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特許7545451電力網アセットの状態分類を行うための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】電力網アセットの状態分類を行うための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240828BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20240828BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240828BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06N3/02
G06N20/00
H02J13/00 301A
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022143173
(22)【出願日】2022-09-08
(62)【分割の表示】P 2020540466の分割
【原出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2022184909
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2022-10-04
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】62/620,076
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18173698.4
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイム,ルイズ
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】稲葉 崇
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】特許第6185206(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/075794(WO,A1)
【文献】特開2015-104137(JP,A)
【文献】特開平6-82405(JP,A)
【文献】特開2005-309616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
G06N 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網アセットの状態を分類するための方法であって、
電子装置が、前記電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行することを含み、
前記自動分類プロシージャは、複数の電力網アセットに関連付けられた訓練データを用いて予め訓練された機械学習アルゴリズムを含み、入力としてパラメータ値のセットを用いて、前記状態分類を行い、
前記自動分類プロシージャは、前記電力網アセットを少なくとも2つの異なるクラスのうちの1つに割り当てるように動作可能であり、前記少なくとも2つの異なるクラスは、前記電力網アセットが正常に動作することを示す第1のクラスと、前記電力網アセットが注意を必要とすることを示す第2のクラスとを含み、
前記パラメータ値のセットのうちサブセットのみが前記電力網アセットの状態に関連付けられたセンサおよび/またはデータレポジトリから取得可能であり、前記セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値が前記電力網アセットから取得不可能であり、
前記電子装置が、前記少なくとも1つのパラメータ値の代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行することと、
前記自動分類プロシージャの入力として前記パラメータ値のサブセットと前記少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを用いて、前記電力網アセットの前記状態分類を取得することとを含む、方法。
【請求項2】
前記機械学習アルゴリズムを予め訓練することは、前記訓練データを用いて複数の機械学習アルゴリズムを訓練することを含み、
前記方法は、
前記訓練の後に性能評価を実行することと、
前記性能評価に基づいて、前記状態分類に使用される前記複数の機械学習アルゴリズムのうちの少なくとも1つを選択することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自動分類プロシージャは、複数の自動分類プロシージャから選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の自動分類プロシージャは、線形アルゴリズム、非線形アルゴリズム、およびアンサンブルアルゴリズムからなる群から選択されるプロシージャを含み、
前記線形アルゴリズムは、一般線形回帰(GLM)および線形判別分析(LDA)からなる群から選択される線形アルゴリズムであり、
前記非線形アルゴリズムは、分類および回帰木(CART)、ナイーブベイズアルゴリズム(NB)、ベイジアンネットワーク、K近傍法(KNN)、およびサポートベクトルマシン(SVM)からなる群から選択される非線形アルゴリズムであり、
前記アンサンブルアルゴリズムは、ランダムフォレスト、ツリーバギング、極度勾配ブースティングマシン、および人工ニューラルネットワークからなる群から選択されるアンサンブルアルゴリズムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
電子装置であって、
電力網アセットに関連付けられたデータを受信するインターフェイスと、
前記電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行するように構成された処理装置とを含み、前記自動分類プロシージャは、複数の電力網アセットに関連付けられた訓練データを用いて予め訓練された機械学習アルゴリズムを含み、入力としてパラメータ値のセットを使用するように動作可能であり、
前記自動分類プロシージャは、前記電力網アセットを少なくとも2つの異なるクラスのうちの1つに割り当てるように動作可能であり、前記少なくとも2つの異なるクラスは、前記電力網アセットが正常に動作することを示す第1のクラスと、前記電力網アセットが注意を必要とすることを示す第2のクラスとを含み、
前記パラメータ値のセットのうちサブセットのみが前記電力網アセットの状態に関連付けられたセンサおよび/またはデータレポジトリから取得可能であり、前記セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値が前記電力網アセットから取得不可能であり、
前記処理装置は、
少なくとも1つの代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行し、
前記自動分類プロシージャの入力として前記パラメータ値のサブセットと前記少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを用いて、前記電力網アセットの前記状態分類を取得するようにさらに構成される、電子装置。
【請求項6】
前記処理装置は、広域ネットワークまたはインターネットを介して、前記電力網アセットの前記状態分類の結果を出力するようにさらに構成される、請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載された前記方法を実行するように構成される、請求項5または6に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、電力網アセットを監視または分析するための方法および装置に関する。特に、本発明は、電力変圧器などの電力網アセットの状態分類を行う方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電力システムは、電力を供給、伝送および/または使用するように構成された電気構成要素または電力システム設備のネットワークを備える。例えば、電力網は、発電機、送電システムおよび/または配電システムを備える。発電機または発電所は、可燃性燃料(例えば、石炭、天然ガスなど)および/または非可燃性燃料(例えば、風、日光、原子力など)から電気を生成するように構成されている。送電システムは、発電機から負荷に電気を伝搬または伝送するように構成されている。配電システムは、供給された電気を近くの家庭、コマーシャルビジネスおよび/または他の施設に供給するように構成されている。そのような電力システムは、電気構成要素の中でもとりわけ、一の電圧(例えば、電気を伝送するときに使用された電圧)の電気を、別の電圧(例えば、電力を受ける負荷の所望電圧)の電気に変換するように構成された1つ以上の電力変圧器を備え得る。
【0003】
電力変圧器などの電力網アセットの監視および分析は、電力システムの故障のリスクを軽減することができ、故障が発生する前に、電力網アセットの信頼できる動作を保証するためのタイムリーな対応を取ることができるので、重要である。
【0004】
電力網アセットがアテンション(注意)を必要とすることを示す状態の特定は、大変困難である。一例として、電力変圧器は、エージングならびに信頼性および動作に影響を及ぼし得る他の現象の影響を被る複雑且つ高価なアセットである。何らかの対応が取られることを必要とする電力網アセットの状態をエンジニアが識別することを支援するために、様々なツールが開発されてきた。
【0005】
WO2014/078830A2は、機械学習アルゴリズムを介して開発された、変圧器のプロファイルに基づき所望の負荷用の電力システムの変圧器の油温を予測するステップを含む方法を開示している。
【0006】
CN102735760Aは、エクストリーム・ラーニング・マシンに基づいて、変圧器の油のクロマトグラフィーデータを予測する方法を開示している。
【0007】
CN102944796Aは、エクストリーム・ラーニング・マシンに基づいて、電力変圧器の故障を診断する方法を開示している。
【0008】
監視、診断、または分析のために電力網アセットのパラメータを自動的に処理するツールの精度は、より多くの数のパラメータ値を考慮に入れることができるとき、向上が期待される。従来、多数の入力を処理するツールには、様々な制限が関連付けられている。例えば、ツールが電力網アセットに関連付けられた多くのパラメータ値を自動的に処理することができるとき、これらのパラメータ値の全てが所定の電力網アセットに対して利用することができると、性能は良好であり得る。しかしながら、必要とするパラメータ値の全てを利用することができない異なる電力アセットに対しては、ツールは、状態を分析不可能であるか、または一部の状態のみを分析可能である。必要なパラメータ値の全てを利用
することができないとき、ツールの期待される信頼性に関する情報の欠如もまた、問題となる。
【0009】
電力アセットのパラメータ値の欠損は、様々な原因を有し得、例えば、特定のセンサが無いこと、または電力変圧器の年齢(エージ)といったパラメータに関する情報の欠如によって引き起こされることがある。
【0010】
多数のパラメータ値を自動的に処理することができるツールを適切に訓練することは、訓練プロセスのために使用されることができる履歴データが、極少数の電力網アセットに対して全てのパラメータ値を含み得るので、困難であり得る。使用するパラメータ値の数がより少ない分析ツールは、より容易に訓練され得るが、十分な信頼性を提供し得ない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
本発明の目的は、電力網アセットの状態分類を行うための改善された方法、装置、システムおよびコンピュータ可読命令を提供することである。特に、自動分類プロシージャに必要とされる全ての入力パラメータ値が利用可能ではなくとも、状態分類を確実に実行することができる改善された方法および装置を提供することを目的とする。
【0012】
実施形態によれば、電力網アセットの状態分類を行うことができる方法および装置が提供される。方法および装置は、入力としてパラメータ値のセットを必要とする自動分類プロシージャと、欠損データ置換プロシージャとを組み合わせる。欠損データ置換プロシージャは、所定の電力網アセットに対して利用不可能な各必要とされるパラメータ値の代替値を提供する。欠損データ置換プロシージャは、自動分類プロシージャを訓練するときに(例えば、パラメータ値を欠く履歴データの一部の代替値を提供するように)呼び出されてもよく、電力網アセットのオンラインまたはオフライン状態分類を行うための自動分類プロシージャを使用するときに(例えば、状態分類が行われる電力網アセットに対して必要とされるパラメータ値の一部が利用不可能であるときに、欠損データ置換プロシージャを呼び出すことによって代替値を提供するように)呼び出されてもよい。
【0013】
本発明の一態様によれば、電力網の電力網アセットを監視または分析するための方法は、電子装置が、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行することを含み、自動分類プロシージャは、入力としてパラメータ値のセットを用いて状態分類を行い、パラメータ値のセットのうちサブセットのみが電力網アセットに対して利用可能であり、セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値は電力網アセットに対して利用不可能である。方法は、電子装置が、少なくとも1つの代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行することと、自動分類プロシージャの入力としてパラメータ値のサブセットと少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを用いて、電力網アセットの状態分類を取得することとをさらに含む。
【0014】
本発明の別の態様によれば、電子装置は、電力網アセットに関連付けられたデータを受信するインターフェイスと、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行するように構成された処理装置とを含み、自動分類プロシージャは、入力としてパラメータ値のセットを用いて動作可能であり、パラメータ値のセットのうちサブセットのみが電力網アセットに対して利用可能であり、セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値は電力網アセットに対して利用不可能である。処理装置は、少なくとも1つの代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行し、自動分類プロシージャの入力としてパラメータ値のサブセットと少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを用いて、電力網アセットの状態分類を取得するようにさらに構成されている。
【0015】
本発明の別の態様によれば、電力網アセットと電子装置とを備える電力網が提供される。電子装置は、電力網アセットに関連付けられたデータを受信するインターフェイスと、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行するように構成された処理装置とを含み、自動分類プロシージャは、入力としてパラメータ値のセットを用いて動作可能であり、パラメータ値のセットのうちサブセットのみが電力網アセットに対して利用可能であり、セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値は電力網アセットに対して利用不可能である。処理装置は、少なくとも1つの代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行し、自動分類プロシージャの入力としてパラメータ値のサブセットと少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを用いて、電力網アセットの状態分類を取得するようにさらに構成されている。電力網アセットは、変圧器、特に電力変圧器、または発電機であってもよいが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の別の態様によれば、電子装置のプロセッサに以下のステップを実行させる機械可読命令のセットが提供され、ステップは、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行することを含み、自動分類プロシージャは、入力としてパラメータ値のセットを用いて状態分類を行い、パラメータ値のセットのうちサブセットのみが電力網アセットに対して利用可能であり、セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値は電力網アセットに対して利用不可能であり、ステップは、少なくとも1つの代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行することと、自動分類プロシージャの入力としてパラメータ値のサブセットと少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを用いて電力網アセットの状態分類を取得することとをさらに含む。
【0017】
本発明の別の態様によれば、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを提供する方法が提供される。方法は、入力としてパラメータ値のセットを用いて状態分類を行うように機械学習アルゴリズムを訓練することを含み、訓練は、複数の電力網アセットに関連付けられた訓練データを用いて実行され、方法は、機械学習アルゴリズムを訓練するときに、欠損データ置換プロシージャを実行することをさらに含み、欠損データ置換プロシージャは、パラメータ値のセットのうち、訓練データに欠損している少なくとも1つのパラメータ値の代替パラメータ値を生成する。
【0018】
本発明の別の態様によれば、電子装置のプロセッサに、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを提供するための以下のステップを実行させる機械可読命令のセットが提供される。ステップは、状態分類を行うために入力としてパラメータ値のセットを用いて機械学習アルゴリズムを訓練することを含み、訓練は、複数の電力網アセットに関連付けられた訓練データを用いて実行され、ステップは、機械学習アルゴリズムを訓練するときに、欠損データ置換プロシージャを実行することをさらに含み、欠損データ置換プロシージャは、パラメータ値のセットのうち、訓練データに欠損している少なくとも1つのパラメータ値の代替パラメータ値を生成する。
【0019】
本発明の実施形態に従う方法、装置および機械可読命令コードは、自動状態分類の入力の数が大きすぎて、自動状態分類に必要とされるパラメータ値のうち1つ以上が電力網アセットに対して利用不可能であるときに、従来の自動状態分類が直面しているデータ欠損問題を軽減する。
【0020】
本発明の実施形態は、変圧器、特に電力変圧器、または別の電力網アセットが正常に動作するか否か、または変圧器がアテンションを必要とするか否かを決定するように使用できるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の実施形態は、自動状態分類によって入力として用いられるパラメータ値の一部
が所定の電力網アセットに対して利用不可能であるときにあっても、良好な信頼性を有する自動状態分類を行うために使用され得る。本発明の実施形態は、例えば、自動状態分類によって入力として必要とされるパラメータ値のうちの1つまたはいくつかが電力網アセットに対してオンラインで監視されないときに特に有用であり得るが、これに限定されない。
【0022】
添付の図面に示された好ましい例示的実施形態を参照して、本発明の主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に従う、状態分類を行うための電子装置を含む電力網を示す概略図である。
図2】一実施形態に従う方法を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に従う、自動分類プロシージャを適合する方法を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に従う、電力網アセットの状態分類を行う方法を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に従う、自動状態分類と欠損データ置換との組み合わせを示す概略図である。
図6】パラメータ値欠損問題を示す例示的なデータを示す図である。
図7】履歴データの大きなセット内の欠損しているパラメータ値を示す図である。
図8】欠損データ置換プロシージャが、ガウス統計分布の平均値を用いて欠損しているパラメータ値を置換することを含むときに、パラメータ値の統計分布に対する欠損データ置換プロシージャの影響を示すグラフである。
図9】欠損データ置換プロシージャが、歪正規ガウス統計分布の平均値を用いて欠損しているパラメータ値を置換することを含むときに、パラメータ値の統計分布に対する欠損データ置換プロシージャの影響を示すグラフである。
図10】統計的多重代入法の一例として、欠損データ置換プロシージャが、統計分布に従って決定されたランダム値を用いて欠損しているパラメータ値を置換することを含むときに、パラメータ値の統計分布に影響を与えないことを示すグラフである。
図11A】一実施形態に従う方法において、欠損データ置換プロシージャ内で使用されるパラメータ値の相互相関行列を示す図である。
図11B】一実施形態に従う方法において、欠損データ置換プロシージャ内で使用されるパラメータ値の相互相関行列を示す図である。
図12A】例示的な数値相関値を含む図11Aの相互相関行列の一部を示す図である。
図12B】例示的な数値相関値を含む図11Bの相互相関行列の一部を示す図である。
図13】電力変圧器のベイジアンネットワークを示す図である。
図14】電力変圧器のベイジアンネットワークの小さな部分を示す図である。
図15】一実施形態に従う方法を示すフローチャートである。
図16図15の方法の実施を示す概略図である。
図17】複数の機械学習アルゴリズムを訓練した後の、複数の機械学習アルゴリズムの訓練評価を表すグラフを示す図である。
図18】一実施形態に従って欠損データ置換を使用する自動分類プロシージャの性能と、人間のエキスパートの分類とを比較するコンフュージョンテーブルを示す図である。
図19】一実施形態に従って、自動分類と欠損データ置換との組み合わせを示す概略図である。
図20】一実施形態に従う方法において、異なるパラメータ値を置換した影響を示すグラフである。
図21】一実施形態に従って、状態分類を行うための電子装置を備える電力網を示す概略図である。
図22】一実施形態に従う方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明を実施するための形態
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面において、同一または類似の符号は、同一または類似の要素を示す。いくつかの実施形態は、電力変圧器に関連して説明されるが、以下で詳細に説明される方法および装置は、多種多様な異なる電力網アセットの状態分類を行うために使用されてもよい。特に明記しない限り、実施形態に記載された特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0025】
概観
図1は、実施形態に従って、電力網アセットの状態分類を行うために採用され得る方法および装置を含む電力網10を示す図である。電力網10は、発電機11、昇圧電力変圧器20、伝送線路12、降圧電力変圧器25、ローカル配電網13、および1つ以上の負荷14を含んでもよい。発電機11、電力変圧器20および25、およびローカル配電網13内の変圧器は、電力網アセットの例示である。
【0026】
電力網アセットの状態が電力網の動作および信頼性に対して重要性を考慮して、電力網アセットの状態を評価する。この作業を行うエンジニアを支援するために、状態分類装置30は、1つ以上の電力網アセットの状態分類を自動的に実行し得る。限定しない一例として、状態分類装置30は、電力変圧器20の、任意に、1つ以上の追加の電力変圧器25または他の電力網アセットの状態分類を行うことができる。
【0027】
状態分類装置30は、少なくとも2つの異なる値を有し得る状態分類を出力するように動作可能である。少なくとも2つの異なる値は、電力網アセットが正常に動作すること(良好)を示す第1のクラスと、電力網アセットがアテンションを必要とすること(不良)を示す第2のクラスとを表すことができる。
【0028】
状態分類装置30は、少なくとも3つの異なる値を有し得る状態分類を出力するように動作可能である。少なくとも3つの異なる値は、電力網アセットが正常に動作することを示す第1のクラスと、電力網アセットが何らかのアテンションを必要とすることを示す第2のクラスと、電力網アセットが即時のアテンションを必要とすることを示す第3のクラスとを表すことができる。4つ以上のクラスを使用してもよい。
【0029】
状態分類装置30は、状態分類を行う電力変圧器20、25または他の電力網アセットに関連付けられた動作データを捕捉するセンサ21、22、26、27から、データを受信する。状態分類装置30は、電力変圧器20、25または他の電力網アセットに関連付けられた動作データを捕捉するセンサから、データを受信するためのインターフェイス33を有することができる。以下でより詳細に説明するように、状態分類装置30は、状態分類を行うために、多種多様な異なるパラメータ値を処理するように構成されてもよい。
【0030】
状態分類を行う電力変圧器20、25または他の電力網アセットに関連付けられた追加のパラメータ値は、データ記憶装置34に記憶されてもよい。追加のパラメータ値は、電力網アセットが動作している間に変化する可能性が低い年齢情報、重要度等級、施工種類、ネームプレートデータ、または電力網アセットに関連付けられた他の情報を含んでもよい。エンジニアは、例えば、電力網アセットを設置した後、ユーザインターフェイス35を介してこれらの情報を入力して、データ記憶装置34に格納することができる。
【0031】
状態分類装置30は、自動分類モジュール31を含んでもよい。自動分類モジュール31は、パラメータ値のセットに応じて自動状態分類を行うように構成されてもよい。自動分類モジュール31によって入力として必要とされたセット内の異なるパラメータ値の総数は、Nという符号で表され得る。
【0032】
パラメータ値のセットのうちのサブセットは、状態分類を行う電力網アセット20、25に対して利用可能である。状態分類を行う電力網アセットに対して利用可能であるサブセット内の異なるパラメータ値の総数は、Lという符号で表され得る。
【0033】
電力網アセットに対して利用可能であるパラメータ値のサブセットは、状態分類を行う電力網アセットに設置されたセンサ21、22、26、27によって提供されるパラメータ値を含んでもよい。状態分類が行われるべき電力網アセットに対するL個のパラメータ値は、インターフェイス33において受信されることができ、L個のパラメータ値は、データ記憶装置34から取り出されることができ、ここで、L+L=L、である。
【0034】
実施形態に従って、状態分類装置30は、電力網アセットに対して利用可能な異なるパラメータ値の数Lが、自動分類モジュール31によって入力として必要とされる異なるパラメータ値の総数N未満であっても、自動状態分類を行うことができるように構成されている。欠損しているパラメータ値に対応するために、状態分類装置30は、欠損データ置換モジュール32を含む。欠損データ置換モジュール32は、状態分類を行うために自動分類モジュール31によって必要とされるものではあるが、状態分類を行う電力網アセットに対して利用不可能であるM(=N-L)個のパラメータ値の代替値を提供することができる。
【0035】
以下でより詳細に説明するように、欠損データ置換モジュール32は、様々な異なる欠損データ置換技術のいずれか1つを使用することができる。
【0036】
欠損データ置換モジュール32は、電力網アセットに対して利用可能なL個のパラメータ値の関数として、自動分類モジュール31が入力として必要とする代替パラメータ値のうちの少なくとも1つを決定することができる。
【0037】
自動分類モジュール31および欠損データ置換モジュール32は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、他の機械可読命令コード、またはこれらの組み合わせによって実装されてもよい。状態分類装置30は、自動分類モジュール31および欠損データ置換モジュール32の機能を実現するための少なくとも1つの集積半導体回路を含んでもよい。少なくとも1つの集積半導体回路は、マイクロプロセッサ、プロセッサ、マイクロコントローラ、コントローラ、特定用途向け集積回路、またはこれらの任意の組み合わせのうち、1つ以上を含んでもよい。
【0038】
状態分類装置30の動作は、主として電力変圧器20などの1つの電力網アセットの状態分類を参照して説明されるが、理解すべきことは、現実的な動作シナリオにおいて、状態分類装置30は、通常、同一の電力網10内で動作している複数の電力網アセットまたは異なる電力網に設置されている複数の電力網アセットの状態分類さえも行うことができるということである。例えば、状態分類装置30は、複数の電力変圧器20、25の状態分類を同時または順次に行ってもよい。
【0039】
状態分類装置30が複数の電力網アセットの状態分類を行うときに、これらの電力網アセットが全て同一の種類のもの(電力変圧器)であったとしも、異なる電力網アセットに対して異なるパラメータ値が欠損している可能性がある。この場合、欠損データ置換部3
2は、異なる電力網アセットに対して異なる欠損パラメータ値の代替値を提供することができる。例えば、電力変圧器20の状態分類を行うために、欠損データ置換モジュール32は、電力変圧器20の第1のパラメータの代替値を提供することができる。電力変圧器25の状態分類を行うために、欠損データ置換モジュール32は、電力変圧器25の第2のパラメータの代替値を提供することができる。欠損データ置換モジュール32は、自動分類モジュール31に必要とされるどのパラメータ値が、それぞれの電力網アセットに対して利用不可能であるかに応じて、異なる欠損データ置換プロシージャを使用することができる。
【0040】
状態分類の際に、自動分類モジュール31は、入力が電力網アセットの実際の(例えば、測定された)パラメータ値であるかまたは欠損データ置換モジュール32によって生成された代替値であるかに関わらず、受信した入力を同様に処理することができる。例えば、自動分類モジュール31は、電力変圧器の絶縁油内の溶解ガスのガス濃度といったパラメータ値が電力変圧器20から測定されたものであるかまたは欠損データ置換モジュール32によって生成されたものであるかに関わらず、同様に処理することができる。
【0041】
一実施形態に従って、状態分類装置30は、機械学習アルゴリズムによって実装され得る自動分類と欠損データ置換とを組み合わせることができる。これによって、状態分類装置30は、一部の電力網アセットに対して利用不可能な欠損パラメータ値を自律的に補正すると共に、比較的大量のN個のパラメータ値を入力として使用する自動分類プロシージャを実行することができ、自動分類プロシージャに信頼性を与える。利用不可能なパラメータ値は、欠損データ置換プロシージャを実行させることによって得られた代替値によって置換されてもよい。
【0042】
自動分類モジュール31によって必要とされるパラメータ値のうちの少なくとも1つを電力網アセットに対して利用不可能とさせ得る様々な理由が存在することが理解されるべきである。例示的なシナリオは、以下のことを含む。
【0043】
- 状態分類を行う電力網アセットが、自動分類モジュール31によって入力として必要とされるパラメータ値を捕捉するのに適したセンサを備えていないこと。
【0044】
- 自動分類モジュール31によって入力として必要とされるパラメータ値が、通常、実験室試験環境または理論モデリングによって決定されるものであり、電力網アセットのオンライン動作中に容易に測定できないものであること。
【0045】
- 自動分類モジュール31が新たな追加パラメータ値を入力として考慮するように改良されているが、新たな追加パラメータ値のオンラインまたはオフラインデータを利用することができないこと。そのような場合、新たな追加パラメータ値を補捉可能な必要とされるセンサを電力網アセットに提供することは、コストを考慮して困難であり得、または望ましくない場合がある。
【0046】
- 自動分類モジュール31によって入力として必要とされるパラメータ値が、例えば、データ要件を満たすために人間が欠損した数値を補定した結果得られた非数値的パラメータ符号、例えば、{/、-、--、*、b、・・・}といったリスト内の任意のパラメータ符号であること。
【0047】
非限定的な例として、自動分類モジュール31は、状態分類を行うために、10よりも大きい、50よりも大きい、または90よりも大きい、N個の異なるパラメータ値を処理するように構成されてもよい。自動分類モジュール31によって入力として必要とされたN個の異なるパラメータ値の少なくとも一部は、欠損データ置換モジュール32によって
生成されてもよい。
【0048】
電力網アセットに対して利用不可能であるが自動分類モジュール31によって入力として必要とされる各パラメータ値の代替値を生成することは、状態分類の実行を可能にする一方で、得られた状態分類の精度に影響を及ぼす可能性がある。状態分類装置30は、自動分類モジュール31に入力された代替値の数に応じておよび/または代替値の入力によってどのパラメータが影響を受けたかに応じて、状態分類の精度を示す指標、例えば信頼水準を決定するように動作することができる。
【0049】
状態分類装置30は、状態分類の結果を出力してもよい。任意に、状態分類装置30は、電力網アセットに対して利用不可能なパラメータ値に応じて、状態分類の結果を示す精度、例えば、信頼水準に関する情報を出力してもよい。
【0050】
状態分類装置30は、状態分類の結果と、任意に精度に関する情報とを出力するためのユーザインターフェイス35を含んでもよい。代替的または追加的に、状態分類装置30は、状態分類の結果を示すデータと、任意に精度に関する情報を出力するためのデータネットワークインターフェイスとを含んでもよい。これによって、図21を参照してより詳細に説明するように、状態分類装置30からリモートにある端末装置は、状態分類の結果にアクセスすることができる。
【0051】
状態分類装置30によって実行される自動分類プロシージャは、機械学習技術を含んでもよい。機械学習技術は、履歴データ、または状態分類が行われるべき電力網アセットと同様のアセット種類の複数の電力網アセットに対して以前に取得された他の訓練データを用いて、訓練されてもよい。例えば、電力網10に設置された1つの電力変圧器またはいくつかの電力変圧器の状態分類を行うために、自動分類プロシージャ31は、複数の電力変圧器に対して履歴データを用いて訓練されたいくつかの機械学習アルゴリズムを含んでもよい。欠損データ置換プロシージャは、動作中の電力網アセットの状態分類を決定するときに実行されてもよく、機械学習技術を訓練するときにも実行されてもよい。
【0052】
以下、図2~22を参照して、自動分類プロシージャと欠損データ置換との組み合わせが使用され得る例示的な方法およびシナリオを説明する。理解すべきことは、本明細書に詳細に説明された技術に加えてまたはその代わりに、多種多様な異なる自動分類プロシージャおよび/または多種多様な異なる欠損データ置換プロシージャを使用することができることである。本明細書に詳細に説明された方法は、(電力変圧器、配電変圧器、または高圧変圧器を含むがこれらに限定されない)変圧器または発電機を含むが、これらに限定されない多種多様な電力網アセットに適用することができる。
【0053】
図2は、一実施形態に従うプロセス40を示すフローチャートである。プロセス40は、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを訓練するメソッド50と、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを使用するメソッド60とを含む。理解すべきことは、メソッド50および60は、一般的には、異なるコンピュータ上で異なる時間に実行されることである。例えば、訓練データを用いて、一の種類の電力網アセット(例えば、電力変圧器)に対して自動分類プロシージャを訓練するメソッド50は、この種類の電力網アセットの状態分類を行うように特別に訓練された自動分類プロシージャをもたらす。訓練後、自動分類プロシージャを含むソフトウェア、ファームウェア、または他の機械可読命令コードが配備され、例えば、電力網10のオンライン監視のときにまたは電力網アセットのオフライン分析のために、エンジニアによって使用されてもよい。
【0054】
メソッド50において電力網アセットの状態分類を行うために訓練された自動分類プロ
シージャは、機械学習アルゴリズムまたは複数の異なる機械学習アルゴリズムを含んでもよい。機械学習アルゴリズム(複数可)は、線形アルゴリズム、非線形アルゴリズム、およびアンサンブルアルゴリズムを含んでもよい。一の種類の電力網アセット(例えば、電力変圧器)に対して自動分類プロシージャを訓練するメソッド50は、複数の異なる機械学習アルゴリズムを訓練することと、性能評価の関数として1つまたはいくつかの機械学習アルゴリズムを選択することとを含んでもよい。メソッド50において訓練された複数の異なる機械学習アルゴリズムは、一般線形回帰(GLM)および線形判別分析(LDA)からなる群から選択される少なくとも1つの線形アルゴリズムを含んでもよい。代替的または追加的に、プロシージャ50において訓練された複数の異なる機械学習アルゴリズムは、分類および回帰木(CART)、ナイーブベイズアルゴリズム(NB)、ベイジアンネットワーク、K近傍法(KNN)、およびサポートベクトルマシン(SVM)からなる群から選択される少なくとも1つの非線形アルゴリズムを含んでもよい。代替的または追加的に、メソッド50において訓練される複数の異なる機械学習アルゴリズムは、ランダムフォレスト、ツリーバギング、extreme gradient boosting machine(極度勾配ブー
スティングマシン)、および人工ニューラルネットワークからなる群から選択される少なくとも1つのアンサンブルアルゴリズムを含んでもよい。
【0055】
また、メソッド50は、欠損パラメータ置換プロシージャを実行することを含んでもよい。例えば、訓練データは、複数の電力網アセットに関連付けられた履歴データを含んでもよい。比較的多くの入力を利用することができる自動分類プロシージャを提供することが望ましい一方、各々の電力網アセットに対して利用することができる訓練データ内のパラメータ値の数は、かなり少ないまたはゼロでさえあり得る。例えば、訓練データは、多くのデータセットを含んでもよい。各データセットは、実際の電力変圧器または他の電力網アセットの履歴データに関連付けられ得る。データセットの一部または全部(これは、訓練データの大きなテーブル中の行または列と考えられ得る)において、少なくとも1つのパラメータ値が欠損している可能性がある。したがって、訓練中にも欠損データ置換を実行することによって、各々のデータセット中の代替値を用いて、電力網アセットに対して利用不可能な訓練データ中のパラメータ値を置換することができる。
【0056】
メソッド60において、自動分類プロシージャの使用は、欠損データ置換プロシージャを実行することを含んでもよい。メソッド50および60における欠損データ置換は、ある程度関連するが幾分か異なる目的を果たす。メソッド50における欠損データ置換は、訓練中に様々な機械学習アルゴリズムに入力可能であるパラメータ値の全てが訓練データのデータセットに対して利用可能とは限らないという事実を少なくとも部分的に補償する。メソッド60における欠損データ置換は、訓練された自動分類プロシージャによって入力として必要とされるが、状態分類を行う電力網アセットに対して利用不可能なパラメータ値の一部を少なくとも部分的に補償する。
【0057】
図3は、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを訓練するメソッド50を示すフローチャートである。この訓練は、電力網アセットに関連付けられた訓練データを用いて実行される。ステップ51において、訓練データが取り出される。訓練データは、データレポジトリから取り出され得る。訓練データは、例えば電力変圧器といった、状態分類が行われるべき電力網アセットと同様のアセット種類を有する多くの電力網アセット、に関連付けられた履歴データを含んでもよい。訓練データは、100個を超える履歴データセット、好ましくは500個を超える履歴データセット、好ましくは少なくとも約800個の履歴データセットを含んでもよい。各々の履歴データセットは、電力網アセットに関連付けられる。
【0058】
ステップ52において、訓練データの少なくとも1つのデータセットに対して、訓練中に機械学習アルゴリズムに入力されるべきパラメータ値が訓練データにおいて欠損してい
るか否かを判定する。パラメータ値が欠損していれば、ステップ53において、欠損データ置換プロシージャを実行して、欠損しているパラメータ値の代替値を生成する。電力網アセットに関連付けられたデータセットに対して、パラメータ値が訓練データに欠損していなければ(これは、機械学習アルゴリズムに入力されるパラメータ値の数が多ければ非常に起こりにくいシナリオである)、メソッドは、ステップ52からステップ54に直接に進行してもよい。
【0059】
ステップ54において、教師あり学習が行われてもよい。教師あり学習は、ステップ53において任意に実行された欠損データ置換プロシージャによって生成された置換値によって補われた訓練データに基づいて、行われてもよい。教師あり学習は、訓練データと共に、人間のエキスパートによって提供された電力網状態の評価を使用してもよい。
【0060】
当業者には理解されるように、「機械学習」とは、明示的にプログラムされていないアルゴリズムを用いて、データから知識抽出を行う半自動プロセスを含む。機械学習が人間とデータとのインタラクション(例えば、データクレンジング)を必要とするため、このプロセスは、半自動化されている。一般的に、機械学習は、データから知識を抽出するために利用できる大量のツールセットを指す。当業者に既知の様々なアルゴリズムを使用して、電力網アセットの状態分類を行うことができる。このようなアルゴリズムの例として、一般線形回帰(GLM)および線形判別分析(LDA)などの線形アルゴリズム、分類および回帰木(CART)、ナイーブベイズアルゴリズム(NB)、ベイジアンネットワーク、K近傍法(KNN)およびサポートベクトルマシン(SVM)などの非線形アルゴリズム、ランダムフォレスト、ツリーバギング、extreme gradient boosting machine(
極度勾配ブースティングマシン)および人工ニューラルネットワークなどのアンサンブルアルゴリズムを含むが、これらに限定されない。
【0061】
ステップ54の監視学習において、機械学習は、特徴空間と機械学習アルゴリズムの出力変数である状態分類との間の複雑な関係をマッピングする。機械学習アルゴリズムによって得られた分類の精度を向上させ、高めるために、機械学習アルゴリズムによって提供された出力は、人間のエキスパートによる分類と比較される。教師なし学習において、機械学習は、データ内の隠れ構造を検索する。
【0062】
図3は、訓練メソッド50の一般的なステップのみを示しているが、理解すべきことは、訓練メソッド50がより複雑であってもよいことである。例えば、特定の種類の電力網アセットのために使用される自動分類プロシージャを訓練することは、教師あり学習を用いて、1つのみの機械学習アルゴリズムではなく、いくつかの機械学習アルゴリズムを各々訓練することを含んでもよい。以下でより詳細に説明するように、追加的にまたは代替的に、ステップ53において、2つ以上の欠損データ置換プロシージャを使用してもよい。
【0063】
図4は、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを使用するメソッド60を示すフローチャートである。自動分類プロシージャは、機械学習アルゴリズムであってもよい。自動分類プロシージャは、入力としてN個のパラメータ値のセットを必要とする。
【0064】
ステップ61において、電力網アセットのパラメータ値を受信する。図1を参照して説明したように、パラメータ値は、電力網アセットに関連付けられたセンサからおよび/またはデータレポジトリから取り出されることができる。パラメータ値は、オンラインで監視されるL個のパラメータ値と、データレポジトリから取得されたL個のパラメータ値とを含んでもよい。データレポジトリから取り出されたパラメータ値は、具体的には、典型的に時系列変動しないパラメータ値、または例えば、電力網アセットの年齢、電力網
アセットの電圧級別、または電力網アセットの重要度等級といった、徐々に時系列変動するパラメータ値を含んでもよい。データレポジトリから取り出されたパラメータ値は、種類関連パラメータ、例えば、電力網アセットまたはそのサブシステムのネームプレート情報を含んでもよい。例えば、データレポジトリからは、電力変圧器の冷却システム種類、ブッシング種類、または油絶縁システム種類に関する情報が取り出されてもよい。これらの情報は、エンジニアによって保存されてもよい。
【0065】
ステップ62において、入力として自動分類プロシージャによって必要とされたN個のパラメータ値のうちの1つが電力網アセットに利用可能ではないか、すなわち、L=L+L<Nかを判定する。かなり多くの入力(例えば、50個よりも多い入力)を使用する自動分類プロシージャについては、少なくとも1つのパラメータ値は、電力網内のいずれかの電力網アセットに対して利用不可能である可能性が高い。状態分類を行う異なる電力網アセット(例えば、異なる変圧器)に対して、異なるパラメータ値が欠損している可能性がある。
【0066】
ステップ63において、欠損データ置換プロシージャを実行して、電力網アセットに対して利用不可能な少なくとも1つのパラメータ値の代替値を生成する。
【0067】
ステップ64において、自動分類プロシージャを実行する。自動分類プロシージャは、受信したパラメータ値、任意にステップ63で生成された電力網アセットに対して利用不可能なデータ入力の代替値によって補われたパラメータ値を入力として使用する。
【0068】
図4は、訓練メソッド60の一般的なステップのみを示しているが、理解すべきことは、分類メソッドがより複雑であってもよいことである。例えば、以下でより詳細に説明するように、ステップ63において、2つ以上の欠損データ置換プロシージャを使用してもよい。自動分類プロシージャの入力として必要とされるもののうちどのパラメータ値が欠損しているかに応じて、および/または異なる欠損データ置換プロシージャが状態分類の精度にどのように影響を及ぼすかに応じて、異なる欠損データ置換プロシージャを呼び出してもよい。
【0069】
図5は、欠損データ置換を示す概略ブロック図である。自動分類モジュール31は、状態分類を行うための入力として、パラメータ値のセット41を必要とする。セット41のうちのサブセット42は、電力網アセットに対して利用可能である。サブセット42は、例えば、電力網アセットの動作中にオンラインで監視されるパラメータ値36を含んでもよい。サブセット42は、他の方法で知られた他のパラメータ値37を含んでもよい。エンジニアがユーザインターフェイスを介して入力したデータおよび/またはデータレポジトリに格納されたデータは、センサによって提供されることを要さないデータの例示である。ネームプレート情報または年齢、重要度分類、または同様の他のパラメータに関連する情報は、センサによって検出されることを要さないパラメータ値37の例示である。
【0070】
セット41のうちの少なくとも1つのパラメータ値は、パラメータ値36のセットにも他の既知のパラメータ値37にも含まれていない。代替値43は、欠損データ置換モジュール32によって決定される。セット41に含まれる実際の(測定されたまたは他の方法で既知の)パラメータ値が、自動分類モジュール31によって入力として必要とされるものの、検出されたパラメータ値36として利用可能でもなく、電力網アセットに対する他の既知の値でもないので、代替値43は、それらの代替として入力される。
【0071】
少なくとも1つの代替値43は、電力網アセットに対して利用可能なパラメータ値のサブセット42に依存してもよい。例示としておよび以下でより詳細に説明するように、欠損データ置換プロシージャは、異なるパラメータ間の相関またはパラメータ値の統計分布
に関する情報を用いて、1つ以上の代替値を決定してもよい。
【0072】
例示的な実施形態:変圧器の状態分類
本明細書に開示された構想は、多種多様な異なる電力網アセットに適用可能であるとともに、本発明の方法、装置およびコンピュータプログラムは、変圧器の状態分類を行うために使用されてもよい。自動分類プロシージャの入力として使用されるパラメータ値は、電力網アセットの動作中にオンライン監視されるパラメータ値と、電力網アセットの動作中にオンライン監視されない他のパラメータ値とを含んでもよい。自動分類プロシージャの入力として使用されるパラメータ値は、パラメータ値に関する情報が利用可能ではないような電力網アセットの製造または設置後に、自動分類プロシージャの入力へと組み込まれたパラメータ値を含んでもよい。
【0073】
本発明の技術を使用して、例えば、電力変圧器、配電変圧器、または少なくとも69kVまたは少なくとも34.5kVの電圧で動作し得る高圧変圧器の状態分類を行うことができる。
【0074】
自動分類プロシージャは、入力として変圧器に関連付けられた様々なパラメータ値を使用してもよい。
【0075】
以下、電力網アセットの自動分類プロシージャの入力として(個々にまたは任意の組み合わせにおいて)必要とされ得るパラメータ値の非限定的な例を提供する。
【0076】
- 年齢、電圧級別、パワーおよび/または重要度等級。
- スルーフォルト(ThruFault)。
【0077】
- 電力網アセットに含まれる絶縁システムに関連する情報。絶縁システムに関連する情報は、絶縁システムのシステム種類または絶縁システムの動作パラメータを含むことができ、油絶縁システムの場合、動作パラメータは、油界面張力と、油絶縁耐力と、油力率と、油絶縁システムの油絶縁システムの絶縁油中の水分と、油絶縁システムの絶縁油内に溶解した少なくとも1つのガスの濃度とのうち、1つ以上を含むことができ、少なくとも1つのガスは、H、CH、C、C、C、CO、CO、O、およびNからなる群から選択され得る。
【0078】
- 電力網アセットに含まれる巻線に関する情報。巻線に関する情報は、巻線力率、巻線容量、巻線温度のうち、1つ以上を含んでもよい。
【0079】
- 電力網アセットに含まれるブッシングに関する情報。ブッシングに関連する情報は、ブッシング力率、ブッシング容量、ブッシングのブッシング種類のうち、1つ以上を含んでもよい。
【0080】
- 電力網アセットに含まれる冷却システムに関連する情報。冷却システムに関連する情報は、冷却システムの状態および/または冷却システムの冷却システム種類を含んでもよい。
【0081】
- 電力網アセットに含まれる負荷タップ切換器に関連する情報。負荷タップ切換器に関連する情報は、負荷タップ切換器の状態および/または負荷タップ切換器の負荷タップ切換器種類を含んでもよい。
【0082】
- 電力網アセットの負荷。負荷は、動的負荷であってもよい。
理解すべきことは、代わりのパラメータの値または追加のパラメータの値は、発電機な
どの他の電力網アセットの自動分類プロシージャの入力として使用されてもよいことである。
【0083】
欠損パラメータ値および欠損データの置換
欠損パラメータ値
自動分類プロシージャの入力として必要とされるパラメータ値が利用不可能であり得るという問題は、電力網アセット状態分類における後の使用のために自動状態分類を訓練するとき、および訓練済み自動分類プロシージャを使用するときの両方に起こり得る。いずれの場合においても、電力網アセットに対して必要な入力の一部が欠損しているとき、欠損データ置換プロシージャを実行することによって、代替値が提供され得る。本明細書に開示された欠損データ置換プロシージャは、本明細書に開示された方法、装置、システムおよび機械可読命令コードのいずれか1つと共に使用されてもよい。
【0084】
図6は、それぞれが電力変圧器である電力網アセットの例示的なデータを示す図である。図6に示すテーブルは、訓練済み自動分類プロシージャを用いて状態分類を行うときおよび自動状態分類プロシージャの訓練中に遭遇する可能性がある。
【0085】
このテーブルは、例示のために提供され、網羅的ではない例示的な列を含む。例えば、データ列71は、各電力網アセットの識別子を含んでもよい。データ列72は、それぞれの電力網アセットのクラスを表すパラメータ値を含んでもよい。データ列73は、各電力網アセットの重要度等級を表すパラメータ値を含んでもよい。データ列74は、それぞれの電力網アセットの年齢を表すパラメータ値を含んでもよい。データ列75は、それぞれおの電力網アセットの電圧級別を表すパラメータ値を含んでもよい。データ列76は、それぞれの電力網アセットのスルーフォルトを表すパラメータ値を含んでもよい。データ列77~85は、H、CH、C、C、C、CO、CO、O、およびNガスに対しての油絶縁システムの絶縁油内に溶解したガスの濃度を表すパラメータ値を含んでもよい。
【0086】
パラメータ値は、テーブルの領域86、87および88内で、欠損している。例えば、テーブルの領域86に対して、変圧器の年齢情報が欠損している。テーブルの領域87内で、変圧器のスルーフォルトが欠損している。テーブルの領域88内で、様々な他の変圧器のガス濃度が欠損している。
【0087】
一実施形態に従う状態分類装置の動作中に欠損データに遭遇した場合、実のデータが欠損しているテーブルの領域86、87および88において使用される代替値は、決定してもよい。代替値の決定は、状態分類装置によって自動的且つ自律的に行われてもよい。
【0088】
自動分類プロシージャを訓練するとき、例えば機械学習アルゴリズムの訓練中に、欠損しているデータに遭遇した場合、代替値は、教師あり学習プロシージャへと入力されてもよい。
【0089】
図7は、1000個の電力変圧器に対するデータセットを含む訓練データ90を示す図である。データを含むフィールドは、黒線で示され、データを含まないフィールドは、白線で示される。電力変圧器の状態分類を行うための自動分類プロシージャが訓練データ90を用いて訓練される場合、訓練データ90のデータセット内に無いデータの代替値を提供するために、少なくとも1つの欠損データ置換プロシージャが呼び出される。
【0090】
図6および図7から分かるように、一般的に、異なるデータセットに対して異なるパラメータ値は、欠損している可能性がある。例えば、1つのデータセットにおいて、年齢に関する情報が利用不可能であり得る一方、他のデータセットにおいて、ガス濃度、絶縁油
中の水分、またはブッシング力率もしくは容量に関する情報が欠損している可能性がある。欠損しているパラメータ値に応じて、2つ以上の欠損データ置換プロシージャを使用することができ、または複数の異なる欠損データ置換プロシージャの中から最適な欠損データ置換プロシージャを選別することができる。
【0091】
使用され得る欠損データ置換プロシージャ(複数可)は、以下を含んでもよい。
- デフォルト値を使用すること。
【0092】
- 統計分布の平均値または中央値を使用すること。
- 統計分布に従って決定されたランダム値を使用すること。
【0093】
- ハード値補定。
- パラメータ多変量相関に基づいて決定された値を使用すること。
【0094】
以下、欠損データ置換プロシージャの例示的な実装を説明する。
簡潔さのために、機械学習アルゴリズムまたは訓練済み自動分類プロシージャの入力として必要とされるパラメータ値は、以下、「欠損パラメータ値」と称される。理解すべきことは、欠損パラメータ値は、それぞれの電力網アセットまたは訓練データのデータセットを参照して理解されるべきものであるということである。すなわち、所与のパラメータ値は、電力変圧器20に対して利用不可能であり得るが、対応するパラメータ値は、電力網内の別の電力変圧器25に対して利用可能であり得る。同様に、所与のパラメータ値は、訓練データ内のデータセットに対して利用不可能であり得るが、対応するパラメータ値は、訓練データ内の別のデータセットに対して利用可能であり得る。
【0095】
欠損パラメータの代替値をデフォルト値にしたがって決定する
欠損パラメータ値の代替値は、デフォルト値であってもよい。デフォルト値は、固定値であってもよい。デフォルト値は、欠損しているパラメータ値に依存してもよい。また、デフォルト値は、電力網アセットに利用可能なパラメータ値に依存してもよい。
【0096】
欠損パラメータ値の代替値を統計分布の平均値または中央値にしたがって決定する
欠損パラメータ値の代替値は、このパラメータ値の統計分布の平均値または中央値にしたがって決定されてもよい。統計分布は、例えば、他のデータセット内で欠損しているパラメータ値を含む訓練データ内のデータセットから決定されてもよい。
【0097】
図7に示すように、パラメータ値がいくつかの電力網アセットに対して欠損していても、それぞれのパラメータ値は、典型的に、同一種類の多くの電力網アセット(例えば、電力変圧器)に対して利用可能である。これにより、パラメータ値に対する統計分布を決定することができる。代替的または追加的に、物理モデリングを用いて、統計分布を決定することができる。統計分布は、機械学習アルゴリズムを訓練するときに使用され得るのみでなく、後の状態分類装置30の動作中に使用されてもよい。
【0098】
図8および図9は、統計分布の平均値または中央値を用いて欠損しているパラメータ値を置換する影響を示す図である。図8は、パラメータ値の正規統計分布を示す図である。図8に示された統計分布は、例えば、油の界面張力(ITF)に見られる。統計分布101は、油界面張力が既知である電力変圧器の油界面張力を示す図である。統計分布101の平均値または中央値は、油界面張力が既知ではない電力変圧器の欠損界面張力の代替値として使用することができる。これは、図8の右側のヒストグラムバー102の長さの増加によって示される。元の統計分布101の平均値または中央値に対応する代替値をまた考慮することによって得られ得る修正統計分布103は、元の統計分布101と同様の平均値または中央値を有するが、減少した標準偏差を有する。
【0099】
図9は、パラメータ値の歪正規統計分布を示す図である。図9に示された統計分布は、例えば、油に溶解したガスCOの濃度に見られる。統計分布104は、溶解ガスCOの濃度が既知である電力変圧器に対する溶解ガスCOの濃度を示す図である。統計分布104の平均値または中央値は、溶解ガス濃度が既知ではない電力変圧器の欠損している溶解ガスCO濃度の代替値として使用することができる。これは、図9の右側のヒストグラムバー105の長さの増加によって示されている。元の統計分布104の平均値または中央値に対応する代替値をまた考慮することによって得られる修正統計分布106は、元の統計分布104と同様の平均値または中央値を有するが、統計分布を非正規分布に歪ませる。
【0100】
欠損パラメータ値の代替値を統計分布に従って選択されたランダム値にしたがって決定する
欠損パラメータ値の代替値は、欠損パラメータ値の統計分布に従って選択されたランダム値にしたがって決定されてもよい。すなわち、代替値は、欠損パラメータ値の統計分布に従って選択されたランダム値であってもよい。統計分布は、例えば、他のデータセット内で欠損しているパラメータ値を含む訓練データのデータセットから決定されてもよい。代替的に、統計分布は、物理モデルまたは実験によって決定されてもよい。
【0101】
図10は、パラメータ値の歪正規統計分布を示す図である。図10に示された統計分布は、例えば油に溶解したガスCOの濃度に見られる。統計分布107は、パラメータ値が既知である電力変圧器のパラメータ値を示す図である。統計分布107に従って1つ以上の電力変圧器の欠損しているパラメータ値を置換する代替値をそれぞれ決定する場合、統計分布107に従って選択されたランダム値にしたがって代替値が決定された電力変圧器を含む、結果として得られる統計分布108は、元の統計分布107と同様である。
【0102】
ハード値補定に基づき欠損パラメータ値の代替値を決定する
欠損パラメータ値の代替値は、ハード値補定によって決定されてもよい。代替値は、知識や経験に基づいた、正確性の高い推測(educated guess)に依存してもよい。自動分類プロシージャの訓練中、正確性の高い推測は、人間のエキスパートによって提供されてもよい。状態分類装置30の動作中、ハード値補定を使用するとき、正確性の高い推測に関する情報は、記憶装置から取り出されることができる。記憶装置は、複数の異なるパラメータ値の正確性の高い推測を記憶することができる。
【0103】
パラメータ相関に基づき欠損パラメータの代替値を決定する
欠損パラメータの代替値は、パラメータ相関に基づいて決定されてもよい。例えば、図6および図7に示されるように、訓練データのデータセットの大半または全てにおいて一部のパラメータ値が欠損しているときにあっても、既存のパラメータ値の間でパラメータ相関が決定され得る。パラメータ相関は、多変量相関またはピアソン相関であってもよい。それによって、パラメータ値の相関を示す相関行列が得られ得る。
【0104】
図11Aおよび図11Bは、異なるパラメータ値の相関を反映する1つの相関行列の2つの部分110a、110bを示す図である。例示的な相関行列は、以下のパラメータ、年齢(age)、重要度(IMP)、電圧級別(HV)、電力(MVA)、スルーフォルト(TF)、油の界面張力(IFT)、油絶縁耐力(DS)、油力率(PF25)、油中の水分(HO)、油に溶解したガスの濃度(H、CH、C、C、C、CO、CO、O、N)、高電圧巻線力率(H1PF)。高電圧巻線容量(H1Cap)、ブッシング力率(BshPF)、ブッシング容量(BshCap)、および既存のパラメータから算出される他の比率、例えばCO/COおよびO/N(O)、に対する行および列を有する。
【0105】
相関パラメータは、相関行列に基づいて識別されてもよい。より高い相関の例示的な島(アイランド)は、図12Aおよび図12Bにおいて別々に再現される。図12Aは、油に溶解したガスH、CHおよびCの濃度間の相関を反映する相関行列110a、110bの一部111を示す図である。図12Bは、電力、重要度および電圧級別の相関を反映する相関行列110a、110bの一部112を示す図である。
【0106】
相関行列を用いて、電力網アセットの既知のパラメータ値に基づいておよびこの情報を電力網アセットの大きなセットから決定された相関110a、110bと組み合わせることによって、電力網アセットの1つ以上の欠損しているパラメータ値の代替値を決定することができる。このように、多変量回帰またはピアソン相関を用いて、電力網アセットの1つ以上の欠損しているパラメータ値の代替値を決定することができる。
【0107】
他の欠損データ置換プロシージャ
他の欠損データ置換プロシージャを使用してもよい。例えば、条件付き確率表(CPT)を使用する確率的信頼伝播アルゴリズムを用いて、電力網アセットの既知のパラメータ値を考慮に入れて、欠損しているパラメータ値の代替値を決定することができる。
【0108】
欠損データ置換プロシージャの選択
一部の欠損データ置換プロシージャは、他の欠損データ置換プロシージャよりも優る可能性がある。最良性能の欠損データ置換プロシージャは、欠損しているパラメータ値および/または自動分類プロシージャを実装するために使用された機械学習技術に依存し得る。
【0109】
一実施形態に従う状態分類装置30は、少なくとも1つの欠損データ置換プロシージャを実行するように構成されてもよい。2つ以上の欠損データ置換プロシージャ、例えば、単一代入法(分布の推測値、平均値または中央値)、特徴相関(すなわち、欠損データを他の全てのパラメータの関数とすること)、多重代入法(すなわち、データに最も適合する確率分布関数を見つけること)、および確率的信頼伝播アルゴリズム(例えば、ベイジアンネットワーク)をサポートしてもよい。状態分類装置30において、1つ以上の欠損データ置換プロシージャを適切に実装してもよい。電力網アセットに対して利用可能なパラメータ値に応じておよび/または代替値を決定する欠損パラメータに応じて、1つの欠損データ置換プロシージャを呼び出して、代替値を決定してもよい。
【0110】
例示として、代替値が決定されるべき電力網アセットのパラメータ値と電力網アセットの既知の他のパラメータ値との間に強くはないが十分な相関または逆相関が存在するが場合に、パラメータ相関を使用する欠損データ置換プロシージャを使用してもよい。相関が1に近い大きさを有する(すなわち、パラメータが完全に相関または逆相関する)場合、パラメータ相関を使用する欠損データ置換プロシージャを用いて、欠損しているパラメータ値の代替値を決定するときに、情報を追加する必要がない。
【0111】
さらなる例示として、所定のパラメータ値に対して良好な正確性の高い推測が利用可能である場合、正確性の高い推測値が使用されてもよい。
【0112】
訓練セットに自動分類プロシージャを適合するメソッド(図2および図3のメソッド50)中に、いくつかの異なる欠損データ置換プロシージャを順次に使用してもよい。異なる自動分類プロシージャのそれぞれに対して機械学習アルゴリズムを訓練した後、自動分類プロシージャの性能評価を用いて、異なる欠損データ置換プロシージャから適切な欠損データ置換プロシージャを識別し、良好な性能を示す欠損データ置換プロシージャを選択してもよい。
【0113】
機械学習アルゴリズムを用いて、異なる種類の欠損データ置換プロシージャストラテジーのインパクトを、最良の訓練済み機械学習アルゴリズムの精度について評価することができる。
【0114】
自動分類プロシージャおよび機械学習アルゴリズム
状態分類装置30によって実行される自動分類プロシージャは、複数の電力網アセットに関連付けられた訓練データを用いて予め訓練された機械学習アルゴリズムであってもよく、またはそれを含んでもよい。上記で説明したように、異なる機械学習アルゴリズムを使用してもよい。
【0115】
一般的に、電力網アセットに使用される自動分類プロシージャを訓練することは、以下のステップを含んでもよい。
【0116】
(a)候補技術(例えば、線形回帰、ロジスティック回帰、ANN、分類木)を選択するステップ。
【0117】
(b)分類する電力網アセットの属性(例えば、変圧器のネームプレートデータ、H、CH)を有する訓練データセットを選択するステップ。
【0118】
(c)「ラベル付けされたデータ」(例えば、「良好」または「不良」もしくは3つ以上の種類を含む分類)を用いて機械学習アルゴリズムを訓練するステップ。
【0119】
(d)機械学習アルゴリズムが属性(または特徴)と出力結果との間の関係を「学習する」ステップ。訓練後の機械学習アルゴリズムは、出力結果がない、すなわち、人間によって付されたクラスがない新しいデータを予測することができる。
【0120】
限定ではなく例示のために、図13は、分類および回帰木(CART)の一例であるベイジアンネットワークを示す図である。ベイジアンネットワークの各ノードは、変圧器主要構成要素または動作データに加えて、溶解ガス分析(DGA)、電気試験などの必須の試験結果を表し、エビデンスがなく、事前確率(事前知識)に基づいた特定のノードまたは構成に信頼を有するモニタを示す。これは、ベイジアンネットワークの「インスタンス化」と呼ばれる。ベイジアンネットワークのノードにパラメータ値を設定することによって、電力変圧器の健全性に対する影響は、ベイジアンネットワークを介して、確率的伝播によって決定される。
【0121】
図13の例示的なCARTは、以下のノードを含む(ノード番号は、図13に示される番号を指す)。
【0122】
ノード1:メインタンク
ノード2:腐食
ノード3:漏れ
ノード4:メインキャビネット
ノード5:油質
ノード6:油老化
ノード7:酸性度
ノード8:力率
ノード9:界面張力
ノード10:誘電感受性
ノード11:水分
ノード12:汚染物質
ノード13:ガスレベル
ノード14:ガス動向
ノード15:溶解ガス分析(DGA)
ノード16:電気試験
ノード17:スルーフォルト
ノード18:ノイズレベル
ノード19:巻線温度
ノード20:活性部位
ノード21:冷却システム
ノード22:油保存システム
ノード23:負荷タップ切換器
ノード24:ブッシング
ノード25:付属品
ノード26:動作データ
ノード27:負荷
ノード28:シスター故障
ノード29:設計上の問題
ノード30:履歴
ノード31:健全性確率
図14は、アーク放電の確率(ノード121)、高温条件の確率(ノード122)、およびCが絶縁油に溶解する確率(ノード123)に関連するベイジアンネットワークの一部のノード121~123を示す図である。ノード123に関連する条件付き確率表124は、ノード121、122からノード123への確率伝播を示す。「真」または「偽」の値を各々有するノード121、122のうちの1つの確率の変化は、Cが電力変圧器の絶縁油に溶解することを示すノード123の確率に影響を与える。
【0123】
ベイジアンネットワークの訓練中、ベイジアンネットワークの条件付き確率表内の条件付き確率値が学習されてもよい。学習プロセス(図2および図3のメソッド50)は、アルゴリズムが内部選択基準を作成する間に行われてもよい。その結果、新しい要素が分類のためにシステムに提供されると、機械学習アルゴリズムおよび訓練プロセスの品質によって決められた信頼性で、正しく分類される。
【0124】
適切な機械学習アルゴリズムおよび欠損データ置換プロシージャの選択
状態分類装置30の自動分類プロシージャを用いて信頼できる正確な状態分類を提供するために、1つ以上の機械学習アルゴリズムおよび/または1つ以上の欠損データ置換プロシージャに対して訓練を行ってもよい。
【0125】
特定の欠損データ置換ストラテジは、他のパラメータに比べて、一部のパラメータに対してより良く機能し得る。実際の電力網アセット(例えば、ネームプレート、負荷、油中のガス、油品質、ブッシング力率および容量、負荷タップ切換動作、種類、ガスなどの複数の動作データを有する複数の電力変圧器)から捕捉した訓練データを用いて機械学習分類アルゴリズムを適切に訓練した後、この機械学習分類アルゴリズムを用いて、電力網アセットの状態を評価することができる。最適な機械学習アルゴリズムおよびデータ置換プロシージャを見付け出すまで、異なる欠損データ置換プロシージャを用いて、同じデータに対して最良の機械学習アルゴリズム(すなわち、分類プロセスにおいて最良の精度を提供するもの)を試験してもよい。
【0126】
図15は、複数の電力網アセット(例えば、複数の電力変圧器など)に関連する訓練データを用いて自動分類プロシージャを訓練する方法130を示すフローチャートである。
【0127】
ステップ131において、訓練データを用いて、複数の異なる機械学習アルゴリズムが訓練される。訓練は、教師あり学習を含んでもよい。欠損データ置換プロシージャを用いて、訓練データのデータセット内で欠損しているパラメータ値の代替値が提供されてもよい。
【0128】
ステップ131において訓練された複数の異なる機械学習アルゴリズムは、一般線形回帰(GLM)および線形判別分析(LDA)からなる群から選択される少なくとも1つの線形アルゴリズムを含んでもよい。代替的または追加的に、ステップ131において訓練された複数の異なる機械学習アルゴリズムは、分類および回帰木(CART)、ナイーブベイズアルゴリズム(NB)、ベイジアンネットワーク、K近傍法(KNN)、およびサポートベクトルマシン(SVM)からなる群から選択される少なくとも1つの非線形アルゴリズムを含んでもよい。代替的または追加的に、ステップ131において訓練された複数の異なる機械学習アルゴリズムは、ランダムフォレスト、ツリーバギング、extreme gradient boosting machine(極度勾配ブースティングマシン)、および人工ニューラルネ
ットワークからなる群から選択される少なくとも1つのアンサンブルアルゴリズムを含んでもよい。
【0129】
ステップ131において、機械学習アルゴリズムは、典型的には訓練フェーズ(訓練データにおいて利用可能な事例の数)において提供された多くの例を介して、入力(パラメータ値のセット)と出力(状態分類)との間の統計的マッピングを学習してもよい。訓練段階の各例は、一般的に多くのパラメータ値(例えば、変圧器の年齢、溶解ガス分析履歴、負荷)を含む。教師あり学習は、各機械学習アルゴリズムの出力と、人間のエキスパートによって与えられた状態分類との間の比較を介して行われてもよい。誤差関数を規定し、統計的プロセスを用いて、誤差関数を最小化してもよい。これによって、各アルゴリズムは、実装に基づいて最良の可能な精度を提供する。
【0130】
ステップ132において、性能評価を行ってもよい。性能評価は、好ましくは、訓練データに含まれていない試験データに基づいて行われる。性能評価は、訓練された機械学習アルゴリズムによって出力された状態分類を試験すること、および結果を人間のエキスパートによって提供された分類と比較することを含んでもよい。
【0131】
ステップ133において、機械学習アルゴリズムのうちの少なくとも1つ、任意にステップ131において使用された複数の欠損データ置換プロシージャのうちの少なくとも1つを選択して、状態分類装置30に使用される。選択ステップ133は、性能評価において人間のエキスパートの状態分類と一致する最大数の状態分類を有する機械学習アルゴリズムおよび欠損データ置換プロシージャを選択することを含んでもよい。
【0132】
代替または追加の基準を採用して、複数の候補から、機械学習アルゴリズムおよび/または欠損データ置換プロシージャを選択してもよい。例えば、いわゆる混同行列を評価して、訓練された機械学習アルゴリズムによって与えられた結果と、人間のエキスパートによって与えられた結果とを比較してもよい。選択ステップ133は、アテンションを必要とする電力網アセットを正常動作状態にあると誤分類しなかった人間のエキスパートの状態分類と一致する最大数の状態分類を有し、および/またはアテンションを必要とする電力網アセットを正常動作状態にあると誤分類した数が最も少ない機械学習アルゴリズムおよび欠損データ置換プロシージャを選択することを含んでもよい。
【0133】
図16は、電力網アセットの状態分類に使用される自動分類プロシージャの訓練を示す概略図である。複数の機械学習アルゴリズム143は、電力網アセット20に関連するパラメータ値141を各々受信する。パラメータ値141は、重要度等級、ブッシングの容量および力率、スルーフォルト、巻線の容量および力率、ネームプレートから得られた情
報、油の品質に関する情報、および溶解ガス分析(DGA)の結果に関する情報を含んでもよい。機械学習アルゴリズム143は、訓練される。エキスパートオピニオン142を用いて、教師あり学習を実施してもよい。エキスパートオピニオン142は、複数の変圧器であり得る複数の電力網アセット145の分類を提供してもよい。機械学習アルゴリズム143は、機械学習アルゴリズム143によって提供された状態分類144が一般的に人間のエキスパートによって提供された状態分類と一致するように訓練される。複数の機械学習アルゴリズムおよび複数のデータ置換プロシージャから、最良性能の機械学習アルゴリズムのうちの少なくとも1つおよび/または最良性能のデータ置換プロシージャのうちの少なくとも1つを選択することによって、以前に訓練されていない新しいデータに対して良好に機能する状態分類を行うための自動分類プロシージャが得られる。
【0134】
図17は、800個のデータセットを含む訓練データを用いて訓練された複数の機械学習アルゴリズムの性能評価を示すグラフである。図17に示された訓練精度は、訓練セット全体の分類と人間のエキスパートによって提供された分類とを比較することによって得られる。図17に示された訓練精度は、10-フォールド・クロスバリデーション(CV)および3回の反復によって得られる。機械学習アルゴリズムは、ナイーブベイズ(Naive Bayes)、線形識別分析(Linear Discriminant Analysis)(LDA)、分類および回
帰木(CART)、一般線形モデル(GLM)、サポートベクターマシン(SVM)、K近傍法(KNN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ツリーバギング(Tree Bagging)、Extreme Gradient Boosting Machine(xGBM1およびxGBM2)、ランダ
ムフォースト(RF)およびC5.0を含む。図17の各ボックスの上部境界および下部境界ならびに各ボックス内の水平実線はそれぞれ、Q3値およびQ1値ならびに中央値を表す。実線は、範囲の上限および下限を表す。黒丸は、平均値を表す。点線は、+/-1標準偏差の範囲を表す。空丸は、存在する場合、上側および下側外れ値を表す。
【0135】
図17に使用された例示的な訓練データの場合、上位最良性能の5つのモデルは、全て分類および回帰木(CART)の変形およびアンサンブルである。主な違いは、学習後のデータを訓練データセットから最もよく分離する複数の木を構築するプロセスにある。
【0136】
図18は、図17の最良性能の機械学習アルゴリズムExtreme Gradient Boosting Machine 1(xGBM1)の混同行列を示す表である。混同行列は、訓練中に使用されなかっ
たデータ(訓練中に使用されなかった200個の新事例)を分類するときに欠損データ置換を使用した自動分類プロシージャの出力と、これらの新事例に対する人間のエキスパートオピニオンとを比較することによって得られる。この例において、以下のクラスが用いられる。
【0137】
- 電力網アセットが正常に動作することを示す第1のクラス(i)、
- 電力網アセットが何らかのアテンションを必要とすることを示す第2のクラス(ii)
- 電力網アセットが即時のアテンションを必要とすることを示す第3のクラス(iii)
機械学習アルゴリズムは、複雑な電力変圧器データを分析するとき、エンジニアリングモデルを使用しなくても、優れた精度を示した。言い換えれば、これらのアルゴリズムには、所定のパラメータが許容可能な範囲内または「正常」レベル外にあることを示す参照レベルまたはフラグを与える必要はない。12個の機械学習モデルには、変圧器の人間のエキスパートが過去に確立したクラス(i)、(ii)および(iii)の間の最終分類のみが与えられた。
【0138】
最良性能のアルゴリズム(xGBM1)は、訓練中に使用されなかった200個の新事例を分析する場合、97%に近い精度を示した。このアルゴリズムは、1つの第(i)ク
ラスの事例を第(iii)クラスの事例として「不正確」だが保守的に誤分類し、3つの第(ii)クラスの事例を第(i)クラスの事例として誤分類し、3つの第(ii)クラスの事例を第(iii)クラスの事例として誤分類した。第(iii)クラスの事例を誤分類しなかった。実際には、有意な数の誤りは、合計200個の事例の中、3つの第(ii)クラスの事例を第(i)クラスの事例として誤分類した(すなわち、人間のエキスパートが何らかのアテンションを必要とすると考えた電力変圧器を通常の電力変圧器として分類した)ことである。すなわち、3/200=1.5%という実際の誤りをもたらした。他の誤りは、保守的であり、可能な故障のような好ましくない状況を引き起こさない。
【0139】
状態分類装置による自動オンラインまたはオフライン状態分類に自動分類プロシージャおよび欠損データ置換プロシージャを使用する
自動分類プロシージャの適応結果(1つ以上の異なるデータ置換プロシージャを用いて複数の機械学習アルゴリズムを訓練することを含み得る)を用いて、電力変圧器または別の電力網アセットの状態分類を行ってもよい。例えば、自動分類モジュール31によって実行される自動分類プロシージャは、いくつかの訓練された機械学習技術のうち、最良の性能を示した1つに依存してもよい。電力網アセット状態分類を行うために自動分類プロシージャを適応させる際に得られた付加情報は、状態分類装置によって使用されてもよい。
【0140】
図19は、実施形態に従う状態分類装置170を示すブロック図である。状態分類装置170は、一般的に上述したように動作する、自動分類モジュール31および欠損データ置換モジュール32を含んでもよい。しかしながら、状態分類装置170は、自動分類モジュール31により実行された機械学習アルゴリズムの訓練中に決定された付加情報を利用してもよい。例えば、欠損データ置換モジュール32は、いくつかの異なる欠損データ置換プロシージャ171、172、173を実行するように動作可能である。異なる欠損データ置換プロシージャ171、172、173を実行することによって、異なる欠損パラメータ値の異なる代替値SPV、SPVおよびSPVを生成してもよい。
【0141】
異なる欠損データ置換プロシージャ171、172、173の各々は、上記で詳細に説明したように、
- デフォルト値を使用すること、
- 統計分布の平均値または中央値を使用すること、
- 統計分布に従って決定されたランダム値を使用すること、
- ハード値補定、
- パラメータ相関に基づいて決定された値を使用すること、
からなる群から選択されてもよい。欠損データ置換プロシージャ171、172、173のうちの少なくとも1つは、(例えば、デフォルト値、推測値、平均値または中央値を用いた)単一代入法(Single value imputation)であってもよい。少なくとも1つの他の
欠損データ置換プロシージャ171、172、173は、より複雑なプロシージャであってもよく、例えば、特徴相関、多重代入法(Multiple Imputation)、または確率的信頼
伝播を使用してもよい。
【0142】
所与のパラメータに対してどの欠損データ置換プロシージャ欠損データ置換プロシージャ171、172、173が呼び出されるかは、異なる欠損データ置換プロシージャ171、172、173の性能および/または他のパラメータが利用可能であるかに依存してもよい。例えば、特徴相関は、いくつかのパラメータ値に対して良好な性能を示し得るが、いくつかの高相関したパラメータ値が電力網アセットに対して利用不可能であり、これらの高相関したパラメータ値が電力網アセットに対して利用可能であるパラメータ値と殆どまたは全く相関しない場合に、実行可能な選択肢ではない。
【0143】
追加的または代替的に、実施形態に従う方法および状態分類装置は、所与の電力網アセットに対して利用不可能なパラメータ値に応じて、状態分類の期待される精度に関する情報を提供するように動作してもよい。期待される精度または信頼水準は、ユーザインターフェイスまたはネットワークインターフェイスを介して出力されてもよい。
【0144】
図20は、異なるパラメータ値が利用可能ではなく、欠損データ置換プロシージャを用いて置換されなければならないときに生じる情報ゲイン(ジニ指数(Gini index)によって測定される)を表すグラフ180を示す図である。グラフ180の例示的なデータにおいて、絶縁耐力(DS)または油に溶解したガスCのガス濃度(C)に対して代替値を用いた場合、ジニ指数が大きくなる。その理由は、欠損データ置換プロシージャが精度または信頼水準を低下させる情報を追加したため、情報ゲインが大きくなるからである。油に溶解したガスCHおよびCのガス濃度(CHおよびC)に代替値を用いる場合、ジニ指数が小さくなる。その理由は、欠損データ置換プロシージャが、高い精度または信頼水準を反映するわずかな情報のみを追加したため、情報ゲインが小さくなるからである。
【0145】
分散型状態分類システム
上述したように、状態分類装置30によって行われた状態分類の結果は、状態分類装置30のユーザインターフェイス35を介してローカルに出力されてもよい。本明細書に開示される技術は、広域ネットワークまたはインターネット37を介して互いに通信する複数の空間的に分離されたコンピューティング装置を含むシステムにも使用されてもよい。
【0146】
図21は、状態分類装置30を備えた電力網10を示す概略ブロック図である。状態分類装置30は、サーバ、クラウドコンピュータ、または他の計算設備によって実装されてもよい。端末装置38、39は、ポータブルコンピュータ、据置型コンピュータまたは他のモバイル通信装置(例えば、タブレットまたはスマートフォン)であってもよい。エンジニアは、端末装置38、39を用いて、広域ネットワークまたはインターネット37を介して状態分類装置30と通信してもよい。自動分類プロシージャと欠損データ置換プロシージャとの組み合わせによる状態分類に関する情報は、広域ネットワークまたはインターネット37を介して端末装置38、39に送信され、出力される。
【0147】
自動分類プロシージャの変更に対応するための欠損データ置換プロシージャの使用
上記で既に説明したように、電力網アセットに対して利用不可能な1つ以上のパラメータ値の代替値を、様々な理由によって、例えば、自動分類プロシージャの入力として必要とされるパラメータ値のためのセンサが無いことによって、生成する必要がある。
【0148】
監視されている電力網アセットの同一のパラメータ値の全体または少なくとも大部分の代替値を生成するために欠損データ置換プロシージャが適用され得る1つの例示的なシナリオは、電力網アセットの設置から可能には随分後に、新たなパラメータ値を入力として使用するように、自動分類プロシージャが強化されるということである。例えば、新たなパラメータ値が状態分類に関連性を有していることが、電力変圧器または他の電力網アセットが建築および設置された後に発見される可能性がある。この新たなパラメータ値を測定可能なセンサを、設置された電力網アセットに追加導入できない可能性がある。この場合、欠損データ置換プロシージャを用いて、この新たなパラメータ値の代替値を生成して、その後、自動分類プロシージャの入力に組み入れてもよい。
【0149】
そのような新たなパラメータを生成するための適切な欠損データ置換プロシージャは、状態分類に対する新たなパラメータの影響に関する経験的(エンピリカル)な情報が殆ど利用できなくても、実験室の実験または物理モデリングによって得られてもよい。
【0150】
図22は、一実施形態に従う方法190を示すフローチャートである。ステップ191において、上述したように、電力網アセットの状態分類に使用される自動分類プロシージャを構成する。ステップ192において、欠損データ置換プロシージャと共に、自動分類プロシージャを使用して電力網アセットの状態分類を行う。ステップ193において、新たなパラメータ値を入力として使用するように、自動分類プロシージャを変更する。新たなパラメータ値は、状態分類を行う電力網アセットのほんの少数から測定されてもよく、またはどれからも測定されなくてもよい。電力網アセットからの欠損しているパラメータ値を補償するために適用される欠損データ置換プロシージャは、この問題を軽減する。ステップ194において、入力として新たなパラメータ値を要求する自動分類プロシージャは、電力網アセットのうちのいくつかまたは全てさえもの新たなパラメータ値の代替値を提供する欠損データ置換プロシージャと組み合わせにおいて使用される。本明細書に説明したように、パラメータ値として代替値を用いなければならないときにあっても、適切な欠損データ置換プロシージャの使用は、高精度な状態分類を可能とする。
【0151】
実施形態の列挙
以下の実施形態が、開示される。
【0152】
実施形態1:
電力網用の方法であって、
電子装置を用いて、電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行することを含み、
自動分類プロシージャは、パラメータ値のセットを入力として用いて、状態分類を行い、
パラメータ値のセットのうちサブセットのみが電力網アセットに利用することができ、セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値が電力網アセットに対して利用不可能であり、
電子装置を用いて、少なくとも1つの代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行することと、
パラメータ値のサブセットと少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを自動分類プロシージャの入力として用いて、電力網アセットの状態分類を取得することとを含む。
【0153】
実施形態2:
欠損データ置換プロシージャは、電力網アセットの動作中にオンライン監視が実行されていないパラメータ値の代替値を決定するように実行される、実施形態1に記載の方法。
【0154】
実施形態3:
欠損データ置換プロシージャは、電力網アセットの製造または設置後に、自動分類プロシージャの入力に組み込まれたパラメータ値の代替値を決定するように実行される、実施形態1または実施形態2に記載の方法。
【0155】
実施形態4:
欠損データ置換プロシージャは、電力網アセットの動作状態に依存しないパラメータ値の代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
実施形態5:
欠損データ置換プロシージャは、電力網アセットの年齢の代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態6:
欠損データ置換プロシージャは、電力網アセットの電圧級別、パワー、または重要度等級の代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施形態7:
欠損データ置換プロシージャは、電力網アセットのスルーフォルトの代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
実施形態8:
電力網アセットは、絶縁システムを備え、
欠損データ置換プロシージャは、絶縁システムに関連する少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
実施形態9:
絶縁システムは、油絶縁システムを含む、実施形態8に記載の方法。
【0161】
実施形態10:
欠損データ置換プロシージャは、油界面張力、油絶縁耐力、油力率、油絶縁システムの絶縁油中の水分、および油絶縁システムのシステム種類からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態9に記載の方法。
【0162】
実施形態11:
欠損データ置換プロシージャは、油絶縁システムの絶縁油に溶解した少なくとも1つのガスの濃度の代替値を決定するように実行される、実施形態9または実施形態10に記載の方法。
【0163】
実施形態12:
少なくとも1つのガスは、H、CH、C、C、C、CO、CO、O、およびNからなる群から選択される、実施形態11に記載の方法。
【0164】
実施形態13:
絶縁システムは、ガス絶縁システムを含む、実施形態8から12のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
実施形態14:
電力網アセットは、巻線を備え、
欠損データ置換プロシージャは、巻線の少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
実施形態15:
欠損データ置換プロシージャは、巻線力率、巻線容量、および巻線温度からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態14に記載の方法。
【0167】
実施形態16:
電力網アセットは、ブッシングを備え、
欠損データ置換プロシージャは、ブッシングの少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
実施形態17:
欠損データ置換プロシージャは、ブッシングのブッシング力率、ブッシング容量およびブッシング種類からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態16に記載の方法。
【0169】
実施形態18:
電力網アセットは、冷却システムを備え、
欠損データ置換プロシージャは、冷却システムの少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
実施形態19:
欠損データ置換プロシージャは、冷却システムの状態および冷却システムの冷却システム種類からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態18に記載の方法。
【0171】
実施形態20:
電力網アセットは、負荷タップ切換器を備え、
欠損データ置換プロシージャは、負荷タップ切換器の少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
実施形態21:
欠損データ置換プロシージャは、負荷タップ切換器の状態または負荷タップ切換器の負荷タップ切換器種類の代替値を決定するように実行される、実施形態20に記載の方法。
【0173】
実施形態22:
欠損データ置換プロシージャは、電力網アセットに接続された負荷の代替値を決定するように実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
実施形態23:
電力網アセットは、変圧器である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
実施形態24:
変圧器は、電力変圧器である、実施形態23に記載の方法。
【0176】
実施形態25:
変圧器は、配電変圧器である、実施形態23に記載の方法。
【0177】
実施形態26:
変圧器は、高圧変圧器である、実施形態25に記載の方法。
【0178】
実施形態27:
電力網アセットは、発電機である、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態28:
欠損データ置換プロシージャが実行されているときに、状態分類の精度を示す信頼情報を決定することと、
信頼情報を出力することとをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
実施形態29:
電子装置を用いて、複数の欠損データ置換プロシージャから欠損データ置換プロシージ
ャを選択することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
実施形態30:
欠損データ置換プロシージャは、パラメータ値のセットのうち、電力網アセットに対して利用不可能なパラメータ値に応じて選択される、実施形態29に記載の方法。
【0182】
実施形態31:
少なくとも2つの異なる欠損データ置換プロシージャは、セットのうち、電力網アセットに対して利用不可能な少なくとも2つの異なるパラメータ値に対して実行される、実施形態29または30に記載の方法。
【0183】
実施形態32:
複数の欠損データ置換プロシージャのうち、電力網アセットの状態分類の精度を最大化する1つが選択される、実施形態29から31のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
実施形態33:
パラメータ値のセットからの第1のパラメータ値および第2のパラメータ値は、電力網アセットに対して利用不可能であり、
第1の欠損データ置換プロシージャは、第1のパラメータ値の第1の代替パラメータ値を自動的に決定するように実行され、
第2の欠損データ置換プロシージャは、第2のパラメータ値の第2の代替パラメータ値を自動的に決定するように実行され、
第2の欠損データ置換プロシージャは、第1の欠損データ置換プロシージャとは異なる、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
実施形態34:
第1の欠損データ置換プロシージャを用いて第1の代替パラメータ値および第2の代替パラメータ値の両方を決定する場合に比べて、第2の欠損データ置換プロシージャを実行して第2の代替パラメータ値を決定することによって、状態分類の精度が高くなる、実施形態33に記載の方法。
【0186】
実施形態35:
自動分類プロシージャは、機械学習アルゴリズムを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態36:
自動分類プロシージャは、複数の自動分類プロシージャから選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
実施形態37:
複数の自動分類プロシージャは、線形アルゴリズム、非線形アルゴリズム、およびアンサンブルアルゴリズムからなる群から選択されるプロシージャを含む、実施形態36に記載の方法。
【0189】
実施形態38:
複数の自動分類プロシージャは、一般線形回帰(GLM)および線形判別分析(LDA)からなる群から選択される線形アルゴリズムを含む、実施形態36または実施形態37に記載の方法。
【0190】
実施形態39:
複数の自動分類プロシージャは、分類および回帰木(CART)、ナイーブベイズアルゴリズム(NB)、ベイジアンネットワーク、K近傍法(KNN)、およびサポートベクトルマシン(SVM)からなる群から選択される非線形アルゴリズムを含む、実施形態36から38のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態40:
複数の自動分類プロシージャは、ランダムフォレスト、ツリーバギング、極度勾配ブースティングマシン、および人工ニューラルネットワークからなる群から選択されるアンサンブルアルゴリズムを含む、実施形態36から39のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態41:
欠損データ置換プロシージャは、以下のプロシージャ、すなわち、デフォルト値を使用するプロシージャ、統計分布の平均値または中央値を使用するプロシージャ、統計分布に従って決定されたランダム値を使用するプロシージャ、ハード値補定、パラメータ多変量相関に基づいて決定された値を使用するプロシージャからなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施形態42:
欠損データ置換プロシージャは、多変量回帰またはピアソン相関を用いて、少なくとも1つの代替パラメータ値を決定することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態43:
電子装置を用いて、複数のセンサから、電力網アセットのパラメータ値のサブセットの全部または一部を受信することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施形態44:
データは、電力網アセットの動作中に受信され、
自動分類プロシージャは、電力網アセットの動作中にオンラインで実行される、実施形態43に記載の方法。
【0196】
実施形態45:
自動分類プロシージャは、電力網アセットを少なくとも3つの異なるクラスのうちの1つに割り当てるように動作する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施形態46:
少なくとも3つの異なるクラスは、電力網アセットが正常に動作することを示す第1のクラスと、電力網アセットがアテンションを必要とすることを示す第2のクラスと、電力網アセットが即時のアテンションを必要とすることを示す第3のクラスとを含む、実施形態45に記載の方法。
【0198】
実施形態47:
電子装置であって、
電力網アセットに関連付けられたデータを受信するインターフェイスと、
電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを実行するように構成された処理装置とを含み、自動分類プロシージャは、パラメータ値のセットを入力として使用するように動作可能であり、
パラメータ値のセットのうちサブセットのみが電力網アセットに利用することができ、セットのうちの少なくとも1つのパラメータ値が電力網アセットに対して利用不可能であ
り、
処理装置は、
少なくとも1つの代替パラメータ値を決定するように欠損データ置換プロシージャを実行し、
パラメータ値のサブセットと少なくとも1つの代替パラメータ値との組み合わせを自動分類プロシージャの入力として用いて、電力網アセットの状態分類を取得するようにさらに構成される。
【0199】
実施形態48:
処理装置は、広域ネットワークまたはインターネットを介して、電力網アセットの状態分類の結果を出力するようにさらに構成される、実施形態47に記載の電子装置。
【0200】
実施形態49:
電子装置は、実施形態1から46のいずれか1つに記載された方法を実行するように構成される、実施形態47または48に記載の電子装置。
【0201】
実施形態50:
電力網であって、
電力網アセットと、
実施形態46から48のいずれか1つに記載された、電力網アセットの状態分類を行う電子装置とを含む。
【0202】
実施形態51:
電力網アセットは、変圧器、特に、電力変圧器、配電変圧器、または高圧変圧器である、実施形態50記載の電力網。
【0203】
実施形態52:
電力網アセットは、発電機である、実施形態50記載の電力網。
【0204】
実施形態53:
電子装置のプロセッサによって実行されると、電子装置に実施形態1から46のいずれか1つに記載された方法を実行させる命令を含む機械可読命令コード。
【0205】
実施形態54:
電力網アセットの状態分類を行うための自動分類プロシージャを提供する方法であって、
パラメータ値のセットを入力として用いて状態分類を行うように、機械学習アルゴリズムを訓練することを含み、
訓練は、複数の電力網アセットに関連付けられた訓練データを用いて実行され、
機械学習アルゴリズムを訓練する時に、欠損データ置換プロシージャを実行することを含み、
欠損データ置換プロシージャは、パラメータ値のセットのうち、訓練データに欠損している少なくとも1つのパラメータ値の代替パラメータ値を生成する。
【0206】
実施形態55:
機械学習アルゴリズムを訓練することは、訓練データを用いて複数の機械学習アルゴリズムを訓練することを含み、
方法は、
訓練の後に性能評価を実行することと、
性能評価に基づいて、状態分類に使用される複数の機械学習アルゴリズムのうちの少
なくとも1つを選択することとをさらに含む、実施形態54に記載の方法。
【0207】
実施形態56:
欠損データ置換プロシージャを実行することは、機械学習アルゴリズムを訓練する時に、複数の欠損データ置換プロシージャを実行することを含み、
方法は、
訓練の後に性能評価を実行することと、
性能評価に基づいて、状態分類に使用される複数の異なる欠損データ置換プロシージャのうちの少なくとも1つを選択することとをさらに含む、実施形態54または実施形態55に記載の方法。
【0208】
実施形態57:
性能評価は、訓練データと異なる試験データを用いて実行される、実施形態55または実施形態56に記載の方法。
【0209】
実施形態58:
機械学習アルゴリズムは、教師あり学習を用いて訓練される、実施形態54から57のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
実施形態59:
欠損データ置換プロシージャは、複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットの年齢の代替値を決定するように実行される、実施形態54から58のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
実施形態60:
欠損データ置換プロシージャは、複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットの電圧級別、パワー、または重要度等級の代替値を決定するように実行される、実施形態54から59のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
実施形態61:
欠損データ置換プロシージャは、複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットのスルーフォルトの代替値を決定するように実行される、実施形態54から60のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
実施形態62:
複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットは、絶縁システムを備え、
欠損データ置換プロシージャは、絶縁システムに関連する少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態54から61のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
実施形態63:
絶縁システムは、油絶縁システムを含む、実施形態62に記載の方法。
【0215】
実施形態64:
欠損データ置換プロシージャは、油界面張力、油絶縁耐力、油力率、油絶縁システムの絶縁油中の水分、および油絶縁システムのシステム種類からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態63に記載の方法。
【0216】
実施形態65:
欠損データ置換プロシージャは、油絶縁システムの絶縁油に溶解した少なくとも1つのガスの濃度の代替値を決定するように実行される、実施形態63または実施形態64に記載の方法。
【0217】
実施形態66:
少なくとも1つのガスは、H、CH、C、C、C、CO、CO、O、およびNからなる群から選択される、実施形態65に記載の方法。
【0218】
実施形態67:
絶縁システムは、ガス絶縁システムを含む、実施形態62から66のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
実施形態68:
複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットは、巻線を備え、
欠損データ置換プロシージャは、巻線の少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態54から67のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
実施形態69:
欠損データ置換プロシージャは、巻線力率、巻線容量、および巻線温度からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態68に記載の方法。
【0221】
実施形態70:
複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットは、ブッシングを備え、
欠損データ置換プロシージャは、ブッシングの少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態54から69のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
実施形態71:
欠損データ置換プロシージャは、ブッシングのブッシング力率、ブッシング容量およびブッシング種類からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態70に記載の方法。
【0223】
実施形態72:
複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットは、冷却システムを備え、
欠損データ置換プロシージャは、冷却システムの少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態54から71のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
実施形態73:
欠損データ置換プロシージャは、冷却システムの状態および冷却システムの冷却システム種類からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態72に記載の方法。
【0225】
実施形態74:
複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットは、負荷タップ切換器を備え、
欠損データ置換プロシージャは、負荷タップ切換器の少なくとも1つのパラメータの代替値を決定するように実行される、実施形態54から73のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
実施形態75:
欠損データ置換プロシージャは、負荷タップ切換器の状態または負荷タップ切換器の負荷タップ切換器種類の代替値を決定するように実行される、実施形態74に記載の方法。
【0227】
実施形態76:
欠損データ置換プロシージャは、複数の電力網アセットのうちの少なくとも1つの電力網アセットに接続された負荷の代替値を決定するように実行される、実施形態54から75に記載の方法。
【0228】
実施形態77:
機械学習アルゴリズムは、線形アルゴリズム、非線形アルゴリズム、およびアンサンブルアルゴリズムからなる群から選択される、実施形態54から76に記載の方法。
【0229】
実施形態78:
機械学習アルゴリズムは、一般線形回帰(GLM)および線形判別分析(LDA)からなる群から選択される線形アルゴリズムである、実施形態77に記載の方法。
【0230】
実施形態79:
機械学習アルゴリズムは、分類および回帰木(CART)、ナイーブベイズアルゴリズム(NB)、ベイジアンネットワーク、K近傍法(KNN)、およびサポートベクトルマシン(SVM)からなる群から選択される非線形アルゴリズムである、実施形態77に記載の方法。
【0231】
実施形態80:
機械学習アルゴリズムは、ランダムフォレスト、ツリーバギング、極度勾配ブースティングマシン、および人工ニューラルネットワークからなる群から選択されるアンサンブルアルゴリズムである、実施形態77に記載の方法。
【0232】
実施形態81:
欠損データ置換プロシージャは、以下のプロシージャ、すなわち、デフォルト値を使用するプロシージャ、統計分布の平均値または中央値を使用するプロシージャ、統計分布に従って決定されたランダム値を使用するプロシージャ、ハード値補定、パラメータ多変量相関に基づいて決定された値を使用するプロシージャからなる群から選択される、実施形態54から80のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
実施形態82:
欠損データ置換プロシージャは、多変量回帰またはピアソン相関を用いて、少なくとも1つの代替パラメータ値を決定することを含む、実施形態54から81のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
実施形態83:
訓練データに基づいて、多変量相関またはピアソン相関を決定することをさらに含む、実施形態82に記載の方法。
【0235】
実施形態84:
複数の電力網アセットは、複数の変圧器を含む、実施形態54から83のいずれか1つに記載の方法。
【0236】
実施形態85:
複数の変圧器は、電力変圧器、配電変圧器、または高圧変圧器を含む、実施形態84に記載の方法。
【0237】
実施形態86:
訓練データは、複数の変圧器の履歴動作パラメータを含む、実施形態84または実施形態85に記載の方法。
【0238】
実施形態87:
電子コンピューティング装置によって実行されると、コンピューティング装置に実施形態54から86のいずれか1つに記載された方法を実行させる命令を含む機械可読命令コード。任意に、機械可読命令コードは、有形の記録媒体に記録される。
【0239】
例示的な効果およびさらなる変形例
本発明の実施形態に従う方法、装置、電力網、およびコンピュータ可読命令コードは、必要なパラメータ値の全てが利用できない電力網アセットの状態分類に良好な分類結果を提供する一方で、多くの入力を処理し得る状態分類ツールの必要性に対処する。また、実施形態に従う方法、装置、電力網、およびコンピュータ可読命令コードは、欠損しているデータ置換戦略が得られた状態分類結果の信頼水準に与える影響に関する情報を提供してもよい。
【0240】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、他の変形および変更が可能である。方法、装置、電力網、およびコンピュータ可読命令コードは、電力変圧器以外の電力網アセットの状態分類に使用されてもよい。本明細書に詳細に説明したものとは異なる機械学習モデルおよび/または欠損データ置換プロシージャは、さらなる実施形態において使用されてもよい。
【0241】
当業者なら理解できるように、本明細書に開示された実施形態は、理解をよくするために提供され、単なる例示である。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者は、様々な修正および変更を想到できるであろう。
【0242】
図面および前述の説明において本発明を詳細に説明したが、これらの説明は、例示的なものであり、限定的なものではない。開示された実施形態に対する変形は、図面、明細書および添付の特許請求の範囲に対する検討から、当業者によって理解され、達成されてもよい。請求項において、「含む(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除するものではない
。特定の要素またはステップが別個の請求項に列挙されていることは、これらの要素またはステップの組み合わせが有利に使用されないことを示しておらず、具体的には、請求項の依存性に加えて、任意のさらなる請求項の意味のある組み合わせを含むと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
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