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特許7545447感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物を塗布したプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物を塗布したプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240828BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240828BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20240828BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20240828BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 501
C08G59/17
C08G59/20
H05K3/00 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022131577
(22)【出願日】2022-08-22
(65)【公開番号】P2023047298
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2021155190
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】津留 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】林 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】鶴巻 孝博
(72)【発明者】
【氏名】原嶋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖幸
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169608(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122460(WO,A1)
【文献】特開2019-194689(JP,A)
【文献】特開2012-185463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/004
C08G 59/17
C08G 59/20
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤と、を含有し、
前記(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤が、(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子であり、
前記(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子の累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)である平均粒子径が、1.0μm以上10μm以下であり、
前記有機ケイ素化合物が、ポリジアルキルシロキサンである感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤と、を含有し、
前記(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤が、(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子であり、
前記(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子の累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)である平均粒子径が、1.0μm以上10μm以下であり、
さらに、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリジアルキルシロキサンのアルキル基の炭素数が、1以上5以下である請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリジアルキルシロキサンが、ポリジメチルシロキサンである請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤を5.0質量部以上100質量部以下含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得、前記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、前記(D)エポキシ化合物が、前記多官能エポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂を含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、無機イオン交換体を含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
プリント配線板のソルダーレジスト用である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を塗布したプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、特に、リジット基板またはフレキシブル基板等の基板上に導体回路パターンを形成したプリント配線板等の回路基板の絶縁保護膜として有用な感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の光硬化物及び前記感光性樹脂組成物を光硬化して得られた被覆を有するプリント配線板に関する。
【0002】
プリント配線板は、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品を搭載するために使用され、はんだ付けランドを除く導体回路部分は絶縁保護膜であるソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板等の回路基板に電子部品をはんだ付けする際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止するとともに、導体回路が、直接、空気に曝されて酸化や湿度により腐食することを防止する。
【0003】
また、プリント配線板の絶縁保護膜には、高級感の付与等の絶縁保護膜としての使用条件等により、艶消し外観が要求されることがある。艶消し外観を有するソルダーレジスト膜を形成する樹脂組成物として、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)有機フィラー、(D)希釈剤、及び(E)エポキシ樹脂を含有する光硬化性・熱硬化性の艶消しソルダーレジストインキ組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、艶消し剤として、無機フィラーよりも硬度の低い有機フィラーを配合することで、ソルダーレジスト膜を形成したプリント配線板等と他のプリント配線板等とが接触するなどして、ソルダーレジスト膜と、銅やはんだ等とが接触した場合に、銅やはんだ等が削れてソルダーレジスト膜に汚れが付着してしまうことを防止するものである。
【0004】
しかし、特許文献1のように、艶消し剤として有機フィラーを配合すると、絶縁保護膜に十分な耐熱性と絶縁信頼性を付与できない場合があった。また、艶消し剤として、有機フィラーに代えて、表面処理されていないシリカ粒子やケイ酸アルミニウム粒子等の無機フィラーを配合すると、有機フィラーを配合する場合と比較して耐熱性は向上する傾向があるものの、依然として、十分な絶縁信頼性を付与できない場合があった。
【0005】
そこで、シリカ粒子等の無機フィラーの表面をワックスで処理した、ワックス処理シリカ粒子等のワックス表面処理無機フィラーを、艶消し剤として配合することがある。ワックス処理シリカ粒子では、シリカ粒子表面のシラノール基(SiOH基)がワックスにより覆われていることで、絶縁信頼性の向上を図っている。
【0006】
しかし、ワックス表面処理無機フィラーでは、高温高湿度環境下では、絶縁信頼性が低下する傾向があり、長期間にわたっての絶縁信頼性の維持に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-040935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の光硬化物及び前記感光性樹脂組成物を塗布したプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成の要旨は以下の通りである。
[1](A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)ポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消
し剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤が、(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子の平均粒子径が、1.0μm以上10μm以下である[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記有機ケイ素化合物が、ポリジアルキルシロキサンである[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記ポリジアルキルシロキサンのアルキル基の炭素数が、1以上5以下である[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記ポリジアルキルシロキサンが、ポリジメチルシロキサンである[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤を5.0質量部以上100質量部以下含有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得、前記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、前記(D)エポキシ化合物が、前記多官能エポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂を含有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9]さらに、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤を含有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[10]さらに、無機イオン交換体を含有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[11]プリント配線板のソルダーレジスト用である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[12][1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
[13][1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を塗布したプリント配線板。
【0010】
本発明では、「平均粒子径」とは、累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)であり、レーザ回折・散乱法を用い、粒度分布測定装置で測定した粒子径を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤と、を含有することにより、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤が、(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子、すなわち、有機ケイ素化合物で表面処理されているシリカ粒子であることにより、より確実に、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子の平均粒子径が、1.0μm以上10μm以下であることにより、より確実に艶消し外観を付与しつつ、長期間にわたって絶縁信頼性により優れ、また、パターン形成性にも優れた光硬化物を得ることができる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記有機ケイ素化合物が、ポリジアルキルシロキサンであることにより、より確実に、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記ポリジアルキルシロキサンのアルキル基の炭素数が1以上5以下であることにより、長期間にわたっての絶縁信頼性と艶消し外観がより確実に向上する。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤を5.0質量部以上100質量部以下含有することにより、より確実に艶消し外観を付与しつつ、長期間にわたっての絶縁信頼性と塗工性がさらに向上する。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得、前記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、前記(D)エポキシ化合物が、前記多官能エポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂を含有することにより、長期間にわたっての絶縁信頼性の向上に寄与し、また、光硬化物の耐熱性の向上に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤と、を含有する。本発明の感光性樹脂組成物では、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる。
【0019】
感光性樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂の化学構造は、特に限定されず、例えば、遊離のカルボキシル基と感光性の不飽和二重結合とを有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシアクリレートやエポキシメタクリレート(以下、アクリレートやメタクリレートを「(メタ)アクリレート」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、該ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0020】
多官能エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有する2官能以上のエポキシ樹脂であれば、化学構造は、特に限定されない。多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、エポキシ当量の上限値は、2000が好ましく、1500がより好ましく、1000がさらに好ましく、500が特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100が好ましく、200が特に好ましい。多官能エポキシ樹脂の種類としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらのエポキシ樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したエポキシ樹脂を使用してもよい。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、フルフリルアクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、チグリン酸、アンゲリカ酸等を挙げることができる。これらのうち、感光性や反応性に優れ、また取り扱いが容易である点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と反応してエステル結合を形成することで、エポキシ樹脂に感光性の不飽和二重結合が導入されて、エポキシ樹脂に感光性が付与される。
【0022】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。
【0023】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応によって、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に水酸基が生成し、生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が反応することで、感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に、さらに遊離のカルボキシル基が導入される。感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に遊離のカルボキシル基が導入されることで、感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂にアルカリ現像性が付与される。多塩基酸は、2官能以上のカルボン酸であれば、特に限定されず、飽和の多塩基酸でもよく、不飽和の多塩基酸でもよい。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、フタル酸誘導体(例えば、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等)、ジグリコール酸等の2官能のカルボン酸、トリメリット酸等の3官能のカルボン酸、ピロメリット酸等の4官能のカルボン酸等が挙げられる。また、多塩基酸無水物は、特に限定されず、例えば、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物との反応方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。
【0025】
上記した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂も感光性樹脂として使用できるが、必要に応じて、上記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、さらに、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物(例えば、グリシジル化合物)を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物をさらに反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂では、側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有することで、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも、光重合反応性、すなわち、感光特性がさらに向上する。
【0026】
1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
また、感光性樹脂組成物に対してアルカリ現像処理を実施しない場合には、カルボキシル基を有さない感光性樹脂を使用してもよい。カルボキシル基を有さない感光性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート等の上記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルからなるモノマーの重合体、(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルと他の重合性モノマーからなる共重合体、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルと1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物との共重合体のエポキシ基の少なくとも一部に(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた樹脂、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の重合体のカルボキシル基の少なくとも一部または(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸と(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルとを反応させて得られる共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させた樹脂、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて得ることができるエポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0028】
上記したカルボキシル基を有さない感光性樹脂の調製には、カルボキシル基含有感光性樹脂の調製に使用する上記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸及び上記1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物と同じ化合物を使用することができる。
【0029】
エポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂としては、例えば、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製過程で得られるエポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(i)ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。ウレタン樹脂は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物とを反応させて得られる樹脂である。また、ウレタ
ン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(ii)1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に(メタ)アクリル酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得て、生成した水酸基に1分子中に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物を付加反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、(iii)上記エポキシ(メタ)アクリレートに生成した水酸基に1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを付加反応させ、付加したポリイソシアネートのイソシアネート基にさらにポリオールの水酸基を付加反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
感光性樹脂がカルボキシル基含有感光性樹脂の場合、感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、酸価の下限値は、確実にアルカリ現像性を付与する点から30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、感光性樹脂の酸価の上限値は、例えば、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の耐湿性と絶縁信頼性の低下を確実に防止する点から150mgKOH/gが特に好ましい。
【0032】
感光性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば、質量平均分子量(Mw)の下限値は、光硬化物の強靭性及び露光処理前の指触乾燥性を向上させる点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、感光性樹脂の質量平均分子量(Mw)の上限値は、アルカリ現像性の低下を確実に防止する点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定により測定した分子量を意味する。
【0033】
感光性樹脂は、上記各出発物質を用いて上記反応にて調製してもよく、上市されている感光性樹脂を使用してもよい。上市されている感光性樹脂としては、例えば、「リポキシSP-4621」(昭和電工株式会社)、「KAYARAD ZAR-2000」、「KAYARAD ZFR-1122」、「KAYARAD FLX-2089」、「KAYARAD ZCR-1569H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(株式会社ダイセル)等のカルボキシル基含有感光性樹脂を挙げることができる。これらの感光性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(B)光重合開始剤
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、(Z) -(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ) -2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。また、光重合開始剤としては、α―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤でもよい。他の光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されず、例えば、感光性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下が好ましく、2.0質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
【0036】
(C)反応性希釈剤
反応性希釈剤とは、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり少なくとも2つの重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にすることで機械的強度を光硬化物に付与し、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性等に優れた光硬化物を得るために配合する。
【0037】
反応性希釈剤としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、単官能の(メタ)アクリレートモノマー、2官能の(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能の(メタ)アクリレートモノマー;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレートモノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレートモノマー;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレートモノマー;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。また、(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、他のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの光重合性モノマーは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されず、例えば、感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
【0039】
(D)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、光硬化物の架橋密度を上げて十分な強度の光硬化物を得るための成分である。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
これらのエポキシ樹脂のうち、感光性樹脂組成物中に共に含有される感光性樹脂として多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を使用する場合には、長期間にわたっての絶縁信頼性の向上に寄与し、また、光硬化物の耐熱性の向上に寄与する点から、エポキシ化合物として、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成している多官能エポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0041】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されず、例えば、十分な強度の硬化塗膜を得る点から、感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上100質量部以下が好ましく、15質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
【0042】
(E)フィラー
フィラーを含有することにより、光硬化物の機械的強度が向上し、プリント配線板の絶縁保護膜の基本特性として要求されるはんだ耐熱性が向上する。フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。
【0043】
無機フィラーとしては、例えば、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ、炭酸カルシウム、クレー等を挙げることができる。有機フィラーとしては、例えば、ウレタン系ビーズ、ポリメタクリル酸メチル系ビーズ、ポリメタクリル酸ブチル系ビーズ、アクリル系ビーズ、アクリルコポリマー系ビーズ、ポリアクリル酸エステル系ビーズ、ナイロン系ビーズ、シリコーン系ビーズ、ポリエチレン系ビーズ、ポリプロピレン系ビーズ、ポリスチレン系ビーズ、ポリカーボネート系ビーズ、ポリイミド系ビーズ、ポリアミド系ビーズ、ポリエステル系ビーズ、ポリ塩化ビニル系ビーズ、ポリ塩化ビニリデン系ビーズ、フッ素樹脂系ビーズ、尿素樹脂系ビーズ、メラミン樹脂系ビーズ、フェノール樹脂系ビーズ等を挙げることができる。これらのフィラーのうち、はんだ耐熱性が確実に向上する点から、無機フィラーが好ましい。
【0044】
フィラーは、粒子状の成分である。フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、光硬化物の機械的強度が確実に向上しつつ、感光性樹脂組成物中における分散性に優れる点から、0.5μm以上50μm以下が好ましく、1.0μm以上20μm以下が特に好ましい。
【0045】
フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状等が挙げられる。
【0046】
フィラーの配合量は、特に限定されず、その下限値は、光硬化物の機械的強度の向上に確実に寄与する点から、感光性樹脂100質量部に対して、2.0質量部が好ましく、4.0質量部が特に好ましい。一方で、フィラーの配合量の上限値は、感光性樹脂組成物に優れた塗工性を付与する点から、感光性樹脂100質量部に対して、30質量部が好ましく、15質量部が特に好ましい。
【0047】
(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤
本発明の感光性樹脂組成物では、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤が配合されていることで、長期間にわたって絶縁信頼性に優れ、また、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる。有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤としては、より確実に、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる点から、(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子、すなわち、有機ケイ素化合物で表面処理されているシリカ粒子が好ましい。(F1)成分は、有機ケイ素化合物で疎水化処理された二酸化ケイ素粒子である。
【0048】
(F1)有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子
有機ケイ素化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子(以下、単に「有機ケイ素化合物処理二酸化ケイ素粒子」ということがある。)の平均粒子径は、特に限定されないが、その下限値は、より確実に艶消し外観を付与する点から、1.0μmが好ましく、2.0μmがより好ましく、2.5μmが特に好ましい。一方で、有機ケイ素化合物処理二酸化ケイ素粒子の平均粒子径の上限値は、長期間にわたっての絶縁信頼性により優れ、また、パターン形成性にも優れた光硬化物を得ることができる点から、10μmが好ましく、光硬化物中における有機ケイ素化合物処理二酸化ケイ素粒子の基板等の下地に対する密着性の低下を確実に防止する点から、8.0μmがより好ましく、7.0μmが特に好ましい。なお、有機ケイ素化合物処理二酸化ケイ素粒子の平均粒子径とは、有機ケイ素化合物処理二酸化ケイ素粒子の態様で測定した平均粒子径であり、従って、二酸化ケイ素粒子の表面の少なくとも一部を被覆している有機ケイ素化合物を含めた平均粒子径である。
【0049】
二酸化ケイ素粒子の表面処理に使用されている有機ケイ素化合物は、特に限定されないが、例えば、より確実に、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができる点から、ポリジアルキルシロキサンが好ましい。また、前記ポリジアルキルシロキサンを構成するジアルキルシロキサン単位におけるアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、長期間にわたっての絶縁信頼性と艶消し外観がより確実に向上する点から、1以上5以下の範囲が好ましく、1以上3以下の範囲がより好ましく、ジアルキルシロキサン単位としてはジメチルシロキサン単位、すなわち、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0050】
有機ケイ素化合物処理二酸化ケイ素粒子等の有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部に対して、より確実に艶消し外観を付与する点から、5.0質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、艶消し外観がさらに向上する点から、30質量部がさらに好ましく、40質量部が特に好ましい。一方で、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤の配合量の上限値は、感光性樹脂100質量部に対して、長期間にわたっての絶縁信頼性と塗工性がさらに向上する点から、100質量部が好ましく、現像性および有機ケイ素化合物処理二酸化ケイ素粒子の基板等の下地に対する密着性の低下を確実に防止する点から、80質量部がより好ましく、60質量部が特に好ましい。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した成分(A)~成分(F)の他に、必要に応じて、種々の成分、例えば、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理された艶消し剤、無機イオン交換体、着色剤、各種添加剤、非反応性希釈剤などを含有させることができる。
【0052】
有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤
本発明の感光性樹脂組成物では、表面処理されている艶消し剤として、(F)成分である有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤とともに、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤を併用してもよい。有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤としては、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている二酸化ケイ素粒子(以下、「他の表面処理二酸化ケイ素粒子」ということがある。)が挙げられる。
【0053】
他の表面処理二酸化ケイ素粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、その下限値は、より確実に艶消し外観を付与する点から、1.0μmが好ましく、2.0μmがより好ましく、2.5μmが特に好ましい。一方で、他の表面処理二酸化ケイ素粒子の平均粒子径の上限値は、他の表面処理二酸化ケイ素粒子の基板等の下地に対する密着性の低下を確実に防止する点から、10μmが好ましく、8.0μmがより好ましく、7.0μmが特に好ましい。なお、他の表面処理二酸化ケイ素粒子の平均粒子径とは、他の表面処理二酸化ケイ素粒子の態様で測定した平均粒子径であり、従って、二酸化ケイ素粒子の表面の少なくとも一部を被覆している疎水性有機化合物を含めた平均粒子径である。
【0054】
他の表面処理二酸化ケイ素粒子に使用されている疎水性有機化合物は、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物であれば、特に限定されないが、例えば、ワックスが挙げられる。すなわち、他の表面処理二酸化ケイ素粒子としては、ワックスで表面処理されている二酸化ケイ素粒子が挙げられる。また、ワックスで表面処理されている二酸化ケイ素粒子としては、例えば、ポリエチレンワックスで表面処理されている二酸化ケイ素粒子、パラフィンワックスで表面処理されている二酸化ケイ素粒子が挙げられる。このうち、絶縁信頼性のさらなる向上に寄与する点から、パラフィンワックスで表面処理されている二酸化ケイ素粒子が好ましい。
【0055】
有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部に対して、艶消し外観を付与する点から、1.0質量部が好ましく、10質量部が特に好ましい。一方で、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤の配合量の上限値は、感光性樹脂100質量部に対して、長期間にわたっての絶縁信頼性と塗工性の低下を防止する点から、40質量部が好ましく、30質量部が特に好ましい。
【0056】
無機イオン交換体
無機イオン交換体は、イオン補足剤であり、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤、有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤とあいまって、優れた絶縁信頼性を有する硬化物を得ることに寄与する。
【0057】
無機イオン交換体としては、陽イオン交換体(陽イオン交換タイプ)、陰イオン交換体(陰イオン交換タイプ)、両イオン交換体(両イオン交換タイプ)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0058】
無機イオン交換体は、反対電荷のイオンを取り込んでイオン交換を行うことで、本発明の感光性樹脂組成物中に残っているナトリウムイオンや塩素イオン等のイオン性不純物を捕捉固定するとともに、電圧が印加されることでイオンとなり移動する金属イオンを捕捉固定する。無機イオン交換体が、イオン性不純物を捕捉固定するとともに、金属イオンを捕捉固定することで、絶縁信頼性の向上に寄与する。また、感光性樹脂組成物を基板上に塗工後、感光性樹脂組成物の塗膜を炭酸ナトリウム等のアルカリ溶液にて現像すると、ベース樹脂である感光性樹脂のカルボキシル基(-COOH)がナトリウム塩(-COONa)となる。一方で、現像工程において感光性樹脂組成物の塗膜に施与されるナトリウムイオンを、無機イオン交換体が捕捉することで、カルボキシル基(-COOH)がナトリウム塩(-COONa)となるのを抑制すると考えられる。カルボキシル基(-COOH)がナトリウム塩(-COONa)となるのを抑制することで、感光性樹脂組成物の塗膜の基板に対する密着性低下の防止に寄与すると考えられる。
【0059】
無機イオン交換体としては、例えば、Zr(ジルコニウム)系、Sb(アンチモン)系、Bi(ビスマス)系、Zr-Al(ジルコニウム-アルミニウム)系、Sb-Bi(アンチモン-ビスマス)系、Mg-Al(マグネシウム-アルミニウム)系、Zr―Bi(ジルコニウム-ビスマス)系、Zr-Mg-Al(ジルコニウム-マグネシウム-アルミニウム)系等が挙げられる。これらのうち、さらに確実に、優れた絶縁信頼性を得ることができる点から、ジルコニア化合物、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物、ビスマス化合物、ビスマス化合物とジルコニア化合物の混合物が好ましく、絶縁信頼性がさらに向上する点から、Bi(ビスマス)系、Zr―Bi(ジルコニウム-ビスマス)系が特に好ましい。これらの無機イオン交換体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
無機イオン交換体には、例えば、陽イオン交換体としては、東亞合成株式会社の「IXE-100」、「IXE-300」、陰イオン交換体としては、東亞合成株式会社の「IXE-500」、「IXE-530」、「IXE-550」、「IXE-700F」、「IXE-770D」、「IXE-800」、両イオン交換体としては、東亞合成株式会社の「IXE-600」、「IXE-633」、「IXE-6107」、「IXE-6136」、「IXEPLAS-A1」、「IXEPLAS-A2」、「IXEPLAS-B1」等を挙げることができる。これらの無機イオン交換体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
無機イオン交換体の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部に対して、絶縁信頼性の向上に確実に寄与できる点から、0.5質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、1.5質量部が特に好ましい。一方で、無機イオン交換体の配合量の上限値は、感光性樹脂100質量部に対して、優れた塗膜硬度を確実に得る点から、10質量部が好ましく、下地である基材との密着性を確実に向上させる点から、5.0質量部がより好ましく、3.0質量部が特に好ましい。
【0062】
着色剤
着色剤としては、顔料、色素、染料等、特に限定されず、また、白色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、黒色着色剤、赤色着色剤、橙色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。上記着色剤としては、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるアセチレンブラック、カーボンブラック等の無機系着色剤、緑色着色剤であるフタロシアニングリーンやリオノールグリーン、青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系着色剤、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系着色剤、アントラキノン系着色剤等の有機系着色剤を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
各種添加剤
各種添加剤としては、例えば、硬化促進剤、消泡剤、カップリング剤、難燃剤等が挙げられる。
【0064】
硬化促進剤としては、例えば、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミン、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、メルカプトベンズオキサゾール、イミダゾリウム塩類並びにトリエタノールアミンボレート等が挙げられる。
【0065】
消泡剤としては、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等が挙げられる。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミナ系等が挙げられる。難燃剤としては、有機リン酸塩等のリン系の難燃剤が挙げられる。感光性樹脂組成物に難燃剤が配合されることで、プリント配線板等に搭載される電子部品等の発熱量が増大しても絶縁保護膜の燃焼を防止して、安全性を向上させることができる。
【0066】
非反応性希釈剤
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の乾燥性、塗工性等を調節するための成分である。非反応性希釈剤には、例えば、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、石油ナフサ等を挙げることができる。これらの非反応性希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
感光性樹脂組成物の製造方法
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、一般的に使用される混練手段または混合手段にて製造することができる。具体的には、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温(例えば、10℃~30℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混合、混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、混練または混合して、本発明の感光性樹脂組成物を製造することができる。また、混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練、予備混合を行ってもよい。
【0068】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例を説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物を、プリント配線板上に塗工して、ソルダーレジスト膜等の絶縁保護膜をプリント配線板に形成する方法を例にして説明する。この場合、本発明の感光性樹脂組成物は、プリント配線板のソルダーレジスト用である。
【0069】
プリント配線板に、所望の厚さ(例えば、5μm~100μmの厚さ)で、本発明の感光性樹脂組成物を塗布する。塗工手段としては、公知の方法をいずれも使用でき、例えば、スクリーン印刷、バーコータ、スプレー塗工、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等を挙げることができる。感光性樹脂組成物の塗工後、必要に応じて、感光性樹脂組成物を加熱装置(例えば、熱風炉、遠赤外線炉等)で予備乾燥し、感光性樹脂組成物から非反応性希釈剤を揮発させて、塗膜の表面をタックフリーの状態にする。予備乾燥の条件としては、例えば、乾燥温度60℃~90℃、乾燥時間10分~60分が挙げられる。予備乾燥の後、感光性樹脂組成物の塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300nm~400nmの範囲)を所定量照射させて、感光性樹脂組成物の塗膜を光硬化させ光硬化物を形成する。次に、回路パターンのランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去して塗膜を現像する。現像方法としては、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられる。希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5質量%~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次に、現像後の塗膜を、加熱装置(例えば、熱風循環式の乾燥機等)で、130℃~170℃で20分~80分、熱硬化処理(ポストキュア)を行うことにより、プリント配線板上に目的とするパターンを有する絶縁保護膜(ソルダーレジスト膜)を形成することができる。
【実施例
【0070】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0071】
実施例1~12、比較例1~5
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1~12、比較例1~5にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。そして、調製した感光性樹脂組成物を以下のように塗工して試験サンプルを作製した。下記表1中の配合量の数字は、特に断りの無い限り質量部を示す。また、下記表1中の空欄は配合なしを意味する。
【0072】
なお、下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)感光性樹脂
・リポキシSP-4621:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸を反応させて、エポキシアクリレートを得、生成した水酸基に多塩基酸を反応させて得られる化学構造である、多塩基酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート。固形分65質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート17.5質量%、石油ナフサ17.5質量%、昭和電工株式会社。
【0073】
(B)光重合開始剤
・Omnirad 369:α―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、IGM Resins B.V.社。
【0074】
(C)反応性希釈剤
・DPHA:東亞合成株式会社。
【0075】
(D)エポキシ化合物
・EPICRON N-695:DIC株式会社。
・YX-4000HK:三菱化学株式会社。
【0076】
(E)フィラー
・硫酸バリウムB-30:堺化学工業株式会社。
【0077】
(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤
・サイロホービック100:ポリジメチルシロキサンで表面処理された二酸化ケイ素粒子(ジメチルシロキサン処理二酸化ケイ素)、平均粒子径2.7μm、富士シリシア化学株式会社。
・サイロホービック200:ポリジメチルシロキサンで表面処理された二酸化ケイ素粒子(ジメチルシロキサン処理二酸化ケイ素)、平均粒子径3.9μm、富士シリシア化学株式会社。
・サイロホービック704:ポリジメチルシロキサンで表面処理された二酸化ケイ素粒子(ジメチルシロキサン処理二酸化ケイ素)、平均粒子径6.2μm、富士シリシア化学株式会社。
【0078】
有機ケイ素化合物以外の疎水性有機化合物で表面処理されている艶消し剤
・ACEMATT OK-412:ポリエチレンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子(ポリエチレンワックス処理二酸化ケイ素)、平均粒子径6.3μm、エボニックインダストリーズ社。
・ACEMATT OK-607:ポリエチレンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子(ポリエチレンワックス処理二酸化ケイ素)、平均粒子径4.4μm、エボニックインダストリーズ社。
・サイリシア436:パラフィンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子(パラフィンワックス処理二酸化ケイ素)、平均粒子径4.1μm、富士シリシア化学株式会社。
【0079】
表面処理されていない艶消し剤
・サイリシア350:未処理二酸化ケイ素粒子、平均粒子径4.0μm、富士シリシア化学株式会社。
【0080】
着色剤
・リオノールブルー FG-7351:青色着色剤、東洋インキ製造株式会社。
・MA14:黒色着色剤、三菱化学株式会社。
各種添加剤
・メラミン:日産化学工業株式会社。
・DICY-7:ジャパンエポキシレジン株式会社。
・2MBO:東京化成工業株式会社。
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社。
【0081】
無機イオン交換体
・IXE-550:Bi系の陰イオン交換体(含水酸化硝酸ビスマス、総交換容量Cl4.1meq/g)、東亞合成株式会社。
・IXE-530:Bi系の陰イオン交換体(含水酸化硝酸ビスマス、総交換容量Cl3.7meq/g)、東亞合成株式会社。
・IXE-500:Bi系の陰イオン交換体(含水酸化硝酸ビスマス、総交換容量Cl3.9meq/g)、東亞合成株式会社。
・IXEPLAS-B1:Zr-Bi系の両イオン交換体、東亞合成株式会社。
【0082】
試験サンプル作製工程
基板:プリント配線板(ガラスエポキシ基板「FR-4」、板厚1.6mm、導体(Cu箔)厚50μm)
基板表面処理:バフ研磨
塗工方法:スクリーン印刷
DRY膜厚:20μm~25μm
予備乾燥:80℃、20分
露光:紫外光(波長300nm~400nm)を感光性樹脂組成物上に300mJ/cm照射(露光装置:株式会社オーク製作所「HMW-680GW」)
アルカリ現像:1質量%Na2CO3水溶液、液温30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒
熱硬化処理(ポストキュア):150℃、60分
【0083】
評価・測定項目は以下の通りである。
(1)艶消し外観
試験サンプルの硬化塗膜表面に対して、光沢計(「VG-2000」、日本電色工業株式会社)を用い、60度鏡面反射率を測定した。60度光沢度(グロス値)55以下にて、艶消し外観が得られたと評価した。
【0084】
(2)絶縁信頼性(HAST試験)
基板をプリント配線板から櫛形テストパターン(線幅50μm、線間50μm) に変更した以外は、上記試験サンプル作製工程に準じて、硬化塗膜を形成し、高度加速寿命試験装置(HAST装置) を用いて、温度130℃、湿度85%の雰囲気中で直流20V印加して、槽内で抵抗値を測定し、以下の5段階で評価し、○評価以上を合格とした。
◎◎:200時間後に1.0×10Ω超
◎:150時間後に1.0×10Ω超、200時間後に1.0×10Ω以下
○:100時間後に1.0×10Ω超、150時間後に1.0×10Ω以下
△:100時間後に1.0×10Ω以下
×:100時間以内にマイグレーション発生によりショート
【0085】
実施例1~12、比較例1~5の評価結果を下記表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
上記表1に示すように、(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤(平均粒子径2.7μm~6.2μmのポリジメチルシロキサンで表面処理された二酸化ケイ素粒子を使用)と、を含有する感光性樹脂組成物である実施例1~12では、HAST試験で○評価以上と、高温高湿度環境下で優れた絶縁信頼性が得られ、長期間にわたって絶縁信頼性を維持できることが判明した。また、実施例1~12では、艶消し外観を有する硬化塗膜を得ることができた。
【0088】
特に、表面処理されている艶消し剤として、ポリエチレンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子を併用せずに、ポリジメチルシロキサンで表面処理された二酸化ケイ素粒子のみを使用した実施例1~6では、ポリエチレンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子を併用した実施例7、8と比較して、絶縁信頼性がさらに向上した。また、感光性樹脂100質量部に対して、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤を約26質量部配合した実施例4では、艶消し外観がより向上し、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤を約35質量部配合した実施例3では、艶消し外観がさらに向上し、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤を約44質量部配合した実施例1、2、6では、特に優れた艶消し外観を得ることができた。
【0089】
また、表面処理されている艶消し剤として、ポリジメチルシロキサンで表面処理された二酸化ケイ素粒子とパラフィンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子を併用し、さらに、両イオン交換体または総交換容量Cl3.9meq/g以下の陰イオン交換体を感光性樹脂100質量部に対して約2.0質量部配合した実施例10~12では、特に優れた絶縁信頼性を得ることができた。また、表面処理されている艶消し剤として、ポリジメチルシロキサンで表面処理された二酸化ケイ素粒子とパラフィンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子を併用し、さらに、無機イオン交換体を配合した実施例9~12でも、実施例1、2、6でと同様に、特に優れた艶消し外観を得ることができた。
【0090】
一方で、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤に代えて、ポリエチレンワックスで表面処理された二酸化ケイ素粒子を配合した比較例1、2、5では、艶消し外観は得られたものの、高温高湿度環境下では十分な絶縁信頼性を得ることができなかった。また、有機ケイ素化合物で表面処理されている艶消し剤に代えて、未処理二酸化ケイ素粒子を配合した比較例3、4では、高温高湿度環境下では絶縁信頼性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の感光性樹脂組成物は、長期間にわたって絶縁信頼性に優れた、艶消し外観を有する光硬化物を得ることができるので、艶消し外観が要求されるプリント配線板の分野で利用価値が高い。