(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ティッシュマシンにおけるヤンキーシリンダのための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
D21F 5/02 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
D21F5/02
(21)【出願番号】P 2021577131
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 SE2020050607
(87)【国際公開番号】W WO2020263157
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-01-05
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513102187
【氏名又は名称】バルメット、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】VALMET AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】ミーケル、ビジャーク
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0170302(US,A1)
【文献】特開2010-077590(JP,A)
【文献】特開2017-025439(JP,A)
【文献】特開2014-084533(JP,A)
【文献】特開平04-316109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤンキーシリンダ上へのティッシュウェブの転写位置(TP)の前の前記ヤンキーシリンダの表面上の性能向上材料(PEM)の水溶液を含有するコーティングの塗布の効果を改善する方法であって、
(a)乾燥およびクレープ加工された前記ティッシュウェブ(W)を剥離位置(TO)で前記ヤンキーシリンダ(CR)から剥離するステップと、
(b)低水分空気源から低水分空気を供給することによって、前記ヤンキーシリンダ上への前記ティッシュウェブの前記剥離位置(TO)と前記転写位置(TP)との間の領域内に少なくとも1つの水分制御環境を確立するステップと、
(c)前記水分制御環境が、いかなる水分制御環境も有することなくこの環境内で確立される湿度よりも少なくとも20パーセント低い湿度を確立するステップと、
(d)前記ヤンキーシリンダ上に塗布された前記性能向上材料
を、前記水分制御環境を通過させることによって
、前記性能向上材料の層の表面を冷却するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
第1の冷却剤が前記水分制御環境に添加され、前記第1の冷却剤は空気である、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の冷却剤が、前記ヤンキーシリンダの全幅にわたって連続的に散布される、ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却剤が、前記ヤンキーシリンダの全幅にわたって配置されたスロット(S)または複数のノズル(12n)を使用して前記ヤンキーシリンダの全幅(W
W)にわたって散布される、ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各スロッ
ト(S)
のギャップまたはノズル(12n)が調整可能である、ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水分制御環境が、前記水分制御環境の少なくとも3つの側で遮蔽され、前記水分制御環境が、前記ヤンキーシリンダ(CR)の露出した外側円筒面に向かって開口している、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用される第2の冷却剤が、前記ヤンキーシリンダの外側円筒面に塗布される液体冷却剤であり、この液体冷却剤は、前記水分制御環境の前に前記ヤンキーシリンダの前記外側円筒面上に塗布された後に前記水分制御環境内で蒸発する、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水分制御環境の少なくとも2つの異なるゾーン内の前記水分制御環境において少なくとも2つの異なる冷却剤が使用される、ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
目標温度に到達するために前記水分制御環境および前記冷却剤供給が制御された後に、前記ヤンキーシリンダの前記表面上の温度が測定される、ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ヤンキーシリンダ上へのティッシュウェブの転写位置(TP)の前の前記ヤンキーシリンダの表面上の性能向上材料(PEM)を含有するコーティングの塗布の効果を改善するシステムであって、
(a)乾燥およびクレープ加工された前記ウェブ(W)を剥離位置(TO)で前記ヤンキーシリンダ(CR)から剥離するドクターブレード(10)と、
(b)前記剥離位置の後に配置された前記ヤンキーシリンダ上への前記性能向上材料(PEM)の塗布位置と、
(c)低水分空気源から低水分空気を供給することによって、前記ヤンキーシリンダ上への前記ティッシュウェブの前記剥離位置(TO)と前記転写位置(TP)との間の領域内に少なくとも1つの水分制御環境を配置することと、
(d)前記水分制御環境が、いかなる水分制御環境も有することなくこの環境内に確立された湿度よりも少なくとも20パーセント低い湿度を確立することと、
(e)前記ヤンキーシリンダ上に塗布された前記性能向上材料
を、前記水分制御環境を通過させることによって、
前記性能向上材
料の層の表面を冷却することと、
を備えるシステム。
【請求項11】
前記低水分空気源(Air
1、Air
2)が、前記ヤンキーシリンダの機械室から取り込まれた空気、または前記ヤンキーシリンダの前記機械室から外部に取り出された空気である、ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記冷却剤(Cool
1、Cool
2、Air
1、Air
2)が、散布ブーム(12/20)によって前記ヤンキーシリンダ(CR)の全幅(W
W)にわたって連続的に散布され、この際、前記散布ブーム(12)上で前記ヤンキーシリンダの全幅にわたって配置された複数のノズル(12n)また
はスロット(S)を使用する、ことを特徴とする、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
各ノズル(12n)またはスロット
のギャップが、目標温度に到達するために、制御システム(CPU、V
1、12
c)によって調整可能である、ことを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記水分制御環境が、少なくとも1つの遮蔽壁(13a/13b)を使用して、前記ヤンキーシリンダ上への前記性能向上材料(PEM)の前記塗布位置(TP)から遮蔽され、前記遮蔽壁(13a/13b)の一端をヤンキーシリンダの表面の近くに短距離(d)で配置し、前記遮蔽壁の他端をクレープロールから5センチメートルを超える遠距離(d)で配置した、ことを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記水分制御環境が、遮蔽壁(13a/13b)によって前記水分制御環境の少なくとも3つの側で遮蔽され、前記水分制御環境が、前記ヤンキーシリンダ(CR)の露出した外側円筒面に向かって開口している、ことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
第2の冷却剤源(Cool
1、Cool
2)が、前記ヤンキーシリンダ上への前記性能向上材料(PEM)の前記塗布位置(TP)の前の前記ヤンキーシリンダの前記表面上に塗布される液体冷却剤であり、前記液体冷却剤が、前記ドクターブレード(10)の後に前記ヤンキー上に残された前記性能向上材料(PEM)の残留層中の蒸発可能な液体の体積を増加させる、
または、
第2の冷却剤源(Cool
1、Cool
2)が、前記ヤンキーシリンダ上への前記性能向上材料(PEM)の前記塗布位置(TP)の後の前記ヤンキーシリンダの前記表面上に塗布される液体冷却剤であり、前記液体冷却剤が、塗布された前記性能向上材料(PEM)中の蒸発可能な液体の体積を増加させる、ことを特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記水分制御環境の少なくとも2つの異なるゾーン(I、III、IV)において少なくとも2つの異なる冷却剤源(Air
1、Air
2、Cool
1、Cool
2)が使用される、ことを特徴とする、請求項10~16のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュマシンにおけるヤンキーシリンダのための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ティッシュマシンでは、ティッシュウェブが意図的にクレープ加工される、すなわち普通紙ではない、高バルク品質の紙グレードが製造される。製造された繊維ウェブは、たとえば、キッチンタオル、トイレットペーパー、またはティッシュペーパーとして使用され得る。紙が高い密度と印刷可能な表面を有するべき紙の製造とは際だって対照的に、ティッシュペーパーは、最適な吸収力を有するべきであり、ほとんどの場合、ウェブの製造中に、ウェブのクレープ加工技術を使用する。
【0003】
ティッシュウェブに対するクレープ効果は、連続ロール間の急送によって得られてもよく、これらの連続ロール間の速度差が、ティッシュウェブに対するクレープ効果を引き起こす。クレープ効果は、代替的または追加的に、ヤンキーシリンダ上のドクターブレードを使用することによって得られてもよい。
【0004】
高バルク容量のため、ティッシュウェブは、製造中、特に、以下でヤンキーシリンダとして識別される、クレープロール上での最終乾燥中にウェブ破損しやすい。ヤンキーシリンダ上へのティッシュウェブの転写を改善し、最終乾燥後のヤンキーからの剥離を改善するために、ヤンキーの表面上にコーティングパッケージが定期的に塗布される。このコーティングパッケージは、しばしば性能向上材料(Performance Enhancing Material:PEM)と呼ばれ、多くの添加剤の水溶液として塗布される。いくつかの添加剤は、ヤンキーへのティッシュウェブ転写を改善し、ティッシュウェブが付着する粘着性の高い表面を確立し、いくつかの添加剤は、剥離を改善し、剥離剤として分類される。ヤンキーへの転写を改善し、ヤンキーからの剥離を改善するこれらの主な機能に加えて、異なる目的のために追加の添加剤が添加されてもよい。
【0005】
ヤンキーシリンダ上の温度プロファイルを制御するため、またはヤンキーシリンダ上のクレープ促進組成物コーティングの塗布を調整するために、様々な解決策が提案されてきた。
【0006】
構造化軟質紙を製造するための機械が、米国特許第4,942,675号明細書に開示されている。この概念では、加熱された空気がヤンキーシリンダのまさに縁部に導入され、ヤンキーシリンダの幅にわたって吸引開口部が配置される。加熱された空気の導入は、冷却効果を低減し、ヤンキーを加熱するための消費電力を削減する。
【0007】
ヤンキーの外側端部を冷却する水冷ノズルを有するティッシュマシンが、中国特許第106418645号明細書に開示されている。これらの冷却ノズルは、ヤンキーのバルク温度が同じになるように調節される。
【0008】
ウェブをヤンキーシリンダに圧着するためのギャップ制御が、特開2014173200号公報に開示されている。プレスロールとヤンキーとの間のギャップは、ヤンキーの幅方向に配置された空気ノズルによって調節され、ヤンキーとプレスロールとの間のギャップ、またはウェブの厚さは、厚さ調整を必要とするプレスロールの一部を冷却することによって制御される。
【0009】
ティッシュマシンにおける生産能力を向上させるために、ヤンキーシリンダ上のコーティングとして塗布されるいくつかの性能向上材料が提案されてきた。
【0010】
米国特許第5,635,028号明細書には、約0,02-1%の四級アンモニウム化合物などの結合阻害剤、約0,02-0,5%の水溶性カルボキシメチルセルロース、および約0,05-3%のカチオン性デンプンを有する特定のクレープ促進組成物が開示されている。
【0011】
米国特許第8,608,904号明細書には、約0.1-70%の酸化ポリエチレン、および約40-99%の水を備えるさらに別の特定のクレープ促進組成物が開示されている。酸化ポリエチレンは、液体中で乳化され、ヤンキーシリンダの表面に塗布され、繊維ウェブは、ヤンキーシリンダの表面に対して転写され、これにより、ヤンキーシリンダの表面へのシート転写および繊維ウェブの付着を引き起こす。
【0012】
これらの2つの特許は、ヤンキーシリンダに塗布される性能向上材料の開発として近年になされた懸命の開発の単なる例である。
【0013】
ヤンキーシリンダへのPEMの塗布を監視および制御するための方法および装置が、米国特許第9,388,530号明細書に開示されている。剥離位置の後、すなわちドクターブレードの後、追加のクリーニングブレードが、ヤンキーシリンダの露出面に作用する。コーティング、すなわちPEMの塗布は、ドクターブレードと、ウェブがヤンキーシリンダに押圧される位置との間のどこかでコーティングの厚さを測定することによって制御される。
【0014】
要約すると、上記で示された従来技術は、先行するウェブロール(またはフェルト)と後続のヤンキーシリンダとの間の転写システムのシステムおよび設計を見出す懸命の開発を開示している。システムは、ヤンキーシリンダ上へのティッシュウェブの適切な付着、およびヤンキーシリンダからのティッシュウェブの適切な剥離の両方を提供する表面を有する転写面を有していなければならない。これら2つの相反する要件、すなわち付着と剥離は、しばしばヤンキーシリンダに非常に狭い操作窓をもたらし、PEMのタイプ、ならびにその厚さ、およびヤンキーシリンダ上の温度プロファイルは全て最終結果に影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第4,942,675号明細書
【文献】中国特許第106418645号明細書
【文献】特開2014173200号公報
【文献】米国特許第5,635,028号明細書
【文献】米国特許第8,608,904号明細書
【文献】米国特許第9,388,530号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
基本用語
ティッシュペーパーグレード
本発明は主に、10g/m2~30g/m2の範囲の坪量を有するようなティッシュペーパーを対象とするが、場合により、より少ない重量、たとえば7g/m2までのティッシュペーパーに使用されることも可能である。通常、これは、14g/m2~28g/m2の範囲の坪量を有するティッシュペーパーに使用される。坪量について示された範囲は、乾燥済みウェブの重量、すなわちヤンキーシリンダからティッシュウェブを受け取る巻き取りドラム上のティッシュペーパーロールに巻かれるティッシュペーパーの坪量を指す。ティッシュウェブは製造中にウェブ破損しやすいので、上記で示されたようなティッシュグレードを製造することは、通常の紙グレードと比較してより困難である。
【0017】
ヤンキーシリンダ
ヤンキーシリンダ、または代替的にクレープロールは、乾燥シリンダとして使用され、130~140℃の表面温度に到達する加圧蒸気によって内部で加熱される。ウェブは、多くの場合、300~500℃の範囲の温度で熱風が供給されるフードによって、外部から追加で加熱/乾燥される。これにより、水がウェブから連続的に蒸発するので、高湿度でヤンキーシリンダ全体の回りに高温を確立する。
【0018】
ヤンキーシリンダは典型的に、800から最大2200m/分の範囲の周速、すなわちウェブの速度に到達する。
【0019】
コーティングパッケージ、すなわちPEM
以下では、性能向上材料は、PEMと略され、塗布されるPEM中の主要な添加剤として、ポリエチレン(PE)、Selvol 540もしくはSelvol 523グレードなどのポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(PAE)、非PAE系樹脂、グリコール系樹脂、またはその他のポリオールなどの様々なポリマー材料を有する水溶液として供給される。これらの化合物は、転写位置でのヤンキーへのウェブの適切な接着を改善するウェブの粘着性を制御するために塗布される。コーティングパッケージ、すなわちPEMはまた、グリコール系剥離剤、鉱油系剥離剤、植物油系剥離剤、並びにラテックスおよびポリオール/湿潤剤のようなその他の添加剤を使用して、ドクターブレードによる剥離を改善する剥離剤も含有し得る。その発明は、これらの材料のいずれかを単独で、またはPEMすなわちコーティングパッケージの一部として組み合わせて伴う任意のシステムに適している。
【0020】
クレープ効果
ウェブ内で誘発されるクレープ効果は、ウェブをヤンキーシリンダ上に転写している間、または代替的もしくは追加的に、ヤンキーシリンダからのウェブの剥離中に、得られることが可能である。
【0021】
クレープの第一次は、先行するフェルトまたはロールからヤンキーシリンダ上への急送によって誘発され得る。ヤンキーシリンダは、先行するフェルトまたはロールよりも遅い速度、および2~25%(RT%)の範囲内の速度差で動作する。クレープの第二次は、ヤンキーシリンダからウェブを剥離するドクターブレードによって誘発され得る。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、ヤンキーシリンダ上のPEMコーティングの塗布後にPEMコーティングが過熱してガラス状態になるのを防止した場合に、ヤンキーシリンダの表面上のPEMコーティングの効果が改善され得るという知見に基づいている。
【0023】
最良の冷却効果は気化冷却から得られ、本発明は、PEMコーティング自体から水を蒸発させることによって、および任意選択的に、PEMコーティングの塗布前にPEMコーティング上にまたはヤンキー表面上に塗布された追加の水を蒸発させることによって、PEMコーティングの気化冷却を改善する。
【0024】
剥離位置と転写位置との間の領域(すなわち、ヤンキーシリンダの回転方向で、剥離位置から転写位置まで延在する領域)で通常の環境が維持される場合には、水分レベルは高温で80~100%の範囲内にあり、この結果、PEMからの水の蒸発率が低下する。約80~100%の水分レベルの、加熱されたヤンキーの周りの典型的な高水分環境を、60~80%の水分レベルの低水分環境に置き換えることにより、蒸発率、ひいては冷却を改善することができる。
【0025】
本発明は、高水分を有する空気を環境中のより低い含水量を有する新鮮な空気で置き換えることでエネルギー束を増加させることによって脱水率を上昇させ、これにより、コーティング層および塗布される追加の水の脱水率を上昇させる。
【0026】
PEMコーティングの追加冷却、またはPEMコーティングの塗布の直前のヤンキーシリンダ表面の追加冷却は、PEMコーティングをより低い温度に保つことができ、こうして、より多くのPEMコーティングがヤンキーシリンダの表面上に維持されるのではなくウェブ内に拡散することになる粘度損失を回避する。
【0027】
PEMコーティングの改善された冷却によって解決されるいくつかの問題がある。
・ロールの均一性(巻き取りロールの直径が等しい)
・転写位置におけるPEMコーティングの粘着性の改善、安全な転写の改善、および経時的なウェブ破損の減少(冷却により、PEMがガラス状になるのを防ぐ、すなわち粘着性ではなくなる);
・剥離位置におけるウェブの剥離の改善、安全な転写の改善、および経時的なウェブ破損の減少;
・PEMの消費の減少、運用コストの削減(冷却により、PEMの剥離剤が低粘度のためにウェブに浸透して巻き取りロールに到達するのを防止し、これにより、剥離後のヤンキー表面上のPEMの残留量が減少し、新しい新鮮なPEMをヤンキーに添加する必要性が増加する);
・ヤンキーおよび近くの他の機器の下のフレーム上に蓄積することから蒸気によってもたらされる繊維および科学物質の堆積物の減少による、ヤンキー領域の周りの衛生の改善。
【0028】
剥離位置と転写位置との間の空気を、約25度の温度および約60%の含水量を有する機械室からの空気と単純に置き換えることを使用して、上記の全ての問題が解決され、または目的が改善される。交換空気がさらに冷却および除湿される場合、改善はさらに改善され得る。
【0029】
本発明の方法は、ヤンキーシリンダ上へのティッシュウェブの転写位置(TP)の前のヤンキーシリンダの表面上の性能向上材料(PEM)の水溶液を含有するコーティングの塗布を制御すること(すなわち、コーティングの塗布の効果/有効性を改善するため)に関し、方法は、
(a)乾燥およびクレープ加工されたティッシュウェブ(W)を剥離位置(TO)でヤンキーシリンダ(CR)から剥離するステップと、
(b)ヤンキーシリンダの回転方向で、ヤンキーシリンダ上へのティッシュウェブの剥離位置(TO)と転写位置(TP)との間の領域内に少なくとも1つの水分制御環境を確立するステップであって、水分制御環境は、好ましくはヤンキーシリンダ上への性能向上材料(PEM)の塗布位置(TP)から遮蔽される、ステップと、
c)水分制御環境内の相対湿度を低下させるステップと、
(d)性能向上材料中の、またはこれに塗布される水の蒸発率を上昇させることによって、水分制御環境内のヤンキーシリンダの表面を冷却するステップと
を備える。
【0030】
水分制御環境内の相対湿度が低下するということは、好ましくは、いかなる水分制御環境も有していないこの環境内で確立された相対湿度よりも少なくとも20%単位(パーセント単位)低い相対湿度を確立することを意味する。
【0031】
この方法の適用は、性能向上材料の有効性を大幅に改善し、ヤンキーシリンダのより高速での転写および剥離の成功のための操作窓を増加させ、こうして生産能力を向上させる。さらに、この冷却はまた、ヤンキーシリンダに続く巻き取りロールのより均一な直径、すなわち性能向上材料のより良くより均一な塗布の最終的な証拠をもたらす。
【0032】
周囲の水分を制御することは、コーティング膜の蒸発速度および温度に作用する/影響を与える方法である。これは、たとえば、周囲空気への熱伝達によって、または乾燥空気を吹き付けることによって行われることが可能である。コーティング膜は、転写位置の前に乾燥に曝され、より低い温度を得る。これにより、コーティング膜が転写位置でより高い粘度を有し、コーティング膜がより粘着性になるというプラスの効果が達成され得る。また、ティッシュペーパーシートによってより少ないコーティング膜が吸収されることになる。これは、制御された環境があるか否かにかかわらず、ヤンキーからの熱が膜の温度を上昇させるので、膜が転写位置に到達する前にPEMコーティングからの全ての水が蒸発するとは推定しない。いくつかのゾーンにおいて、膜は過熱されて乾燥しすぎる可能性がある(これは粘度および粘着性を低下させることがある)。これに対抗するために、温度および蒸発速度が低下するように、液体冷却剤の添加によって水分を局所的に増加させることができる。
【0033】
本発明の方法の好適な実施形態では、水分制御環境は、ヤンキーシリンダ上への性能向上材料(PEM)の塗布位置(TP)から遮蔽される。このようにして、冷却環境が性能向上材料の均一な層の塗布の成功を妨げることを防止し得る。
【0034】
さらに、水分制御環境は、好ましくは水分制御環境の少なくとも3つの側で遮蔽され、前記水分制御環境は、ヤンキーシリンダの露出した外側円筒面に向かって開口している。水分制御環境のこの囲い込みは、冷却効果をヤンキーシリンダの露出した外側円筒面に向けることができる。
【0035】
好適な実装形態では、冷却は、水分制御環境内に第1の冷却剤を添加することによって得られてもよい。したがって、冷却効果は、手動操作されるかまたは閉ループ制御を用いる単純な制御弁を使用して、冷却剤の供給速度を制御することによって制御され得る。
【0036】
方法の最も簡単な実装形態では、使用される冷却剤は、水分制御環境に吹き込まれる空気であってもよい。空気は、コーティングの塗布の前に追加の液体または層の導入がないという利点を有し、ドクターブレードおよび任意の洗浄装置を通過した後でも残っているウェブ残留物のさらなる除去を支援し得る。
【0037】
あるいは、本発明の方法は、ヤンキーシリンダの外側円筒面に塗布される液体冷却剤の形態の第2の冷却剤を使用してもよく、この液体冷却剤は、水分制御環境の前にヤンキーシリンダの外側円筒面上に塗布された後に前記水分制御環境内で蒸発する。
【0038】
液体供給は、コーティングの塗布の前にいかなる液体残留物も十分に蒸発するような少量に調節され得る。供給された冷却液は、ヤンキーシリンダの表面に接触するときに容易に蒸発するべきである。たとえば、冷却剤として水が使用される場合、この水は、その蒸発温度近く、すなわち周囲圧力で約100℃近くまで加熱されてもよく、ヤンキーシリンダの加熱された表面と接触すると急速に蒸発することができる。あるいは、-195.79℃の沸点を有する液体窒素などのより極端な冷却液が使用されてもよい。しかし、加熱されたヤンキーシリンダの表面の温度より低い蒸発温度を有する任意の冷却液が使用され得る。したがって、-200℃から約+100℃までの蒸発温度を有する冷却液が使用され得る。冷却液は、加圧ノズルによってミストとして塗布されてもよい。
【0039】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、水分制御環境の少なくとも2つの異なるゾーン内の水分制御環境において、少なくとも2つの異なる冷却剤が使用されてもよい。これは、2つの独立した空冷ゾーン、またはこれらのゾーン内で任意の順序で液体および/または空気を使用する2つもしくは3つの連続した冷却ゾーンのいずれかとして実現され得る。
【0040】
さらなる実施形態では、ヤンキーシリンダの全幅にわたって冷却剤が散布されてもよい。これは、全幅にわたるコーティングの均一な塗布を得るために、全幅にわたる温度プロファイルが可能な限り均一でなければならないので、推奨される。
【0041】
冷却剤のこの散布は、ヤンキーシリンダの全幅にわたって配置された複数のノズルを使用して、ヤンキーシリンダの全幅にわたって散布されてもよい。好ましくは、各ノズルもまた個別に調整可能であってもよい。
【0042】
複数のノズルの使用の代替として、冷却剤は、ヤンキーシリンダの全幅にわたって配置されたスロットを使用して、ヤンキーシリンダの全幅にわたって散布されてもよい。好ましくは、スロットもまた調整可能であってもよい。
【0043】
本発明の方法のさらに代替的な実施形態では、目標温度に到達するために水分制御環境および冷却剤供給が制御された後に、ヤンキーシリンダの表面上の温度が測定される。この温度検出がヤンキーシリンダの全幅の細いストリップ上で行われる場合には、細いストリップを冷却する、関連する個々の冷却ノズルは相応に制御され得る。好ましくは、各温度センサが1つのノズルによって確立された温度を検出するように、温度センサの数は冷却ノズルの数と同じであってもよい。
【0044】
水分制御環境の温度は、好ましくは水分制御環境を使用しない場合と比較して少なくとも20℃低く、好ましくは20~80℃の範囲内で水分制御環境の温度を確立する。
【0045】
先の段落に記載された本発明の方法を実施するために、本発明の塗布システムも使用され得る。
【0046】
ヤンキーシリンダ上へのウェブの転写位置の前のヤンキーシリンダの表面上の性能向上材料を含有するコーティングの塗布を制御する(すなわち、コーティングの塗布の効果/有効性を改善するための)本発明のシステムは、
(a)乾燥およびクレープ加工されたウェブ(W)を剥離位置(TO)でヤンキーシリンダ(CR)から剥離するドクターブレード(10)と、
b)剥離位置の後に配置されたヤンキーシリンダ上への性能向上材料(PEM)の塗布位置(TP)と、
(b)ヤンキーシリンダの回転方向で、低水分空気源から水分制御環境に低水分空気を供給することによって、ヤンキーシリンダ上へのティッシュウェブの剥離位置(TO)から転写位置(TP)まで延在する領域内に少なくとも1つの水分制御環境を配置することと、
(c)前記水分制御環境が、低下した相対湿度、好ましくはいかなる水分制御環境も有していないこの環境内で確立された相対湿度よりも少なくとも20%パーセント単位低い相対湿度を確立することと、
(d)性能向上材料中の、またはこれに塗布される水の蒸発率を上昇させることによって、水分制御環境内のヤンキーシリンダ上に塗布された性能向上材料(PEM)の層の表面を冷却することと
を備える。
【0047】
さらに、本発明のシステムでは、水分制御環境は、好ましくは、少なくとも1つの遮蔽壁(13a/13b)を使用して、ヤンキーシリンダ上への性能向上材料(PEM)の塗布位置(TP)から遮蔽され、遮蔽壁(13a/13b)の一端をヤンキーシリンダの表面の近くに短距離(d)で配置し、遮蔽壁の他端をヤンキーシリンダから5センチメートルを超える遠距離(d)で配置している。
【0048】
シールドの一端とヤンキーシリンダの表面との間の距離は、シールドの端部がヤンキーシリンダの表面と接触する危険を冒さないような最小クリアランスに設定されてもよい。あるいは、シールドの端部に可撓性シールが配置されてもよい。
【0049】
遮蔽壁はまた、水分制御環境が遮蔽壁によって水分制御環境の少なくとも3つの側で遮蔽され、前記水分制御環境がヤンキーシリンダの露出した外側円筒面に向かって開口するように、本発明のシステム内に延在してもよい。したがって、水分制御環境は、箱状配置に入れられてもよく、冷却を必要としない機械の部品まで走行ウェブの長さ方向に冷却剤が流れるのを回避する。箱状配置はまた、1つの壁に1つの低水分空気入口および他方の反対の壁に換気出口を有して、走行ウェブの横断方向に閉じられてもよい。
【0050】
本発明のシステムでは、低水分空気源(Air1、Air2)は、ヤンキーシリンダの機械室から取り込まれた空気、またはヤンキーシリンダの機械室から外部に取り出された空気である。この空気は、周囲空気の温度がある程度高い場合にはフィルタおよび可能な冷却装置を介して、および/または使用前に除湿システムを介して、周辺環境から吸い込まれてもよい。外部の外気は、機械室の周囲から引き込まれてもよく、あるいは十分に鍛えられて乾燥している場合には、機械室から空気を引き込んでもよい。
【0051】
本発明のシステムの代替または補足として、第2の冷却剤源は、ヤンキーシリンダ上への性能向上材料(PEM)の塗布位置の前のヤンキーシリンダの表面上に塗布される液体冷却剤、好ましくは水であり、前記液体冷却剤は、ドクターブレードの後にヤンキー上に残された性能向上材料(PEM)の残留層中の蒸発可能な液体の体積を増加させる。残留PEM層は加熱されており、ガラス状態に近くてもよく、このような残留PEM層上の水の塗布は、水が表面上に残っている限り、塗布された水の層が蒸発し始めて100℃の温度を維持するので、残留層がガラス状になるのを防いで粘着一貫性を維持することができる。
【0052】
あるいは、アルコールまたは液化ガスのような、100℃未満のより低い沸点を有する液体が、第2の冷却剤源として使用されてもよい。
【0053】
本発明のシステムのさらなる代替または補足として、第2の冷却剤源は、ヤンキーシリンダ上への性能向上材料(PEM)の塗布位置の後のヤンキーシリンダの表面上に塗布される液体冷却剤であり、前記液体冷却剤は、塗布された性能向上材料(PEM)中の蒸発可能な液体の体積を増加させる。新しいPEM層上の水層の追加は、PEM層を塗布する位置から一定の距離で、PEM層の元の含水量が低下した位置で、行われ得る。水の追加の塗布は、残留PEM層の上に塗布された、塗布済みの新しいPEM層が、PEM層内で温度が100℃未満に保たれるような大量の水を維持することができる距離を延長する。
【0054】
剥離位置と転写位置との間に十分に利用可能な空間、すなわち表面上にウェブのないヤンキーシリンダの円周部分がある特別な状況では、水分制御環境の少なくとも2つの異なるゾーンで、少なくとも2つの異なる空気源または冷却剤源が使用され得る。この複数配置は、たとえば、第1の冷却剤源からの液体冷却剤を使用する第1のゾーン、および第2の冷却剤源からの冷却剤として空気を使用する第2の冷却ゾーンを使用することを提案し得る。
【0055】
本発明のシステムのさらなる実施形態では、水分制御環境内で、抽出パイプを通じて性能向上材料から蒸発した水分を排出する、少なくとも1つの排出ゾーンが使用されてもよい。このような排出パイプが使用される場合、残留液体冷却剤は、ヤンキーシリンダの表面からさらに蒸発および抽出され、こうして全体的な冷却効果を向上させることができる。
【0056】
本発明のシステムでは、冷却剤は、好ましくは、冷却ブームによってヤンキーシリンダの全幅にわたって散布される。この種の散布装置は、ヤンキーシリンダの全幅にわたって均等な散布を保証することができる。冷却剤は、好ましくは、前記冷却ブーム上の複数のノズルを使用して、ヤンキーシリンダの全幅にわたって散布されてもよく、より高度なオプションでは、各ノズルは、目標温度に到達するために、制御システムによって調整可能であってもよい。しかしながら、複数ノズル配置は、散布ブームとして使用されるパイプに単純に穿孔された穴も使用することができる。
【0057】
あるいは、複数ノズルオプションにおいて、冷却剤は、ヤンキーシリンダの全幅にわたって配置された連続スロットを有する冷却ブームを使用して、ヤンキーシリンダの全幅にわたって散布されてもよい。好ましくは、スロットギャップは、目標温度に到達するために、制御システムによって調整可能であってもよい。
【0058】
本発明のシステムでは、冷却剤の供給もまた閉ループ内で制御され得る。したがって、システムは、水分制御環境を通過したヤンキーシリンダの表面上の温度を測定する、水分制御環境の後であって性能向上材料(PEM)の塗布位置の前に配置された温度センサを含み得る。したがって、水分制御環境内の蒸発率は、目標温度に到達するために、制御システムによって制御され得る。
【0059】
あるいは、システムは、水分制御環境を通過したヤンキーシリンダの表面上に塗布された新しいPEMコーティング上の温度を測定する、水分制御環境の後で性能向上材料(PEM)の塗布位置の後に配置された温度センサを含み得る。目標温度に到達するために、PEMコーティングならびに蒸発率の両方が、制御システムによって制御され得る。
【0060】
本発明の方法およびシステムの上記の例は、ヤンキーシリンダ内およびその周囲の本質的で新規な特徴を定義し、当然ながら、ヤンキーシリンダ内およびその周囲の他の追加機能、ならびにヤンキーシリンダの前の任意の種類のウェブ取り扱いシステム、またはヤンキーシリンダの後の任意の種類のウェブ巻き取りロールと組み合わせられてもよい。本発明の本質は、ヤンキーシリンダの表面の全幅にわたって伸びる1つまたは複数の冷却ゾーンの新規な適用にあり、この冷却ゾーンは、含水量などのPEMコーティング内の液体、または新しいもしくは残留PEMコーティング上に塗布された液体の蒸発率を上昇させる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】ティッシュウェブが転写位置でヤンキーシリンダに供給され、コーティングの塗布後にPEMコーティングの冷却と共に剥離位置でヤンキーシリンダから取り外される、本発明の第1の実施形態の概略側面図ある。
【
図2】PEMのスプレーブームおよび関連するPEM供給システムを示す図である。
【
図3a】低水分空気、または追加冷却液をヤンキーシリンダの外面上に供給する、本発明で使用される散布ブームの第1の実施形態を示す図である。
【
図3b】低水分空気、または追加冷却液をヤンキーシリンダの外面上に供給する、本発明で使用される散布ブームの第2の実施形態を示す図である。
【
図3c】
図3bの図a-aに見られる、第2の実施形態で使用される散布ブームの断面を示す。
【
図4】転写位置および転写位置の5メートル後からのティッシュウェブの温度プロファイルを概略的に示す図である。
【
図5】コーティングの塗布後にPEMコーティングを冷却した、
図1と同じ側面図における本発明の第2の実施形態の概略側面図である。
【
図6】コーティングの塗布後にPEMコーティングを冷却した、
図1と同じ側面図における本発明の第3の実施形態の概略側面図である。
【
図7】
図1と同じ側面図における、ただしヤンキーシリンダ上に冷却液が塗布され、PEMコーティングの塗布前に低水分ゾーンの蒸発率が上昇した、本発明の第4の実施形態の概略側面図である。
【
図8】PEMコーティングの塗布前に遮蔽された低水分ゾーンを有する、
図7と同じ側面図における本発明の第5の実施形態の概略側面図である。
【
図9】PEMコーティングの塗布前に複数の遮蔽ゾーンを有する、
図7と同じ側面図における本発明の第6の実施形態の概略側面図である。
【
図10】PEMコーティングの塗布前にヤンキーシリンダ上の冷却液が塗布される遮蔽ゾーン、ならびにPEMコーティングの塗布後に蒸発効果が上昇した遮蔽低水分ゾーンを有する、同じ側面図における本発明の第7の実施形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明を説明する前に、典型的なティッシュウェブ温度プロファイルが示されている
図4を参照する。従来、ヤンキーシリンダに転写されるティッシュウェブの温度は約40℃であり、含水量は約+40%である。ここに見られるように、ウェブの温度は、転写位置から1メートル以内で、約40℃から約98~99℃まで転写位置から急激に上昇し、水分の大部分が蒸発する。蒸発するのに十分な水がある限り、蒸発自体がウェブを冷やし、高温のヤンキーシリンダからのウェブのさらなる加熱を防ぐので、温度はほぼ一定に保たれる。この既知の温度プロファイリングにおける洞察は、蒸発を受ける層に十分な水がある限り、高温のヤンキー上の層、この場合はペーパーウェブが、100℃未満に保たれ得ることを示している。
【0063】
転写位置から約1.5メートル後で、ペーパーウェブは、ほとんどの水分がなくなるにつれてさらに加熱され、したがって水の蒸発がウェブの温度上昇を低減することはできなかった。さらに約0.3~0.5メートル後に第2の一定温度ゾーンが確立されるが、転写位置から約2.7~2.8メートル後に、ウェブの温度が再び上昇し、ヤンキーシリンダ表面の温度に近い最終温度、すなわち約140℃、ならびに5%未満の最終含水量に到達する。
【0064】
この例では、ヤンキーシリンダは、ヤンキーシリンダの周長の約4.5mに対応する接触角α程度の範囲内の乾燥ティッシュウェブを得ている。ウェブがヤンキーシリンダ上に塗布される必要がある実際の周長は、当然ながらウェブの速度、すなわち生産能力に依存する。約1500m/分の典型的な速度で、接触角は、ティッシュマシン内の同じ条件を使用して、速度の上昇に比例して増加するはずであり、このような設定において、接触角は、ウェブ速度が1500から2000m/分に上昇した場合、約1/3だけ増加するはずである。しかしながら、ティッシュマシンのこのような再構成は、ロールの主要な再構築要件のためにコストがかかり、したがって、たとえばヤンキーシリンダおよび/またはフード内の温度を上昇させることによって、代わりに乾燥条件が変更される。
【0065】
図1には、本発明の第1の実施形態が示されている。本発明は、ヤンキーシリンダCR、およびクレープ加工されたウェブ製品を得るためにこのヤンキーシリンダを使用することに関する。位置C1、C2、およびC3に示されるように、ウェブは、C1に概略的に示されるような平坦なウェブWとしてヤンキーシリンダCRに搬送され得る。ウェブWは、転写位置TPのニップの転写ロール1によって、ヤンキーシリンダCRの表面に転写される。この転写が相対速度差、すなわちヤンキーシリンダの低速の間に行われる場合、C2に概略的に示されるように、ウェブWにおいてクレープ効果の第一次を得ることができる。しかしながら、第1のクレープ効果は、ヤンキーシリンダへの転写の前に先行する転写ニップにおいて得られてもよい。
【0066】
ウェブは、100~270°程度、およびこの図で示されるように約190~200°のラップの程度であり得る接触角αで、ヤンキーシリンダCRの表面上を走行する。ウェブは従来、ヤンキーシリンダCRが加圧高温蒸気によって内部で加熱される際に乾燥される。接触角の終わりに、最終的に乾燥されたウェブは、ドクターブレード10によって剥離位置TOで剥離される。このドクターブレードは、さらに追加のクレープ効果を誘発することができ、C3に概略的に示されるように、クレープを増加させる。
図1に示されるように、熱風でウェブをさらに加熱するフードHもまた提供され得る。
【0067】
ドクターブレード10の後に、ヤンキーシリンダの回転方向Rに見て、追加の洗浄装置11が配置されてもよく、この洗浄装置は、ヤンキーシリンダからあらゆる残留繊維を取り除く。洗浄装置は、追加のドクターブレード、または任意のブラシ状の洗浄装置であってもよい。
【0068】
洗浄装置の後に、PEM供給ブーム14が配置される。こうしてPEM混合物がヤンキーシリンダ上に塗布され、コーティングがヤンキーシリンダ上に均一に広がることを可能にする。典型的に、PEM混合物は冷却され、これは大量の水を含有するので、コーティング混合物は、水が蒸発し得る限り、100℃未満の温度を維持する。
【0069】
ここで、本発明によれば、ヤンキーシリンダの回転方向Rに見て、PEM供給ブーム14の後に低水分空気ブーム12aが配置される。この低水分空気ブーム12aは、低水分空気源Air1に接続され、低水分空気ブーム12aに接続された供給パイプに制御弁V1が配置されている。低水分空気の流れは、好ましくは、冷却剤が冷やされて乾燥される調整器17を通過している。これにより、PEMコーティングの含水量の上昇した蒸発率によって露出したPEMコーティングを冷却する水分制御環境を作り出す。
【0070】
遮蔽壁13aは、好ましくは、端部をヤンキーシリンダCR表面と遮蔽壁の端部との間で短距離dに配置して、水分制御環境の前に配置される。遮蔽壁を使用する目的は、PEMコーティングの塗布と水分制御環境内の任意の乱流または空気流との間のあらゆる影響を低減することである。前記距離dは、0.1から4ミリメートルの間の任意の適切な範囲に設定され得る。
【0071】
水分制御環境という表現は、以下、ウェブに近い水分レベルが、水分制御環境を使用しないことによって確立された水分レベルと比較して著しく低下し得るゾーンを定義するために使用される。水分制御環境の温度は、好ましくは、約80~130℃から少なくとも40℃まで、または20~60℃の範囲で低下することができ、したがって温度の最小低下は少なくとも20℃である。
【0072】
温度センサ16aは、冷却ブーム12aの後に配置されてもよい。この温度センサは、好ましくは、制御弁V1を調節することによって低水分空気の供給を制御し得る制御ユニットCPUに接続されてもよい。
【0073】
最後に、PEMコーティングの塗布後に、塗布されたコーティングの厚さを検出し得る厚さセンサ15も配置され得る。この厚さセンサ15は、好ましくは、制御弁V2を調節することによってPEMコーティングの供給を制御し得る制御ユニットCPUに接続されてもよい。
【0074】
図2には、ウェブの全幅W
Wにわたって延在する、PEM供給ブーム14の実施形態が示されている。このPEM供給ブームは、各々が制御ユニットCPUに接続された個別の制御弁14cを有する、複数の個別のPEM供給ノズル14nを有してもよい。供給ノズルは、好ましくは、ウェブの幅にわたってファンジェットの幅で延在するファンジェットを有する、ファンジェットノズルである。各ファンジェットは、次の隣接するファンジェットノズルが引き継ぐときに終了し、こうしてウェブの全幅をカバーする。PEM源は、添加剤が混合された堆積の主成分である水であってもよく、添加された添加剤の例としてPVOH(ポリビニルアルコール)のみが示されている。添加された高分子量ポリマーは、長いポリマー鎖をほどくために水混合物中で長い滞留時間を必要とし、得られた混合物は、滞留時間が30~240分の間になり得る図示される緩衝液貯蔵容器に供給され得る。その後、PEM混合物は、加圧ポンプP
1でPEM供給ブーム14に圧送される。PEM混合物はまた、緩衝液貯蔵容器に接続された戻りパイプも有することができ、溶液中の固形物が沈殿するのを防ぐPEM供給ブームの全長に沿った発達流れを可能にする。
【0075】
図3aには、ウェブの全幅W
Wにわたって延在する、散布ブーム12/20の実施形態が示されている。低水分空気および冷却液の両方を散布するために、同じ種類の散布ブームが使用されてもよい。低水分空気ブーム12について後述される内容は、冷却液ブーム20にも当てはまる。
【0076】
低水分空気ブーム12は、全ての例において同様であり、いずれもPEMスプレーブーム14の後に配置されて参照符号12a、12bが付されるか、またはいずれもPEMスプレーブーム14の前に配置されて参照符号12c、12d、および12eが付される。
【0077】
この低水分空気ブーム12は、各々が制御ユニットに接続された個別の制御弁12cを有する、複数の個別の低水分空気供給ノズル12nを有してもよい。供給ノズル12nは、好ましくは、ウェブの幅にわたってファンジェットの幅で延在するファンジェットを有する、ファンジェットノズルである。ファンジェットは、次の隣接するファンジェットが引き継ぐときに終了し、こうしてウェブの全幅をカバーする。
【0078】
低水分空気源Air1は、周囲空気であってもよい。
【0079】
周囲空気が低水分空気源として使用される場合、冷却空気の速度は、供給ブーム内の圧力によって調節される。冷却剤として空気を用いた試験は、供給ブーム内の必要な圧力がわずか2kPaの範囲内であり、200インチ(ウェブ幅で)のティッシュマシンに必要な空気量は175m3/分の範囲内であることを示している。
【0080】
低水分空気は、増圧された状態で、加圧ポンプP2で低水分空気ブーム12に圧送される。ここで示されるように、低水分空気ブーム12に供給された低水分空気の一部は、たとえば周囲空気が使用される場合、他端のパイプExを通じて排気され得るが、より高額な冷却剤が使用される場合には、この排気パイプは閉じられてもよい。
【0081】
図3bには、ウェブの全幅W
Wにわたって延在する低水分空気ブーム12の代替実施形態が示されている。この低水分空気ブームは、(
図3cに示されるように)単一の連続スロットSを有してもよい。供給スロットSは、
図3bの断面a-aを通して見たものとして
図3cに示されている。スロット幅、ひいては低水分空気供給速度は、互いに対して内側または外側同軸パイプ部材12iまたは12oのうちの1つを回転させるサーボユニット12sによる制御ユニットCPUによって制御され得る。冷却剤として空気を用いて実行されたテストでは、約10mmのスロット幅が使用され、スロットの方向を変更して冷却ブーム全体を調整することができた。スロットは、ウェブの全幅W
Wにわたって低水分空気の連続する平坦な流れを確立する。この実施形態では、排気パイプは使用されない。
【0082】
図5には、本発明の第2の実施形態が示されている。
図1に示される第1の実施形態に関連して、水分制御環境は、水分制御環境の少なくとも3つの側で遮蔽され、前記水分制御環境は、ヤンキーシリンダCRの露出した外側円筒面に向かって開口している。これにより、水分制御環境内に供給される低水分空気がヤンキーシリンダの表面に向かって流れること、ならびに低水分空気供給の流れがPEM層の先行する塗布を妨害しないことを保証する。
【0083】
図6には、本発明の第3の実施形態が示されている。
図1に示される第1の実施形態に関連して、この実施形態には、2つの別個の低水分空気源にそれぞれ接続された2つの低水分空気ブーム12aおよび12bが配置されている。低水分空気源のうちの一方は周囲空気であってもよく、他方はティッシュマシン室からの冷却空気であってもよい。供給パイプの弁は、第1の実施形態と同じように制御され得る。
【0084】
図7には、本発明の第4の実施形態が示されている。
図1、
図5、および
図6に示される実施形態とは対照的に、この実施形態は、ヤンキーの表面上に液体冷却剤を塗布する追加冷却ブーム20aの使用を含み、前記塗布された液体はその後、ヤンキーシリンダの回転方向Rに見て、洗浄装置11および冷却ブーム20aの後に配置された低水分空気ブーム12cによって確立された後続の水分制御環境で蒸発する。この低水分空気ブーム12cは、低水分空気源Air
1に接続され、低水分空気ブーム12cに接続された供給パイプに制御弁V
3が配置されている。これにより、液体冷却剤層を有するヤンキーシリンダの露出面を冷却する水分制御環境を形成する。これは、ドクターブレードの後にヤンキーシリンダ上に残される任意の残留PEMコーティングの気化冷却を提供する。残留PEMコーティングはその後、新しい新鮮なPEMコーティングの塗布前に、塗布された液体層の蒸発によって冷却され得る。好ましくは水分制御環境の後に遮蔽壁13bが配置され、温度センサ16bが遮蔽壁13b上に配置されてもよい。この温度センサは、好ましくは、制御弁V
3を調節することによって低水分空気の供給を制御し、制御弁V
4を調節することによって液体冷却剤の供給を制御し得る、制御ユニットCPU
1に接続されてもよい。
【0085】
水分制御環境の後に、PEM供給ブーム14が配置される。新しいPEMは、こうしてヤンキーシリンダのより低温の表面に塗布され、残留PEM層の上に塗布された液体層の蒸発により、残留PEM層がガラス状になることが防止される。
【0086】
最後に、PEMコーティングの塗布後に、塗布されたコーティングの厚さを検出し得る厚さセンサ15が配置され得る。この厚さセンサ15は、好ましくは、制御弁V2を調節することによってPEMコーティングの供給を制御し得る制御ユニットCPU2に接続されてもよい。実際には、厚さおよび温度の両方を制御する共通の制御ユニットが使用され得る。
【0087】
図8には、本発明の第5の実施形態が示されている。
図7に示される実施形態に関連して、水分制御環境は、水分制御環境の少なくとも3つの側で遮蔽され、前記水分制御環境は、ヤンキーシリンダCRの露出した外側円筒面に向かって開口している。これにより、水分制御環境内に供給される低水分空気がヤンキーシリンダの表面に向かって流れること、ならびに冷却剤供給の流れがPEM層の後続の塗布を妨害しないことを保証する。
【0088】
図9には、本発明の第6の実施形態が示されている。
図7に示される実施形態に関連して、水分制御環境は、4つの個別に遮蔽されたゾーンI~IVに分割される。
【0089】
第1のゾーンIには、第1の冷却ブーム20aが配置されてもよく、好ましくは蒸発温度に近い冷却液の温度を有するミスト形態の冷却液を散布する。
【0090】
第2のゾーンIIでは、特に先行するゾーンで供給された冷却液が液体である場合、排出パイプ12xが低圧に接続され得る。排出は、圧力を低下させ、蒸発した残留冷却液の蒸発および排出を支援する。
【0091】
第3のゾーンIIIには、第2の冷却ブーム20bが配置されてもよく、好ましくは冷却液を散布する。
【0092】
最後に、第4のゾーンIVには、第3の低水分空気ブーム12cが配置されてもよく、好ましくは低水分空気を散布する。
【0093】
連続するゾーンにおけるこの連続的な冷却は、冷却効果が最適化される場合に実施されてもよく、水分制御環境内の各個別の冷却ゾーンは、可能な限り最も高い冷却効果のために個別に調節され得る。
【0094】
連続する各冷却ゾーンは、水分制御環境の各ゾーンの少なくとも3つの側で遮蔽され、前記水分制御環境は、ヤンキーシリンダCRの露出した外側円筒面に向かって開口している。これにより、水分制御環境内に供給される低水分空気および冷却液がヤンキーシリンダの表面に向かって流れること、ならびに低水分空気および冷却剤供給の流れがPEM層の後続の塗布を妨害しないことを保証する。各ゾーンはまた、その切妻側(ウェブ幅の両端の外側端部)の壁(図示せず)によって閉じられてもよく、場合により前記切妻側の冷却剤の過剰分または蒸発した水分のための排出ダクトを有する。
【0095】
最後に、
図10には、本発明の第7の実施形態が示されている。この埋め込みには、PEMスプレーブーム14の前に配置された、蒸発する液体、好ましくは水の塗布を有する第1の遮蔽された冷却ゾーン、およびPEMスプレーブーム14の後に配置された1つの遮蔽された水分制御環境がある。各それぞれのゾーンは、各ゾーンの後の温度センサ16a、16bおよび最後のPEM厚さ測定15を使用して、先行する実施形態に示されるように制御される。
【0096】
図示される実施形態は、PEMスプレーブームの直後の少なくとも1つの水分制御環境またはPEMスプレーブームの直前の水分制御環境を実施する。両方の水分制御環境ゾーンは、PEMコーティングの加熱を低減し、PEMコーティングは、ティッシュウェブがヤンキーシリンダのPEM被覆面上に塗布される転写点に到達するときに低温を有することになる。これにより、PEMコーティングの粘度を低下させ、PEMコーティングがティッシュウェブ内に拡散するのを低減する。
【0097】
最良の効果は、PEMスプレーブームの後にPEMコーティングの表面を冷却し、冷却剤として空気を使用することから得られる。転写位置におけるPEMコーティング中の含水量が高いと、湿潤粘着力を低下させ、ヤンキーシリンダへのウェブ/シート転写が不十分で不均一になるため、転写位置に到達するときのPEMコーティング中の含水量は可能な限り低くすべきである。これにより、最終的なピックアップロールに不均一なクレープ構造および波状の直径が生じる。
【0098】
しかしながら、特にPEMスプレーブームに先行する冷却ゾーン内では、冷却剤として液体が使用され得る。PEM混合物自体が典型的に+90%の水を含有するので、PEMコーティングを塗布するときにヤンキーシリンダ表面上に水残留物が残っても、悪影響は生じない。反対に、含水量が幾分増加した場合、蒸発するPEMコーティング中に水がある限り、100℃の最高コーティング温度はより長く維持される。
【0099】
たとえばミストとしてPEMコーティングの塗布後に添加される少量の水は、これらの量が転写位置の前に蒸発する時間があれば、許容可能である。
【0100】
本発明の基本的な特徴は、通常よりも低い水分レベルを有する水分制御環境の適用である。これにより、PEMコーティングの蒸発率を改善する。これは、全てが水分制御環境を有する1つ以上の個別のゾーンとして作ることができる。
【0101】
水分制御環境は、最も簡単な実施形態では、機械室からヤンキーの下の領域内に空気を吹き込むことによって確立されてもよく、前記空気は、この交換空気を供給することのない温度よりもはるかに低い温度を有する。交換空気は代替的に、再導入前に湿度の大部分を凝縮する除湿機を通じたこの環境内の空気の再循環であってもよい。これはまた、供給される前に冷却器によって追加的に冷却される交換空気であってもよい。しかしながら、より低い相対湿度が必須である。交換空気はまた、水分レベルが少なくとも20%低下するように加熱されてもよいが、より冷たい空気が好ましい。
【0102】
水分制御環境内の相対湿度が低下したとき、PEMコーティングに水を添加することによって蒸発効果の上昇が得られ、これにより、PEMコーティングの温度が100℃未満に留まることを保証し得る。PEMコーティング内に水がある限り、100℃が水の蒸発温度なので、温度は100℃未満に留まる。