(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】回転角度検出装置及び電気制御装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/14 20060101AFI20240828BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G01D5/14 F
G01D5/245 110L
(21)【出願番号】P 2022076945
(22)【出願日】2022-05-09
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達也
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-093418(JP,A)
【文献】特開2006-258741(JP,A)
【文献】特開2013-061346(JP,A)
【文献】特開2013-205032(JP,A)
【文献】特開2007-269281(JP,A)
【文献】特開2009-159788(JP,A)
【文献】特開2009-037513(JP,A)
【文献】米国特許第05164668(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられている磁界発生部と、
前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、
前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を覆う磁界伝達部と
を備え、
前記磁界発生部は、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有し、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を覆う第1磁界伝達部
からなり、
前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、
前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部の近傍に設けられており、
前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部から発生する前記磁界を前記磁界検出部に印加させる機能を有するように構成され、
前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられている磁界発生部と、
前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、
前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を覆う磁界伝達部と
を備え、
前記磁界発生部は、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有し、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、
前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を覆う第1磁界伝達部及び前記磁界検出部から見たときにおける他方側の側面の一部を覆う第2磁界伝達部
からなり、
前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、
前記第2磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、
前記磁界伝達部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部と前記第2磁界伝達部の前記第1端部との間に前記磁界検出部を挟むようにして設けられて
おり、
前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部から発生する前記磁界を前記磁界検出部に印加させる機能を有するように構成され、
前記第1磁界伝達部及び前記第2磁界伝達部は、前記回転軸に沿って見たときに、前記回転軸を中心とする同一周回上に設けられており、
前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とす
る回転角度検出装置。
【請求項3】
前記回転軸に沿って見たときに、前記回転軸及び前記第1磁界伝達部の前記第2端部を結ぶ第1線分と前記回転軸及び前記第2磁界伝達部の前記第2端部を結ぶ第2線分とにより形成される角度が、180°以下であることを特徴とする請求項2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記角度が、60°以上180°以下であることを特徴とする請求項3に記載の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記角度を、前記第1線分と、前記回転軸及び前記磁界検出部を結ぶ第3線分とにより形成される第1角度と、前記第2線分と前記第3線分とにより形成される第2角度とに分割したときに、前記第1角度と前記第2角度とが同一であることを特徴とする請求項3又は4に記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
前記角度を、前記第1線分と、前記回転軸及び前記磁界検出部を結ぶ第3線分とにより形成される第1角度と、前記第2線分と前記第3線分とにより形成される第2角度とに分割したときに、前記第1角度と前記第2角度とが異なることを特徴とする請求項3又は4に記載の回転角度検出装置。
【請求項7】
前記第1磁界伝達部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部を含む第1部分と、前記第1磁界伝達部の前記第2端部を含む第2部分とを有し、
前記第2磁界伝達部は、前記第2磁界伝達部の前記第1端部を含む第1部分と、前記第2磁界伝達部の前記第2端部を含む第2部分とを有し、
前記第1磁界伝達部の前記第1部分は、前記磁界発生部の前記側面から離れる方向に折り曲げられている部分であり、
前記第1磁界伝達部の前記第2部分は、前記磁界発生部の側面に対向する部分であり、
前記第2磁界伝達部の前記第1部分は、前記磁界発生部の前記側面から離れる方向に折り曲げられている部分であり、
前記第2磁界伝達部の前記第2部分は、前記磁界発生部の側面に対向する部分であり、
前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1部分と前記第2磁界伝達部の前記第1部分との間に挟まれるようにして設けられていることを特徴とする請求項2に記載の回転角度検出装置。
【請求項8】
前記第1磁界伝達部の前記第2部分及び前記第2磁界伝達部の前記第2部分とは、前記磁界発生部の周方向において、前記磁界発生部の側面との間に均等な間隔を有することを特徴とする請求項7に記載の回転角度検出装置。
【請求項9】
前記第1磁界伝達部の前記第2部分及び前記第2磁界伝達部の前記第2部分とは、前記磁界発生部の周方向において、前記磁界発生部の側面との間に不均等な間隔を有することを特徴とする請求項7に記載の回転角度検出装置。
【請求項10】
前記磁界検出部は、第1磁界検出部と第2磁界検出部とを含み、
前記第1磁界検出部及び前記第2磁界検出部は、前記磁界伝達部の幅方向中心を対称軸とした線対称位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項11】
前記第1磁界検出部及び前記第2磁界検出部は、前記磁界発生部の前記側面から同一距離で離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の回転角度検出装置。
【請求項12】
前記磁界発生部は、前記第1方向に着磁されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項13】
前記磁界検出部を少なくとも保持する第1モールド部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項14】
前記磁界伝達部を保持する第2モールド部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項15】
前記磁界検出部を少なくとも保持する第1モールド部と、前記磁界伝達部を保持する第2モールド部とが一体化されたモールド部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項16】
所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられており、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置し、外周縁が実質的に円形状を有する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有する磁界発生部から発生する磁界を検知することで、前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、
前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を被覆可能な磁界伝達部と
を備え、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を被覆可能な第1磁界伝達部
からなり、
前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、
前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部の近傍に設けられており、
前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部から発生する前記磁界を前記磁界検出部に印加させる機能を有するように構成され、
前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項17】
所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられており、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置し、外周縁が実質的に円形状を有する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有する磁界発生部から発生する磁界を検知することで、前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、
前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を被覆可能な磁界伝達部と
を備え、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、
前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を覆う第1磁界伝達部及び前記磁界検出部から見たときにおける他方側の側面の一部を覆う第2磁界伝達部
からなり、
前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、
前記第2磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、
前記磁界伝達部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部と前記第2磁界伝達部の前記第1端部との間に前記磁界検出部を挟むようにして設けられて
おり、
前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、
前記磁界伝達部は、前記磁界発生部から発生する前記磁界を前記磁界検出部に印加させる機能を有するように構成され、
前記第1磁界伝達部及び前記第2磁界伝達部は、前記回転軸に沿って見たときに、前記回転軸を中心とする同一周回上に設けられており、
前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とす
る回転角度検出装置。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の回転角度検出装置を備えることを特徴とする電気制御装置。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の回転角度検出装置と、モータとを少なくとも備え、
前記回転角度検出装置は、前記モータの回転角度を検出することを特徴とするトラクションモータユニット。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の回転角度検出装置と、モータと、マスターシリンダとを少なくとも備え、
前記回転角度検出装置は、前記モータの回転角度を検出することを特徴とするブレーキブースタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置及びそれを備える電気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車におけるステアリングホイール又はパワーステアリングモータの回転位置の検出等の種々の用途で、対象物の角度と対応関係を有する角度検出値を生成する、例えば磁気式の角度センサが広く利用されている。磁気式の角度センサが用いられる角度センサシステムにおいて、一般的に、対象物の回転や直線的な運動に連動して方向が回転する回転磁界を発生する磁界発生部が設けられる。
【0003】
磁気式の角度センサは、互いに位相が異なる複数の検出信号を生成する複数の磁界検出部を備え、複数の検出信号を用いた演算によって角度検出値を生成する。複数の磁界検出部のそれぞれは、少なくとも1つの磁気検出素子を含む。磁気検出素子は、例えば、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界の方向に応じて磁化の方向が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有するスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子(GMR素子、TMR素子等)を含む。
【0004】
磁気式の角度センサにおいては、回転磁界の方向が所定の周期で変化する場合、磁界発生部の径方向の磁界の変化に基づく検出信号及び磁界発生部の周方向の磁界の変化に基づく検出信号のそれぞれの波形は、理想的には、正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形とを含む)になる。各検出信号は、理想的な正弦曲線を描くように変化する理想成分を含む。それとともに、各検出信号は、理想成分に対する1つ又は複数の高調波に相当する1つ又は複数の誤差成分を含む場合がある。各検出信号が理想成分のみからなる場合に角度センサによって算出される角度検出値は、対象物の真の角度に相当する。しかしながら、各検出信号が誤差成分を含み、その波形が正弦曲線から歪む場合、角度検出値に誤差が生じる。このような角度検出値の誤差を生じさせないようにするためには、各検出信号に含まれ得る誤差成分を低減する必要がある。
【0005】
従来、径方向及び周方向の2つの検出信号(又は検出信号の波形)の少なくとも一方に修正係数を乗算(又は除算)して、それらの修正した2つの検出信号(又は検出信号の波形)の最大値の比が、センサデバイスを配置した位置における径方向及び周方向の磁束密度の最大値の比K’と同等となるようにした後、逆正接演算する回転角度検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記回転角度検出装置においては、径方向及び周方向の磁束密度比を変化させることで、回転角度の検出精度を向上させている。しかしながら、磁界発生部から発生し、磁界検出部に印加される磁界(径方向の磁界成分と周方向の磁界成分との合成磁界)の強度には、磁界発生部の回転角度に応じてばらつきが大きい。すなわち、磁界発生部の回転に伴い磁界検出部に印加される磁界の強度の最大値と最小値との差が大きい。そのため、検出信号に修正係数を乗算(又は除算)したとても角度誤差を十分に低減することができないという問題がある。また、磁界検出部から出力される信号に含まれる角度誤差を、例えば多点補正機能等により補正をしたとしても、相対的に大きな角度誤差が補正後の信号に残存してしまうという問題がある。
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、出力信号に含まれる角度誤差を低減することのできる回転角度検出装置及びそれを備える電気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられている磁界発生部と、前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を覆う磁界伝達部とを備え、前記磁界発生部は、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有し、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を覆う第1磁界伝達部からなり、前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部の近傍に設けられており、前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部から発生する前記磁界を前記磁界検出部に印加させる機能を有するように構成され、前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とする回転角度検出装置を提供する。
【0010】
本発明は、所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられており、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置し、外周縁が実質的に円形状を有する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有する磁界発生部から発生する磁界を検知することで、前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を被覆可能な磁界伝達部とを備え、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を被覆可能な第1磁界伝達部からなり、前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部の近傍に設けられており、前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部から発生する前記磁界を前記磁界検出部に印加させる機能を有するように構成され、前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とする回転角度検出装置を提供する。
【0011】
本発明は、上記回転角度検出装置を備えることを特徴とする電気制御装置を提供する。
本発明は、上記回転角度検出装置と、モータとを少なくとも備え、前記回転角度検出装置は、前記モータの回転角度を検出することを特徴とするトラクションモータユニットを提供する。
本発明は、上記回転角度検出装置と、モータと、マスターシリンダとを少なくとも備え、前記回転角度検出装置は、前記モータの回転角度を検出することを特徴とするブレーキブースタを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出力信号に含まれる角度誤差を低減することのできる回転角度検出装置及びそれを備える電気制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の他の態様の概略構成を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の他の態様概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態における磁界検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す平面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図5D】
図5Dは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態における回転角度センサモジュールの概略構成を示す斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図7C】
図7Cは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図7D】
図7Dは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図7E】
図7Eは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図7F】
図7Fは、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成の他の態様を示す平面図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の一実施形態におけるトラクションモータユニットの概略構成を示すブロック図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の一実施形態におけるブレーキブースタの概略構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、試験例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の態様1は、所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられている磁界発生部と、前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を覆う磁界伝達部とを備え、前記磁界発生部は、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有し、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を覆う第1磁界伝達部を少なくとも含み、前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部の近傍に設けられており、前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とする回転角度検出装置である。
【0015】
本発明の態様2は、上記態様1の回転角度検出装置において、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける他方側の側面の一部を覆う第2磁界伝達部を含み、前記第2磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、前記磁界伝達部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部と前記第2磁界伝達部の前記第1端部との間に前記磁界検出部を挟むようにして設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の態様3は、上記態様2の回転角度検出装置において、前記回転軸に沿って見たときに、前記回転軸及び前記第1磁界伝達部の前記第2端部を結ぶ第1線分と前記回転軸及び前記第2磁界伝達部の前記第2端部を結ぶ第2線分とにより形成される角度が、180°以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の態様4は、上記態様3の回転角度検出装置において、前記角度が、60°以上180°以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の態様5は、上記態様3又は態様4の回転角度検出装置において、前記角度を、前記第1線分と、前記回転軸及び前記磁界検出部を結ぶ第3線分とにより形成される第1角度と、前記第2線分と前記第3線分とにより形成される第2角度とに分割したときに、前記第1角度と前記第2角度とが同一であることを特徴とする。
【0019】
本発明の態様6は、上記態様3~態様5のいずれか1つの回転角度検出装置において、前記角度を、前記第1線分と、前記回転軸及び前記磁界検出部を結ぶ第3線分とにより形成される第1角度と、前記第2線分と前記第3線分とにより形成される第2角度とに分割したときに、前記第1角度と前記第2角度とが異なることを特徴とする。
【0020】
本発明の態様7は、上記態様2~態様6のいずれか1つの回転角度検出装置において、前記第1磁界伝達部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部を含む第1部分と、前記第1磁界伝達部の前記第2端部を含む第2部分とを有し、前記第2磁界伝達部は、前記第2磁界伝達部の前記第1端部を含む第1部分と、前記第2磁界伝達部の前記第2端部を含む第2部分とを有し、前記第1磁界伝達部の前記第1部分は、前記磁界発生部の前記側面から離れる方向に折り曲げられている部分であり、前記第1磁界伝達部の前記第2部分は、前記磁界発生部の側面に対向する部分であり、前記第2磁界伝達部の前記第1部分は、前記磁界発生部の前記側面から離れる方向に折り曲げられている部分であり、前記第2磁界伝達部の前記第2部分は、前記磁界発生部の側面に対向する部分であり、前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1部分と前記第2磁界伝達部の前記第1部分との間に挟まれるようにして設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明の態様8は、上記態様7の回転角度検出装置において、前記第1磁界伝達部の前記第2部分及び前記第2磁界伝達部の前記第2部分とは、前記磁界発生部の周方向において、前記磁界発生部の側面との間に均等な間隔を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の態様9は、上記態様7又は態様8の回転角度検出装置において、前記第1磁界伝達部の前記第2部分及び前記第2磁界伝達部の前記第2部分とは、前記磁界発生部の周方向において、前記磁界発生部の側面との間に不均等な間隔を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の態様10は、上記態様1~態様9のいずれか1つの回転角度検出装置において、前記磁界検出部は、第1磁界検出部と第2磁界検出部とを含み、前記第1磁界検出部及び前記第2磁界検出部は、前記磁界伝達部の幅方向中心を対称軸とした線対称位置に配置されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の態様11は、上記態様10において、前記第1磁界検出部及び前記第2磁界検出部は、前記磁界発生部の前記側面から同一距離で離れた位置に配置されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の態様12は、上記態様1~態様11のいずれか1つの回転角度検出装置において、前記磁界発生部は、前記第1方向に着磁されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の態様13は、上記態様1~態様12のいずれか1つの回転角度検出装置において、前記磁界検出部を少なくとも保持する第1モールド部を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の態様14は、上記態様1~態様13のいずれか1つの回転角度検出装置において、前記磁界伝達部を保持する第2モールド部を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明の態様15は、上記態様1~12のいずれか1つの回転角度検出装置において、前記磁界検出部を少なくとも保持する第1モールド部と、前記磁界伝達部を保持する第2モールド部とが一体化されたモールド部を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明の態様16は、所定の回転軸を中心に回転する回転体と一体に回転可能に設けられており、外周縁が実質的に円形状を有する第1面と、前記第1面の反対側に位置し、外周縁が実質的に円形状を有する第2面と、前記第1面の外周縁及び前記第2面の外周縁の間に連続する側面とを有する磁界発生部から発生する磁界を検知することで、前記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記磁界発生部から発生する磁界を検知する磁界検出部と、前記磁界発生部との間に所定の間隔をあけるようにして前記磁界発生部の一部を被覆可能な磁界伝達部とを備え、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける一方側の側面の一部を被覆可能な第1磁界伝達部を少なくとも含み、前記第1磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、前記磁界検出部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部の近傍に設けられており、前記磁界発生部から発生する磁界は、第1方向に沿った第1磁界成分と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第2磁界成分とを含み、前記磁界検出部は、前記第1磁界成分及び前記第2磁界成分を検出することを特徴とする回転角度検出装置である。
【0030】
本発明の態様17は、上記態様16の回転角度検出装置において、前記磁界伝達部は、前記磁界発生部の前記側面のうち、前記磁界検出部から見たときにおける他方側の側面の一部を覆う第2磁界伝達部を含み、前記第2磁界伝達部は、前記磁界発生部の周方向に沿った両端部である第1端部及び第2端部を有し、前記磁界伝達部は、前記第1磁界伝達部の前記第1端部と前記第2磁界伝達部の前記第1端部との間に前記磁界検出部を挟むようにして設けられていることを特徴とする。
【0031】
本発明の態様18は、上記態様1~態様17のいずれか1つの回転角度検出装置を備えることを特徴とする電気制御装置である。
【0032】
本発明の態様19は、上記態様1~態様17のいずれか1つの回転角度検出装置と、モータとを少なくとも備え、前記回転角度検出装置は、前記モータの回転角度を検出することを特徴とするトラクションモータユニットである。
【0033】
本発明の態様20は、上記態様1~態様17のいずれか1つの回転角度検出装置と、モータと、マスターシリンダとを少なくとも備え、前記回転角度検出装置は、前記モータの回転角度を検出することを特徴とするブレーキブースタである。
【0034】
本発明の実施の形態に係る回転角度検出装置について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態に係る回転角度検出装置において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X軸、Y軸及びZ軸」を規定している。ここで、X軸及びY軸は、磁石の第1面及び第2面と平行な面内における互いに直交する方向であり、Z軸は、回転軸の軸方向である。また、「平行」とは、対象となる2つの線分、軸、方向、面等が完全な平行状態であることに加え、ほぼ平行であること(交差角度が5°以下の範囲)も含む概念であり、「直交」とは、対象となる2つの線分、軸、方向、面等が完全な直交状態であることに加え、ほぼ直交であること(交差角度が85~95°の範囲)も含む概念であるものとする。
【0035】
本実施形態に係る回転角度検出装置1は、一方向に着磁されている磁石10と、磁石10に対向して配置される磁界検出部21、磁石10との間に所定の間隔をあけるようにして磁石10の一部を覆う磁界伝達部22及び演算処理部23(
図6参照)を有する磁界検出装置2とを備える(
図1等を参照)。本実施形態において、磁界検出部21と演算処理部23とは、両者が一体的に(モノリシックに)形成されワンチップ化されたものであってもよいし、両者が樹脂封止されワンチップ化されたものであってもよいし、両者が別個独立に樹脂封止されたものであってもよい。本実施形態における磁界検出装置2は、回転軸Cを中心として回転する回転体である軸部11と一体的に回転可能に設けられた磁石10の回転角度を検出するために用いられる。
【0036】
磁石10は、回転軸Cを中心として回転する回転体である軸部11と一体的に回転可能に設けられており、軸部11の回転に連動するようにして回転軸Cを中心として回転する。本実施形態において、磁石10は、リング状磁石であって、軸部11の一端部に取り付けられているが、この態様に限定されるものではない。例えば、磁石10は、軸部11の途中に取り付けられていてもよい(
図2A参照)。また、磁石10は、平面視円形状の磁石であって、軸部11の一端部に取り付けられていてもよい(
図2B参照)。磁石10は、それが有する磁化に基づいて磁界を発生させる磁界発生部として機能する。
【0037】
磁石10は、軸部11の回転軸Cに直交する第1面10Aと、第1面10Aの反対側に位置する第2面10Bと、全周に亘って第1面10Aの外周縁及び第2面10Bの外周縁の間に連続する側面10Cを有する。磁石10の第1面10A及び第2面10Bは、XY平面に平行な面であり、側面10Cは、Z軸に平行な面である。磁石10は、第1面10A及び第2面10Bの重心(中心)と軸部11の回転軸Cとを一致させるようにして、軸部11の一端部に取り付けられている(
図1等を参照)。磁石10は、軸部11の回転軸Cに直交する一方向(第1面10A及び第2面10Bに平行な一方向)に磁化されている。
【0038】
図3に示すように、磁石10の厚さT
10(Z軸方向の長さ)は、特に限定されるものではなく、例えば、2~10mmに設定され得る。磁石10の厚さT
10が相対的に薄いと、軸部11の軸方向のガタが発生した場合に、磁界検出部21が正常に動作するための必要最小磁界の確保が難しくなるおそれがある。磁石の厚さT
10が相対的に厚いと、回転角度検出装置1の製造コストが増大するとともに、回転角度検出装置1が相対的に重くなり、また回転角度検出装置1の設置スペースが増大してしまうおそれがある。
【0039】
磁石10から発生する磁界Hは、第1方向(磁石10の径方向)に沿った第1磁界成分Hrと、第1方向に直交する第2方向(磁石10の周方向)に沿った第2磁界成分Hθとを含む。本実施形態における磁界検出部21は、磁界検出部21に印加される第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθを検出可能なものであればよい。例えば、本実施形態における磁界検出部21は、第1磁界成分Hrを検出可能な第1磁界検出部211と第2磁界成分Hθを検出可能な第2磁界検出部212とを含む。磁界検出部21(第1磁界検出部211及び第2磁界検出部212)は、例えば、TMR素子、GMR素子等の磁気抵抗効果素子やホール素子等を含んでいてもよい。
【0040】
磁界検出部21(第1磁界検出部211及び第2磁界検出部212)は、印加される磁界の変動を表す電気信号を演算処理部23(
図4参照)に出力する。
【0041】
演算処理部23は、磁界検出部21から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログ-デジタル)変換部231と、A/D変換部231によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理する演算部232とを含んでいればよい(
図4参照)。
【0042】
磁界検出部21から出力される信号(アナログ信号)は、A/D変換部231によりデジタル信号に変換され、当該デジタル信号が演算部232に入力される。演算部232は、A/D変換部231によりアナログ信号から変換されたデジタル信号を補正する補正処理を行って補正信号を生成したり、当該補正信号に基づく演算処理を行ったりする。この演算部232は、例えば、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。
【0043】
図5Aに示すように、磁界伝達部22は、磁石10の側面10Cのうち、磁界検出部21から見たときにおける一方側の側面10Cの一部を覆う第1磁界伝達部221と、他方側の側面10Cの一部を覆う第2磁界伝達部222とを含む。磁界伝達部22は、磁石10から発生する磁界を磁界検出部21まで伝達させ、当該磁界を磁界検出部21に印加させるヨークとして機能するものである。本実施形態における磁界伝達部22が磁石10の側面10Cの一部を覆っていることで、磁石10の回転に伴い磁界検出部21に印加される磁界の強度のばらつきを小さくすることができるため、回転角度の検出誤差(角度誤差)を低減することができる。また、磁界伝達部22が磁石10の側面10Cの一部を覆っていることで、磁石10の回転に伴い磁界検出部21に印加される磁界の強度の最小値を相対的に大きくすることができるため、磁石10の相対的な小型化や、磁石10を構成する材料として相対的に安価な材料の採用が可能となる。
【0044】
第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222は、それぞれ、磁石10の側面10Cの周方向に沿った両端部である第1端部221A,222A及び第2端部221B,222Bを有する。磁界検出部21は、第1磁界伝達部221の第1端部221Aと第2磁界伝達部222の第1端部222Aとの間に挟まれていてもよい。なお、磁界検出部21は、第1磁界伝達部221の第1端部221Aと第2磁界伝達部222の第1端部222Aとの間に挟まれていなくてもよい。
【0045】
第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222は、それぞれ、第1端部221A,222Aを含む第1部分2211,2221と、第2端部221B,222Bを含む第2部分2212,2222とを有する。第1部分2211,2221は、折曲部2213,2223を介して、XY面内における磁石10の側面10Cから離れる方向(+X方向)に折り曲げられている部分であり、第2部分2212,2222は、磁石10の側面10Cに対向する部分である。
【0046】
第1磁界伝達部221の第1部分2211の長さと、第2磁界伝達部222の第1部分2221の長さとは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1部分2211,2221の長さが同一であることで、磁界検出部21に印加される磁界のX方向に沿った成分(以下「X成分」という場合がある。)とY方向に沿った成分(以下「Y成分」という場合がある。)とのバランスがより良好になる。なお、第1部分2211,2221の長さとは、折曲部2213,2223と第1端部221A,222Aとの間のX軸に平行な長さを意味する。
【0047】
第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222の第1端部221A,222Aの位置は、磁界検出部21の少なくとも一部を間に挟むような位置であってもよいが(
図5B参照)、磁界検出部21の全体を間に挟むような位置であるのが好ましい(
図5A等参照)。すなわち、Y軸方向に沿って見たときに、磁界検出部21の一部が露出していてもよいが(
図5B参照)、磁界検出部21が第1磁界伝達部221の第1部分2211又は第2磁界伝達部222の第1部分2221により隠れているのが好ましい(
図5A参照)。Y軸方向に沿って見たときに、磁界検出部21が視認できない(磁界検出部21が第1部分2211,2221により隠れていている)ことで、磁界検出部21に印加される磁界のX成分とY成分とのバランスがより良好になる。
【0048】
第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222の第1端部221A,222Aの間隔D22(Y軸方向における間隔)は、それらの第1部分2211,2221の間に磁界検出部21を配置可能な間隔であるのが好ましく、例えば、3~15mm程度であればよい。
【0049】
回転軸C(Z軸方向)に沿って見たときに、回転軸C及び第1磁界伝達部221の第2端部221Bを結ぶ線分と、回転軸C及び第2磁界伝達部222の第2端部222Bを結ぶ線分とにより形成される角度θは、機械角で180°以下であるのが好ましく、60°以上180°以下であるのがより好ましく、100°以上180°以下であるのが特に好ましい。当該角度θが180°以下であることで、角度誤差を効果的に低減することができる。また、当該角度θが180°以下であることで、後述する回転角度センサモジュール100(
図8参照)を、軸部11に対して回転軸Cに直交する方向から着脱することができる。さらに、当該角度θが60°未満であると、角度誤差が大きくなってしまうおそれがある。
【0050】
回転軸C(Z軸方向)に沿って見たときに、上記角度θを、回転軸C及び第1磁界伝達部221の第2端部221Bを結ぶ線分と、回転軸C及び磁界検出部21を結ぶ線分とにより形成される第1角度θ1と、回転軸C及び第2磁界伝達部222の第2端部222Bを結ぶ線分と、回転軸C及び磁界検出部21を結ぶ線分とにより形成される第2角度θ2とに分割した場合において、第1角度θ1と第2角度θ2とは、異なっていてもよいが(
図5C参照)、同一であるのが好ましい(
図5A等参照)。第1角度θ1と第2角度θ2とが同一であることで、第1磁界伝達部221と第2磁界伝達部222とから磁界検出部21に伝達される磁界強度のバランスがより良好になる。なお、本実施形態において、第1角度θ1と第2角度θ2とが同一とは、両角度θ1,θ2が完全に同一である態様のみならず、両角度θ1,θ2の差(絶対値)が0°超5°以下程度である態様も含む概念である。
【0051】
第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222の第2部分2212,2222は、それぞれ、磁石10の側面10Cの湾曲形状に沿うような、かつ磁石10の側面10Cとの間に略均一な間隔G1,G2を形成するような湾曲形状を有している(
図5A等参照)。なお、第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222の第2部分2212,2222は、それぞれ、磁石10の側面10Cとの間に不均一な間隔G1,G2を形成するような屈曲形状を有していてもよい(
図5D参照)。なお、間隔G1,G2は、回転軸C(Z軸)に沿って見たときに、磁石10の側面10Cの接平面(第1面10Aの外周縁の接線)に直交する方向における側面10C及び第2部分2212,2222の間の長さを意味する。間隔G1,G2は、磁石10から発生する磁界を、磁界伝達部21(第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222)を介して磁界検出部21に十分な強度で印加可能となる長さ、かつ回転軸Cが偏心した場合であっても軸部11(回転体)が磁気伝達部22又は磁気伝達部22を保持する第2モールド部102(
図6参照)に接触しない長さであればよく、例えば、0.5~5mm程度であればよい。
【0052】
図3に示すように、磁界伝達部22のW
22(Z軸方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、磁気検出部21の厚さ以上であるのが好ましく、例えば、1~5mm程度であればよい。磁界伝達部22の幅W
22が磁気検出部21の厚さ未満であると、磁気検出部21と磁気伝達部22との組付けに高い精度が必要となる。
【0053】
磁界伝達部22(第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222)の厚みT
22(
図5B参照)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.6~3mm程度であればよい。
【0054】
演算部232(
図4参照)は、磁界検出部21から出力された信号を補正して、検出信号を算出する。第1磁界検出部211における磁気抵抗効果素子40の磁化固定層42の磁化方向と、第2磁界検出部212における磁気抵抗効果素子40の磁化固定層42の磁化方向とは、互いに直交している。理想的には、第1磁界検出部211から出力される信号の位相と、第2磁界検出部212から出力される信号の位相とは、信号周期の1/4、すなわちπ/2(90°)異なっている。演算部232は、第1磁界検出部211からの出力信号S1及び第2磁界検出部212からの出力信号S2に基づいて、検出角度θsを算出する。具体的には、例えば、演算部232は、下記式(1)によって、検出角度θsを算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θs=atan(S1/S2) …(1)
【0055】
式(1)における「atan(S1/S2)」は、検出角度θsを求めるアークタンジェント計算を表している。なお、360°の範囲内で、式(1)における検出角度θsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、出力信号S1と出力信号S2の正負の組み合わせにより、検出角度θsの真の値が、式(1)における検出角度θsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、出力信号S1が正の値のときは、検出角度θsは0°よりも大きく180°よりも小さい。出力信号S1が負の値のときは、検出角度θsは180°よりも大きく360°よりも小さい。出力信号S2が正の値のときは、検出角度θsは、0°以上90°未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。出力信号S2が負の値のときは、検出角度θsは90°よりも大きく270°よりも小さい。演算部232は、式(1)と、上記の出力信号S1及び出力信号S2の正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内で検出角度θsを求める。また、演算部232は、このようにして求められた検出角度θsを、例えばルックアップテーブル(LUT)等により補正してもよい。これにより、検出角度θsに含まれ得る角度誤差をさらに低減することができる。
【0056】
本実施形態における磁界検出装置2は、樹脂等により一体成形されて回転角度センサモジュール100を構成していてもよい(
図6参照)。
図6に示す態様において、回転角度センサモジュール100は、基板(図示を省略)に搭載された磁界検出部21及び演算処理部23を保持する第1モールド部101と、磁界伝達部22を保持する第2モールド部102と、基板に電気的に接続されたコネクタ部(図示を省略)を形成する第3モールド部103とを含む。このような回転角度センサモジュール100によれば、磁石10が設けられた軸部11に対して回転軸Cに直交する方向から容易に取り付けることができる。なお、
図6に示す態様において、第1モールド部101と第2モールド部102とが一体になっているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、第1モールド部101と第2モールド部102とは別体であってもよいし、回転角度センサモジュール100は、少なくとも磁界伝達部22をモールドする第2モールド部102を備えていればよい。
【0057】
本実施形態に係る回転角度検出装置1は、電気制御装置に備えられ得る。本実施形態における電気制御装置としては、例えば、トラクションモータユニット、ブレーキブースタ、電動パワーステアリング装置等が挙げられる。本実施形態におけるトラクションモータユニット300は、例えば、
図8Aに示すように、トラクションモータ301と、回転角度検出装置1と、ECU(Electronic Control Unit)302とを含む。このトラクションモータユニット300において、トラクションモータ301の回転角度が回転角度検出装置1により検出され、当該回転角度に関する情報がECU302に送信される。また、本実施形態におけるブレーキブースタ400は、例えば、
図8Bに示すように、モータ401と、回転角度検出装置1と、マスターシリンダ402と、ECU(Electronic Control Unit)403とを含む。このブレーキブースタ400において、ブレーキペダル(図示省略)を操作するとモータ401が回転し、そのモータ401の回転角度が回転角度検出装置1により検出され、当該回転角度に関する情報がECU403に送信される。上述したように、本実施形態に係る回転角度検出装置1によれば、回転角度を高精度に検出することができるため、上記電気制御装置においてモータやハンドルの回転角度を検出するためのセンサとして特に有用である。
【0058】
本実施形態に係る回転角度検出装置1においては、磁界伝達部22(第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222)が、磁石10の側面10Cを被覆するように、かつ磁界検出部21を間に挟むようにして設けられていることで、磁界検出部21に印加される磁界の強度分布を安定化させることができるため、上記のようにして求められる検出角度θsに含まれ得る角度誤差を効果的に低減することができる。そのため、上記電気制御装置においては、回転角度検出装置1において求められる検出角度θsに基づき、高い精度で制御され得る。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。また、上記実施形態に開示された各要素の寸法やレイアウトなどは、例示であってこれに限定されるものではない。
【0060】
上記実施形態に係る回転角度検出装置1において、磁界伝達部22は、磁石10の側面10Cのうち、磁界検出部21から見たときにおける一方側の側面10Cの一部を覆う第1磁界伝達部221を有し、他方側の側面10Cの一部を覆う第2磁界伝達部222を有していなくてもよい(
図7A参照)。
図7Aに示す態様において、磁界検出部21は、第1磁界伝達部221を介して伝達された磁界が十分な強度で印加され得る程度に、第1磁界伝達部221の第1端部221Aの近傍に位置していればよい。また、磁界伝達部22(第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222)は、磁石10の側面10Cに対向する第2部分2212,2222のみを有するものであってもよい(
図7B、
図7C参照)。
図7B及び
図7Cに示す態様において、磁界検出部21は、第1磁界伝達部221の第1端部221A及び第2磁界伝達部222の第1端部222Aの間に挟まれるように設けられていてもよいし(
図7B参照)、それらの間に挟まれないように設けられていてもよい(
図7C参照)。
【0061】
上記実施形態に係る回転角度検出装置1は、磁界検出部21の冗長性確保のために、2つの磁界検出部21,21’を備えていてもよい。この場合において、2つの磁界検出部21,21’は、回転軸Cと平行な方向(Z軸方向)に並んでいてもよいし(
図7D参照)、磁石10の周方向と平行な方向(Y軸方向)に並んでいてもよいし(
図7E参照)、磁石10の径方向と平行な方向(X軸方向)に並んでいてもよい(
図7F参照)。2つの磁界検出部21,21’がX軸、Y軸及びZ軸のいずれかに沿って並んでいることで、2つの磁界検出部21,21’から出力される信号に含まれる角度誤差を互いに実質的に同一にすることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0063】
[試験例1]
磁石10の直径を54mmとし、磁石10の厚さT
10を5mmとし、磁石10の側面からX軸方向に5mm離した位置に磁界検出部21を配置し、磁界伝達部22の幅W
22を6mmとし、磁界伝達部22の厚みT
22を1mmとした、
図1に示す構成を有する回転角度検出装置1において、角度θを22.5~360°の範囲内で変化させたときに、磁界伝達部22による磁石10の側面13の被覆範囲(角度θ)によって生じる、回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差への影響をシミュレーションにより求めた。結果を
図9に示す。なお、
図9に示すグラフにおいて、横軸は角度θ(deg)であり、縦軸は回転角度検出装置1における角度誤差(deg)である。
【0064】
図9に示す結果から、磁石10の側面10Cの一部を被覆する磁界伝達部22が設けられていることで、検出角度θsに含まれる角度誤差を低減可能であることが確認された。また、当該角度θが60~180°であることで、より好ましくは100~180°であることで、当該角度誤差をさらに低減可能であることが確認された。
【0065】
[試験例2]
[Sample1]
試験例1の回転角度検出装置1(角度θ=180°)において、磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample1)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0066】
[Sample2]
磁界伝達部22を
図5Bに示す態様に変更した以外は、試験例2と同様にして磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample2)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0067】
[Sample3]
磁界伝達部22を
図5Cに示す態様(第1角度θ1=90°,第2角度θ2=70°)に変更した以外は、試験例2と同様にして磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample3)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0068】
[Sample4]
磁界伝達部22を
図5Dに示す態様に変更した以外は、試験例2と同様にして磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample4)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0069】
[Sample5]
磁界伝達部22を
図7Aに示す態様に変更した以外は、試験例2と同様にして磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample5)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0070】
[Sample6]
磁界伝達部22を
図7Bに示す態様に変更した以外は、試験例2と同様にして磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample6)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0071】
[Sample7]
磁界伝達部22を
図7Cに示す態様に変更した以外は、試験例2と同様にして磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample7)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0072】
[Sample8]
磁界伝達部22を備えない態様に変更した以外は、試験例2と同様にして磁石10を回転させたときにおける磁界検出部21に印加される磁界(第1磁界成分Hr及び第2磁界成分Hθの合成磁界)の強度(mT)及び回転角度検出装置1における検出角度θsに含まれる角度誤差(deg)をシミュレーションにより求めた(Sample8)。結果を
図10及び
図11に示す。
【0073】
図10に示すように、磁石10の側面10Cの一部を被覆する磁界伝達部22が設けられていることで、磁界検出部21に印加される磁界の強度のばらつきを低減可能であり、かつ当該磁界強度の最小値を上昇させ得ることが確認された。また、Sample1~4の結果から、磁界伝達部22(第1磁界伝達部221及び第2磁界伝達部222)が、折曲部2213,2223を介して、XY面内における磁石10の側面10Cから離れる方向(+X方向)に折り曲げられている第1部分2211,2221と、磁石10の側面10Cに対向する第2部分2212,2222とを有し、第1部分2211,2221の間に磁界検出部21が設けられていることで、磁界検出部21に印加される磁界の強度のばらつきをさらに低減可能であることが確認された。
図11に示すように、磁石10の側面10Cの一部を被覆する磁界伝達部22が設けられていることで、検出角度θsに含まれる角度誤差を低減可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0074】
1…回転角度検出装置
2…磁界検出装置
21…磁界検出部
211…第1磁界検出部
212…第2磁界検出部
22…磁界伝達部
23…演算部
10…磁石