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特許7545468混合C4類からの高純度イソブタンおよびブテン-1の共生産
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】混合C4類からの高純度イソブタンおよびブテン-1の共生産
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/04 20060101AFI20240828BHJP
   C07C 9/12 20060101ALI20240828BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20240828BHJP
   C07C 11/09 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C9/12
C07C11/08
C07C11/09
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022521103
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020054364
(87)【国際公開番号】W WO2021071815
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】62/911,541
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522005594
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】アルメリング, マルティヌス, ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】バリアス, ロゼット
(72)【発明者】
【氏名】ルモワンヌ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】スコット, マイケル, ジョン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-179603(JP,A)
【文献】特表2012-501330(JP,A)
【文献】特表2011-528655(JP,A)
【文献】特開2004-123714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010451(US,A1)
【文献】米国特許第04797133(US,A)
【文献】特開昭60-051130(JP,A)
【文献】特開昭58-013694(JP,A)
【文献】特開平10-231256(JP,A)
【文献】特開2007-176942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/04
C07C 9/12
C07C 11/08
C07C 11/09
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度イソブタンストリームおよび高純度1-ブテンストリームを共生産するためのプロセスであって、上記プロセスは、
それぞれイソブテン、イソブタン、1-ブテン、および2-ブテンを含む第1の混合C4ストリームおよび第2の混合C4ストリームを提供する工程であって、上記第1の混合C4ストリームは上記第2の混合C4ストリームよりもイソブタン濃度が高い、工程;
上記第1の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤(Selectivator)であるメタノールとを第1の反応系に供給して、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換する工程;
上記第2の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤であるメタノールとを第2の反応系に供給して、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換する工程;
上記第1の反応系からのエフルエントを、水洗系を有する第1の分離系で分離して、1-ブテン、2-ブテン、イソブタンを含む第1の軽質ストリームと、第1のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第1の重質ストリームとを回収する工程;
上記第2の反応系からのエフルエントを、水洗系を有する第2の分離系で分離して、1-ブテン、2-ブテン、およびイソブタンを含む第2の軽質ストリームと、第2のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第2の重質ストリームとを回収する工程;
上記第1および第2のメタノール+水ストリームをメタノール回収系に供給してメタノールを水から分離し、該メタノールの少なくとも一部を上記第1および第2の反応系のいずれかまたは両方へ返送する工程;
上記第2の軽質ストリームを分離系に供給して、イソブタン含有ストリームと、1-ブテンストリームと、2-ブテンを含む第1の重質C4ストリームとを回収する工程;
上記イソブタン含有ストリームおよび上記第1の軽質ストリームを分離系に供給して、イソブタンストリームと、2-ブテンを含む第2の重質C4ストリームとを回収する工程
を有するプロセス。
【請求項2】
上記イソブタンストリームからジメチルエーテルを分離する工程をさらに有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
上記イソブタンストリームは純度が少なくとも99重量%であり、上記1-ブテンストリームは純度が少なくとも99重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
炭化水素ストリームを流動接触分解プロセスまたは残油流動接触分解プロセスに供給し、上記第1の混合C4ストリームを回収する工程をさらに有し、上記第1の混合C4ストリームは、イソブタン濃度が少なくとも20重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
炭化水素ストリームを水蒸気分解プロセスに供給し、上記第2の混合C4ストリームを回収する工程をさらに有し、上記第2の混合C4ストリームは、イソブタン濃度が5重量%未満である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
上記第1の混合C4ストリームは、イソブテン濃度が25重量%未満であり、上記第2の混合C4ストリームは、イソブテン濃度が少なくとも30重量%である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
高純度イソブタンストリームおよび高純度1-ブテンストリームを共生産するためのシステムであって、上記システムは、
それぞれイソブテン、イソブタン、1-ブテン、および2-ブテンを含む第1の混合C4ストリームおよび第2の混合C4ストリームであって、上記第1の混合C4ストリームは上記第2の混合C4ストリームよりもイソブタン濃度が高い、第1の混合C4ストリームおよび第2の混合C4ストリーム;
第1のメタノールストリームおよび第2のメタノールストリーム;
上記第1の混合C4ストリームおよび上記第1のメタノールストリームを受け取り、かつ上記第1の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤(Selectivator)であるメタノールとを反応させて、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換するよう構成された第1の反応系;
上記第2の混合C4ストリームおよび上記第2のメタノールストリームを受け取り、かつ上記第2の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤であるメタノールとを反応させて、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換するよう構成された第2の反応系;
上記第1の反応系からのエフルエントを分離して、1-ブテン、2-ブテン、イソブタンを含む第1の軽質ストリームと、第1のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第1の重質ストリームとを回収するための、水洗系を有する第1の分離系;
上記第2の反応系からのエフルエントを分離して、1-ブテン、2-ブテン、イソブタンを含む第2の軽質ストリームと、第2のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第2の重質ストリームとを回収するための、水洗系を有する第2の分離系;
上記第1および第2のメタノール+水ストリームを受け取ってメタノールを水から分離するための共通のメタノール回収系、ならびに該メタノールの少なくとも一部を上記第1および第2の反応系のいずれかまたは両方へ返送するためのフローライン;
上記第2の軽質ストリームを受け取り、イソブタン含有ストリームと、1-ブテンストリームと、2-ブテンを含む第1の重質C4ストリームとを回収するための第1の軽質分離系;
上記第1の軽質ストリームを受け取り、イソブタンストリームと、2-ブテンを含む第2の重質C4ストリームとを回収するための第2の軽質分離系
を有するシステム。
【請求項8】
上記第1および第2の重質C4ストリームを混合するための第1の混合装置、ならびに上記第1および第2の重質ストリームを混合するための第2の混合装置をさらに有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
上記第1および第2の反応系は、それぞれイソブテン二量体を生成するよう構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
上記第1および第2の反応系は、それぞれメチルtert-ブチルエーテルを生成するよう構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
上記第1の反応系は、固定床反応器、または直列もしくは並列である2つ以上の固定床反応器を有し、それに続いて触媒蒸留反応器を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
上記第2の反応系は、固定床反応器、または直列もしくは並列である2つ以上の固定床反応器を有し、それに続いて触媒蒸留反応器を有する、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中の実施形態は、イソブタンおよび1-ブテンを共生産するためのプロセスおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
混合C4ストリームから高純度イソブテンストリームを生産する様々なプロセスが開示されている。その多くでは、イソブテンをエーテル化してメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を生成し、これを残りのC4類から分離してから逆分解することで、純粋なイソブテンストリームを形成できる。このようなプロセスは、例えば特に特許文献1および特許文献2に開示されたものであってもよい。
【0003】
イソブテンをMTBEとして分離することで、ブテン類(1-ブテンおよび2-ブテン)を分離および回収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5628880号明細書
【文献】米国特許第5321163号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の知る限り、これまでに高純度イソブタンストリームおよび高純度1-ブテンストリームを共生産するプロセスが提供されたことはない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本明細書中の実施形態は、高純度イソブタンストリームおよび高純度1-ブテンストリームを共生産するためのプロセスを対象とする。上記プロセスは、それぞれイソブテン、イソブタン、1-ブテン、および2-ブテンを含む第1の混合C4ストリームおよび第2の混合C4ストリームを提供する工程であって、上記第1の混合C4ストリームは上記第2の混合C4ストリームよりもイソブタン濃度が高い、工程を有していてもよい。上記第1の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤(Selectivator)であるメタノールとを第1の反応系に供給して、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換してもよい。上記第2の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤であるメタノールとを第2の反応系に供給して、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換してもよい。次いで、上記プロセスは、上記第1の反応系からのエフルエントを、水洗系を有する第1の分離系で分離して、1-ブテン、2-ブテン、イソブタンを含む第1の軽質ストリームと、第1のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第1の重質ストリームとを回収する工程を有していてもよい。さらに、上記方法は、上記第2の反応系からのエフルエントを、水洗系を有する第2の分離系で分離して、1-ブテン、2-ブテン、およびイソブタンを含む第2の軽質ストリームと、第2のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第2の重質ストリームとを回収する工程を有する。次いで、上記第1および第2のメタノール+水ストリームをメタノール回収系に供給してメタノールを水から分離し、該メタノールの少なくとも一部を上記第1および第2の反応系のいずれかまたは両方へ返送してもよい。上記第2の軽質ストリームを分離系に供給して、イソブタン含有ストリームと、1-ブテンストリームと、n-ブタン類および2-ブテンを含む第1の重質C4ストリームとを回収してもよい。上記イソブタン含有ストリームおよび上記第1の軽質ストリームを分離系に供給して、イソブタンストリームと、n-ブタン類および2-ブテンを含む第2の重質C4ストリームとを回収してもよい。
【0007】
別の態様において、本明細書中に開示される実施形態は、高純度イソブタンストリームおよび高純度1-ブテンストリームを共生産するためのシステムに関する。上記システムは、それぞれイソブテン、イソブタン、1-ブテン、および2-ブテンを含む第1の混合C4フィードストリームおよび第2の混合C4フィードストリームを有していてもよい。上記第1の混合C4ストリームは上記第2の混合C4ストリームよりもイソブタン濃度が高くてもよい。また、上記システムは、第1のメタノールフィードストリームおよび第2のメタノールフィードストリームを有する。第1の反応系は、上記第1の混合C4ストリームおよび上記第1のメタノールストリームを受け取り、かつ上記第1の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤(Selectivator)であるメタノールとを反応させて、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換するよう構成されている。第2の反応系は、上記第2の混合C4ストリームおよび上記第2のメタノールストリームを受け取り、かつ上記第2の混合C4ストリームと、反応物質または選択的活性剤であるメタノールとを反応させて、そこに含まれるイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルまたはイソブテン二量体に変換するよう構成されている。さらに、上記システムは、上記第1の反応系からのエフルエントを分離して、1-ブテン、2-ブテン、イソブタンを含む第1の軽質ストリームと、第1のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第1の重質ストリームとを回収するための、水洗系を有する第1の分離系、ならびに上記第2の反応系からのエフルエントを分離して、1-ブテン、2-ブテン、イソブタンを含む第2の軽質ストリームと、第2のメタノール+水ストリームと、上記メチルtert-ブチルエーテルまたは上記イソブテン二量体を含む第2の重質ストリームとを回収するための、水洗系を有する第2の分離系を有する。上記第1および第2のメタノール+水ストリームを受け取ってメタノールを水から分離するための共通のメタノール回収系、ならびに該メタノールの少なくとも一部を上記第1および第2の反応系のいずれかまたは両方へ返送するためのフローライン;上記第2の軽質ストリームを受け取り、イソブタン含有ストリームと、1-ブテンストリームと、n-ブタン類および2-ブテンを含む第1の重質C4ストリームとを回収するための第1の軽質分離系が設けられている。第2の軽質分離系は、上記第1の軽質ストリームを受け取り、イソブタンストリームと、n-ブタン類および2-ブテンを含む第2の重質C4ストリームとを回収するよう構成されている。
【0008】
以下の説明および添付した特許請求の範囲から、他の態様および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書中の実施形態に係る、イソブタンおよび1-ブテンを共生産するためのシステムの簡略化したプロセスフロー図である。
図2】本明細書中の実施形態に係る、イソブタンおよび1-ブテンを共生産するためのシステムの簡略化したプロセスフロー図である。
図3】本明細書中の実施形態に係る、イソブタンおよび1-ブテンを共生産するためのシステムの簡略化したプロセスフロー図である。
図4】本明細書中の実施形態に係る、イソブタンおよび1-ブテンを共生産するためのシステムの簡略化したプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中の実施形態は、イソブタンおよび1-ブテンを共生産するためのプロセスおよびシステムに関する。より具体的には、本明細書中の実施形態は、混合C4ストリームから高純度のイソブタンおよび1-ブテンの各ストリームを生産することを対象とする。さらにより具体的には、本明細書中の実施形態は、RFCC/FCCおよび/またはスチームクラッカーユニット(SCU)由来の混合C4原料から高純度の1-ブテンおよびイソブタンの各ストリームを同時生産することを対象とする。
【0011】
流動接触分解(FCC)装置、残油流動接触分解(RFCC)装置、スチームクラッカー、熱分解装置(蒸気を用いるまたは用いない熱分解)、および混合C4類を生産する他の各種方法等、各種の上流生産プロセスを用いてC4ストリームを生成できる。これらの装置から生産される混合C4ストリームは、特にイソブテン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、n-ブタン、およびブタジエン類の成分を含んでいてもよい。
【0012】
これらの上流C4生産系では、類似の化合物が生産される一方、各種C4化合物の混合物の組成が異なる各ストリームが得られる。例えば、FCCまたはRFCCによる混合C4類のイソブタン濃度(例えば、20重量%超または25重量%超)は、スチームクラッカーによるブタジエン生産プロセスから回収されたラフィネート1(例えば、イソブタンが5重量%未満または3重量%未満)よりはるかに高くなり得る。同時に、FCC/RFCCによるC4類中のイソブチレン濃度は、スチームクラッカーによるC4類の場合よりはるかに低い(例えば、RFCCでは25または30重量%未満であるのに対して、スチームクラッカーC4類では35または40重量%超)。同様に、それぞれ(FCC/RFCC対スチームクラッカー)の1-ブテン濃度に違いがあり得る(例えば、20または15重量%未満に対して35または40重量%超)。さらに、FCC/RFCCによる混合C4類のジエン含量は、スチームクラッカーによるラフィネート1の場合よりはるかに高い(例えば、0.3重量%または3,000ppmwに対して40ppmw)。
【0013】
混合C4類をイソブタンストリームおよび1-ブテンストリーム等の様々な製品ストリームに分離したい場合、当業者は、様々なC4ストリームのそれぞれを単純に混合して共処理し得る。しかしながら、本発明者らは、ストリーム間の組成の違いに基づき、これらの原料は、所望の高純度イソブタン製品および高純度1-ブテン製品を得るためには、各反応トレインを統合した共通設備を含む並列反応トレインで別々に処理すべきであることを見出した。並列反応トレインを使用することで、イソブテンを効果的に除去した混合C4ストリームであるラフィネート2ストリームを各反応トレインから回収でき、オペレーターは、イソブタンおよび1-ブテンの精製に必要な設備のサイズおよび関連するユーティリティ消費量を最適化できる。FCC/RFCC反応トレインからのラフィネート2は、イソブタン濃度が比較的高くなり、1-ブテン濃度が低くなる。これに比べて、スチームクラッカー反応トレインからのラフィネート2は、1-ブテン濃度がはるかに高くなり、イソブタン濃度が低くなる。
【0014】
両反応トレインにおいて、反応トレインでの二量化および/またはメチルtert-ブチルエーテルへの変換を介して、個々のラフィネート2ストリームからイソブチレンを除去できる(本明細書中、トレイン1=FCC/RFCCによるC4の変換であり、一方、トレイン2=スチームクラッカーによるC4の変換である)。各トレインの反応器構成は、供給される上流C4フィードに特異的であって、イソブチレンの変換の必要性を満たすよう適合させたものであってもよい。さらに、製品分離部を適切に統合することで、高純度イソブタンストリームを提供できることが分かった。スチームクラッカーによるC4フィードはイソブタン含量が比較的少ないものの、FCC/RFCCによるラフィネートストリームに添加されている追加のイソブタン類によって、高純度イソブタン製品ストリームが提供される。
【0015】
反応系でイソオクテン(イソブテン二量体)が生成される場合、所望により、両反応トレインで生成されたイソオクテンを合わせ、精製して含酸素化合物を除去した後、飽和反応器へ送ってイソオクテンをイソオクタンに変換してもよい。あるいは、イソブテン二量体をアルキル化に使用してもよい。反応系でメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)が生成される場合、例えば、MTBEを逆分解して高純度イソブテンストリームを形成してもよい。
【0016】
反応器トレイン(トレイン1およびトレイン2)はそれぞれ、メタノールを(MTBEを生成するための)反応物質としてまたは(選択的二量化のための)選択的活性剤(Selectivator)として使用してもよい。各反応トレインからのラフィネートストリームを別々に水洗して、メタノールを除去してもよい。次いで、得られた水/メタノールストリームを共通のメタノール回収系に供給して、メタノールおよび洗浄水をリサイクルしてもよい。
【0017】
上述した通り、反応器トレインの構成は、個々のトレインへのC4供給に基づいた効率性を提供するように設計してもよい。例えば、イソブテンの初期濃度が高い反応器トレインは、固定床反応器または一連の固定床反応器で処理してもよく、製品(MTBEまたは二量体)の一部を除去するための中間分離段階を有することで、下流の反応器で継続して変換するための追加の駆動力を提供してもよい。イソブテンの初期濃度が低い場合、中間分離部を用いても用いなくてもよい。いくつかの実施形態では、上流反応器エフルエントを仕上げ反応器(触媒蒸留反応器であってもよい)に供給して、全ての残留イソブテンを同時に反応させたり、二量体/MTBE製品を、n-ブタン、イソブタン、1-ブテン、および2-ブテンを含む残留C4成分から分離したりしてもよい。また、触媒蒸留反応器中の触媒は、存在する全てのブタジエン類を選択的に水素化することで、追加のブテン類を形成する機能を有していてもよい。
【0018】
ここで図1を参照すると、本明細書中の実施形態に係る、イソブタンおよび1-ブテンを共生産するためのシステムの簡略化したプロセスフロー図が示されている。FCCまたはRFCCによるC4ストリーム等、イソブタン濃度が比較的高い混合C4ストリーム10を第1の反応トレイン12に供給してもよい。メタノール13が反応物質または選択的活性剤として供給される反応トレイン12を用いて、そこに含まれるイソブテンをMTBEまたはイソブテン二量体(イソオクテン)に変換してもよい。内側分離部(図示せず)を有する反応トレイン12によって、残留イソブテンが少ないかまたは全く含まれないラフィネート2ストリーム14と、重質(MTBEおよび/またはイソオクテン)ストリーム16とを生成してもよい。
【0019】
同様に、スチームクラッカーによるC4ストリーム等、イソブタン濃度が比較的低い混合C4ストリーム20を第2の反応トレイン22に供給してもよい。メタノール23が反応物質または選択的活性剤として供給される反応トレイン22を用いて、そこに含まれるイソブテンをMTBEまたはイソブテン二量体(イソオクテン)に変換してもよい。内側分離部(図示せず)を有する反応トレイン22によって、残留イソブテンが少ないかまたは全く含まれないラフィネート2ストリーム24と、重質(MTBEおよび/またはイソオクテン)ストリーム26とを生成してもよい。
【0020】
それぞれMTBEまたはイソオクテンを含む重質ストリーム16、26を合わせて、変換されたイソブテン製品ストリーム28を形成してもよい。特に水素化または逆分解等の選択肢で二量体またはエーテルをさらに処理して(図示せず)、所望の製品を生産してもよい。また、ストリーム28は、重質含酸素化合物副産物を含んでいてもよい。
【0021】
(第1の反応器トレイン12からの)ラフィネート2ストリーム14は、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、およびn-ブタン類等の各種C4成分を含んでいてもよく、イソブテンは少なくても含まれていなくてもよい。また、ラフィネート2ストリーム14は、メタノールおよび/またはジメチルエーテル等の他の含酸素化合物副産物を含んでいてもよい。次いで、ラフィネート2ストリーム14を水洗塔30に供給してメタノールを抽出し、水/メタノールストリーム32および混合C4ストリーム34を生成してもよい。
【0022】
(第2の反応器トレイン22からの)ラフィネート2ストリーム24は、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、ブタジエン類、およびn-ブタン類等の各種C4成分を含んでいてもよく、イソブテンは少なくても含まれていなくてもよい。また、ラフィネート2ストリーム24は、メタノールおよび/またはジメチルエーテル等の他の含酸素化合物副産物を含んでいてもよい。次いで、ラフィネート2ストリーム24を水洗塔40に供給してメタノールを抽出し、水/メタノールストリーム42および混合C4ストリーム44を生成してもよい。
【0023】
次いで、水/メタノールストリーム42、32を共通のメタノール回収系50に供給して、メタノールを水から分離してもよい。回収された水(図示せず)は水洗系30、40へ供給し戻してもよく、回収されたメタノールは、メタノールストリーム13、23として、反応トレイン12、22における反応物質または選択的活性剤として供給してもよい。また、未使用のメタノール(図示せず)をメタノール回収系50内へ供給してもよいし、反応トレイン12、22内の必要とする反応器へ直接供給してもよい。
【0024】
1-ブテン濃度が比較的高い混合C4ストリーム44を分離系に供給して、高純度1-ブテンストリームを回収してもよい。1-ブテン回収系は、存在するn-ブタンおよび2-ブテンから1-ブテンを分離する重質塔60を有していてもよい。いくつかの実施形態では、反応ゾーン(重質塔60の上流または内部、図示せず)を設けて、2-ブテンを1-ブテンに異性化してもよい。重質塔60によって、n-ブタンおよび2-ブテンを含む重質C4ストリーム62と、イソブタンおよび1-ブテンを含む塔頂ストリーム64とを生成してもよい。次いで、塔頂ストリーム64を1-ブテン軽質塔70に供給してもよく、そこで、イソブタンおよび存在する全てのジメチルエーテルを塔頂成分72として回収してもよく、1-ブテンを塔底製品74(1-ブテン濃度が例えば90、95、98、または99重量%を超える高純度1-ブテンストリームであってもよい)として回収してもよい。
【0025】
反応トレイン2からのイソブタンを含む塔頂ストリーム72と、イソブタン濃度が比較的高い混合C4ストリーム34とを分離系に供給して、イソブタン濃度が例えば90、95、98、または99重量%を超える高純度イソブタンストリームを回収してもよい。イソブタン回収系は、存在するn-ブタンおよび2-ブテンからイソブタンを分離する脱イソブタン塔80を有していてもよい。いくつかの実施形態では、反応ゾーン(脱イソブタン塔80の上流または内部、図示せず)を設けて、存在する全ての1-ブテンを2-ブテンに異性化してもよい。脱イソブタン塔80によって、n-ブタンおよび2-ブテンを含む重質C4ストリーム82と、イソブタンを含む塔頂ストリーム84とを生成してもよい。次いで、塔頂ストリーム84をDME軽質塔90に供給してもよく、そこで、イソブタンを存在する全てのジメチルエーテルから分離してもよい。軽質成分/DMEは塔頂成分92として回収してもよく、イソブタンは塔底製品94(高純度イソブタンストリームであってもよい)として回収してもよい。
【0026】
所望により、n-ブタンおよび2-ブテンを含む重質C4ストリーム62、82を合わせて重質C4製品ストリーム95とし、さらに処理または回収してもよい。例えば、n-ブタンおよび2-ブテンを分離して、高純度2-ブテンストリームを提供してもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、上述の通り、二量化を介してまたはエーテル化を介してイソブテンを初期分離してもよい。図2および図3は、二量化を介してイソブテンを分離するシステムの簡略化したプロセスフロー図を示す。いずれのシステムも同様の最終結果を達成でき、同様の反応器を有していてもよいが、フィード組成が異なるため、個々のトレインは具体的なフィード組成または予想される組成範囲に対して最適化されていてもよい。
【0028】
ここで図2を参照すると、反応トレイン1(高イソブタン含量)の簡略化したプロセスフロー図が示されている。それぞれ選択的二量化触媒を含む二量化反応器101、103に混合C4ストリーム10およびメタノール13を供給して、イソブテンをイソブテン二量体に変換してもよい。第1の二量化反応器101からのエフルエント104を第2の二量化反応器103に供給して、イソブテンをさらに変換してもよい。次いで、第2の二量化反応器からのエフルエント106を触媒蒸留塔108に供給して、イソブテンをさらに変換すると同時に、未反応の軽質C4成分を所望の二量体および全ての重質含酸素化合物副産物から分離してもよい。必要に応じて、追加のメタノール109を触媒蒸留塔108に添加してもよい。軽質C4成分を塔頂留分110として回収してもよく、一方、二量体および重質副産物を塔底留分112として回収してもよい。
【0029】
塔頂留分110は、特にイソブタン、1-ブテン、2-ブテン、およびメタノールの成分を含んでいてもよい。次いで、塔頂留分110を水洗塔120に供給して、C4炭化水素からメタノールを分離してもよい。洗浄水121は、水洗塔120の上部へ向けて供給し、C4炭化水素と向流接触させてメタノールを除去してもよい。C4炭化水素を塔頂留分122として水洗塔120から回収してもよく、メタノール/水混合物を塔底留分124として回収してもよい。
【0030】
ここで図3を参照すると、反応トレイン2(高イソブテン含量)の簡略化したプロセスフロー図が示されている。選択的二量化触媒を含む第1の二量化反応器201に混合C4ストリーム20およびメタノール23を供給して、イソブテンをイソブテン二量体に変換してもよい。第1の二量化反応器201からのエフルエント202を脱ブタン塔204に供給して、二量体206を未反応C4成分208(C4基準でフィードストリーム20と比べてイソブテンがより少なくてもよい)から分離してもよい。
【0031】
次いで、塔頂留分208(未反応C4類)を第2の二量化反応器210に供給して、イソブテンをさらに変換してもよい。次いで、第2の二量化反応器からのエフルエント212を触媒蒸留塔216に供給して、イソブテンをさらに変換すると同時に、未反応の軽質C4成分を所望の二量体および全ての重質含酸素化合物副産物から分離してもよい。必要に応じて、追加のメタノール218を触媒蒸留塔108に添加してもよい。軽質C4成分を塔頂留分220として回収してもよく、二量体および重質副産物を塔底留分222として回収してもよい。
【0032】
塔頂留分220は、特にイソブタン、1-ブテン、2-ブテン、およびメタノールの成分を含んでいてもよい。次いで、塔頂留分220を水洗塔230に供給して、C4炭化水素からメタノールを分離してもよい。洗浄水232は、水洗塔230の上部へ向けて供給し、C4炭化水素と向流接触させてメタノールを除去してもよい。C4炭化水素を塔頂留分234として水洗塔230から回収してもよく、メタノール/水混合物を塔底留分236として回収してもよい。
【0033】
次いで、メタノール/水ストリーム124(図2)および236を合わせ、共通のメタノール回収系250に供給してもよい。メタノール回収系250は、水をメタノールから分離する蒸留および/または膜分離部を有していてもよい。図示の通り、水/メタノール混合物を蒸留することで、塔底水ストリーム260および塔頂メタノールストリーム262を生成してもよい。塔底水ストリーム260中の水は、ストリーム232、121を介して水洗塔230、120(図2)へ返送してもよく、一方、ストリーム262中のメタノールは、例えばストリーム13、23を介して、所望の通り各種の反応器(201、210、216、101、103、108)へ供給してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、二量体および全ての重質含酸素化合物副産物を含む重質ストリーム(208、222、124(図2))を合わせてさらに処理してもよい。いくつかの実施形態では、重質ストリームを合わせ、蒸留塔280で分離して、二量体留分282および重質含酸素化合物留分284を回収してもよく、それぞれさらに加工し、かつ/または(ガソリン、ディーゼル等の)燃料混合で使用してもよい。
【0035】
反応によりイソブテンを除去し、別々の反応器トレインで個々のラフィネート2ストリームを生成した後、混合C4類を分離して、所望のイソブタンおよび1-ブテンの各製品ストリームを得てもよい。図4は、本明細書中のいくつかの実施形態に係る、統合されたイソブタンおよび1-ブテン精製ゾーンを示す。
【0036】
1-ブテン濃度が比較的高い混合C4ストリーム234を分離系に供給して、高純度1-ブテンストリームを回収してもよい。1-ブテン回収系は、存在するn-ブタンおよび2-ブテンから1-ブテンを分離する重質塔300を有していてもよい。重質塔300によって、n-ブタンおよび2-ブテンを含む重質C4ストリーム302と、イソブタンおよび1-ブテンを含む塔頂ストリーム304とを生成してもよい。次いで、塔頂ストリーム304を1-ブテン軽質塔310に供給してもよく、そこで、イソブタンおよび存在する全てのジメチルエーテルを塔頂成分312として回収してもよく、1-ブテンを塔底製品314(高純度1-ブテンストリームであってもよい)として回収してもよい。
【0037】
反応トレイン2からのイソブタンを含む塔頂ストリーム312と、イソブタン濃度が比較的高い混合C4ストリーム122とを分離系に供給して、高純度イソブタンストリームを回収してもよい。イソブタン回収系は、存在するn-ブタンおよび2-ブテンからイソブタンを分離する脱イソブタン塔330を有していてもよい。脱イソブタン塔330によって、n-ブタンおよび2-ブテンを含む重質C4ストリーム332と、イソブタンを含む塔頂ストリーム334とを生成してもよい。次いで、塔頂ストリーム334をDME軽質塔340に供給してもよく、そこで、イソブタンを存在する全てのジメチルエーテルから分離してもよい。軽質成分/DMEは塔頂成分342として回収してもよく、イソブタンは塔底製品344(高純度イソブタンストリームであってもよい)として回収してもよい。n-ブタンおよび2-ブテンを含む重質C4ストリーム302、332を合わせて重質C4製品ストリーム350としてもよい。
【0038】
上述の通り、本明細書中の実施形態を用いて、組成の異なる各種の混合C4フィードストリームからイソブタン製品および1-ブテン製品を効率的に生産できる。
【0039】
いくつかの実施形態では、各反応トレインへのフィードの前処理を行ってもよい。後述するが、第1の反応トレインを用いて高イソブタン含量C4ストリームを処理してもよく、第2の反応トレインを用いて低イソブタン含量C4ストリームを処理してもよく、ある共通のシステムによって両反応トレインを統合してもよい。FCCまたはRFCCによるC4ストリーム等の高イソブタン含量ストリームは、後述の通り、トレイン1へ供給され、一方、スチームクラッカーによるC4ストリーム等の低イソブタン含量ストリームは、後述の通り、トレイン2へ供給される。
【0040】
トレイン1フィード前処理
【0041】
FCC/RFCCによるC4類のフィード前処理を第1の前処理系で行ってもよい。LPGプラント等の上流プラントからの不飽和混合C4原料をろ過した後、フロー制御下、脱塩洗浄水の向流を用いて水洗塔で洗浄して、ニトリル類等の水溶性不純物の大部分を除去してもよい。水洗塔の上部にメッシュパッドを備え付けて、分離されなかった全ての水を合一および除去してもよい。塔底からの使用済み洗浄水は、製油所の廃水系に送って処理してもよい。
【0042】
次いで、洗浄された混合C4類を水洗塔の塔頂で取り出し、圧力制御下でトレイン1のC4フィードサージドラムへ送ってもよい。また、サージドラムにコアレッサおよびウォーターブーツ(Water boot)を備え付けて、全ての残留する微量の自由水を除去してもよい。少量の非凝縮蒸気がサージドラムに蓄積する場合、窒素パージを伴う圧力放出系を設けて、該蒸気を希釈および放出してフレアしてもよい。次いで、洗浄されたC4原料をサージドラムからトレイン1の一次反応器へポンプ輸送してもよい。
【0043】
トレイン2フィード前処理
【0044】
また、スチームクラッカーによるC4類、または上流のブタジエンプラントからのラフィネート1 C4原料等のC4類のフィード前処理を行ってもよい。上流のBDプラントからの不飽和ラフィネート1 C4原料をろ過した後、フロー制御下、脱塩洗浄水の向流を用いて水洗塔で洗浄して、ニトリル類等の水溶性不純物の大部分を除去してもよい。水洗塔の上部にメッシュパッドを備え付けて、分離されなかった全ての水を合一および除去してもよい。塔底からの使用済み洗浄水は、廃水系へ送ってさらに処理してもよい。
【0045】
洗浄された混合C4類を水洗塔の塔頂で取り出し、圧力制御下でトレイン2のC4フィードサージドラムへ送ってもよい。また、サージドラムにコアレッサおよびウォーターブーツを備え付けて、全ての残留する微量の自由水を除去してもよい。少量の非凝縮蒸気がサージドラムに蓄積する場合、窒素パージを伴う圧力放出系を設けて、該蒸気を希釈および放出してフレアしてもよい。次いで、洗浄されたC4原料をサージドラムからトレイン2の一次反応器へポンプ輸送してもよい。
【0046】
FCC/RFCC反応系
【0047】
いくつかの実施形態において、FCC/RFCC反応系は、メタノールとの反応を介してイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルへ選択的に変換するための反応器を有する。他の実施形態において、FCC/RFCC反応系は、イソブテンを選択的に二量化してイソオクテンを形成するための反応器を有し、そこではメタノール等の含酸素化合物を選択的活性剤として使用してもよい。
【0048】
例えば、トレイン1のC4フィードサージドラムからの処理済み混合C4オレフィンフィードをリサイクル含酸素化合物ならびに未使用およびリサイクルメタノール(選択的活性剤)と混合し、一次微温水(Tempered Water)冷却式管状反応器(WCTR)等の二量化反応器へ供給してもよい。混合フィードストリームを低圧(LP)蒸気予熱器で予熱してもよい。次いで、処理流体がWCTRの触媒充填管側を通過する。
【0049】
イソオクテンへのイソブチレンの二量化は、比較的低温の条件下、一次DIB(ジイソブチレン)WCTRで行われる。WCTRのシェル側に対して設けられた閉ループ微温水(Tempered Water)系で反応熱を除去してもよい。
【0050】
トレイン1脱ブタン塔
【0051】
次いで、圧力制御下、一次WCTRからのエフルエントを脱ブタン塔へ供給してもよい。エフルエントは、脱ブタン塔フィード/塔底交換器で加熱してから脱ブタン装置へ投入してもよい。
【0052】
脱ブタン装置からの塔頂蒸気(主にC4類およびメタノール)を冷却および凝縮し、凝縮物を脱ブタン塔の塔頂ドラムで回収する。塔頂ドラムからの留出物を、レベル制御下、ドラムからポンプ輸送する。留出物の一部は還流として脱ブタン塔へ返送し、正味の留出物フローは、LP蒸気予熱器で予熱してから二次WCTR反応器へ送ってもよい。
【0053】
脱ブタン装置の塔底ストリームを脱ブタン装置フィード/塔底交換器で冷却してから、後述するスプリッタ塔へ送る。
【0054】
トレイン1二次DIB(ジイソブチレン)反応器
【0055】
脱ブタン塔からの留出物ストリームをリサイクル含酸素化合物と合わせ、フィードクーラーで冷却し、2次水冷却式管状反応器(WCTR)の入口へ供給して、イソブチレンをイソオクテンや他のC8オレフィンへさらに変換できる。イソブチレンの二量化は、低温条件下、二次WCTRで再び行われる。また、微温水系を用いて反応器のシェル側に水を循環させて反応熱を除去する。
【0056】
トレイン1CD反応塔
【0057】
二次WCTRからのエフルエントは、CD反応塔へCD反応塔フィード/塔底交換器を介して流れる。CD反応塔は、従来の蒸留塔と同じように作動し、外部リボイラーおよび塔頂凝縮器が備え付けられている。また、CD反応塔は、フィード投入ノズルの上下にトレイを有している。また、CDモジュール(触媒を含む構造化触媒担体)がフィードノズル上部のベッドに配置されている。CDモジュールは、反応および同時に行われる蒸留をいずれも促進し、MTBEや他の含酸素化合物とともに未反応のC4炭化水素から反応生成物および重質炭化水素(C8+)を分離する。
【0058】
未反応のイソブチレンは、他のC4炭化水素とともに、CD反応塔を通って供給地点からCDモジュール内の反応ゾーンへ留出して、イソブチレンが変換される。未反応のC4炭化水素は、フィード中の過剰なメタノールおよび軽質不純物とともに、塔頂留出物として塔から出ていく。
【0059】
留出物を冷却、凝縮し、凝縮物をCD反応塔の塔頂ドラムで回収する。塔頂ドラムからの留出物を、レベル制御下、ドラムからポンプ輸送する。留出物の一部は還流としてCD反応塔へ返送し、その後、正味の留出物フローを冷却し、トレイン1のメタノール抽出塔へ送って、過剰なメタノールを分離する。
【0060】
イソオクテン(DIB)、C8オレフィン、他の重質炭化水素は、含酸素化合物とともに、塔底製品としてCD反応塔から出ていく。塔底製品は、CD反応塔フィード/塔底交換器で冷却してから、DIB/MTBEスプリッタ塔へ送って、含酸素化合物を分離および回収し、それを主反応器セクションで選択的活性剤として使用する。DIB/MTBEスプリッタの塔頂からパージされた全ての含酸素化合物をOSBLへ送って、自動車用ガソリン(Mogas)プールで混合する。
【0061】
反応器トレイン2
【0062】
いくつかの実施形態において、スチームクラッカーC4反応系は、メタノールとの反応を介してイソブテンをメチルtert-ブチルエーテルへ選択的に変換するための反応器を有する。他の実施形態において、FCC/RFCC反応系は、イソブテンを選択的に二量化してイソオクテンを形成するための反応器を有し、そこではメタノール等の含酸素化合物を選択的活性剤として使用してもよい。
【0063】
二量体を生成する場合、トレイン2は一次DIB(ジイソブチレン)反応器を有していてもよい。トレイン2のC4フィードサージドラムからの処理済み混合C4オレフィンフィード(ラフィネート1)をリサイクル含酸素化合物ならびに未使用およびリサイクルメタノール(選択的活性剤)と混合してもよい。一次微温水冷却式管状反応器(WCTR)へ投入する前に、混合フィードストリームをLP蒸気予熱器で予熱してもよい。次いで、処理流体がWCTRの触媒充填管側を通過する。
【0064】
イソオクテンへのイソブチレンの二量化は、比較的低温の条件下、一次DIB(ジイソブチレン)WCTRで行われる。WCTRのシェル側に対して設けられた閉ループ微温水系で反応熱を除去する。
【0065】
トレイン2脱ブタン塔
【0066】
次いで、圧力制御下、トレイン2の一次WCTRからのエフルエントをトレイン2の脱ブタン塔へ供給する。エフルエントは、脱ブタン塔フィード/塔底交換器で加熱してから脱ブタン装置へ投入する。
【0067】
脱ブタン装置からの塔頂蒸気(主にC4類およびメタノール)を冷却、凝縮し、凝縮物を脱ブタン塔の塔頂ドラムで回収する。塔頂ドラムからの留出物を、レベル制御下、ドラムからポンプ輸送する。留出物の一部は還流として脱ブタン塔へ返送し、正味の留出物フローは、LP蒸気予熱器で予熱してからトレイン2の二次WCTR反応器へ送る。トレイン2の脱ブタン装置の塔底ストリームは、脱ブタン装置フィード/塔底交換器で冷却してから、フロー制御下、MTBE/DIBスプリッタ塔へ送ってもよい。
【0068】
トレイン2二次DIB(ジイソブチレン)反応器
【0069】
トレイン2の脱ブタン塔からの留出物ストリームをリサイクル含酸素化合物と合わせ、トレイン2の2次水冷却式管状反応器(WCTR)の入口へ供給して、イソブチレンをイソオクテンや他のC8オレフィンへさらに変換できる。イソブチレンの二量化は、低温条件下、二次WCTRで再び行われる。
【0070】
トレイン2MTBE CD反応塔(CD水素化機能を有する)
【0071】
二次WCTRからのエフルエントは、トレイン2のCD反応塔へCD反応塔フィード/塔底交換器を介して流れる。CD反応塔は、従来の蒸留塔と同じように作動し、外部リボイラーおよび塔頂凝縮器が備え付けられている。また、CD反応塔は、フィード投入ノズルの上下にトレイを有している。また、CDモジュール(触媒を含む構造化触媒担体)がフィードノズル上部のベッドに配置されている。
【0072】
トレイン2のCD反応塔におけるCDモジュールは、反応(選択的水素化およびイソブチレンの二量化)および同時に行われる蒸留をいずれも促進し、MTBEや他の含酸素化合物とともに未反応のC4炭化水素から反応生成物および重質炭化水素(C8+)を分離できる。
【0073】
トレイン2の場合、CD反応塔には2種類のCDモジュールが備え付けられる。第1種のCDモジュールは、触媒を提供して、C8類へのイソブチレンの継続的な二量化を補助する。第2種のCDモジュールは、触媒を提供して、ブタジエン類を選択的に水素化する。これらのCDモジュールは排他的なCD水素化機能を提供する。また、水素化では、少量の未使用水素をCD反応塔に注入する必要がある。
【0074】
CD水素化セクションでは、n-ブテン類へのブタジエンの水素化、1-ブテンおよび2-ブテン間のn-ブテン類の水素異性化、ならびにオレフィン飽和という3種類の化学反応が起こる。オレフィン飽和は、高選択性触媒を使用すること、およびオレフィンに関してブタジエンの反応性が高いことにより、最小化できる。
【0075】
選択的水素化は発熱プロセスであるため、反応器全体の温度上昇を引き起こす。反応熱は、CDモジュールを下方へ通過する際にCD塔の還流により吸収される。
【0076】
未反応のイソブチレンおよびブタジエンは、他のC4炭化水素とともに、CD反応塔を通って塔供給地点からCDモジュール内の反応ゾーンへ留出して、イソブチレンの変換およびジエン類の飽和が行われる。未反応のC4炭化水素は、フィード中の過剰なメタノールおよび軽質不純物とともに、塔頂留出物として塔から回収される。
【0077】
留出物を冷却、凝縮し、凝縮物をトレイン2のCD反応塔の塔頂ドラムで回収する。塔頂ドラムからの留出物を、レベル制御下、ドラムからポンプ輸送する。留出物の一部は還流としてCD反応塔へ返送し、その後、正味の留出物フローを冷却し、メタノール抽出塔へ送って、過剰なメタノールを分離する。非凝縮物は、遠隔HCバルブを用いて塔頂ドラムから定期的に放出する。
【0078】
イソオクテン(DIB、Dimer8)、C8オレフィン、他の重質炭化水素は、含酸素化合物とともに、塔底製品としてCD反応塔から出ていく。塔底製品は、CD反応塔フィード/塔底交換器で冷却してから、DIB/MTBEスプリッタ塔へ送って、含酸素化合物を分離および回収し、それを主反応器セクションで選択的活性剤として使用してもよい。DIB/MTBEスプリッタの塔頂からパージされた含酸素化合物の一部を送って、Mogasプールで混合してもよい。
【0079】
Dimer8共通メタノール回収セクション(反応トレイン1および2)
【0080】
トレイン1および2のCD反応塔からのC8留出物ストリーム(C4炭化水素とメタノールとの混合物を含む)は、上述の通り、まずトレイン1およびトレイン2のメタノール抽出塔で別々に処理する。向流脱塩水フローを用いて、各C8留出物ストリームからメタノールを洗い流してもよい。メタノール抽出塔はそれぞれ、塔の上部にメッシュパッドを備え付けることで、水の持ち越しを防止してもよい。洗浄されたC8炭化水素をトレイン1および2のそれぞれの塔頂で取り出して、個々のラフィネート2ストリームを提供する。
【0081】
次いで、トレイン1のメタノール抽出塔からの洗浄済みラフィネート2をイソブタン精製セクションへ供給する。次いで、トレイン2のメタノール抽出塔からの洗浄済みラフィネート2を1-ブテン回収・精製セクションへ供給する。
【0082】
次いで、トレイン1およびトレイン2のメタノール抽出塔からの水性抽出物(塔底)ストリームを合わせ、共通のメタノール回収塔へ送って、メタノールと水とを蒸留分離する。共通メタノール回収塔からの塔頂蒸気を冷却、凝縮し、凝縮物をメタノール回収塔の塔頂ドラムで回収する。塔頂ドラムからの留出物を、レベル制御下、ドラムからポンプ輸送する。留出物の一部は還流としてメタノール分離塔へ返送し、正味の留出物フロー(精製メタノール)は、反応トレイン1およびトレイン2の一次および二次反応器およびCD反応塔へ戻してリサイクルする。また、未使用の補給メタノールを塔頂ドラムに添加してもよい。メタノール回収塔の塔底からの洗浄水は、トレイン1およびトレイン2のメタノール抽出塔へ戻してリサイクルして再利用する。
【0083】
共通Dimer8 DIB/含酸素化合物スプリッタ塔
【0084】
Dimer8の反応トレイン1およびトレイン2の脱ブタン装置およびCD反応塔からの塔底ストリームは、DIB/含酸素化合物スプリッタ塔で除去されるTBA、MTBE、MSBE、およびC9エーテル等の含酸素化合物を含んでいてもよい。トレイン1およびトレイン2からの上記塔底ストリームを合わせ、単一のDIB/含酸素化合物塔へ供給する。
【0085】
DIB/含酸素化合物塔では、軽質含酸素化合物(MTBE、MSBE、およびTBA)の大部分を気相で上方へ蒸留してから塔頂で凝縮させる。塔頂蒸気を水冷し、スプリッタ冷却器で凝縮し、凝縮物を含酸素化合物/DIBスプリッタ塔頂ドラムで回収する。
【0086】
塔頂ドラムからの留出物をポンプ輸送し、留出物の一部を還流としてMTBE/DIBスプリッタ塔へ返送する。塔からの含酸素化合物パージの大半をポンプで戻し、Dimer8の反応トレイン1およびトレイン2の一次および二次反応器で選択的活性剤として使用されるユニット原料と混合する。留出物製品の少量を含酸素化合物パージとして送って、Mogasプールで混合する。スプリッタ塔底ストリームは、イソオクテン(DIB)、他のC8オレフィン、C12、C16、およびC9エーテルで構成されている。次いで、塔底ストリームをC8飽和セクションへ送って、イソオクタン製品を提供する。
【0087】
共通イソオクテン飽和
【0088】
所望により、スプリッタ塔底ストリームから回収したイソオクテンを水素化してイソオクタンを形成してもよい。
【0089】
イソブタン精製(トレイン1からのラフィネート2)
【0090】
反応トレイン1からのラフィネート2ストリームをB1軽質塔からの塔頂製品と合わせ(下記1-ブテン分離ユニットのプロセス説明を参照)、イソブタン精製セクションへ送る。
【0091】
合わせたラフィネート2原料は、まず脱イソブタン塔へ供給する。脱イソブタン装置は、ラフィネート2中のイソブタンおよび軽質炭化水素を残りのC4類から除去する役割を果たす。次いで、脱イソブタン塔からの正味の凝縮物フローをDME軽質塔へ供給する。DME軽質塔からの塔底ストリームは、塔底製品(2-ブテンおよびn-ブタンを含んでいてもよい)として回収する。
【0092】
DME軽質塔
【0093】
次いで、脱イソブタン塔からの正味の塔頂フローをDME軽質塔へ供給する。DME軽質塔は、高純度イソブタン製品から軽質含酸素化合物(DME等)および他の軽質炭化水素を除去する役割を果たす。脱イソブタン塔の塔頂フローは、DME軽質塔フィード/エフルエント交換器で予熱してから、DME軽質塔へ供給してもよい。
【0094】
DME軽質塔からの塔頂蒸気を冷却、凝縮し、凝縮物をDME軽質塔の塔頂ドラムで回収する。留出物の一部は還流としてDME軽質塔へ返送し、正味の留出物フロー(DMEおよび他の軽質炭化水素)はDME軽質製品として回収する。
【0095】
DME軽質塔からの塔底フローは、DME軽質塔フィード/エフルエント交換器で冷却し、イソブタン製品クーラーでさらに冷却してから、高純度イソブタン製品としてバッテリーリミットへ送る。いくつかの実施形態において、回収したイソブタンストリームは、純度が少なくとも99重量%であってもよい。他の実施形態において、回収したイソブタンストリームは、純度が99.2重量%超、99.3重量%超、99.4重量%超、さらには99.5重量%超であってもよい。
【0096】
1-ブテン分離(トレイン2からのラフィネート2)
【0097】
反応トレイン2からのラフィネート2は、組み合わせたB1重質塔およびB1軽質塔へ供給して、ブテン-1製品を残りのラフィネート2フィードから分離して精製する。Dimer8の反応トレイン1からのラフィネート2は、まずB1重質塔へ供給する。
【0098】
B1重質塔からの圧縮塔頂ストリームは、B1重質塔用のリボイラーで部分的に凝縮した後、凝縮物をB1重質塔還流ドラムで冷却および回収する。還流ドラムからの凝縮物をポンプ輸送し、凝縮物の一部は還流としてB1重質塔へ返送する。次いで、正味の凝縮物フローをB1軽質塔へ供給する。
【0099】
B1重質塔からの塔底ストリームをバッテリーリミットへポンプ輸送し、ラフィネート3製品を提供する。
【0100】
軽質塔セクション
【0101】
B1重質塔還流ドラムからの正味の凝縮物フローをB1軽質塔セクションへポンプ輸送して、1-ブテンをさらに分離および精製する。B1軽質塔からの圧縮塔頂ストリームは、B1軽質塔用のリボイラーで部分的に凝縮した後、凝縮物をB1軽質塔還流ドラムで水冷および回収する。還流ドラムからの凝縮物をポンプ輸送し、凝縮物の一部は還流としてB1軽質塔へ返送する。次いで、上述の通り、正味の(イソブタン含量の多い)凝縮物フローをトレイン1からのラフィネート2と合わせ、イソブタン精製セクションで処理する。
【0102】
B1軽質塔からの塔底ストリームは高純度ブテン-1製品である。いくつかの実施形態において、回収した1-ブテンストリームは、純度が少なくとも99重量%であってもよい。他の実施形態において、回収した1-ブテンストリームは、純度が99.2重量%超、99.3重量%超、99.4重量%超、さらには99.5重量%超であってもよい。
【0103】
上述の通り、本明細書中の実施形態によれば、高純度1-ブテンと高純度イソブタンとを効率的に共生産できる。初期混合C4ストリームの組成を利用して、有利な場合には部分的に共通の処理を行って、高純度製品を生産するのが有利である。反応トレインおよび水洗を別々の系として維持することで、イソブタンストリームおよび1-ブテンストリームを高品質かつ高純度で生産できる。
【0104】
本開示には限られた数の実施形態しか含まれていないが、本開示の範囲を逸脱しない他の実施形態も考えられることが、本開示の利益を享受する当業者には理解できるであろう。従って、本範囲は添付の特許請求の範囲のみにより限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4