(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】セラミック物体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20240828BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20240828BHJP
C04B 35/52 20060101ALI20240828BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240828BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240828BHJP
B22D 43/00 20060101ALI20240828BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C04B38/00 304Z
C04B35/64
C04B35/52
B33Y10/00
B33Y80/00
B22D43/00 C
B01D39/20 D
(21)【出願番号】P 2022093303
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2019501500の分割
【原出願日】2017-07-07
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511239074
【氏名又は名称】フォセコ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジュマ,カッシム
(72)【発明者】
【氏名】リーネイ,マイケル
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-234445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0083300(US,A1)
【文献】特許第7148491(JP,B2)
【文献】特表2016-521195(JP,A)
【文献】特開2016-044122(JP,A)
【文献】特開2010-188642(JP,A)
【文献】特表2013-516322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
B22D 43/00
C04B 35/52-536、622-65
C04B 38/00-10
B33Y 10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷セラミック多孔質構造体から得られる、鋳造のための溶融金属を濾過するセラミックフィルタを製造する方法であって、
炭素前駆体を含む3D印刷セラミック多孔質構造体を準備することと、
3D印刷セラミック多孔質構造体に第1の炭素前駆体を含浸させることと、
含浸された3D印刷セラミック多孔質構造体を第2の炭素前駆体で被覆することと、
3D印刷セラミック多孔質構造体の内部および外部に炭素結合のネットワークを導入し、形成するために、含浸および被覆された3D印刷セラミック多孔質構造体を炭化し、熱分解することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
3D印刷セラミック多孔質構造体を準備することは、
炭素前駆体を含むセラミック印刷媒体を3Dセラミックプリンタに提供することと、
3Dセラミックプリンタ、および炭素前駆体を含むセラミック印刷媒体を使用して3Dセラミック構造体を印刷することによって、3D印刷セラミック多孔質構造体を形成することと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3D印刷セラミック多孔質構造体に第1の炭素前駆体を含浸させることは、
第1の炭素前駆体を3D印刷セラミック多孔質構造体を印刷するために使用されるセラミック印刷媒体に添加することと、
3D印刷セラミック多孔質構造体に第1の炭素前駆体を真空含浸させることと、
3D印刷セラミック多孔質構造体に第1の炭素前駆体を噴霧することと、
3D印刷セラミック多孔質構造体を第1の炭素前駆体に浸漬することとのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
3D印刷セラミック多孔質構造体を3D印刷することをさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
炭素前駆体は、
液体樹脂、
粉末炭素、
セラミックバインダ、
セラミック材料
、および
流動学的添加剤、
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
3D印刷セラミック多孔質構造体は炭素前駆体で被覆されて、炭素前駆体が外部に被覆され外部境界層を提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の炭素前駆体および第2の炭素前駆体は異なることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の炭素前駆体は、第2の炭素前駆体よりも高い粘度を有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の炭素前駆体は、第1の炭素前駆体のものとは異なる粒径の粒子を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第2の炭素前駆体は、第1の炭素前駆体のものとは異なるバインダ媒体、異なるセラミック材料、異なる酸化防止剤および/または流動学的添加物を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例は、セラミック物体およびセラミック物体を製造する方法に関する。いくつかの例は、前述のことを害するものではないが、3Dプリントセラミック構造体から得られるセラミック物体を製造する方法に関する。いくつかの特定の例は、セラミックフィルタを含む鋳造のための溶融金属を濾過するフィルタおよびそのような方法に従って製造された鋳造のための溶融金属を濾過するセラミックフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形としても知られる3D印刷は、物体を製造するためのよく知られた技術である。3D印刷技術は、三次元物体を合成するために、異なる印刷材料を使用して、様々な異なる技術およびプロセスを包含する。典型的には、3D印刷では、材料の連続層は、たとえば仮想3DモデルまたはCAD設計に基づいてコンピュータ制御の下で形成され、それはほとんどあらゆる形状または幾何学形状の物体の作成を可能にし得る。
【0003】
典型的には、3D印刷によってセラミック物体を形成するために、最初のセラミック構造体/モデルは3Dセラミックプリンタによって3D印刷される。次いで、3D印刷セラミック構造体は、3D印刷セラミック構造体を焼結する、たとえば溶融/ガラス化/固化させることによって結果として得られるセラミック物体を形成するように焼成される必要がある。しかしながら、従来の3D印刷セラミック構造体は、結果として得られるセラミック物体を形成するために高い焼成温度(たとえば1700℃程度)を必要とし得る。そのような高い焼成温度のために、3D印刷セラミック構造体は焼成プロセス中に収縮し、そして非対称的な変形またはさらには亀裂を受ける可能性がある。したがって、結果として得られるセラミック物体、すなわち焼成された3D印刷構造体から得られるセラミック物体は、乏しい正味形状と、焼成前の3D印刷構造体の初期形状/寸法に対する低い忠実度とを有する可能性がある。
【0004】
さらに、そのような高い焼成温度は、必要とされる高級装置(すなわち、高温キルン)とともに必要とされるエネルギー消費のために製造コストを増大させる可能性がある。さらに、高い焼成温度は、必要な高温に達するのに必要な時間およびその後の冷却時間のために製造生産時間を増加させる可能性がある。
【0005】
本明細書中の任意の以前に発行された文献または任意の背景の列挙または検討は、その文献または背景が技術水準の一部であるかまたは一般常識であることの認識として必ずしも取られるべきではない。本開示の1または複数の態様/例は、1または複数の背景の問題に対処してもしなくてもよい。
【発明の概要】
【0006】
本開示の少なくともいくつかの例に従えば、3D印刷セラミック構造体から得られるセラミック物体を製造するための方法であって、3D印刷セラミック構造体を炭化することを含む方法が提供される。
【0007】
本開示の少なくともいくつかの例に従えば、炭素前駆体を含む3D印刷セラミック構造体を作製することを含む、3Dセラミック構造体を形成するための方法が提供される。
【0008】
本方法は、3Dセラミックプリンタによって印刷されたセラミックフィルタ構造体から得られる、鋳造のための溶融金属を濾過するセラミックフィルタなどのセラミックフィルタを製造するためのものであってもよい。
【0009】
本開示の少なくともいくつかの例に従えば、上記方法のいずれかに従って製造された装置、セラミック物体および/または鋳造のための溶融金属を濾過するセラミックフィルタが提供される。
【0010】
本開示の少なくともいくつかの例に従えば、添付の特許請求の範囲で請求される例が提供される。
【0011】
本発明の詳細な説明および特定の実施形態を理解するのに有用である本開示の様々な例をよりよく理解するために、一例として添付の図面のみを参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】セラミック物体を製造するためのプロセスの概要を概略的に示す。
【
図3】セラミック物体を製造するための他のプロセスの概要を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面は、3D印刷セラミック構造体202から得られるセラミック物体205を製造するための方法100を概略的に示す。本方法は、3D印刷セラミック構造体202を炭化するステップ101を含む。
【0014】
用語「炭化」とは、3D印刷セラミック構造体の炭化におけるように、3D印刷セラミック構造体への炭素結合ネットワークの導入および形成を示すために使用することができる。このような炭化プロセスは、3D印刷セラミック構造体を炭素前駆体(すなわち有機材料/炭素含有化合物)で含浸または被覆することと、印刷セラミック構造体を熱分解すること(すなわち空気/酸素の不在下で3D印刷セラミック構造体を焼成して3D印刷セラミック構造体の内部/周囲の有機材料が炭化されることによって結果として得られるセラミック物体の内部/周囲に炭素結合のネットワークを形成すること)とを含んでもよい。
【0015】
3D印刷セラミック構造体を炭化する行為は、セラミック物体のセラミック粒子/材料を結合し固定する炭素ネットワーク結合を3D印刷セラミック構造に提供するために、3D結合セラミック構造体に炭素結合のネットワークを導入し形成することに関する。このような炭化は、3D印刷セラミック構造体を炭素前駆体材料で含浸および/または被覆し、次いで含浸/被覆された物体を熱分解することによって3D印刷セラミック構造体の内部/外部に炭素ネットワーク結合を形成することによって行われてもよい。あるいは、またはさらに、そのような炭化は、3Dプリンタが3Dセラミック構造体を形成/印刷するために使用するセラミック印刷媒体の前処理/改質、すなわちセラミック印刷媒体への炭素前駆体の添加によって行われてもよい。たとえば、炭素前駆体は、印刷前にセラミック印刷媒体と混合して、3D印刷構造体に炭素前駆体材料をすでに埋め込んでもよい。
【0016】
いくつかの例は、より低い焼成温度が必要とされるという点で利点を提供してもよい。たとえば、ある特定の例では、3D印刷構造体は900℃で熱分解することができるが、熱分解後の結果として得られたセラミック構造体は2700℃の温度に耐えることができるかもしれない。より低い温度を使用する能力は、有利には、3D印刷セラミック構造体が受ける収縮量を減少させ、それによって変形/亀裂量を減少させてもよく、初期の3D印刷セラミック構造体と比較して、結果として得られるセラミック物体の忠実度が高い改良された正味形状をもたらしてもよい。さらに、減少した温度要件および減少した収縮量はまた、結果として生じるセラミック物体のひび割れの危険性を減少させる。高温キルンが必要とされず、加熱/冷却時間が短縮され得るので、減少した温度要件はまた、セラミック物体を製造するためのコストおよび時間スケールを低減し得る。さらにまた、その中に炭素結合のネットワークを導入するように3D印刷セラミック構造体を炭化することは、結果として得られるセラミック物体の構造強度および完全性とともに剛性を増大させることができる。特定の例は、高い耐火品質とともに高い構造強度/完全性を有するセラミック物体が必要とされる、鋳造のための溶融金属を濾過するセラミックフィルタなどのセラミックフィルタの製造において特に有利であり得る。
【0017】
図1は、初期の3D印刷セラミック構造体/モデルから得られる結果として得られるセラミック物体を製造するための方法100を概略的に示す。
【0018】
本方法は、3D印刷セラミック構造体を前処理および/または後処理するためのものであってもよい。たとえば、本方法は、3Dセラミックプリンタによって印刷された後で、初期セラミック構造体/モデルが焼成される前に、初期セラミック構造体/モデルを処理するためのものであってもよい。あるいは、またはさらに、本方法は、3D印刷セラミック構造体/モデルを形成するために3Dセラミックプリンタによって印刷される前にセラミック印刷媒体を前処理するためのものであってもよい。
【0019】
セラミック構造体/前駆体モデルを形成/合成するのに適した任意の3D印刷/積層造形プロセス、特にたとえば、リソグラフィセラミック3D印刷または押出し堆積、粉末床、セラミックジェット印刷または溶融堆積モデリングに基づく3D印刷、が使用されてもよい。
【0020】
ブロック101は、3D印刷セラミック構造体を炭化するプロセスを概略的に表す。そのような炭化プロセスは、3D印刷セラミック構造体中への炭素結合のネットワークの導入に関する。ブロック101aおよび101cに概略的に表されるように、このような炭化プロセスは、3D印刷セラミック構造体を炭素前駆体で含浸101aし、次いで含浸3D印刷セラミック構造体を熱分解101cすること、すなわち含浸3D印刷セラミック構造体を酸素の不存在下で焼成することに対応し得る。3D印刷セラミック構造体が、任意の他の適切な含浸技術、特にたとえば、3D印刷構造体を炭素前駆体でソ―キング、噴霧またはベイジングすることによって炭素前駆体に含浸されて、炭素前駆体を3D印刷構造体の様々な気孔、内部経路および内部に浸漬させてもよいことは理解されるべきである。
【0021】
あるいは、またはさらに、含浸は、前処理プロセスによって、すなわち炭素前駆体をセラミック印刷媒体に添加/混合することによって達成可能であり、セラミック印刷媒体(セラミックプリンタ用のセラミック「インク」)が、このような改質セラミック印刷媒体から形成/印刷された3D印刷セラミック構造体が既に炭素前駆体を含浸しているような炭素前駆体を含む。このようにして、炭化プロセスは、
炭素前駆体を含むセラミック印刷媒体を3Dセラミックプリンタに提供することと、
前記3Dセラミックプリンタと前記炭素前駆体を含むセラミック印刷媒体とを用いて前記3Dセラミック構造体を印刷することによって、前記3D印刷構造体を形成することと、
3D印刷セラミック構造体を熱分解することとを含んでもよい。
【0022】
あるいは、または含浸プロセスに加えて、炭化プロセスは、3D印刷セラミック構造体を炭素前駆体で被覆101bし、次いで被覆された3D印刷セラミック構造体を熱分解101d、すなわち酸素の不存在下で被覆された3D印刷セラミック構造体を焼成することを含んでもよい。3D印刷セラミック構造体は、任意の他の適切な被覆技術によって、特にたとえば、3D印刷構造体を、炭素前駆体が外部に外部境界層で被覆されて設けられるような炭素前駆体で、浸漬、噴霧、塗装することによって炭素前駆体で被覆されてもよいことは理解されるべきである。
【0023】
本明細書で使用するとき、「前駆体」とは、それから他の物質が形成される物質を意味するために使用してもよく、たとえば、それを介して炭化に続いて、炭素結合のネットワークが形成される炭素前駆体などである。炭素前駆体は、たとえば、液体樹脂、粉末炭素、セラミックバインダ、セラミック材料、酸化防止剤、および流動学的添加剤を含んでもよい。特定の例において、炭素前駆体はフェノール液体樹脂を含み、他の例において、炭素前駆体は炭素スラリを含んでもよい。
【0024】
炭素前駆体材料中に酸化防止剤を使用することは、耐火性を有することが要求される、結果として得られるセラミック物体の使用に特に有利であってもよく、すなわち、セラミック物体には、高温弾性および高度の構造強度、そして、鋳造のための溶融金属を濾過するセラミックフィルタに要求され得るような完全性を有することが要求される。結果として得られるセラミック物体中の炭素結合のネットワーク中の炭素(3D印刷セラミック構造体の炭化によって形成される)は、存在する空気中で600℃を超える温度で酸化してもよい。したがって、炭素前駆体材料中に酸化防止剤を使用すると、そのような酸化を減少させることができ、存在する空気中で600℃を超える結果として得られるセラミック物体温度の使用を可能にすることができる。3D印刷セラミック構造体の炭化は、液体/溶融金属の塗布時に炭素が非湿潤性であるので、鋳造のための溶融金属の濾過などの用途においても有利である。
【0025】
図1の方法は、とりわけ1つの可能性のあるシナリオを表す。すべてのブロックが必須というわけではない。たとえば、a)含浸101aおよび熱分解101c、またはb)被覆101bおよび熱分解101dのうちの一方または他方が実行されてもよい。
【0026】
さらに、ブロック101a~101dは、順序が乱れて実行されてもよい。たとえば、3D印刷セラミック構造体を含浸させ101a、次いで熱分解101cし、次いで被覆101bし、続いてさらなる熱分解プロセス101dを行ってもよい。あるいは、3D印刷セラミック構造体を含浸させ101a、次いで被覆101bし、その後に単一の熱分解プロセスを実施することができる。したがって、特定の例では、ブロックのうちの1または複数は、異なる順序で、または時間的に重複して、直列にまたは並列に実行されてもよいことは理解されるべきである。同様に、示したように、ブロックのうちの1または複数を省略、または追加、もしくは方法の何らかの組合せで変更してもよい。
【0027】
図2は、本開示の方法を含む全体プロセス200のブロック図を概略的に示す。
【0028】
3Dセラミックプリンタ201は、
図1の方法および
図2のプロセスを経ると、セラミック/前駆体を結果として得られるセラミック物体205に実際に形成する初期3Dセラミック構造/モデルを印刷する。
【0029】
3D印刷セラミック構造体を焼成する前に、3D印刷セラミック構造体202を直接焼成する(3D印刷セラミック構造体からセラミック物体を製造するために従来行われてきたように)代わりに、
図1に示されるように、炭化プロセス101が施される。
図2の例では、炭化プロセスは、含浸プロセス101a、特に真空含浸プロセス101a’であって、それを介して3D印刷セラミック構造体に第1の炭素前駆体101a”を含浸させる、真空含浸プロセス101aを含む。
【0030】
第1の炭素前駆体は、液体樹脂、粉末炭素、セラミックバインダ、セラミック材料、酸化防止剤、および流動学的添加剤のうちの1または複数を含んでもよい。
【0031】
次いで、含浸された3D印刷セラミック構造体203には、被覆プロセス101b’が施され、該被覆プロセス101b’において、第1の炭素前駆体を含浸させた3D印刷セラミック構造体203が第2の炭素前駆体101b”で被覆される。第1および第2の炭素前駆体101a”,101b”は、異なる、すなわち異なる組成を有してもよく、異なる特性を有するように構成されてもよい。たとえば、第1の炭素前駆体101a”は、第2の炭素前駆体101b”よりも高い粘度を有するように構成されてもよい。これは、含浸プロセス101a’における3D印刷セラミック構造体への含浸および浸漬を容易にすることができる。第2の炭素前駆体101b”は、優れた耐火特性を提供するように、および/または増加した弾力性、剛性、構造強度および完全性の外部境界層被覆を提供するように構成してもよい。たとえば、第2の炭素前駆体は、第1の炭素前駆体のものとは異なる(たとえば、より大きい)粒径の炭素粒子を含んでもよい。第2の炭素前駆体は、第1の炭素前駆体のものとは異なるバインダ媒体、異なるセラミック材料、異なる酸化防止剤および/または異なる流動学的添加剤を含んでもよい。いくつかの例では、第1の炭素前駆体は酸化防止剤を含まなくてもよい一方、3D印刷セラミック構造体の外側全体を被覆するための第2の炭素前駆体は酸化防止剤を含んでもよい。
【0032】
次いで、含浸および被覆された3D印刷セラミック構造体204は、101c’および101d’を参照して示されるように、熱分解されて、結果として得られるセラミック物体205を形成するが、該セラミック物体205において、3d印刷セラミック構造体のセラミック材料が焼結/溶融/ガラス化されて、前駆体の炭素材料が、結果として得られたセラミック物体の内部および外部に炭素結合のネットワークを形成している。
【0033】
図3は、従来のセラミック印刷媒体/材料を使用する代わりに、印刷媒体300aが炭素前駆体300bの添加/混合によって前処理される、3Dセラミック構造体305を形成するための代替方法を含む全体プロセス300のブロック図を概略的に示す。たとえば、セラミック印刷媒体のバインダは、熱分解プロセスのための炭素前駆体として作用することができる炭素含有化合物であってもよい。
【0034】
本方法は、炭素前駆体300aを含む3D印刷セラミック構造体305を作成することを含む。このような方法は、炭素前駆体300aをセラミック印刷媒体300bに添加し、それを3Dセラミックプリンタ201に提供することを含んでもよい。次いで、3Dセラミックプリンタ201は、炭素前駆体300aを含むセラミック印刷媒体300bを用いて3D印刷セラミック構造体302を形成/印刷し、その結果、3D印刷セラミック構造体302は炭素前駆体を含む。3D印刷セラミック構造体302は既に炭素前駆体を含むので、上述したさらなる含浸または被覆工程は必要とされないかもしれない。しかしながら、そのようなさらなる含浸101cおよび被覆1014dプロセスは、3D印刷セラミック構造体に炭素前駆体を染み込ませる、および/または各プロセスから異なる炭素前駆体を提供するように実行可能であることは理解されるべきである。
【0035】
次いで、ブロック301を参照して示されるように、3D印刷セラミック構造体302は熱分解されて、結果として得られるセラミック物体305を形成するが、該セラミック物体305においては、3D印刷セラミック構造体のセラミック材料が焼結/溶融/ガラス化されて、前駆体の炭素材料が、結果として得られるセラミック物体の内部および外部に炭素結合のネットワークを形成している。
【0036】
上述の方法およびプロセスは、セラミックフィルタ、たとえば金属濾過用のセラミック多孔質鋳造フィルタなどのセラミック物体を製造するために使用されてもよく、その場合、初期セラミック多孔質構造体(鋳造のための溶融金属を濾過するセラミック発泡フィルタと同様)が、3Dセラミックプリンタによって印刷され、次いで、上述したように炭化プロセスが施される。
【0037】
いくつかの例では、3D印刷セラミック構造体は、たとえば、(たとえば焼成後に)溶融金属の濾過を可能にするために適切なサイズおよび寸法にされた複数の細孔および/または経路の相互接続ネットワークを含むように多孔質になるように印刷されてもよい。
【0038】
本開示の例は、フローチャートおよび概略ブロック図を使用して説明されてきた。各ブロック(フローチャートおよびブロック図)、および各ブロックの組合せは、1または複数のブロックで指定された機能を実施するのに適した任意の手段、装置または機械によって実施することができることが理解されるであろう。したがって、これらのブロックは、指定された機能を実行するための手段、装置または機械の組合せ、および指定された機能を実行するための動作の組合せをサポートする。
【0039】
いくつかの例を参照して特徴を説明したが、それらの特徴は、説明されているかどうかにかかわらず、他の例において存在してもよい。本開示の種々の例は前述の段落に記載されているが、与えられた実施例に対する変形は、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく可能であることが理解されるべきである。たとえば、含浸、被覆および熱分解工程の順序および順番は上記のように変更してもよい。
【0040】
「含む(comprise)」という用語は、この明細書では排他的な意味ではなく包括的な意味で使用されている。すなわち、XがYを含むとの言及は、Xが1つのYだけを含んでもよく、または1つより多いYを含んでもよいことを示す。排他的意味で「含む(comprise)」を使用することを意図する場合には、文脈において、「1つだけを含む…」と言及する、または「から成る(consisting)」を使用することによって明確になっているであろう。
【0041】
本明細書では、種々の実施例について述べている。実施例に関する特徴または機能の説明は、それらの特徴または機能がその実施例に存在することを示している。本文中の用語「例(example)」または「たとえば(for example)」または「してもよい(may)」の使用は、明示的に述べられているかどうかにかかわらず、そのような特徴または機能が実施例として記載されているかどうかにかかわらず、少なくとも記載された実施例に存在し、それらが、必ずしもそうとは限らないが、いくつかのまたは他のすべての実施例に存在し得ることを示している。したがって、「例(example)」、「たとえば(for example)」、または「してもよい(may)」は、例のクラスの中の特定の例をいう。例の特性は、その例のみの特性、またはクラスの特性、またはクラス内のすべての例ではなく一部の例を含むクラスのサブクラスの特性であり得る。
【0042】
本明細書において、「1つの/1つの/その」[特徴、要素、構成要素、手段…](“a/an/the”[feature, element, component, means …])という言及は、明示的に別段のことが述べられていない限り、「少なくとも1つの」[特徴、要素、構成要素、手段…](“at least one”[feature, element, component, means …])として解釈されるべきである。
【0043】
本明細書では、特に重要であると考えられる本開示の実施例のこれらの特徴に注目するように努力しているが、出願人は、特に強調されているかどうかにかかわらず図面に参照される、および/または示される前述の特許可能な特徴または特徴の組み合わせに関して保護を主張するものであると理解されるべきである。
【0044】
本開示の例および添付の特許請求の範囲は、当業者に明らかな任意の方法で適切に組み合わせられてもよい。