(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】リン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法及びリン酸マンガン鉄リチウムの調製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20240828BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240828BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240828BHJP
C07C 51/41 20060101ALI20240828BHJP
C07C 55/06 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
H01M4/58
H01M4/136
C07C51/41
C07C55/06
(21)【出願番号】P 2022538239
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2020136685
(87)【国際公開番号】W WO2021121241
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】201911308409.9
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522244193
【氏名又は名称】ジャンスー リシテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU LITHITECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マ, イン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン, チェン
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ヨンナン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジァウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ジァレ
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104752718(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110323434(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104752719(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105047922(CN,A)
【文献】特開2019-040854(JP,A)
【文献】特表2018-520462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
H01M 4/00ー4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)マンガン塩と鉄塩の混合溶液である液体材料Aと蓚酸溶液である液体材料Bを用意する、
(2)液体材料Aと液体材料Bを超重力回転床内で共沈反応させて第1スラリーを得る、
(3)前記第1スラリーを洗浄濾過して濾過ケークを得る、
(4)前記濾過ケークを水と混合し、炭素源を加えて、均一に攪拌し、第2スラリーを得る、
(5)前記第2スラリーを均質化する、
(6)均質化した第2スラリーを乾燥処理し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体を得る、
ステップを含むナノスケールのリン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法
であって、
ステップ(1)において、前記マンガン塩は硫酸マンガンであり、前記鉄塩は硫酸第一鉄であり、マンガン塩と鉄塩とのモル比が1:9~9:1であり、液体材料Aの濃度は0.1~3mol/Lであり、液体材料Bの濃度は0.1~3mol/Lであり、
ステップ(2)において、液体材料Aと液体材料Bの送込方式は並流であり、液体材料Aと液体材料Bの送込速度はそれぞれ10mL~5000mL/minに制御され、共沈反応の温度は20~80℃であり、超重力回転床の回転速度は500~3000rpmであり、
リン酸マンガン鉄リチウム前駆体は蓚酸マンガン鉄である、方法。
【請求項2】
ステップ(2)において、前記超重力回転床は横型超重力回転床及び縦型超重力回転床から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(3)において、洗浄濾過に使用される設備は遠心濾過器、加圧濾過器、バグフィルタ、メンブレンフィルタ、真空吸引濾過器、真空濾過器のうちの1種である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(4)において、前記炭素源はショ糖、ブドウ糖、PVA、PEG、カーボンナノチューブ、グラフェンのうちの1種以上である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(5)において、横型超重力回転床及び縦型超重力回転床から選ばれる超重力回転床を用いて均質化する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(6)において、噴霧乾燥設備を用いて前記乾燥処理を行い、前記噴霧乾燥設備の入口温度を100~280℃に設定し、出口温度を50~180℃に設定する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1で得られたリン酸マンガン鉄リチウム前駆体をリチウム塩と混合し、乾燥させて、混合物を得る、及び、
窒素ガス雰囲気下で前記混合物を焼成処理し、リン酸マンガン鉄リチウムを得る、
ステップを含むリン酸マンガン鉄リチウムの調製方法。
【請求項8】
前記リチウム塩
はリン酸二水素リチウ
ムであり、
乾燥設備は噴霧乾燥器であり、前記噴霧乾燥器の入口温度は100~280℃であり、出口温度は50~180℃であり、
焼成炉内で前記焼成処理が行われ、前記焼成炉はローラーハースキルン、プッシャーキルン、回転炉、箱型炉、ベル炉のうちの1種であり、焼成温度は300℃~1000℃であり、焼成時間は5~15時間である請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は化学工業結晶技術分野に属し、特に、超重力技術によりナノスケールのリン酸マンガン鉄リチウム前駆体の蓚酸マンガン鉄又はリン酸マンガン鉄を調製する方法に関する。
【0002】
[技術背景]
様々な電子製品や電気自動車の普及に伴って、電池容量や電気自動車の航続距離に対する要求は益々高まっている。このような流れを受け、高ニッケル三元系正極活物質は必然的な発展方向となる。三元系正極活物質において、ニッケル含有量は高いほど、電池を組み立てた後の放電比容量は高くなる。しかし、どんなことにも二面性があり、高ニッケル三元系正極活物質も完璧ではない。多くの専門家が指摘しているように、ニッケル比率が高いほど、正極活物質全体の熱安定性は悪くなる。高温での不安定性、低温での低効率は元々、三元リチウム電池の欠点である。まずは、安全性の障害を克服しなければならない。
【0003】
多方面の研究を通じて、高ニッケル三元系正極活物質にリン酸マンガン鉄リチウムをブレンドすることが現段階で最適な選択肢の一つになり得ることがわかっている。リン酸マンガン鉄リチウムをブレンドすることで高ニッケル三元系正極活物質が向上することは以下の点に体現される:
一点目は、安全性である。高ニッケル三元リン酸マンガン鉄リチウムをブレンドするやり方は既に多くの電池メーカーに認証されており、三元に20%~30%のリン酸マンガン鉄リチウムをブレンドして調製された複合材料は純粋な三元材料に比べ、熱分解温度が5~10%高くなり、放熱量は40~60%低くなる。高ニッケル三元に長年存在していた安全性の問題を材料の性質から解消できることが証明された。
二点目は、コストである。現在、三元材料コストは高止まりしており、特に、高ニッケル三元系正極活物質NCM811の価格はリン酸マンガン鉄リチウム材料よりも100%以上高い。よって、リン酸マンガン鉄リチウム材料を高ニッケル三元系正極にブレンドすれば材料コストを大幅に削減することができる。
三点目は、電池寿命である。理論上、三元材料のサイクル寿命はニッケル含有量の増加に伴って徐々に減少する。現在、高ニッケル三元の寿命は約1200~1500回であり、しかも、実際にはフル充電フル放電区間で実現されているわけではないため、三元の高エネルギー密度の利点は相殺されている。リン酸マンガン鉄リチウムは高サイクル寿命特性を有するオリビン型構造材料であり、三元にリン酸マンガン鉄リチウムをブレンドした後のサイクル寿命はブレンド比率の多寡により20%~30%以上向上する。
【0004】
現在、純粋なリン酸マンガン鉄リチウム電池の用途も広く認知されており、純粋なリン酸マンガン鉄リチウム電池は中央値電圧プラトーが高く、サイクル性能が良好で、レート性能に優れるなどの特徴により、デジタル3C電池や電動二輪車への応用において非常に大きな可能性を持っている。
【0005】
リン酸マンガン鉄リチウム材料を、高ニッケル三元系正極活物質とより良くマッチさせるために、2つの条件を満たす必要がある。1つ目は、三元系正極活物質粒子の押圧密度に影響を与えずに三元材料の空隙に充填できるよう、リン酸マンガン鉄リチウムの粒度を小さくしなければならない。2つ目は、リン酸マンガン鉄リチウム材料の電気抵抗率を小さくしなければならない。これもリン酸マンガン鉄リチウム材料の技術的な障害となっている。
【0006】
超重力回転床(RPB)は、その発生する強力な遠心力により、反応に関与する流体(そのうちの一相は液体である)を、地球重力場より数百倍から数千倍の超重力環境下の多孔質媒体又は孔路内で流動接触させ、液体をμm又はnmスケールの液膜、液糸、液滴に引き裂き、巨大かつ急速に更新される相界面を生成する。このため、超重力環境下における相間物質移動とミクロの混合プロセスは大幅に強化され、通常の設備に比べ、物質移動係数を10~1000倍高くすることができる。
【0007】
本発明は主に超重力回転床設備を用いて、ナノスケールのリン酸マンガン鉄リチウム前駆体(蓚酸マンガン鉄又はリン酸マンガン鉄)を調製する。反応プロセスを制御することにより、前駆体調製プロセスで製品粒度及び電気抵抗率の制御を完了させることができ、最終的なリン酸マンガン鉄リチウム材料の調製に強固な基礎を築くことができる。
【0008】
[発明の概要]
(技術課題)
本発明は、超重力合成方法及びシステムを用いて、性能が安定したリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質前駆体を調製することを目的とする。さらに、この前駆体を用いてナノスケールの、粒子径が均一で、電気抵抗率が低いリン酸マンガン鉄リチウム材料を焼成して得ることができ、現在のリン酸マンガン鉄リチウム製造における技術的な障害を克服することができる。
【0009】
(技術手段)
本発明の一つの態様に基づき、
(1)マンガン塩と鉄塩の混合溶液である液体材料Aと蓚酸又はリン酸溶液である液体材料Bを用意する、
(2)液体材料Aと液体材料Bを超重力回転床内で共沈反応させて第1スラリーを得る、
(3)前記第1スラリーを洗浄濾過して濾過ケークを得る、
(4)前記濾過ケークを水と混合し、炭素源を加えて、均一に攪拌し、第2スラリーを得る、
(5)前記第2スラリーを均質化する、
(6)均質化した第2スラリーを乾燥処理し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体を得る、
ステップを含むリン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様に基づき、
請求項1で得られたリン酸マンガン鉄リチウム前駆体をリチウム塩と混合し、乾燥させて、混合物を得る、及び、
窒素ガス雰囲気下で前記混合物を焼成処理し、リン酸マンガン鉄リチウムを得る、
ステップを含むリン酸マンガン鉄リチウムの調製方法を提供する。
【0011】
本発明のもう一つの態様に基づき、平均粒度D50は10nm~1μmであり、好ましくは、上記リン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法により調製されるリン酸マンガン鉄リチウム前駆体を提供する。
【0012】
本発明のもう一つの態様に基づき、80kgでの電気抵抗率は10Ω・cm~500Ω・cmであり、好ましくは、上記リン酸マンガン鉄リチウムの調製方法により調製されるリン酸マンガン鉄リチウムを提供する。
【0013】
本発明のもう一つの態様に基づき、上記リン酸マンガン鉄リチウムが正極活物質として含まれる正極を提供する。
【0014】
本発明のもう一つの態様に基づき、上記正極が含まれるリチウム二次電池を提供する。
【0015】
本発明のもう一つの態様に基づき、上記によるリチウム二次電池が単電池として含まれる電池モジュールを提供する。
【0016】
本発明のもう一つの態様に基づき、上記電池モジュールが含まれる電池パックを提供する。
【0017】
本発明のもう一つの態様に基づき、上記電池パックが電源として含まれる、電動工具、電気自動車及び蓄電装置から選ばれる中型又は大型装置を提供する。
【0018】
(有益な效果)
本発明は超重力回転床を用いて、マンガン塩及び鉄塩の混合溶液と蓚酸溶液又はリン酸溶液を超重力共沈反応させ、生成物に対してカーボンコーティング及び超重力均質化を行い、乾燥させ、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体としての蓚酸マンガン鉄又はリン酸マンガン鉄を得る。具体的に、超重力回転床で発生する強力な遠心力作用により、巨大なせん断応力が表面張力を克服し、液体が巨大な相間接触界面まで伸び、物質移動プロセスを大幅に強化することができる。ロータに入った液体はロータ内の充填材の作用を受け、強力な遠心力でロータの外周に押し出され、このプロセスにおいて液体は充填材により分散され、ナノスケール液滴を形成するとともにナノスケール材料が共沈される。
【0019】
この他、本発明はさらに、超重力回転床を用いてカーボンコーティング後の均質化を行うことができ、そのプロセスにおいて固体材料が充填材内で大幅に分散され、比表面積が増加し、表面エネルギーが増強され、より均一な均質化效果が得られ、また、均質化時間を大幅に短縮させることができる。
【0020】
よって、本発明のリン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法は以下の有益な效果を奏する:
1、得られたリン酸マンガン鉄リチウム前駆体材料の粒子径はリアクターを用いた従来の方法で調製された前駆体材料よりも細かく、均一である。
2、本発明の方法による調製速度は上記従来の方法より5~100倍向上する。
3、得られたリン酸マンガン鉄リチウム前駆体材料において、カーボンコーティングはより均一になる。
【0021】
この他、本発明のリン酸マンガン鉄リチウムの調製方法により調製されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の電気抵抗率は従来の方法で調製されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1はリン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製装置及び調製フロー概略図である。
【
図2】
図2はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の調製装置及び調製フロー概略図である。
【
図3】
図3は本発明の一つの実施形態における、実施例B1により調製された正極活物質を含む電池の初回充放電曲線である。
【
図4】
図4は本発明の別の実施形態における、実施例B1により調製された正極活物質を含む電池の異なるレートでのサイクル性能曲線及び充放電効率グラフである。
【0023】
(図面符号)
100:超重力回転床
101:液体材料A送込口
102:液体材料B送込口
103:排出口
200:遠心機
201:溶液送込口
300:攪拌槽
301:濾過ケーク投入口
302:炭素源送込口
303:攪拌槽排出口
400:超重力回転床
401:スラリー送込口
402:均質化後スラリー排出口
500:噴霧乾燥設備
501:溶液送込口
600:材料混合システム
601:前駆体貯蔵タンク
602:リチウム塩貯蔵タンク
603:混合攪拌槽
700:噴霧乾燥器
800:焼成炉
【0024】
[発明を実施するための形態]
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。本明細書及び請求の範囲で使用される技術用語又は単語は一般的な又は辞書における定義に限定的に理解されるべきではなく、また、発明者が最良の可能な方式で発明を説明するために技術用語の概念を適切に定義できる原則を基に、本発明の技術思想に相応する意味や概念に理解されるべきである。
【0025】
1.リン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法
本発明は以下のステップを含むリン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法を提供する。
【0026】
(1.1)マンガン塩と鉄塩の混合溶液である液体材料Aと蓚酸又はリン酸溶液である液体材料Bを用意する。
固体マンガン塩と鉄塩を1:9~9:1の比率で混合した後、純水に溶解して0.1~3mol濃度の液体材料Aを調製する。前記マンガン塩は硫酸マンガン、酢酸マンガン、クエン酸マンガン、塩化マンガンのうちの1種以上とすることができ、前記鉄塩は硫酸第一鉄、酢酸第一鉄、塩化第一鉄のうちの1種以上とすることができる。
【0027】
この他、固体蓚酸を純水に溶解して0.1~3mol濃度の蓚酸溶液を調製するか、又はリン酸溶液を水で0.1~3mol濃度に希釈してリン酸溶液を調製して、液体材料Bを得る。
【0028】
(1.2)液体材料Aと液体材料Bを超重力回転床内で共沈反応させ、沈殿物を含む第1スラリーを得る。
超重力回転床は、発生した強力な遠心力により、液体材料AとBを地球重力場より数百倍から数千倍の超重力環境下の多孔質媒体又は孔路内で流動接触させ、μm又はnmスケールの液膜、液糸、液滴に引き裂き、巨大かつ急速に更新される相界面を生成する。このため、超重力環境下における液体材料AとBの相間物質移動とミクロの混合プロセスは大幅に強化される。通常の設備に比べ、超重力回転床の物質移動係数は10~1000倍高くすることができる。
前記超重力回転床は横型超重力回転床及び縦型超重力回転床から選ぶことができる。
【0029】
共沈反応とは、溶液中に均一相で溶液に存在する2種以上のカチオンを含み、沈殿剤を添加し、沈殿反応後に、各成分の均一な沈殿物を得ることができる。本発明において、液体材料Aがマンガンイオン及び鉄イオンの2つのカチオンを提供し、液体材料Bが沈殿剤となる。共沈法の利点は、得られるリン酸マンガン鉄リチウム前駆体材料の粒度を非常に均一にできることである。
【0030】
超重力回転床内により共沈反応を行うことにより、得られる製品は成分が均一であり、粒度が細かく、均一であり、且つ反応速度は他の設備よりも明らかに優位性を持つ。他の反応により前駆体の調製を行う場合、まず、製品の各元素の均一性を保証できない。次に、プロセスが複雑になり、製造コストの急激な上昇を招くおそれがある。
【0031】
液体材料Aと液体材料Bの送込方式は並流、向流、交叉流のうちの1種とすることができる。
液体材料Aと液体材料Bの送込速度はそれぞれ10mL~5000mL/minに制御することができる。
共沈反応の温度は20~60℃とすることができる。
超重力回転床の回転速度は500~3000rpmとすることができる。
【0032】
(1.3)前記第1スラリーを洗浄濾過して濾過ケークを得る。
共沈反応後、得られた第1スラリーには大量の硫酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン又は塩化物イオンなどの物質を含むため、遠心機、バグフィルタ又は吸引濾過装置などの設備によりスラリーを洗浄濾過し、その中の不純物を取り除き、共沈反応で得られる沈殿物、即ち濾過ケークのみを残す必要がある。
洗浄濾過に用いる設備は、遠心濾過器、加圧濾過器、バグフィルタ、メンブレンフィルタ、真空吸引濾過器、真空濾過器のうちの1種とすることができる。
【0033】
(1.4)前記濾過ケークを水と混合し、炭素源を加えて、均一に攪拌し、第2スラリーを得る。
リン酸マンガン鉄リチウム材料は、それ自身の構造のため、導電性が低く、炭素源を添加しないと、最終的に得られる材料を正極活物質として使用できない。よって、カーボンコーティングを行って正極活物質の導電性を強化する必要がある。本発明において、炭素源を添加することにより、後で得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の導電性を十分に強化することができる。
前記炭素源は有機炭素源とすることができ、例えばショ糖、ブドウ糖、PVA、PEG、カーボンナノチューブ、グラフェンのうちの1種以上とすることができる。
【0034】
(1.5)前記第2スラリーを均質化する。
沈殿物と炭素源を含む第2スラリーを均質化設備内で均質化を行い、2つの物質を均一に分布させ、噴霧乾燥処理に備える。均質化されない場合、又は均質化效果が低い場合、得られる材料のカーボンコーティングは均一ではない。コーティング層が厚すぎる部分は、リチウムイオンの経路が塞がれ、物質移動プロセスに影響を及ぼす。コーティング層が薄すぎる部分は導電性が低くなる。よって、均質化されない場合、又は均質化效果が低い場合、正極活物質の電気化学性能は明らかな影響を受ける。
横型超重力回転床及び縦型超重力回転床から選ばれる超重力回転床を用いて均質化することができる。
【0035】
(1.6)均質化した第2スラリーを乾燥処理し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体を得る。
均質化した第2スラリーを噴霧乾燥処理し、沈殿物を急速に乾燥させると同時に、カーボンを沈殿物の表面に均一にコーティングし、カーボンコーティング層を形成し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体材料を得る。
噴霧乾燥設備の入口温度は100~280℃に設定し、出口温度は50~180℃に設定することができる。噴霧乾燥温度は一つの適切な範囲内に設定しなければならず、温度が低すぎると、噴霧効率は低下し、歩留まりに影響する。温度が高すぎると、材料内で第一鉄とマンガンイオンの酸化が生じやすくなり、材料の性能に影響する。
【0036】
図1を参照し、まず、液体材料Aと液体材料Bをそれぞれ液体材料A送込口101及び液体材料B送込口102から同時に超重力回転床100内にポンプ注入して共沈反応を行い、排出口103から第1スラリーを得る。
その後、第1スラリーを溶液送込口201から遠心機200に入れ、遠心洗浄濾過を行い、濾過ケークを得る。
前記濾過ケークを濾過ケーク投入口301から攪拌槽300に入れて水と混合し、炭素源送込口302から炭素源を加え、均一に攪拌し、第2スラリーを得る。
その後、第2スラリーを攪拌槽排出口303及びスラリー送込口401から超重力回転床400内に搬送し、超重力回転床400内で均質化を行う。
均質化した第2スラリーを均質化後スラリー排出口402及び溶液送込口から噴霧乾燥設備500に出し、噴霧乾燥処理を行い、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体を得る。
【0037】
2.リン酸マンガン鉄リチウムの調製方法
本発明は以下のステップを含むリン酸マンガン鉄リチウムの調製方法を提供する。
【0038】
(2.1)上記により得られたリン酸マンガン鉄リチウム前駆体とリチウム塩を混合し、混合物を得る。
前記リチウム塩は炭酸リチウム、水酸化リチウム、リン酸二水素リチウム、クエン酸リチウム、酢酸リチウムのうちの1種以上とすることができる。
混合するリチウム塩が炭酸リチウム固体のような固体状である場合、固相と固相の間の混合を行い、その後、次のステップに進む。混合するリチウム塩がリン酸二水素リチウム溶液のような液体状である場合、固液混合を行い、その後、さらに均質化と噴霧乾燥を行って、得られた材料は次のステップに進む。
【0039】
(2.2)窒素ガス雰囲気下で前記混合物を焼成処理し、リン酸マンガン鉄リチウムを得る。
焼成炉内で前記焼成処理が行われ、前記焼成炉はローラーハースキルン、プッシャーキルン、回転炉、箱型炉、ベル炉のうちの1種とすることができる。
焼成処理中、一般的には窒素ガスを入れて保護し、焼成温度は300℃~1000℃とし、焼成時間は5~15時間とすることができる。焼成温度は一つの適切な範囲内に制御しなければならず、焼成温度が低すぎると、材料の結晶型が形成されにくい。焼成温度が高すぎると、結晶型が完全すぎて、材料の硬度が高くなり、その後の材料の加工に適さなくなる。
【0040】
図2を参照し、まず、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体とリチウム塩をそれぞれ前駆体貯蔵タンク601及びリチウム塩貯蔵タンク602内に入れ、その後、化学量論比に従ってリン酸マンガン鉄リチウム前駆体とリチウム塩を混合攪拌槽603内に搬送して混合攪拌を行う。その後、得られた混合物を噴霧乾燥器700に搬送して噴霧乾燥処理を行う。
乾燥した後の混合物を焼成炉800内に移して窒素ガス雰囲気下で焼成処理を行い、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。
【0041】
3.リン酸マンガン鉄リチウム前駆体及びリン酸マンガン鉄リチウム
本発明は、平均粒度D50は10nm~1μmであり、好ましくは10nm~500nmであり、より好ましくは10nm~300nmであり、さらに好ましくは10nm~200nmであるリン酸マンガン鉄リチウム前駆体を提供する。
超重力回転床を用いて調製されたリン酸マンガン鉄リチウム前駆体材料は、粒度が細かく、最小粒度は約10~100nmに達することができ、その後、ナノスケールのリン酸マンガン鉄リチウム材料を調製するのに基礎を築くことができる。粒度が非常に細かいリン酸マンガン鉄リチウム材料を三元材料とのブレンドプロセスに応用する時、リン酸マンガン鉄リチウム材料は三元材料を充填及び被覆することができ、材料の電極シートの押圧密度に影響を与えることなく、三元材料電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。また、リン酸マンガン鉄リチウムは三元材料の空隙に充填され、三元材料が外力の衝撃又はせん断を受ける時、リン酸マンガン鉄リチウム材料は弾性ひずみ力を提供でき、三元材料電池の安全性能を向上させることができる。
【0042】
本発明はさらに、80kgでの電気抵抗率は10Ω・cm~500Ω・cmであり、好ましくは10Ω・cm~300Ω・cmであり、より好ましくは10Ω・cm~200Ω・cmであり、さらに好ましくは10Ω・cm~100Ω・cmであるリン酸マンガン鉄リチウムを提供する。前記リン酸マンガン鉄リチウムは正極活物質として用いることができる。本発明で調製されたリン酸マンガン鉄リチウム材料の80kgでの電気抵抗率は非常に低く、最も低い場合は約10Ω・cmに達することができる。低電気抵抗率のリン酸マンガン鉄リチウムと三元系正極材料を混合する時、材料全体の電気抵抗率に影響しないだけでなく、リチウムイオンの埋め込みと取り外しのためにより多くのリチウムイオン経路を構築でき、ブレンドした材料の電気化学性能を大幅に向上させることができる。
【0043】
本発明はさらに、本発明によるリン酸マンガン鉄リチウムが正極活物質として含まれるリチウム二次電池用正極を提供する。リチウム二次電池用正極は正極集電体及び正極集電体に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は本発明による正極活物質を含む。
【0044】
本発明はさらに、上記正極が含まれるリチウム二次電池を提供する。
【0045】
本発明はさらに、前記リチウム二次電池が単電池として含まれる電池モジュールを提供する。
【0046】
本発明によるリチウム二次電池は電池モジュールの単電池として用いることができ、且つ前記電池モジュールを電池パックに応用することができる。前記電池パックは、電動工具、純電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)及びプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)を含む電気自動車、又は蓄電装置のうちの少なくとも一つの中型及び大型設備の電源として使用することができる。
【0047】
(好適な実施形態)
以下、実施例を参照しながら本発明について詳細に説明する。しかし、本発明の実施例は他の各形式に修正でき、また、本発明の範囲は以下に説明される実施例に限定されるものと理解されるべきではない。当業者が本発明をより完全に説明できるよう本発明の実施例を提供する。
【0048】
下記実施例における実験方法において、具体的な条件が注記されていない場合は、通常、本分野の通常の条件又は製造メーカーが推奨する条件に従う。使用する原料及び設備について、特段の説明がない限り、通常の市販で入手できる原料及び設備である。
【0049】
実施例A1
以下のフローによりリン酸マンガン鉄リチウム前駆体を調製する。
(1)2mol/Lの硫酸第一鉄と硫酸マンガン(鉄とマンガンのモル比は5:5)の混合溶液、および2mol/Lの蓚酸溶液を調製する。
(2)並流方式により、前記混合溶液と蓚酸溶液を1:1(体積比)の送込速度で超重力回転床(縦型超重力回転床、杭州科力化学工業設備有限公司、BZ650-3P)にポンプ注入して共沈反応させる。前記超重力回転床内の反応温度は25℃であり、2つの原料の送込速度はそれぞれ100mL/minに制御し、超重力回転床の回転速度は2000rpmである。こうして蓚酸マンガン鉄第1スラリーを得る。
(3)遠心機(江蘇聖力遠心機製造有限公司PSD/SD1000)により前記蓚酸マンガン鉄第1スラリーを遠心洗浄し、蓚酸マンガン鉄濾過ケークを得る。
(4)得られた蓚酸マンガン鉄濾過ケークと純水を混合し、共に攪拌槽内に投入し、その後、有機炭素源としてのブドウ糖を添加し、固形分20%とする。攪拌槽を起動し、攪拌速度を200rpmに制御し、2時間攪拌し、第2スラリーを得る。
(5)前記第2スラリーを均質化装置(南通克莱爾、JMA22捷流式分散乳化均質化装置)にポンプ注入して均質化を行う。
(6)均質化した第2スラリーを噴霧乾燥器により噴霧乾燥処理し、前記噴霧乾燥器の入口温度は200℃であり、出口温度は120℃であり、蓚酸マンガン鉄固体を得る。これがリン酸マンガン鉄リチウム前駆体である。
【0050】
実施例A2
実施例A1と同じフローを用いる。但しステップ(1)において、2mol/Lの蓚酸溶液を2mol/Lのリン酸溶液に差し替える。そして最終的にリン酸マンガン鉄固体を得る。これがリン酸マンガン鉄リチウム前駆体である。
【0051】
実施例A3
実施例A1と同じフローを用いる。但しステップ(5)において、均質化装置を超重力回転床(縦型超重力回転床、杭州科力化学工業設備有限公司 BZ650-3P)に差し替える。そして最終的に蓚酸マンガン鉄固体を得る。これがリン酸マンガン鉄リチウム前駆体である。
【0052】
実施例A4
実施例A2と同じフローを用いる。但しステップ(5)において、均質化装置を超重力回転床(縦型超重力回転床、杭州科力化学工業設備有限公司 BZ650-3P)に差し替える。そして最終的にリン酸マンガン鉄固体を得る。これがリン酸マンガン鉄リチウム前駆体である。
【0053】
対比例A1
実施例A1と同じフローを用いる。但しステップ(2)において、超重力回転床を共沈リアクターに差し替える。そして最終的に蓚酸マンガン鉄を得る。これがリン酸マンガン鉄リチウム前駆体である。
【0054】
対比例A2
実施例A2と同じフローを用いる。但しステップ(2)において、超重力回転床を共沈リアクターに差し替える。そして最終的にリン酸マンガン鉄固体を得る。これがリン酸マンガン鉄リチウム前駆体である。
【0055】
実験例1 粒度試験
レーザ粒度測定器(OMECLS-POP)を用いて製品の粒度D10、D50、D90を試験する。まず2gの測定製品粉末をビーカーに入れ、その後、純水100mL及び分散剤2mLを加え、超音波発振器で5分間超音波分散させ、その後、レーザ粒度測定器に注入する。媒体屈折率は1.33、材料屈折率は1.741とし、D10、D50、D90パラメータの試験を行う。各サンプル毎に三組のデータを並行して試験して平均値を取る。結果は表1に示される。
【0056】
【0057】
表1からわかるように、実施例A1、A2、A3及びA4では、超重力技術によりリン酸マンガン鉄リチウム前駆体を調製し、2つの前駆体の粒度D50はいずれもナノスケールであり、且つ粒子径分布が狭い。粒度分布が非常に均一であることがわかる。
【0058】
一方、対比例1及び対比例2では、共沈リアクターによりリン酸マンガン鉄リチウム前駆体材料を調製し、調製された前駆体粒度D50は10.12μm及び8.43μmであり、粒度が大きく、且つ粒子径分布範囲が広い。粒度が不均一であることがわかる。
【0059】
実施例B1
実施例A1における蓚酸マンガン鉄とリン酸二水素リチウムを化学量論比で混合し、噴霧乾燥処理後、回転炉内にて窒素ガス保護下で、700℃で15時間焼成し、リン酸マンガン鉄リチウム材料を得る。
【0060】
実施例B2
実施例A2におけるリン酸マンガン鉄と炭酸リチウムを化学量論比で混合し、その後、回転炉内にて窒素ガス保護下で、700℃で15時間焼成し、リン酸マンガン鉄リチウム材料を得る。
【0061】
実施例B3
実施例A3における蓚酸マンガン鉄とリン酸二水素リチウムを化学量論比で混合した後、噴霧乾燥処理後、回転炉内にて窒素ガス保護下で、700℃で15時間焼成し、リン酸マンガン鉄リチウム正極材料を得る。
【0062】
実施例B4
実施例A4におけるリン酸マンガン鉄と炭酸リチウムを化学量論比で混合し、その後、回転炉内にて窒素ガス保護下で、700℃で15時間焼成し、リン酸マンガン鉄リチウム材料を得る。
【0063】
対比例B1
対比例A1における蓚酸マンガン鉄とリン酸二水素リチウムを化学量論比で混合し、噴霧乾燥処理後、回転炉内にて窒素ガス保護下で、700℃で15時間焼成し、リン酸マンガン鉄リチウム材料を得る。
【0064】
対比例B2
対比例A2におけるリン酸マンガン鉄と炭酸リチウムを化学量論比で混合し、その後、回転炉内にて窒素ガス保護下で、700℃で15時間焼成し、リン酸マンガン鉄リチウム材料を得る。
【0065】
実験例2 電気抵抗率試験
電気抵抗率測定器(晶格電子 SZT-D)を用いて製品の電気抵抗率を試験する。まず、一定量の測定粉末を電気抵抗率測定器のマガジンが一杯になるまでマガジンに入れ、圧力を40.0kgに調整し、40kgの電気抵抗率を試験し、引き続き圧力を80kgに増やし、80kgの電気抵抗率を試験する。各サンプル毎に三組のデータを並行して試験して平均値を取る。結果は表2に示される。
【0066】
【0067】
表2からわかるように、実施例B1及びB2では、超重力回転床を用いて調製されたリン酸マンガン鉄リチウム材料の粒度は細かく、均一であり、比表面積が巨大であり、カーボンコーティングを容易且つ均一にするため、得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極材料の電気抵抗率は他のプロセスで製造されたリン酸マンガン鉄リチウム材料よりも明らかに小さい。
【0068】
実施例B3及びB4では、超重力回転床によりナノ粒度の前駆体を調製し、超重力回転床によりカーボンコーティング前の均質化を行う。このプロセスで製造されたリン酸マンガン鉄リチウム材料は粒度が細かく、均一であるだけでなく、材料表面に均一にカーボンコーティングすることができる。よって、実施例B3及びB4において調製されたリン酸マンガン鉄リチウム材料の電気抵抗率はより低くなる。
【0069】
対比例B1及びB2では、共沈リアクターにより前駆体材料を調製し、一般的な均質化装置によりカーボンコーティング前の均質化を行った。得られた前駆体材料粒度D50はマイクロメートルスケールであり、粒子寸法は大きく、表面エネルギーが小さく、カーボンコーティング後の均一性は低く、カーボンコーティングが厚い部分はリチウムイオン伝導に影響しやすく、コーティングが薄い部分は電子伝導に影響しやすく、最終的に材料全体の電気化学性能に影響する。電気抵抗率が高く、80kgの電気抵抗率はいずれも500Ω・cmを超える。
【0070】
実験例3 電気化学試験
実施例B1で調製されたリン酸マンガン鉄リチウム材料(正極活物質)に対して電気化学試験を行う。前記電気化学試験はCR2032コイン型半電池に対して試験するように行う。
【0071】
CR2032コイン型半電池は以下の方法で製造される。
まず、正極スラリーを調製する。具体的に、10重量部のPVDF(N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解したもの、PVDF:NMP=3:100(重量))を用意し、均一に攪拌し、その後、10重量部のSuper P及び80重量部の正極活物質を加え、全て均一に攪拌し、正極スラリーを得る。
【0072】
その後、前記正極スラリーをアルミニウム箔上に均一に塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10時間乾燥させ、正極スラリー内のNMPを全て揮発させて、正極シートを得る。
【0073】
その後、正極シートを15mm直径のディスクにカットし、シートプレス機内に入れ、1MPaの圧力で5秒圧着する。
【0074】
その後、圧着した正極シートをグローブボックスに入れて電池を組み立てる。前記グローブボックスにはアルゴンガス雰囲気を導入され保護されている。そのうち、純リチウムシートを負極シートとし、ポリエチレンをセパレータとする。また、六フッ化リン酸リチウム1mol/Lを、モル比1:1のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒に溶解して得られた溶液を電解液とする。正極シート、セパレータ及び負極シートを一緒に圧着して、電極アセンブリを作製し、その後、当該電極アセンブリを電池ケース内に入れる。その後、電解液を前記ケース内に注入し、CR2032コイン型半電池を製造する。
【0075】
電池の電気性能試験はサイクル性能試験及びレート性能試験を含む。サイクル性能試験及びレート性能試験はどちらも電池試験機(Neware、CT-3008)において、2.5V-4.3Vの電圧範囲内で、異なる充放電レートで、異なる回数フル充電フル放電して測定する。0.1Cレートで8回試験し、0.2Cレートで8回試験し、0.5Cレートで20回試験し、1Cレートで50回試験し、2Cレートで50回試験する。測定の結果は
図3、4に示される。
【0076】
図3は実施例B1により調製されたリン酸マンガン鉄リチウム材料(正極活物質)を含む電池の初回充放電曲線である。
【0077】
図3からわかるように、実施例B1で調製された正極活物質を含む電池は、充放電中に2つの電圧プラトーを含み、それぞれマンガン及び鉄の電圧プラトーであり、2つの電圧プラトーはどちらも安定し、且つマンガン電圧プラトーの電圧値は高く、中央値電圧プラトーは高い。
【0078】
この他、
図3からわかるように、電池の初回充電比容量は165mAh/hに達し、初回放電比容量は150mAh/gに達し、初回充放電効率は90.9%に達することができる。これは明らかに他のリン酸マンガン鉄リチウム正極材料を含む電池の初回充放電効率よりも高い。
【0079】
図4は実施例B1により調製されたリン酸マンガン鉄リチウム材料(正極活物質)を含む電池の異なるレートでのサイクル性能曲線及び充放電効率グラフである。
【0080】
図4からわかるように、0.1Cレートでの放電比容量は約150mAh/gに維持でき、1Cレートでの放電比容量は140mAh/g以上に維持でき、2Cレートでも140mAh/g近くの放電比容量を維持できる。したがって、本発明のリン酸マンガン鉄リチウム材料を含む電池のレート性能はより優れる。
【0081】
以上の説明は本発明の好ましくは実施形態であり、当業者にとって、本発明の思想を逸脱しない前提において改良や潤色を行うことができ、これらの改良や潤色も本発明の保護範囲に入ると理解されるべきである。
(付記1)
(1)マンガン塩と鉄塩の混合溶液である液体材料Aと蓚酸又はリン酸溶液である液体材料Bを用意する、
(2)液体材料Aと液体材料Bを超重力回転床内で共沈反応させて第1スラリーを得る、
(3)前記第1スラリーを洗浄濾過して濾過ケークを得る、
(4)前記濾過ケークを水と混合し、炭素源を加えて、均一に攪拌し、第2スラリーを得る、
(5)前記第2スラリーを均質化する、
(6)均質化した第2スラリーを乾燥処理し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体を得る、
ステップを含むリン酸マンガン鉄リチウム前駆体の調製方法。
(付記2)
ステップ(1)において、前記マンガン塩は硫酸マンガン、酢酸マンガン、クエン酸マンガン、塩化マンガンのうちから選ばれる1種以上であり、
前記鉄塩は硫酸第一鉄、酢酸第一鉄、塩化第一鉄のうちの1種以上である付記1に記載の方法。
(付記3)
ステップ(1)において、液体材料Aの濃度は0.1~3mol/Lであり、液体材料Bの濃度は0.1~3mol/Lである付記1に記載の方法。
(付記4)
ステップ(2)において、前記超重力回転床は横型超重力回転床及び縦型超重力回転床から選ばれる付記1に記載の方法。
(付記5)
ステップ(2)において、液体材料Aと液体材料Bの送込方式は並流、向流、交叉流のうちの1種であり、
液体材料Aと液体材料Bの送込速度はそれぞれ10mL~5000mL/minに制御される付記1に記載の方法。
(付記6)
ステップ(2)において、共沈反応の温度は20~80℃であり、超重力回転床の回転速度は500~3000rpmである付記1に記載の方法。
(付記7)
ステップ(3)において、洗浄濾過に使用される設備は遠心濾過器、加圧濾過器、バグフィルタ、メンブレンフィルタ、真空吸引濾過器、真空濾過器のうちの1種である付記1に記載の方法。
(付記8)
ステップ(4)において、前記炭素源はショ糖、ブドウ糖、PVA、PEG、カーボンナノチューブ、グラフェンのうちの1種以上である付記1に記載の方法。
(付記9)
ステップ(5)において、横型超重力回転床及び縦型超重力回転床から選ばれる超重力回転床を用いて均質化する付記1に記載の方法。
(付記10)
ステップ(6)において、噴霧乾燥設備を用いて前記乾燥処理を行い、前記噴霧乾燥設備の入口温度を100~280℃に設定し、出口温度を50~180℃に設定する付記1に記載の方法。
(付記11)
付記1で得られたリン酸マンガン鉄リチウム前駆体をリチウム塩と混合し、乾燥させて、混合物を得る、及び、
窒素ガス雰囲気下で前記混合物を焼成処理し、リン酸マンガン鉄リチウムを得る、
ステップを含むリン酸マンガン鉄リチウムの調製方法。
(付記12)
前記リチウム塩は炭酸リチウム、水酸化リチウム、リン酸二水素リチウム、クエン酸リチウム、酢酸リチウムのうちの1種以上であり、
乾燥設備は噴霧乾燥器であり、好ましくは、前記噴霧乾燥器の入口温度は100~280℃であり、出口温度は50~180℃であり、
焼成炉内で前記焼成処理が行われ、前記焼成炉はローラーハースキルン、プッシャーキルン、回転炉、箱型炉、ベル炉のうちの1種であり、好ましくは、焼成温度は300℃~1000℃であり、焼成時間は5~15時間である付記11に記載の方法。
(付記13)
平均粒度D50は10nm~1μmであり、好ましくは、付記1~10のいずれかに記載の方法により調製されるリン酸マンガン鉄リチウム前駆体。
(付記14)
80kgでの電気抵抗率は10Ω・cm~500Ω・cmであり、好ましくは、付記11~12のいずれかに記載の方法により調製されるリン酸マンガン鉄リチウム。
(付記15)
付記14に記載のリン酸マンガン鉄リチウムが正極活物質として含まれる正極。
(付記16)
付記15に記載の正極が含まれるリチウム二次電池。
(付記17)
付記16に記載のリチウム二次電池が単電池として含まれる電池モジュール。
(付記18)
付記17に記載の電池モジュールが含まれる電池パック。
(付記19)
付記18に記載の電池パックが電源として含まれる、電動工具、電気自動車及び蓄電装置から選ばれる中型又は大型装置。