(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240828BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240828BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240828BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/01
C08K7/14
C08J3/20 B CFD
(21)【出願番号】P 2023007860
(22)【出願日】2023-01-23
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】廖徳超
(72)【発明者】
【氏名】許漢チン
(72)【発明者】
【氏名】陳春來
(72)【発明者】
【氏名】林瑞榮
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103044869(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102295826(CN,A)
【文献】国際公開第2014/088105(WO,A1)
【文献】特開2009-292897(JP,A)
【文献】特開昭56-159220(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102827462(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
C08K 3/01
C08K 7/14
C08J 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート40重量部~65.5重量部と、
ガラス繊維5重量部~40重量部と、
結晶化剤0.15重量部~2.5重量部と、
ポリエチレンテレフタレートと変性化合物とを反応してなる変性ポリエチレンテレフタレート
5重量部~10重量部とを含み、
前記結晶化剤は、無機結晶化剤及び有機結晶化剤を含み、前記無機結晶化剤の添加量は前記有機結晶化剤の添加量より少なく、
前記変性化合物は
、ポリエチレングリコールPE
Gであることを特徴とする、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート100重量部に対して、前記変性化合物の添加量は4重量部~10重量部である、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項3】
前記変性ポリエチレンテレフタレート、前記結晶化剤及び前記ガラス繊維は、260℃~280℃の温度で溶融・混合されると共に、80℃~100℃の温度で射出成形されることによって、前記ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を形成する、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項4】
結晶化度が17%を超える、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項5】
前記無機結晶化剤は、タルク粉末(talc)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO
2)、硫酸バリウム(BaSO
4)、炭酸カルシウム(CaCO
3)及びケイ酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項6】
前記有機結晶化剤は、安息香酸塩、エチレンジアミン、イオンポリマー(ionic polymer)、ポリエステルオリゴマーのアルカリ金属塩(alkali metal salt of polyester oligomer)、長鎖飽和カルボン酸ナトリウム(long-chain linear saturated carboxylic acid sodium salt)、長鎖飽和カルボン酸カルシウム(long-chain linear saturated carboxylic acid calcium salt)、長鎖飽和芳香族カルボン酸金属ナトリウム塩(long-chain linear saturated aromatic carboxylic acid metal sodium salt)及び長鎖飽和芳香族カルボン酸金属マグネシウム塩(long-chain linear saturated aromatic carboxylic acid metal magnesium salt)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項7】
前記無機結晶化剤の添加量は0.1重量部~0.5重量部である、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項8】
前記有機結晶化剤の添加量は0.3重量部~0.7重量部である、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項9】
強靭化剤3重量部~8.5重量部を更に含む、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項10】
酸化防止剤0.1重量部~0.5重量部を更に含む、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項11】
加工助剤0.1重量部~1重量部を更に含む、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項12】
難燃剤10重量部~25重量部を更に含む、請求項1に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項13】
前記難燃剤は、リン難燃剤及び窒素難燃剤であり、
前記リン難燃剤と前記窒素難燃剤との含有量比(リン難燃剤:窒素難燃剤)は1:1~1:3である、請求項12に記載のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料。
【請求項14】
ポリエチレンテレフタレートと変性化合物とを反応させることによって、変性ポリエチレンテレフタレートを形成することと、
260℃~280℃の温度で、前記ポリエチレンテレフタレート40重量部~65.5重量部、前記変性ポリエチレンテレフタレート5重量部~10重量部、結晶化剤0.15重量部~2.5重量部及びガラス繊維5重量部~40重量部を溶融・混合することと、
80℃~100℃の温度で射出成形によって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を形成することと、を含み、
前記結晶化剤は無機結晶化剤及び有機結晶化剤を含み、前記無機結晶化剤の添加量は有機結晶化剤の添加量より少なく
、
前記変性化合物は、ポリエチレングリコールPEGであることを特徴とする、ポリエチレンテレフタレート複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記ポリエチレンテレフタレート複合材料の熱変形温度は、210℃~220℃である、請求項14に記載のポリエチレンテレフタレート複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記ポリエチレンテレフタレート複合材料の耐衝撃強さは6.5kg-cm/cm以上である、請求項14に記載のポリエチレンテレフタレート複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート複合材料及びその製造方法に関し、特に、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terphthalates,PET)は、自動車及び電子分野によく用いられた結晶性樹脂である。ポリブチレンテレフタレートに比べて、PETの熱変形温度が低く、結晶化速度が遅いため、加工や高温での応用には不利となる。よって、従来の技術において、PET樹脂の耐熱性及び剛性を向上させるために、ガラス繊維を添加する。
【0003】
プラスチック射出成形のプロセスにおいて、金型温度もPET製品の結晶特性に影響することがある。一般的に、プラスチック射出成形は主に、70℃以下の低金型温度成形、及び120℃以上の高金型温度成形に分けられる。高金型温度成形を採用すると、PET製品に高い結晶化度、高い熱変形温度、及び高い剛性との特性を与えられるが、耐衝撃性の低下及び成形時間が長くなる欠点も有する。低金型温度成形を採用すると、成形時間が短いが、PET製品の結晶性が不良となり、且つ熱変形温度が低いため、加工及び高温での応用にとって不利となる。金型温度を70℃~120℃にすると、離型不良、熱変形温度が不足及び品質が安定でないなどの問題を発生することがある。
【0004】
故に、成分又は比率を改良することにより、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料が速やかに結晶成形することができ、即ち、70℃~120℃の金型温度で射出し、表面が硬化可能であり、且つ離型不良の問題を起こさないことによって、高い熱変形温度を有する複合材料を得ると共に、射出成形時間を低減することは、本事業の解決しようとする重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を提供する。ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、ポリエチレンテレフタレート40重量部~65.5重量部と、ガラス繊維5重量部~40重量部と、結晶化剤0.15重量部~2.5重量部とを含む。結晶化剤は、無機結晶化剤及び有機結晶化剤を含み、無機結晶化剤の添加量は有機結晶化剤の添加量より少ない。
【0007】
一つの実施形態において、ポリエチレンテレフタレート複合材料は、ポリエチレンテレフタレートと変性化合物とを反応してなる変性ポリエチレンテレフタレートを更に含み、変性化合物は、アジピン酸、ポリエチレングリコールPEG、ポリエーテルポリオール、又はポリエステルポリオールである。
【0008】
一つの実施形態において、ポリエチレンテレフタレート100重量部に対して、変性化合物の添加量は4重量部~10重量部である。
【0009】
一つの実施形態において、変性ポリエチレンテレフタレート、結晶化剤及びガラス繊維は、260℃~280℃の温度で溶融・混合されると共に、80℃~100℃の温度で射出成形されることによって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を形成する。
【0010】
一つの実施形態において、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料の結晶化度は17%を超える。
【0011】
一つの実施形態において、無機結晶化剤は、タルク粉末(talc)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)及びケイ酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0012】
一つの実施形態において、有機結晶化剤は、安息香酸塩、エチレンジアミン、イオンポリマー(ionic polymer)、ポリエステルオリゴマーのアルカリ金属塩(alkali metal salt of polyester oligomer)、長鎖飽和カルボン酸ナトリウム(long-chain linear saturated carboxylic acid sodium salt)、長鎖飽和カルボン酸カルシウム(long-chain linear saturated carboxylic acid calcium salt)、長鎖飽和芳香族カルボン酸金属ナトリウム塩(long-chain linear saturated aromatic carboxylic acid metal sodium salt)及び長鎖飽和芳香族カルボン酸金属マグネシウム塩(long-chain linear saturated aromatic carboxylic acid metal magnesium salt)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0013】
一つの実施形態において、無機結晶化剤の添加量は0.1重量部~0.5重量部である。
【0014】
一つの実施形態において、有機結晶化剤の添加量は0.3重量部~0.7重量部である。
【0015】
一つの実施形態において、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、強靭化剤3重量部~8.5重量部を更に含む。
【0016】
一つの実施形態において、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、酸化防止剤0.1重量部~0.5重量部を更に含む。
【0017】
一つの実施形態において、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、加工助剤0.1重量部~1重量部を更に含む。
【0018】
一つの実施形態において、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、難燃剤10重量部~25重量部を更に含む。
【0019】
一つの実施形態において、難燃剤は、リン難燃剤及び窒素難燃剤であり、リン難燃剤と窒素難燃剤との含有量比(リン難燃剤:窒素難燃剤)は1:1~1:3である。
【0020】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、ポリエチレンテレフタレート複合材料の製造方法を提供する。ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料の製造方法は、ポリエチレンテレフタレートと変性化合物とを反応させることによって、変性ポリエチレンテレフタレートを形成することと、260℃~280℃の温度で、前記ポリエチレンテレフタレート40重量部~65.5重量部、前記変性ポリエチレンテレフタレート5重量部~10重量部、結晶化剤0.15重量部~2.5重量部及びガラス繊維5重量部~40重量部を溶融・混合することと、80℃~100℃の温度で射出成形によって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を形成することと、を含み、前記結晶化剤は無機結晶化剤及び有機結晶化剤を含み、前記無機結晶化剤の添加量は前記有機結晶化剤の添加量より少ない。
【0021】
一つの実施形態において、ポリエチレンテレフタレート複合材料の熱変形温度は、210℃~220℃である。
【0022】
一つの実施形態において、ポリエチレンテレフタレート複合材料の耐衝撃強さは6.5kg-cm/cm以上である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有利な効果として、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、「結晶化剤は無機結晶化剤及び有機結晶化剤を含む」及び「無機結晶化剤の添加量は有機結晶化剤の添加量より少ない」といった技術特徴によって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料が速やかに結晶成形し、射出成形時間を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明を参照されたい。しかし、提供される詳細な説明は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0025】
以下、所定の具体的な実施態様によって「ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0026】
本発明の実施形態は、ポリエチレンテレフタレート、ガラス繊維及び結晶化剤を主に含む、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を提供する。ポリエチレンテレフタレートは、純テレフタル酸(pure terephthalic acid,PTA)とエチレングリコール(ethylene glycol,EG)との縮合反応で製造される。ポリエチレンテレフタレートにより優れた核生成効果を与えて、その後の結晶化剤の使用量を減少し、耐衝撃性の低下を回避するために、本発明で用いたポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレート及び変性ポリエチレンテレフタレートを含んでもよい。変性ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートを、アジピン酸(AA)、ポリエチレングリコールPEG、ポリエーテルポリオール(Polyether polyol)又はポリエステルポリオール(polyester polyol)で変性して得たものである。前記ポリエステルポリオールは、従来のポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びポリカーボネートジオールを含む。本発明の実施形態において、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV値)は、0.65dL/g~0.95dL/gであってもよく、0.75dL/g~0.85dL/gであることがより好ましい。例えば、約0.80dL/gであってもよい。
【0027】
本発明で用いた変性ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレート原料を先にエステル化を行った後に、重合反応を行うことで得たものである。具体的に説明すると、ポリエチレンテレフタレートをエステル化槽に添加してエステル化反応を行う。エステル化反応を一定期間行った後に、エステル化槽適量又は適切な添加物を添加してもよい。他の添加物としては、酸化防止剤、安定剤及び/又は重合触媒であってもよい。その後、エステル化反応を行った産物を重合槽に導入して重合反応を行う。重合反応は、予備重合反応及び/又は本重合反応を含む。予備重合反応は例えば、一定期間で槽体での気圧を低減することである。空気を引き出すことにより、槽体での気圧が常圧から10torrに低減させて、10torr以下(例えば、1torr又は1torrに近い)に更に低減させることができ、本重合反応は低圧で槽体での物質を加熱して昇温させる。気圧が1torr以下の条件において、槽体での物質が対応の固有粘度となるように、280℃の温度で重合反応を行う。次に、槽体での気圧を向上させ(窒素ガスを充填する)、通常の重合物の造粒方法を用いることによって、槽体での物質を押し出し・ダイシングすることで、ポリエステル粒子を形成する。
【0028】
変性PET及び通常PET(変性なし)の物性については、下表1に示すとおりである。
【0029】
【表1】
DSC:示差走査熱量測定;Tg:ガラス転移温度;Tm:融点;Tc:臨界温度;
△Hc:融解熱;IV:固有粘度;DMA:動的機械分析。
【0030】
上表1に示すように、変性PETの半結晶化時間は、通常PETの半結晶化時間より短い。即ち、変性PETは、通常PETに比べてより早い結晶速度を有し、その後の結晶化剤の添加量を低減させることができる。
【0031】
本発明において、ポリエチレンテレフタレートの組成物での添加量は、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、50重量部、51重量部、52重量部、53重量部、54重量部、55重量部、56重量部、57重量部、58重量部、59重量部、60重量部、61重量部、62重量部、63重量部、64重量部、65重量部、又は65.5重量部であってもよい。ポリエチレンテレフタレートの添加量が40重量部未満であると、射出加工性が不良となることに繋がる。ポリエチレンテレフタレートの添加量が65.5重量部を超えると、結晶性が不良となることに繋がる。
【0032】
ガラス繊維は、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、Eガラス及びSガラスなどであってもよく、若しくは、他の長繊維又は短繊維を製造するためのガラス繊維であってもよい。本発明の一つの実施形態において、ガラス繊維の繊維直径は、10μm~24μmであり、例えば、10μm、13μm、17μm、24μmであってもよい。本発明において、ガラス繊維の組成物での添加量は、5重量部~50重量部であり、例えば、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部又は50重量部である。ガラス繊維の添加量が5重量部未満であると、組成物の強度が不足となる。ガラス繊維の添加量が50重量部を超えると、射出性が劣りとなり、物品の表面の外観が不良となることがある。
【0033】
結晶化剤の組成物での添加量は、0.15重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部、1.9重量部、2重量部、2.1重量部、2.2重量部、2.3重量部、2.4重量部又は2.5重量部であってもよい。結晶化剤の添加量が0.15重量部未満であると、ポリエチレンテレフタレート組成物の結晶化度が不足となる。結晶化剤の添加量が2.5重量部を超えると、ポリエチレンテレフタレート組成物の成品の耐衝撃性が低下となる。本発明の一つの実施形態において、結晶化剤の含有量は、1重量部未満である。
【0034】
特筆すべきことは、本発明の組成物における結晶化剤は、無機結晶化剤及び有機結晶化剤を含むと共に、無機結晶化剤の添加量は有機結晶化剤の添加量より少ない。特定の比率で無機結晶化剤及び有機結晶化剤を同時に採用する場合、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、70℃~120℃の金型温度で射出成形することが可能であり、好ましくは、80℃~120℃の金型温度で射出成形する際に、熱変形温度が200℃を超えるポリエチレンテレフタレートを得られる。本発明の一つの好ましい実施形態において、無機結晶化剤と有機結晶化剤との含有量比(無機結晶化剤:有機結晶化剤)は1:2である。
【0035】
更に説明すると、無機結晶化剤は、タルク粉末(talc)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)及びケイ酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである。無機結晶化剤の組成物での添加量は、0.1重量部~0.5重量部であり、例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部又は0.5重量部である。また、無機結晶化剤の平均粒子径は、0.1μm~5μmであってもよい。
【0036】
有機結晶化剤は、安息香酸塩、エチレンジアミン、イオンポリマー(ionic polymer)、ポリエステルオリゴマーのアルカリ金属塩(alkali metal salt of polyester oligomer)、長鎖飽和カルボン酸ナトリウム(long-chain linear saturated carboxylic acid sodium salt)、長鎖飽和カルボン酸カルシウム(long-chain linear saturated carboxylic acid calcium salt)、長鎖飽和芳香族カルボン酸金属ナトリウム塩(long-chain linear saturated aromatic carboxylic acid metal sodium salt)及び長鎖飽和芳香族カルボン酸金属マグネシウム塩(long-chain linear saturated aromatic carboxylic acid metal magnesium salt)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。有機結晶化剤の組成物での添加量は、0.3重量部~0.7重量部である。例えば、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部又は0.7重量部である。
【0037】
一つの実施形態において、本発明のガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、PET材料の脆性を低減し、PET材料の耐衝撃性を向上して、組成物の射出成形の後の柔軟性を増加するために、強靭化剤を更に含んでもよい。強靭化剤は、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリセリル共重合体(E-MA-GMA)、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンエラストマー、無水マレイン酸をグラフトしたポリエチレン/ポリプロピレン、無水マレイン酸をグラフトしたSEBSであってもよいが、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0038】
本発明において、強靭化剤の組成物での添加量は、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、5.5重量部、6重量部、6.5重量部、7重量部、7.5重量部、8重量部又は8.5重量部であってもよい。強靭化剤の添加量が3重量部未満であると、PET材料が脆くなり且つ耐衝撃性が不足となる。強靭化剤の添加量が8.5重量部を超えると、剛性が不足となって、曲げ強度が低下となる。
【0039】
一つの実施形態において、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、酸化作用を緩め又は防止し、ポリエチレンテレフタレート組成物の加工過程又は過酷な環境で暴露することによる劣化又は分解を回避するように、酸化防止剤を更に含んでもよい。酸化防止剤は、テトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ペンタエリスリトールフェニルプロピオネート(tetrakis(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxy)pentaerythritol phenylpropionate)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル)フェニルホスファイト(tris(2,4-di-tert-butyl) phenyl phosphite)及び3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n-オクタデシル(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)octadecyl propionate)からなる群から選択される少なくとも1つであるが、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0040】
本発明において、酸化防止剤の組成物での添加量は、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部又は0.5重量部であってもよい。酸化防止剤の添加量が0.1重量部未満であると、PETの耐熱保護が不足となり且つ分解されやすくなる。酸化防止剤の添加量が0.5重量部を超えると、耐熱保護力が増加するものの、コストが増加して、経済的ではない。
【0041】
一つの実施形態において、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、加工助剤を更に含んでもよい。加工助剤は例えば、滑剤、紫外線吸収剤(UV吸収剤)、流動性改質剤、架橋剤、カップリング剤(例えば、シロキサンカップリング剤及びチタネートカップリング剤)であってもよい。加工助剤の組成物での添加量は、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部又は1重量部であってもよい。
【0042】
一つの実施形態において、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、組成物の難燃性を向上するように、難燃剤を更に含んでもよい。難燃剤は、有機難燃剤及び無機難燃剤であってもよい。有機難燃剤は、リン難燃剤、ペンタエリスリトール二リン酸メラミン塩やメラミンポリリン酸(Melamine Polyphosphate,MPP)、ポリリン酸アンモニウム(Ammonium Polyphosphate,APP)、又はメラミンシアヌレート(Melamine Cyanyrate,MCA)であってもよい。無機難燃剤は、三酸化アンチモン、ほう酸亜鉛の中の一種以上であってもよい。前記無機難燃剤の熱安定性が優れており、有機難燃剤と組み合わせることが可能である。
【0043】
本発明の一つの好ましい実施形態において、難燃剤は、リン系窒素難燃剤であってもよく、即ち、リン酸難燃剤と窒素難燃剤との含有量(リン酸難燃剤:窒素難燃剤)が1:1~1:3となるように調製された混合物である。本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料により優れた難燃性を提供する点から、好ましくは、リン酸難燃剤と窒素難燃剤との含有量は1:2である。説明すべきことは、リンと窒素を同時に含むため、リン系窒素難燃剤の熱分解温度は、200℃を超える(例えば、市販のクラリアントOPシリーズ)。
【0044】
[ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料の製造方法]
本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を製造するための具体的工程は、以下の工程を含んでもよい。即ち、ポリエチレンテレフタレート、無機結晶化剤、有機結晶化剤、強靭化剤、酸化防止剤、加工助剤、難燃剤、及びガラス繊維を、260℃~280℃の温度で二軸押出機に順次に仕込めることによって、押出及び造粒を行い、最後に、90℃の金型温度で射出成形することによって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を形成すると共に、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料に対する物性測定を行った。
【0045】
熱変性温度の測定方法は、ASTM D648の基準に基づいて行った。熱変性温度(Heat deflection temperature)を測定する際に、サンプルを2つのサポートポイントの上に放置すると共に、サンプルの中間位置の最も外側の内部応力を0.46Mpa(66psi)又は1.82Mpa(264psi)となるように、特定の重量でサンプルの中間位置に印加した。次に、装置全体を2℃/minの加熱温度で加熱された油浴に浸した。サンプルの中間の圧力を受ける位置の偏差量(Deflection)が0.25mmとなった時に、測定された温度を熱変形温度とした。
【0046】
本発明の組成物が結晶成形の速度を低減すると共に、高い熱変形温度を得られることを証明するために、以下の実施例及び比較例を設計し、前記製造方法によって射出成形で得た材料に対する物性測定を行ったが、本発明は実施例が制限されるものではない。
【0047】
[実施例1]
実施例1に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、46.4重量部のポリエチレンテレフタレート、10重量部の変性ポリエステル、30重量部のガラス繊維、0.2重量部の無機結晶化剤、0.5重量部の有機結晶化剤、5重量部の強靭化剤、0.45重量部の酸化防止剤、0.6重量部の加工助剤、10重量部のリン難燃剤、5重量部の窒素難燃剤、0.15重量部の滑剤及び1重量部の黒マスターバッチとの成分を含んだ。
【0048】
[実施例2]
実施例2に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、41.4重量部のポリエチレンテレフタレート、5重量部の変性ポリエステル、30重量部のガラス繊維、0.2重量部の無機結晶化剤、0.5重量部の有機結晶化剤、5重量部の強靭化剤、0.45重量部の酸化防止剤、0.6重量部の加工助剤、10重量部のリン難燃剤、5重量部の窒素難燃剤、0.15重量部の滑剤及び1重量部の黒マスターバッチとの成分を含んだ。
【0049】
[実施例3]
実施例3に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、36.4重量部のポリエチレンテレフタレート、30重量部のガラス繊維、0.2重量部の無機結晶化剤、0.5重量部の有機結晶化剤、5重量部の強靭化剤、0.45重量部の酸化防止剤、0.6重量部の加工助剤、10重量部のリン難燃剤、5重量部の窒素難燃剤、0.15重量部の滑剤及び1重量部の黒マスターバッチとの成分を含んだ。実施例3に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、変性ポリエステルを含まなかった。
【0050】
[比較例1]
比較例1に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、46.65重量部のポリエチレンテレフタレート、30重量部のガラス繊維、0.7重量部の有機結晶化剤、5重量部の強靭化剤、0.45重量部の酸化防止剤、1.0重量部の加工助剤、10重量部のリン難燃剤、5重量部の窒素難燃剤、0.2重量部の滑剤及び1重量部の黒マスターバッチとの成分を含んだ。
【0051】
[比較例2]
比較例2に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、46.85重量部のポリエチレンテレフタレート、30重量部のガラス繊維、0.5重量部の無機結晶化剤、5重量部の強靭化剤、0.45重量部の酸化防止剤、1.0重量部の加工助剤、10重量部のリン難燃剤、5重量部の窒素難燃剤、0.2重量部の滑剤及び1重量部の黒マスターバッチとの成分を含んだ。
【0052】
[比較例3]
比較例3に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、46.15重量部のポリエチレンテレフタレート、30重量部のガラス繊維、0.5重量部の無機結晶化剤、0.7重量部の有機結晶化剤、5重量部の強靭化剤、0.45重量部の酸化防止剤、1.0重量部の加工助剤、10重量部のリン難燃剤、5重量部の窒素難燃剤、0.2重量部の滑剤及び1重量部の黒マスターバッチとの成分を含んだ。
【0053】
[測定結果の検討]
前記実施例及び比較例の組成について、下表2に示す通りである。
【0054】
【0055】
前記実施例及び比較例の物性測定の結果について、下表3に示す通りである。
【0056】
【表3】
DSC:示差走査熱量測定;MI:メルトインデックス;Tc:臨界温度;Tm:融点;△Hc:融解熱。
【0057】
実施例1~3に示すように、変性ポリエチレンテレフタレートを含む組成において、結晶速度が速い(半結晶化時間が短い)ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料を得られた。また、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、無機結晶化剤及び有機結晶化剤を同時に含んだことによって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料が90℃の金型温度で射出成形する際に、200℃を超える熱変形温度を有するポリエチレンテレフタレートを得られた。また、比較例3では、無機結晶化剤及び有機結晶化剤を同時に含んだが、変性PETを添加しなかったため、より多い結晶化剤を添加する必要があり、それによって、耐衝撃性の低下に繋がった。
【0058】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、「結晶化剤は無機結晶化剤及び有機結晶化剤を含む」及び「無機結晶化剤の添加量は有機結晶化剤の添加量より少ない」といった技術特徴によって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料が速やかに結晶成形し、射出成形時間を低減することができる。
【0059】
更に説明すると、変性なしポリエチレンテレフタレートを採用する場合、所望の結晶効果を達成するために、より多い量で無機結晶化剤及び有機結晶化剤を添加する必要がある。一方、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、「ポリエチレンテレフタレート40重量部~65.5重量部と、変性ポリエチレンテレフタレート5重量部~10重量部とを添加する」といった技術特徴によって、無機結晶化剤及び有機結晶化剤の使用量を低減して、より経済的となることを達成できる。
【0060】
更に説明すると、本発明に係るガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、「ポリエチレンテレフタレート40重量部~65.5重量部、変性ポリエチレンテレフタレート5重量部~10重量部、ガラス繊維5重量部~40重量部及び、結晶化剤0.15重量部~2.5重量部を添加する」といった技術特徴によって、ガラス繊維を含むポリエチレンテレフタレート複合材料は、70℃~120℃の金型温度で射出成形されて、200℃を超える熱変形温度を有するポリエチレンテレフタレートを得られる。
【0061】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。