IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コルマー コリア カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7545443W/O/Wエマルジョン化粧料組成物およびその製造方法
<>
  • 特許-W/O/Wエマルジョン化粧料組成物およびその製造方法 図1
  • 特許-W/O/Wエマルジョン化粧料組成物およびその製造方法 図2
  • 特許-W/O/Wエマルジョン化粧料組成物およびその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】W/O/Wエマルジョン化粧料組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240828BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240828BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240828BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240828BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240828BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20240828BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240828BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/894
A61K8/92
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022108719
(22)【出願日】2022-07-05
(65)【公開番号】P2023081821
(43)【公開日】2023-06-13
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170050
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513160763
【氏名又は名称】コルマー コリア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KOLMAR KOREA CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Kolmar Korea, 12-11, Deokgogae-gil, Jeonui-myeon, Sejong, 30004, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】アン、ジェウ
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/129482(WO,A1)
【文献】特表平07-509177(JP,A)
【文献】特表2018-510181(JP,A)
【文献】特開2005-132794(JP,A)
【文献】特開2020-059758(JP,A)
【文献】特開2020-070247(JP,A)
【文献】特開2021-059509(JP,A)
【文献】特開2019-156849(JP,A)
【文献】特開2001-025360(JP,A)
【文献】特開2003-048810(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114129462(CN,A)
【文献】特開2002-301356(JP,A)
【文献】特開2002-338433(JP,A)
【文献】特開昭58-183611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンを含むW/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物であって、
前記油中水型エマルジョンは、
W/O乳化剤およびワックスを含むW/O油相部、およびW/O水相部を含み、
前記W/O乳化剤およびワックスを1:0.3~9の重量比で含み、
前記水中油型エマルジョンは、
脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールからなる群から選択される1つ以上を含むO/W乳化剤、ワックスおよび油を含むO/W油相部、および増粘剤およびポリオールを含むO/W水相部を含み、
前記増粘剤および脂肪酸エステル系乳化剤を1:5~29の重量比で含み、前記油およびO/W乳化剤を1:0.4~2.5の重量比で含み、
前記W/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、
前記油中水型エマルジョン100重量部に対して、前記水中油型エマルジョンを300~2,400重量部で含むことを特徴とする、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物。
【請求項2】
前記油中水型エマルジョンは、
前記油中水型エマルジョン総重量基準で、前記W/O乳化剤0.01~10重量%および前記ワックス0.01~10重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物。
【請求項3】
前記水中油型エマルジョンは、
前記水中油型エマルジョン総重量基準で前記O/W乳化剤0.1~28重量%、前記ワックス0.5~5重量%、前記油0.5~40重量%、前記増粘剤0.1~3重量%、および前記ポリオール20~40重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物。
【請求項4】
前記W/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、有効成分をさらに含むが、
前記有効成分はO/W水相部に含まれることを特徴とする、請求項1に記載のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物。
【請求項5】
W/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物の製造方法において、
W/O乳化剤およびワックスを含むW/O油相部、およびW/O水相を含み、前記W/O乳化剤およびワックスを1:0.3~9の重量比で含む油中水型エマルジョンを製造するステップと、
脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールからなる群から選択される1つ以上を含むO/W乳化剤、ワックスおよび油を含むO/W油相部、および増粘剤およびポリオールを含むO/W水相部を含み、前記増粘剤および脂肪酸エステル系乳化剤を1:5~29の重量比で含み、前記油およびO/W乳化剤を1:0.4~2.5の重量比で含む水中油型エマルジョンを製造するステップと、前記水中油型エマルジョンに前記油中水型エマルジョンを投入および攪拌することにより、前記油中水型エマルジョン100重量部に対して、前記水中油型エマルジョンを300~2,400重量部で含むW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造するステップを含むことを特徴とする、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造方法。
【請求項6】
前記W/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、
水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンが乳化して形成された、請求項1に記載のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な乳化化粧料組成物として、O/W(Oil-in-Water)エマルジョン化粧料組成物またはW/O(Water-in-Oil)エマルジョン化粧料組成物が主に使用されている。
【0003】
前記O/Wエマルジョン化粧料組成物の場合には、外相が水相なので、軽くてさわやかな使用感を有する利点があり、活用度が高いが、汗や水によく濡れて落ちる欠点がある。一方、前記W/Oエマルジョン化粧料組成物の場合には、外相が油相なので、保湿効果に優れ、O/Wエマルジョン化粧料組成物に比べて、汗や水に強いという利点があるが、使用感がやや重く、脂っぽい感じを与える欠点がある。
【0004】
これに伴い、最近は、O/Wエマルジョン化粧料組成物の利点とW/Oエマルジョン化粧料組成物の利点の両方を有する、W/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物の使用が増加しつつある。特に、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の場合、軽くてさわやかな使用感を持ちながらも保湿効果に優れ、様々な有効成分を安定的に含有できるという利点があり、その活用度が高い。一例として、大韓民国登録特許第10-2018-0038641号はレチノールを含有するW/O/Wエマルジョンについて開示している。
【0005】
一方、このようなマルチエマルジョンタイプの場合、O/WエマルジョンまたはW/Oエマルジョンより乳化剤形の形成自体が難しく、W/O/Wエマルジョン形態で製造されても、時間の経過または温度の変化に応じて、乳化安定性が低下する問題があった。
【0006】
これに従い、W/O/Wエマルジョンタイプの化粧料組成物として、W/O/Wエマルジョン形態で製造され、安定した乳化状態を維持することができ、O/WエマルジョンとW/Oエマルジョンそれぞれの利点である使用感および保湿感が同時に向上した化粧料組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国登録特許第10-2018-0038641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンを含むW/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物であって、様々な温度条件で優れた乳化安定性を有しながらも使用感および保湿感に優れ、有効成分の皮膚吸収率が向上したW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンをそれぞれ製造し、両エマルジョンを混合してW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造する方法であって、様々な温度条件で優れた乳化安定性を有しながらも使用感、保湿感および有効成分の皮膚吸収率に優れたW/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、上記の技術的課題に限定されず、以下の説明から他の技術的課題を導出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記第1の目的を達成するために、本発明は、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンを含むW/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物であって、前記油中水型エマルジョンは、W/O乳化剤およびワックスを含むW/O油相部およびW/O水相部を含み、前記水中油型エマルジョンは、脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールからなる群から選択される1つ以上を含むO/W乳化剤、ワックスおよび油を含むO/W油相部、および増粘剤およびポリオールを含むO/W水相部を含むW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を提供する。
【0012】
前記W/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンが乳化して形成された可能性がある。
【0013】
前記油中水型エマルジョンは、前記W/O乳化剤およびワックスを1:0.3~9の重量比で含むことができる。
【0014】
前記水中油型エマルジョンは、前記増粘剤および脂肪酸エステル系乳化剤を1:5~29の重量比で含むことができる。
【0015】
前記水中油型エマルジョンは、前記油およびO/W乳化剤を1:0.4~2.5の重量比で含むことができる。
【0016】
前記W/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、前記油中水型エマルジョン100重量部に対して、前記水中油型エマルジョンを300~2,400重量部で含むことができる。
【0017】
前記油中水型エマルジョンは、前記油中水型エマルジョンの総重量基準で、前記W/O乳化剤0.01~10重量%および前記ワックス0.01~10重量%を含むことができる。
【0018】
前記水中油型エマルジョンは、前記水中油型エマルジョン総重量基準で、前記O/W乳化剤0.1~28重量%、前記ワックス0.5~5重量%、前記油0.5~40重量%、前記増粘剤0.1~3重量%および前記ポリオール20~40重量%を含むことができる。
【0019】
前記W/O/Wエマルジョン化粧料組成物は有効成分をさらに含むが、前記有効成分はO/W水相部に含まれてもよい。
【0020】
前記第2の目的を達成するために、本発明は、W/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物の製造方法において、W/O乳化剤およびワックスを含むW/O油相部、およびW/O水相部を含む油中水型エマルジョンを製造するステップと、脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールからなる群から選択される1つ以上を含むO/W乳化剤、ワックスおよび油を含むO/W油相部、および増粘剤およびポリオールを含むO/W水相部を含む水中油型エマルジョンを製造するステップと、前記水中油型エマルジョンに前記油中水型エマルジョンを投入および攪拌することにより、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造するステップを含む、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンの混合により形成されたものであり、様々な温度条件でも優れた乳化安定性を具現し、使用感および保湿感に優れることができる。特に、本発明のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は適正レベルの硬度で形成され、より優れた乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。さらに、本発明のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、最も外側の水相に有効成分を含むことによって向上した経皮吸収率を有することができる。
【0022】
また、本発明のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造方法によれば、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンをそれぞれ製造し、上記の2種類のエマルジョンを混合して、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造することにより、適正レベルの硬度で形成されながらも様々な温度条件で優れた乳化安定性を具現し、使用感および保湿感が良く、有効成分の皮膚吸収率が向上したW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】組成物3の顕微鏡画像を示す図である。
図2】組成物7の顕微鏡画像を示す図である。
図3】組成物8の顕微鏡画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付の図面を参照して、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明は様々な異なる形態で実施することができ、本明細書記載の実施形態に限定されない。なお、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略した。
【0025】
本発明の明細書および特許請求の範囲で使用された用語または単語は、通常または辞書の意味に限定されず、発明者は、その発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0026】
本発明の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0027】
本発明の明細書全体において、「Aおよび/またはB」は、AまたはB、またはAおよびBを意味する。
【0028】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0029】
本発明では、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を提供する。
【0030】
本発明の一実施形態では、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンが乳化して形成されたW/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物であって、W/O乳化剤およびワックスを含むW/O油相部、およびW/O水相部を含む油中水型エマルジョン、および脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールからなる群から選択される1つ以上を含むO/W乳化剤、ワックスおよび油を含むO/W油相部、および増粘剤およびポリオールを含むO/W水相部を含む水中油型エマルジョンが混合および乳化して形成されたW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を提供する。
【0031】
本実施形態では、それぞれ安定化された水中油型エマルジョンと油中水型エマルジョンの混合および乳化により、より簡単な方法で安定な状態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を形成することができる。特に、従来は油中水型エマルジョンを水相成分と混合してW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造したが、本実施形態によれば、従来よりも製造が容易で安定性がさらに向上することができる。
【0032】
本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、低温、常温、高温およびサイクルの温度条件で優れた乳化安定性を具現することにより、様々な温度変化条件においてもW/O/Wエマルジョン状態を安定的に維持することができる。また、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、使用感および保湿感に優れることができる。特に、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、適正レベルの硬度で形成されるので、より優れた乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0033】
また、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、最も外側の水相に、有効成分を含み、向上した経皮吸収率を具現することにより、優れた皮膚改善効果を具現することができる。このとき、前記最も外側の水相はO/W水相部を意味することができる。
【0034】
前記有効成分は、皮膚改善効果を具現できる成分であれば特に限定されない。例えば、前記有効成分は、ナイアシンアミド、コウゾ抽出物、アルブチン、エチルアスコルビルエーテル、アスコルビルグルコシド、 マグネシウムアスコルビルホスファート、及びテトラヘキシルデカン酸アスコルビルを含むことができるが、これらに限定されず、公知の全て皮膚改善効果を有する成分を含むことができる。
【0035】
以下では、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を構成する油中水型エマルジョン成分について詳細に説明する。
【0036】
(1)油中水型エマルジョン:W/O乳化剤
本実施形態の油中水型エマルジョンは、W/O乳化剤を含み、公知の全てのW/O乳化剤成分を全て含むことができる。例えば、前記W/O乳化剤は、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ソルビタンセスキオリエート、ポリグリセリル-4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケート、およびラウリルポリグリセリルー3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選択される 1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0037】
本実施形態の油中水型エマルジョンは、前記油中水型エマルジョン総重量基準で、W/O乳化剤を0.01~10重量%、具体的には0.04~7重量%、より具体的には1~7重量%で含んでもよい。特に、本実施形態の油中水型エマルジョンが上記油中水型エマルジョン総重量基準でW/O乳化剤を1~7重量%で含むとき、本実施形態による、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感、および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0038】
もし、本実施形態の油中水型エマルジョンが前記油中水型エマルジョン総重量基準でW/O乳化剤を0.01重量%未満で含む場合には、乳化自体が適切にできず、油中水型エマルジョンの形成が難しい可能性がある。一方、本実施形態の油中水型エマルジョンが前記油中水型エマルジョン総重量基準でW/O乳化剤を10重量%超で含む場合には、W/O乳化剤を0.01~10重量%で含む場合より、乳化安定性、使用感、保湿感、および皮膚吸収率が低下する可能性がある。
【0039】
(2)油中水型エマルジョン:ワックス
本実施形態の油中水型エマルジョンはワックスを含み、公知の全てのワックス成分を含むことができる。例えば、前記ワックスは、グリセリルベヘネート/エイコサジオエート、ビーズワックス、ホホバワックス、マイクロクリスタリンワックス、シアバター、セレシンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、オゾケライト、ペトロラタムおよびキャンデリラワックスからなる群から選択される1つ以上を含むことができる。具体的に、前記ワックスは、ビーズワックスおよびキャンデリラワックスからなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0040】
本実施形態の油中水型エマルジョンは、前記油中水型エマルジョンの総重量基準でワックスを0.01~10重量%、具体的には1~9重量%、より具体的には3~8.5重量%で含んでもよい。特に、本実施形態の油中水型エマルジョンが前記油中水型エマルジョンの総重量基準でワックスを3~8.5重量%で含むとき、本実施形態による、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0041】
もし、本実施形態の油中水型エマルジョンが前記油中水型エマルジョンの総重量基準でワックスを0.01重量%未満で含む場合には、適正レベルの硬度が形成されず、油中水型エマルジョンと水中油型エマルジョンの密度差が大きくなり、最終剤形において層分離が生じる問題があるかもしれない。一方、本実施形態の油中水型エマルジョンが前記油中水型エマルジョンの総重量基準でワックスを10重量%超で含む場合には、ワックスを0.01~10重量%で含む場合より、乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率が低下する可能性がある。
【0042】
本実施形態の油中水型エマルジョンは、前記W/O乳化剤およびワックスを含むが、両成分を1:0.3~9の重量比で含むことができ、この場合、向上した乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0043】
具体的に、本実施形態の油中水型エマルジョンは、前記W/O乳化剤およびワックスを含むが、両成分を1:0.5~7の重量比で含むことができ、この場合、著しく向上した乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0044】
また、本実施形態の油中水型エマルジョンは、前記W/O乳化剤、ワックスおよび残水以外に、公知の賦形剤または添加剤をさらに含むことができる。
【0045】
例えば、前記賦形剤または添加剤は、界面活性剤、乳化剤、乳化補助剤、シリコーンポリマー、顔料、色素、香料、防腐剤、殺菌剤、酸化安定剤、有機溶媒、柔軟化剤、酸化防止剤、フリーラジカル破壊剤、不透明化剤、安定化剤、エモリエント、消泡剤、保湿剤、ビタミン、昆虫忌避剤、保存剤、抗炎症剤、充填剤、ポリマー、推進剤、塩基性化剤、酸性化剤、着色剤、濃化剤、皮膚コンディショニング剤、美白剤、抗酸化剤、しわ改善剤および溶解化剤からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0046】
なお、以下では、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を構成する水中油型エマルジョン成分について詳細に説明する。
【0047】
(3)水中油型エマルジョン:O/W乳化剤
本実施形態の水中油型エマルジョンは、脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールからなる群から選択される1つ以上を含むO/W乳化剤を含む。
【0048】
具体的に、本実施形態の水中油型エマルジョンは、脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールを含むO/W乳化剤を含むことができ、前記水中油型エマルジョンは脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールを全て含む場合、本実施形態による、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感、皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0049】
前記脂肪酸エステル系乳化剤は、公知の全ての脂肪酸エステル系の成分を含むことができる。例えば、前記脂肪酸エステル系乳化剤は、PEG-100ステアレート、PEG-40ステアレート、グリセリルステアレート、ステアレス-2、ステアレス-6、ステアレス-10、およびステアレス-21からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0050】
前記脂肪酸は公知の全ての脂肪酸成分を含むことができる。例えば、前記脂肪酸は、パルミチン酸、ミリスチン酸、およびステアリン酸からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0051】
前記脂肪アルコールは、公知の全ての脂肪アルコール成分を含む子ができる。例えば、前記脂肪アルコールは、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールからなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0052】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記水中油型エマルジョンの総重量基準でO/W乳化剤を0.1~28重量%、具体的には1~25重量%、より具体的には5~23重量%を含んでもよい。特に、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でO/W乳化剤を5~23重量%で含むとき、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0053】
もし、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でO/W乳化剤を0.1重量%未満で含む場合には、乳化自体が適切にできず、エマルジョンの形成が難しい可能性がある。一方、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でO/W乳化剤を28重量%超で含む場合には、O/W乳化剤を0.1~28重量%で含む場合より、乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率が低下する可能性がある。
【0054】
(4)水中油型エマルジョン:ワックス
本実施形態の水中油型エマルジョンはワックスを含み、公知の全てのワックス成分を含むことができる。例えば、前記ワックスは、グリセリルベヘネート/エイコサジオエート、ビーズワックス、ホホバワックス、マイクロクリスタリンワックス、シアバター、セレシンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、オゾケライト、ペトロラタムおよびキャンデリラワックスからなる群から選択される1つ以上を含むことができる。具体的に、前記ワックスは、ビーズワックスおよびキャンデリラワックスからなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0055】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記水中油型エマルジョンの総重量基準でワックスを0.5~5重量%、具体的には1~4重量%、より具体的には1.5~3重量%で含んでもよい。特に、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でワックスを1.5~3重量%で含むとき、本実施形態による、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0056】
もし、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でワックスを0.5重量%未満で含む場合には、適正レベルの硬度が形成されず、油中水型エマルジョンと水中油型エマルジョンの密度差が大きくなり、最終剤形において層分離が生じる問題があるかもしれない。一方、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でワックスを5重量%超で含む場合には、ワックスを0.5~5重量%で含む場合より、乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率が低下する可能性がある。
【0057】
(5)水中油型エマルジョン:油
本実施形態の水中油型エマルジョンは油を含み、公知の全ての油成分を含むことができる。具体的に、前記油は、植物油、合成油およびシリコーン油からなる群から選択される1つ以上を含むことができる。
【0058】
例えば、前記植物油は、カノーラ油、ひまし油、トウモロコシ油、綿種油、月見草油、ヤシ核油、マレイン酸塩化大豆油、リン脂質油、ローズヒップ油、チャ種子油、マカデミア種子油、ユズ種抽出物およびスクアランからなる群から選択される1つ以上を含むことができる。
【0059】
前記合成油は、エステル油、シロキサン、ジブチルアジペート、C15~C 19アルカン、水添ポリデセン、水添ポリイソブテン、C15~C 19アルカン、ヘキシルデカノール/ヘキシルデシルラウレート、セテアリルオクタノエート、イソセチルステアレート、ジカプリリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、イソノニルイソノナノエート、ジペンタエリスリチルトリ-ポリヒドロキシステアレートおよびテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルからなる群から選択される1つ以上を含むことができる。
【0060】
前記シリコーンオイルは、ジメチコン、カプリリルメチコン、エチルメチコン、フェニルプロエチルメチコン、フェニルトリメチコン、およびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択される1つを含むことができる。
【0061】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記水中油型エマルジョンの総重量基準で油を0.5~40重量%、具体的には1~30重量%、より具体的には10~30重量%で含んでもよい。特に、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準で油を10~30重量%で含むとき、本実施形態による、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0062】
もし、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準で油を0.5重量%未満で含む場合には、水中油型エマルジョンが適切に形成されず、W/O/Wエマルジョンの形成に困難があるかもしれない。一方、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準で油を40重量%超で含む場合には、乳化自体が適切にできず、エマルジョンの形成に困難があるかもしれない。
【0063】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記油およびO/W乳化剤を含むが、前記油およびO/W乳化剤を1:0.4~2.5の重量比で含んでもよい。この場合、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、適正レベルの硬度で形成されながらも優れた乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0064】
具体的に、本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記油およびO/W乳化剤を1:0.5~1.5の重量比で含んでもよい。この場合、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、適正レベルの硬度で形成されながらも著しく優れた乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0065】
(6)水中油型エマルジョン:増粘剤
本実施形態の水中油型エマルジョンは、増粘剤を含み、前記増粘剤は、ポリアクリレート系増粘剤を含むことができる。
【0066】
具体的に、前記ポリアクリレート系増粘剤はポリアクリレート-13を含むことができる。特に、前記ポリアクリレート系増粘剤としてポリアクリレート-13を含むことにより、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、さらに向上した乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0067】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記水中油型エマルジョンの総重量基準で、増粘剤を0.1~3重量%、具体的には0.4~2重量%、より具体的には0.5~1重量%を含んでもよい。特に、本実施形態の水中油型エマルジョンが総重量基準で増粘剤を0.5~1重量%で含む場合、本実施形態による、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0068】
もし、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準で増粘剤を0.1重量%未満で含む場合には、増粘剤を0.1~3重量%で含む場合より、乳化安定性、使用感および保湿感が低下する可能性がある。一方、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準で増粘剤を3重量%超で含有する場合には、乳化自体が適切にできないか、もつれ現象が発生し、エマルジョンの形成が難しい可能性がある。
【0069】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記増粘剤および脂肪酸エステル系乳化剤を含むが、前記増粘剤および脂肪酸エステル系成分を1:5~29の重量比で含むことができる。この場合、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、適正レベルの硬度で形成されながらも優れた乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0070】
具体的に、本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記増粘剤および脂肪酸エステル系乳化剤を含むが、前記増粘剤および脂肪酸エステル系成分を1:8~20の重量比で含むことができる。この場合、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、適正レベルの硬度で形成されながらも著しく優れた乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0071】
(7)水中油型エマルジョン:ポリオール
本実施形態の水中油型エマルジョンはポリオールを含み、前記ポリオールは公知の全てのポリオール成分を含むことができる。
【0072】
例えば、前記ポリオールは、グリセリン、ブチレングリコール、1,3ープロパンジオール、メチルプロパンジオールおよびポリグリセリン-3からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0073】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記水中油型エマルジョンの総重量基準でポリオールを20~40重量%、具体的には22~35重量%、より具体的には25~30重量%で含んでもよい。特に、本実施形態の水中油型エマルジョンが総重量基準でポリオールを25~30重量%で含む場合、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0074】
もし、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でポリオールを20重量%未満で含む場合には、ポリオールを20~40重量%で含む場合より、乳化安定性、使用感および保湿感が低下する可能性がある。一方、本実施形態の水中油型エマルジョンが前記水中油型エマルジョンの総重量基準でポリオールを40重量%超で含む場合には、乳化自体が適切にできないか、もつれ現象が発生し、エマルジョンの形成が難しい可能性がある。
【0075】
また、本実施形態の水中油型エマルジョンは、非イオン性界面活性剤をさらに含んでもよい。具体的に、本実施形態の水中油型エマルジョンは、O/W水相部に前記非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。
【0076】
例えば、前記非イオン性界面活性剤は、PEG-40ヒドロジェネチドキャスターオイル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および PEG-25セチル/ステアリルエーテルからなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。
【0077】
本実施形態の水中油型エマルジョンは、前記水中油型エマルジョンの総重量基準で、非イオン性界面活性剤を2~20重量%、具体的には3~10重量%、より具体的には4~8重量%で含んでもよい。特に、本実施形態の水中油型エマルジョンが非イオン性界面活性剤をさらに含むが、総重量基準で4~8重量%で含む場合、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物の乳化安定性、使用感、保湿感および皮膚吸収率はさらに向上することができる。
【0078】
また、本実施形態の水中油型エマルジョンは、O/W乳化剤、ワックス、油、増粘剤、ポリオールおよび残量の精製水以外に、公知の賦形剤または添加剤をさらに含んでもよい。
【0079】
例えば、前記賦形剤または添加剤は、界面活性剤、乳化剤、乳化補助剤、シリコーンポリマー、顔料、色素、香料、防腐剤、殺菌剤、酸化安定剤、有機溶媒、柔軟化剤、酸化防止剤、フリーラジカル破壊剤、不透明化剤、安定化剤、エモリエント、消泡剤、保湿剤、ビタミン、昆虫忌避剤、保存剤、抗炎症剤、充填剤、ポリマー、推進剤、塩基性化剤、酸性化剤、着色剤、濃化剤、皮膚コンディショニング剤、美白剤、抗酸化剤、しわ改善剤および溶解化剤からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0080】
本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、前記油中水型エマルジョン100重量部に対して、前記水中油型エマルジョンを300~2,400重量部、具体的には300~1,900重量部で含むことができる。特に、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物が前記油中水型エマルジョン100重量部に対して、前記水中油型エマルジョンを300~1,900重量部で含むとき、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物はさらに優れた乳化安定性、使用感および保湿感を具現することができる。
【0081】
もし、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物において、前記油中水型エマルジョン100重量部に対して前記水中油型エマルジョンを300重量部未満で含む場合、または2,400重量部超で含む場合には、W/O/Wエマルジョンの形成自体が難しい可能性があり、W/O/Wエマルジョンが形成されても温度による安定性が低下する可能性がある。
【0082】
本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物の硬度は200~500、具体的には250~450であってもよい。特に、本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物は、硬度が200~500の適正レベルで形成されることにより、優れた使用感、保湿感、剤形安定性を具現することができる。
【0083】
また、本発明では、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0084】
本発明の他の実施形態では、W/O/W(water-in-oil-in-water)エマルジョン化粧料組成物の製造方法において、W/O乳化剤およびワックスを含むW/O油相部およびW/O水相を含む油中水型エマルジョンを製造するステップと、脂肪酸エステル系乳化剤、脂肪酸および脂肪アルコールからなる群から選択される1つ以上を含むO/W乳化剤、ワックスおよび油を含むO/W油相部、および増粘剤およびポリオールを含むO/W水相部を含む水中油型エマルジョンを製造するステップと、前記水中油型エマルジョンに前記油中水型エマルジョンを投入および攪拌することにより、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造するステップを含む、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0085】
本実施形態のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造方法によると、適正レベルの硬度で形成され、様々な温度条件で乳化安定性に優れながらも使用感および保湿感が向上したW/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造することができる。
【0086】
具体的に、前記油中水型エマルジョンを製造するステップでは、前記W/O乳化剤およびワックスを含むW/O油相部と、精製水を含むW/O水相部とをそれぞれ75~85℃に加温した後、前記W /O油相部に前記W/O水相部をゆっくり投入および攪拌し、冷却することにより、W/Oエマルジョンを製造することができる。
【0087】
また、前記水中油型エマルジョンを製造するステップでは、前記O/W乳化剤、ワックスおよび油を含むO/W油相部と、ポリオールおよび残量の精製水を含むO/W水相部をそれぞれ75~85℃に加温した後、前記O/W水相部に前記O/W油相部をゆっくり投入および攪拌し、これを冷却した後、増粘剤を投入および攪拌することにより、O/Wエマルジョンを製造することができる。
【0088】
また、前記W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造するステップでは、上記に従って形成された水中油型エマルジョンに、上記に従って形成された油中水型エマルジョンをゆっくり投入および攪拌し、これを冷却および脱泡することにより、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造することができる。
【0089】
このとき、各ステップで攪拌を行うことができ、例えば、前記攪拌は、HOMO3,000~4,000rpmの条件で約5~15分間実施することができるが、これに限定されない。
【0090】
以下の実施例、比較例、および実験例を通じて本発明のW/O/Wエマルジョン化粧料組成物およびその製造方法について具体的に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されると解釈されるべきではない。
【実施例
【0091】
実験例1: W/O乳化剤およびワックスの割合によるW/Oエマルジョン特性評価
【0092】
(1)W/Oエマルジョンの製造
表1[単位:重量%]に開示されたW/O油相部およびW/O水相部を80℃に加温し、前記W/O油相部に前記W/O水相部をゆっくり投入した後、HOMO3,500rpmの条件で約10分間攪拌を行い、PADDLE25rpmの条件で約40℃に冷却した。
【0093】
このとき、製造例1~5において、W/O乳化剤およびワックスの総量は9.6重量%に等しく維持しながら表2[単位:重量比]のように、両成分の割合を異にして、油中水型エマルジョンを製造した。
【0094】
【表1】
【0095】
このとき、表1の前記W/O乳化剤はセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンを含み、前記ワックスはビーズワックスを含み、前記油はヒドロジェネチドポリデセンを含む。
【0096】
【表2】
【0097】
(2)W/Oエマルジョンの性能評価
上記に従って製造された製造例1~5によるW/Oエマルジョンの乳化度、硬度、使用感および保湿感を評価し、その結果を表3に示した。
【0098】
具体的に、前記乳化状態は肉眼で観察し、安定な乳化状態を形成した場合には「安定」と表記し、層分離、沈殿、凝集または離水などの現象が発生した場合には「不安定」と表記した。この時、前記乳化状態は約1~5週間の乳化状態を観察したものであり、前記サイクルは-20℃で6時間保持、20℃まで6時間かけて加温、20℃で6時間保持、-20℃まで6時間かけて冷却する過程を順次実施した場合を意味する。
【0099】
なお、前記硬度は、RHEO TECH CO,LTDのFUDOH RHEO METER(D TYPE)を用いて測定された。具体的に、前記硬度は乳化安定度を評価した試料を、常温で24時間保管した後に測定され、測定に使用されたPIN規格は20mm PI PINであり、測定深さはDEPTH15mmであり、測定のための移動速度は30cm/sでピーク値測定に設定した。
【0100】
また、前記使用感および保湿感は、20~40代女性20人で構成される試験対象者に試料(W/Oエマルジョン)を1mg/cmずつ取り、測定人の腕の内側に横3cm、縦2cm幅で普段の化粧習慣通り塗布した後、使用感および保湿感を1~10点と評価するようにした。この後、20人の点数を合計した平均値を出した後、偏差を除いた値を表3に示しており、10点に近いほど使用感と保湿感に優れることを意味する。
【0101】
【表3】
【0102】
表3を見ると、油中水型エマルジョンを構成する成分においてW/O乳化剤およびワックスを1:0.3~9の重量比で含む製造例2および3の場合には、低温、常温、高温およびサイクルの全ての条件で安定して乳化状態を維持し、使用感および保湿感に優れることが分かる。
【0103】
また、製造例2~3の場合には、硬度が100~300の適正レベルで形成されることがわかる。
【0104】
一方、製造例1の場合には、低温、常温、高温およびサイクルの全ての条件で不安定であり、硬度が著しく低いため、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造に適していないことが分かる。
【0105】
また、製造例4の場合には層分離が発生し、高温およびサイクル条件で安定した乳化状態を維持できないことがわかり、使用感と保湿感が共に低下することが分かる。製造例5の場合には離水現象が発生し、低温、常温、高温およびサイクルの全ての条件で乳化状態が不安定であり、使用感と保湿感が共に低下することが分かる。特に、製造例4~5は、硬度が400以上に形成され、W/Oエマルジョン自体が硬すぎるように形成されるところ、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物の製造に適していないことがわかる。
【0106】
前記実験例1により、W/OエマルジョンにおいてW/O乳化剤およびワックスを1:0.3~9の重量比で含むとき、乳化安定性、保湿感および使用感が良好で、適正な硬度を有するW/Oエマルジョンを形成することができることを確認した。
【0107】
これにより、以下では、W/OエマルジョンにおいてW/O乳化剤およびワックスを1:0.3~9の重量比で含む製造例2のW/Oエマルジョンを用いて、化粧料組成物を製造し、その特性を評価した。
【0108】
実験例2: O/Wエマルジョンにおける脂肪酸エステル乳化剤と増粘剤の混合割合による化粧料組成物の特性評価
【0109】
(1)O/Wエマルジョンの製造
表4[単位:重量%]に記載の油相および水相をそれぞれ80℃に加温した後、水相に油相をゆっくり投入し、HOMO3,500rpmの条件で約5分間攪拌を行った。次いで、それをPADDLE25rpmの条件で約60℃に冷却した後、最後に増粘剤を投入し、HOMO3,500rpmの条件で約5分間撹拌することにより、O/Wエマルジョンを調製した。
【0110】
【表4】
【0111】
このとき、表4の前記脂肪酸エステル系乳化剤は、PEG-100ステアレートを含み、前記脂肪酸は0.298重量%のパルミチン酸、0.242重量%のミリスチン酸、および0.003重量%のステアリン酸(合計0.54重量%)を含み、前記脂肪アルコールはセチルアルコールを含む。
【0112】
さらに、表4のワックスはビーズワックスを含み、前記油はスクアランを含み、前記増粘剤はポリアクリレート-13を含む。
【0113】
上記の表4[単位:重量%]で脂肪酸エステル乳化剤および増粘剤の総量を10.44重量%に維持するが、両成分の割合を下記の表5[単位:重量比]のように変更することにより、化粧料組成物を製造した。
【0114】
このとき、表5には製造例6の脂肪酸エステル乳化および増粘剤の重量比を一緒に記載しておいた。
【0115】
【表5】
【0116】
(2)化粧料組成物の製造
この後、表6に開示されたことにより、前記O/Wエマルジョンそれぞれに、前記製造例2のW/Oをゆっくり投入しながらHOMO3,500rpmの条件で約10分間攪拌を行った後、これをPADDLE25rpmの条件で約40℃に冷却した後、脱泡することにより、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造した。
【0117】
このとき、W/Oエマルジョン100重量部に対して、O/Wエマルジョンを700重量部に混合することにより、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造した。
【0118】
【表6】
【0119】
(3)化粧料組成物の性能評価
組成物1~9の化粧料組成物について、実験例1と同様に性能評価を行った後、その結果を表7に示した。
【0120】
また、組成物3、7および8の、常温(25℃)条件の顕微鏡写真を図1~3に添付した。このとき、顕微鏡写真はOLYMPUS DP74、BX51(倍率100倍)を用いて25℃のクリーンルームで撮影した。
【0121】
【表7】
【0122】
表7および図1を見ると、本実施例により、水中油型エマルジョンを構成する成分において、粘増剤および脂肪酸エステル系乳化剤を1:5~29の重量比で含む組成物1~4は、W/OエマルジョンおよびO/Wエマルジョンが乳化してW/O/Wエマルジョンを形成し、様々な温度条件で安定した乳化状態を具現することが分かる。また、本実施例による組成物1~4は、使用感および保湿感が非常に優れていることを確認することができる。
【0123】
一方、本実施例に従わず、水中油型エマルジョンを構成する成分において、増粘剤および脂肪酸エステル系乳化剤を1:5~29の重量比で含まない、組成物5~9の場合には、乳化状態が不安定であることが分かり、使用感と保湿感が低下することが分かる。特に、図2~3を見ると、多数のもつれが発生し、安定した乳化剤形を具現できないことが分かる。
【0124】
つまり、上記の内容を総合してみると、W/OエマルジョンおよびO/Wエマルジョンを乳化させて、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造する際、O/Wエマルジョンにおいて増粘剤および脂肪酸エステル系乳化剤を:5~29の重量比で含むことにより、様々な温度条件で乳化安定性に優れ、使用感および保湿感に優れた、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を提供できることが分かる。
【0125】
実験例3: O/WエマルジョンにおけるO/W乳化剤および油の混合割合による化粧料組成物の特性評価
【0126】
(1)O/Wエマルジョンの製造
表8[単位:重量%]に記載の油相および水相をそれぞれ80℃に加温した後、水相に油相をゆっくり投入し、HOMO3,500rpmの条件で約5分間攪拌を行った。続いて、それをPADDLE25rpmの条件で約60℃に冷却し、最後に増粘剤を投入し、HOMO3,500rpmの条件で約5分間攪拌することによってO/Wエマルジョンを調製した。
【0127】
【表8】
【0128】
上記の表8[単位:重量%]において、O/W乳化剤(全体)および油の総量を40.11重量%で維持するが、両成分の含有量を異にしてそれぞれの製造例で製造し、製造例内でO /W乳化剤と油の重量比は表9[単位:重量比]に示した。
【0129】
【表9】
【0130】
(2)化粧料組成物の製造
この後、表10に開示したように、前記O/Wエマルジョンのそれぞれに、上記の製造例2のW/Oエマルジョンをゆっくり投入しながらHOMO3,500rpmの条件で約10分間攪拌を行った後、これをPADDLE25rpmの条件で約40℃に冷却した後、脱泡することにより、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造した。
【0131】
このとき、W/Oエマルジョン100重量部に対して、O/Wエマルジョンを700重量部で混合することにより、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造した。
【0132】
【表10】
【0133】
(3)化粧料組成物の性能評価
組成物10~13の化粧料組成物について、実験例1と同様に性能評価を行った後、その結果を表11に示した。このとき、組成物1は上記の実験例2と同じであるので、さらなる実験は実施せず、表7の結果をそのまま示した。
【0134】
【表11】
【0135】
表11を見ると、本実施例により、水中油型エマルジョンを構成する成分において、油およびO/W乳化剤を1:0.4~2.5の重量比で含む組成物1および10~11は、W/OエマルジョンおよびO/Wエマルジョンが乳化してW/O/Wエマルジョンを形成し、様々な温度条件で安定した乳化状態を具現することが分かる。また、使用感および保湿感が非常に優れていることが確認できる。
【0136】
一方、本実施例に従わず、水中油型エマルジョンを構成する成分において、油およびO/W乳化剤を1:0.4~2.5の重量比で含まない、組成物12~13の場合には、乳化状態が不安定であることが分かり、使用感と保湿感が低下することが分かる。
【0137】
つまり、上記の内容を総合して見ると、W/OエマルジョンおよびO/Wエマルジョンを乳化させ、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造する際、O/Wエマルジョンにおいて油およびO/W乳化剤を1: 0.4~2.5の重量比で含むことにより、様々な温度条件で乳化安定性に優れ、使用感および保湿感に優れた、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を提供できることが分かる。
【0138】
実験例4: W/OエマルジョンおよびO/Wエマルジョンの混合量に応じた化粧料組成物の特性評価
【0139】
(1)化粧料組成物の製造
製造例2のW/Oエマルジョンと製造例6のO/Wエマルジョンを混合し乳化させて化粧料組成物を製造するが、両エマルジョンを表12[単位:重量部]に従った割合で混合して、製造を実施した。
【0140】
【表12】
【0141】
(2)化粧料組成物の性能評価
組成物14~21の化粧料組成物について、実験例1と同様に性能評価を行った後、その結果を表13に示した。
【0142】
【表13】
【0143】
表13を見ると、油中水型化粧料組成物100重量部に対して水中油型化粧料組成物を300~2,400重量部混合して、W/O/Wエマルジョン化粧料組成物を製造する際、様々な温度条件で安定した乳化状態を具現しながらも、優れた使用感および保湿感を同時に具現できることが分かる。
【0144】
実験例5: 経皮吸収率評価
【0145】
下記の組成物22~24を製造し、この約0.3gを皮膚に塗布し、ナイアシンアミドの経皮吸収率を評価した後、その結果を表14および15に示した。
【0146】
このとき、表14には経時的なナイアシンアミド透過量(ppm)の定量測定値を記載しておいた。また、これをもとにナイアシンアミドの総透過量[ナイアシンアミドの総透過量=TOTAL/0.3]および透過率[透過率=ナイアシンアミドの総透過量/200]を計算し、その結果を表15に示した。
【0147】
-組成物22(O/Wエマルジョン):製造例6(O/Wエマルジョン)と同じであるが、水相部にナイアシンアミドを含むように製造
【0148】
-組成物23(W/O/Wエマルジョン):組成物16と同じであるが、W/Oエマルジョンの水相部にナイアシンアミドを含むように製造
【0149】
-組成物24(W/O/Wエマルジョン):組成物16と同じであるが、O/Wエマルジョンの水相部にナイアシンアミドを含むように製造
【0150】
前記組成物22~24において、ナイアシンアミドは全体組成物基準で合計2重量%使用された。
【0151】
【表14】
【0152】
【表15】
【0153】
表14および15を見ると、O/Wエマルジョンの組成物22よりも、W/O/Wエマルジョンの組成物23および24の場合、ナイアシンアミドの経皮吸収率がさらに優れることが分かるところ、W/O/Wエマルジョン形態で化粧料組成物が形成される場合、有効成分の皮膚吸収率がさらに向上できることが分かる。
【0154】
また、W/O/Wエマルジョンでも最も内側の水相にナイアシンアミドを含む組成物23より、最外角水相にナイアシンアミドを含む組成物24の場合、ナイアシンアミドの経皮吸収率がさらに優れることが分かるところ、W/O/Wエマルジョンから形成されるが、最外角水相に有効成分を含有するとき、有効成分が皮膚に効果的に吸収されることが分かる。
【0155】
前述のように、本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の技術を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを、理解できるだろう。したがって、上記の実施例はすべての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一の形態で説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に分散したと説明されている構成要素も組み合わせて実施することができる。
【0156】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3