(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】環状ジペプチド、プリンヌクレオチド及び/又はアミノ酸とチキンエキスとを含む組成物、その製造方法、並びに、環状ジペプチド、プリンヌクレオチド及び/又はアミノ酸、並びにチキンエキスの使用
(51)【国際特許分類】
A23L 33/18 20160101AFI20240828BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240828BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240828BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20240828BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20240828BHJP
A61K 31/708 20060101ALI20240828BHJP
A61K 35/57 20150101ALI20240828BHJP
A61K 38/01 20060101ALI20240828BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20240828BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240828BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
A23L33/18
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/10
A23L33/175
A61K31/405
A61K31/708
A61K35/57
A61K38/01
A61K38/12
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022538443
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025296
(87)【国際公開番号】W WO2021131106
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】10201913617Y
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中尾 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】シャンメイ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シャージャン リン
(72)【発明者】
【氏名】シム エリック キアン-シウン
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0293427(US,A1)
【文献】特開2003-048850(JP,A)
【文献】Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology,2015年,Vol.42,pp.1287-1295
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物、及び、チキンエキスを含み、前記トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物がCyclo(Ala-Hyp)
又はその塩、Cyclo(Pro-Gly)
又はその塩、グアノシン
又はリン酸化グアノシン、
及びトリプトファン
又はその塩を含む組成物。
【請求項2】
Cyclo(Ala-Hyp)
又はその塩、Cyclo(Pro-Gly)
又はその塩、グアノシン
又はリン酸化グアノシン、及びトリプトファン
又はその塩を合計で0.01~99重量%含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物に由来し、HPLCゲル濾過で測定される分子量が1100未満であり、重量平均分子量が150~250の成分を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記チキンエキスが、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
飲食品又は医薬品である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
炎症を抑制するために使用される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
RANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)及びマクロファージ炎症タンパク質-1(MIP-1)からなる群より選択される1以上のサイトカインの産生を抑制する請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
炎症性の状態又は疾患の予防又は改善のために使用される請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を、チキンエキスと混合する工程を含み、
前記トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物が、Cyclo(Ala-Hyp)
又はその塩、Cyclo(Pro-Gly)
又はその塩、グアノシン
又はリン酸化グアノシン、
及びトリプトファン
又はその塩を含む、組成物の製造方法。
【請求項10】
前記チキンエキスが、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む、請求項
9に記載の製造方法。
【請求項11】
抗炎症用組成物を製造するための、
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及びチキンエキスの使用であって、
前記トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物が、Cyclo(Ala-Hyp)
又はその塩、Cyclo(Pro-Gly)
又はその塩、グアノシン
又はリン酸化グアノシン、
及びトリプトファン
又はその塩を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ジペプチド、プリンヌクレオチド及び/又はアミノ酸とチキンエキスとを含む組成物及びその製造方法に関する。本発明は、また、抗炎症用組成物を製造するための環状ジペプチド、プリンヌクレオチド及び/又はアミノ酸、並びにチキンエキスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、細胞損傷によりヒスタミン及びキニンなどが放出され、血管拡張、毛細管透過性増大、及び炎症部位へのマクロファージの集結が起こり、それによって、感染部位の血流量増加、浮腫、兔疫細胞及び抗体の移動、痛症、発熱などが起こる現象である。
【0003】
近年、効果的な炎症緩和のために、炎症関連タンパク質の発現を抑制することができる成分に関わる研究が進められている。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とステロイド性抗炎症薬(SAID)とを始めとした、多様なメカニズムの炎症抑制用薬物が開発されているが、それらは副作用の懸念がある。そのため、より安全であり、抗炎症作用を有する成分に対する要求が依然として存在する。
【0004】
例えば、特許文献1では、抗炎症活性を有するテロメラーゼ由来のペプチドを活性成分として含む抗炎症組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、環状ジペプチド、プリンヌクレオチド、アミノ酸及び/又はそれらの1つ又は複数の塩と、キンエキスとを含む新規な組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、抗炎症作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つと、チキンエキスとを組み合わせて用いることにより、抗炎症活性が増強することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つと、チキンエキスとを含む組成物。
〔2〕Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つを合計で0.01~99重量%含む上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物に由来し、HPLCゲル濾過で測定される分子量が1100未満であり、重量平均分子量が150~250の成分を含む上記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含む上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕上記チキンエキスが、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕飲食品又は医薬品である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕炎症を抑制するために使用される、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕RANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)及びマクロファージ炎症タンパク質-1(MIP-1)からなる群より選択される1以上のサイトカインの産生を抑制する上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕炎症性の状態又は疾患の予防又は改善のために使用される上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つを、チキンエキスと混合する工程を含む、組成物の製造方法。
〔11〕上記工程が、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つを含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を、チキンエキスと混合する工程である、上記〔10〕に記載の製造方法。
〔12〕上記チキンエキスが、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む、上記〔10〕又は〔11〕に記載の製造方法。
〔13〕抗炎症用組成物を製造するための、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つ、並びにチキンエキスの使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つと、チキンエキスとを含む新規な組成物を提供することができる。本発明の組成物は、炎症及び関節痛を抑制するための飲食品組成物又は医薬品組成物として使用することができる。Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びにそれらの塩並びにチキンエキスは、飲食品等として摂取可能であり、安全性が高いという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の調製方法を簡略に説明したフロー図である。
【
図2】
図2は、実施例でトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)を分画して得られた7つの画分のうち、画分P6の炎症マーカーの産生抑制効果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、IL-6の産生抑制に対するHCII、画分P6、及びP6化合物(Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、及びトリプトファンの組み合わせ)の効果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、MCP-1の産生抑制に対するHCII、画分P6、P6化合物(Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、及びトリプトファンの組み合わせ)及びCyclo(Pro-Gly)(cPG)の効果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、炎症マーカーMIP-1βの産生抑制に対するトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)とチキンエキス(CE)の組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)は、炎症マーカーMCP-1及びMIP-1βの産生抑制に対するHCII、CE、画分P6の効果、HCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、画分P6とCEとの組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図7-1】
図7-1(a)、
図7-1(b)は、炎症マーカーIL-6及びIL-8の産生抑制に対するHCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、P6化合物とCEとの組み合わせの相乗効果、cPGとCEとの組み合わせの相乗効果、Cyclo(Ala-Hyp)(cAH)とCEとの組み合わせの相乗効果、グアノシンとCEとの組み合わせの相乗効果、又はトリプトファンとCEとの組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図7-2】
図7-2(c)、
図7-2(d)は、炎症マーカーIL-9及びMCP-1の産生抑制に対するHCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、P6化合物とCEとの組み合わせの相乗効果、cPGとCEとの組み合わせの相乗効果、cAHとCEとの組み合わせの相乗効果、グアノシンとCEとの組み合わせの相乗効果、又はトリプトファンとCEとの組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図7-3】
図7-3(e)、
図7-3(f)は、炎症マーカーMIP-1β及びRANTESの産生抑制に対するHCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、P6化合物とCEとの組み合わせの相乗効果、cPGとCEとの組み合わせの相乗効果、cAHとCEとの組み合わせの相乗効果、グアノシンとCEとの組み合わせの相乗効果、又はトリプトファンとCEとの組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、レジスタンストレーニングの実施回数がレジスタンストレーニングの全期間の10パーセンタイル未満の被験者(n=8)の各処理群において、7日目及び14日目のVAS疼痛スコアに対する、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)の摂取(14日間)による効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様によれば、本発明の組成物は、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つと、チキンエキスとを含む。
【0012】
Cyclo(Ala-Hyp)及びCyclo(Pro-Gly)は、環状ジペプチドである。本明細書において「環状ジペプチド」とは、アミノ酸を構成単位とすることを特徴とし、N末端側アミノ酸のアミノ基とC末端側アミノ酸のカルボキシル基とが脱水縮合することにより生成したジケトピペラジン構造を有する化合物をいう。なお、本明細書において、環状ジペプチドのアミノ酸構成が同じであれば、それらの記載順序はいずれが先でも構わなく、例えば、〔Cyclo(Ala-Hyp)〕と〔Cyclo(Hyp-Ala)〕は同じ環状ジペプチドを表すものである。
グアノシンはプリンヌクレオシドであり、トリプトファンはアミノ酸である。
【0013】
Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン及びトリプトファンは、動植物のタンパク質等を加水分解して得られたものであってもよいし、人工的に合成したものでもよい。Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン及びトリプトファンは、好ましくは2型コラーゲン加水分解物由来であり、より好ましくはトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物由来であり、更に好ましくはトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物に由来し、HPLCゲル濾過で測定される分子量が1100未満であり、重量平均分子量が150~200の画分中に含まれる。本明細書では、「トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物に由来し、HPLCゲル濾過で測定される分子量が110未満であり、重量平均分子量が150~200の画分」を「画分6」ともいう。
【0014】
Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン及びトリプトファンは、精製されたものを使用してもよく、これらを含む画分6の形態で組成物に含有させてもよいし、画分6を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の形態で組成物に含有させてもよい。好ましい態様においては、本発明の組成物は、画分6又はトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含む。本発明の組成物は、画分6又はトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含むと抗炎症作用がより高くなる。
【0015】
Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)及びトリプトファンは、無機酸又は有機酸との塩や無機塩基又は有機塩基との塩の形態として、本発明の組成物に含むことができる。酸や塩基としては、塩の用途に応じて選択できるが、飲食品、医薬品等への用途を考慮すると、以下に挙げる飲食品又は薬学的に許容される塩が好ましい。上記無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等を挙げることができる。有機酸塩としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、又はフマル酸等のジカルボン酸との塩、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸等のモノカルボン酸との塩等を挙げる事ができる。無機塩基としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩、アンモニア等である。有機塩基との塩としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミンの様なモノ-、ジ-又はトリ-アルキルアミン塩、モノ-、ジ-又はトリ-ヒドロキシアルキルアミン塩、グアニジン塩、N-メチルグルコサミン塩等を挙げる事ができる。
本発明の組成物において、グアノシンはリン酸化グアノシンであってもよい。
【0016】
<トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物>
本発明の組成物は、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含むことが好ましい。
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(以下では、「トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物」を「HCII」と記載することがある)は、2型コラーゲンを酵素等で加水分解することで得ることができる。2型コラーゲンは、トリ軟骨から公知の方法で抽出することができる。また、本発明で用いられるトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、本分野で用いられる通常の技術を用いて軟骨から調製することができる。
例えば、トリ軟骨を酵素処理することにより2型コラーゲン加水分解物を得ることができる。具体的に、(1)トリ軟骨を液体中にて加熱する前処理工程、及び(2)前処理工程後のトリ軟骨を酵素処理する工程により、2型コラーゲン加水分解物を調製することができる。なお、上記工程(2)で用いられる酵素は、本分野で通常用いられる酵素であればよく、特に限定されないが、例えば、コラゲナーゼ、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィシン、カテプシン、ペプシン、キモシン、トリプシン、プロテアーゼ、スブチリシン、アミノペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ及びこれらの酵素を混合した酵素製剤等を用いることができる。ただし、2型コラーゲン加水分解物の調製方法は酵素処理方法に限定されるものではない。
【0017】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物には、トリ軟骨を加水分解して得られる溶液を使用してもよく、その濃縮物若しくは乾燥粉末又はこれらの精製物を使用してもよい。トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の精製物としては、例えばトリ軟骨を加水分解して得られる溶液を限外ろ過や膜処理、分液操作又は樹脂等による分画処理に供して精製度を上げたものが用いられる。Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の精製度を上げた後、凍結乾燥や噴霧乾燥等によって粉末化しても良い。
【0018】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、通常Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むペプチド混合物であり、2型コラーゲン由来のコラーゲンペプチドということもできる。
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が100~20,000であることが好ましく、2,000~8,000であることがより好ましく、3,000~7,000であることが更に好ましい。分子量及び重量平均分子量は、ユーロフィンHPAEC-PAD法で測定することができる。
【0019】
一態様において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物をゲル濾過法等の方法により分子量の大きさに応じて分画し、得られる画分の1又は2以上を組み合わせて本発明の組成物に使用することができる。
本態様の組成物に用いるトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を分画した画分としては、上述の画分6が好ましい。本態様においては、画分6と、画分6以外の他の画分とを組み合わせて組成物に使用してもよい。
【0020】
<チキンエキス>
本発明で用いられるチキンエキス(以下ではCEと記載することがある)としては、トリ肉を原料として用い、液体中で加熱することにより得られる抽出物等を用いることができ、市販品を用いてもよい。原料に骨、軟骨、脚等が含まれていてもよいが、トリ頭部及び内蔵を含まないことが好ましい。
【0021】
上記チキンエキス(CE)の市販品としては、例えば、「BEC Brand’s Essence of Chicken(サントリー食品アジア社製)」や、「ScotchTM Essence of Chicken(Scotch Industrial(タイ)製)」、「Quaker Essence of chicken(Standard Foods Corporation(台湾)製)」、「Chicken stock and broth of SWANSONTM(Campbell Soup Company(NYSE:CPB)製)」、「Drip Chicken Essence(Eu Yan Sang International(シンガポール)製)」、「Boned Chicken Tonic(Eu Yan Sang International(シンガポール)製)」、「Boiled Essence of Chicken(Lao Xie Zhen(台湾)製)」等が挙げられる。いずれの市販品を用いてもよいが、なかでもBEC Brand’s Essence of Chickenを用いることが好ましい。
【0022】
本発明で用いられるチキンエキスを熱水抽出により製造する場合、本分野で用いられている通常の方法により製造することができる。例えば、100℃以上、好ましくは125℃以上の液体を用いた常圧抽出及び/又は加圧抽出を行い、得られた抽出物を膜処理やろ過することにより、チキンエキスを製造することができる。具体的には、(3)トリ肉を液体中にて加熱する前処理工程、及び(4)上記前処理後に液体を交換し、再度加熱する工程により得られる抽出物が挙げられる。なお、工程(3)及び工程(4)における加熱処理は、溶媒中で行うのが好ましい。溶媒としては、水、エタノール、又はこれらの混合物等を用いるのが好ましい。
チキンエキスは、上記のような方法で得られる抽出液、その希釈液、濃縮物又は乾燥粉末、及び、これらの精製物を含む。精製物としては、例えばチキンエキスの抽出液を限外ろ過や膜処理、分液操作又は樹脂等による分画処理に供して精製度を上げたものが用いられる。チキンエキスの精製度を上げた後、凍結乾燥や噴霧乾燥等によって粉末化しても良い。
【0023】
本発明で用いられるチキンエキスは、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むことが好ましい。カルノシンは、βアラニンとヒスチジンのジペプチドでβアラニル・ヒスチジンとなったものである。アンセリンは、ヒスチジン部分がメチル化されβアラニル・1メチルヒスチジンとなったものである。
カルノシンの塩及びアンセリンの塩としては、例えば、上述したCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、及びトリプトファンの塩と同じものを含む。
【0024】
本発明の組成物がカルノシン及び/又はその塩を含む場合、カルノシン及び/又はその塩の含有量は、例えば、該組成物中にカルノシン換算で、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、カルノシン及び/又はその塩の含有量は、例えば、該組成物中にカルノシン換算で、0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0025】
本発明の組成物がアンセリン及び/又はその塩を含む場合、アンセリン及び/又はその塩の含有量は、例えば、該組成物中にアンセリン換算で、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、アンセリン及び/又はその塩の含有量は、例えば、該組成物中にアンセリン換算で0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0026】
カルノシン、アンセリン、及びそれらの塩は、例えばHPLCで定量することができる。本発明の飲食品組成物は、カルノシン及び/又はその塩、並びにアンセリン及び/又はその塩を含むことがより好ましい。
【0027】
上記カルノシン、アンセリン、及びそれらの塩のカルノシン及アンセリン換算の合計重量と、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩の遊離体換算の合計重量との重量比(カルノシン及びアンセリンの合計/遊離体換算の合計)は、1/15000~200/1であることが好ましい。上記重量比は、より好ましくは、1/200~200/1であり、更に好ましくは、1/50~50/1である。
【0028】
上記「Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン、及びそれらの塩の遊離体」において、Cyclo(Ala-Hyp)塩の遊離体とはCyclo(Ala-Hyp)であり、Cyclo(Pro-Gly)塩の遊離体とはCyclo(Pro-Gly)であり、グアノシン塩の遊離体とはグアノシンであり、トリプトファン塩の遊離体とはトリプトファンである。
【0029】
上記画分6と、カルノシン、アンセリン、及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計との重量比(画分6/カルノシン及びアンセリンの合計)は、1/100~10/1であることが好ましい。上記重量比は、さらに好ましくは、1/100~5/1である。
【0030】
上記トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(固形分換算)と、カルノシン、アンセリン、及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計との重量比(HCII/カルノシン及びアンセリンの合計)は、10000/1~10/1であることが好ましい。上記重量比は、さらに好ましくは、1000/1~100/1である。
【0031】
本発明の組成物に含まれる各成分の含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
一態様において、本発明の組成物中のCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩の合計含有量は、例えば、該組成物中に0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩の合計含有量は、例えば、該組成物中に0.01~99重量%が好ましく、0.1~90重量%がより好ましい。
【0032】
一態様において、本発明の組成物中の画分6の含有量は、例えば、該組成物中に0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、画分6の含有量は、例えば、該組成物中に0.01~99重量%が好ましく、0.1~90重量%がより好ましい。本明細書において、画分6の含有量には、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩が含まれる。
【0033】
一態様において、本発明の組成物中のトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.1~99重量%が好ましく、0.5~90重量%がより好ましい。
本明細書において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の含有量には、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び画分6が含まれる。
【0034】
一態様において、本発明の組成物中のチキンエキス(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.1~99重量%が好ましく、0.5~90重量%がより好ましい。本明細書において、チキンエキス(固形分換算)の含有量には、カルノシン及びアンセリンが含まれる。
【0035】
本発明の組成物は、飲食品又は医薬品として用いることが好ましい。飲食品としては、一般的な飲食品、機能性食品、保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等が挙げられる。飲食品の形態としては特に限定されず、固形状の食品であってもよいし、液状の食品であってもよい。好ましくは飲料である。
医薬品の形態としては特に限定されず、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、ドライシロップ等の内用剤のほか、軟膏、貼り薬、点眼剤、坐剤等の外用剤や注射剤等が挙げられるが、これに限定されない。医薬品は、好ましくは内用剤(経口用医薬品)である。
【0036】
本発明の組成物には、医薬品又は飲食品への添加物として許容されている各種の担体、賦形剤、希釈剤、酸味料、酸化防止剤、安定剤、保存料、香料、乳化剤、色素類、調味料、pH調整剤、栄養強化剤等が添加されていてもよい。
【0037】
本発明の組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療的用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
【0038】
<抗炎症用組成物>
一態様において、本発明の組成物は、炎症を抑制するために用いることができる。本発明の組成物は、抗炎症用組成物であってよく、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つと、チキンエキスとを有効成分として含む抗炎症用組成物であってよい。
【0039】
本発明において目的とする抗炎症効果を得るためには、上記組成物について上述したように、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つと、チキンエキスとを、組成物に配合する。Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及びチキンエキスは、そのまま使用してもよく、また本発明の効果を損なわない限り、上述したようにその濃縮物、乾燥粉末又は精製度を高めたものを配合してもよい。添加物等は、上述したものと同様のものを用いることができる。添加物等は、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0040】
本発明の組成物は、経口で摂取(経口投与)されることが好ましい。本発明の組成物の投与量(摂取量ということもできる)は特に限定されない。本発明の組成物の投与量は、炎症の抑制効果が得られるような量であればよく、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
一態様において、本発明の組成物をヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩の合計投与量は、遊離体換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは0.1mg以上、また、好ましくは2000mg以下、より好ましくは1000mg以下である。一態様において、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の合計投与量は、ヒト(成人)であれば、遊離体換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01~2000mg、より好ましくは0.1~1000mgである。
【0042】
一態様において、本発明の組成物をヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、画分6の投与量は、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは0.1mg以上、また、好ましくは2000mg以下、より好ましくは1000mg以下である。一態様において、画分6の投与量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01~2000mg、より好ましくは0.1~1000mgである。
本明細書において、画分6の投与量には、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩が含まれる。
【0043】
一態様において、本発明の組成物を、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の投与量(固形分換算)は、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは0.1mg以上、また、好ましくは4000mg以下、より好ましくは3000mg以下である。一態様において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の投与量(固形分換算)は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01~4000mg、より好ましくは0.1~3000mgである。
本明細書において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の投与量には、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩又は画分6が含まれる。
【0044】
一態様において、本発明の組成物をヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、チキンエキス(固形分換算)の投与量は、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは1mg以上、また、好ましくは15000mg以下、より好ましくは13000mg以下である。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の投与量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.1~15000mg、より好ましくは1~13000mgである。チキンエキスの投与量には、カルノシン、アンセリン、及びそれらの塩が含まれる。
【0045】
一態様において、本発明の組成物を、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、カルノシン、アンセリン、及びそれらの塩の合計投与量は、カルノシン及びアンセリン換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.001mg以上、より好ましくは0.01mg以上、また、好ましくは500mg以下、より好ましくは400mg以下である。一態様において、カルノシン、アンセリン、及びそれらの塩の合計投与量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、カルノシン及びアンセリン換算で、好ましくは0.001~500mg、より好ましくは0.01~400mgである。
【0046】
一態様において、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む上記量のトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物並びに上記量のチキンエキスを、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。一態様においては、上記量のCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物並びに上記量のチキンエキスを、ヒトに経口で摂取させる又は投与することが好ましい。一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、1日あたり体重60kgあたり、上記量のCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物並びに上記量のチキンエキスを摂取させる又は投与するために使用することができる。
【0047】
一態様において、抗炎症効果を得ることを目的として、本発明の組成物を摂取させる場合、上記量のCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及び上記量のチキンエキスを摂取させることが好ましい。
【0048】
本発明の組成物は、RANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)及びマクロファージ炎症タンパク質-1(MIP-1)等のサイトカイン産生を抑制する。本発明の組成物は、特に、RANTES、MCP-1、IL-6、IL-8、IL-9、及びMIP-βの産生の抑制効果が高い。
上記のサイトカイン産生を抑制することで、生体の炎症を抑制することができる。
【0049】
本発明の組成物は、炎症性の状態又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。炎症性の状態又は疾患とは、炎症に起因する状態又は疾患、又は炎症を伴う状態又は疾患が挙げられる。このような状態又は疾患としては、関節炎、関節リウマチ等の膠原病、炎症性大腸炎、変形性関節症、腱炎、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症、腰痛、椎間関節痛、手根管症候群、足根管症候群、腰椎術後疼痛症候群、エイズ、動脈硬化、喘息、関節炎、糖尿病、肝炎、脳卒中、認知症、筋消耗、ウイルス感染、光老化を含めた皮膚老化、がん、老化、アレルギー疾患、パーキンソン病、脳梗塞、白内障、てんかん、脊髄損傷、未熟児網膜症、腎障害、消化性潰瘍、膵炎、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、成人呼吸窮迫症候群、肺気腫、血管炎、浮腫、糖尿病合併症、紫外線障害、高山病、ポルフィリン血症、熱傷、凍傷、接触性皮膚炎、ショック、多臓器不全、DIC、疲労、サルコぺニア(筋力低下)、ミトコンドリア機能障害、アルツハイマー病、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、及び全身性エリテマトーデス(lupus)等が挙げられる。本発明の組成物は、これらの疾患の予防又は改善のために、好ましく使用される。特に、該飲食品組成物は、変形性関節症、関節リウマチ、及び乾癬性関節炎等の予防又は改善のために、好ましく使用される。
本明細書において、状態又は疾患の予防は、発症を防止すること、発症を遅延させること、発症率を低下させること、発症のリスクを軽減すること等を包含する。状態又は疾患の改善は、対象を状態又は疾患から回復させること、状態又は疾患の症状を軽減すること、状態又は疾患の症状を好転させること、状態又は疾患の進行を遅延させること、防止すること等を包含する。
【0050】
本発明の組成物を摂取又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されない。好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、投与対象として、炎症の抑制を必要とする又は希望する対象等が挙げられる。このような対象として、例えば、炎症の予防又は改善を必要とする又は希望する対象、上記の炎症性の状態又は疾患の予防又は改善を必要とする又は希望する対象が挙げられる。一態様において、本発明における投与対象として、中高年者が挙げられる。本発明の組成物は、例えば、炎症の抑制により予防又は改善が期待できる状態の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0051】
本発明の組成物には、炎症を抑制することにより発揮される機能の表示が付されていてもよい。このような表示は機能性表示ともいい、その表示内容は特に限定されない。このような表示として、例えば、「関節の痛みを緩和する」、「関節の痛みを軽減する」、「膝の調子を整える」、「膝を健康に保つ」、「関節の健康を改善する」、「関節の動きを改善する」等、又は、これらと同視できる表示又は機能性表示が挙げられる。
本発明の一態様において、本発明の組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましく、飲料であることがより好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために本発明の組成物を用いる旨の表示であってもよい。当該表示は、組成物自体に付されてもよいし、飲食品組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
【0052】
<製造方法>
本発明はまた、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つを、チキンエキスと混合する工程を含む、組成物の製造方法に関する。
上記工程において、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数は、そのままチキンエキスと混合することができるが、Cyclo(Ala-Hyp)等を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物とチキンエキスとを混合して組成物を製造することが好ましい。この場合、例えば、トリ軟骨の2型コラーゲンを酵素等で加水分解して得られた加水分解物をそのままチキンエキスとの混合に用いることができる。また、本発明の効果を損なわない限り、上述したようにトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物由来で、Cyclo(Ala-Hyp)等を含む画分6を配合したり、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の濃縮物、乾燥粉末又は精製度を高めたものを配合してもよい。
【0053】
本発明の製造方法では、原料の配合順は特に限定されない。例えば、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数、又はこれらを含む画分6又はトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を先に容器等に投入して、次いでチキンエキスを加えてもよい。また、チキンエキスを先に容器等に投入しておき、その後Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数、又はこれらを含む画分6やトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を加えてもよい。
本発明の製造方法において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の好ましい態様は、上記と同じである。またチキンエキスの好ましい態様は、上記と同じである。
本発明の製造方法において、チキンエキスがカルノシン、アンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むことが好ましい。
【0054】
本発明の製造方法では、チキンエキスは、市販品や熱水抽出して製造したものをそのままCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数、又はこれらを含む画分6又はトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物と混合することができるが、チキンエキスが濃縮物、乾燥粉末又はこれらの精製物の形態である場合、水、エタノール又はその混合物等の液体で希釈、溶解等してからCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩、又はこれらを含む画分6やトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物等と混合してもよい。Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む画分6やトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物が濃縮物、乾燥粉末又はこれらの精製物の形態である場合も同様に、上記の液体で希釈、溶解等してから配合に用いることができる。予め希釈、溶解等せずに原料を配合し、その後、液体を添加して希釈、溶解等してもよい。
【0055】
本発明の製造方法で製造する組成物には、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及びチキンエキスの他に、上述したものと同じ添加物を配合することができる。
【0056】
本発明はまた、抗炎症用組成物を製造するための、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つ、並びにチキンエキスの使用に関する。
上記抗炎症用組成物としては、上述したCyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数と、チキンエキスとを含む組成物と同様の組成物が挙げられる。Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数は、これらを含む画分6又はトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の形態で使用することができる。チキンエキスやその他の添加物は、上述したものと同じものを使用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。
【0058】
実施例及び比較例で使用した原料、試薬等を以下に示す。
<トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の調製>
図1に、HCII調製方法を簡略に説明したフローを示す。先ず、凍結トリ軟骨を40℃の水で解凍し、40℃の水で洗浄を行った(1時間)。次に、洗浄水を廃棄し、新たな水をトリ軟骨の3倍量となるように1200Lポットに入れた。水を酵素処理に最適な温度まで昇温し、ここに洗浄後のトリ軟骨を浸漬させ、数時間酵素処理を行った。酵素処理を行った後に、トリ軟骨の入ったポットを90℃以上まで昇温し、30分間90℃以上で保持し、先の酵素処理で用いた酵素を不活化させた。得られた混合物(液体及び酵素処理後のトリ軟骨)をろ過した。得られた液体を濃縮した。最後に、得られた濃縮液を200℃で噴霧乾燥させ、HCII粉末を調製した。
【0059】
<HCII粉末の分子量の測定>
得られたHCIIの分子量分布をユーロフィンHPAEC-PAD法により測定した。得られたHCIIの分子量分布を下記表1に示す。本分野で用いられている通常の方法で算出されたHCIIの重量平均分子量は、4582であった。
【0060】
【0061】
<HCIIの画分の分画>
(HCII分画及び生物活性同定のための材料及び方法)
(材料)
ギ酸は東京化成工業株式会社から購入した。超純水はMerck Milli-Q浄水システムから入手した。
【0062】
(分取ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))
HCIIの分画は、分取VERITY271HPLCシステム(Gilson社製)を使用して実施した。HCIIを超純水に溶解して、10mg/mL(w/v)溶液を調製した。14000rpmで5分間遠心分離した後、ガードカラム(SecurityGuard PREP Cartridge C12 15×21.2mm ID(Phenomenex社製))に取り付けられた分取GPCカラム(BioSep 5μm SEC-s2000 145ÅLCカラム300×21.2mm(Phenomenex社製))にアリコート(1000μL)を注入し、5mL/minの速度で30分間、溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))でイソクラティック溶離した。クロマトグラムは214nmで観察した。
GXシリーズのフラクションコレクター(Gilson社製)を使用して、8分から28分の間、0.5分ごとに画分を収集し、結果として得られた40の個々の画分は、その後、P1からP7の7つの画分にプールされた(P1:8.5-12.0分、P2:12.0-13.5分、P3:13.5-14.5分、P4:14.5-16.0分、P5:16.0-17.5分、P6:17.5-19.0分、P7:19.0-27.5分)。プールした画分を凍結乾燥機(ScanVac社製)で蒸発乾固し、乾燥したサンプルをさらに使用するまで-20℃で保存した。
【0063】
上記で得られた各画分の分子量を表2に示す。表2において、「Mw」及び「Mp」は、それぞれ、重量平均分子量及びピーク分子量を示す。表2に示すように、画分6(P6)は分子量が300Da未満の一般的な小分子で構成されている。
HCII画分の分子量は、下記の条件でHPLCゲル濾過法により測定した。
装置:Agilent1100シリーズ
検出:UV214nm
流速:1mL/分
移動相:pH6.8のアイソクラティック0.1mMリン酸ナトリウムバッファー
実行時間:20分
カラム:BiosepTM 5μm SEC-s2000 145ÅLCカラム300×7.8mm
【0064】
【0065】
<P6の主要成分の同定>
画分6(P6)の主要成分は、Phenomenex社製のLunaTM Omega 5μmPS C18 100A 250×4.6mmを、Agilent社製HPLC、1100シリーズで用いて、次のリニアグラジエント:0-4.0分:溶離液A100%;4.0-12.0分:溶離液A0-90%;12.0-15.5分:溶離液A90-80%;15.5-17.0分:溶離液A80-15%;17.0-18.0分:リニア、溶離液A15%;18.0-19.0分:溶離液A15-100%;19.0-21.0分:溶離液Aで100%、溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))及び溶離液B(アセトニトリル:ギ酸=100:0.1(v/v))を用いて溶出し、分離した。注入量は1mL/minの流量で10μL、溶出液のUV吸光度は214nmでモニターし、溶出液は装備したフラクションコレクターで収集した。次に、4つの画分を凍結乾燥した後、精製水で再構成し、Duo Spray Turbo Vイオン源とガス発生器(Peak Scientific社製)を備えたAgilent HPLC 1290シリーズ結合Triple TOF 5600(AB Sciex社製)でLC-MS分析を行った。一部の画分は、特性評価のためにBruker ECA 400で実施したプロトンNMR実験にも供した。画分P6の主要な成分は、市販の化学物質によって確認した。
またHCII中の遊離アミノ酸は、AOAC Official Method 999.13の方法に従って検出し、定量した。
【0066】
上記の分析の結果、P6の主要成分は、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン及びトリプトファンであった。
【0067】
<Cyclo(Ala-Hyp)及びCyclo(Pro-Gly)の定量>
Cyclo(Ala-Hyp)を超純水で再構成し、UHPLC Guard Zorbax EclipsePlusC18 1.8μm 2.1×5mm(Agilent社製)を使って、Zorbax EclipsePlusC18 RRHD 1.8μm 2.1×50mmカラム(Agilent社製)に注入し、下記のリニアグラジエントを用いて溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))及び溶離液B(アセトニトリル:ギ酸=100:0.1(v/v))で溶出した:0-0.5分:100%溶離液A;0.5-7.5分:溶離液Aを100%から65%に減少;7.5-10.0分:溶離液Aを65%から0%に減少;11.0-13.0分:溶離液A0%;13.0-13.1分:溶離液Aを0%から100%に増加;13.1-15.0分:溶離液A100%。
注入量は、流量300μL/minで10μL、溶出液のUV吸光度は214nmでモニターした。MSの衝突エネルギー(CE)及びクラスター解除ポテンシャル(DP)は、それぞれ27.0V及び100Vとして最適化した。Cyclo(Ala-Hyp)は、m/z185.1/86.1でQ1/Q3イオン遷移を使用して、定量イオン及び確認イオンとして保持時間2.45分で検出した。31.25ng/mL、62.5ng/mL、125ng/mL、又は250ng/mLの標準Cyclo(Ala-Hyp)を質量分析計に注入して、検量線を作成した。画分P6は、作業溶液として100μg/mL溶液として再構成した。画分P6のCyclo(Ala-Hyp)の定量化は、Sciex OS(AB Sciex社製)によって行った。
【0068】
Cyclo(Pro-Gly)を超純水で再構成し、UHPLC Guard Zorbax EclipsePlusC18 2.1×5mm 1.8μm(Agilent社製)でZorbax EclipsePlusC18 RRHD 1.8μm 2.1×50mmカラム(Agilent社製)に注入し、下記のリニアグラジエントを用いて溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))及び溶離液B(アセトニトリル:ギ酸=100:0.1(v/v))で溶出した:0-0.5分:溶離液A100%;0.5-7.5分:溶離液Aを100%から65%に減少;7.-10.0分:溶離液Aを65%から0%に減少;11.0-13.0分:溶離液A0%;13.0-13.1分:溶離液Aを0%から100%に増加;13.1-15.0分:溶離液A100%。
注入量は300μL/minの流量で10μLであり、溶出液のUV吸光度は214nmでモニターした。MSの衝突エネルギー(CE)及びクラスター解除ポテンシャル(DP)は、それぞれ30.0V及び100Vとして最適化した。Cyclo(Pro-Gly)は、m/z70.1/127.1ThでQ1/Q3イオン遷移を使用して、定量イオン及び確認イオンとして保持時間2.6分で検出した。70ng/mL、140ng/mL、280ng/mL、560ng/mLの標準Cyclo(Pro-Gly)を質量分析計に注入して、検量線を作成した。画分P6は、作業溶液として100μg/mL溶液として再構成した。画分P6に含まれるCyclo(Pro-Gly)の定量化は、Sciex OS(AB Sciex社製)によって行った。
【0069】
<グアノシンの定量>
グアノシンを超純水で再構成し、UHPLC Guard Zorbax EclipsePlusC18 2.1×5mm 1.8μm(Agilent社製)でZorbax EclipsePlusC18 RRHD 1.8μm 2.1×50mmカラム(Agilent社製)に注入し、下記のリニアグラジエントを用いて溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))及び溶離液B(アセトニトリル:ギ酸=100:0.1(v/v))で溶出した:0-0.5分:溶離液A100%;0.5-10.5分:溶離液Aを100%から0%に減少;10.5-14.0分:溶離液A0%;14.0-16.1分:溶離液Aを0%から100%に増加;16.1-18.0分:溶離液A100%。
注入量は300μL/minの流量で10μLであり、溶出液のUV吸光度は214nmでモニターした。MSの衝突エネルギー(CE)及びクラスター解除ポテンシャル(DP)は、それぞれ10.0V及び80Vとして最適化した。グアノシンは、m/z152.1/284.1ThでQ1/Q3イオン遷移を使用して、定量イオン及び確認イオンとして保持時間2.17分で検出した。31.25ng/mL、62.5ng/mL、125ng/mL、又は250ng/mLの標準グアノシンを質量分析計に注入して、検量線を作成した。P6は、作業溶液として100μg/mL溶液として再構成した。P6に含まれるグアノシンの定量化は、Sciex OS(AB Sciex社製)によって行った。
【0070】
HCII全体の重量を100重量%として、HCII中、Cyclo(Ala-Hyp)が0.23重量%、Cyclo(Pro-Gly)が0.30重量%、グアノシンが0.10重量%、トリプトファンが0.132重量%であった。
【0071】
<カルノシン及びアンセリンの定量>
チキンエキス中のカルノシン及びアンセリンの定量は、下記の条件でHPLCにより行った。
カルノシンの標準原液は、カルノシン粉末を脱イオン水に添加して溶解し、カルノシン濃度2.50mg/mlで調製した。アンセリンの標準原液は、L-アンセリン硝酸塩の粉末を脱イオン水に添加して溶解し、L-アンセリン濃度3.96mg/mlで調製した。
L-アンセリンの重量は、下記の式を用いて計算した。
L-アンセリン(g)=0.792×L-アンセリン硝酸塩(g)
<HPLC分析条件>
装置:紫外検出器付き高速液体クロマトグラフシステム(Agilent1100、Agilent社製)
カラム:Zorbax 300-SCX 4.6mmID×250mm(Agilent社製)
移動相:50mMリン酸二水素カリウム
流速:1.0mL/分
フローチャネル:チャネルA(50mMリン酸二水素カリウム)、チャネルB(アセトニトリル)、チャネルD(脱イオン水)
UV検出波長:210nm
サンプル注入量:10μL
【0072】
<抗炎症活性の評価方法>
実施例及び比較例では、下記の方法で炎症マーカーの産生抑制効果を評価した。
(原料及び試薬)
チキンエキス(CE):Brand’s Essence of Chicken(サントリー食品アジア社、1ml中のカルノシンの含有量:0.94mg/ml、1ml中のアンセリンの含有量:1.9mg/ml)
軟骨細胞培地(CM)、ウシ胎児血清(FBS)、軟骨細胞増殖サプリメント(CGS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S):ScienCell Research Laboratories製
IL-1β:R&D Systems社製
ポリ-L-リジン(PLL)被覆96ウェルプレート(Corning社製)
【0073】
(細胞培養及び前処理)
ヒト軟骨細胞(HC-a、ScienCell Research Laboratories社製)は、ヒト関節軟骨から分離され、5%FBS、1%CGS、1%P/Sを添加したCMで保存した。PLL被覆96ウェルプレートに細胞を細胞密度4000細胞/ウェルで播種し、5%CO2を含む加湿ガスチャンバー内で、37℃で一晩培養した。軟骨細胞をPBSで1回洗浄し、チキンエキス(CE)、HCII、HCIIから分画した画分P6、画分P6とCEとの組み合わせ、Cyclo(Ala-Hyp)と、Cyclo(Pro-Gly)と、グアノシンと、トリプトファンとを含むP6化合物、P6化合物とCEとの組み合わせ、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン、又は、CEと、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、及びトリプトファンのいずれか1つとの組み合わせで処理した。24時間の処理後、25ng/mLのIL-1βを添加して、軟骨細胞を更に24時間処理した。細胞を1100gで5分間遠心分離し、上清をサイトカイン分析に使用した。対比のため、CE、HCII、画分P6、P6化合物、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファンで前処理せずに、IL-1βで処理した細胞(IL-1β処理細胞)を準備した。
【0074】
<多重サイトカイン分析>
Pro-Human Cytokine Multiplex Assays(Bio-Rad社製)を使用して、培地中のサイトカインを分析した。多重分析は以下の27個である:IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、エオタキシン(CCL11)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターフェロン(IFN)-γ、単球走化性タンパク質1(MCP-1;CCL2)、マクロファージ炎症性タンパク質-1α(MIP-1α;CCL3)、MIP-1β(CCL4)、RANTES(CCL5)、TNF-α及び血管内皮増殖因子(VEGF)。製造元の指示に従って多重分析を実行し、Luminex xPONENT for MAGPIXプラットフォームで実行した。データ処理にはBio-Plex Managerバージョン6.0を使用した。サイトカインとケモカインの濃度は、標準曲線を参照して計算された。マルチプレックスキットの感度は5pg/mL未満であった。
【0075】
(統計分析)
GraphPad Prismバージョン5.0(GraphPad社製)を使用して、統計分析を実施した。すべての結果は、平均±標準偏差として表される。統計分析は、分散分析(ANOVA)とそれに続く事後テューキーの多重比較検定によって実行された。p<0.05の場合、データは有意であると見なされる。
【0076】
(比較例1)画分P6の炎症マーカーの産生抑制効果
HCII及びHCIIから分画された分画P6について、ヒト軟骨細胞によって生成される炎症マーカー(RANTES、MCP-1、IL-6、IL-8、IL-9及びMIP-1β)に対する影響を評価するため、下記の4つの異なる条件を比較した:処理前の細胞(未処理コントロール)、IL-1β処理細胞、IL-1β+HCII処理細胞(比較例1)、及びIL-1β+P6処理細胞(比較例1)。HCII処理細胞、画分6処理細胞は、前処理にHCII又は画分P6を使用したものである。前処理において、HCIIの濃度は5mg/mlであり、画分P6の濃度は5mg/mlであった。
図2に示すように、IL-1β25ng/mLはヒト軟骨細胞に炎症を誘発し、未処理細胞(コントロール)と比較して全ての炎症マーカーのレベルを大幅に増加させた。細胞をHCII及び画分P6で前処理すると、IL-1βによって誘導される全ての炎症マーカーのレベルが低下した。データは平均値±SD(n=3)として表した。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0077】
(比較例2)Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファンの組み合わせ(P6化合物)の炎症マーカーIL-6の産生抑制効果
Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン及びトリプトファンを含むP6化合物(これらの成分比はHCIIにおける成分比と同じ)について、ヒト軟骨細胞によって生成される炎症マーカーIL-6に対する影響を評価するため、下記の5つの異なる条件を比較した:処理前の細胞(未処理コントロール)、IL-1β処理細胞、IL-1β+HCII処理細胞(比較例2)、IL-1β+画分P6処理細胞(比較例2)、及びIL-1β+P6化合物処理細胞(比較例2)。HCII処理細胞、画分P6処理細胞、及びP6化合物処理細胞は、前処理にHCII、画分P6、又はP6化合物を使用した。前処理において、HCIIの濃度は5mg/ml、画分P6の濃度は5mg/ml、P6化合物の濃度は100mg/mlとした。
図3に示すように、IL-1β25ng/mLはヒト軟骨細胞に炎症を誘発し、未処理細胞(コントロール)と比較してIL-6のレベルを大幅に増加させた。細胞をHCII、P6又はP6化合物で前処理すると、IL-1βによって誘導される炎症マーカーIL-6のレベルが低下した。データは平均値±SD(n=3)として表した。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1βに対する有意差を示す。
【0078】
(比較例3)Cyclo(Pro-Gly)、及び、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファンの組み合わせ(P6化合物)の炎症マーカーMCP-1(MCAF)の産生抑制効果
Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン及びトリプトファンを含むP6化合物(これらの成分比はHCIIにおける成分比と同じ)及びCyclo(Pro-Gly)(cPG)について、ヒト軟骨細胞によって生成される炎症マーカーMCP-1(MCAF)に対する影響を評価するため、下記の6つの異なる条件を比較した:処理前の細胞(未処理コントロール)、IL-1β処理細胞、IL-1β+HCII処理細胞(比較例3)、IL-1β+画分P6処理細胞(比較例3)、IL-1β+P6化合物処理細胞(比較例3)、及びIL-1β+cPG化合物処理細胞(比較例3)。HCII処理細胞、画分P6処理細胞、P6化合物処理細胞、及びcPG処理細胞は、前処理にHCII、画分P6、p6化合物、又はcPGを使用した。前処理において、HCIIの濃度は5mg/ml、画分P6の濃度は5mg/ml、P6化合物の濃度は100mg/ml、cPGの濃度は50mg/ml、100mg/ml、又は250mg/mlとした。
図4に示すように、IL-1β25ng/mLはヒト軟骨細胞に炎症を誘発し、未処理細胞(コントロール)と比較してMCP-1(MCAF)のレベルを大幅に増加させた。細胞をHCII、P6、Cyclo(Pro-Gly)、又はP6化合物で前処理すると、IL-1βによって誘導される炎症マーカーMCP-1のレベルが低下した。データは平均値±SD(n=3)として表した。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1βに対する有意差を示す。
【0079】
<実施例1>HCIIとCEとの組み合わせの相乗効果
炎症マーカーMIP-1βの産生抑制に対するHCIIとCEを組み合わせた相乗効果を評価するために、HCII単独、CE単独、HCIIとCEとを組み合わせた条件で前処理を行った。前処理の際のHCIIの濃度は0.5mg/ml、CEの濃度は1.25mg/mlとした。
図5に示すように、HCII0.5mg/mLとCE1.25mg/mLの組み合わせは、HCII又はCE単独での処理と比較して、炎症を軽減する相乗効果をもたらした。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0080】
<実施例2>炎症マーカーMCP-1及びMIP-1βの産生抑制に対するHCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、及び画分P6とCEとの組み合わせの相乗効果
炎症マーカーMCP-1及びMIP-1βの産生抑制に対するHCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、及び画分P6とCEとの組み合わせの相乗効果を評価するために、実施例1と同様に、IL-1βとHCII単独、CE単独、P6単独、HCIIとCEとの組み合わせ、又はP6とCEとの組み合わせの条件で前処理を行った。前処理の際のHCIIの濃度は2.5mg/ml又は5mg/mlとし、P6の濃度は2.5mg/ml又は5mg/mlとし、CEの濃度は6.25mg/mlとした。
図6(a)及び
図6(b)に結果を示す。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0081】
<実施例3>炎症マーカーの産生抑制に対するHCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、P6化合物とCEとの組み合わせの相乗効果、Cyclo(Pro-Gly)とCEとの組み合わせの相乗効果、Cyclo(Ala-Hyp)とCEとの組み合わせの相乗効果、グアノシンとCEとの組み合わせの相乗効果、及びトリプトファンとCEとの組み合わせの相乗効果
炎症マーカーであるIL-6、IL-8、IL-9、MCP-1、MIP-1β、及びRANTESの産生抑制に対するHCIIとCEとの組み合わせの相乗効果、P6化合物とCEとの組み合わせの相乗効果、Cyclo(Pro-Gly)(cPG)とCEとの組み合わせの相乗効果、Cyclo(Ala-Hyp)(cAH)とCEとの組み合わせの相乗効果、グアノシンとCEとの組み合わせの相乗効果、及びトリプトファンとCEとの組み合わせの相乗効果を評価するために、実施例1と同様に、前処理を行った。前処理において、HCIIの濃度は2.5mg/mL、P6化合物の濃度は25mg/ml、125mg/ml、又は250mg/mL、cPGの濃度は25mg/ml、125mg/ml、又は250mg/mL、cAHの濃度は25mg/ml、125mg/ml、又は250mg/mL、グアノシンの濃度は25mg/ml、125mg/ml又は250mg/mL、トリプトファンの濃度は25mg/ml、125mg/ml、又は250mg/mL、及びCEの濃度は6.25mg/mlとした。
図7-1(a)、
図7-1(b)、
図7-2(c)、
図7-2(d)、
図7-3(e)、及び
図7-3(f)に結果を示す。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0082】
<実施例4>膝痛に対するHCII及びCEの効果を調べるためのランダム化二重盲検4アームパイロット試験
本パイロット試験は、単一施設、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験として実施した。
【0083】
(被験者の登録とランダム化)
表3にまとめる選択基準及び除外基準を用いて、45歳~75歳の合計160人の被験者を選択した。被験者をランダムに下記の4群に分けた:「プラセボ」、「グルコサミン」、「HCII」、及び「HCIIとCE」。各群には40人の被験者が含まれた。
【0084】
【0085】
(試験製品)
「プラセボ」群は、マルトデキストリン6.8g及びキサンタンガム7mgを摂取した。「グルコサミン」群は、グルコサミン塩酸塩1.5gを摂取した。グルコサミン塩酸塩は陽性対照として用いた。
「HCII」群は、2型コラーゲン加水分解物(HCII)の天然の基質と、低分子量コンドロイチン硫酸と、ヒアルロン酸(HA)とからなるトリ胸肋軟骨加水分解抽出物である、BRANDコラーゲン加水分解物(サントリー食品アジア社製)を摂取した。この製品には、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、及びトリプトファンを含むHCIIが含まれる。容量68mLの各ボトルに2gのHCIIが含まれ、HCII(66.5%)と、解重合したコンドロイチン硫酸(18%)と、HA(11%)とからなる天然組成物を提供する。残り4.5%は、胸肋軟骨の成分のうち、特性のないものが占める。
「HCIIとCE」群は、68mLのボトルに含まれるBrand’s Essence of Chicken(BEC)70g(乾燥重量:5~6g)及びHCII2gの混合物を摂取した。試験品は、全て、ガラス瓶詰めの液体製品として調製され、等カロリー、同一の外観、及び同等の風味と食感を有した。参加者は、1日1回、午前中、食後に試験製品を摂取した。
参加者は、試験結果に影響がないと見なされる場合、併用薬又はサプリメントを継続して摂取することが許可された。痛み止め又は鎮痛剤は、処方箋の下で救急薬として許可された。「鎮痛剤の併用」欄の記録に基づいて鎮痛剤による治療日数カバー比率(PDC)を算出し、visit間の総日数に対する鎮痛剤の治療日数カバー率と定義した。試験期間中、ホルモン療法(成長ホルモン、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロン)、カルシウム、ビタミンD、又は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、オメガ3、オメガ6、グルコサミン、又はコンドロイチンを豊富に含むサプリメント等、関節、骨、及び筋肉の健康をサポートする治療や栄養補助食品は全て禁止された。
【0086】
(手順)
本試験では、最初にスクリーニングvisit(ベースラインvisitの28日前)を行い、その後、ベースラインvisit(ベースラインvisitは0日目であるが、スクリーニングvisitとベースラインvisitは同日でもよい)、そして3回のフォローアップvisit(8週目、16週目、24週目)を行った。0日目の28日前から0日目にかけて被験者をスクリーニングして、試験への適格性を判断した。ベースラインvisitの翌日から168日間(24週間)連続して被験物質を摂取した。168日間(24週間)連続して、被験者は1日1本を午前中、食後に摂取した。摂取コンプライアンスを日誌カードに記録した。
膝痛における視覚的アナログスケール(VAS)は、摂取後0日目、7日目、及び14日目にスコア化した。
試験期間中、被験者はトレーニングスケジュールに従って、自宅で週2回、1回30分のレジスタンストレーニング(強制ではない)を行うことが推奨された。トレーニングは日誌カードに記録し、visit前1週間の食事内容を食事アンケートにより記録した。
【0087】
(処理コンプライアンス)
試験製品の摂取に関するコンプライアンスは、未使用薬の回収と被験者による毎日の摂取記録によって確認した。コンプライアンスは、visit間の日数に対して、割り付けられた用量のうち実際に摂取した用量の割合によって定義した。摂取率が70%であれば、準拠していると見なした。
【0088】
(運動プログラム)
ベースラインvisit時に配布されたトレーニングマニュアルに従って、全被験者に週2回、各30分間の自宅でのレジスタンストレーニングを奨励した。トレーニングプログラムのコンプライアンスを日誌カードに記録し、以下の式で算出した。
【0089】
【0090】
コンプライアンス率が≧50%であれば、準拠していると見なした。
【0091】
(膝痛における視覚的アナログスケール(VAS))
視覚的アナログスケール(VAS)は、0~100mmでスコア化した。0は無痛を示し、100はこれまでで最大の痛みを示す。摂取後0日目、7日目、及び14日目において、対象者は、感じた痛みの程度を特定するよう求められた。痛みの程度は、スケールで直線を引き、実線に沿った位置を示すことで表した。
【0092】
(忍容性と安全性)
試験期間中、自発的に報告された有害事象を記録した。バイタルサインをvisit毎に確認した。試験製品の安全性を評価するため、試験期間中のvisit毎に、全参加者の血清及び尿を測定した。
【0093】
(統計分析)
先験的な統計解析計画に従って、per-protocol統計解析を行った。摂取コンプライアンス率≧70%のランダム化された被験者をper-protocol解析の対象とした。安全性パラメータの解析は、試験製品を28本以上摂取した被験者を対象に実施した。二分変数はパーセンテージで報告し、連続変数は平均値とSDで報告した。カテゴリー変数の比較にはカイ二乗検定を使用し、連続変数の群間差の比較にはクラスカル・ウォリス検定を使用した。
連続的な主要及び副次評価項目に関し、試験群間の変化の平均差の検定で使用する混合効果モデルを用いて、visit毎の摂取の相互作用を固定効果因子として反復測定分散分析(ANOVA)を実施した。結果は全て、対応するp値が0.05未満の場合、統計的に有意であると見なした。visit毎の摂取の相互作用項が有意であった場合、処理群間の事後ペアワイズ比較を行い、調整後のp値を報告した。評価項目に影響を及ぼすと予想される変数は、因子としてモデルに含めた。関節の健康に関する分析では性別とvisit毎の性別の相互作用項を因子として含めた。
更に、レジスタンストレーニングの実施回数が全トレーニング期間の10パーセンタイル未満の被験者については、サブグループ解析を行った。分析は、独立した統計学者によって、SAS version9.4(米国ノースカロライナ州ケーリー)を使用して行われた。
【0094】
<結果>
(ベースライン特性と処理コンプライアンス)
合計160名の被験者が登録され、151名の被験者が試験を完了し、統計解析の対象となった(PP)。9名の被験者が途中で脱落したが、群間において脱落者数に有意差はなかった。なお、脱落者は試験製品又はプラセボの摂取による副作用とは無関係であった。有害事象は認められなかった。血清生化学マーカーと尿検査で臨床的に有意な変化は認められなかった。
全体的に、4つの全ての群間で、コンプライアンス率における統計的な差はなかった(表4)。データの均一性を評価するために、全てのパラメータを4つのアーム間で比較した。ベースライン時の試験群間に統計的に有意な差はなかった(表4)。
【0095】
【0096】
(膝痛のVASにおける変化)
14日間摂取した後、レジスタンストレーニングの実施回数がレジスタンストレーニングの全期間の10パーセンタイル未満の被験者のサブグループ解析では、プラセボ群はHCII+CE(p=0.047)群に比べ、14日目にベースラインから200%、0日目から42.9%と大幅に疼痛スコアが増加した(
図8、表5)。
表5において、「P値($)」は群間のp値、「(a)」はp値の決定に用いた方法((a)=1元配置分散分析)、「95%C.I.」は95%信頼区間を意味する。
図8において、各データの括弧内の2つの数値は、「平均-標準偏差」「平均+標準偏差」である。
【0097】
【0098】
(結論)
以上より、HCII及びCEは変形性関節症の疼痛に悩む患者に対して、忍容性が高く、迅速かつ有意な症状緩和をもたらすことがわかった。プラセボと比較して、HCIIとCEとの組み合わせは、最小限のレジスタンストレーニングを行った被験者において、わずか14日間で膝関節痛が大幅に減少した。
In vitro試験では、その作用機序は、基礎疾患プロセスの改善、特に局所的な疼痛感覚をもたらす炎症の抑制である可能性が示唆される。HCIIとCEとの組み合わせは、変形性膝関節症(OA)症状の管理において、現在の医学的及び食事療法の選択肢を安全かつ有効に補完し得ると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つと、チキンエキスとを含む新規な組成物を提供することができる。本発明の組成物は、炎症及び関節痛を抑制するための飲食品組成物又は医薬品組成物として使用することができる。Cyclo(Ala-Hyp)、Cyclo(Pro-Gly)、グアノシン、トリプトファン及びそれらの塩並びにチキンエキスは、飲食品等として摂取可能であり、安全性が高いという利点も有する。