクチュエータロッキング支持面がハウジングロッキング支持面上をスライドしてこれを押し付け、ドローバーを、ボアの内側において、後部に向けて変位させ、かみ合い手段をロッキング位置にするように配置されている。
【0009】
そのようなクランピングデバイスは、縦方向に非常にコンパクトにすることができる。なぜなら、ドローバーは、縦方向軸に平行でない(例えば、縦方向軸に平行な線を横断する)方向に導入された部材を介して作動するからである。さらに、アクチュエータを操作することは、アクチュエータ軸に沿うシンプルな直線運動により、つまり、カムシャフトの回転を必要とすることなく達成され得る。
【0010】
本出願を通しての説明及び特許請求の範囲では、「前方(forward)」又は「前(front)」という語が、クランピング中に、ツールホルダシャンクがそれを通して挿入される、ボアの外向き開口に向かう方向又は位置を示すために使用される。これに類似して、「後(rear)」又は「後方(rearward)」という語が、ボアのそのような外向き開口から離れる方向又は位置を示すために使用される。
【0011】
さらに、ここで使用するように、表面の向きを画定するために、例えば、ハウジングの中心面又は端に関して、「~に向いている(facing towards)」又は「~に背を向けている(facing away from)」という表現は、この表面が、例えば、少なくともある程度、各面又は端に向いている、又は、ここに背を向けている、ということを示す。したがって、この表現は、ハウジングの前端又は後端に関して使用する際に、表面が、ボアの縦方向軸に鉛直している構成のみをカバーするのではなく、表面に対する垂線が、縦方向軸に対して90°まで(この角度は含まない)の鋭角にて伸長する構成もカバーする。これに応じて、この表現は、中心面に関して使用する際に、表面に対する垂線が面を横断するいずれの構成もカバーする。
【0012】
第1のロッキング加圧面は、第1の方向に、アクチュエータ軸に向かって傾斜しているため、第1の方向へのアクチュエータの移動は、第1のロッキング加圧面により、ドローバーの第1のロッキング受圧面に圧力が加わることとなる。この圧力は、ボアの軸方向のコンポーネントを有し、ドローバーがそこにて軸方向に変位するようになる。
【0013】
第1のロッキング受圧面は、前端を向き、第1のロッキング加圧面のエクステンションに対応又は実質的に対応するエクステンションの方向を有してよい。一方で、ハウジングロッキング支持面は、後端を向き(アクチュエータロッキング支持面を向き)、アクチュエータロッキング支持面に対応するエクステンションを有してよい。これにより、それぞれの面間のスライディング接触が、アクチュエータの移動中に広いエリアわたって達成され、加えられた力が良好に分散するようになる。第1のロッキング加圧面及び第1のロッキング受圧面は、アクチュエータ軸に沿う、第1のロッキング受圧面に対する垂線に平行な断面で見た際に、線形又は実質的に線形なエクステンションを有してよい。しかし、これらの面のエクステンションは、全体的に互いに対応する必要はない。例えば、それぞれの面は、アクチュエータ軸に関して若干異なる傾斜角度を有してよい。別の例として、これらの面の1つ又は双方は、アクチュエータ軸に沿う、第1のロッキング受圧面に対する垂線に平行な断面で見た際に、若干曲がったエクステンションを有してよい。例えば、第1のロッキング受圧面は、このように見た際に、大きな曲率半径を持って若干曲がっていてよい。これにより、これらの面の縁上の過剰な圧力に対するリスクが減る。これらの面の長さに関して、曲率半径が大きい限り、第1のロッキング加圧面が第1のロッキング受圧面上をスライドしてこれを押し付ける際に、これらの面間の十分な接触面積が得られる。
【0014】
クランピングデバイスは、アクチュエータの変位をもたらすための、油圧ピストンなどのピストンといった、追加的コンポーネントを含んでよい。アクチュエータの位置を変えるための他の手段は、空圧に基づくものであってよい。結果として、クランピングデバイスの制御を、いずれの手動操作を必要とすることなく、容易に自動化できる。したがって、本開示に係るクランピングデバイスは、自動ツール交換のアプリケーションでの使用に好適である。しかし、アクチュエータは、手動操作を含む他の手段により、アクチュエータ軸に沿って変位し得ることもまた想定される。
【0015】
アクチュエータ軸に沿う第1の方向は、アパーチャを通る内向きの方向であってよい。
【0016】
アパーチャハウジング面は、ハウジングロッキング支持面を含む。いくつかの実施形態によると、アクチュエータがアパーチャに完全に挿入されると、アパーチャは、アクチュエータの外面を全体的に包み込む。したがって、アパーチャハウジング面は、アクチュエータの外周の主たる部分に沿って、アクチュエータにサポートを提供する、連続して途切れのない滑らかな面であってよい。しかし、アパーチャハウジング面が、ハウジングの周壁における開口などの不規則性を含み、完全に連続する一定の面である必要がないこともまた想定される。
【0017】
第1のロッキング受圧面は、中心面に背を向けている、つまり、ハウジングロッキング支持面に向いている。ハウジングロッキング支持面は、第1のロッキング受圧面上に有効となった圧力により引き起こされる反力にさらされる。第1のロッキング受圧面及び第1のロッキング加圧面は、アクチュエータ軸に沿う各横断断面図にて、第1のロッキング受圧面に対する垂線が、第1のロッキング受圧面と第1のロッキング加圧面との間の接触の長さの中心からハウジングロッキング支持面まで伸長し、アクチュエータ軸(つまり、アクチュエータの軸心)を通過するよう構成されてよい。換言すると、これらの面の幅及び傾斜は、第1のロッキング受圧面上に加えられた力により引き起こされる反力が、アクチュエータ軸を通って向けられるよう選択されてよい。これにより、アクチュエータ上のいずれの望んでいないトルクが回避される。そのような構成は、第1のロッキング受圧面及び/又は第1のロッキング加圧面のテーパ形状をもたらし得る。これは、これらの面が、また、アクチュエータ軸に向かって傾斜しているためでもある。
【0018】
第1のロッキング受圧面に対する垂線は、中心面に対する垂線に対する角度γを形成する。角度γは、0°と90°との間にある。小さい角度γは効果がなく、実際に良好に機能しない場合がある。一方、過剰に大きい角度γは、ハウジングロッキング支持面上に作用する反力が、アパーチャハウジング面の縁に非常に近い設計をもたらし得、これは好ましくない場合がある。さらに、大きな角度γは、第1のロッキング加圧面に使用できる幅を狭め、力分布に悪影響を与える。なぜなら、接触面積が狭くなり、大きな表面圧力を引き起こすからである。角度γは、45°と85°との間であってよい。いくつかの実施形態によると、角度γは、55°と75°との間、例えば、65°と70°との間である。
【0019】
アパーチャハウジング面は、アクチュエータ軸を横断する断面図にて、半円形状を有してよい。したがって、その中心からアクチュエータ軸を通って伸長する、第1のロッキング受圧面に対する垂線は、また、アクチュエータ軸を横断する断面で見た際に、ハウジングロッキング支持面に鉛直する。これにより、いずれの望んでいないトルク又は他の悪影響が回避される。
【0020】
半円形状の代替として、アパーチャハウジング面は、複数の平らなサブ面を含んでよい。これは、ハウジングロッキング支持面が、アクチュエータ軸を横断する断面で見た際に、この面上に作用する力に鉛直又は実質的に鉛直する場合に有益となり得る。したがって、アパーチャハウジング面のサブ面は、ハウジングロッキング支持面に対応する平らなサブ面が、アクチュエータ軸を横断する断面で見た際に、第1のロッキング受圧面と同じ傾斜を有するよう構成されてよい。
【0021】
アクチュエータ軸は、縦方向軸に平行でない。したがって、クランピングデバイスを、中心面に鉛直する図に見た際に、アクチュエータ軸は、縦方向軸と同じ方向には伸長しない。それどころか、アクチュエータ軸は、縦方向軸に平行な線に対してゼロでない角度にて伸長し、アクチュエータ軸がそのような線を横断するようになる。いくつかの実施形態によると、アクチュエータ軸は、縦方向軸に平行な線に鉛直又は実質的に鉛直に伸長する。
【0022】
第1のロッキング加圧面は、アクチュエータ軸に沿う、第1のロッキング受圧面に対する垂線に平行な断面で見た際に、アクチュエータ軸に対してゼロでない角度αだけ傾斜してよい。第1のロッキング受圧面は、また、この図では、アクチュエータ軸に対して角度αだけ、対応して傾斜する、線形又は実質的に線形なエクステンションを有してよい。代替的に、一般的に同じ方向に伸長するが、第1のロッキング受圧面は、線形のエクステンションを有する代わりに、この図では、例えば、凸状に曲がるなど、若干曲がっていてよい。
【0023】
角度αは、セルフロック閾値角度未満であり、ドローバーが、ボアの内側を、後部に向かって変位していれば、アクチュエータが、ドローバーに関してセルフロッキング状態となり、かみ合い手段がロッキング位置になるようになっていてよい。セルフロッキング状態を得るためには、角度αは十分に小さく、つまり、セルフロッキング閾値角度未満でなければならない。セルフロッキング状態とは、アクチュエータとアパーチャとの間の静止摩擦力が、ドローバー溝における第1のロッキング受圧面とアクチュエータ上の第1のロッキング加圧面との間の静止摩擦力を含み、アクチュエータに対して縦方向軸に沿って加えられた力によって引き起こされる、摩擦面において対向する力より大きい状態を指す。したがって、セルフロッキング状態は、ドローバー溝の第1のロッキング受圧面とアクチュエータの第1のロッキング加圧面との間の摩擦係数に依存する角度範囲内にて得られる。この摩擦係数は、使用されている材料、表面上のコーティング、潤滑材の使用などの各種のパラメータに依存してよい。したがって、セルフロック閾値角度は、これらのパラメータのいくつか又はすべてに依存する。当業者であれば、共通する一般的な知識及び/又は通常の実験を使用することによる、特定のアプリケーションに適用されるセルフロック閾値角度を特定可能となる、又は、特定の角度がそのようなセルフロック閾値角度未満であるか否かを少なくとも予想又は算定可能となるであろう。一般的に、セルフロッキング構成を確かなものとするために、セルフロック閾値角度を十分に下回る角度αを選ぶことが好ましい。小さい角度αを使用することのさらなる利点は、力増幅効果が達成されることである。ここでは、アクチュエータ軸に沿う第1の方向へのアクチュエータの比較的大きな変位が、縦方向軸に沿うドローバーの比較的小さい変位をもたらす。しかし、小さすぎる角度αは効果がなく、実際に良好に機能しない場合がある。例えば、非常に小さい角度αの結果として、クランピングデバイスが、クランプされた状態にて固着し、アクチュエータを解放することが難しくなる場合がある。いくつかの実施形態によると、角度αは、2°と12°との間であってよい。そのような範囲では、セルフロッキング構成及び適切な力増幅効果の双方が達成され得る。例えば、角度αは、3°と8°との間、例えば、5°、又は約5°であってよい。
【0024】
ドローバー溝は、前端に向いており、中心面に背を向けている第2のロッキング受圧面を含んでよい。アクチュエータは、第2のロッキング受圧面と接触するために、後端及び中心面に向いている第2のロッキング加圧面を含んでよい。第2のロッキング加圧面は、第1の方向に、アクチュエータ軸に向かって、第1のロッキング加圧面と比較して、より大きな傾斜角度にて傾斜している。
【0025】
複数のロッキング加圧面及び対応するロッキング受圧面を使用する場合、クランピングメカニズムは、ドローバーの必要な運動及び良好な力増幅効果の双方を容易に達成できるよう設計できる。第2の加圧面は、アクチュエータ軸に沿う、第1のロッキング受圧面に対する垂線に平行な断面で見た際に、アクチュエータ軸に対してゼロでない角度βだけ傾斜してよい。角度βは、角度αより大きい。第1及び第2の面のそれぞれは、連続して配置されており、アクチュエータの第1の方向への移動後、第1のロッキング加圧面が第1のロッキング受圧面上をスライドしてこれを押し付ける前に、第2のロッキング加圧面が第2のロッキング受圧面上をスライドしてこれを押し付けるようになっている。
【0026】
これにより、ドローバーは、より大きな角度βを使用することによるクランピングの初期フェーズ中、迅速に変位する、又は移送され得る。この初期クランピングフェーズは、大きな力を必要としない。しかし、クランピングの最終フェーズ中、ドローバーを短い距離だけ変位させるために、大きな力が必要とされる。したがって、実際のクランピングが生じると、つまり、かみ合い手段がロッキング位置となると、より小さい角度αが使用され、ドローバーの変位が、アクチュエータのアクチュエータ軸に沿う変位と比較して少なくなり、「パワーブースト」とも呼ばれる力増幅効果をもたらす。いくつかの実施形態によると、角度βは、10°と60°との間にあり、ドローバーの効率の良い初期変位を提供してよい。例えば、角度βは、15°と25°との間、例えば、17°、又は約17°であってよい。
【0027】
それぞれの面は、アクチュエータが第1の方向に移動しており、第2のロッキング加圧面が第2のロッキング受圧面を通過しており、第1のロッキング加圧面が第1のロッキング受圧面に到達していると、つまり、それらそれぞれの面間の遷移にて、つまり、ツールホルダシャンクが、載置部位のこれらの面に対してしっかりとした支持となって引き込まれる前に、ドローバーが、完全にではないが、ボアの後端での、その最終目的地にほぼ到達するよう配置されてよい。これは、第1のロッキング加圧面が、最終クランピングが生じる前に、第1のロッキング受圧面上においていくらかの距離をスライドすると、クランピングの最終フェーズにおいて圧力が上がる際に、それらの面間に十分な接触面積があるようになることが有益となり得るためである。
【0028】
ドローバーの初期変位にきつい角度を使用し、実際のクランピングに小さい角度を使用することにより、アクチュエータを、比較的短くし、クランピングデバイスをコンパクトにできる一方で、力増幅効果の高いセルフロッキングクランピングメカニズムを依然として提供する。
【0029】
第1及び第2のロッキング加圧面と第1及び第2のロッキング受圧面との間のそれぞれの遷移は、丸まったように滑らかであり、第2の面から第1の面への遷移中にも、加圧面と受圧面とのそれぞれの間に十分な接触面積があるようになっていてよい。
【0030】
アクチュエータは、アクチュエータ軸に関する回転方向に少なくともある程度だけ移動可能となるように配置されてよい。これにより、アクチュエータは、いくらかの少ない程度だけ、アクチュエータ軸を中心として変位可能である。その結果として、アクチュエータは、アパーチャ内のその位置を、ドローバー溝及びアパーチャハウジング面に関して適合させ、すべての接触面が、クランピングデバイスの使用中に互いにしっかりと接触しているようになることにより、1つ又はそれ以上のコンポーネントの幾何学的偏差又は不具合を自動的に補償できるようになる。
【0031】
アパーチャハウジング面は、前端及び中心面に向いているハウジング解放支持面をさらに含んでよい。ドローバー溝は、後端に向いており、中心面に背を向けている第1の解放受圧面をさらに含んでよい。
これに応じて、アクチュエータは、
第1の解放受圧面と接触するために、前端及び中心面に向いている第1の解放加圧面であって、第1の方向に、アクチュエータ軸から離れて傾斜している第1の解放加圧面と、
ハウジング解放支持面と接触するために、後端に向いており、中心面に背を向けているアクチュエータ解放支持面と、
をさらに含んでよい。
【0032】
アクチュエータ及びアパーチャは、アクチュエータが、アパーチャを通して第1の方向とは反対の方向に移動する際に、第1の解放加圧面が第1の解放受圧面上をスライドしてこれを押し付け、アクチュエータ解放支持面がハウジング解放支持面上をスライドしてこれを押し付け、ドローバーを、ボアの内側において、前部に向けて変位させるよう配置されてよい。
【0033】
これにより、アクチュエータを第1の方向とは反対の方向に単に移動させることにより、クランピングを解放することができる。
【0034】
ドローバー溝は、後端に向いており、中心面に背を向けている第2の解放受圧面を含んでよい。アクチュエータは、第2の解放受圧面と接触するために、前端及び中心面に向いている第2の解放加圧面を含んでよい。第2の解放加圧面は、第1の方向に、アクチュエータ軸から離れて、第1の解放加圧面と比較して、より大きな傾斜角度にて傾斜してよい。
【0035】
第1及び第2の解放面のそれぞれは、アクチュエータの第1の方向とは反対の方向への移動後、第2の解放加圧面が第2の解放受圧面上をスライドしてこれを押し付ける前に、第1の解放加圧面が第1の解放受圧面上をスライドしてこれを押し付けるよう連続して配置されてよい。
【0036】
クランピングデバイスは、追加的アクチュエータを含んでよい。2つのアクチュエータは、ドローバーの向かい合う側上に置かれた2つの異なるアパーチャ内に受容される。2つのアクチュエータ及びそれぞれのアパーチャのジオメトリは鏡像反転されている。
【0037】
これにより、力の分布が良好な、バランスのよい、対称的なクランピングデバイスが得られる。ここでは、いずれの望ましくない曲げモーメント又は他の望んでいない影響が回避される。
【0038】
2つのアクチュエータは、アクチュエータ軸に平行な方向に関して互いに固定的に配置され、それらのそれぞれのアパーチャ内でのそれらの軸方向の移動が同期するようになってよい。これにより、アクチュエータの同期制御が簡略化される。一例として、それらの同期している移動をもたらすために、単一の油圧ピストンが、アクチュエータの双方に配置されてよい。しかし、これは、アクチュエータが、互いに独立して、それらのアクチュエータ軸のそれぞれを中心として、少なくともある程度回転移動可能であるよう接続される場合に有益となり得る。
【0039】
ボアの、前端にある載置部位は、円錐状であってよく、非円形断面を有してもよい。円錐形状は、半径方向、同様に、軸方向への、遊びのない接続を確保し、一方、(例えば、「三角形」状又は多角形状を持つ)非円形断面は、マウンティングボアに関しての、マウンティングシャンクの回転不可能な固定を確保する。
【0040】
本発明が、特許請求の範囲内での、多くの様々な方法を用いての変形及び変更が可能であることが明白である。例えば、以下に説明して示す、本発明の例示的実施形態では、クランピングデバイスのマウンティングボアは、円錐状に形成されており、同様に形成されたマウンティングシャンクを有するツールホルダをクランピングするために、断面においていくらかの「三角形」状又は多角形状を持つ。しかし、マウンティングボアは、他のタイプのマウンティングシャンクをクランピングするために、異なる形状をも有し得る。
【0041】
以下では、例示的な実施形態を、以下の添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、ツールタレット用のクランピングデバイスの分解組立図である。
【
図2】
図2は、クランプされた状態でのクランピングデバイスの側面図である。ここでは、ハウジングは、例えば、ドローバー及びアクチュエータを見せるよう、クランピングデバイスの中心面に沿う断面に示す。
【
図3】
図3は、クランプされた状態での、クランピングデバイスとツールホルダとを、
図2に示すような断面図に示す。
【
図4】
図4は、クランプされた状態でのクランピングデバイスの一部を、
図3に示すような断面図に示す。
【
図5】
図5は、クランプされた状態でのクランピングデバイスの一部を、
図3に示すような断面図示す。
【
図6】
図6は、
図3の断面図に見られるような、アクチュエータの拡大図である。
【
図7】
図7は、ドローバー及びアクチュエータの等角図である。
【
図8-9】
図8から
図9は、ドローバー及びアクチュエータの1つの、互いに離れている、異なる視点からの2つの等角図である。
【
図10a】
図10aは、クランプされない状態でのクランピングデバイスを示す。ここでは、アクチュエータは、アパーチャを通って外向きに移動している。ハウジング及びツールホルダは、中心面に沿う断面図に示す。一方で、アクチュエータは、アクチュエータ軸を通り、中心面に平行な断面図に示し、ドローバーは、例えば、ドローバー溝を見せるよう、側面図に示す。
【
図10b】
図10bは、
図10aに対応する図であるが、クランピングデバイスは、クランプされた状態に示し、ここでは、アクチュエータは、アパーチャを通って内向きに移動している。
【0043】
すべての図は模式的であり、必ずしも原寸ではなく、実施形態のそれぞれを明らかにするために、一般的に必要な構成要素のみを示す一方で、他の構成要素が省略されていたり、単に提案されていたりする場合がある。特に示さない限りは、異なる図面において、同様の参照番号は同様の構成要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、クランピングデバイス1の分解組立図であり、ツールホルダ30(模式的にのみ示す)と、クランピングデバイスが載置されるツールタレット部材28と、もまた示す。クランピングデバイスは、2つのアクチュエータ8、8’と、ハウジング2と、を含む。ハウジング2は、前端3と、後端4と、ドローバー6が配置されるボア5と、を有する。さらに、クランピングデバイスは、クランピングメカニズムを含む。クランピングメカニズムは、かみ合いセグメント7の形態でのかみ合い手段と、リテーナリング39と、圧縮スプリング36と、を含む。ツールホルダ30は、ボアの載置部位32内にクランプされるツールホルダシャンク33を含む。この実施形態では、載置部位32は、ハウジング2の前端にあるボア5に配置されたスリーブ29に含まれる。封止リング43は、スリーブ29とハウジング2の内面との間に配置されている。クランピングデバイスは、アクチュエータ8、8’に接続された油圧ピストン27をさらに含む。ピストン27の移動をもたらすために、ツールタレット部材28における開口を介して、作動油が導入され得る。
図1に見られるように、クランピングデバイスは、クランピングデバイスの異なる部品を組み立て、クランピングデバイスをツールタレット部材28に載置するために、封止エレメント及びスクリュなどの追加的コンポーネントを含む。
【0045】
図2は、ツールホルダ30を保持する、クランプされた状態でのクランピングデバイス1の側面図である。ここでは、ハウジング2は、例えば、ドローバー6及びアクチュエータ8を見せるよう、クランピングデバイスの中心面P(
図3に示す)に沿う断面に示す。アクチュエータは、アクチュエータ軸Aに沿って伸長する。ドローバー6は、縦方向軸Lに沿ってボア5内を伸長する。
【0046】
図3は、クランピングデバイス1及びツールホルダ30を、
図2に示すような断面図、つまり、縦方向軸に沿って、中心面Pに鉛直する断面図に示す。
【0047】
ツールホルダ30には、マウンティングシャンク33が提供されている。これは、ここに示す実施形態では、US5340248に開示する種類のものであり、軸方向のボアを有する円錐状シャンクを含む。このシャンクは、いくらかの「三角形」又は多角形の非円形断面を有し、対応する形状の載置部位32内に引き込まれるよう適合されている。この実施形態によると、後述するクランピングデバイスの接続メカニズムは、ボア5内にすべて配置されている、かみ合いセグメント7と、圧縮スプリング36と、リテーナリング39と、弾性Oリング38と、を含む。
【0048】
アクチュエータ8、8’はそれぞれ、ドローバー溝25とアパーチャハウジング面24とにより区切られたアパーチャ内に配置されている。
【0049】
図4は、クランプされた状態でのクランピングデバイスの一部を、
図3に示すような断面図、つまり、アクチュエータ軸Aに沿う、第1のロッキング受圧面11に対する垂線に平行な断面に示す。この図に見られるように、アクチュエータ8は、第1のロッキング加圧面10と、第2のロッキング加圧面15と、アクチュエータロッキング支持面13と、を含む。ハウジング2におけるアパーチャハウジング面は、ハウジングロッキング支持面12を含む。ドローバー6におけるドローバー溝は、第1のロッキング受圧面11と、第2のロッキング受圧面14と、を含む。この図では、第1及び第2のロッキング加圧面10、15は、それぞれ、アクチュエータ軸に対して角度α及びβだけ傾斜している。この実施形態では、角度αは約5°であり、角度βは約17°である。第1及び第2のロッキング受圧面11、14のそれぞれは、この図では、対応する第1及び第2のロッキング加圧面10、15のエクステンションに実質的に一致するエクステンション全体の方向を有する。しかし、第1のロッキング受圧面11は、第1のロッキング加圧面とは対照的に、これらの面のエクステンションと比較して大きい曲率半径Rにて若干凸状に曲がっている。アクチュエータ8は、アクチュエータ軸Aに沿って方向Dに変位することにより、
図4に示す位置に到達している。
【0050】
図5は、クランプされた状態でのクランピングデバイスの一部を、
図3に示すような断面図、つまり、アクチュエータ軸Aに沿う、第2の解放受圧面20に対する垂線に平行な断面に示す。この図に見られるように、アクチュエータ8は、第1の解放加圧面18と、第2の解放加圧面21と、アクチュエータ解放支持面19と、を含む。ハウジング2におけるアパーチャハウジング面は、ハウジング解放支持面17を含む。ドローバー6におけるドローバー溝は、第1の解放受圧面16と、第2の解放受圧面20と、を含む。この図では、第1及び第2の解放加圧面18、21は、アクチュエータ軸(A)から傾斜している。第2の解放加圧面21は、第1の解放加圧面18と比較して、より大きい傾斜角度だけ傾斜している。第1及び第2の解放受圧面16、20のそれぞれは、この図では、対応する第1及び第2の解放加圧面18、21のエクステンションと実質的に一致するエクステンション全体の方向を有する。
【0051】
図6は、
図3の断面図に見られるような、アクチュエータの拡大図である。アクチュエータ8がここに示す位置にあると、この断面は、アクチュエータの第1のロッキング加圧面10及び第1の解放加圧面18を通して、同様に、ドローバー溝における第1のロッキング受圧面11及び第2の解放受圧面20を通して伸長する。
図6に見られるように、アパーチャハウジング面24は、断面図において半円形状である。その結果として、ハウジングロッキング支持面12及びハウジング解放支持面19は、円弧の断面形状を有する。アクチュエータロッキング支持面13及びアクチュエータ解放支持面19は、対応した形状となっている。
【0052】
第1のロッキング加圧面10及び第1のロッキング受圧面11は、第1のロッキング受圧面11に対する垂線が、中心面Pに対する垂線に対して角度γを形成するよう傾斜している。この実施形態では、角度γは約67.5°である。この傾斜により、第1のロッキング受圧面11は、中心面に背を向けている、つまり、ハウジングロッキング支持面12に向いている。第1のロッキング受圧面11及び第1のロッキング加圧面10の幅及び傾斜は、第1のロッキング受圧面11上に有効となった力により引き起こされる反力が、アクチュエータ軸を通って、つまり、アクチュエータの軸心を通って向けられるよう選択される。
【0053】
図7は、ドローバー6及びアクチュエータ8、8’の等角図である。
【0054】
図8から
図9は、ドローバー6及びアクチュエータの1つであるアクチュエータ8’の異なる視点からの2つの等角図である。ドローバー6及びアクチュエータ8’は、互いに離れて描かれている。これらの図は、アクチュエータ上の第1及び第2のロッキング及び解放加圧面10、15、18、21と、ドローバー溝25における第1及び第2のロッキング及び解放受圧面11、14、16、20と、の構成をさらに明確にする。
【0055】
図10aは、クランプされない状態でのクランピングデバイス1を示す。ここでは、ハウジング2及びツールホルダ30は、中心面Pに沿う断面図に示す。一方で、アクチュエータ8は、アクチュエータ軸Aを通り、中心面Pに平行な断面図に示し、ドローバー6は、例えば、ドローバー溝25を見せるよう、側面図に示す。
図10bは、
図10aに対応する図であるが、クランピングデバイス1を、クランプされた状態に示す。
【0056】
以下では、クランピングデバイス1の機能を説明する。
【0057】
図10aのクランピングデバイス1は初期状態にあり、ツールホルダ30は、クランピングデバイス1からアンロックされている。クランピングメカニズムの詳細を示す
図3も参照して、
図10aに見られるように、かみ合いセグメント7が、ドローバー6のネック部位42周囲の、ネック部位と、ツールホルダ30のマウンティングシャンク33内のかみ合いボアの内面と、の間に形成された空間内に載置されている。かみ合いセグメント7は、リテーナリング39の内側の内溝とかみ合っているかみ合いセグメントのそれぞれの、外方向に伸長するフランジ部位45と、かみ合いセグメントの後端における外向き溝フォーメーション内に位置する弾性Oリング38と、を用いて保持されている。かみ合いセグメントの前端には、外を向くかみ合いフランジ46が形成されており、これらのフランジは、ツールホルダのかみ合いボアの内側のかみ合い溝47とかみ合うよう適合されているが、
図10aに示すこの初期状態では、かみ合い溝とはかみ合っていない。さらに、圧縮スプリング36は、ドローバーのフランジとリテーナリング39との間に載置されており、かみ合いセグメント7を、スリーブ29の後面に対して前方向に付勢する。このアンロックされた状態に到達するために、アクチュエータ8は、アクチュエータ軸に沿って、第1の方向とは反対の方向Dに移動している。したがって、アクチュエータ8が、
図10bに示すように、ロックされた状態に対応するスターティング位置から、第1の方向Dとは反対の方向に、外向きに移動すると、アクチュエータ8の第1の解放加圧面18は、ドローバー溝25における第1の解放受圧面16上をスライドしてこれを押し付ける。これにより、ドローバー6は、ボア5内において前部に向かって変位する。続いて、第1の解放加圧面18が第1の解放受圧面16を通過してさらにスライドし、アクチュエータが、アパーチャを通って外向きにさらに移動すると、第2の解放加圧面21が第2の解放受圧面20上をスライドしてこれを押し付け、かみ合いセグメント7がロックされた位置を離れ、ツールホルダシャンク33を載置部位32から外に押し出すために必要な、ドローバーの最後の変位をもたらす。
【0058】
ここで、
図3と組み合わせて、
図10bを参照する。ここでは、クランピングデバイスは、ロックされた状態又はクランプされた状態にあり、ここでは、マウンティングシャンク33が、接続メカニズムを用いてクランピングデバイス1に接続されており、ドローバー6を用いて、スリーブ29の載置部位32内に、大きな力で引き込まれており、しっかりとかみ合っている。
【0059】
これは、アクチュエータを、第1の方向D、つまり、アパーチャを通して内向きに移動させ、ドローバー6を後方向に変位させることにより達成される。これを、以下に、さらに詳細に説明する。
図3からわかるように、リテーナリング39及びかみ合いセグメント7は依然として、圧縮スプリング36を用いて、前方に、スリーブ29の後面に向かって押されている一方で、ドローバー6が、アクチュエータ8を用いて後方に引き込まれている。これは、かみ合いセグメント7が、ドローヘッド41に関して外方向に変位し、それらの前端が、ドローヘッド41の後向き傾斜面49上をスライドする効果を有する。このようにして、かみ合いセグメント7の前端上のかみ合いフランジ46が外方向に変位してロッキング位置となり、ツールホルダのかみ合いボアの内側のかみ合い溝47とかみ合い、ツールホルダシャンク33が、ドローバー6を用いて引き込まれ、スリーブ29内の載置部位32の表面に対して、しっかりと支持される。
【0060】
アクチュエータ8が、
図10aに示すように、アンロックされた状態に対応するスターティング位置から、方向Dに、内向きに移動すると、アクチュエータ8の第2のロッキング加圧面15は、ドローバー溝25における第2のロッキング受圧面14上をスライドしてこれを押し付ける。これにより、ドローバー6は、ボア5内において後部に向かって変位する。第2の加圧及び受圧面15、14の(
図4に示す)比較的きつい傾斜βにより、ドローバーは、初期的に、後部に向かって非常に迅速に変位する。ドローバー6の初期変位は、大きな力を必要としないため、この比較的きつい角度βは、使用に好適である。
【0061】
第1及び第2のロッキング加圧及び受圧面10、15、11、14は、アクチュエータが第1の方向Dに移動しており、第2のロッキング加圧面15が第2のロッキング受圧面14を通過しており、第1のロッキング加圧面10が第1のロッキング受圧面11に到達していると、つまり、それらそれぞれの面間の遷移にて、ドローバー6が、ボア5の後端での、その最終目的地にほぼ到達するよう配置されている。したがって、大きな力が好適である最終クランピングフェーズについて、第1のロッキング加圧及び受圧面10、11が有効となっている。このフェーズでは、アクチュエータの比較的大きな移動は、ドローバー6の非常に小さい変位をもたらし、したがって、力増幅効果を提供する。さらに、第1の加圧面10の(
図4に示す)小さい傾斜αは、セルフロッキング効果を提供する。ここでは、クランピングデバイスは、いずれの追加的手段を必要とすることなく、クランプされた状態のままとなる。