(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/031 20060101AFI20240828BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240828BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G03F7/031
G03F7/004 501
H05K1/03 610L
H05K1/03 610S
(21)【出願番号】P 2022115439
(22)【出願日】2022-07-20
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2021133641
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 夏鈴
(72)【発明者】
【氏名】堀沢 和寛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉生
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168613(JP,A)
【文献】特開2021-043411(JP,A)
【文献】特開2020-076913(JP,A)
【文献】特開2020-052071(JP,A)
【文献】特開2022-168367(JP,A)
【文献】特開2022-077824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/031
G03F 7/004
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、
(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、
(C)光反応安定化剤と、
(D)エポキシ化合物と、
(E)反応性希釈剤と、
(F)着色剤と、を含み、
前記(C)光反応安定化剤が、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種を含む感光性樹脂組成物であり、
前記(C)光反応安定化剤
は、
下記(イ)及び(ロ)の機能を有する。
(イ)光反応安定化剤を含有しない場合と比較して、下記で定義される塗膜に生じる薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減
する機能
(ロ)光反応安定化剤を含有しない場合と比較して、下記で定義される耐金メッキ性が向上する機能
(厚膜の感度)
基板上に感光性樹脂組成物の塗膜を形成して80℃で20分の乾燥を行った後の前記塗膜の厚みが20μmの試験
体を作製し、
前記塗膜上
に露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、現像温度30℃、現像圧力0.2MPaのスプレー圧にて現像
して測定される最小露光量
(薄膜の感度)
基板上に感光性樹脂組成物の塗膜を形成して80℃で20分の乾燥を行った後の前記塗膜の厚みが8μm
の試験体
を作製し、前記塗膜上
に露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、現像温度30℃、現像圧力0.2MPaのスプレー圧にて現像
して測定される最小露光量
(
耐金メッキ性)
基板上に感光性樹脂組成物の塗膜を形成して80℃で20分の乾燥を行った後の前記塗膜の厚みが8μmの試験体を作製し、
前記塗膜上に500mJ/cm
2
の露光量にて露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶
液を用いて、現像温度30℃、現像圧力0.2MPaのスプレー圧にて現像後、150℃で60分のポストキュアを行うことで、基板上に硬化塗膜を形成した試験体に対して、無電解ニッケルメッキ浴及び無電解金メッキ浴を用いて、ニッケル3μm、金0.05μmの条件でメッキ処理を行った後、テープピーリング試験による前記硬化塗膜の剥がれの程度
【請求項2】
前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含む請求項
1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を0.30質量部以上15.0質量部以下含む請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を2.0質量部以上5.0質量部以下含む請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、オキシムエステル系光重合開始剤を含む請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含む請求項
5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料、例えば、プリント配線板に形成された導体回路パターンを被覆するための絶縁被覆材料に適した感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の光硬化物、前記感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の基板上には、銅箔等の導体回路パターンが形成され、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、はんだ付けランドを除いた導体回路の部分は、保護膜としての絶縁被膜で被覆される。前記絶縁被膜として、カルボキシル基含有感光性樹脂と光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物の硬化膜が使用されることがある。光重合開始剤としては、感光性樹脂組成物の感度を向上させるために、オキシムエステル系光重合開始剤が用いられることがある。
【0003】
上記感光性樹脂組成物としては、例えば、カルボキシル基含有樹脂、オキシムエステル系光重合開始剤、ブロックイソシアネート化合物、及びマレイミド化合物を含む光硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方で、プリント配線板の導体回路パターンの厚みや導体回路パターンの密度は一定ではない場合がある。そのような基板上に、特許文献1等の感光性樹脂組成物をスクリーン印刷等で塗布すると、基板上に形成された導体回路パターンの厚みの違いや密度の相違、さらには、塗布工程における塗膜の厚さの精度によって、プリント配線板の基板を被覆する感光性樹脂組成物の塗膜の厚みが変動し、塗膜の厚みにムラが生じることがある。例えば、導体回路パターンの形成されていない領域や導体回路パターンの高さが相対的に低い部位では、塗膜の厚みが20μm程度であるのに対し、導体回路パターンの高さが相対的に高い部位とその近傍では、感光性樹脂組成物の塗膜の厚みが薄くなりやすく、塗膜の厚みが8μm~10μm程度まで薄くなることがある。
【0005】
オキシムエステル系光重合開始剤を使用した感光性樹脂組成物が、基板上において8μm~10μm程度まで薄くなると、通常の塗膜の厚さである20μm程度の場合と比較して、露光工程における感度が低下して、十分な光硬化性が得られない傾向があるという問題があった。光硬化性が低下する結果、感光性樹脂組成物の光硬化膜の耐金メッキ性が得られない場合があるという問題があった。
【0006】
そこで、塗膜の薄膜部の耐金メッキ性を得るために、露光量を高く設定して薄膜部の感度を向上させることも検討されている。しかし、露光量を高く設定すると、薄膜部の感度だけではなく、通常膜厚部の感度も上昇する結果、通常の膜厚となっている導体回路パターン部では、光硬化膜の太線化が生じて、解像性が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減でき、薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることができる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、(C)光反応安定化剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)反応性希釈剤と、(F)着色剤と、を含み、
前記(C)光反応安定化剤が、ジアミノベンゾフェノン及びビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種を含む感光性樹脂組成物。
[2]前記ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンのアルキル基が、炭素数1~10のアルキル基である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンが、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種を含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(C)光反応安定化剤を0.20質量部以上10.0質量部以下含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤100質量部に対して、前記(C)光反応安定化剤を2.0質量部以上90質量部以下含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を0.30質量部以上15.0質量部以下含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[8] 前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を2.0質量部以上5.0質量部以下含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[9]さらに、オキシムエステル系光重合開始剤を含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含む[9]に記載の感光性樹脂組成物。
[11][1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
[12][1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、ジアミノベンゾフェノン及びビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種の(C)光反応安定化剤と、を含むことにより、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減でき、薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることができる。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンのアルキル基が、炭素数1~10のアルキル基であることにより、感光性樹脂組成物の塗膜の薄膜部と厚膜部の感度の差異をより確実に低減でき、薄膜部でも、より確実に優れた耐金メッキ性を得ることができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンが、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、感光性樹脂組成物の塗膜の薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに確実に低減でき、薄膜部でも、さらに確実に優れた耐金メッキ性を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(C)光反応安定化剤を0.20質量部以上10.0質量部以下含むことにより、感光性樹脂組成物の塗膜の薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに低減して、薄膜部における耐金メッキ性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含むことにより、薄膜部における優れた耐金メッキ性を得つつ、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、(C)光反応安定化剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)反応性希釈剤と、(F)着色剤と、を含み、前記(C)光反応安定化剤が、ジアミノベンゾフェノン及びビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種を含む。本発明の感光性樹脂組成物では、貯蔵安定性を損なうことなく、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減できるとともに、薄膜部だけではなく薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることができる。
【0016】
<(A)カルボキシル基含有感光性樹脂>
(A)成分であるカルボキシル基含有感光性樹脂は、感光性樹脂組成物のベース樹脂である。(A)成分であるカルボキシル基含有感光性樹脂の構造は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上と遊離のカルボキシル基とを有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0017】
多官能エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、その上限値は、3000g/eqが好ましく、2000g/eqがより好ましく、1000g/eqがさらに好ましく、500g/eqが特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(アクリル酸及び/またはメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」ということがある。)、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に付加反応することで、感光性樹脂に遊離のカルボキシル基が導入される。多塩基酸及び/または多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、上記のようにして得られた多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を付加反応させて得られる、ラジカル重合性不飽和基をさらに導入した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基をさらに導入した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂は、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有しているので、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも、感光性がさらに向上した特性を有するカルボキシル基含有感光性樹脂である。
【0021】
1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジル化合物を挙げることができる。グリシジル化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。グリシジル基は1分子中に1つでもよく、複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂とカルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である少なくとも1種の直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる構造を有する酸変性長鎖炭化水素構造含有エポキシ樹脂を使用してもよい。
【0023】
酸変性長鎖炭化水素構造含有エポキシ樹脂の多官能エポキシ樹脂としては、上記した多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0024】
カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸は、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基に反応して、多官能エポキシ樹脂に上記脂肪族カルボン酸由来の長鎖炭化水素構造が導入されることで、感光性樹脂を含む感光性樹脂組成物の硬化物に、さらに、優れた折り曲げ性と絶縁信頼性を付与することができる。カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。上記脂肪族カルボン酸には、例えば、炭素数が8以上の一塩基酸、炭素数16以上の二塩基酸が挙げられ、折り曲げ性と指触乾燥性を得る点から、上記一塩基酸及び二塩基酸は、直鎖状または炭素数2以下の側鎖を2本以下有する分岐状が好ましい。
【0025】
カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上であるカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、一塩基酸としては、カプリル酸(C8)、カプリン酸(デカン酸:C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(ドデカン酸:C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸:C16)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸:C17)、ステアリン酸(C18)、ツベルクロステアリン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘニン酸(C22),トリコシル酸(C23)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が挙げられる。
【0026】
また、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上であるカルボン酸は、二塩基酸としては、例えば、ヘキサデカン二酸(C16)、エイコサン二酸(C20)、エチルオクタデカン二酸(C20)、エイコサジエン二酸(C20)、ビニルオクタデカエン二酸(C20)、ジメチルエイコサジエン二酸(C22)、ジメチルエイコサン二酸(C22)、ジフェニルヘキサデカン二酸(C28)、オレイン酸(C18)等の不飽和脂肪酸の二量体化反応によるC36ダイマー酸等を挙げることができる。上記したカルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上であるカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上であるカルボン酸と、カルボキシル基1つあたりの炭素数が7以下である一塩基酸及び/または二塩基酸と、を併用してもよい。
【0027】
カルボキシル基含有感光性樹脂中における、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、折り曲げ性と絶縁信頼性をさらに向上させつつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を調整して固形分酸価を調整する点から、15質量%が好ましく、18質量%が特に好ましい。一方で、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸の割合の上限値は、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の導入量(すなわち、感光性)を維持しつつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を調整して固形分酸価を調整する点から、25質量%が好ましく、20質量%が特に好ましい。
【0028】
酸変性長鎖炭化水素構造含有エポキシ樹脂のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、上記したラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を挙げることができる。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、感度をより向上させつつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量と固形分酸価を調整する点から、2.0質量%が好ましく、3.0質量%が特に好ましい。一方で、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の割合の上限値は、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上であるカルボン酸の導入量を維持しつつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を調整して固形分酸価を調整する点から、10質量%が好ましく、5.0質量%が特に好ましい。
【0029】
酸変性長鎖炭化水素構造含有エポキシ樹脂の多塩基酸及び/または多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を挙げることができる。カルボキシル基含有感光性樹脂中における、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、良好なアルカリ現像性と固形分酸価を調整する点から、7.0質量%が好ましく、9.0質量%が特に好ましい。一方で、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合の上限値は、絶縁信頼性の低下を確実に防止し、固形分酸価を調整する点から、16質量%が好ましく、14質量%が特に好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、その下限値は、確実にアルカリ現像性を付与する点から、30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部(光硬化部)の溶解防止の点から、200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の絶縁信頼性を確実に向上させる点から、150mgKOH/gが特に好ましい。
【0031】
カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されず、使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、その下限値は、光硬化物の強靭性及び指触乾燥性を確実に向上させる点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量の上限値は、良好なアルカリ現像性を確実に得る点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、上記「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出される質量平均分子量を意味する。
【0032】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、上記各成分を用いて上記反応工程にて調製してもよく、上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、「SP-4621」(昭和電工株式会社)、「ZAR-2000」、「ZFR-1122」、「ZFR-1887」、「FLX-2089」、「ZCR-1569H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(株式会社ダイセル)等を挙げることができる。
【0033】
<(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤>
(B)成分であるα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を含むことにより、後述する(C)光反応安定化剤とあいまって、貯蔵安定性を損なうことなく、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減できるとともに、薄膜部だけではなく薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることに寄与する。
【0034】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中におけるRは、水素または炭素数1~5個のアルキル基を表す)で表される化合物を挙げることができる。このうち、薄膜部と厚膜部の感度の差異を確実に低減できるとともに、薄膜部だけではなく薄膜部でも確実に優れた耐金メッキ性を得ることができる点から、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-ベンジル-1-ブタノン(式(1)中におけるRが水素)、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノン(式(1)中におけるRがメチル基)が好ましく、薄膜部における優れた耐金メッキ性を得つつ、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性をさらに向上させることができる点から、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンが特に好ましい。
【0035】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部(固形分。以下同じ。)に対して、薄膜部と厚膜部の感度の差異を確実に低減できるとともに、薄膜部でも確実に優れた耐金メッキ性を得ることに寄与する点から、0.30質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、1.5質量部がさらに好ましく、2.0質量部がよりさらに好ましく、薄膜部と厚膜部の感度をさらに向上させる点から、2.7質量部が特に好ましい。一方で、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤の配合量の上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、感光性樹脂組成物の硬化塗膜に優れた耐熱性を確実に付与する点から、15.0質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
【0036】
<(C)光反応安定化剤>
本発明では、(C)成分である光反応安定化剤として、ジアミノベンゾフェノン及びビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種のベンゾフェノン誘導体を含む。上記ベンゾフェノン誘導体は、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤とあいまって、貯蔵安定性を損なうことなく、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減できるとともに、薄膜部だけではなく薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることに寄与する。
【0037】
ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の塗膜の薄膜部と厚膜部の感度の差異をより確実に低減でき、薄膜部でも、より確実に優れた耐金メッキ性を得ることができる点から、炭素数1~10のアルキル基(すなわち、-C
nH
2n+1(nは1~10の整数))が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基が特に好ましい。ジアミノベンゾフェノン及びビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを含むベンゾフェノン誘導体としては、以下の一般式(2)
【化2】
(式(2)中におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、Hまたはアルキル基を表す。)で表される化合物が挙げられる。このうち、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、C
nH
2n+1であり、nは1~10の整数が好ましく、nは1~5の整数がより好ましく、nは1~3の整数が特に好ましい。これらのベンゾフェノン誘導体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
このうち、光反応安定化剤としては、感光性樹脂組成物の塗膜の薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに確実に低減でき、薄膜部でも、さらに確実に優れた耐金メッキ性を得ることができる点から、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。
【0039】
光反応安定化剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減できるとともに、薄膜部だけではなく薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることに確実に寄与する点から、0.05質量部が好ましく、感光性樹脂組成物の塗膜の薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに低減して、薄膜部における耐金メッキ性をさらに向上させる点から、0.20質量部がより好ましく、0.50質量部が特に好ましい。一方で、光反応安定化剤の配合量の上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、優れた感度を確実に得る点から、10.0質量部が好ましく、5.0質量部がより好ましく、3.0質量部が特に好ましい。
【0040】
(B)成分であるα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と(C)成分である光反応安定化剤との配合比率は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減できるとともに、薄膜部だけではなく薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることに確実に寄与する点から、(B)成分であるα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤100質量部に対して、(C)成分である光反応安定化剤を、2.0質量部以上90質量部以下の範囲で含むことが好ましく、20質量部以上80質量部以下の範囲で含むことがより好ましく、30質量部以上70質量部以下の範囲で含むことが特に好ましい。
【0041】
<(D)エポキシ化合物>
(D)成分であるエポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の光硬化物の架橋密度を上げて十分な強度を光硬化物に付与するためのものである。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製に使用する多官能エポキシ樹脂と同じエポキシ樹脂を挙げることができる。具体的には、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の光硬化後に十分な強度の塗膜を得る点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下が特に好ましい。
【0043】
<(E)反応性希釈剤>
(E)成分である反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を補強して、感光性樹脂組成物の硬化塗膜に十分な耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などを付与することに寄与する。
【0044】
反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレート化合物、2官能の(メタ)アクリレート化合物、3官能の(メタ)アクリレート化合物、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリレート化合物のモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下が好ましく、20質量部以上50質量部以下が特に好ましい。
【0046】
<(F)着色剤>
(F)成分である着色剤は、本発明の感光性樹脂組成物の光硬化物に所望の色彩を付与するために配合する。着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤、赤色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。着色剤には、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるアセチレンブラック、カーボンブラック等の無機系着色剤や、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
着色剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、2.0質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(F)成分の他に、必要に応じて、任意成分として、さらに、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤を配合してもよい。他の光重合開始剤としては、オキシムエステル系光重合開始剤を挙げることができる。オキシムエステル系光重合開始剤は、感光性樹脂組成物の感光性の向上に寄与する。
【0049】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等を挙げることができる。
【0050】
他の光重合開始剤は、オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤でもよい。オキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系;ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系;2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン等を挙げることができる。これらの他の光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
他の光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上3.0質量部以下が特に好ましい。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、さらに、他の任意成分、例えば、硬化促進剤、添加剤、非反応性希釈剤、体質顔料、難燃剤等を、任意に配合することができる。
【0053】
硬化促進剤としては、例えば、メルカプトベンゾオキサザール及びその誘導体、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等が挙げられる。添加剤としては、例えば、シリコーン系ポリマー、炭化水素系ポリマー及びアクリル系ポリマー等の消泡剤等が挙げられる。
【0054】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の、粘度、塗工性及び乾燥性を調節するための成分である。非反応性希釈剤としては、例えば、感光性樹脂組成物に配合されている各成分に対して不活性である有機溶剤を挙げることができる。上記有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
体質顔料としては、例えば、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。難燃剤は、感光性樹脂組成物の光硬化物に難燃性を付与するためのものである。難燃剤としては、例えば、有機リン酸塩(有機系ホスフェート)等のリン含有難燃剤を挙げることができる。
【0056】
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、常温(例えば、25℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合を実施してもよい。
【0057】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物をプリント配線板に塗工して、絶縁保護膜(例えば、ソルダーレジスト膜等)を形成する方法を説明する。
【0058】
上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷、スプレーコータ、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等、公知の塗工方法を用いて所望の厚さに塗布する。塗布後、感光性樹脂組成物に非反応性希釈剤を配合した場合には、感光性樹脂組成物中の非反応性希釈剤を揮散させるために、60~100℃程度の温度で15~60分間程度加熱する予備乾燥を行ってタックフリーの塗膜を形成する。次に、感光性樹脂組成物上に、直描装置にて、直接、活性エネルギー線(例えば、レーザー光)を所望のパターンに応じて照射する露光処理を行って、該パターン状に塗膜を光硬化させる。露光量としては、例えば、50mJ/cm2~2000mJ/cm2が挙げられる。次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより塗膜を現像する。上記現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次に、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、現像した塗膜を熱硬化させて、目的とするパターンを有する光硬化膜(光硬化物)をプリント配線板上に形成させることができる。
【0059】
また、上記した、直描装置にて、直接、活性エネルギー線を所望のパターンに応じて照射する露光処理に代えて、予備乾燥を行ってタックフリーとした塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、波長300~400nmの範囲の紫外線)を照射させて塗膜を光硬化させる露光処理を行ってもよい。
【実施例】
【0060】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0061】
実施例1~8、比較例1~3
下記表1に示す各成分を下記表1に示す割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合させて、実施例1~8、比較例1~3にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。その後、調製した感光性樹脂組成物を以下のように基板に塗工して試験体を作製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0062】
下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・ZFR-1887:多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート35質量%、日本化薬株式会社
【0063】
(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤
・Omnirad379:IGM Resins B.V.社
・Omnirad369:IGM Resins B.V.社
【0064】
(C)光反応安定化剤
・Chivacure EMK:Chitec社
・4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン:東京化成工業株式会社
【0065】
(D)エポキシ化合物
・EPICLON860:DIC社
・NC-3000H:日本化薬株式会社
(E)反応性希釈剤
・DPCA-60:日本化薬株式会社
(F)着色剤
・デンカブラック:電気化学工業株式会社
・LIONOL BLUE FG-7351:トーヨーカラー株式会社
【0066】
他の光重合開始剤
・NCI-831:(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム、ADEKA社
【0067】
他の光反応安定化剤
・4,4’-ジメトキシベンゾフェノン:東京化成工業株式会社
・ベンゾフェノン:東京化成工業株式会社
【0068】
硬化促進剤
・DICY-7:三菱化学株式会社
・メラミン:日産化学工業株式会社
添加剤
・X-50-1095C:消泡剤、信越化学工業
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0069】
試験体作製工程
基板:フレキシブル基板を用いたプリント配線板(ポリイミドフィルム、パナソニック株式会社、フィルム厚25μm、導体(Cu箔)厚12.5μm)を、5質量%硫酸水溶液で表面処理後、スクリーン印刷法にて、上記のように調製した実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、それぞれ塗布して基板上に塗膜を形成した。塗膜形成後、BOX炉にて80℃で20分の予備乾燥を行った。予備乾燥後、塗膜上に100~500mJ/cm2の露光量にて露光した(露光装置:オルボテック社製の直描(DI)露光装置「Nuvogo1000R」(光源:レーザー))。露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、現像温度30℃、現像圧力0.2MPaのスプレー圧にて現像した。現像後、BOX炉にて150℃で60分のポストキュアを行うことで、基板上に硬化塗膜を形成した。試験体として、予備乾燥後の塗膜の厚みが20μmの厚膜の塗膜を有する試験体と、予備乾燥後の塗膜の厚みが8μm~10μmの薄膜の塗膜を有する試験体を作製した。
【0070】
(1)直描露光感度(レーザー直描(LDI)露光感度)
上記試験体作製工程の予備乾燥工程まで行った基板に対し、感度測定用ステップタブレット(コダック社、21段)を膜厚20μmになるよう調整した塗膜上に密着させ、露光、現像後、感度段数が100%残っている最大の段数を感度として評価した。段数が大きいほど感度が良好であることを示す。なお、直描露光感度では、露光量は、各試験体について、ステップタブレットが7段または7.5段になるよう100mJ/cm2~500mJ/cm2の範囲で10mJ毎に上記直描露光機にて露光、現像し、ステップタブレットが7段となるのに必要な露光量を求めた。続いて、20μmの厚膜の塗膜においてステップタブレットが7段または7.5段となるのに必要な露光量にて、8μm~10μmの薄膜の感度も評価した。20μmの厚膜の塗膜においてステップタブレットが7段または7.5段となるのに必要な露光量における、8μm~10μmの薄膜の感度が4段以上の試験体を合格とした。
【0071】
(2)耐金メッキ性
上記試験体作製工程で得られた試験体に対して、市販品の無電解ニッケルメッキ浴及び無電解金メッキ浴を用いて、ニッケル3μm~5μm、金0.05μmの条件でメッキ処理を行った。硬化塗膜の剥がれの有無やメッキのしみ込みの有無を目視にて評価した後、テープピーリング試験により硬化塗膜の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
〇:テープピーリング試験後、いずれの膜厚においても全く剥がれが認められない。
△:テープピーリング試験後、薄膜の硬化塗膜に若干の剥がれが認められる。
×:テープピーリング試験後、薄膜の硬化塗膜に顕著な剥がれが認められる。
【0072】
(3)貯蔵安定性
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、5~10℃で1ヶ月間、冷蔵保管し、保管後の感光性樹脂組成物について、グラインドゲージで結晶の発生の有無を評価した。
○:10μm以上の結晶なし
△:10μm~15μmの結晶あり
×:15μm超の結晶あり
【0073】
評価結果を下記表1に示す。
【0074】
【0075】
表1に示すように、光反応安定化剤としてビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを配合した実施例1~8では、20μmの厚膜の塗膜においてステップタブレットが7段または7.5段となるのに必要な露光量における、8μm~10μmの薄膜の感度が4段以上であり、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減できた。従って、実施例1~8では、塗膜の薄膜部の感度を上昇させるために露光量を高く設定する必要がないので、通常の膜厚となっている光硬化膜の太線化を防止して、優れた解像性が得られることが判明した。また、表1に示すように、実施例1~8では、優れた耐金メッキ性と貯蔵安定性を得ることができた。
【0076】
特に、実施例1と実施例5から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを約1.5質量部配合した実施例1は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを約0.15質量部配合した実施例5と比較して、薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに低減でき、また、耐金メッキ性もさらに向上した。また、実施例1と実施例4から、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを使用した実施例1は、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-ベンジル-1-ブタノンを使用した実施例4と比較して、貯蔵安定性がさらに向上した。また、実施例1と実施例6から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを約3.4質量部配合した実施例6は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを約2.6質量部配合した実施例1と比較して、20μmの厚膜の塗膜においてステップタブレットが7段または7.5段となるのに必要な露光量をさらに低減でき、また、実施例1、6ともに、薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに低減できた。また、実施例6と実施例7から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを約4.2質量部配合した実施例7は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを約3.4質量部配合した実施例6と比較して、20μmの厚膜の塗膜においてステップタブレットが7段または7.5段となるのに必要な露光量をさらに低減でき、また、実施例7も、薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに低減できた。
【0077】
また、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した実施例1、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を使用した実施例8のいずれも、薄膜部と厚膜部の感度の差異をさらに低減でき、また、耐金メッキ性と貯蔵安定性もさらに向上した。
【0078】
一方で、表1に示すように、ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンも、他のベンゾフェノン化合物も配合しなかった比較例1では、耐金メッキ性が得られなかった。また、光反応安定剤として4,4’-ジメトキシベンゾフェノンを使用した比較例2、ベンゾフェノンを使用した比較例3では、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減できず、また、耐金メッキ性も得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の塗膜に薄膜部と厚膜部が生じても、薄膜部と厚膜部の感度の差異を低減でき、薄膜部でも優れた耐金メッキ性を得ることができるので、フレキシブル基板やリジット基板を用いたプリント配線板に設ける絶縁保護膜の分野で利用価値が高い。