(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ホームドア装置
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20240828BHJP
E05F 15/40 20150101ALI20240828BHJP
【FI】
B61B1/02
E05F15/40
(21)【出願番号】P 2022109200
(22)【出願日】2022-07-06
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 義明
(72)【発明者】
【氏名】小松 史明
(72)【発明者】
【氏名】日向 克之
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043123(JP,A)
【文献】特開2012-196981(JP,A)
【文献】特開2012-176655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E05F 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道駅のプラットホームに設置されるホームドア装置であって、
第1の乗降口に設けられている第1のホームドアと、
前記第1の乗降口と並ぶ第2の乗降口に設けられている第2のホームドアと、
前記第1のホームドアを収容
する第1の戸袋と、
前記第2のホームドアを収容
する第2の戸袋と、
前記第1のホームドア及び前記第2のホームドアを制御する制御装置と、を備え、
前記第1の戸袋及び前記第2の戸袋は、前記第1の乗降口と前記第2の乗降口との間において、前記第1の乗降口及び前記第2の乗降口の並び方向に沿ってこの順に並んで設けられており、
前記第1の戸袋は、前記第2の戸袋から所定の距離離れている第1壁部と、前記並び方向と交差する方向において
前記第1のホームドアを間に挟んで前記第1壁部と並んでおり、前記第2の戸袋まで延在している第2壁部と、を有し、
前記第1壁部は、前記プラットホームに停車する車両側に面しており、
前記第2壁部は、前記プラットホームに停車する車両と反対側に面しており、
前記プラットホームに停車する車両と反対側において、前記第1の戸袋の内部と外部とは、前記第1壁部及び前記第2壁部のうち前記第2壁部のみによって隔てられ、
前記第2壁部は、前記第1の戸袋と前記第2の戸袋との間の通路を塞ぐ閉鎖位置と、前記第2の戸袋側と反対側に移動させられて前記通路を形成する開放位置との間を移動可能に構成されており、
前記第1壁部は前記プラットホームに対して移動せず、
前記第2壁部が前記閉鎖位置に位置している場合、前記第2壁部の前記第2の戸袋側の端部は、前記第2の戸袋の前記第1の戸袋側の端部より前記第1の戸袋側に位置している、ホームドア装置。
【請求項2】
前記第1の戸袋は、前記第2壁部に設けられている係合部材を更に有し、
前記第2の戸袋は、前記係合部材と係合して前記第2壁部を前記閉鎖位置に固定するロック機構を有する、請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記第2の戸袋は、前記第2壁部が前記閉鎖位置に位置しているか否かを検知する検知センサを有し、
前記制御装置は、前記検知センサにより前記第2壁部が前記閉鎖位置に位置していることが検知されなくなったとき、前記第1のホームドア及び前記第2のホームドアが開いている場合に前記第1のホームドア及び前記第2のホームドアを閉じる動作を実行する、請求項1又は2に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記第2の戸袋は、前記第2壁部が前記閉鎖位置に位置しているか否かを検知する検知センサを有し、
前記制御装置は、前記検知センサにより前記第2壁部が前記閉鎖位置に位置していることが検知されている場合を除き、前記第1のホームドア及び前記第2のホームドアを開く動作を実行しない、請求項1又は2に記載のホームドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗降扉と、乗降扉が内部をスライド移動する戸袋とを有するホームドア装置が記載されている。このホームドア装置は、乗降扉に設けられた第1のレール体と、戸袋に設けられた第2のレール体と、第1のレール体と係合して乗降扉をスライド移動させる第1のレール体案内手段と、第2のレール体と係合して戸袋をスライド移動させる第2のレール体案内手段と、第1のレール体案内手段及び第2のレール体案内手段が設けられ、乗降扉及び戸袋をスライド移動可能に支持する支持部とを備える。戸袋は、支持部の上面全体を覆うように構成され、緊急時に乗降扉側にスライド移動されて緊急脱出領域を形成できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開第2017-100719号公報
【文献】特開第2013-226996号公報
【文献】国際公開第2012/147236号
【文献】特開第2014-043123号公報
【文献】特開第2016-049825号公報
【文献】特開第2015-063300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のホームドア装置では、乗客が車両に乗降する入り口である乗降口同士の間において戸袋が延在しているので、乗客は、乗降口以外から車両に出入りすることができなかった。したがって、緊急時に、ホームドア装置の乗降口と車両側の乗降口とがずれてしまった場合、乗客をプラットホームに脱出させることができないという課題があった。
【0005】
本開示は、乗客をプラットホームに脱出させることが可能なホームドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示の一実施形態によるホームドア装置は、鉄道駅のプラットホームに設置されるホームドア装置である。このホームドア装置は、第1のホームドア、第2のホームドア、第1の戸袋、第2の戸袋、及び制御装置を備える。第1のホームドアは、第1の乗降口に設けられている。第2のホームドアは、第1の乗降口と並ぶ第2の乗降口に設けられている。第1の戸袋は、第1のホームドアを収容可能である。第2の戸袋は、第2のホームドアを収容可能である。制御装置は、第1のホームドア及び第2のホームドアを制御する。第1の戸袋及び第2の戸袋は、第1の乗降口と第2の乗降口との間において、第1の乗降口及び第2の乗降口の並び方向に沿ってこの順に並んで設けられている。第1の戸袋は、第1壁部及び第2壁部を有する。第1壁部は、第2の戸袋から所定の距離離れている。第2壁部は、第1の乗降口及び第2の乗降口の並び方向と交差する方向において第1壁部と並んでいる。第2壁部は、第2の戸袋まで延在している。第2壁部は、第1の戸袋と第2の戸袋との間の通路を塞ぐ閉鎖位置と、第2の戸袋側と反対側に移動させられて通路を形成する開放位置との間を移動可能に構成されている。第2壁部が閉鎖位置に位置している場合、第2壁部の第2の戸袋側の端部は、第2の戸袋の第1の戸袋側の端部より第1の戸袋側に位置している。
【0007】
上記ホームドア装置によれば、第2壁部は、第1の戸袋と第2の戸袋との間の通路を塞ぐ閉鎖位置と、第2の戸袋側と反対側に移動させられて通路を形成する開放位置との間を移動可能に構成されている。これにより、第2壁部を開放位置に移動させることによって、第1の戸袋と第2の戸袋との間の通路を介して乗客をプラットホームに脱出させることができる。
【0008】
[2]上記[1]のホームドア装置において、第1の戸袋は、第2壁部に設けられている係合部材を有してもよい。第2の戸袋は、係合部材と係合して第2壁部を閉鎖位置に固定するロック機構を有してもよい。この場合、第1の戸袋と第2の戸袋との間の通路を開放する必要がない場合に、ロック機構を用いて第2壁部を閉鎖位置に固定することによって第2壁部の移動をより確実に抑制することができる。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]のホームドア装置において、第2の戸袋は、検知センサを有してもよい。検知センサは、第2壁部が閉鎖位置に位置しているか否かを検知してもよい。制御装置は、検知センサにより第2壁部が閉鎖位置に位置していることが検知されなくなったとき、第1のホームドア及び第2のホームドアが開いている場合に第1のホームドア及び第2のホームドアを閉じる動作を実行してもよい。ここで、第1のホームドア及び第2のホームドアは、開いている場合に第1の戸袋と第2の戸袋との間の通路を塞いでしまうことがある。このとき、上記構成によれば、第2壁部が閉鎖位置から移動し始めると同時に第1のホームドア及び第2のホームドアを閉じることによって、通路を開放することができる。これにより、より速やか且つより確実に通路を開放することが可能となるので、より速やか且つより安全に乗客が脱出することが可能となる。
【0010】
[4]上記[1]又は[2]のホームドア装置において、第2の戸袋は、検知センサを有してもよい。検知センサは、第2壁部が閉鎖位置に位置しているか否かを検知してもよい。制御装置は、検知センサにより第2壁部が閉鎖位置に位置していることが検知されている場合を除き、第1のホームドア及び第2のホームドアを開く動作を実行しなくてもよい。ここで、第1のホームドア及び第2のホームドアが開いている場合、第1の戸袋と第2の戸袋との間の通路を塞いでしまうことがある。上記構成によれば、第2壁部が閉鎖位置に位置していない場合に、第1のホームドア及び第2のホームドアが開いて通路を塞ぐことを抑制することができる。これにより、第1の戸袋と第2の戸袋との間の通路をより確実に開放することができるので、乗客がより安全に脱出することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、乗客をプラットホームに脱出させることが可能なホームドア装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、鉄道駅のプラットホームに設置される複数のホームドア装置を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るホームドア装置を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されるホームドア装置を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されるIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示されるV-V線に沿った端面図である。
【
図7】
図7は、ホームドア装置において第1の戸袋の一部分が移動させられた場合を示す正面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示されるホームドア装置の平面図である。
【
図9】
図9は、第1のホームドア及び第2のホームドアが開いている場合のホームドア装置の背面図である。
【
図11】
図11は、係合部材及びロック機構を示す正面図である。
【
図13】
図13は、スライドカバーが閉鎖位置に位置している場合のホームドア装置を示す背面図である。
【
図14】
図14は、スライドカバーが閉鎖位置から開放位置に移動させられる際の係合部材及びロック機構の動作を説明するための図である。
【
図15】
図15は、スライドカバーが閉鎖位置から開放位置に移動させられる際の係合部材及びロック機構の動作を説明するための図である。
【
図16】
図16は、ロック機構によるスライドカバーの固定が解除された場合のホームドア装置を示す背面図である。
【
図18】
図18は、スライドカバーが開放位置に位置している場合のホームドア装置を示す背面図である。
【
図20】
図20は、スライドカバーが閉鎖位置から開放位置に移動させられる際の係合部材及びロック機構の動作を説明するための図である。
【
図21】
図21は、スライドカバーが開放位置から閉鎖位置に移動させられる際の係合部材及びロック機構の動作を説明するための図である。
【
図22】
図22は、スライドカバーが開放位置から閉鎖位置に移動させられる際の係合部材及びロック機構の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本開示によるホームドア装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、鉄道駅のプラットホームに設置される複数のホームドア装置を示す図である。
図1では、車両Cがプラットホームに停車した状態が示されている。
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1は、プラットホームに並んで配置されている複数のホームドア装置のうちの1つである。ホームドア装置1は、プラットホーム上からの乗客の落下や列車との接触を防ぐことを目的として設置される装置であり、例えば可動式ホーム柵である。ホームドア装置は、既に建設されたプラットホーム上に後から設置される。このとき、ホームドア装置が有する構成の寸法は、プラットホームの構造に合わせて決定される。
【0015】
図1では、複数のホームドア装置1,10,100がプラットホーム上に並んで配置されている。複数のホームドア装置1,10は、1つの車両Cに対応して配置されている。ホームドア装置100は、車両Cと車両Cとの間に配置されている。ホームドア装置1,100は、本開示の一実施形態に係るホームドア装置である。ホームドア装置1とホームドア装置10との間には、乗降口E1が設けられている。ホームドア装置10とホームドア装置100との間には、乗降口E3が設けられている。ホームドア装置1に対して乗降口E1と反対側において、乗降口E2が設けられている。各ホームドア装置1,10,100は、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を有している。以下、乗降口E1から乗降口E2に向かう方向をX方向とし、鉛直方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に対して交差する方向をY方向とする。
【0016】
第1のホームドア2及び第2のホームドア3は、Y方向から見て例えば矩形状を呈している。第1のホームドア2及び第2のホームドア3のX方向における長さL1は、例えば1400mmである。なお、各ホームドア装置1,10,100は、車両Cの乗務員室に乗降する乗務員が通る乗降通路を開閉する乗務員ドア(図示省略)を有していてもよい。この乗務員ドアは、例えば車両Cの乗務員室に対応する位置に設けられている。
【0017】
ホームドア装置1は、第1のホームドア2と第2のホームドア3との間においてX方向において並ぶ第1の戸袋4及び第2の戸袋5を有している。第1の戸袋4は、第1のホームドア2を収容可能である。第2の戸袋5は、第2のホームドア3を収容可能である。X方向に沿った第1の戸袋4の長さL2は、長さL1よりも短く、例えば1260mmである。X方向における第2の戸袋5の長さL3は、長さL1及びL2よりも短く、例えば700mmである。ホームドア装置1において第1の戸袋4と第2の戸袋5との間には、第1の戸袋4の一部分によって閉鎖されている通路Wが設けられている。X方向に沿った該通路Wの幅L4は、長さL1及びL2よりも短く、例えば560mmである。
【0018】
ホームドア装置10は、第1のホームドア2と第2のホームドア3との間においてX方向において並ぶ第1の戸袋14及び第2の戸袋15を有している。第1の戸袋14は、第1のホームドア2を収容可能である。第2の戸袋15は、第2のホームドア3を収容可能である。X方向に沿った第1の戸袋14及び第2の戸袋15の合計の長さL5は、長さL2及びL3の合計と等しく、例えば1960mmである。
【0019】
ホームドア装置100は、第1のホームドア2と第2のホームドア3との間においてX方向において並ぶ第1の戸袋104及び第2の戸袋105を有している。第1の戸袋104は、第1のホームドア2を収容可能である。第2の戸袋105は、第2のホームドア3を収容可能である。X方向に沿った第1の戸袋104の長さL6は、例えば1420mmである。X方向に沿った第2の戸袋105の長さL7は、長さL3及びL6よりも長く、例えば1500mmである。ホームドア装置100において第1の戸袋104と第2の戸袋105との間には、第1の戸袋4の一部分によって閉鎖されている通路Wが設けられている。X方向に沿った該通路Wの幅L8は、幅L4よりも大きく、例えば720mmである。
【0020】
第1のホームドア2は、該第1のホームドア2を有するホームドア装置に隣り合う別のホームドア装置の第2のホームドア3と共に、各乗降口E1,E2及びE3を塞いでいる。例えば、ホームドア装置1の第1のホームドア2は、ホームドア装置10の第2のホームドア3と共に乗降口E1を塞いでいる。乗降口E1を塞ぐ第1のホームドア2及び第2のホームドア3が、X方向において互いに離れる方向に移動させられることによって乗降口E1が開放され、互いに近づく方向に移動させられることによって乗降口E1が閉じられる。乗降口E2及びE3も上記と同様に開放され又は閉じられる。車両CのドアD1,D2及びD3は、ホームドア装置間の乗降口E1,E2及びE3にそれぞれ対応している。例えば、乗客が車両Cに乗降する際に、ドアD1,D2及びD3と各ドアに対応する乗降口E1,E2及びE3とが開放されることにより乗客が車両Cに乗降する通路が開かれる。
【0021】
図2から
図4を参照して、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1を詳細に説明する。
図2は、ホームドア装置1を示す正面図である。
図3は、ホームドア装置1を示す平面図である。
図4は、
図2に示されるIV-IV線に沿った断面図である。
【0022】
ホームドア装置1は、
図2及び
図3に示されるように第1のホームドア2と、第1のホームドア2を収納可能である第1の戸袋4と、第2のホームドア3と、第2のホームドア3を収納可能である第2の戸袋5と、制御装置6とを備える。
【0023】
第1のホームドア2は、乗降口E1(第1の乗降口)に設けられている。第2のホームドア3は、乗降口E1と並ぶ別の乗降口E2(第2の乗降口)に設けられている。第1の戸袋4及び第2の戸袋5は、乗降口E1及び乗降口E2の間に設けられている。第1の戸袋4及び第2の戸袋5は、X方向(乗降口E1及び乗降口E2の並び方向)に沿ってこの順に並んで設けられている。第1のホームドア2及び第2のホームドア3は、X方向において並んでいる。第1のホームドア2及び第2のホームドア3のY方向における位置が互いにずれているので、第1のホームドア2及び第2のホームドア3は、X方向において互いに近づいた場合、互いに干渉することなくY方向から見て重なる。
【0024】
第1の戸袋4は、
図2から
図4に示されるように本体部40と、スライドカバー41と、移動機構42とを有する。本体部40は、第1の戸袋4の躯体である。本体部40は、移動機構42を介してスライドカバー41を支持している。本体部40のX方向における長さL9は、第2の戸袋5の長さL3(
図1参照)と等しく、例えば700mmである。本体部40は、壁部40a(第1壁部)と、壁部40aに接続しており、本体部40の上方に位置する上側壁部40bとを有する。壁部40aは、X方向及びZ方向に沿って延在している。壁部40aは、例えばプラットホームに停車する車両に面しているカバーである。壁部40aは、第2の戸袋5から所定の距離L10離れている。所定の距離L10は、通路Wの幅L4(
図1を参照)と等しく、例えば560mmである。上側壁部40bは、X方向及びY方向に沿って延在している。上側壁部40bは、壁部40aに接続している。
【0025】
スライドカバー41は、通路Wを開閉する。
図5は、
図2に示されるV-V線に沿った端面図である。スライドカバー41は、
図2から
図5に示されるように第1の戸袋4を外装しており、例えば断面が中空状の板金製である。スライドカバー41は、第2の戸袋5まで延在している。スライドカバー41は、第2の戸袋5と平行な状態でX方向に沿って移動可能に構成されており、X方向において往復動可能に構成されている。スライドカバー41のX方向における長さL11は、第1の戸袋4の長さL2(
図1を参照)と略等しく、例えば1200mm以上1500mm以下であり、一例としては1260mmである。スライドカバー41は、
図4及び
図5に示されるように本体部40の上方を覆っているトップカバー44と、Y方向において壁部40aと並んでいる側壁45(第2壁部)と、を有する。
【0026】
トップカバー44は、側面44a及び上面44bを有する。側面44aは、例えばプラットホームに停車する車両に面している。上面44bは、側面44aと側壁45とを接続している。上面44bは、第1の戸袋4の上方に位置しており、Y方向及びZ方向に対して傾斜している。上面44bは、プラットホームに停車する車両に近い位置に設けられている端部44cと、Y方向において端部44cに対して反対側に設けられている端部44dとを有する。上面44bは、端部44cが端部44dよりも高くなるように傾斜している。
【0027】
側壁45は、例えばプラットホームに停車する車両と反対側に面している。側壁45には、
図2に示されるように蓋部45aが設けられている。蓋部45aは、スライドカバー41が通路Wを閉じている状態において、Y方向から見て壁部40aと重なる位置に設けられている。
図5に示されるように、側壁45は、第1の戸袋4の内部に面している内側表面45bと、第1の戸袋4の外部に面している外側表面45cとを有している。蓋部45aの内側表面は側壁45の内側表面45bを構成し、蓋部45aの外側表面は側壁45の外側表面45cを構成する。つまり、蓋部45aは、第1の戸袋4の内部と外部とを隔てている。蓋部45aは、側壁45に着脱可能に設けられている。蓋部45aが外されている場合、第1の戸袋4の内部が外部に露出する。これにより、第1の戸袋4の内部に設けられた駆動機構、ホームドア開閉検知器及び支障物センサ等(後述する)の保守点検が可能となる。駆動機構は、第1のホームドア2をX方向において移動させることが可能である。駆動機構は、第1の戸袋4から第1のホームドア2を引き出すことが可能であり、第1のホームドア2を第1の戸袋4に収容することが可能である。
【0028】
移動機構42は、
図4に示されるように本体部40とトップカバー44との間に設けられている。移動機構42は、スライドカバー41をX方向において移動可能とする。
図6は、
図4に示される断面図の部分拡大図である。移動機構42は、
図6に示されるように、トップカバー44に設けられているカバーレール46と、本体部40に設けられているスライダー47とを有する。カバーレール46は、
図2に示されるようにX方向においてトップカバー44の一方の端部44eから他方の端部44fまで延在している。再び
図6を参照する。スライダー47は、本体部40の上側壁部40bに配置されており、カバーレール46を支持している。スライダー47は、例えば、X方向に沿って2か所に並んで配置されている。カバーレール46がスライダー47に対してX方向に沿って摺動することにより、スライドカバー41がX方向に沿って移動させられる。
【0029】
第1の戸袋4は、駆動機構と、ホームドア開閉検知器と、支障物センサとを内部に有する(図示省略)。駆動装置は、第1のホームドア2をX方向において移動させるように駆動する。ホームドア開閉検知器は、第1のホームドア2の動作を検知する。支障物センサは、乗降口E1における障害物を検知する。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、第2の戸袋5は本体部50を有している。本体部50は、第2の戸袋5の躯体である。本体部50は、Y方向において並ぶ2つの壁部51,52を有する。2つの壁部51,52は、本体部40から所定の距離L10離れている。壁部51は、例えばプラットホームに停車する車両と反対側に面している。壁部52は、例えばプラットホームに停車する車両に面している。壁部51には、戸袋板51aが設けられている。戸袋板51aは、着脱可能に設けられている。戸袋板51aが外されている場合、第2の戸袋5の内部が外部に露出する。これにより、第2の戸袋5の内部に設けられた駆動機構、ホームドア開閉検知器及び支障物センサ等の保守点検が可能となる。駆動機構、ホームドア開閉検知器及び支障物センサ等の構成は、第1の戸袋4内部に設けられたものの構成と同様である。
【0031】
以上、
図2及び
図3に示されるように、スライドカバー41は、本体部40と本体部50との間の通路Wを閉鎖する閉鎖位置に位置することが可能である。さらに、
図7及び
図8に示されるように、スライドカバー41は、通路Wを開放する開放位置に位置することが可能である。
図7は、ホームドア装置1において第1の戸袋4の一部分(スライドカバー41)が移動させられた場合を示す正面図である。
図8は、
図7に示されるホームドア装置1の平面図である。
図2及び
図3に示されるように、スライドカバー41が閉鎖位置に位置している場合、スライドカバー41の第2の戸袋5側の端部41aは、本体部50の第1の戸袋4側の端部50aより第1の戸袋4側に位置している。ここで、スライドカバー41は、X方向において移動機構42によって第2の戸袋5と反対側に移動させられることが可能である。このように、スライドカバー41は、閉鎖位置と開放位置との間を移動可能に構成されている。
【0032】
通路Wは、緊急時に乗客が通過する通路である。
図1に示される例では、緊急時に、ホームドア装置1の乗降口E1,E2及びE3の位置と車両のドアD1,D2及びD3の位置とがY方向から見て一致しない位置に車両が停止する場合がある。この場合に、通路Wは、乗客が車両から脱出するための非常用の通路(非常用脱出エリア)になる。通路Wは、緊急時以外(通常時)には開放されない。すなわち、非常脱出エリアは、通常時には形成されない。なお、緊急時とは、例えば、災害の発生時、ホームドア装置1の電源がOFFとなる場合、停電の発生時、及び事故による電車の緊急停止時等である。
【0033】
図9は、第1のホームドア2及び第2のホームドア3が開いている場合のホームドア装置1の背面図である。
図9に示されるように、通路Wは、第1のホームドア2が開いている場合、第1の戸袋4に収納されている第1のホームドア2のうち本体部40から突出する部分によって閉鎖される。また、通路Wは、第2のホームドア3が開いている場合、第2の戸袋5から突出する第2のホームドア3によって閉鎖される。
【0034】
図10は、
図9に示されるホームドア装置1を示す平面図である。
図9及び
図10に示されるように、第1の戸袋4は、係合部材60を更に有する。第2の戸袋5は、ロック機構70を更に有する。係合部材60は、スライドカバー41のトップカバー44の側面44aにおいて、第2の戸袋5側の端部44fに設けられている。ロック機構70は、第2の戸袋5の壁部52に設けられている。ロック機構70は、壁部52において第1の戸袋4側の端部52aに設けられている。ロック機構70は、ロックされた状態では、係合部材60と係合してスライドカバー41を閉鎖位置に固定する。ロック機構70は、ロックが解除された状態では、スライドカバー41の移動を可能とする。
【0035】
図11及び
図12を参照して係合部材60及びロック機構70についてより詳細に説明する。
図11は、係合部材60及びロック機構70を示す正面図である。
図12は、
図11のXII―XII線における断面図である。なお、
図11では、係合部材60及びロック機構70の手前側の側板の図示が省略されている。
【0036】
係合部材60は、スライドレバー61と、板部62とを有している。スライドレバー61は、ロックされた状態では、スライドカバー41から第2の戸袋5側に突出している。スライドレバー61は、ロック機構70の内部に突出することが可能である。スライドレバー61は、ロックピン61aを有している。スライドレバー61がロック機構70の内部に突出し、ロックピン61aがロック機構70によって固定される。板部62は、ロック機構70に隣接しており、Y方向及びZ方向に沿って延在している。
【0037】
ロック機構70は、プレート71と、ボタン72と、遮光部73と、検知センサ74と、プッシャー75と、を有する。プレート71は、例えば略三角形状の概形を呈している。プレート71は、略三角形状の一つの角付近に位置する軸71aを中心に回動可能に構成されている。プレート71は、略三角形状の他の一つの角付近に位置しロックピン61aを固定する固定部71bと、ボタン72に近い位置に設けられ略三角形状の残りの角付近に位置する端部71cとを有する。固定部71bは、例えば鉤爪状を呈している。固定部71bの先端がロックピン61aに引っ掛かることにより、固定部71bはロックピン61aを係止する。ボタン72は、本体72aと、ばね72bとを有する。本体72aが駅員、乗務員又は乗客等により押されると、本体72aの先端によってプレート71の端部71cが押される。その結果、プレート71は、軸71aを中心に回動させられる。その結果、固定部71bによるロックピン61aの係止が解除される。本体72aは、ばね72bによって付勢されており、押された後に元の位置に戻る。それにより、プレート71も元の状態に戻る。
【0038】
遮光部73は、検知センサ74に入射する光を遮ることが可能である遮光板73aと、遮光板73aを支持する支持部73bとを有している。遮光部73は、ばね(図示省略)により付勢されており、X方向において第1の戸袋4に近づく向きに押されている。支持部73bがロックピン61aによりX方向において第1の戸袋4から離れる向きに押し込まれることにより、遮光部73のX方向における移動が規制される。検知センサ74は、例えば自身に入射する光を検知することによって、スライドカバー41が閉鎖位置に位置しているか否かを検知するセンサである。スライドカバー41が閉鎖位置に位置している場合、支持部73bがロックピン61aによって押し込まれている。すなわち、ロックピン61aは、遮光部73を検知センサ74に向かって押し込んだ状態で固定部71bによって固定されている。このとき、検知センサ74に入射する光が遮光板73aによって遮光されることにより、検知センサ74は、スライドカバー41が閉鎖位置に位置していることを検知する。
【0039】
プッシャー75は、ばね(図示省略)によって付勢されており、X方向において第2の戸袋5から第1の戸袋4に向けて突出することが可能である。プッシャー75は、固定部71bによるロックピン61aの固定が解除されると、第2の戸袋5から離れる方向に、X方向において係合部材60の板部62を押し出す。
【0040】
制御装置6は、
図2に示されるように第1の戸袋4及び第2の戸袋5の内部にそれぞれ設けられている。制御装置6は、例えば、MPU(Micro Processor Unit)を備える基板を有しており、ホームドア装置1に設けられている各電装部品を制御する。制御装置6は、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を制御する。具体的には、制御装置6は、プラットホームに車両が停車した際に、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を開く動作を制御すると共に、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を閉じる動作を制御する。このとき、各ホームドアを制御するための信号は、駅員、乗務員又は乗客が操作する上位コントローラ(図示省略)から各制御装置6に出力される。
【0041】
また、制御装置6は、検知センサ74によりスライドカバー41が閉鎖位置に位置することが検知されなくなったとき、第1のホームドア2及び第2のホームドア3が開いている場合に第1のホームドア2及び第2のホームドア3を閉じる動作を実行する。具体的には、検知センサ74は、スライドカバー41が閉鎖位置から開放位置に動き始めたとき、スライドカバー41が閉鎖位置に位置していないことを示す信号を制御装置6に出力する。制御装置6は、当該信号を入力された場合、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を閉じる動作を実行する。
【0042】
また、制御装置6は、検知センサ74によりスライドカバー41が閉鎖位置に位置していることが検知されている場合を除き、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を開く動作を実行しない。すなわち、制御装置6は、検知センサ74によりスライドカバー41が閉鎖位置に位置していることが検知されている場合にのみ、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を開く動作を実行する。具体的には、制御装置6は、緊急時に、スライドカバー41が閉鎖位置以外に位置している場合に第1のホームドア2及び第2のホームドア3を開く動作を実行しない。
【0043】
図11から
図20を参照して、スライドカバー41が閉鎖位置から開放位置に移動させられる際のホームドア装置1の動作を説明する。
図13及び
図16から
図19は、スライドカバー41が閉鎖位置と開放位置との間を移動させられることを説明するための図である。
図14、
図15、及び
図20は、スライドカバー41が閉鎖位置から開放位置に移動させられる際の係合部材60及びロック機構70の動作を説明するための図である。
図14、
図15、及び
図20では、係合部材60及びロック機構70の手前側の側板が省略されている。
【0044】
最初に、
図13に示されるように、スライドカバー41は、緊急時以外の場合、閉鎖位置に位置している。この場合、
図11に示されるように、ロック機構70は、係合部材60と係合してスライドカバー41を閉鎖位置に固定している。具体的には、プレート71の固定部71bがロックピン61aを固定することによって、スライドカバー41が閉鎖位置に固定されている。このとき、遮光部73は、ロックピン61aによって、X方向において第1の戸袋4から離れる方向に押し込まれている。また、プッシャー75は、スライドカバー41によってX方向において第1の戸袋4から離れる方向に押し込まれている。
【0045】
次に、
図14に示されるように、緊急時の場合にボタン72が押され、ボタン72の本体72aの先端によってプレート71が軸71aを中心に回動させられることによって、固定部71bによるロックピン61aの固定が解除される。これにより、
図15に示されるように、プッシャー75が、X方向において第1の戸袋4側に突出し、係合部材60の板部62(
図12参照)を押す。その結果、
図15、
図16及び
図17に示されるように、スライドカバー41と本体部50との間に隙間が生じる。この隙間の幅L12は、例えば10mmである。また、
図15に示されるように、固定部71bによるロックピン61aの固定が解除されることにより、スライドレバー61が、第1の戸袋4側に移動し、Y方向から見てスライドカバー41から第2の戸袋5側に突出しなくなる。このとき、スライドカバー41は、Y方向において移動可能となる。
【0046】
加えて、固定部71bによるロックピン61aの固定が解除されることにより、
図15に示されるように遮光部73が第1の戸袋4側に移動し、検知センサ74に光が入射するようになる。これにより、検知センサ74は、スライドカバー41が閉鎖位置に位置していないことを検知する。このとき、制御装置6は、第1のホームドア2及び第2のホームドア3が開いている場合に第1のホームドア2及び第2のホームドア3を閉じる動作を実行する。
【0047】
最後に、
図18、
図19及び
図20に示されるように、駅員、乗務員又は乗客により、スライドカバー41が開放位置まで移動させられることによって通路Wが開放される。スライドカバー41は、開放位置において停止構造(図示省略)によって固定される。なお、スライドカバー41は、停止構造以外により固定されてもよい。例えば、スライドカバー41は、適当な位置において自重によって停止してもよい。
【0048】
図21及び
図22を参照して、スライドカバー41が開放位置から閉鎖位置に移動させられる際のホームドア装置1の動作を説明する。
図21及び
図22は、スライドカバー41が開放位置から閉鎖位置に移動させられる際の係合部材60及びロック機構70の動作を説明するための図である。
図21及び
図22は、係合部材60及びロック機構70の正面図である。
図21及び
図22では、係合部材60及びロック機構70の手前側の側板が省略されている。
【0049】
まず、駅員又は乗務員等により、スライドカバー41は、開放位置から閉鎖位置に移動させられる。このとき、
図21に示されるように、係合部材60の板部62(
図12参照)によってプッシャー75が押し込まれる。そして、
図22に示されるように、スライドレバー61は、駅員又は乗務員等により、X方向において第2の戸袋5側に移動させられ、Y方向から見てスライドカバー41からロック機構70の内部に突出させられる。このスライドレバー61の移動により、ロックピン61aによって遮光部73の支持部73bがX方向において第1の戸袋4から離れる方向に押し込まれる。これにより、遮光板73aが検知センサ74に入射する光を妨げる。その結果、検知センサ74は、スライドカバー41が閉鎖位置に位置することを検知する。このとき、スライドレバー61のロックピン61aは、固定部71bに係止される。
【0050】
なお、
図1に示すホームドア装置100の構成及び動作は、上述したホームドア装置1の構成及び動作と同様である。すなわち、ホームドア装置100の第1の戸袋104は、ホームドア装置1の第1の戸袋4と同一の構成を有し、同様に動作する。また、ホームドア装置100の第2の戸袋105は、ホームドア装置1の第2の戸袋5と、X方向における長さが異なる点を除き、同一の構成を有する。
【0051】
以上に説明した本実施形態のホームドア装置1,100によって得られる効果について説明する。スライドカバー41は、第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wを塞ぐ閉鎖位置と、第2の戸袋5側と反対側に移動させられて通路Wを形成する開放位置との間を移動可能に構成されている。これにより、スライドカバー41を開放位置に移動させることによって、第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wを介して乗客をプラットホームに脱出させることができる。
【0052】
従来、非常時に乗客が脱出するための通路を開放する非常扉を、ホームドアを収納する戸袋とは別構成としているホームドア装置が存在する。そのようなホームドア装置の一つは、非常扉と、非常扉を収納する戸袋とを有する。この非常扉は、戸袋内にスライドして収納される。また、そのようなホームドア装置の他の一つは、支点が設けられている戸袋と、当該支点を中心に回動可能に構成されている非常扉と、を備える。
【0053】
これらのホームドア装置は、以下の2つの課題を有する。第1の課題は、ホームドアがスライドする方向において戸袋の長さがホームドアの長さ以上である場合、ユーザが望む横幅の緊急脱出用の通路(言い換えると、ユーザが望む大きさの非常脱出用の扉)を、車両間又は車両のドア間に対応する位置に設けることができない場合があるということである。一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1において、X方向に沿った第1の戸袋4の長さは、例えばX方向に沿った第1のホームドア2の長さよりも短い。これにより、ユーザが望む横幅の緊急脱出用の通路を車両間又は車両のドア間に対応する位置に設けることが可能となる。したがって、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1では、上記第1の課題は解決されている。
【0054】
第2の課題は、非常扉とホームドアを収納する戸袋とが別構成であることにより、平常時においてホームドアが乗客の流れを停滞させる可能性があることである。具体的には、非常扉の長さの分だけ該非常扉と隣り合うホームドアが短くなってしまう。これにより、該ホームドアと、非常扉が設けられていないホームドア装置のホームドアとは互いに長さが異なってしまうので、ホームドアを開く際に各ホームドアが開き終わるまでの時間がホームドアごとに異なってしまう。その結果、非常扉を有するホームドア装置のホームドアと非常扉を有さないホームドア装置のホームドアとによって閉鎖される乗降口において、車両から降りる乗客の流れが停滞してしまうおそれがある。
【0055】
一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100では、スライドカバー41は第1の戸袋4の一部分であるので、戸袋と非常扉とが別構成ではない。したがって、ホームドア装置1,100では、スライドカバー41のX方向における長さの分だけ第1のホームドア2を短くする必要はない。さらに、第1のホームドア2とスライドカバー41とは、X方向から見て位置が互いにずれている。これにより、第1のホームドア2は、第1の戸袋4に収容される際に、第1の戸袋4から第2の戸袋5に向かって突出することが可能となる。以上のことから、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を互いに同じ長さとすることが可能であるので、車両から降りる乗客の流れが停滞することを抑制することが可能となる。したがって、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100では、上記第2の課題は解決されている。
【0056】
本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100では、従来のホームドア装置における上記2つの課題は全て解決され、プラットホームの構造に影響されることなくプラットホームに配置することが可能な汎用性のあるホームドア装置を提供することができる。すなわち、乗客の安全が考慮されており、車両からの脱出を可能とし、更に設置が容易なホームドア装置を提供することができる。
【0057】
また、支点が設けられている戸袋と、当該支点を中心に回動可能に構成されている非常扉と、を備えるホームドア装置は、更に3つの課題を有する。第3の課題は、回動可能に構成されている非常扉の支点がホームドア装置から突出してしまうので、非常扉の支点に乗客が接触してしまう可能性があることである。第4の課題は、通路が開放された際に回動して開いた非常扉が、通路を通ってプラットホームに移動する乗客の移動方向を制限してしまうことである。この問題を回避するために、非常扉を配置する際に、乗客が移動する方向を考慮して非常扉の支点の配置を決定する必要がある。第5の課題は、回動して開いた非常扉がプラットホーム上の構造物及び乗客等と干渉してしまうおそれがあることである。例えば、プラットホーム側に回動させた非常扉が、プラットホーム上の乗客と接触するおそれがある。また、例えば、プラットホーム上の構造物と非常扉とが互いに干渉しないように、非常扉の配置を制限する必要がある。
【0058】
一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100では、スライドカバー41がX方向において移動させられることにより、第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wが開放される。これにより、スライドカバー41は、プラットホーム上の構造物及び乗客と干渉することなく通路Wを開放することができる。その結果、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100では、従来のホームドア装置における上記の第3~第5の課題は全て解決される。
【0059】
以下、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100が、特許文献1から特許文献6に記載のホームドア装置に対して相違点を有することを説明する。
【0060】
特許文献1に記載のホームドア装置は、乗降扉及び戸袋をスライド移動可能に支持する支持部を備える。この戸袋は、支持部の上面全体を覆うように構成されている。このホームドア装置は、緊急時に戸袋全体が乗降扉側にスライド移動させられて緊急脱出領域を形成することができる。一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100には、第1の戸袋4のスライドカバー41が、第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wを塞ぐ閉鎖位置と、第2の戸袋側と反対側に移動させられて通路を形成する開放位置との間を移動可能に構成されているという構成(以下、「構成A」と表記する)が含まれている。したがって、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1は、第1の戸袋4の一部分であるスライドカバー41が移動させられて通路Wが開放されるという点で、戸袋全体がスライド移動させられて緊急脱出領域が形成される構成を含む特許文献1に記載のホームドア装置と相違している。
【0061】
特許文献2及び特許文献3に記載のホームドア装置は、乗降扉と、乗降扉を収容する戸袋とを有する。このホームドア装置は、戸袋全体をスライド移動させて乗降エリアを形成する。一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100は、上記構成Aを有しているので、第1の戸袋4の一部分であるスライドカバー41が移動させられて通路Wが開放されるという点で、戸袋全体をスライド移動させて乗降エリアが形成される構成を含む特許文献2及び特許文献3に記載のホームドア装置と相違している。
【0062】
特許文献4に記載のホームドア装置は、戸袋を挟んで可動扉と反対側に位置する非常扉を有する。この非常扉は、長手方向にスライド可能であり、隣り合う一対の戸袋の間に設けられている。この非常扉は、一方の戸袋の一端部と接し他方の戸袋を覆うように形成され他方の戸袋に支持されている。一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100は、上記構成Aを有しているので、スライドカバー41が第1の戸袋4の一部分であるという点で、非常扉が戸袋とは別の構成である特許文献4に記載のホームドア装置と相違している。
【0063】
特許文献5に記載のホームドア装置は、駆動部を内蔵する一対の可動扉駆動部と、メンテナンス作業時に可動扉駆動部のプラットホーム側の前面が開放し得るようにすると共に、緊急時に一対の可動扉駆動部間を通行し得るようにした引き戸式の点検パネルを有する。このホームドア装置では、一対の可動扉駆動部はプラットホーム側から点検パネルによって隠されている。したがって、点検パネルが一対の可動扉駆動部間の通路を閉鎖している場合、点検パネルの一方の端部は、一方の可動扉駆動部の他方の可動扉駆動部側の端部よりも他方の可動扉駆動部側には位置していない。一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100は、スライドカバー41が閉鎖位置に位置している場合、スライドカバー41の第2の戸袋5側の端部41aは、本体部50の第1の戸袋4側の端部50aより第1の戸袋4側に位置しているという構成(以下、「構成B」と表記する)を有している。したがって、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100は、上記構成Bを有する点で、特許文献5に記載のホームドア装置と相違している。
【0064】
特許文献6に記載のホームドア装置は、回動可能に構成されている非常脱出ドア部を備える。一方、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100は、上記構成Aを有しているので、スライドカバー41がX方向において移動させられている点で、特許文献6に記載のホームドア装置と相違する。
【0065】
以上のことから、本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100は、特許文献1から特許文献6に記載のホームドア装置と相違する。
【0066】
なお、このホームドア装置1,100は、上記構成Aを有することによって、第1の戸袋4の一部分を動かすだけで第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wを開放することができる。これにより、第3比較例から第5比較例に係るホームドア装置と比較して戸袋間の通路を開放する際に通路を閉鎖している部材をより小さい力で動かして通路Wを開放することが可能となる。その結果、より迅速に通路を開放し、乗客をプラットホームに脱出させることが可能となる。
【0067】
また、このホームドア装置1,100は、上記構成Bを有することによって、例えばスライドカバー41がX方向から見て第2の戸袋5と重なる構成とすることが可能となる。これにより、第6比較例に係るホームドア装置と比較してY方向におけるホームドア装置1の幅が小さくなる。その結果、プラットホーム上においてホームドア装置1,100が占める領域が小さくなるので、ホームドア装置1,100がプラットホーム上の乗客及び構造物と干渉することをより確実に抑制することができる。
【0068】
本開示の一実施形態に係るホームドア装置1,100が奏するその他の作用効果を説明する。本実施形態のように、第1の戸袋4は、スライドカバー41に設けられている係合部材60を有してもよい。第2の戸袋5は、係合部材60と係合してスライドカバー41を閉鎖位置に固定するロック機構70を有してもよい。この場合、第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wを開放する必要がない場合に、ロック機構70を用いてスライドカバー41を閉鎖位置に固定することによってスライドカバー41の移動をより確実に抑制することができる。
【0069】
本実施形態のように、第2の戸袋5は、検知センサ74を有してもよい。検知センサ74は、スライドカバー41が閉鎖位置に位置しているか否かを検知してもよい。制御装置6は、検知センサ74によりスライドカバー41が閉鎖位置に位置していることが検知されなくなったとき、第1のホームドア2及び第2のホームドア3が開いている場合に第1のホームドア2及び第2のホームドア3を閉じる動作を実行してもよい。ここで、第1のホームドア2及び第2のホームドア3は、開いている場合に第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wを塞いでしまう。このとき、上記構成によれば、スライドカバー41が閉鎖位置から移動し始めると同時に第1のホームドア2及び第2のホームドア3を閉じることによって、通路Wを開放することができる。これにより、より速やか且つより確実に通路Wを開放することが可能となるので、より速やか且つより安全に乗客が脱出することが可能となる。
【0070】
本実施形態のように、第2の戸袋5は、検知センサ74を有してもよい。検知センサ74は、スライドカバー41が閉鎖位置に位置しているか否かを検知してもよい。制御装置6は、検知センサ74によりスライドカバー41が閉鎖位置に位置していることが検知されている場合を除き、第1のホームドア2及び第2のホームドア3を開く動作を実行しなくてもよい。ここで、第1のホームドア2及び第2のホームドア3が開いている場合、第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wを塞いでしまうことがある。上記構成によれば、スライドカバー41が閉鎖位置に位置していない場合に、第1のホームドア2及び第2のホームドア3が開いて通路Wを塞ぐことを抑制することができる。これにより、第1の戸袋4と第2の戸袋5との間の通路Wをより確実に開放することができるので、乗客がより安全に脱出することが可能となる。
【0071】
本開示によるホームドア装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、ホームドア装置1,100では、第1の戸袋4にスライドカバー41に代えて壁部51が設けられ、第2の戸袋5に壁部51に代えてスライドカバー41が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,10,100…ホームドア装置、2…第1のホームドア、3…第2のホームドア、4,14,104…第1の戸袋、5,15,105…第2の戸袋、6…制御装置、40…本体部、40a…壁部(第1壁部)、40b…上側壁部、41…スライドカバー(第2壁部)、41a…端部、42…移動機構、44…トップカバー、44a…側面、44b…上面、44c,44d,44e,44f…端部、45…側壁、45a…蓋部、45b…内側表面、45c…外側表面、46…カバーレール、47…スライダー、50…本体部、50a…端部、51…壁部、51a…戸袋板、52…壁部、52a…端部、60…係合部材、61…スライドレバー、61a…ロックピン、62…板部、70…ロック機構、71…プレート、71a…軸、71b…固定部、71c…端部、72…ボタン、72a…本体、72b…ばね、73…遮光部、73a…遮光板、73b…支持部、74…検知センサ、75…プッシャー、C…車両、L1,L2,L3,L5,L6,L7,L9,L11…長さ、L10…所定の距離、L4,L8,L12…幅、D1,D2,D3…ドア、E1…乗降口(第1の乗降口)、E2…乗降口(第2の乗降口)、E3…乗降口、W…通路。