(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】単層グラフェン含有固化物、単層グラフェンおよびその調製方法、単層グラフェン含有製品
(51)【国際特許分類】
C01B 32/19 20170101AFI20240828BHJP
【FI】
C01B32/19
(21)【出願番号】P 2022533382
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019129116
(87)【国際公開番号】W WO2021128257
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】522220201
【氏名又は名称】桐郷市小老板特種塑料制品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沈建清
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-537075(JP,A)
【文献】特表2016-519191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトと、熱可塑性ポリマーとを混合して押出成形を行い、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料と
水とからなる系を密閉の反応装置に入れて50~150°Cの温度下で5~60分加熱し、そして反応装置にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で5~50分加圧し、そして1分以内で常圧まで放圧し、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび
熱可塑性ポリマーの代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと
、
を含み、
または、
グラファイトと、小麦粉または米粉と、水とを混合して固化成形させ、乾燥し、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料を密閉の反応装置に入れて60~200°Cの温度下で5~60分加熱し、そして反応装置にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で5~50分加圧し、そして1分以内で常圧まで放圧し、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび
小麦粉または米粉の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと、
を含む
ことを特徴とする単層グラフェン含有固化物の調製方法。
【請求項2】
ステップaにおいて、前記熱可塑性ポリマーが、樹脂、プラスチック、熱可塑性ゴム、熱可塑性エラストマーまたはホットメルト接着剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記樹脂が、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記プラスチックが、硬質熱可塑性プラスチック、軟質プラスチックまたは半硬質プラスチックのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記熱可塑性ゴムが、TPU、NBR、SBS、TPEまたはEPDMのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記熱可塑性エラストマーが、TPEE、PUR、TPVまたはTEEEのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含
む、
ことを特徴とする請求項1に記載の単層グラフェン含有固化物の調製方法。
【請求項3】
ステップaにおいて、前記グラファイトの粒度が、20~12500メッシュである、
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の単層グラフェン含有固化物の調製方法。
【請求項4】
ステップaにおいて、前記グラファイトと熱可塑性ポリマーの質量比が、(0.5~200):100であり、前記グラファイトと小麦粉または米粉との質量比が、(0.5~200):100である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の単層グラフェン含有固化物の調製方法。
【請求項5】
ステップaにおいて、前記成形顆粒状材料の粒径が、0.2~10mmである、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の単層グラフェン含有固化物の調製方法。
【請求項6】
ステップbにおいて、前記ガスが、空気、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素または窒素ガスのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の単層グラフェン含有固化物の調製方法。
【請求項7】
請求項1
~6のいずれか1項に記載の単層グラフェン含有固化物の調製方法により調製される単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行い、炭化処理により得た生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得ることを含み、
前記炭化処理の温度が、200~500°Cであり、炭化処理の時間が、0.08~3.0時間であり、
比重により分離するとき、分離用媒体として水を用いる
ことを特徴とする単層グラフェンの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフェンの技術分野に属し、殊に、単層グラフェン含有固化物、単層グラフェンおよびその調製方法、単層グラフェン含有製品に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(Graphene)は、炭素原子がsp混成軌道によって結合した蜂の巣状の六角形格子構造を有する2次元のナノ炭素材料であり、光学的特性、電気的特性、力学的特性に優れ、材料学、マイクロ/ナノ加工、エネルギー、生物医学およびドラッグデリバリーなどの分野での応用に見込みがあり、革新的な材料と見なされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
グラフェンの調製方法は多くがあるが、従来の方法で調製できたグラフェンがほとんど多層グラフェン(グラフェンナノプレートレットとも呼ばれる)であり、単層のグラフェンの調製が難しく、そして、調製過程において大量の汚染物が発生し、調製の規模も比較的に小さく、工業上の量産の実現が難しい。
【0004】
これに鑑みて、上記の技術的課題のうちの少なくとも1つを解決するため、本開示を提出する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の目的は、単層グラフェン含有固化物を調製できるとともに、調製過程に汚染の発生がなく、工業上の量産に適する単層グラフェン含有固化物の調製方法を提供することである。
【0006】
本開示の第2の目的は、上記の単層グラフェン含有固化物の調製方法で調製できた単層グラフェン含有固化物を提供することである。
【0007】
本開示の第3の目的は、上記の単層グラフェン含有固化物を用いて単層グラフェンを調製する単層グラフェンの調製方法を提供することである。
【0008】
本開示の第4の目的は、上記の単層グラフェンの調製方法で調製できた単層グラフェンを提供することである。
【0009】
本開示の第5の目的は、上記の単層グラフェン含有固化物または上記の単層グラフェンを用いて調製できた単層グラフェン含有製品を提供することである。
【0010】
本開示に係る単層グラフェン含有固化物の調製方法は、
グラファイトと、固化材料と、選択可能な第1溶剤とを混合して固化成形させ、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料と選択可能な第2溶剤とからなる系を加熱し、この系にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で加圧し、そして放圧して、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと、を含む。
【0011】
さらに、上記の技術案において、
ステップaにおいて、前記固化材料が、熱可塑性ポリマー、小麦粉または米粉のうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、ステップaにおいて、前記熱可塑性ポリマーが、樹脂、プラスチック、熱可塑性ゴム、熱可塑性エラストマーまたはホットメルト接着剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、ステップaにおいて、前記樹脂が、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、ステップaにおいて、前記プラスチックが、硬質熱可塑性プラスチック、軟質プラスチックまたは半硬質プラスチックのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、ステップaにおいて、前記熱可塑性ゴムが、TPU、NBR、SBS、TPEまたはEPDMのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、ステップaにおいて、前記熱可塑性エラストマーが、TPEE、PUR、TPVまたはTEEEのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、ステップaにおいて、前記グラファイトの粒度が、20~12500メッシュであり、
好ましくは、ステップaにおいて、前記グラファイトと固化材料の質量比が、(0.5~200):100であり、
好ましくは、ステップaにおいて、前記成形顆粒状材料の粒径が、0.2~10mmである。
【0012】
さらに、上記の技術案において、
ステップbにおいて、加熱の温度が、50~880°Cであり、加熱の時間が、5~60分であり、
好ましくは、ステップbにおいて、前記ガスが、空気、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素または窒素ガスのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、ステップbにおいて、加圧の圧力が、0.3~50.0MPaであり、加圧の時間が、5~70分であり、
好ましくは、ステップbにおいて、常圧まで放圧し、常圧まで放圧する時間が、1分未満である。
【0013】
さらに、上記の技術案において、
ステップaにおいて、前記第1溶剤が、水を含み、
好ましくは、ステップbにおいて、前記第2溶剤が、水および/または潤滑剤を含む。
【0014】
さらに、上記の技術案において、前記単層グラフェン含有固化物の調製方法は、
グラファイトと、熱可塑性ポリマーを含む固化材料とを混合して押出成形を行い、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料と水とからなる系を密閉の反応装置に入れて50~880°Cの温度下で5~60分加熱し、そして反応装置にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で5~50分加圧し、そして1分以内で常圧まで放圧し、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと、を含み、
または、前記単層グラフェン含有固化物の調製方法は、
グラファイトと、小麦粉または米粉を含む固化材料と、水とを混合して固化成形させ、乾燥し、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料を密閉の反応装置に入れて60~200°Cの温度下で5~60分加熱し、そして反応装置にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で5~50分加圧し、そして1分以内で常圧まで放圧し、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと、を含む。
【0015】
本開示は、上記の単層グラフェン含有固化物の調製方法で調製される単層グラフェン含有固化物をさらに提供する。
【0016】
好ましくは、前記単層グラフェン含有固化物における単層グラフェンの質量分率が、20~99%である。
【0017】
本開示は、上記の単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行い、炭化処理により得た生成物を分離し、単層グラフェンを得ることを含む単層グラフェンの調製方法をさらに提供する。
【0018】
さらに、上記の技術案において、単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行い、炭化処理により得た生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得ることを含み、
好ましくは、前記炭化処理の温度が、200~500°Cであり、炭化処理の時間が、0.08~3.0時間であり、
好ましくは、比重により分離するとき、分離用媒体として水を用いる。
【0019】
本開示は、上記の単層グラフェンの調製方法で調製される単層グラフェンをさらに提供する。
【0020】
本開示は、上記の単層グラフェン含有固化物または上記の単層グラフェンを利用して調製される単層グラフェン含有製品をさらに提供する。
【0021】
本開示に係る単層グラフェン含有固化物、単層グラフェンおよびその調製方法、単層グラフェン含有製品は、下記の有益効果を有する。
【0022】
(1)本開示に係る単層グラフェン含有固化物の調製方法は、まず、グラファイトと、固化材料と、選択可能な第1溶剤とを混合して固化成形させ、固化成形により得た成形顆粒状材料と選択可能な第2溶剤とからなる系を加熱し、そして、ガスを導入して加圧し、特定の圧力下でガスが成形顆粒状材料に対して一定の作用力をかけ、該作用力が成形顆粒状材料の内部まで作用し、急に放圧すると、発生した瞬時の圧力差および強い衝撃の作用で、成形顆粒状材料に大量の微細孔が形成され、成形顆粒状材料が膨張する。微細孔の形成過程において、成形顆粒状材料におけるグラファイトが強制剥離され、得た膨張顆粒状材料に対して上記のステップを複数回繰り返すことにより、成形顆粒状材料におけるグラファイトの単層グラフェンへの変換が実現され、単層グラフェン含有固化物を得ることができる。
【0023】
該調製方法は、ガスによる成形顆粒状材料に対する物理的作用を利用することにより、成形顆粒状材料におけるグラファイトのグラフェンへの変換を実現し、そして、グラファイトと化学反応しないため、単層グラフェン含有固化物の高純度が保証され、そして全調製過程において汚染物の発生がなく、工業上の量産に適する。
【0024】
(2)本開示に係る単層グラフェン含有固化物は、上記の単層グラフェン含有固化物の調製方法で調製され、直接工業生産に使用することができる。
【0025】
(3)本開示に係る単層グラフェンの調製方法は、単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行い、炭化処理により得た生成物を分離して、単層グラフェンを得る。該調製方法は、プロセスが安定で、操作が簡単で、工業上の量産に適する。該調製方法で調製される単層グラフェンは、純度が高く、性能が優れる。
【0026】
(4)本開示に係る単層グラフェンは、上記の単層グラフェンの調製方法で調製され、純度が高く、性能が優れ、直接工業上の生産加工に使用することができる。
【0027】
(5)上記の単層グラフェン含有固化物または単層グラフェンを原料とする本開示に係る単層グラフェン含有製品は、上記の単層グラフェン含有固化物または単層グラフェンと同様なメリットを有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示の具体的な実施形態または従来技術における技術案をより明瞭に説明するため、以下、具体的な実施形態または従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本開示のいくつかの実施形態を示すものにすぎない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに、他の図面を得ることが可能である。
【
図1】本開示の実施例1による成形顆粒状材料の形態図である。
【
図2】本開示の実施例1による膨張顆粒状材料の形態図である。
【
図3】本開示の実施例13による単層グラフェンの高分解能透過型電子顕微鏡走査写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例を用いて本開示の技術案を明瞭かつ完全に説明する。説明する実施例は、本開示の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではないことは無論である。本開示の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本開示の保護範囲に属する。
【0030】
本開示の第1局面において、単層グラフェン含有固化物の調製方法を提供する。該単層グラフェン含有固化物の調製方法は、
グラファイトと、固化材料と、選択可能な第1溶剤とを混合して固化成形させ、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料と、選択可能な第2溶剤とからなる系を加熱し、この系にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で加圧し、そして放圧して、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと、を含む。
【0031】
ステップaにおいて、固化材料は、グラファイトを粘着することができるとともに、後の処理工程(ステップb)において固化材料とグラファイトとの間の粘着作用を利用してグラファイトを剥離することができる材料である。該固化材料がグラファイトと混合して固化成形することができ、固化成形の作用として、グラファイトと固化材料とを混合させて成形顆粒状材料を調製することにより、グラファイトと固化材料との界面に強い粘着力をもたせ、この場合後の処理工程(ステップb)におけるグラファイトの剥離に有利である。
【0032】
本開示において、固化材料は具体的に限定されず、非限定の代表的な固化材料として、熱可塑性ポリマー、小麦粉または米粉などが挙げられる。
【0033】
非限定の代表的な固化成形の方式として、押出成形、プレス成形、シート成形またはプロー成形などが挙げられる。
【0034】
なお、本開示において、ステップaにいう「選択可能な第1溶剤」とは、第1溶剤を添加してもよく、添加しなくてもよいことを意味する。第1溶剤の添加の要否は、固化材料の特性に応じて判断する。一般的に、固化材料とグラファイトとを固化成形させるとき、粘性をもつ混合材料を形成できる場合、第1溶剤の添加が不要であり、粘性をもつ混合材料を形成できない場合、第1溶剤を添加する。
【0035】
ステップbにおいて、固化成形により得た成形顆粒状材料と選択可能な第2溶剤とを混合してなした系に対して加熱処理を行い、加熱処理により、成形顆粒状材料を半溶融状態にすることができ、そして、この系にガスを導入して加圧し、加圧処理により、ガスがこの系における成形顆粒状材料に対して作用力をかけ、該作用力が軟化した成形顆粒状材料の内部まで作用し、急に放圧すると、発生した瞬時の圧力差および強い衝撃の作用で、成形顆粒状材料が膨張するとともに、成形顆粒状材料に大量の微細孔が形成される。成形顆粒状材料における固化材料とグラファイトの界面に粘着力の働きで、成形顆粒状材料における固化材料が、微細孔の形成過程において、成形顆粒状材料におけるグラファイトを強制剥離し、膨張顆粒状材料を得る。
【0036】
なお、本開示にいう「選択可能な第2溶剤」とは、第2溶剤を添加してもよく、添加しなくてもよいことを意味する。第2溶剤の添加の要否は、成形顆粒状材料の特性に応じて判断する。本開示では、固化材料が小麦粉または米粉などの膨化可能な食物である場合、第2溶剤の添加不要であり、他の場合、第2溶剤を添加する。ステップbにおける第2溶剤の種類は具体的に限定されず、くっつくことがなく成形顆粒状材料同士をある程度隔てることができるものであればよい。
【0037】
成形顆粒状材料と選択可能な第2溶剤とからなる系にガスを導入する目的は、この系を規定の圧力に保つためである。導入するガスの種類は、具体的に限定されず、非限定の代表的なものとして、例えば、空気、酸素ガス、水素ガス、窒素ガスまたは二酸化炭素などの一般的なガスを用いることができる。
【0038】
加熱の温度と時間、および加圧の圧力と時間は、成形顆粒状材料の特性(例えば、軟化温度)に応じて決定する。非限定の代表的な加圧の圧力として、0.2MPa、0.5MPa、1.0MPa、1.5MPa、2.0MPa、5.0MPa、10.0MPa、15.0MPa、20.0MPa、25.0MPa、30.0MPa、35.0MPa、40.0MPa、45.0MPa、50.0MPa、55.0MPaまたは60.0MPaにすることができる。加圧の圧力は、0.2MPa未満になると、グラファイトのグラフェンへの変換が難しいため、低すぎてはいけない。加圧の圧力が高すぎて、60.0MPa超になると、グラファイトのグラフェンへの変換の効果をさらに向上させることができなくなり、逆により多くのエネルギーを消費して、生産コスト増を招く。
【0039】
ステップbを一回だけ実行するのは、膨張顆粒状材料におけるグラファイトの単層グラフェンへの変換の実現が難しいため、ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回(例えば、10~60回)繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcを実行する必要がある。
【0040】
なお、最初の膨張顆粒状材料を得たあと、その後において、ステップaとステップbを繰り返すとき、ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料を用いて実行する。ステップaとステップbを繰り返す回数は、ステップbにより得た膨張顆粒状材料におけるグラファイトの粒度および所望の単層グラフェンの含有量に応じて設定する。膨張顆粒状材料における単層グラフェンの含有量が一定の場合、グラファイトの粒度が大きいほど、ステップaとステップbをより多くの回数繰り返し、逆に、グラファイトの粒度が小さいほど、ステップaとステップbをより少ない回数繰り返す。
【0041】
膨張顆粒状材料におけるグラフェンまたはグラファイトの含有量を検測し、膨張顆粒状材料における、グラファイトから変換された単層グラフェンの質量分率が10~90%(例えば、質量分率が10%である場合、10%のグラファイトが単層グラフェンに変換されたことを意味し、質量分率が90%である場合、90%のグラファイトが単層グラフェンに変換されたことを意味する)に達したとき、ステップaとステップbの繰り返しを停止させ、このとき、単層グラフェン含有固化物が得られる。
【0042】
表面抵抗計/体積抵抗計を利用して膨張顆粒状材料の抵抗値を測定するようにしてもよく、繰り返し操作の前後の膨張顆粒状材料の抵抗値がほとんど変化しなくなったとき、ステップaとステップbの繰り返しを停止させ、このとき、単層グラフェン含有固化物が得られる。一般的に、単層グラフェン含有固化物の抵抗が小さいほど、グラファイトから変換された単層グラフェンの質量分率が高く、逆に、単層グラフェン含有固化物の抵抗が大きいほど、グラファイトから変換された単層グラフェンの質量分率が低い。
【0043】
該調製方法は、ガスによる成形顆粒状材料に対する物理的作用を利用することにより、成形顆粒状材料におけるグラファイトの多層グラフェンへの変換、さらに単層グラフェンへの変換を実現し、そして、グラファイトと化学反応しないため、単層グラフェン含有固化物の純度を保証でき、また、全調製過程において汚染物の発生がなく、工業上の量産に適する。
【0044】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップaにおいて、固化材料は、熱可塑性ポリマー、小麦粉または米粉のうちのいずれか1種を含む。
【0045】
好ましくは、ステップaにおいて、熱可塑性ポリマーは、樹脂、プラスチック、熱可塑性ゴム、熱可塑性エラストマーまたはホットメルト接着剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0046】
好ましくは、ステップaにおいて、樹脂は、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0047】
好ましくは、ステップaにおいて、プラスチックは、硬質熱可塑性プラスチック、軟質プラスチックまたは半硬質プラスチックのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0048】
好ましくは、ステップaにおいて、熱可塑性ゴムは、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic polyurethanes、TPU)、ニトリルブタジエンゴム(Nitrile Butadiene Rubber、NBR)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(styrene-butadiene block copolymer、SBS)、TPEまたはエチレンプロピレンジエンゴム(Ethylene Propylene Diene Monomer、EPDM)のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0049】
好ましくは、ステップaにおいて、前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(Thermoplastic polyester elastomer、TPEE)、ポリウレタン(Polyurethane、PUR)、熱可塑性加硫物(Thermoplastic Vulcanizate、TPV)または熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(Thermoplastic Elastomer Ether-Ester、TEEE)のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0050】
固化材料の具体的な種類を限定することにより、固化材料とグラファイトとの優れる固化効果を得ることができる。固化材料の種類は、実際の生産要求に応じて決定することができる。例えば、実際の生産において、単層グラフェン含有ポリエチレン材料に対して加工を行う場合、固定材料としてポリエチレンを用いる。
【0051】
ステップaに用いられるグラファイトが鱗片状または粉末状のものを用いることができ、グラファイトの粒度が用途に応じて設定することができる。本開示の選択可能な一実施形態として、ステップaにおいて、グラファイトの粒度は、20~12500メッシュである。非限定の代表的なグラファイトの粒度として、20メッシュ、30メッシュ、40メッシュ、50メッシュ、60メッシュ、80メッシュ、90メッシュ、100メッシュ、200メッシュ、400メッシュ、500メッシュ、800メッシュ、1000メッシュ、2000メッシュ、3000メッシュ、4000メッシュ、5000メッシュ、6000メッシュ、7000メッシュ、8000メッシュ、9000メッシュ、10000メッシュ、11000メッシュ、12000メッシュまたは12500メッシュにすることができる。
【0052】
さらにグラファイトの粒度を限定することにより、グラファイトと固化材料とがよく混合することができる。
【0053】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップaにおいて、グラファイトと固化材料の質量比は、(0.5~200):100である。グラファイトと固化材料の非限定の代表的な質量比として、0.5:100、1:100、5:100、10:100、20:100、30:100、40:100、50:100、60:100、70:100、80:100、90:100、100:100、120:100、150:100または200:100にすることができる。
【0054】
グラファイトと固化材料の質量比を具体的に限定することにより、最終製品である単層グラフェン含有固化物における単層グラフェンの含有量が適度であり、後の生産に直接利用することに有利である。
【0055】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップaにおいて、第1溶剤は、水を含む。
【0056】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップaにおいて、成形顆粒状材料の粒径(ここで、粒径は、すべての顆粒の粒径を同一の規定粒径範囲内に収めることを意味する)は、0.2~10mmである。
【0057】
成形顆粒状材料の非限定の代表的な粒径として、0.2mm、1mm、2mm、4mm、5mm、6mm、8mmまたは10mmにすることができる。
【0058】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップbにおいて、加熱の温度は、50~880°Cであり、加熱の時間は、5~60分である。
【0059】
非限定の代表的な加熱の温度として、50°C、60°C、100°C、150°C、200°C、250°C、300°C、350°C、400°C、450°C、500°C、550°C、600°C、650°C、700°C、750°C、800°C、850°Cまたは880°Cにすることができる。非限定の代表的な加熱の時間として、5分、6分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分または60分にすることができる。
【0060】
加熱の時間は、成形顆粒状材料(または固化材料)の軟化温度によって設定することができる。非限定の代表的な例として、例えば、固化材料がポリエチレンである場合、成形顆粒状材料の加熱時間を10~50分にし、固化材料が熱可塑性エラストマーである場合、顆粒状材料の加熱時間を5~30分にし、固化材料が米粉である場合、成形顆粒状材料の加熱時間を5~20分にする。
【0061】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップbにおいて、ガスは、空気、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素または窒素ガスのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0062】
なお、異なる種類のガスを混合して使用する場合、潜在的な安全上のリスクがないように、混合ガスにおける各種のガスの含有量を安全範囲に制御する必要がある。
【0063】
ガスの種類を具体的に限定することにより、ガスとグラファイトとが一切反応しなく、したがって、単層グラフェン含有固化物の純度が保証される。
【0064】
ステップbにおいて、その系にガスを導入して加圧するとき、加圧の圧力および時間は、異なる成形顆粒状材料の軟化温度に応じて設定することができる。
【0065】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップbにおいて、加圧の圧力は、0.3~50.0MPaであり、加圧の時間は、5~70分である。
【0066】
非限定の代表的な加圧の圧力として、0.3MPa、0.5MPa、1.0MPa、1.5MPa、2.0MPa、5.0MPa、10.0MPa、15.0MPa、20.0MPa、25.0MPa、30.0MPa、35.0MPa、40.0MPa、45.0MPaまたは50.0MPaにすることができる。非限定の代表的な加圧の時間として、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分または70分にすることができる。
【0067】
加熱の温度と時間、および加圧の圧力と時間を限定することにより、ガスが成形顆粒状材料に対して作用力をかけ、急に放圧する場合、成形顆粒状材料における微細孔の形成に有利であり、したがって、グラファイトの単層グラフェンへの変換に寄与できる。
【0068】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップbにおいて、常圧まで放圧し、常圧まで放圧する時間は、1分未満である。
【0069】
成形顆粒状材料に応じて放圧時間を決定する。一般的に、放圧時間は、短いほどよい。
【0070】
なお、常圧は、1気圧を指している。短時間で迅速に放圧することにより、ガスの、成形顆粒状材料におけるグラファイトに対する剥離作用がより強くなり、グラファイトの単層グラフェンへの変換に有利である。
【0071】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップbにおいて、第2溶剤は、水および/または潤滑剤を含む。ここで、「および/または」で表したのは、第2溶剤が水のみを含み、または潤滑剤のみを含み、または水および潤滑剤をともに含むことである。
【0072】
本開示の選択可能な一実施形態として、ステップbにおいて、潤滑剤は、パラフィン、ポリエチレンワックスまたはステアリン酸カルシウムのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0073】
潤滑剤の添加により、膨張顆粒状材料同士のくっつくことを防止することができる。
【0074】
本開示の選択可能な一実施形態として、単層グラフェン含有固化物の調製方法は、
グラファイトと、熱可塑性ポリマーを含む固化材料とを混合して押出成形を行い、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料と水とからなる系を密閉の反応装置に入れて50~880°Cの温度下で5~60分加熱し、そして、反応装置にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で5~50分加圧し、そして、1分以内で常圧まで放圧し、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと、を含む。
【0075】
または、前記単層グラフェン含有固化物の調製方法は、
グラファイトと、小麦粉または米粉を含む固化材料と、水とを混合して固化成形させ、乾燥し、成形顆粒状材料を得るステップaと、
成形顆粒状材料を密閉の反応装置に入れて60~200°Cの温度下で5~60分加熱し、そして、反応装置にガスを導入して0.2~60.0MPaの圧力下で5~50分加圧し、そして、1分以内で常圧まで放圧し、膨張顆粒状材料を得るステップbと、
ステップaにおけるグラファイトおよび固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップaとステップbを複数回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得るステップcと、を含む。
【0076】
単層グラフェン含有固化物の調製方法をさらに限定することにより、調製できた単層グラフェン含有固化物における単層グラフェンの含有量が比較的に高い。
【0077】
本開示の第2局面において、上記の単層グラフェン含有固化物の調製方法で調製できた単層グラフェン含有固化物を提供する。
【0078】
該単層グラフェン含有固化物おける単層グラフェンにより、該固化物に相応の特性が付与され、また、該単層グラフェン含有固化物が、更なる処理が不要で、直接工業生産に使用することができ、例えば、直接単層グラフェン含有プラスチック製品などを調製することができる。
【0079】
本開示の選択可能な一実施形態として、単層グラフェン含有固化物における単層グラフェンの質量分率は、20~99%である。
【0080】
単層グラフェン含有固化物において、単層グラフェンの非限定の代表的な質量分率として、例えば、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%または99%であることができる。
【0081】
本開示の第3局面において、単層グラフェンの調製方法を提供する。該単層グラフェンの調製方法は、
上記の単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行い、炭化処理により得た生成物を分離し、単層グラフェンを得るステップを含む。
【0082】
固化材料におけるグラファイトが完全にグラフェンに変換されたとき、単層グラフェン含有固化物の組成として、固化材料と単層グラフェンとを含み、固化材料におけるグラファイトのグラフェンへの変換が不完全であったとき、単層グラフェン含有固化物の実際の組成として、固化材料と、グラファイトと、単層グラフェンとを含む。炭化処理は、単層グラフェン含有固化物に対して高温加熱処理を行うことであり、炭化処理により、単層グラフェン含有固化物における固化材料(グラファイトを含み)が炭素材料になるように炭化され、この過程において、単層グラフェンへの影響がない。炭化処理を行った後、炭素材料と単層グラフェンとを分離すれば、単層グラフェンを得ることができる。
【0083】
なお、固化材料が熱可塑性ポリマーである場合、熱可塑性ポリマーの種類および分子量の大きさは、炭化処理の温度および時間を直接左右している。一般的に、熱可塑性ポリマーは、種類が同じである場合、単層グラフェンの性能パラメータを一定に保つため、熱可塑性ポリマーの分子量が大きいほど、炭化処理の温度を高くし、または炭化時間を長くすると要求される。
【0084】
該調製方法は、プロセスが安定で、操作が簡単で、工業上の量産に適する。該調製方法で調製できた単層グラフェンは、純度が高く、性能が優れ、直接工業生産に使用することができる。
【0085】
炭化処理を行って得た炭素材料に対してさらに黒鉛化処理を行ってもよく、そして、黒鉛化処理後の生成物と、固化材料と、選択可能な第1溶剤とを混合して、本開示に係る単層グラフェン含有固化物の調製方法で、単層グラフェン含有固化物を調製する。
【0086】
本開示の選択可能な一実施形態として、単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行い、そして、炭化処理により得た生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得る。
【0087】
本開示の選択可能な一実施形態として、炭化処理の温度は、200~500°Cであり、炭化処理の時間は、0.5~3時間である。非限定の代表的な炭化温度として、200°C、220°C、240°C、250°C、260°C、280°C、300°C、320°C、340°C、350°C、380°C、400°C、420°C、440°C、450°C、480°Cまたは500°Cにすることができる。非限定の代表的な炭化時間として、0.5時間、1時間、1.3時間、1.6時間、2.0時間、2.3時間、2.6時間または3.0時間にすることができる。
【0088】
好ましくは、比重により分離するときに採用する分離用媒体は水である。炭化処理により得た生成物における炭素材料と、単層グラフェンとは、水における比重が異なるため、水を利用して単層グラフェンを分離することができる。炭化処理により得た生成物における炭素材料の比重によって、水で比重の異なる水溶液を調製して、これによって分離の目的を果たすことができる。
【0089】
炭化温度、炭化時間および比重により分離するときに採用する分離用媒体を限定することにより、単層グラフェンを炭化された生成物から比較的完全に分離することができ、したがって、単層グラフェンの収率および純度を向上させることができる。
【0090】
本開示の第4局面として、上記の単層グラフェンの調製方法で調製できた単層グラフェンを提供する。
【0091】
上記の単層グラフェンの調製方法で調製できた単層グラフェンは、純度が高く、性能が優れ、直接工業生産に使用することができる。
【0092】
本開示の第5局面として、上記の単層グラフェン含有固化物または上記の単層グラフェンで調製できた単層グラフェン含有製品を提供する。
【0093】
単層グラフェン含有製品は、例えば、単層グラフェン含有医用ポリエチレン製品、単層グラフェン含有ABS複合材料などである。
【0094】
上記の単層グラフェン含有固化物または単層グラフェンを原料とする単層グラフェン含有製品は、上記の単層グラフェン含有固化物または単層グラフェンと同様なメリットを有する。
【0095】
以下の実施例および比較例を用いて本開示の技術効果を説明する。
【0096】
なお、実施例および比較例に使用される原料の入手経路は、下記の通りである。グラファイトが青島金涛グラファイト有限公司(QING DAO JIN TAO GRAPHITE CO.,LTD.)から購入されたもの(型番:80メッシュ)であり、ポリプロピレンが台塑工業(寧波)有限公司(FORMOSA INDUSTRIES (NINGBO) CO.,LTD.)から購入されたもの(型番:PP1120)であり、ポリカーボネートがコベストロポリマー(中国)株式会社(COVESTRO POLYMERS(CHINA)CO.,LTD.)から購入されたもの(型番:PC1703)であり、ホットメルト接着剤が無錫莱恩テクノロジー有限公司(Wuxi Laien Technology.,Ltd.)から購入されたもの(型番:LE-211)である。
【0097】
実施例1
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとポリプロピレン固化材料とを混合して押出機に入れて押出成形を行い、直径が3mm、長さが3mmの成形顆粒状材料を得、具体的に、
図1を参照する。ここで、グラファイトとポリプロピレン固化材料の質量比が30:100であり、グラファイトの平均粒度が100メッシュであり、ポリプロピレン固化材料の重量平均分子量が1500であった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、水を加えて(成形顆粒状材料と水の質量比が100:60であった)反応釜に対して85°Cの温度下で20分加熱し、そして、空気を導入して1.4MPaの圧力下で15分加圧し、圧力を10分維持し、1秒以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得、具体的に、
図2を参照する。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよびポリプロピレン固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを28回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0098】
実施例2
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとポリプロピレン固化材料とを混合して押出機に入れて押出成形を行い、直径が3mm、長さが3mmの成形顆粒状材料を得た。ここで、グラファイトとポリプロピレン固化材料の質量比が50:100であり、グラファイトの平均粒度が1500メッシュであり、ポリプロピレンの重量平均分子量が8000であった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、水を加えて(成形顆粒状材料と水の質量比が100:60であった)反応釜に対して125°Cの温度下で10分加熱し、そして、空気を導入して4MPaの圧力下で25分加圧し、圧力を20分維持し、1秒以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得た。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよびポリプロピレン固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを18回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0099】
実施例3
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとポリプロピレン固化材料とを混合して押出機に入れて押出成形を行い、直径が3mm、長さが3mmの成形顆粒状材料を得た。ここで、グラファイトとポリプロピレン固化材料の質量比が50:100であり、グラファイトの平均粒度が1500メッシュであり、ポリプロピレンの重量平均分子量が10000であった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、水を加えて(成形顆粒状材料と水の質量比が100:60であった)反応釜に対して125°Cの温度下で20分加熱し、そして、空気を導入して12MPaの圧力下で20分加圧し、圧力を10分維持し、1秒以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得た。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよびポリプロピレン固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを28回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0100】
実施例4
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとポリウレタン固化材料とを混合して押出機に入れて押出成形を行い、直径が3mm、長さが3mmの成形顆粒状材料を得た。ここで、グラファイトとポリウレタン固化材料の質量比が60:100であり、グラファイトの平均粒度が1500メッシュであり、ポリウレタンの重量平均分子量が10000であった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、水を加えて(成形顆粒状材料と水の質量比が100:60であった)反応釜に対して65°Cの温度下で12分加熱し、そして、空気を導入して3MPaの圧力下で11分加圧し、圧力を8分維持し、1秒以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得た。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよびポリウレタン固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを22回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0101】
実施例5
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとポリカーボネート固化材料とを混合して押出機に入れて押出成形を行い、直径が3mm、長さが3mmの成形顆粒状材料を得た。ここで、グラファイトとポリカーボネート固化材料の質量比が50:100であり、グラファイトの平均粒度が2500メッシュであり、ポリカーボネート固化材料の重量平均分子量が20000であった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、水を加えて(成形顆粒状材料と水の質量比が100:60であった)反応釜に対して150°Cの温度下で65分加熱し、そして、空気を導入して57MPaの圧力下で70分加圧し、圧力を70分維持し、2秒以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得た。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよびポリカーボネート固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを14回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0102】
実施例6
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとホットメルト接着剤固化材料とを混合して押出機に入れて押出成形を行い、直径が5mm、長さが5mmの成形顆粒状材料を得た。ここで、グラファイトとホットメルト接着剤固化材料の質量比が40:100であり、グラファイトの平均粒度が5000メッシュであり、ホットメルト接着剤の重量平均分子量が100000であった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、水を加えて(成形顆粒状材料と水の質量比が100:60であった)反応釜に対して70°Cの温度下で8分加熱し、そして、空気を導入して1.2MPaの圧力下で7分加圧し、圧力を4分維持し、1秒以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得た。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよびホットメルト接着剤固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを10回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0103】
実施例7
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトと小麦粉と水とを混合して製麺機に入れてストランドカットで(ストランド状に伸ばしてカットして)造粒し、そして乾燥し、成形顆粒状材料を得た。ここで、グラファイトと小麦粉と水との質量比が30:100:35であり、グラファイトの平均粒度が4000メッシュであった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、反応釜に対して100°Cの温度下で10分加熱し、そして、空気を導入して1.5MPaの圧力下で3分加圧し、圧力を5分維持し、0.5秒以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得た。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよび小麦粉の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを14回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0104】
実施例8
本実施例による単層グラフェン含有固化物の調製方法において、実施例7に対して、ステップのaにおける小麦粉の代わりに米粉を用い、その他のステップおよびプロセスパラメータを実施例7と同じようにした。
【0105】
実施例9
本実施例による単層グラフェン含有固化物の調製方法において、実施例1に対して、ステップのaにおけるグラファイトとポリプロピレン固化材料の質量比を50:100にし、その他のステップおよびプロセスパラメータを実施例1と同じようにした。
【0106】
実施例10
本実施例による単層グラフェン含有固化物の調製方法において、ステップのbにおける加圧の圧力を60MPaにし、その他のステップおよびプロセスパラメータを実施例1と同じようにした。
【0107】
実施例11
本実施例による単層グラフェン含有固化物の調製方法において、ステップのb加圧の圧力を20MPaにし、その他のステップおよびプロセスパラメータを実施例1と同じようにした。
【0108】
実施例12
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとエチレンプロピレンジエンゴム固化材料とを混合して押出機に入れて押出成形を行い、直径が5mm、長さが5mmの成形顆粒状材料を得た。ここで、グラファイトとエチレンプロピレンジエンゴム固化材料の質量比が40:100であり、グラファイトの平均粒度が5000メッシュであり、エチレンプロピレンジエンゴムのムーニー粘度が45N・mであった。
b.成形顆粒状材料を反応釜に入れ、水を加えて(成形顆粒状材料と水の質量比が100:60であった)反応釜に対して95°Cの温度下で8分加熱し、そして、空気を導入して1.6MPaの圧力下で15分加圧し、圧力を4分維持し、0.5分以内で常圧まで迅速に放圧し、膨張顆粒状材料を得た。
c.ステップのaにおけるグラファイトおよびエチレンプロピレンジエンゴム固化材料の代わりに膨張顆粒状材料に対し、ステップのaとステップのbを15回繰り返して、単層グラフェン含有固化物を得た。
【0109】
実施例13
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例1による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、下記のステップを含む。
単層グラフェン含有固化物に対して350°Cの温度下で炭化処理を30分行い、そして、水を用いて炭化処理後の生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得た。
【0110】
実施例14
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例2による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0111】
実施例15
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例3による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0112】
実施例16
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例4による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0113】
実施例17
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェンを調製した。
実施例5による単層グラフェン含有固化物に対して500°Cの温度下で炭化処理を180分行い、そして、水を用いて炭化処理後の生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得た。
【0114】
実施例18
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェンを調製した。
実施例6による単層グラフェン含有固化物に対して260°Cの温度下で炭化処理を45分行い、そして、水を用いて炭化処理後の生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得た。
【0115】
実施例19
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェンを調製した。
実施例7による単層グラフェン含有固化物に対して200°Cの温度下で炭化処理を25分行い、そして、水を用いて炭化処理後の生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得た。
【0116】
実施例20
本実施例では、下記の調製方法で単層グラフェンを調製した。
実施例8による単層グラフェン含有固化物に対して180°Cの温度下で炭化処理を18分行い、そして、水を用いて炭化された生成物を比重により分離し、単層グラフェンを得た。
【0117】
実施例21
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例9による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0118】
実施例22
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例10による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0119】
実施例23
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例11による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0120】
実施例24
本実施例による単層グラフェンの調製方法は、実施例12による単層グラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0121】
比較例1
本比較例によるグラフェン含有固化物の調製方法において、ステップのbにおいて加熱処理が行われなく、その他のステップおよびプロセスパラメータが実施例1と同じようにした。
【0122】
比較例2
本比較例では、下記の調製方法でグラフェン含有固化物を調製した。
a.グラファイトとポリプロピレン固化材料とを混合して成形スラリーを調製した。グラファイトとポリプロピレン固化材料の質量比が30:100であり、グラファイトの平均粒度が100メッシュであり、ポリプロピレン固化材料の重量平均分子量が1500であった。
b.成形スラリーを反応釜に入れ、その他のステップおよびプロセスパラメータが実施例1と同じようにした。
【0123】
比較例3
本比較例によるグラフェン含有固化物の調製方法は、ステップのbにおける加圧の圧力を0.15MPaにし、その他のステップおよびプロセスパラメータが実施例1と同じようにした。
【0124】
比較例4
本比較例によるグラフェンの調製方法は、比較例1によるグラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0125】
比較例5
本比較例によるグラフェンの調製方法は、比較例2によるグラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0126】
比較例6
本比較例によるグラフェンの調製方法は、比較例3によるグラフェン含有固化物を原料として調製を行い、具体的な調製方法が実施例13と同じであった。
【0127】
下記の実験例を用いて上記の各実施例および比較例の技術効果を検証した。
【0128】
実験例1
実施例13を例とし、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を利用して実施例13による単層グラフェンに対して走査を行い、具体的に、
図3に示されている。
図3から分かるように、単層グラフェンは、形態が比較的にはっきりで、断面構造が真っ直ぐな直線状のものではなく、厚さが約0.18nmであった。
【0129】
各実施例13~24および比較例4~6による単層グラフェンまたはグラフェンの平均厚さ、光透過率、収率および純度に対して検測を行った。具体的に、表1に示されている。
【0130】
【0131】
表1に示されたデータから分かるように、本開示の各実施例による単層グラフェンの調製方法は、全体として比較例より優れている。
【0132】
具体的に、樹脂またはホットメルト接着剤などの熱可塑性ポリマーを固化材料として、グラファイトと混合して、押出機による造粒、および膨張、分離を経て、単層グラフェン含有固化物を得ることができ、単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行って得た単層グラフェンの収率が非常に高かった。小麦粉または米粉を固化材料として使用した場合、膨張、分離を経て、得た単層グラフェン含有固化物における単層グラフェンの含有量が比較的に少なく、この単層グラフェン含有固化物に対して炭化処理を行うことにより単層グラフェンを得ることができるが、得た単層グラフェンの純度が比較的に低かった。その主な原因として、熱可塑性ポリマーとグラファイトとが押出機による押出、造粒を経たあと、粘着力が比較的に高く、小麦粉または米粉が、押出機を利用して造粒する場合、十分な粘着力に達することができない。このため、固化材料を選択するとき、熱可塑性ポリマーが好ましい。
【0133】
なお、上記の各実施例は、本開示の技術案を説明するためのものにすぎず、それを限定するものではない。上記の各実施例を用いて本開示を詳細に説明したが、当業者は、上記の各実施例に記載された技術案を変更してもよく、そのうちの一部またはすべての技術的特徴に対して均等置換を行ってもよい。これらの変更または置換は、該当技術案の本質を本開示の各実施例の技術案の範囲から逸脱させていない。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本開示に係る単層グラフェン含有固化物の調製方法は、全調製過程において汚染物の発生がないため、単層グラフェン含有固化物の高純度を保証できる。該単層グラフェン含有固化物は、直接工業生産に使用することができ、炭化処理、分離を経て単層グラフェンを得ることもできる。該調製方法は、プロセスが安定で、操作が簡単で、工業上の量産に適する。