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特許7545435二酸化炭素吸収材、フィルタ、及び空調システム
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  • 特許-二酸化炭素吸収材、フィルタ、及び空調システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収材、フィルタ、及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/04 20060101AFI20240828BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240828BHJP
   F24F 8/15 20210101ALI20240828BHJP
【FI】
B01J20/04 A
B01D53/14 100
F24F8/15
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022056690
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148584
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175803
【氏名又は名称】三建設備工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 真之介
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 正美
(72)【発明者】
【氏名】結城 了介
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-502237(JP,A)
【文献】特開平05-049918(JP,A)
【文献】特開2021-062374(JP,A)
【文献】特表2018-501082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
F24F 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材であって、
水酸化カルシウムと、
水酸基を含むケイ酸塩化合物とを備え
重量含水率が、少なくとも20%であり、
前記水酸化カルシウムと前記水酸基を含むケイ酸塩化合物との重量混合比は、水酸化カルシウムの重量を1とすると、1:0.5~10である、
二酸化炭素吸収材。
【請求項2】
前記二酸化炭素吸収材は、篩上の粒度が0.1mm以上であり、篩下の粒度が20mm以下である、
請求項1記載の二酸化炭素吸収材。
【請求項3】
前記水酸基を含むケイ酸塩化合物は、珪藻土、ゼオライト、及び粘土鉱物からなる群から選択された少なくとも1つである、
請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素吸収材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の二酸化炭素吸収材を備える、
フィルタ。
【請求項5】
請求項に記載のフィルタを備え、
前記フィルタは、二酸化炭素を含む前記空気の流路に配置される、
空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸収材に関し、特に換気空調システムで使用する二酸化炭素吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大抑止のひとつとして、室内空気を外の空気と交換するいわゆる換気が注目されている。しかし、上記の換気は、室内空気の暖房や冷房、除湿効果を著しく損なう結果となることは明白であり、換気を最小限に食い止めることが、エネルギー効率の向上に大きく寄与する。
【0003】
一方で、換気は、室内空気の二酸化炭素濃度の低減も目的とする。建築物環境衛生管理基準によって、空気調和設備を設ける際の二酸化炭素の濃度は1000ppm以下に、学校環境衛生基準によって、教育施設での二酸化炭素の濃度は1500ppm以下に保つように定められている。しかし、状況によってこれを超えることがあり、規定値を超えると眠気の誘発や集中力の低下が、さらに濃度が高くなると頭痛や目眩、吐き気といった人体への影響の可能性が生じる。特に、2500~5000ppmの二酸化炭素濃度は、健康に害を及ぼす可能性のあるレベルとされている。このように、二酸化炭素濃度の上昇は健康被害に直接関係しており、快適な空間を得るために、室内空気の交換だけでなく、それ以上に感染防止も相まって窓開けまでして換気量を増やしているのが現状である。そのため、室内の二酸化炭素を低減するための、新たな二酸化炭素低減方法の考案が望まれていた。
【0004】
二酸化炭素吸収材として、特許文献1には、麻酔呼吸システム、及び呼吸される空気を含む他の適用例に使用される化学吸収剤であって、水酸化カルシウムを主成分とする、二酸化炭素を吸収するための化学吸収剤製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-46843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、換気空調システムで使用する二酸化炭素吸収材には、室内空間において使用できるように、持続性及び大容量の二酸化炭素の吸収性が求められる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、持続性及び吸収性を向上させた、二酸化炭素吸収材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る二酸化炭素吸収材は、空気中に含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材であって、水酸化カルシウムと、水酸基を含むケイ酸塩化合物とを備える。本明細書において「水酸基を含むケイ酸塩化合物」における「水酸基を含む」とは、水酸基(-OH)が水素結合、極性引力、ファンデルワールス力などの分子間力、イオン結合、又はこれらの結合要素の組合せにより化学的にケイ酸塩化合物と結合していることをいう。
このように構成すると、二酸化炭素吸収材は、保水性能を有する、水酸基を含むケイ酸塩化合物を含むため、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応が促進され、二酸化炭素の吸収量を増やすことができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る二酸化炭素吸収材は、上記本発明の第1の態様に係る二酸化炭素吸収材において、重量含水率が、少なくとも5%である。
このように構成すると、二酸化炭素吸収材が十分に水を保水しているため、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応を促進することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る二酸化炭素吸収材は、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る二酸化炭素吸収材において、水酸化カルシウムと水酸基を含むケイ酸塩化合物との重量混合比は、水酸化カルシウムの重量を1とすると、1:0.5~10である。
このように構成すると、水酸基を含むケイ酸塩化合物から十分に水を供給することができる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る二酸化炭素吸収材は、上記本発明の第1の態様~第3の態様のいずれかの態様に係る二酸化炭素吸収材において、二酸化炭素吸収材は、篩上の粒度が0.1mm以上であり、篩下の粒度が20mm以下である。
このように構成すると、二酸化炭素吸収材の表面積が増え、二酸化炭素を吸収するための面積を増やすことができる。
【0012】
本発明の第5の態様に係る二酸化炭素吸収材は、上記本発明の第1の態様~第4の態様のいずれかの態様に係る二酸化炭素吸収材において、水酸基を含むケイ酸塩化合物は、珪藻土、ゼオライト、及び粘土鉱物からなる群から選択された少なくとも1つである。
このように構成すると、水酸化カルシウムと混合するケイ酸塩化合物は、化学的に長期安定性を有し、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応に好適なpHに影響を及ぼすことがなく、二酸化炭素吸収材の長期的使用を可能にする。
【0013】
本発明の第6の態様に係るフィルタは、上記本発明の第1の態様~第5の態様のいずれかの態様に係る二酸化炭素吸収材を備える。
このように構成すると、空気を通過させることで二酸化炭素を吸収するフィルタを構成することができる。
【0014】
本発明の第7の態様に係る空調システムは、上記本発明の第6の態様に係るフィルタを備え、当該フィルタは、二酸化炭素を含む空気の流路に配置される。
このように構成すると、室内空気の窓開け頻度を少なくする又は無くすことができるウエルネスな空調システムを提供できる。空調システムは、空調空気内の二酸化炭素の吸収を行い、その濃度を調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、持続性及び吸収性が向上し、室内空間において使用可能な二酸化炭素吸収材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、及び、二酸化炭素吸収実験後の実施例3の造粒体のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、二酸化炭素吸収材は、水酸化カルシウム(Ca(OH))と水酸基を含むケイ酸塩化合物を備える。水酸化カルシウムは、二酸化炭素(CO)の吸収性能を有し、下記反応式(1)のとおり二酸化炭素と反応する。
Ca(OH)+CO → CaCO+HO (1)
【0018】
しかし、上記反応を促進させるためには水を必要とする。空調システムにおいて二酸化炭素吸収材として使用するためには、長時間にわたる適切な水の供給が必要となる。そこで、本発明では、保水性能を有する水酸基を含むケイ酸塩化合物を水酸化カルシウムに混合して混合造粒体を形成し、造粒体それ自体から常時水を供給することで二酸化炭素の吸収性能を向上させている。
【0019】
水酸化カルシウムは消石灰ともいわれ、強塩基のため二酸化炭素と反応する。値段も安く入手も容易であり、市販の粉末状のものを使用できる。粒径は例えば0.01mm~5mmのものが扱い易く好ましい。水酸基を含むケイ酸塩化合物としては、珪藻土、ゼオライト、及び粘土鉱物、又はこれらの混合物を挙げることができる。これらの水酸基を含むケイ酸塩化合物は、アルカリ性によって変質することなくその機能性を維持でき、化学的長期的耐久性を有するため好ましい。粒径は例えば0.01mm~3mmのものが扱い易く好ましい。
【0020】
水酸化カルシウムと水酸基を含むケイ酸塩化合物との重量混合比は、水酸化カルシウムの重量を1とすると、1:0.5~10であることが好ましい。より好ましくは1:0.5~5であり、特に好ましくは1:2である。重量混合比が1:0.5であると二酸化炭素の吸収量を増大できるため好ましく、1:10であると造粒物成形体の加工における煩雑さがなくなるため好ましい。
【0021】
以下に、水酸化カルシウムと水酸基を含むケイ酸塩化合物を備える二酸化炭素吸収材を製造する方法を説明する。水酸化カルシウムと水酸基を含むケイ酸塩化合物の粉末を混合し、そこへ水を入れて塊状にし、塊状の混合物を篩に通して造粒体を形成する。
【0022】
水酸化カルシウムと水酸基を含むケイ酸塩化合物との混合方法は、とくに限定されないが、乾式であるとより容易である。混合方法には、乳鉢混合や容器回転形混合、容器固定形混合(パドル、リボン、スクリューなどの適切な形状のカキマゼ機)又は気流の吹込みによって混合するもの、及びこれらの組合せによる複合形などを挙げることができる。混合によって材料が過度に粉砕されることを回避できる方法であればよい。
【0023】
造粒方法は特に限定されない。一例として、湿式造粒法である押出造粒、攪拌造粒、流動層造粒、転動造粒、又は、乾式造粒法、及び/又は、噴霧造粒法を挙げることができる。一般的には攪拌造粒や押出造粒などが多用される。また、造粒体内の重量含水率(以下含水率)を5%以上にするために、湿式で造粒するが、その時に加える水分量としては、水酸化カルシウムと水酸基を含むケイ酸塩化合物との混合重量を100%とし、その約5%~100%の重量と同重量の水分量を追加して調整することが好ましい。造粒体の含水率は、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、又は、30%以上であることが好ましい。含水率の上限は、造粒体が塊状を維持できる最大量であればよく、例えば、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下とすることができる。含水率が5%以上であると、造粒体をハンドリングし易く、さらに室内湿度が低くても、水酸基を含むケイ酸塩化合物由来の水分が水酸化カルシウムへ供与され、二酸化炭素を吸収できるようになるため好ましい。
【0024】
湿式で造粒した場合は、取出しの際に適宜乾燥工程を設けてもよい。乾燥はドライヤーなどを使用してもよい。例えば100℃のドライヤーで表面のみが乾くように、乾燥条件を適宜最適化する。その後使用しやすいように、分級工程を設けてもよい。分級には篩の目を通過するか否かで分けるのが簡便で好ましい。篩後の造粒体の大きさは、二酸化炭素の濃度にもよるが、カートリッジへの充填性を良好にし、空気を流れやすくするために、0.1mm~20mmの間で、単一粒度でも、組合せであってもよい。好ましくは0.1mm~16mm、特に好ましくは、0.25mm~4mmである。
【0025】
二酸化炭素吸収の最適化には、例えば試料を時計皿に数g置き、真空にできる容器を用意し、真空排気後、0.3%程度の窒素希釈二酸化炭素気体を導入し、二酸化炭素濃度をモニターしながら、吸収速度や最大吸収量を測定すればよい。バッチ式でも連続的に二酸化炭素を含む気体を導入してもよい。なお、二酸化炭素の吸収は水酸化カルシウムが水に溶け込んで水溶液となり起きる。
【0026】
本願の二酸化炭素吸収材は、空調システムに組込むことができる。そのため、二酸化炭素吸収材を用いた新たな二酸化炭素低減方法は、一例をあげれば、空調設備内に二酸化炭素吸収材を充填したカートリッジをフィルタとして配管途中に配置し、既存の殺菌システムと組合せる。それにより、窓開けまでしなくとも、室内の二酸化炭素濃度を健康被害の出ない範囲まで低減することができる。すなわち、空調設備に、既存の殺菌システムと二酸化炭素吸収カートリッジを具備し、室内空間の殺菌は通常どおり常時行う。その上で、室内空気の二酸化炭素濃度が基準値以上となると電磁気的に空調回路を操作し、二酸化炭素吸収カートリッジを備えた空調回路を通して二酸化炭素濃度を基準値以下まで下げ、基準値以下となった場合には空調回路を閉じる。このようなシステムを備えたウエルネス空調システムを内蔵あるいは別ユニットとして取り付けることで実現可能となる。
【0027】
また、吸収された二酸化炭素は、加熱処理により、下記反応式(2)のとおり炭酸カルシウムから脱離することができる。よって、本願の二酸化炭素吸収材は、下記反応式(2)で離脱した二酸化炭素を原材料として回収して利用できることも特徴である。加熱処理には800℃~900℃の温度が必要であるが、ごみ焼却やセメント製造、製鉄製造などの排熱を利用してもよい。同時に、脱離した二酸化炭素は純粋な二酸化炭素なので、地下貯留の際に問題となる触媒毒などを含まないため容易に利用が可能であり、その他の多用途へ利用できる。さらに、本願の二酸化炭素吸収材は、下記反応式(3)のとおり、水酸化カルシウムの再生も可能とする。
Ca(OH)+CO → CaCO+HO (1)
CaCO → CaO+CO (2)
CaO+HO → Ca(OH) (3)
【0028】
本願の二酸化炭素吸収材は、本質的に、水酸化カルシウムと、水酸基を含むケイ酸塩化合物と、水分とからなる二酸化炭素吸収材であってもよい。なお、本明細書において、「~からなる」というときは、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」を意味する。しかし、本願の二酸化炭素吸収材は、本発明の効果を奏する限り、消臭を目的とした活性炭や、殺菌、抗菌を目的とした光触媒材料やAg担持ゼオライトなど、目的に合わせて第3の成分を含んでもよい。
【実施例
【0029】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
【0030】
実施例1~実施例14の二酸化炭素吸収材を下記のとおり製造した。
水酸化カルシウム:鹿1級、関東化学株式会社製
ゼオライト:クニミネゼオライト 150、クニミネ工業株式会社製
珪藻土:粒径70μm以下、稚内層珪藻頁岩と稚内珪藻岩との混合物、不焼成体
水(純水):水道水、又は18.3MΩ・cmの超純水
【0031】
[実施例1]
(1)重量比が1:2となるように、水酸化カルシウムを450g、ゼオライトを900g計量した。水酸化カルシウムとゼオライトの合計量を100%とし、表1の割合と同重量の水を計量した。すなわち、実施例1では水を675g(50%)計量した(計量工程)。
(2)水酸化カルシウムとゼオライトの粉体をポリ袋にいれ15分間よく振って、手混合により混合した(手混合工程)。
(3)スパルタンリューザー(RMO-2H、不二パウダル株式会社製、20Hz、1400rpm)を用いて混合物を混合・混錬した(混合・混錬工程)。まず、紛状の混合物を、ミキシングアームのみを使用して1分間混合した。次に、混合物に水を投入した後、チョッパーローターを稼動して2分間混錬した。
(4)同時に、攪拌造粒機であるスパルタンリューザーを用いて混錬した混合物を造粒した(造粒工程)。
(5)ミゼットドライヤー(MDB-400、株式会社ダルトン製)を用いて、入口温度100℃で、出口温度が90℃になるまで造粒体を乾燥させた(乾燥工程)。
(6)4mm/1mm/250μm/パンにて篩分けを行い、1mm~4mmの造粒体を得た(分級工程)。
【0032】
[実施例2~10]
実施例2~10については、実施例1と同様に、表1に従い造粒体を作製した。ただし、実施例9~10は、造粒工程において、攪拌造粒機に替えて押出造粒機(縦出し成形機、ユニバース株式会社製)を用いた。
【0033】
二酸化炭素吸収実験
実施例1~実施例10の造粒体(二酸化炭素吸収材)に対して、以下のとおり、二酸化炭素吸収実験を行った。
(1)COセンサーを備えたデシケーター(縦28cm、横26cm、高さ41cm、空間体積29848cm、真空デシケーター VLH型、アズワン株式会社製)内の空気を、真空ポンプを使用して抜いた。
(2)デシケーター内にCOボンベを使用してCO3000ppmを充満させた。
(3)デシケーター内に、実施例1の造粒体を30g設置した。
(4)COの損失分を補充するため、COボンベを用いてCOが3000ppmになるまで充満させた。
(4)デシケーター内のCO濃度を1時間測定した。前半の30分は30秒ごとに測定し、後半の30分は1分ごとに測定した。
(5)測定開示時のCO濃度(3000ppm)から1時間後のCO濃度を引いた値をCOの吸収量とした。実施例1について3回測定を行い、3回の平均値を平均吸収量とした。なお、いずれの測定も室温(外部系から加熱も冷却もしていない状態の温度)で行った。
(6)実施例2~10についても同様に測定を行い、平均吸収量を算出した。
【0034】
実施例1~10の平均吸収量を以下に示す。
【表1】
【0035】
実施例1~実施例10の二酸化炭素吸収材は、導入二酸化炭素3000ppmの半分以上を60分間で吸収した。吸収量は、後述の実施例11~13と比較すると、約1.3倍増加した。すなわち、手混合よりも機械混合の方が優れた効果を示した。さらに、吸収量は、後述の比較例1~4と比較すると、約4倍増加した。
【0036】
[実施例11]
(1)重量比が2:1となるように、水酸化カルシウムを30.0g、珪藻土を15.0g計量した(計量工程)。
(2)水酸化カルシウムと珪藻土の粉体をポリ袋にいれ15分間よく振って、手混合により乾式混合を行った(手混合工程)。
(3)混合物が塊状となり流動化しない程度となる最大量の水を添加し混錬した(混錬工程)。
(4)混錬した混合物を16mm径の篩に通して造粒体を得た(分級・造粒工程)。
【0037】
[実施例12~13]
実施例12については、8mm径の篩を使用した以外は、実施例11と同様に造粒体を作製した。実施例13については、4mm径の篩を使用した以外は、実施例11と同様に造粒体を作製した。
【0038】
実施例11~13についても同様に二酸化炭素吸収実験を行い、平均吸収量を算出した。平均吸収量を以下に示す。
【表2】
【0039】
実施例11~実施例13の二酸化炭素吸収材は、後述の比較例1~4と比較すると約3倍の吸収性能を有していることがわかる。さらに、実施例11~実施例13では、粒度が小さくなるほど平均吸収量が増加した。これは、造粒体を細かくしたことで、造粒体の表面積(すなわち二酸化炭素の吸収面)が増加したことによると考えられる。なお、実施例11の造粒体は、24時間後の二酸化炭素濃度を1ppmまで減少させた。
【0040】
[比較例1~4]
比較例1は、乾燥させた水酸化カルシウムの粉粒体である。ビーカーに収容した状態で、実施例1と同様に二酸化炭素吸収量を測定した。比較例2は、水で湿らせた水酸化カルシウムの粉粒体である。ビーカーに収容した状態で、実施例1と同様に二酸化炭素吸収量を測定した。比較例3は、一部を水で浸した水酸化カルシウムの粉粒体である。ビーカーに収容した状態で、実施例1と同様に二酸化炭素吸収量を測定した。比較例4は、一部を水で浸した水酸化カルシウムの粉粒体である。シャーレに収容した状態で、実施例1と同様に二酸化炭素吸収量を測定した。
【0041】
比較例1~4については、各1回ずつ二酸化炭素吸収実験を行った。吸収量を以下に示す。
【表3】
【0042】
比較例1の乾燥した水酸化カルシウムでは二酸化炭素を約500ppm吸収した。比較例2では、水酸化カルシウムに水を直接添加したことにより吸収量が増加したと考えられる。比較例3では、水で浸したことにより水酸化カルシウムの表面積(二酸化炭素の吸収面)が減少し、吸収量が減少したと考えられる。比較例4では、容器をシャーレにすることで吸収面が増加し、吸収量が増加したと考えられる。
【0043】
図1に、二酸化炭素を理論吸収量の80%まで吸収した場合の実施例3のX線回折結果を示す。実施例3造粒体では、二酸化炭素の吸収量に相当する炭酸カルシウム(CaCO)の開設ピーク(〇マーク参照)が観察された。二酸化炭素を吸収した結果として、カルサイト型の炭酸カルシウムが生成されたことがわかる。また、実施例3造粒体には、水酸化カルシウム(Ca(OH))のピークが多く存在し、水酸化カルシウムの残量があることが確認された。このことから、さらにCOを吸収することが可能であると考えられる。二酸化炭素吸収材には、二酸化炭素の吸収後であっても外観上の膨れや崩壊などの変化はなかった。
【0044】
本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
図1