IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7545450高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ
<>
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図1
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図2
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図3
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図4
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図5a
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図5b
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図6
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図7
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図8
  • 特許-高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】高度道路交通システム内の衝突前DENMメッセージ
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240828BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022135183
(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公開番号】P2023055630
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】2114312.8
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イザベル モルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】エリック ナッソー
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ ルーラン
(72)【発明者】
【氏名】リオネル トクチュ
(72)【発明者】
【氏名】ブライス ルウールー
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-522604(JP,A)
【文献】特開2016-133825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、発信側ITSステーション(ITS-S)において、
少なくとも2つのオブジェクトの間の衝突の検出または衝突のリスクの検出に応答して、衝突警告のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)を送信する工程を含み、
前記DENMは、前記発信側ITS-Sを示す情報を含み、さらに、前記少なくとも2つのオブジェクトを示す情報をそれぞれ格納する複数のコンテナを含む、
方法。
【請求項2】
高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、受信側ITSステーション(ITS-S)において、
発信側ITS-Sから、少なくとも2つのオブジェクトの間の衝突を警告するまたは衝突のリスクを警告する衝突警告のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)であって、当該発信側ITS-Sを示す情報を含み、さらに、前記少なくとも2つのオブジェクトを示す情報をそれぞれ格納する複数のコンテナを含む前記DENMを受信する工程と、
前記受信側ITS-Sが受信した前記DENMに格納された前記少なくとも2つのオブジェクトを示す情報のうちのいずれかに対応するかを判定する工程と、
肯定的な判定の場合に、衝突関連の測定をトリガする工程と、
を含む方法。
【請求項3】
前記DENMのcauseCodeフィールドが、Collision RiskまたはAccident値に設定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記DENMのsubCauseCodeフィールドが、衝突までの時間が閾値未満の差し迫った衝突を定義するPreCrash値に設定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記発信側ITS-Sが路側ユニットである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記コンテナのうちの1つが、前記発信側ITS-Sのステーション識別子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記コンテナのうちの1つが、前記発信側ITS-Sとは別個のITS-Sのステーション識別子であって、前記別個のITS-Sから以前に受信されたCooperative Awarenessメッセージから取得される前記識別子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記コンテナのうちの1つは、格納されたオブジェクトに対応する分類を示す分類フィールドを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記コンテナのうちの1つは、前記発信側ITS-Sに固定された局所座標フレームで表現された、格納されたオブジェクトに対応する座標を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記DENMは、前記衝突に関与するオブジェクトのためのコンテナのみを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記DENMは、衝突点のインジケーションを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記DENMは、前記衝突点を囲む領域において知覚される各オブジェクトのためのコンテナをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記DENMが、前記オブジェクトについての1つまたは複数の予測される軌道および/または前記衝突の原因を示すCollision Dataコンテナをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記DENMは、前記DENMより以前に送信された他のDENMであって、前記DENMに関連する情報を有する前記他のDENMを識別する情報を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、発信側ITSステーション(ITS-S)において、
第1のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)であって、複数の知覚されたオブジェクトを示す情報をそれぞれ格納する複数のコンテナを含む前記第1のDENMを送信する工程と、
その後に、第2のDENMであって、当該第2のDENMに関連する情報を有する前記第1のDENMを識別する情報を含んだ前記第2のDENMを送信する工程と、
を含む方法。
【請求項16】
前記発信側ITS-Sにおいて、前記第2のDENMによって通知された第2のイベントが前記第1のDENMによって通知された第1のイベントに対応するかを判定する工程と、
肯定的な判定の場合にのみ、前記第1のDENMを識別する情報を伴う前記第2のDENMを提供する工程と、
をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、受信側ITSステーション(ITS-S)において、
発信側ITS-Sから、第1のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)であって、複数の知覚されたオブジェクトを示す情報をそれぞれ格納する複数のコンテナを含んだ前記第1のDENMを受信する工程と、
続いて、前記発信側ITS-Sから、第2のDENMであって、当該第2のDENMに関連する情報を有する前記第1のDENMを識別する情報を含んだ前記第2のDENMを受信する工程と、
前記第1のDENMの前記複数のコンテナのうちの1つまたは複数を用いて、前記第2のDENMによって通知されたイベントを処理する工程と、
を含む方法。
【請求項18】
請求項1、2、15又は17のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された少なくとも1つのマイクロプロセッサを含んだ高度道路交通システム(ITS)ステーション(ITS-S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、高度道路交通システム(ITS)に関し、より具体的には、協調型高度道路交通システム(C-ITS)に関する。
【背景技術】
【0002】
協調型高度道路交通システム(C-ITS)は、交通安全、交通効率、運転者の経験を改善することを目的とした将来の交通管理のための新興技術である。
【0003】
欧州電気通信標準化機構(ETSI)によって定義されている高度道路交通システム(ITS)は、
-車両間(例えば、車車間)の通信、及び、
-車両と固定場所(例えば、車とインフラストラクチャ)との間の通信
などの様々なタイプの通信を含む。
【0004】
C-ITSは、そのような道路輸送に限定されない。より一般的には、C-ITSがナビゲーションシステムを含む、鉄道、水道および航空輸送のための情報通信技術(ICT)の使用として定義され得る。そのような様々なタイプのC-ITSは、一般に、通信のための無線サービスに依存し、専用技術を使用する。
【0005】
そのようなC-ITSは、C-ITSが実装される各国および/または地域に対して特定された基準に従う。現在、欧州では、欧州電気通信標準化機構(ETSI)が、C-ITSが適用される規格を形成する仕様の策定を担当している。
【0006】
C-ITS内の協調は、(ITS-Sと表示される)ITSステーション間で、ITSメッセージと呼ばれるメッセージの交換によって達成される。ITS-Sは、車両、路側ユニット(RSU)、(例えば、スマートフォン、GPS、スマートウォッチ、またはサイクリスト機器に含まれる)ITS機器を運ぶ交通弱者(VRU)、又は、ITS機器を備える他のエンティティもしくはインフラストラクチャ、及び中央サブシステム(バックエンドシステム及びトラフィック管理センタ)でありうる。
【0007】
C-ITSは、様々な種類の、例えば車両間(全ての種類の道路ユーザ、例えば自動車対自動車、を参照する、車両対車両(V2V))の、又は、車両対インフラストラクチャ(V2I)、インフラストラクチャ対車両(I2V)、例えば自動車対インフラストラクチャなどの車両と固定位置との間の、通信をサポートしうる。
【0008】
このようなメッセージ交換は、(「車両」対任意の種類のデバイスに対する)「V2X」と呼ばれる無線ネットワークを介して実行される可能性があり、その例として、3GPP LTE-Advanced Pro、3GPP 5GまたはIEEE 802.11p技術を含みうる。
【0009】
例示的なITSメッセージは、集合知覚メッセージ(Collective Perception Message、CPM)、協調認識メッセージ(Cooperative Awareness Message、CAM)、および分散環境通知メッセージ(Decentralized Environmental Notification Message、DENM)を含む。ITSメッセージを送信するITS-Sは、「発信側」ITS-Sと呼ばれる。
【0010】
ETSI TS 103 324(2019年12月のV2.1.1)は、内蔵センサシステムを有するITS-Sがその近傍のオブジェクトを検出し、ブロードキャストCPMを使用して、それについての記述情報(例えば、位置および/または運動情報などのダイナミクス)を送信する協調認識サービスを定義している。CPMは、例えば、発信側ITS-Sによって感知される物体の速度に応じて、100msから1sの期間で周期的に送信される。
【0011】
EN 302 637-2(2019年4月のV1.4.1)は、ITS-SがブロードキャストCAMを使用して自車両のダイナミクス(例えば、位置、速度)を送信する協調認識基本サービスを定義している。
【0012】
EN 302 637-3(2019年4月のV1.3.1)は、発信側ITS-Sが、ブロードキャストDENMを使用して、警告やアラートなどの通知を他のITS-Sに送信することができる、分散環境通知基本サービスを定義している。このようなメッセージは、発信側ITS-Sによって検出されたイベント(例えば、道路障害物、運転環境、交通状態)を通知する。
【0013】
DENM警告の例は、特定領域における衝突リスクについて警告することができる。その場合、車両は、様々な緊急処置または機能(例えば、自動緊急ブレーキ、前方衝突警告など)をトリガすることができる。
【0014】
CAR 2 CAR Communication Consortium(C2C-CC)は、その「Triggering Conditions and Data Quality Pre-Crash Information」刊行物において、差し迫った衝突について警告するためのDENM衝突前警告を提案している。検出された衝突リスクの衝突時間が、所定の閾値、例えば1.5秒未満である場合、衝突が差し迫っているとみなされる。(その内蔵センサおよび/または受信されたITSメッセージを使用して)前方の車両との衝突リスクを検出する後方の車両は、衝突前DENMを使用して、差し迫った衝突を前方の車両に警告する。
【0015】
提案された衝突前メッセージは、後方の車両を示し、クリティカルな前方の車両についての記述をする。このように、メッセージは、有利には、前方の車両が、差し迫った衝突に関連すると判断するためのすべての必要な情報を単一のメッセージ内で有することを可能とし、次いで、衝突のために車両および乗員を準備するための適切な緊急処置(警告灯の点灯、窓の閉鎖、自動シートベルト張力付与など)を起動することを可能とする。
【0016】
C2C-CCの衝突前DENMは、互いに見える2台のC-ITS搭載車両間でのみ有効である。
【0017】
これは、衝突または差し迫った衝突のリスクの多くの状況に対して満足のいくものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述の問題の1つ以上に対処するために考案された。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、まず、他のITS-Sが、特にRSUが、互いに見えない可能性がある車両に対して衝突リスクを迅速に報告することを可能にする、衝突関連DENMを定義することを提案する。
【0020】
そのために、本発明は、高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、発信側ITSステーション(ITS)において、
少なくとも2つのオブジェクトの間の衝突の検出または衝突のリスクの検出に応答して、衝突警告のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)を送信(一般にブロードキャスト)することを含み、
前記DENMは、前記発信側ITS-Sについての記述を含み、さらに、前記少なくとも2つのオブジェクトをそれぞれ記述する少なくとも2つのコンテナを含む、
方法を提供する。
【0021】
対応して、本発明はまた、高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、受信側ITSステーション(ITS-S)において、
発信側ITS-Sから、少なくとも2つのオブジェクトの間の衝突を警告するまたは衝突のリスクを警告する衝突警告のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)であって、当該発信側ITS-Sについての記述を含み、さらに、前記少なくとも2つのオブジェクトをそれぞれ記述する少なくとも2つのコンテナを含む前記DENMを受信することと、
前記受信側ITS-Sが受信した前記DENMに記述された前記少なくとも2つのオブジェクトのうちのいずれかに対応するかを判定することと、
肯定的な判定の場合に、衝突関連の測定をトリガすることと、
を含む方法を提供する。
【0022】
このようなDENMにより、衝突に関与しないITS-Sが後者について報告することが可能となる。したがって、RSUなどの監視エリアのより良好なビューを有するITS-Sが、衝突するオブジェクトが互いに見えるかどうかに関係なく、衝突について、それが実際であるか予測されるかを問わずに、警告することができる。そして、受信側ITS-Sは、単一のメッセージを使用して、低減された処理時間で、衝突または差し迫った衝突リスクを分析することができる。
【0023】
さらに、DENMのための提案されたフォーマットは、(環境モデルまたは「ローカル動的マップ」(LDM)において)、(監視している)発信側ITS-Sですでに利用可能でありうるオブジェクトコンテナの単なる追加に依存しうるため、書き込むことが容易(したがって、迅速)である点で有利である。
【0024】
本発明のオプション機能は、方法を参照して以下に定義されるが、装置の特徴に移すことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、DENMのcauseCodeフィールドが、(例えば、ETSI EN 302 637-3、セクション7.1.4、causeCode=2または97で定義されるように)Collision Risk又はAccident値に設定される。
【0026】
特定の実施形態では、前記DENMのsubCauseCodeフィールドが、衝突までの時間が閾値(例えば1.5秒)未満の差し迫った衝突を定義するPreCrash値(例えば、C2C-CCはcauseCodeフィールドが衝突リスク-97に設定されるときに値5を提案している)に設定される。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記発信側ITS-Sが路側ユニットである。このようなユニットは、通常、車両と比較して、監視されるエリアの視界が良好であり、より強力な処理手段を有する。したがって、様々な他のオブジェクト間の衝突のリスクを検出し、提案されたDENMを使用して可能な限り早期にそれらに警告するのに適している。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記コンテナのうちの少なくとも1つが、ETSI TR 103 562 V2.1.1において定義されるPerceivedObjectContainerである。この状況では、DENMは、環境モデル(またはLDM)からオブジェクトを検索することによって、迅速に書き込まれることができる。
【0029】
特定の実施形態では、各コンテナが、ETSI TR 103 562 V2.1.1で定義されるPerceivedObjectContainerである。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記コンテナのうちの1つが、前記発信側ITS-Sのステーション識別子を含む。(監視する)発信側ITS-Sは、衝突するオブジェクトとして、低コストで、自身を宣言することができる。
【0031】
他の実施形態では、前記コンテナのうちの1つが、前記発信側ITS-Sとは別個のITS-Sのステーション識別子であって、前記別個のITS-Sから以前に受信されたCooperative Awarenessメッセージから取得される前記識別子を含む。したがって、ステーション識別子を参照することにより、1つの衝突オブジェクトの宣言を低コストで行うことができる。受信側ITS-SによるDENMの処理も、より簡単になる。これは、特に、そのいずれかがC-ITSが与えられていない(すなわち、ITS-Sを有しない)2つのオブジェクト間の、サードパーティ・ステーションによって検出された衝突リスクに適用されうる。
【0032】
他の実施形態では、前記コンテナのうちの1つは、対応する記述されたオブジェクトの分類を提供する分類フィールドを含む。これは、例えば、ITS-Sではないオブジェクトを記述することを可能にする。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記コンテナのうちの1つは、前記発信側ITS-Sに固定された局所座標フレームで表現された、対応する記述されたオブジェクトの座標を含む。座標は、例えば、フレームの各軸に沿った、発信側ITS-Sからの距離として表される。より一般的には、複数の相対情報項目(例えば、座標に加えて速度および加速度)をコンテナに追加することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記DENMは、前記衝突に関与するオブジェクトのためのコンテナのみを含む。制限された数のオブジェクトであるが、クリティカルなオブジェクトを有するそのようなDENMは、(ITS-Sを有する)関係するオブジェクトに向けられた、差し迫った衝突の警告と見なすことができる。
【0035】
変形例では、前記DENMは、衝突点のインジケーションを含む。
【0036】
また、前記DENMは、前記衝突点を囲む領域において知覚される各オブジェクトのためのコンテナをさらに含む。このDENMは、特に、衝突に直接関与しないオブジェクトについて、より多くのインジケーションを提供する。これは、車両が(例えば、自転車または歩行者を考慮に入れて)適切な衝突防止措置をとるのに役立ちうる追加情報を有利に提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記DENMが、前記オブジェクトについての1つまたは複数の予測される軌道および/または前記衝突の原因を示すCollision Dataコンテナをさらに含む。このような追加情報は、受信側ITS-Sが、例えば、それ自身の軌道を、衝突検出をもたらした対応する予測軌道と比較することによって、予測された衝突が起ころうとしているかを評価することを可能にする。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記DENMは、以前のDENMへのリンクを含む。このようなリンクは、受信側ITS-Sが、例えば、以前のDENMからより多くの知覚されたオブジェクト(例えば、歩行者、自転車)を取得することによって、衝突エリアに関する追加情報を容易に取り出すことを可能にする。このようにして、より良好な衝突防止措置をとることができる。
【0039】
本発明の実施形態では、以前のDENMへのそのようなリンクの使用が、上記の衝突警告DENMに限定されず、オブジェクトを記述するコンテナを提供する任意の以前のDENMに1つのDENMをリンクさせることができる。本発明は、また、高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、発信側ITSステーション(ITS-S)において、
第1のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)であって、複数の知覚されたオブジェクトをそれぞれ記述する複数のコンテナを含む前記第1のDENMを送信することと、
その後に、前記第1のDENMへのリンクを含んだ第2のDENMを送信することと、
を含む方法を提供することが分かる。
【0040】
リンクは、actionIDデータフレーム(DF)などの第1のDENMへの、または、その中の発信側ITS-Sによって検出されるDENMのイベントを一意に識別するシーケンス番号、単なる参照でありうる。
【0041】
対応して、本発明は、また、高度道路交通システム(ITS)における通信の方法であって、受信側ITSステーション(ITS-S)において、
発信側ITS-Sから、第1のDecentralized Environmental Notificationメッセージ(DENM)であって、複数の知覚されたオブジェクトをそれぞれ記述する複数のコンテナを含んだ前記第1のDENMを受信することと、
続いて、前記発信側ITS-Sから、前のDENMへのリンクを含んだ第2のDENMを受信することと、
前記第2のDENMにリンクされた前記第1のDENMの前記複数のコンテナのうちの1つまたは複数を用いて、前記第2のDENMによって通知されたイベントを処理することと、
を含む方法を提供する。
【0042】
したがって、上述のように、リンクは、受信側ITS-Sが、通知されたイベントに関連するオブジェクトに関する追加情報を容易に取得することを可能にする。衝突イベントの例では、第1のDENMが、衝突エリアに存在するオブジェクトのローカルマップを提供してもよく、そのような方法において、受信側ITS-Sが、例えば歩行者、自転車が周囲にいることを前提として、適切な衝突防止措置をとることができる。
【0043】
本発明のオプション機能は方法を参照して以下に定義されるが、装置の特徴に移すことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記発信側ITS-Sにおいて、前記第2のDENMによって通知された第2のイベントが前記第1のDENMによって通知された第1のイベントに対応するかを判定することと、
肯定的な判定の場合にのみ、前記第1のDENMへの前記リンクを伴う前記第2のDENMを提供することと、
をさらに含む。
【0045】
例として、第1のイベントと第2のイベントの両方が実質的に同じ衝突点で実質的に同じ時間に2つの衝突を報告するときに、同じイベントと判定することができる。
【0046】
同様に、道路上の障害物を報告し、その後、道路上の動物(または人間の存在または車両)を実質的に同じ地理的位置で実質的に同時に報告する2つのイベントを、対応する(または一致する)イベントと見なすことができる。
【0047】
相関して、本発明は、上記の方法のいずれかを実行するように構成された少なくとも1つのマイクロプロセッサを有する、高度道路交通システム(ITS)ステーション(ITS-S)を提供する。無線通信装置が、発信側ITS-Sまたは受信側ITS-Sのいずれかでありうる。
【0048】
本発明の別の態様は、高度道路交通システム(ITS)ステーション(ITS-S)内のマイクロプロセッサまたはコンピュータシステムによって実行されるときに、前記ITS-Sに上で定義された方法のいずれかを実行させるプログラムを記憶する、非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【0049】
本発明による方法の少なくとも一部は、コンピュータで実装されうる。したがって、本発明は、ここではすべてが一般に「回路」、「モジュール」、または「システム」と呼ばれうる、全体としてハードウェアの実施形態、全体として(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)ソフトウェアの実施形態、または、ソフトウェアとハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態の形式をとりうる。さらに、本発明は、媒体に具現化されたコンピュータ使用可能プログラムコードを有する表現の任意の有形媒体に具現化されたコンピュータプログラムプロダクトの形式をとってもよい。
【0050】
本発明をソフトウェアで実装することができるため、本発明は、任意の適切な搬送媒体上でのプログラム可能な装置への提供のためのコンピュータ可読コードとして具現化可能である。有形搬送媒体は、ハードディスクドライブ、磁気テープデバイス、またはソリッドステートメモリデバイスなどの記憶媒体を有しうる。過渡搬送媒体は、電気信号、電子信号、光信号、音響信号、磁気信号、または電磁信号、たとえばマイクロ波またはRE信号などの信号を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明のさらなる利点は図面および詳細な説明を検討することにより、当業者に明らかになるだろう。ここで、本発明の実施形態を、単なる例として、以下の図面を参照して説明する。
図1図1は、本発明が実装されうる典型的な高度道路交通システム(ITS)を示す図である。
図2図2は、本発明が実装されうる典型的なITSステーションを示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態によるDENMの例示的なフォーマットを示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態による例示的なサービス固有許可(Service Specific Permission)を概略的に示す図である。
図5a図5aおよび5bは、フローチャートを用いて、衝突警告DENMを送信する発信側ITS-Sおよび対応する受信側ITS-Sにおける本発明による方法の大まかなステップをそれぞれ示す図である。
図5b図5aおよび5bは、フローチャートを用いて、衝突警告DENMを送信する発信側ITS-Sおよび対応する受信側ITS-Sにおける本発明による方法の大まかなステップをそれぞれ示す図である。
図6図6は、フローチャートを用いて、本発明の実施形態による発信側ITS-Sにおける方法の、より詳細なステップを示す図である。
図7図7は、フローチャートを用いて、本発明の実施形態による、DENMメッセージ内のDENMパラメータの様々なコンテナを生成するための詳細なステップを示す図である。
図8図8は、本発明の実装のための図1に対する代替シナリオであって、発信側ITS-Sが、一方がC-ITS通信を有すると共に他方がC-ITSを有していない前方の2つの車両の衝突前の状況を観測する車両であるシナリオを示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態を実行するように構成された通信ITS-Sデバイスの例の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下の説明において提供されるリストおよび(データエレメントなどの)エレメントの名称は、単なる例示である。実施形態はそれに限定されず、他の名称が使用されうる。
【0053】
本発明の実施形態は、高度道路交通システム(ITS)において実装されることが意図されている。
【0054】
本発明は単一のDENM、すなわち、事故/衝突または衝突のリスクまたは衝突前の状況などの検出されたイベントをアナウンスする警告メッセージを提案し、検出された状況に関与する複数のオブジェクトに関する、特に衝突に関与するクリティカルオブジェクトに関する情報を伝達する。
【0055】
このようなDENMを送信する発信側のITSステーション(ITS-S)は、自身が知覚するオブジェクトを記述するコンテナが、いわゆるローカル動的マップまたは環境モデルにおいて、通常、すでにメモリに組み込まれているため、それを迅速に構築することができる。
【0056】
他方で、衝突(例えば、衝突前)の状況に関係する受信側ITS-Sは、複数のオブジェクトを組み合わせると共にCAMまたはCPMよりも迅速に送信される、単一のDENMから(既知の技術と比較して)追加の情報を取得することができる。そして、受信側ITS-Sは、状況のより迅速な分析を実行し、衝突予防機能または衝突前機能を有効化するか否かをより早く決定することができる。
【0057】
本発明の実施形態の実装のためのITSシステム100の例を図1に示す。
【0058】
この例では、DENMを送信する発信側ITSステーション(ITS-S)が、路側ユニット(RSU)である。RSUは、移動車両よりも衝突状況を分析するための強力なリソースを有する点で有利であり、例えば、より広い視野や、複数の視野や、交通状況、信号状態、監視領域に入るオブジェクトの知識などの他の情報への高速アクセス、を有しうる。
【0059】
特に、監視領域をより良く見ることにより、RSUが、接続された衝突車両と接続されていない衝突車両とが混合されるとき、および/または、衝突車両が(例えば、交差点での閉塞により)互いに見えないときに、衝突または衝突のリスクを検出することを可能とし、これはC2C-CCなどの既知の技術によっては達成されない。
【0060】
ITS100は、交差点に実装され、固定された路側ユニット110と、いくつかのエンティティとを有し、これらのエンティティのすべてが、ITS100内でITSメッセージを送信および/または受信するために、それぞれITSステーション(ITS-S)を搬送または有することができる。いくつかのエンティティは、たとえば、車両240、241、および242でありうる。
【0061】
固定された路側ユニット110は、ここでは、ビデオカメラ120、121、122、123である撮像素子などのセンサのセットと、状況分析モジュール111などの、センサによって提供されるデータを分析する分析モジュールとを含む。ビデオカメラ120、121、122および123は、監視エリア、ここでは道路交差点を監視または走査し、したがって、監視エリアの画像を再生するように構成される。
【0062】
センサおよび分析モジュール、すなわちビデオカメラ120~123および状況分析モジュール111は、状況分析モジュール111がセンサ/ビデオカメラによってキャプチャされたストリームを処理するように接続される。いくつかの実施形態によれば、分析モジュールおよびセンサは、同じ物理的な路側ユニット110とは別個であってもよく、またはその中に組み込まれてもよい。例えば、分析モジュールは、遠隔であり得る(すなわち、路側ユニット110に組み込まれていない)センサに有線接続されうる。
【0063】
分析モジュール、例えば、状況分析モジュール111による処理は、以下で「知覚オブジェクト」または「検出オブジェクト」と呼ばれる、監視領域に潜在的に存在するオブジェクトを検出することを目的とする。そのようなオブジェクトを検出するための機構が、当業者に周知である。
【0064】
また、分析モジュール、例えば状況分析モジュール111は、「状態ベクトル」と呼ばれる対応する記述情報にそれぞれ関連付けられた知覚オブジェクトのリストを出力するように構成される。知覚オブジェクトの状態ベクトルは、例えば、位置、運動学的、時間的、挙動的、またはオブジェクトタイプの分類情報などのようなパラメータを含みうる。
【0065】
したがって、分析モジュールは、また、知覚された物体の中で、歩行者、自転車運転者ならびにオートバイ運転者、及び、障害を有する又は移動や姿勢が低下した人などのような交通弱者(VRU)を識別しうる。また、木、道路建設/作業機器(道路バリア、…)などのようなオブジェクトを識別しうる。
【0066】
VRUは、例えば、スマートフォン、GPS、スマートウォッチに、または自転車運転者用の装備などに含まれる、ITS装置を搬送するときに、ITS-Sと見なされうる。
【0067】
例えば、図の例では、監視領域をスキャンすることによって、状況分析モジュール111が以下のオブジェクトを知覚しうる:
道路上の車両240、241および242にそれぞれ対応するオブジェクト150、151および152。本例では、道路交差点に到達する車両241および242が、建物260によって互いに見ることができない;
歩道上の歩行者250に対応するオブジェクト160。
【0068】
さらに、知覚されるオブジェクトは、例えば、ITSステーションが車両であるかVRUであるか若しくはRSUであるか、又は別のタイプのものであるかによって分類されうる。そのようなオブジェクトタイプの分類は、例えば、路側ユニット110の、またはより一般的にはITS-Sのセットアップ中に提供される、所定のルールに基づきうる。ETSI TR 103 562 V2.1.1は、例えば、「unknown」、「車両」、「人」、「動物」および「その他」のカテゴリを定義している。当然ながら、より具体的な他のカテゴリが定義されてもよい。
【0069】
分析モジュールは、知覚されたオブジェクトの軌道を分析するためのいくつかの状況分析機能を有し、それらの将来の軌道を予測し、車両が衝突する潜在的なリスクを分析することができる。図に示される例では、知覚オブジェクト151および152が、道路交差点の中心において170とマークされた衝突位置で衝突する危険性を有することが検出される。分析モジュールは、2つの車両の軌道171および172を予測し、衝突までの時間TTC情報を計算することができる。
【0070】
第1の閾値、例えば5秒よりも短いが、第2の閾値、典型的には1.5秒よりも大きいTTCが、2つ以上のオブジェクトの間で衝突のリスクが検出されることを意味する。
【0071】
第2のしきい値よりも低いTTCは、衝突が差し迫った状況または「衝突前」の状況が検出されることを意味する。
【0072】
路側ユニット110は、ETSI EN 302 665仕様のバージョンV1.1.1で定義されるITSステーションの基準アーキテクチャにおいて特定されるような路側ITS-S(R-ITS-S)112を含む。路側ITS-S112を用いて、RSU110は、知覚オブジェクトに関する情報を共有することができる。典型的には、RSU110は、ITSメッセージを、具体的には文書ETSI TR 103 562およびETSI TS 103 324において定義されると共に通常は定期的に送信される、いわゆる集合知覚メッセージ(CPM)131を、送信することによって、受信側ITSステーションと、そのような情報を共有することができる。
【0073】
本明細書では、「発信側ITS-S」および「受信側ITS-S」という表現が、ITSメッセージを送信するITS-SおよびITSメッセージを受信するITS-Sをそれぞれ指定するために使用される。
【0074】
また、RSU110は、他のITSメッセージを、具体的には文書ETSI EN 302 637-3に定義されているいわゆる分散環境通知メッセージ(DENM)130を、送信することによって、事故または衝突前の状況などの衝突のリスクに関する情報を共有することができる。
【0075】
より一般的には、ITS100内の任意のITS-Sが、CPMを送信することによって自身が知覚したオブジェクトの情報を、そして、文書ETSI EN 302 637-2に定義されているいわゆる協調認識メッセージ(CAM)132を送信することによって自身に関する情報を、共有することができる。CAMは、位置、運動学(またはダイナミクス)、一意のステーション識別子、時間、挙動、またはオブジェクトタイプ分類情報などを含みうる。
【0076】
ITSメッセージは、通常、他の任意のITS-Sがそれを利用することができるように、その発信側ITS-Sによってブロードキャストされる。
【0077】
ITS100において交換されるすべてのメッセージは、各ITS-Sがどのオブジェクトが存在するか、どこで、どのようにそれらが振る舞うかに関して、その環境の良好な知識を有するのに役立つ。
【0078】
図1の提案されたシナリオでは、RSU110が、DENMを通して、事故または衝突前の状況などの衝突のリスクを報告する観測者であるが、変形例では、車両240が、これもまた道路交差点の良好なビューを有するため、そのような報告観測者とすることが企図されてもよい。
【0079】
図2は、本発明が実装されうる典型的なITSステーションを示している。
【0080】
説明のために、ここではRSU110について検討するが、任意の他のタイプのITS-S装備エンティティが使用されうる。
【0081】
上述のように、状況分析モジュール111は、例えば道路交差点を監視する1つ以上のセンサに接続される。これらは、カメラ120~123だけでなく、LIDAR(レーザ画像検出および測距デバイス)210または単なるレーダなどの他のセンサも含みうる。
【0082】
各センサによって検出された知覚オブジェクトは、いくつかのセンサによって検出された同じオブジェクトを融合またはマージするために、センサデータ融合モジュール230によって分析される。異なるセンサからのオブジェクト間の類似性の考慮は、それらのオブジェクトタイプ、位置、動力学/動力学(速度、加速度)、軌道などに基づくことができる。これらの情報項目の類似性を精査するときに信頼性のレベルが計算されてもよく、信頼性のレベルが十分に高いときに融合を行うことができる。
【0083】
ITS-Sの環境モデル220を更新するために、新たに知覚されたオブジェクト、または既に追跡されているオブジェクトに関する更新が、使用される。追加の情報を伝達するCAM132およびCPM131も、環境モデル220を更新するために使用することができる。
【0084】
環境モデルは、ローカル動的マップとしても知られており、知覚オブジェクトのリストを含む。各ITS-Sは、独自の環境モデル220を有する。
【0085】
環境モデル220におけるオブジェクトは、以下の全部または一部を含む複数の情報項目と共に定義される:
-objectID:検出されたオブジェクトの識別子、
-SensorID(オプション):オブジェクトを知覚したセンサのリスト、
-timeOfMeasurement:(最後の)測定が行われた時間、
-stationID(オプション):対応する信頼性のレベルを伴う、知覚オブジェクトに関連付けられたITS-S識別子。信頼性のレベルは、(ITS IDを含む)受信されたCAMに含まれる位置の精度と、ローカルセンサによって測定された位置とに基づいて計算することができる。変形例では、それはゾーンに対する送信側ITS-Sの数に対する知覚オブジェクトの数に基づいて計算される、
-objectRefPoint(オプション):検出されたオブジェクトの基準点に対応するリファレンスポイント。デフォルトでは、リファレンスポイントは、検出されたオブジェクトの中心点である、
-Distance:発信側ITS-S、ここではRSU110、に対して固定された基準のフレームに従って判定される距離。例えば、測定時における知覚されたオブジェクトと発信側ITSステーションの基準点との間の距離を対応する信頼性のレベルと共に表す3つのフィールド、xDistance、yDistance、zDistance内で距離が示されるように、基準のフレームの3つの方向x、y、zについて相対的に距離が判定される、
-Speed:測定時の発信側ITSステーションの基準点に関する速度。例えば、検出されたオブジェクトの速度を対応する信頼性のレベルと共に表す3つのフィールド、xSpeed、ySpeed、zSpeed内で速度が示されるように、参照のフレームの3つの方向x、y、zについて相対的に速度が判定される、
-Acceleration(オプション):測定時の発信側ITSステーションの基準点に関する加速度。例えば、速度と同様に、対応する信頼性を有し、発信側ITS-Sに固定された基準のフレームの3つの方向に対して、3つのフィールド、xAcceleration、yAcceleration、zAcceleration内で加速度が示される、
-dynamicStatus(オプション):知覚されたオブジェクトから離れて移動する発信側ITS-Sの能力を提供する動的な状態、
-planarObjectDimension(オプション):知覚されたオブジェクトの寸法を示すディメンジョン。寸法は、3つのフィールド、planarObjectDimension1、planarObjectDimension2、verticalObjectDimension内で示されうる、
-Classification(オプション):対応する信頼性のレベルを有する、知覚されたオブジェクトの分類を提供する分類。
【0086】
例えば、知覚オブジェクトの情報を共有することを望む発信側ITS-Sによって送信されるCPMは、それぞれが対応する知覚オブジェクトのためのこのような情報を列挙する、コンテナ(知覚オブジェクトコンテナ)を含む。
【0087】
状況分析モジュール240は、その環境モデル220に含まれるオブジェクトの軌道を継続的に分析する。これは、衝突のリスク170を検出する観点から、それらの将来の軌道171、172を予測するためである。
【0088】
オプションで、交通状況(渋滞、信号機状況、速度制限)、気象状況などの入力として追加情報を使用するものを含んだ、任意の軌道予測方法を使用することができる。予測軌道は、オブジェクトがいつ予測位置にあることが予想されるかを定義する、関連する位置時間を有する予測位置のセットである。例えば、様々な軌道予測方法を使用することによって、1つの同じオブジェクトについて複数の軌道が予測されてもよい。
【0089】
衝突の検出は、そのような予測された軌道に基づくことができ、(時間マージンが与えられた)同じ時間に、(位置マージンが与えられた)互いに交差する軌道が、その時間が第1の閾値(例えば、5秒)よりも遅く、第2の閾値(例えば、1.5秒)よりも遅いならば、衝突のリスクを上昇させる可能性があり、その時間が第2の閾値よりも遅くないならば衝突前の状況を引き起こす可能性があり、または、その時間が0であるならば、事故状況を引き起こしている。
【0090】
衝突は、1つまたは複数の車両、VRU、動物、道路上または道路付近のオブジェクト(樹木、道路バリア、信号機など)を含んだ、2つ以上のオブジェクトを含み得る。これらのオブジェクトは、「クリティカル」または「衝突」オブジェクトとラベル付けされる。
【0091】
このように、環境モデル220に含まれる各クリティカルオブジェクトは、予測:
-オブジェクト予測軌跡、
-オブジェクトの衝突に関連する状況:例えば、衝突リスク、衝突前の状況、事故状況、
から得られたそれらの情報項目を用いて更新されうる。
【0092】
さらに、状況分析モジュール240は、たとえば、衝突関連状況の変化を検出した場合、または新しい衝突前の状況を検出した場合に、衝突を警告する分散環境通知メッセージ(DENM)を構築すると決定することができる。DENMは、発信側ITS-S(ここではRSU110)の記述を、さらに、例えば衝突に必ずしも関与しないオブジェクトに対して、2つ以上の知覚オブジェクトをそれぞれ記述する2つ以上のコンテナを、含めることによって衝突関連状況を定義する。DENMは、従来、RSU110のR-ITS-S112によって送信される。
【0093】
本発明の実施形態によるDENMの例示的なフォーマットを図3に示す。これは、ETSI EN 302 637-3仕様書のバージョン1.3.1に規定されているように、イベントに対する警告について報告するために使用されるDENMフォーマットに基づく。
【0094】
DENM300は、ITS PDUヘッダ310と、「DENMパラメータ」フィールド320と、オプションの証明書390とを含む。
【0095】
ITS PDUヘッダ310は、使用されるプロトコルに関する情報と、メッセージのタイプに関する情報とを含む(特に、ITSメッセージがDENMタイプのものであることをシグナリングする)。ヘッダは、上述の仕様で定義されている。
【0096】
「DENMパラメータ」フィールド320は、管理コンテナ330と、状況コンテナ340と、位置コンテナ350と、アラカルトコンテナ360とを含みうる。
【0097】
各コンテナは、いくつかのデータ要素(DE)またはデータフレーム(DF)を含む。ETSI TS 102 894-2仕様書は、ITSメッセージで使用される従来のデータ要素およびデータフレームを定義している。
【0098】
管理コンテナ330は、状況分析モジュール240によって検出されたイベントに関する情報を含み、以下を含む様々なフィールドを有する:
-eventPosition:このデータフレームは、検出されたイベントの地理的位置を示す。いくつかの実施形態では、eventPosition DFが、状況分析モジュール240によって予測される衝突位置170に設定される。変形例では、eventPositionが、イベント(例えば、衝突するオブジェクト)に関係するオブジェクトのうちの1つについての基準位置に設定される、
-actionId:このデータフレームは、発信側ITS-S(ここではR-ITS-S112)のステーションIDと、そのような発信側ITS-Sによってイベントが検出された後に取られるアクションを識別するために使用されるシーケンス番号とを含む
-stationType:このデータ要素は、ETSI TS 102 894-2 V1.3.1に定義されているように、例えば、歩行者(1)、自転車運転者(2)、原付(3)、オートバイ(4)、乗用車(5)、バス(6)、ライトトラック(7)、ヘビートラック(8)、トレーラー(9)、特殊車両(10)、トラム(11)、路側ユニット(15)などの発信側ITS-Sのタイプを含む。
【0099】
オプションで、管理コンテナ330は、以前のDENMと同じイベント(ここでは衝突)にDENM300が関することをシグナリングすることを発信側ITS-Sが望む場合に、(actionIDのシーケンス番号がインクリメントされるために)別のDENMのactionIDに示されるシーケンス番号に設定されるlinkedEvent DEを含んでもよい。したがって、DENMは、前のDENMへのリンクを含む。そして、受信側ITS-Sは、第1の警告メッセージを受信したときに、そのITS-Sが行った分析結果を追跡することによって、第2の警告メッセージをより迅速に処理することができる。
【0100】
ユースケースにおいて、受信側ITS-Sは、衝突リスクが高まったときに、クリティカルエリアの更新されたローカルマップを(第1のDENMを介して)取得することができる。更新されたローカルマップは、例えば、VRU(道路を横断する歩行者、自身の死角の自転車)を特定しうる。そして、受信側ITS-Sは、衝突する側の車両として、それを識別する衝突前警告DENM(第2のDENM)を取得する。緊急措置は、例えば、(自転車が死角にあることによる)車線の変更を回避するために、特定されたVRUを考慮してトリガされうる。この例では、DENM間のリンクが、同じcauseCode(ここでは97)を有するDENMに対してなされる。
【0101】
また、以前のDENMへのリンクは、(予測される)衝突に関与しないITS-S(例えば、VRU)が、それらが予想される衝突の近傍にあることを迅速かつ単純な方法で判定するのに役立つ。また、適切な措置を講じることができる。
【0102】
以下は、いくつかの実施形態による管理コンテナ330の詳細な説明を提供する表である:
【0103】
TimestampItsは、すべてのタイムスタンプが計算される基準時間である。
【0104】
状況コンテナ340は、警告イベントを記述する情報を含む。特に、それは、検出されているイベントタイプの記述を提供するeventType DF345と、検出されたイベントがイベント位置に真に存在する確率を提供するinformationQuality DE346とを含む。
【0105】
eventType345は、2つのDE、すなわちcauseCodeとsubCauseCodeとから構成される。EN 302 637-3、v1.3.1において定義されているように、causeCode DEにはさまざまなコードが存在する。たとえば、causeCodeに対する値2は「事故」イベントを警告し、値97は「衝突リスク」を警告する。
【0106】
subCauseCodeは、イベントの原因に関する追加の詳細を提供する。例えば、causeCode=97の場合、subCauseCodeは、縦方向衝突リスクについて1に、横断衝突リスクについて2に、横方向衝突リスクについて3に、交通弱者を含む衝突リスクについて4に、設定され、差し迫った衝突(例えば、1.5秒未満のTTC)、すなわち衝突前の状況について5(または任意の他の値)に設定されうる。
【0107】
本発明のDENMは、単一のメッセージ内で衝突する各オブジェクトに関する情報を提供するため、(causeCodeが97の場合にsubCauseCodeにおいて特定される)衝突前の状況を警告するのに特に有利である。
【0108】
informationQuality346は、使用されるセンサがより高い品質である場合にはより高い品質レベルに設定されてもよく、および/または、イベントのためのオブジェクトがより多くの数のセンサによって検出される(すなわち、より高い品質でデータが融合される)場合にはより高い品質レベルに設定されてもよい。例えば、ライダーセンサタイプが、カメラセンサタイプよりも正確な位置および速度データを提供している場合である。
【0109】
以下は、いくつかの実施形態による状況コンテナ340の詳細な説明を提供する表である:
【0110】
位置コンテナ350は、イベント位置に関する追加情報を含む。特に、EN 302 637-3に定義されているように、trace DFを含み、eventSpeed DF、eventPositionHeading DF、およびroadType DEを含みうる。いくつかの実施形態では、eventSpeed DFおよびeventPositionHeading DFは設定されない(オプションである)。
【0111】
trace DFは、例えば、衝突点170までの予測軌道(例えば、図1のシナリオでは171、172)に、すなわち、イベント位置に向かって接近する旅程を形成する、十分に順序付けられた中間地点の1つまたは複数のリストに、設定される。好ましくは、衝突するオブジェクトの予測軌道のみが、場合によっては1つの同じオブジェクトに対する複数の軌道が、trace DFに提供される。変形例では、予測軌道が、(もしあれば)DENMに記述された各オブジェクトに対して(以下に記述されるようにアラカルトコンテナ360の知覚オブジェクトコンテナ362~365を介して)提供されうる。好ましくは、各トレース(予測軌跡)が、知覚オブジェクトコンテナ362~365においてオブジェクトを識別するobjectIDに関連付けられる。
【0112】
以下は、いくつかの実施形態による位置コンテナ350の詳細な説明を提供する表である:
【0113】
アラカルトコンテナ360は、他のコンテナによって提供されない追加情報を含む。本発明の実施形態では、アラカルトコンテナ360が発信側ITS-Sの記述を含み、さらに、衝突に関与する2つ以上のオブジェクトをそれぞれ記述する2つ以上のコンテナを含む。コンテナ360は、PreCrashイベントの(causeCodeが97に設定され、subCauseCodeがpreCrashInformation、例えば5に設定される)場合に、PreCrashコンテなどのようにリネームされてもよいし、衝突リスクイベントの(causeCodeが97に設定され、subCauseCodeがpreCrashInformationとは異なる、例えば0~4に設定される)場合に、CollisionInformationコンテナなどとしてリネームされてもよいし、事故イベントの(causeCodeが2に設定される)場合に、AccidentInformationコンテナなどとしてリネームされてもよい。
【0114】
イベントによらず、コンテナ360は、いくつかのコンテナを含む:
-発信側ITS-S(図1のシナリオではRSU110)についての情報、特にその座標系に関する情報を含むステーションデータコンテナ361。「ステーションデータコンテナ」以外の名称が代替的に使用されてもよい;
-発信側ITS-Sに関する情報を伴う複数のオブジェクトの記述を含む知覚オブジェクトコンテナ362、363、365;及び
-衝突についての追加情報を含むオプションの衝突データコンテナ366。「衝突データコンテナ」以外の別の名称が代替的に使用されてもよい。
【0115】
実施形態において、ステーションデータコンテナ361は、発信側ITS-Sを記述し、以下のデータを含む:
-ReferencePosition DF:発信側ITS-Sの地理的位置、
-発信側ITS-Sが車両タイプである場合に、OriginatingVehicleContainer。このデータ要素は、発信側ITS-Sの車両(V-ITS-S)の速度、向きおよびvehicleOrientationAngle(絶対方位)を含む。したがって、ステーションデータコンテナ361は、知覚オブジェクトコンテナ362、363、365において提供される情報が定義される基準フレームを定義する。発信側ITS-Sが固定されている場合(例えば、R-ITS-S)、OriginatingVehicleContainerは提供されず、所定の基準フレームが使用される(例えば、WGS84)。R-ITS-Sの場合の基準フレームの向きが、あらかじめ定義されているか(例えば、WGS84 North)、または、ステーションデータコンテナ361内の専用のreferenceOrientationAngle DF、またはアラカルトコンテナ360内の任意の他の場所に設定される。DFの重複を避けるために、referenceOrientationAngle DFとvehicleOrientationAngle DFが、それらを同時に使用することができないため、1つの同じDFとすることができる。
【0116】
上記の実施形態は管理コンテナ330のevenPosition DFにおいて衝突点を特定することを提案するが、他の実施形態はevenPosition DFを使用して、発信側ITS-Sの地理的位置を示すことを企図しうる。これは、発信側ITS-SがRSUである場合にはヌルコンテナに(またはreferenceOrientationAngle DFのみを有するように)、発信側ITS-Sが車両タイプである場合には単なるOriginatingVehicleContainerに、ステーションデータコンテナ361を軽くする。後述するように、この代替の実施形態では、予測衝突点の地理的位置がcollisionPoint DFを使用して衝突データコンテナ366内に設定されうる。
【0117】
発信側ITS-Sは衝突状況の(その衝突状況の中に含まれうるが)「観察者」であり、コンテナ361は、また、観察者コンテナまたは観察者データコンテナと名称変更されうる。
【0118】
以下は、いくつかの実施形態によるステーションデータコンテナ361の詳細な説明を提供する表である:
【0119】
いくつかの実施形態では、DENMが衝突点のインジケーションを含み、衝突点の周囲のエリア内で知覚される各オブジェクトのためのコンテナを含む。衝突点は、例えば、管理コンテナ330内のevenPosition DFにおいて特定される。周囲のエリアは、(ITS-Sによって事前に定義されて知られているか、または、DENMパラメータ320において、例えば、以下で特定されるcollisionImpactDistance DFにおいて、指定されているかのいずれかである)半径によって定義される円盤でありうる。その場合、複数のコンテナ362、363、365は、発信側ITS-Sによって知覚されるエリア内の複数のオブジェクトに対応する。そのような(「衝突オブジェクトコンテナ」または「衝突オブジェクトコンテナ」と名称変更され得る)複数のコンテナを提供することは、受信側ITS-Sが、推定される衝突オブジェクトだけでなく、それらの近傍の追加のオブジェクトも含んだ、クリティカルエリア内の各オブジェクトに関する情報を取得するため、DENMが衝突リスクを警告するだけであるときに有用でありうる。
【0120】
代替の実施形態では、例えば、DENMがPreCrashイベントまたはAccidentイベントを警告することが意図されているがそれに限られず、DENMは、衝突に関与するオブジェクトのみのためのコンテナを含む。この構成は、それらが差し迫った衝突に関与しているかどうかを受信側ITS-Sが迅速に判定するのに役立つ。例えば、(車両、VRU、木などを含むいくつかの当事者を伴う)大規模な事故が予測される場合、2つより多くのオブジェクト、したがって2つより多くのコンテナ362、363、365が存在しうる。コンテナは、「衝突前オブジェクトコンテナ」または「事故オブジェクトコンテナ」に名称変更されうる。
【0121】
(名前の変更にかかわらず)知覚オブジェクトコンテナ362、363、365の数は、クリティカルエリア内のオブジェクトの数、または同じ衝突または衝突前に関係するオブジェクトの数に依存する。例として、DENM300に記述可能なオブジェクトの最大個数Nは、DENM300が大ききなりすぎることを回避するためにN=8に設定される。衝突前の状況に対する典型的なユースケースは、通常2つのオブジェクトを有し、一部の例外において3つのオブジェクトを有する。クリティカルエリアにおける記述されるべきオブジェクトの数が、この最大個数Nよりも多い場合、衝突点に最も近いN個のオブジェクトが、好ましくは知覚オブジェクトコンテナを通して定義され得る。
【0122】
提供される知覚オブジェクトコンテナの個数は、DENM300においてシグナリングされる。
【0123】
有利には、知覚オブジェクトコンテナは、CPMにおける同じコンテナと同じフォーマットに従う。これは、状況分析モジュール240によって同じフォーマットルーチンが使用可能であること、及び、そのような情報が、環境モデル220から容易に取り出すことができることを意味する。
【0124】
したがって、知覚オブジェクトコンテナ362、363、365は、上で定義されたCPMにおける対応するコンテナと同じまたは同様であることができ、以下を含む:
-objectID:検出されたオブジェクトの追跡を可能にするこのオブジェクトの識別子、
-timeOfMeasurement:(最後の)測定が行われた時間、
-発信側ITS-Sに対する距離(xDistance、yDistance、およびオプションでzDistance、これらは、発信側ITS-Sに固定された局所座標/基準フレームで表現された記述されたオブジェクトの座標である)、
-発信側ITS-Sに対する速度(xSpeed、ySpeed、およびオプションでzSpeed)、及び、
-SensorID、(信頼レベルを伴う)stationID、objectRefPoint、yawAngle、Acceleration、dynamicStatus、planarObjectDimension、impactSection(オブジェクトのどの部分が衝突の対象となるか)、Classification、のすべてまたは一部を含みうるオプションの情報項目。例えば、オブジェクトのClassification(すなわち、オブジェクトタイプ)を提供することは、DENM300を受信するITS-Sが状況を分析するのに役立つ。例えば、VRUが衝突前または衝突DENM警告に含められてもよく、したがって、受信側ITS-Sが、衝突エリア内またはその近くに存在するVRUを考慮に入れて、その駆動方向を変更することによって衝突から逃れることを可能にする。
【0125】
相対距離、速度および加速度を提供する代わりに、絶対距離、速度および加速度が提供されてもよい。
【0126】
1つの知覚オブジェクトコンテナにおいてstationIDを提供することは、様々な利点を有する。
【0127】
第1に、発信側ITS-Sが検出された衝突に関与するか、またはクリティカルエリアに存在する場合、知覚オブジェクトコンテナのうちの1つにおけるstationIDを発信側ITS-Sのステーション識別子に設定することができ、それ以外の方法で(すなわち、ステーションデータコンテナ361から)それらが知られている場合に、知覚オブジェクトコンテナ内の他のフィールドを削減しまたは省略することを可能にする。受信側ITS-Sは、そのような知覚オブジェクトコンテナと発信側ITS-Sとの間のリンクを作成することができるが、それは後者のstationID識別子が管理コンテナ330のactionID DFに含まれるからである。
【0128】
第2に、(ステーションIDを特定する)CAM132が知覚オブジェクトコンテナによって記述されたオブジェクトのうちの1つによって送信された場合、対応する知覚オブジェクトコンテナ内のCAMにおいて特定されたステーションIDを再利用する価値がありうる。CAMの情報と同様の情報(例えば、相対距離及び速度)は、省略することができる。そのようなシナリオは、例えば、図8を参照して以下に説明される。そのステーションIDに対応するオブジェクトは、それが予測される衝突に関与していることをDENMから即座に検出する。
【0129】
好ましくは、オブジェクトの識別において、発信側ITS-Sがどれだけ自信を持っているかを反映するために、stationIDに関連して信頼性レベルが提供される。信頼性レベルは、例えば、使用されるセンサ(数およびタイプ)と、stationID情報が受信されたCAMを介して取得されたか否かに応じて、センサデータ融合モジュール230によって決定される。
【0130】
オプションで、アラカルトコンテナ360は、発信側ITS-SがDENM300に以前のDENMと同じイベント(ここでは衝突)に関係することをシグナリングすることを望む場合、(シーケンス番号は新しいDENMイベントのためにインクリメントされるため)別のDENMのactionID DFのシーケンス番号に設定されるlinkedEvent DEを含んでもよい。この実施形態は、すでに上述されている。アラカルトコンテナ360におけるlinkedEvent DEは、管理コンテナ330におけるlinkedEvent DEの代替である。
【0131】
上記の実施形態は位置コンテナ350のtrace DFに(衝突オブジェクトを含む)オブジェクトの予測経路を含めることを提案するが、他の実施形態は、後方互換性のために、trace DFの本来の使用を維持することを企図しうる:trace DFは、発信側ITS-Sの軌道の(予測ではなく)履歴を格納する。これらの代替の実施形態では、予測経路が、新しいDFであるcollisionPathsを使用して、(関係するオブジェクトが与えられた)それらのそれぞれの知覚オブジェクトコンテナ362、363、365において指定され得る。位置コンテナ350におけるtraces DFについて上で提供されたインジケーション(たとえば、複数の軌跡、衝突オブジェクトのみの軌跡)が依然として適用され得る。
【0132】
以下は、いくつかの実施形態による、知覚オブジェクトコンテナ362、363、365のリストの詳細な説明を提供する表である:
【0133】
ここで、オプションの衝突データコンテナ366を参照すると、それは、道路交差点および現在の衝突関連の状況、たとえば衝突までの予測時間TTCを分析するときに、発信側ITS-Sが得ることができる追加情報を伝達するために使用される。
【0134】
追加の分析の例として、重要エリアを監視する発信側ITS-Sは、衝突車両のうちの1つが速度超過であったこと、または停止標識もしくは交通信号に違反したことを検出しうる。変形例では、動物が道路上に存在し、衝突車両に衝突に至る緊急操縦を開始させたことを検出することができる。
【0135】
したがって、状況分析モジュール240は、この点で(たとえば、collisionCause DFを使用して)いくつかの衝突原因の情報を示しうる。
【0136】
上記の実施形態は位置コンテナ350のtrace DFにおいて(衝突オブジェクトを含む)オブジェクトの予測経路を含めることを提案するが、他の実施形態は、後方互換性のためにtrace DFの本来の使用を維持することを企図しうる:trace DFは、発信側ITS-Sの軌道の(予測ではなく)履歴を格納する。これらの代替的な実施形態では、新しいDF collisionPathsを使用して衝突データコンテナ366内で予測経路が指定されうる。位置コンテナ350内のtrace DFについて、上で提供されたインジケーション(たとえば、複数の軌跡、各トレースをオブジェクトに関連付けるためのobjectID、衝突オブジェクトのみのための軌跡)は依然として適用されうる。
【0137】
オプションで、別のデータフレームcollisionImpactDistanceが、衝突予測の不正確さと軌道の起こりうる変化とを統合するために、collisionPointの周りの衝突のエリアを示すために追加される。このような領域は、直接的に(例えば、そのまま)、または間接的に(例えば、エリアの半径を2倍または3倍にすることによって)、DENM300にどのオブジェクトが記述されているかを定めるクリティカルエリアを定義するために使用されてもよい。collisionImpactDistanceは、例えば、衝突点の周りに適用する半径(例えば、20m)を定義する。
【0138】
オプションで、衝突データコンテナ366は、DENM300が前のDENMと同じ衝突イベントに関することを発信側ITS-Sがシグナリングすることを望む場合に、(actionIDにおけるシーケンス番号が新しいDENMイベントのそれぞれにおいてインクリメントされるため)別のDENMのactionIDにおいて示されるシーケンス番号に設定されるlinkedEvent DEを含みうる。この実施形態はすでに上述されている。管理コンテナ330におけるlinkedEvent DE、またはアラカルトコンテナ360における直接のlinkedEvent DEは、衝突データコンテナ366におけるlinkedEvent DEの代替である。
【0139】
以下は、いくつかの実施形態による衝突データコンテナ366の詳細な説明を提供する表である:
【0140】
図3に戻り、証明書390は、発信側ITS-S(図1のシナリオではRSU110)の真正性と、それが有するITSメッセージおよびいくつかの情報を提供するその許可とを証明するために、DENM300に添付される。許可は、証明書内のいわゆるサービス固有許可(Service Specific Permission、SSP)アイテムにおいて定義される。
【0141】
説明されるITSでは、ITS100内のV2X通信を保護するために、発信側ITS-Sを信頼するために必要とされるセキュリティおよび検証を提供する、ETSI TS 102 731仕様書のバージョン1.1.1に定義されるような公開鍵インフラストラクチャ(PKI)が使用されうる。PKIベースのセキュリティは、認証機関によってITSステーションに配信される証明書の使用を通じて実装されうる。
【0142】
したがって、交換される各ITSメッセージは、発信側ITS-Sの匿名性を維持しながら、発信側ITS-Sの真正性およびメッセージの完全性を検証するデジタル署名および匿名証明書(認可チケットとも呼ばれる)を伴う、非暗号化メッセージ(DENMパラメータ320)で作られる。ITS内での通信のために、ITS-Sは、1つまたは複数の許可チケットを有してもよく、通信のために許可チケットを使用しうる。
【0143】
実際、道路管理は安全の観点から重要であるため、認証機関によって認証された事業体のみがそのような管理に貢献すべきであり、または、少なくとも高い信頼性が与えられるべきである。例えば、DENM300のPreCrashコンテナ360において提供される、衝突前警告及び監視されたクリティカルゾーンに存在する関連する(衝突)オブジェクトの識別に関する情報は、セキュリティ上の理由から、安全と考えられるITS-Sから到来することが好ましい。
【0144】
したがって、許可チケットは、特定のITSメッセージを、特に、DF345においてpreCrashInformationに設定されたsubCauseCodeを伴ってcollisionRisk(又はAccident)に設定されたcauseCodeを有するDENM300を、送信するための発信側ITS-Sの特権および許可に関連するインジケーションを含んでもよい。
【0145】
これを行うために、例えば、許可チケットは、ETSI TR 102 965で特定されるアクセスおよび使用を発信側ITS-Sステーションが許可されるサービスのリストを含んだ、ITS AIDと呼ばれるフィールドを含みうる。特に、特定のものは、発信側ITS-SがDENMを送信する資格があることを示すDENサービスに専用である。許可チケットには、ITS AID Service Specific Permissions(SSP)と呼ばれるフィールドも含まれ、このフィールドがITS AIDフィールドによって示される全体の許可のうちの許可の特定のセットを示す。SSPのフォーマットは、ETSI TS 103 097で規定されている。
【0146】
いくつかの実施形態において、SSPは、上述のようにpreCrashInformation(例えば、値5)に設定されたsubCauseCodeを伴うcollisionRisk(値97)に設定されたcauseCodeを含んだDENM300の証明書において提供される。図4は、例示的なSSP400を概略的に示す。
【0147】
SSP400は、5つのオクテット410、420、430、440および450からなる。最初のオクテット410は、SSPバージョンを特定し、続くオクテット420、430、440は、特定の許可を特定し、最後のオクテット450は、将来の使用のために予約されている(EN 302 637-3において定義されるDENMリリース1と比較されたい)。
【0148】
オクテット420、430、440における各ビットは許可を定義する。
【0149】
例えば、第4のオクテット440におけるビットB5(すなわち、位置5のビット)は、causeCodeがcollisionRiskに設定されている(B5=1の場合)か、それ以外(B5=0)かにより、DENM警告を発する許可を定義しうる。
【0150】
同様に、第5のオクテット450におけるビットB0(すなわち、位置0のビット)は、preCrashInformationに設定され、PreCrashコンテナ360を含む(B0=1の場合)、または含まない(B0=0)subCauseCodeを有するDENM警告を発する許可を定義しうる。
【0151】
当然ながら、SSPにおいて利用可能な他のビットを使用して、これらの許可を定義することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、それらがハッキングされる可能性がより低いため、RSU(またはR-ITS-S)専用の認証チケットにおいて、SSP400が提供される。しかしながら、より一般的には、SSP400が任意のタイプのITS-Sのための許可チケット内で提供される。
【0153】
図5aおよび図5bは、フローチャートを用いて、それぞれ、衝突警告DENMを送信する発信側ITS-Sにおける、および、対応する受信ITS-Sにおける、本発明による方法の一般的なステップを示している。
【0154】
図6は、フローチャートを用いて、本発明の実施形態による発信側ITS-Sにおける方法のより詳細なステップを示している。
【0155】
図5aに示されるように、ITSにおける通信方法は、最初に、発信側ITS-S、例えば図1のRSU110において、ステップ500において、図1に示されるような道路部分または道路交差点などのエリアを監視することを含む。そのために、発信側ITS-Sは、知覚オブジェクトでその環境モデル220を更新するために、そのセンサ120~123、210、および、そのセンサデータ融合モジュール230を用いる。
【0156】
状況分析モジュール240は、環境モデル220のオブジェクトを連続的に分析する。ステップ510において、衝突関連イベントが2つ以上のオブジェクト間で発生しているか、または発生しようとしているかを検出する。これは、知覚オブジェクトのための軌道を予測することと、いくつかのオブジェクト間に衝突のリスクが存在するかどうか、または衝突までの予測時間が1.5秒未満である場合に衝突前の状況が存在するかどうかさえも、推測することと、を含みうる。
【0157】
衝突関連イベントが検出された場合、発信側ITS-Sは、ステップ520において、イベントを警告するDENMを送信し、そのDENMは、発信側ITS-Sの記述と、それに加えて、2つ以上のオブジェクトをそれぞれ記述する少なくとも2つのコンテナを含む。
【0158】
DENMは、事故(causeCode=Accident)を警告してもよく、唯一の衝突されたオブジェクトは、知覚オブジェクトコンテナを用いて記述される。
【0159】
DENMは、衝突リスク(causeCode=collisionRisk)を警告してもよく、予測された衝突点の周りの全ての又は最大個数のオブジェクトが、知覚オブジェクトコンテナを用いて記述される。これらのオブジェクトは、衝突すると予測されるオブジェクトを含む。
【0160】
DENMは、衝突前の状況(causeCode=collisionRiskおよびsubCauseCode=preCrashInformation)を警告してもよく、唯一の衝突する側のオブジェクトが、認識オブジェクトコンテナを使用して記述される。
【0161】
図5bに示されるように、そのような衝突関連DENMは、ステップ550において、ITS100の受信側ITS-S、通常は車両、によって、受信される。受信されたDENMは、シグナリングされたクリティカルエリアにおけるそのローカル動的マップを更新するために使用されうる。
【0162】
受信側ITS-Sは、また、ステップ560において、直接的に(衝突オブジェクト)または間接的に(衝突オブジェクトの近傍)のいずれかで、衝突に関係するかを判定するために、DENMを用いる。特に、受信側ITS-Sは、それが衝突するオブジェクトであるか衝突するオブジェクトに近いかを知るために、それが受信DENMにおいて記述されたオブジェクトの1つに対応するかを判定しうる。
【0163】
これは、それが衝突オブジェクトであるかどうかを判定するために、(知覚オブジェクトコンテナで定義される)オブジェクトの記述が(例えば、位置、速度、寸法、stationIDなどの観点で)それ自身の記述と一致するかをチェックすることによって、行われうる。
【0164】
変形例では、衝突オブジェクトとの衝突の自身のリスクを判定するために、(知覚オブジェクトコンテナにおいて定義された)衝突オブジェクトのうちの1つが(位置、速度、および寸法に関して)それ自身に非常に接近しているかをチェックすることにより、これが行われうる。
【0165】
肯定的な判定の場合、受信側ITS-Sは、ステップ570において、衝突のために車両を準備する(例えば、窓を閉じる、セットベルトに張力をかける、警告灯をスイッチオンする)こと、または、それ自身が衝突しないようにする(例えば、車線を変更する、緊急ブレーキをかける)こと、または、その近傍の衝突オブジェクトがそれに干渉するリスクを低減する(例えば、ブレーキをかける、車線を変更する、警告灯をスイッチオンする)ことを目的として、衝突に関する措置をトリガすることができる。
【0166】
図6は、発信側ITS-Sにおける方法の実施形態を示している。発信側ITS-Sは、センサを介してエリアの監視を実行し、および/または、CAMおよびCPMを受信し、それに基づいて、その環境モデル220を構築し、更新することを前提とする。
【0167】
状況分析モジュール240は、ステップ600において、環境モデル220からオブジェクトのリストを取得する。関連するオブジェクトは、最新のN分(例えば、5分または15分)の間、監視されるエリアに位置するオブジェクトでありうる。
【0168】
ステップ605において、状況分析モジュール240は、それらのオブジェクトの軌道の予測を実行する。任意の既知の軌道予測方法を使用することができる。モジュール240は、移動オブジェクトのための1つまたは複数の予測軌道を取得することとなる。予測軌道は、各々が位置時間に関連付けられた予測位置のセットからなる。
【0169】
以下のプロセスを容易にするために、固定オブジェクトには、その固定位置に対応する「予測軌道」が時間にかかわらず割り当てられうる。
【0170】
オブジェクトの予測された軌道に基づいて、状況分析モジュール240は、ステップ610において、衝突リスク分析を実行する。
【0171】
衝突は、2つのオブジェクト間で、それらの予測された軌道が、同時かつ位置が共通する予測位置を有するときに検出されうる。「位置が共通する」とは、2つの軌道からの2つの位置が同一であるまたは十分に近い(距離マージン、例えば、1mが与えられる)ことを意味し、「同時」は、2つの関連する位置時間が同一または十分に近い(時間マージン、例えば、0.5sが与えられる)ことを意味する。衝突は、2つより多くのオブジェクトの間で検出されてもよく、これらの複数のオブジェクトは、同時かつ位置が共通する予測位置を有する。
【0172】
衝突のリスクは、ステップ615において、予測された軌道に基づいて検出される。予測される衝突のいかなる状況も、そのようなリスクの引き金となり得る。変形例では、近い将来(例えば、第1の時間閾値の前、例えば、5秒前)に予測される衝突のみが、衝突リスクとしてラベル付けされる。したがって、衝突までの時間TTCが、その第1の閾値THR1と比較される。
【0173】
リスクが検出されない場合、処理はステップ600にループバックし、知覚オブジェクトの分析を続ける。
【0174】
リスクが検出された場合、ステップ620において、それが衝突前の状況であるか否かが評価される。衝突前の状況は、差し迫った衝突、すなわち、典型的には次の1.5秒以内の、第2の時間閾値の前に起こると予測される衝突を定める。したがって、衝突までの時間TTCは、その第2の閾値THR2と比較される。
【0175】
否定(衝突リスクのみが検出された)では、ステップ625において、予測された衝突に直接的または間接的に関係するオブジェクトが、監視されるオブジェクトのリストから選択される。
【0176】
いくつかの実施形態では、予測された衝突に関与するオブジェクト(すなわち、衝突するオブジェクト)のみが選択される。
【0177】
他の実施形態では、衝突マージンを前提として、予測された衝突点を囲むすべてのオブジェクトが選択される。変形例では、知覚オブジェクトコンテナを使用して、DENMに最大N個のオブジェクトを記述することができる場合、これらのオブジェクトのうちのN個のみが選択される。その場合、衝突するオブジェクトを含む、衝突点に最も近いN個のオブジェクトが選択される。
【0178】
次に、状況分析モジュール240は、ステップ630において、衝突リスクDENM300のDENMパラメータ320を生成する。
【0179】
いくつかの実施形態では、collisionRisk(値97)に設定された、状況コンテナ340におけるcauseCodeを含んだ、(EN 302 637-3の意味で)従来の衝突リスクDENMを構築することができる。
【0180】
他の実施形態では、DENMパラメータ320が、ステップ625で選択されたオブジェクトのための知覚オブジェクトコンテナを含むように構築されうる。
【0181】
図3の上記の説明は、どの情報が様々なコンテナ内で提供されるかに関する詳細を提供し、特に、管理コンテナ330におけるactionID DF内のシーケンス番号が新しい値(例えば、X)に設定され、状況コンテナ340におけるcauseCodeが、subCauseCodeがpreCrashInformationとは異なる一方で、collisionRisk(値97)に設定される。以下で説明される図7は、本発明の実施形態によるDENMパラメータ320の様々なコンテナ330、340、350、360をどのように構築するかに関するさらなる詳細を提供する。
【0182】
上述のように、アラカルトコンテナ360は、それぞれがステップ625で選択されたオブジェクトのうちの1つを記述する、2つ以上の知覚オブジェクトコンテナ362、363、365を含む。
【0183】
一方で、ステップ620において衝突前の状況が検出された場合、ステップ635において、予測された衝突に関与するオブジェクト(すなわち、衝突するオブジェクト)が、監視されるオブジェクトのリストから選択される。
【0184】
オプションのステップ640は、検出された衝突前の状況(または差し迫った衝突)がDENMを介して以前に通知された衝突リスクと同じ衝突に関するかを判定する。例えば、状況分析モジュール240は、ステップ635において選択された衝突オブジェクトが以前に送信された衝突リスクDENMに対して(ステップ625で)選択されたかを判定しうる。実施形態では、最後の衝突リスクDENMのみが考慮される。他の実施形態では、最新のM個の衝突関連DENM、または時間ウィンドウ内のすべての送信された衝突関連DENMが考慮される。
【0185】
ステップ640の否定において、新たな衝突が検出され、オプションのステップ645において、(上述のlinkedEvent DEを埋めるために使用される)linkedEventパラメータがヌルに設定される。I
ステップ640の肯定において、衝突前の状況は、以前に検出された衝突に関するものであり、例えば、actionID=Xを用いてシグナリングされた衝突である。その場合、オプションのステップ650において、(上述のlinkedEvent DEを埋めるために使用される)linkedEventパラメータがXに設定される。
【0186】
ステップ645または650の後、状況分析モジュール240は、次に、ステップ655において、衝突リスクDENM300のDENMパラメータ320を生成する。DENMパラメータ320は、ステップ635で選択された衝突オブジェクトのための知覚オブジェクトコンテナを含むように構築することができる。
【0187】
図3の上記の説明は、どの情報が様々なコンテナ内で提供されるかに関する詳細を提供し、特に、状況コンテナ340内のcauseCode340がcollisionRisk(値97)に設定され、subCauseCodeがpreCrashInformationに設定される。以下に記載される図7は、本発明の実施形態によるDENMパラメータ320の様々なコンテナ330、340、350、360をどのように構築するかに関するさらなる詳細を提供する。
【0188】
上述のように、アラカルトコンテナ360は、それぞれがステップ625で選択されたオブジェクトのうちの1つを記述する、2つ以上の知覚オブジェクトコンテナ362、363、365を含む。
【0189】
以前の衝突関連DENMへのリンクを提供するためにlinkedEventパラメータが実装される場合、DENMパラメータ320内のlinkedEvent DEが、ステップ645または650で決定されるように、linkedEventパラメータに設定される。
【0190】
(ステップ630または655の後に)衝突リスクまたは衝突前警告DENM300が準備されると、ステップ660において、図4を参照して上述したITS証明書390がDENM300に添付される。当然ながら、発信側ITS-Sは、DENM300において設定された情報を提供することが許可されていることを(ステップ660またはプロセスの開始時に)チェックする。例えば、これは、subCauseCodeがpreCrashInformationに設定されている衝突リスクDENM(すなわち、衝突前警告DENM)が送信されることが意図されている場合、オクテット440内のビットB5およびオクテット450内のビットB0の両方が有効であることをチェックすることによって行われうる。
【0191】
次に、DENM300は、ステップ690において、発信側ITS-S、すなわち、図1のシナリオにおけるRSU110のR-ITS-Sモジュール112によって送信される。
【0192】
この例示的なプロセスでは、前のDENMへのリンクが、衝突前警告DENM(次のDENM)と衝突リスクDENM(前のDENM)との間で行われる。以前のDENMへのリンクの使用は、このDENMの組合せに限定されないことに留意されたい。例えば、衝突リスクDENM間で、または衝突前警告DENM間で、または事故警告DENMと衝突リスクまたは衝突前警告DENM間で、それが行われうる。より一般的には、リンクが、任意のDENMと、複数の知覚オブジェクトを記述するアラカルトコンテナ360内の複数の知覚オブジェクトコンテナを有する以前のDENMとの間で定義され得る。
【0193】
図7は、フローチャートを用いて、本発明の実施形態によるDENMパラメータ320の様々なコンテナ330、340、350、360を生成するための詳細なステップを示す。これらのコンテナにおける従来のフィールドは、従来の方法で構築されるため、より詳細には説明しない。
【0194】
コンテナ構築は、ステップ700で開始する。
【0195】
ステップ510または615+620を通じて決定される警告の性質は、informationQuality DEとともに状況コンテナ340で特定される。causeCodeが、検出されたイベントに応じてcollisionRisk又はAccidentに設定される。collisionRiskの場合、TTC<1.5sであるならば、subCauseCodeがpreCrashInformationに設定されうる。これはステップ705である。
【0196】
次に、ステップ710において、発信側ITS-Sが、RSU(R-ITS-S)であるか、または車両(V-ITS-S)であるかが判定される。これは、いくつかの実施形態において、異なる座標系が使用され、ステーションデータコンテナ361において定義可能であるからである。
【0197】
R-ITS-Sの場合、CPM TR 103 562で定義されるR-ITS-S座標系が使用される(ステップ715)。したがって、StationData::referencePositionおよびオプションのStationData::referenceOrientationAngleが、それぞれ、R-ITS-Sの位置および基準方向(例えば、WGS84 North)に設定される。これはステップ720である。
【0198】
V-ITS-Sの場合、CPM TR 103 562で定義されるV-ITS-S座標系が使用される(ステップ725)。したがって、StationData::referencePositionとOriginatingVehicleコンテナが設定され、referencePositionがV-ITS-Sの位置に設定され、OriginatingVehicle::heading、OriginatingVehicle::speed、OriginatingVehicle::vehicleOrientationAngle(またはStationData::referenceOrientationAngle)が、それぞれV-ITS-Sの向いている方向、速度、車両姿勢に設定される。これはステップ730である。
【0199】
ステップ720および730の次の、ステップ735は、発信側ITS-Sがステップ625または635で選択されたすべてのオブジェクトについての知覚オブジェクトコンテナを取得することからなる。基本的に、コンテナの情報は、環境モデル220から検索される。これらの知覚オブジェクトコンテナは、アラカルトコンテナ360で定義される。
【0200】
オブジェクトの数が最初に定義され(numberOfPerceivedObjects)、次に各知覚オブジェクトコンテナが追加される。ステーションデータコンテナ361で特定された基準位置からのオブジェクトの相対距離および速度に関する情報が含められる。利用可能な場合、ステーションITS IDおよび信頼性レベルに関する情報も、知覚オブジェクトコンテナに含められる。定義可能な全ての情報項目について上述した。
【0201】
次に、ステップ740で、状況分析モジュール240が衝突に関連するデータを有するかが判定される。これは、予測された衝突点、予測された衝突までの時間、オブジェクトの予測軌道、衝突距離、衝突原因を含みうる。
【0202】
肯定の場合、これらのデータが、ステップ745において、衝突データコンテナ366内の対応するDEおよびDFに含められる。いくつかの変形例では、衝突点が、管理コンテナ330のeventPosition DFにおいて特定され、予測軌道が、位置コンテナ350のtrace DFにおいて、または様々な知覚オブジェクトコンテナのPerceivedObject::collisionPaths DFにおいて特定される。次に、プロセスはステップ750に進む。
【0203】
否定の場合、プロセスはステップ750へ直接進む。
【0204】
ステップ750において、(オプションのステップ640~650を通して判定されるように)前のDENMへのリンクが必要とされる場合、(管理コンテナ330内の、または代替的にアラカルトコンテナ360内の、または衝突データコンテナ366内であってもよい)linkedEvent DEが、前のDENMのactionIDにおいて示されるシーケンス番号に設定される。
【0205】
図8は本発明の実装のための、発信側ITS-Sが2台の前方車両の衝突前の状況を観測する車両であり、2台の前方車両のうちの一方がC-ITS通信を有し、他方がC-ITS通信を有しない、別のシナリオを示している。
【0206】
図では、3台の車両が同じ車線を走行している。車両810は、自身を記述する(自身のstationIDを含む)CAM850を発するITS-Sである。車両820は、車両810に追従し、C-ITS通信を有していない。第3の車両830は、CAM840を発し、前方の車両810および820を観察する別のITS-Sである。
【0207】
車両830は、発信側ITS-Sとして本発明を実装する。車両830は、例えば図2に示されるものと同様に、センサ、センサデータ融合モジュール230、環境モデル220、および状況分析モジュール240を有する。
【0208】
車両810は、後続の車両820との衝突リスクまたは衝突前の状況を検出することができないような形で、後部センサを備えていない可能性がある(またはセンサが誤動作している可能性がある)。
【0209】
車両830は、車載の前方センサを用いて、車両820を表すオブジェクト860を検出する。また、車両830は、受信したCAM850を用いて、車両810を表すオブジェクト870を認識している。これらの情報項目は、環境モデル220を更新するために使用される。
【0210】
車両830の状況分析モジュール240は、これらの情報項目を連続的に分析し、一度に、オブジェクト860および870の衝突リスクまたは衝突前の状況を検出する。
【0211】
図5a、図6、および図7に示されるものと同様のプロセスにおいて、車両830のITS-Sモジュールは、C-ITSを装備した車両810に状況を警告するために、衝突リスクまたは衝突前DENM警告880を生成する。
【0212】
いくつかの実施形態では、オブジェクト870(C-ITSを装備した車両810)のための知覚オブジェクトコンテナ全体を提供する代わりに、CAM850において特定されるようなstationIDへの参照が十分でありうる。実際、車両810は、それ自体を迅速に認識し、一方、車両820は、そのような情報を受信および処理しない(DENM880を受信するように装備されていない)。いくつかの実施形態では、オブジェクト870のための知覚オブジェクトコンテナが、以下のフィールド:objectID、timeOfMeasurement、stationID、オプションで(高いレベルの信頼性に設定された)StationIdConfidenceLevel、オプションでClassification、およびオプションでcollisionPaths、を含む。言い換えれば、車両820がITS-Sではない(および車両810はそれらをすでに知っている)ため、相対距離および速度が省略されうる。
【0213】
したがって、車両830は、以下に示すように、知覚オブジェクトコンテナのための情報を準備する:
【0214】
受信されたDENM880に基づいて、車両810は、衝突リスクまたは衝突前の状況を迅速に特定し、次いで、上述のように適切な緊急措置をとることができる。
【0215】
図9は、本発明の実施形態を実装するように構成された通信ITS-Sデバイスの一例を示す概略図である。それは、車両に埋め込まれたITS-Sであってもよいし、路側ユニット120に埋め込まれたITS-Sであってもよい。
【0216】
通信装置900は、好ましくは、マイクロコンピュータ、ワークステーション、または車両もしくはRSUに埋め込まれた軽量ポータブルデバイスなどのデバイスでありうる。通信装置900は、好ましくは以下が接続される通信バス913を有する:
・CPUまたはGPU(グラフィカルプロセッシングユニット)と表されるマイクロプロセッサなどの、中央演算処理装置911;
・本発明を実行するためのコンピュータプログラムを記憶するための、ROMで示される読み出し専用メモリ907;
・本発明の実施形態による方法の実行可能コード、及び、本発明の実施形態による方法を実行するために必要な変数およびパラメータを記録するように適合されたレジスタを記憶するための、RAMと示されるランダムアクセスメモリ912;及び
・ITSメッセージが送信される無線V2X通信ネットワークに接続された少なくとも1つの通信インターフェース902。ITSメッセージは、RAM912内のFIFO送信メモリから、送信のためにネットワークインターフェースに書き込まれるか、またはCPU911内で実行されるソフトウェアアプリケーションの制御下で、RAM912内のFIFO受信メモリへの受信および書き込みのために、ネットワークインターフェースから読み出される。
【0217】
また、オプションで、通信装置900は、以下の構成要素を含み得る:
・1つまたは複数の実施形態による方法を実行するためのコンピュータプログラムを記憶するための、ハードディスクなどのデータストレージ手段904;
・ディスク906のためのディスクドライブ905であって、ディスク906からデータを読み取るか、またはそのディスクにデータを書き込むように適合されるディスクドライブ;
・キーボード910または任意の他のポインティング手段を用いてユーザとのグラフィカルインターフェースとして機能する画面909。
【0218】
通信装置900は、各々が通信装置900にデータを供給するように入出力カード(図示せず)に接続される、例えばデジタルカメラなどの知覚センサ908を含んだ様々な周辺機器に任意に接続されてもよい。
【0219】
好ましくは、通信バスが、通信装置900に含まれるか又はそれに接続される様々な要素間の通信および相互運用性を提供する。バスの表現は限定的ではなく、特に、中央演算装置が、通信装置900の任意の要素に直接的に、または通信装置900の別の要素を用いて、命令を通信するように動作可能である。
【0220】
ディスク906は、オプションで、例えば、コンパクトディスク(CD-ROM)、書き換え可能又は書き換え不可能なコンパクトディスク、ZIPディスク、USBキー又はメモリカードのような任意の情報媒体によって、総称すればマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサによって読み取ることができる情報記憶手段によって、置き換えることができ、装置に集積されてもされなくてもよく、場合によっては取り外し可能であり、実行によって本発明による方法を実施することができる1つ以上のプログラムを記憶するように適合されうる。
【0221】
実行可能コードは、オプションで、読み出し専用メモリ907、ハードディスク904、または前述のような例えばディスク906などのリムーバブルデジタル媒体のいずれかに記憶されうる。オプションの変形例によれば、プログラムの実行可能コードは、ハードディスク904などの通信装置900の記憶手段のいずれかに記憶されてから実行されるために、インターフェース902を介して通信ネットワークを用いて受信されうる。
【0222】
中央演算処理装置911は、好ましくは、本発明による命令または1つまたは複数のプログラムのソフトウェアコードの一部の実行を制御し、指示するように適合され、命令は、前述の記憶手段のうちの1つに記憶される。電源投入時に、不揮発性メモリ、例えばハードディスク904または読み出し専用メモリ907に記憶された1つまたは複数のプログラムがランダムアクセスメモリ912に転送され、このランダムアクセスメモリは、1つまたは複数のプログラムの実行可能コード、及び本発明を実行するために必要な変数およびパラメータを記憶するためのレジスタを含む。
【0223】
好ましい実施形態では、装置が、本発明を実行するためにソフトウェアを使用するプログラム可能な装置である。しかしながら、代替的に、本発明が、ハードウェアで(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)の形式で)実装されてもよい。
【0224】
以上、本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にある変更が、当業者には明らかであろう。
【0225】
多くの更なる変更及び変形は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される実施形態であって、例のみを用いて与えられると共に本発明の範囲を限定することを意図するものではない、上記の例示的な実施形態を参照することにより、当業者に示唆されるだろう。特に、様々な実施形態からの異なる特徴は、適切な場合、交換されてもよい。
【0226】
上述の本発明の各実施形態は、単独で実装されてもよいし、複数の実施形態を組み合わせとして実装されてもよい。また、様々な実施形態からの特徴は、必要に応じて、または単一の実施形態における個々の実施形態からの要素または特徴の組み合わせが有益である場合に、組み合わせられうる。
【0227】
請求項において、単語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。異なる特徴が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの特徴の組合せが有利に使用されえないことを示すものではない。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9