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特許7545518通信装置及びその制御方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】通信装置及びその制御方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/16 20090101AFI20240828BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20240828BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240828BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240828BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20240828BHJP
【FI】
H04W48/16 110
H04W88/06
H04W84/12
H04W84/10 110
H04W92/18
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2023056353
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2018248376の分割
【原出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2023073456
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 和平
【審査官】三枝 保裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-112225(JP,A)
【文献】特開2016-178481(JP,A)
【文献】特開2012-129734(JP,A)
【文献】特開2003-008681(JP,A)
【文献】特開2016-152538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
前記通信装置の外部のアクセスポイントである外部アクセスポイントを介して他の装置と無線で通信するための無線インフラモードである第1の通信モードと、前記外部アクセスポイントを介さず他の装置と無線で接続するためのPeer-to-Peer(P2P)モードである第2の通信モードとを含む複数の通信モードのうち少なくとも1つを有効化または無効化することで、前記通信装置の通信モードを制御する制御手段と、
前記通信装置の周囲の前記外部アクセスポイントが発しているビーコンを前記通信装置が受信することで前記外部アクセスポイントを前記通信装置が探索する探索処理を、前記通信装置による所定の受付が行われたことに基づいて、実行する実行手段と
を備え、
前記第1の通信モードが有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記第1の通信モードにて前記探索処理を実行し、
前記第2の通信モードが有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記第2の通信モードにて前記探索処理を実行することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の通信モードまたは前記第2の通信モードのいずれかまたは両方が有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記複数の通信モードのうちいずれの通信モードの有効化および無効化も伴わずに、前記第1の通信モードまたは前記第2の通信モードのいずれかによって前記探索処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の通信モードによる通信が利用するアンテナと、前記第2の通信モードによる通信が利用するアンテナは、同じアンテナであることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記複数の通信モードは、他の装置と無線で直接通信する、前記第2の通信モードと異なる第3の通信モードを更に含み、
前記第1の通信モードによる通信が利用するアンテナ、前記第2の通信モードによる通信が利用するアンテナ、および前記第3の通信モードによる通信が利用するアンテナは、同じアンテナであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記複数の通信モードは、他の装置と有線によって通信する有線通信モードを更に含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1の通信モードおよび前記第2の通信モードがいずれも無効であり、且つ前記有線通信モードが有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記第2の通信モードを有効化し、前記第2の通信モードにて前記探索処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記有線通信モードが維持されたまま、前記第2の通信モードにて前記探索処理を実行することを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1の通信モードおよび前記第2の通信モードがいずれも無効である状態で前記所定の受付が行われ、且つ前記探索処理が、第1の周波数帯で実行され、前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯で実行されない場合、前記第2の通信モードを有効化し、前記第2の通信モードにて前記探索処理を実行させ、
前記第1の通信モードおよび前記第2の通信モードがいずれも無効である状態で前記所定の受付が行われ、且つ前記探索処理が、前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯で実行される場合、前記第2の通信モード以外の通信モードを有効化し、前記第2の通信モード以外の通信モードにて前記探索処理を実行させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記第2の通信モード以外の通信モードは、前記第1の通信モードであることを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第2の通信モード以外の通信モードは、他の装置と前記外部アクセスポイントを介さずに無線で通信する、前記第2の通信モードと異なる通信モードであることを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項11】
前記第1の周波数帯は、2.4GHzの周波数帯であり、前記第2の周波数帯は、5GHzの周波数帯であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1の通信モードを有効化する場合、前記第1の通信モードと異なる所定の通信モードを無効化することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項13】
前記複数の通信モードは、他の装置と有線によって通信する有線通信モードを含み、
前記所定の通信モードは、前記有線通信モードであることを特徴とする請求項12に記載の通信装置。
【請求項14】
前記探索処理によって発見された前記外部アクセスポイントのうち、いずれかの前記外部アクセスポイントと前記通信装置とを接続させる接続手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項15】
前記探索処理によって発見された前記外部アクセスポイントのリストを表示部に表示させる表示手段をさらに有し、
前記リストの内、ユーザによって選択された前記外部アクセスポイントと前記通信装置とが接続されることを特徴とする請求項14に記載の通信装置。
【請求項16】
前記リストからいずれかの前記外部アクセスポイントが前記ユーザによって選択された場合、前記第1の通信モードを有効化し、
前記リストのうち、前記ユーザによって選択された前記外部アクセスポイントを介して、前記第1の通信モードによる通信が行われることを特徴とする請求項15に記載の通信装置。
【請求項17】
前記第1の通信モードは、IEEE802.11シリーズに準拠した通信を用いた通信モードであることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項18】
前記第2の通信モードは、Bluetooth Low Energyを用いた通信モードであることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項19】
前記第2の通信モードは、Wi-Fi Directを用いた通信モードであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項20】
前記第2の通信モードは、前記通信装置がアクセスポイントとして動作する通信モードであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項21】
前記第2の通信モードを有効化するための処理が実行されてから、前記第2の通信モードによって前記探索処理が実行可能になるまでの時間は、前記第1の通信モードを有効化するための処理が実行されてから、前記第1の通信モードによって前記探索処理が実行可能になるまでの時間より短いことを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項22】
印刷を実行するための印刷手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項23】
前記所定の受付は、前記通信装置に対する操作の受付及び、前記通信装置に対する携帯端末からの指示の受付のうち少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項24】
前記複数の通信モードは、前記外部アクセスポイントを介さず他の装置と無線で通信するためのモードであり、前記第2の通信モードと異なる第3のモードをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項25】
通信装置の制御方法であって、
前記通信装置の外部のアクセスポイントである外部アクセスポイントを介して他の装置と無線で通信するための無線インフラモードである第1の通信モードと、前記外部アクセスポイントを介さず他の装置と無線で接続するためのPeer-to-Peer(P2P)モードである第2の通信モードとを含む複数の通信モードのうち少なくとも1つを有効化又は無効化することで、前記通信装置の通信モードを制御する制御ステップと、
前記通信装置の周囲の前記外部アクセスポイントが発しているビーコンを前記通信装置が受信することで前記外部アクセスポイントを前記通信装置が探索する探索処理を、前記通信装置による所定の受付が行われたことに基づいて、実行する実行ステップと、
を備え、
前記第1の通信モードが有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記第1の通信モードにて前記探索処理を実行し、
前記第2の通信モードが有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記第2の通信モードにて前記探索処理を実行する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項26】
請求項1乃至24のいずれか1項に記載の通信装置の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自身の周囲に存在するアクセスポイントを検索する処理(APサーチ)を実行する通信装置が知られている。特許文献1には、接続可能なアクセスポイントを検索し、SSIDリストを表示する情報処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-127545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、APサーチを実行する装置が普及するにつれ、APサーチを実行する通信装置にかかる利便性を向上させることが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、通信装置であって、前記通信装置の外部のアクセスポイントである外部アクセスポイントを介して他の装置と無線で通信するための無線インフラモードである第1の通信モードと、前記外部アクセスポイントを介さず他の装置と無線で接続するためのPeer-to-Peer(P2P)モードである第2の通信モードとを含む複数の通信モードのうち少なくとも1つを有効化又は無効化することで、前記通信装置の通信モードを制御する制御手段と、前記通信装置の周囲の前記外部アクセスポイントが発しているビーコンを前記通信装置が受信することで前記外部アクセスポイントを前記通信装置が探索する探索処理を、前記通信装置による所定の受付が行われたことに基づいて、実行する実行手段と、を備え、前記第1の通信モードが有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記第1の通信モードにて前記探索処理を実行し、前記第2の通信モードが有効である状態で前記所定の受付が行われた場合、前記第2の通信モードにて前記探索処理を実行させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、APサーチを実行する通信装置にかかる利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る無線通信システムの構成の一例を示す図。
図2】本発明に係る携帯端末の外観を示す図。
図3】本発明に係るMFPの外観を示す図。
図4】本発明に係るMFPの操作表示部に表示される画面の一例を示す図。
図5】本発明に係る携帯端末のハードウェア構成の例を示す図。
図6】本発明に係るMFPのハードウェア構成の例を示す図。
図7】従来の無線通信設定における処理のシーケンス図。
図8】MFPが有線通信モードで動作している状態で実行される、第1の実施形態の無線通信設定における処理のフローチャート。
図9】MFPがBLE通信モードで動作している状態で実行される、第1の実施形態の無線通信設定における処理のフローチャート。
図10】MFPが無線インフラモードで動作している状態で実行される、第1の実施形態の無線通信設定における処理のフローチャート。
図11】本発明に係る無線LANセットアップ実行時に表示される画面の例を示す図。
図12】本発明に係る無線LANセットアップ実行時の処理を示すフローチャート。
図13】第1、第3の実施形態に係る無線アクセスポイントサーチ処理のフローチャート。
図14】第2の実施形態に係る無線アクセスポイントサーチ処理のフローチャート。
図15】本発明に係る無線アクセスポイントサーチ結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を例示的に詳しく説明する。但し、本実施形態に記載されている構成要素の相対配置、表示画面等は、特に、特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
[システム構成]
まず、以下で説明する各実施形態を実現するためのシステム構成について、図1図6を用いて説明する。
【0010】
図1は、携帯型通信端末装置(以下、携帯端末)、通信装置、及びアクセスポイントを含むシステムの概念構成の例を示す図である。携帯端末200は、無線LAN(WLAN)通信部、及びBluetooth(登録商標)通信部を有する装置である。携帯端末200は、PDA(PerSonal Digital ASSiStant)等の個人情報端末、携帯電話、デジタルカメラ等であってよい。通信装置として、本発明では、複写サービス、FAXサービス、印刷サービスを提供可能なMFP(Multi-Function Peripheral)300を例示しているが、これに限定されない。通信装置として、携帯端末と通信を行うことが可能な装置であれば、種々のものを適用可能である。例えば、プリンタ(印刷装置)であれば、インクジェットプリンタ、フルカラーレーザービームプリンタ、モノクロプリンタ等を適用可能である。また、複写機やファクシミリ装置、スマートフォン、携帯電話、PC、タブレット端末、PDA、デジタルカメラ、音楽再生デバイス、ストレージ、プロジェクタ、スマートスピーカ等、印刷以外のサービスを提供可能な装置にも適用可能である。なお、スマートスピーカとは、ユーザが発する音声に従って、同一のネットワークに存在する機器に対して処理を指示したり、ユーザが発する音声に対応して、ネットワークを介して取得した情報をユーザに通知したりするための装置である。その他、単一の機能を備えるシングルファンクションプリンタ(以後、SFP)も適用可能である。アクセスポイント400は、携帯端末200の外部、且つ、MFP300の外部に存在する外部アクセスポイントであり、無線LANルーター等の装置である。アクセスポイント400は、WLAN通信部を有し、アクセスポイントへ接続している装置同士の通信を中継することで無線インフラモードの通信を提供する。
【0011】
携帯端末200とMFP300は各々が有するWLAN通信部により、アクセスポイント400を介した無線インフラモードの無線通信を行ってもよいし、Wi-Fi Direct(登録商標)などのP2P(Peer-to-Peer)通信を行ってもよい。また、携帯端末200とMFP300はBT通信部によるP2P通信を行ってもよい。各モードについては図7図10を用いて詳細に後述する。なお、携帯端末200及びMFP300は、後述するようにWLAN経由で複数の印刷サービスに対応した処理を実行可能である。
【0012】
図2は、本実施形態に係る携帯端末200の外観を示す図である。本実施形態では、携帯端末200としてスマートフォンを例に挙げて説明する。スマートフォンとは、携帯電話の機能の他に、カメラや、ウェブブラウザ、電子メール機能等を搭載した多機能型の携帯電話のことである。WLANユニット201は、WLANで通信を行うためのユニットである。WLANユニット201は、例えばIEEE802.11シリーズに準拠したWLANシステムにおけるデータ(パケット)通信が可能であるものとする。本実施形態では、WLANユニット201は、2.4GHz帯と5GHz帯との両方の周波数帯域で通信可能である。また、WLANユニット201を用いた無線通信では、Wi-Fi Direct(登録商標)をベースにした通信、ソフトAPモード、無線インフラモードによるWi-Fiをベースにした通信などが可能である。Bluetooth(BT)ユニット205は、IEEE802.15.1に準拠する、2.4GHz帯の周波数帯域を用いた通信が可能である。具体的にはBTユニット205は、Bluetooth Classic(Bluetooth BR/EDR、Bluetooth+HS)やBluetooth Low Energy(BLE)等のBT通信が可能である。表示部202は、例えば、LCD方式の表示機構を備えたディスプレイである。操作部203は、タッチパネル方式の操作機構を備えており、ユーザによる操作を検知する。代表的な操作方法としては、表示部202がボタンアイコンやソフトウェアキーボードの表示を行い、ユーザがそれらの箇所に触れることによって操作イベントを検知するものがあり、これらの方法が用いられてよい。電源キー204は、電源のオン及びオフをする際に用いるハードキーである。
【0013】
図3は、本実施形態に係るMFP300の外観を示す図である。図3において、原稿台301は、スキャナ(読取部)で読み取らせる原稿を載せるガラス状の透明な台である。原稿蓋302は、スキャナで読取を行う際に原稿を押さえたり、読取の際に原稿を照射する光源からの光が外部に漏れないようにしたりするための蓋である。印刷用紙挿入口303は、様々なサイズの用紙をセット可能な挿入口である。印刷用紙挿入口303にセットされた用紙は一枚ずつ、MFP300内部の印刷部に搬送され、印刷部で印刷を行って印刷用紙排出口304から排出される。操作表示部305は、文字入力キー、カーソルキー、決定キー、取り消しキー等のキーと、LED(発光ダイオード)やLCD(液晶ディスプレイ)などから構成され、ユーザによってMFPとしての各種機能の起動や各種設定を行うことができる。また、操作表示部305は、タッチパネルで構成されてもよい。無線通信用アンテナ306は、WLANやBTで通信するためのアンテナが埋め込まれている。MFP300もまた、WLANによって、2.4GHzや5GHzの周波数帯域で通信が可能であり、BTによって2.4GHzの周波数帯域での通信が可能である。
【0014】
図4は、MFP300の操作表示部305の画面表示の一例を模式的に示した図である。図4(a)は、MFP300が電源オンし、印刷やスキャン等の動作をしていない状態(アイドル状態)を示すホーム画面410の構成例を示す。ホーム画面410では、キー操作やタッチパネル操作によりコピーやスキャン、インターネット通信を利用したクラウド機能のメニュー表示や各種設定、機能実行が可能である。ホーム画面410からキー操作やタッチパネルの操作によってシームレスに図4(a)とは異なる機能を表示することができる。図4(b)に示す画面420は、その一例であり、プリントやフォト機能の実行や通信設定の変更が実行可能な画面である。図4(c)に示す画面430は、画面420において、通信設定を選択した際に表示される画面の例である。画面430から後述する無線インフラモードの有効/無効設定、有線通信モードの有効/無効設定、WFDモードの有効/無効設定など各種のLAN設定変更、BTの有効/無効設定をはじめとしたBT設定変更が実行できる。
【0015】
[ハードウェア構成]
(端末装置)
図5は、携帯端末200のハードウェア構成の例を示すブロック図である。携帯端末200は、装置自身のメインの制御を行うメインボード501と、WLAN通信を行うWLANユニット201と、BT通信を行うBTユニット205とを有する。メインボード501において、CPU(中央演算処理部)502は、システム制御部であり、携帯端末200の動作及び処理の全体を制御する。以降に示す携帯端末200の処理は、CPU502の制御によって実行される。ROM(Read Only Memory)503は、CPU502が実行する制御プログラムや組込オペレーティングシステム(OS)プログラム等を記憶する。本実施形態では、ROM503に記憶されている各制御プログラムは、ROM503に記憶されている組込OSの管理下で、スケジューリングやタスクスイッチ等のソフトウェア制御を行う。
【0016】
RAM(Random Access Memory)504は、SRAM(Static RAM)等で構成され、プログラム制御変数等のデータを記憶する。また、RAM504は、ユーザが登録した設定値や携帯端末200の管理データ等のデータを記憶し、各種ワーク用バッファ領域が設けられている。画像メモリ505は、DRAM(Dynamic RAM)等のメモリで構成され、WLANユニット201を介して受信した画像データや、データ蓄積部513から読み出した画像データをCPU502で処理するために一時的に記憶する。
【0017】
不揮発性メモリ512は、フラッシュメモリ(flash memory)等のメモリで構成され、電源がオフされてもデータを記憶し続ける。尚、メモリ構成はこれに限定されるものではない。例えば、画像メモリ505とRAM504を共有させてもよいし、データ蓄積部513にデータのバックアップ等を行ってもよい。また、本実施形態では、画像メモリ505にDRAMを用いているが、ハードディスクや不揮発性メモリ等の他の記憶媒体を使用する場合もあり、この限りではない。
【0018】
データ変換部506は、種々の形式のデータの解析や、色変換、画像変換等のデータ変換を行う。電話部507は、電話回線の制御を行い、スピーカ部514を介して入出力される音声データを処理することで電話による通信を実現する。操作部508は、操作部203からの信号を制御する。GPS(Global Positioning System)509は、携帯端末200の現在の緯度や経度等の位置情報を取得する。表示部510は、表示部202の表示内容を電子的に制御しており、各種入力操作や、MFP300の動作状況、ステータス状況の表示等を行うことができる。
【0019】
カメラ部511は、レンズ(不図示)を介して入力された画像を電子的に記録して符号化する機能を有する。カメラ部511で撮影された画像は、データ蓄積部513に保存される。スピーカ部514は、電話機能のための音声を入力または出力する機能や、その他、アラーム通知等の機能を実現する。電源部515は、携帯可能な電池であり、装置内への電力供給制御を行う。電源状態には、電池に残量が無い電池切れ状態、電源キー204を押下していない電源オフ状態、通常起動している起動状態、起動しているが省電力になっている省電力状態などがある。
【0020】
上述したように、携帯端末200は、WLANユニット201およびBTユニット205を用いることでWLANやBTで無線通信することができる。これにより、携帯端末200は、MFP300等の他デバイスとのデータ通信を行う。各通信部は、データをパケットに変換し、他デバイスにパケット送信を行う。また、各通信部は、外部の他デバイスからパケットを受信し、このパケットを元のデータに復元してCPU502に対して送信する。WLANユニット201は、バスケーブル516を介してメインボード501に接続されている。BTユニット205は、バスケーブル517を介してメインボード501に接続されている。WLANユニット201とBTユニット205は、規格に準拠した通信を実現するための通信部である。メインボード501内の各種構成要素および各通信部は、CPU502が管理するシステムバス518を介して、相互に接続されている。
【0021】
(MFP)
図6は、本実施形態に係るMFP300のハードウェア構成の例を示すブロック図である。MFP300は、装置自身のメインの制御を行うメインボード601、WLANおよびBT通信を1本のアンテナで行う無線コンボユニット616、電話回線を利用するためのモデム619、及び有線通信を行う有線通信ユニット621を有する。
【0022】
メインボード601において、CPU(中央演算処理部)602は、システム制御部であり、MFP300の動作及び処理の全体を制御する。以降に示すMFP300の処理は、CPU602の制御によって実行される。ROM603は、CPU602が実行する制御プログラムや組込OSプログラム等を記憶する。本実施形態では、ROM603に記憶されている各制御プログラムは、ROM603に記憶されている組込OSの管理下で、スケジューリングやタスクスイッチ等のソフトウェア制御を行う。RAM604は、SRAM等で構成され、プログラム制御変数等のデータを記憶し、また、ユーザが登録した設定値やMFP300の管理データ等のデータを記憶し、各種ワーク用バッファ領域が設けられている。CPU602、ROM603、RAM604等によって、MFP300の制御部(情報処理部)が構成される。
【0023】
不揮発性メモリ605は、フラッシュメモリ等のメモリで構成され、電源がオフされてもデータを記憶し続ける。画像メモリ606は、DRAM等のメモリで構成され、無線コンボユニット616を介して受信した画像データや、符号復号化処理部611で処理した画像データなどを蓄積する。また、携帯端末200のメモリ構成と同様に、このようなメモリ構成はこれに限定されるものではない。データ変換部608は、種々の形式のデータの解析や、画像データから印刷データへの変換等を行う。
【0024】
読取制御部607は、読取部609(例えば、CIS(密着型イメージセンサ))を制御して、原稿上の画像を光学的に読み取る。次に、これを電気的な画像データに変換した画像信号を出力する。このとき、読取制御部607は、2値化処理や中間調処理等の各種画像処理を施してから出力してもよい。操作表示部610は、図3の操作表示部305に対応する。符号復号化処理部611は、MFP300で扱う画像データ(JPEG、PNG等)の符号復号化処理や、拡大縮小処理を行う。給紙部613は、印刷のための用紙を保持する。印刷制御部614からの制御により、給紙部613から用紙の給紙が行われる。特に、給紙部613は、複数種類の用紙を一つの装置に保持するために、複数の給紙部を用意することができる。そして、印刷制御部614により、どの給紙部から給紙を行うかの制御が行われる。
【0025】
印刷制御部614は、印刷される画像データに対し、スムージング処理や印刷濃度補正処理、色補正等の各種画像処理を施してから印刷部612に出力する。印刷部612は、例えば、インクタンクから供給されるインクをプリントヘッドから吐出させて画像を印刷するインクジェットプリンタを採用可能である。また、印刷制御部614は、印刷部612の情報を定期的に読み出してRAM604の情報を更新する役割も果たす。具体的には、インクタンクの残量やプリントヘッドの状態等のステータス情報を更新することである。
【0026】
MFP300には、携帯端末200のWLANユニット201とBTユニット205を組み合わせたものと同様の無線コンボユニット616が搭載されている。無線コンボユニット616は、携帯端末200のWLANユニット201とBTユニット205の両機能を実現することが可能である。ここで、無線コンボユニット616はバスケーブル615を介してメインボード601に接続されている。なお、MFP300は、携帯端末200等のデバイスと、WFDや通常のWi-FiによってP2Pによる通信が可能である。本実施形態では、P2P通信において、MFP300が親機(アクセスポイントやGroup Owner)として動作し、携帯端末200が子機として動作する。そのため、MFP300は、ソフトウェアアクセスポイント(以下、ソフトAP)機能を有している。
【0027】
モデム619は、電話回線を用いた通信を行うためのユニットである。モデム619は、バスケーブル618を介してメインボード601に接続されている。有線通信ユニット621は、有線で通信を行うためのユニットである。有線通信ユニット621は、例えばIEEE802.3シリーズに準拠した有線LAN(Ethernet)システムにおけるデータ(パケット)通信が可能である。また、有線通信ユニット621を用いた有線通信では、有線モードでの通信が可能である。ここで、有線通信ユニット621は、バスケーブル620を介してメインボード601に接続されている。メインボード601内の各種構成要素および各通信部は、CPU602が管理するシステムバス622を介して、相互に接続されている。
【0028】
[P2P(Peer to Peer)方式の通信モードについて]
P2P方式の接続を確立するために、本実施形態のMFP300は、P2Pモードで動作するものとする。なお、本実施形態では、P2P方式の接続とは、外部装置を介さずに装置同士が直接通信(直接の無線接続)する形態を指す。本実施形態に係るP2Pモードとして、以下の3つのモードを例に挙げて説明する。
・モードA(ソフトAPモード)
・モードB(Wi-Fi Direct(WFD)モード)
・モードD(Bluetooth Low Energy(BLE)モード)
【0029】
ソフトAPモードは、MFP300がソフトウェアアクセスポイントとして動作し、WFDではない通常のWi-Fiによって、子機である通信相手装置と通信するモードである。また、WFDモードは、WFDによって通信するモードである。なお、WFDは、WiFi Allianceによって策定された規格である。WFDによる通信において、複数のWFD対応機器のうちいずれがGroup Ownerとして動作するかは、Group Owner Negotiationというシーケンスに従って決定される。なお、Group Owner Negotiationが行われることなく、Group Ownerが決定されてもよい。本実施形態では、MFP300が実行するWFDによる通信において、MFP300が必ずGroup Ownerとなり、通信相手装置が必ずクライアントとなるように制御されるものとする。なお、Group Ownerは、WFDによる通信において利用する周波数帯や通信チャネルを決定する機能を有する。また、BLEモードは、MFP300がスレーブとして動作し、BLEによって、マスターである通信相手装置と通信するモードである。
【0030】
[インフラストラクチャモード(以下、無線インフラモード)について]
無線インフラモードとは、通信を行う装置(例えば、携帯端末200とMFP300)が、ネットワークを統括する外部装置(例えば、アクセスポイント400)を介して、WLANによって通信するためのモードである。本実施形態では、MFP300は、無線インフラモードを自身に設定する場合、MFP300の周囲に存在するアクセスポイントを検索し、無線インフラモードにおいて利用されるアクセスポイントの候補のリストを生成する。この探索処理を、APサーチという。MFP300は、APサーチとして具体的には、MFP300の周囲に存在するアクセスポイントが発しているBeacon(ビーコン)を検索し、当該Beaconを受信することで、アクセスポイントの検索及び発見を行う。無線インフラモードで動作するMFP300は、APサーチによって発見されたアクセスポイントのリスト(APリスト)からユーザによって選択されたアクセスポイントと接続することで、インフラ通信(アクセスポイントを介した携帯端末200との通信)を実現する。
【0031】
[有線通信モードについて]
有線通信モードとは、通信を行う装置(例えば、携帯端末200とMFP300)が、有線LANやUSB(Universal Serial Bus)等の有線インターフェースを介して通信するためのモードである。MFP300は、有線通信モードで動作する場合、無線インフラモードで動作できない。なお、MFP300は、有線通信モードで動作していても、P2Pモードで動作することは可能である。
【0032】
[同時動作について]
本実施形態のMFP300は、無線インフラモードによる通信と、P2Pモードによる通信を、同時に(並行して)実行可能であるものとする。そのため、MFP300は、無線インフラモードによって通信するための接続と、P2Pモードによって通信するための接続とを同時に(並行して)維持することができる。以後、無線インフラモードによって通信するための接続(アクセスポイント400を介した携帯端末200との接続)をインフラ接続という。また、P2Pモードによって通信するための接続(アクセスポイント400を介さない携帯端末200との接続)をP2P接続という。P2P接続は、MFP300又は携帯端末200がAPとなって構築された無線ネットワークにおける接続である。インフラ接続は、アクセスポイント400により構築された無線ネットワークにおける接続である。また、以後、インフラ接続とP2P接続を同時に(並行して)確立し、インフラ接続とP2P接続を介して同時に(並行して)通信可能に動作することを、同時動作という。
【0033】
[P2Pモード動作時のAPサーチ]
本実施形態では、MFP300は、後述の無線インフラモードを自身に設定する場合、MFP300の周囲に存在するアクセスポイントを検索(探索)し、無線インフラモードにおいて利用されるアクセスポイントの候補のリストを生成する。この処理を、APサーチという。APサーチは、通常、WLANユニット201に含まれるアンテナが用いられて実行されるため、MFP300は、無線インフラモードが有効な状態でAPサーチを実行可能である。
【0034】
本実施形態に係るMFP300は、上述の通り、WLANユニット201とBTユニット205を組み合わせたものと同様の無線コンボユニット616を備えている。無線コンボユニット616は、無線インフラモードおよびP2Pモード(WFDモード、ソフトAPモード、BLEモード)の通信を1つのアンテナ(不図示)で行う。言い換えれば、無線インフラモードによる通信が利用するアンテナと、P2Pモードによる通信が利用するアンテナは、無線コンボユニット616を構成する無線コンボチップ内の同じアンテナである。P2Pモードと無線インフラモードとでアンテナが共有されるため、本実施形態のMFP300は、無線インフラモードが有効な状態だけでなく、P2Pモードが有効な状態でもAPサーチを実行可能である。
【0035】
ここで、従来の無線通信設定における処理を説明する。従来、有線通信モードで動作している状態のMFP300に、無線インフラモードを新たに設定する場合、MFP300は、図7に示すような処理を実行する。なお、図7が示す処理は、実際には例えば、ROM603等のメモリに格納されたプログラムをCPU602がRAM604に読み出して実行することにより実現される。
【0036】
具体的にはまず、MFP300は、有線通信モードをOFF(無効化)し(S701)、無線インフラモードをON(有効化)する(S702)。これにより、MFP300はAPサーチが実行可能となるため、MFP300は、APサーチを実行する(S703)。そして、MFP300は、APサーチが完了すると、APリストを表示し、無線インフラモードをOFFする(S704)。次に、MFP300は、APサーチ前の状態に自身のモードを一旦戻すため、有線通信モードをONする(S705)。APサーチ前の状態に自身のモードを一旦戻すのは、APリストを表示している間にも、通信を実効可能とするためである。次に、MFP300は、APリストからのAPの選択を受け付け(S706)、無線インフラモードを新たに設定する。具体的には、MFP300は、有線通信モードをOFFし(S707)、無線インフラモードをONする(S708)。そして、MFP300は、APリストからの選択されたAPとWLANによって接続し(S709)、インフラ通信を実効可能となる。
【0037】
上記のように従来は、APサーチを実行するために、無線インフラモードをONしていた。なお、従来の形態においてこの処理が実行されるのは、有線通信モードで動作している状態のMFP300に、無線インフラモードが新たに設定される場合に限らない。無線インフラモード以外の他の通信モードで動作している状態のMFP300に、無線インフラモードが新たに設定される場合も同様である。しかしながら、無線インフラモードを有効化するためのコマンドを発行してから実際にAPサーチが実行可能になるまでには、時間を要する。APサーチが実行可能な状態に迅速に移行することにより、無線インフラモードを設定するために要する時間を削減することが好ましい。
【0038】
そこで、本発明では、APサーチが実行可能な状態に迅速に移行することにより、無線インフラモードを設定するために要する時間を削減する形態について以下に説明する。
【0039】
なお、以下に説明する実施形態において、各通信モードは有効(ON状態)/無効(OFF状態)の状態が管理される。例えば、MFP300においては、無線コンボユニット616や有線通信ユニット621の状態監視や制御を行うことで、有効な通信モードの切り替えや通信の制御を行うことができる。
【0040】
<第1の実施形態>
以上のシステム構成を備えた本実施形態に係る各装置において、無線LANシステムに接続する場合に、通信モードの切り替え順序を意識することなく、参加すべき無線ネットワークの無線アクセスポイントを検出する本発明の第1の実施形態の動作を説明する。
【0041】
(画面フロー)
図11は、本実施形態に係るMFP300の操作表示部305において、図4(c)の画面430の通信設定メニューの中から無線LAN431が選択されたときの画面フロー図である。図11(a)に示す画面1100は、図4(c)の画面430で、無線インフラモードを新たに設定するための無線LAN431が選択された際に表示され、無線LAN設定の変更が実行可能な画面である。図11(b)に示す画面1110は、図11(a)の画面1100において、無線LANセットアップ1101が選択されると、無線アクセスポイント検索を実施している間に表示される画面である。図11(c)に示す画面1120は、APサーチの結果として、無線アクセスポイントの識別名(SSID:Service Set Identifier)を一覧表示する画面である。
【0042】
(処理シーケンス)
MFP300が有線通信モードで動作している状態で実行される、本実施形態の無線通信設定における処理を、図8を用いて説明する。なお、図8が示す処理は、実際には例えば、ROM603等のメモリに格納されたプログラムをCPU602がRAM604に読み出して実行することにより実現される。なお本処理は、MFP300が有線通信モードで動作している状態で、画面1100において無線LANセットアップ1101が選択された場合に開始される。
【0043】
具体的にはまず、MFP300は、画面1100において無線LANセットアップ1101が選択された後は、有線通信モードを維持したままBLEモードをON(有効化)する(S801)。本実施形態では、上述のように無線コンボユニット616が利用されていることにより、MFP300は、BLEモードによってAPサーチが実行可能となるため、APサーチを実行する(S802)。そしてMFP300は、APサーチが完了すると、APリストを表示し、BLEモードをOFFする(S803)。このとき、有線通信モードは維持されているため、APサーチ前の状態に自身のモードを一旦戻す処理は必要ない。次に、MFP300は、APリストからのAPの選択を受け付け(S804)、無線インフラモードを新たに設定する。具体的には、MFP300は、有線通信モードをOFFし(S805)、無線インフラモードをONする(S806)。そして、MFP300は、APリストからの選択されたAPとWLANによって接続し(S807)、インフラ通信を実行可能となる。
【0044】
次に、MFP300がBLEモードで動作しており、他の通信モードで動作していない状態で実行される、本発明の無線通信設定における処理を、図9を用いて説明する。なお、図9が示す処理は、実際には例えば、ROM603等のメモリに格納されたプログラムをCPU602がRAM604に読み出して実行することにより実現される。なお本処理は、MFP300がBLEモードで動作している状態で、画面1100において無線LANセットアップ1101が選択された場合に開始される。
【0045】
具体的にはまず、MFP300は、画面1100において無線LANセットアップ1101が選択された後は、BLEモードによってAPサーチを実行する(S901)。そして、MFP300は、APサーチが完了すると、APリストを表示する。次にMFP300は、APリストからのAPの選択を受け付け(S902)、無線インフラモードを新たに設定する。具体的には、MFP300は、無線インフラモードをONする(S903)。このとき、無線インフラモードとBLEモードは並行して動作可能なため、BLEモードは解除されず維持される。そして、MFP300は、APリストからの選択されたAPとWLANによって接続し(S904)、インフラ通信を実行可能となる。
【0046】
次に、MFP300が無線インフラモードで動作している状態で実行される、本実施形態の無線通信設定における処理を、図10を用いて説明する。なお、図10が示す処理は、実際には例えば、ROM603等のメモリに格納されたプログラムをCPU602がRAM604に読み出して実行することにより実現される。なお本処理は、MFP300が無線インフラモードで動作している状態で、画面1100において無線LANセットアップ1101が選択された場合に開始される。
【0047】
具体的にはまず、MFP300は、画面1100において無線LANセットアップ1101が選択された後は、無線インフラモードによってAPサーチを実行する(S1001)。そしてMFP300は、APサーチが完了すると、APリストを表示する。次にMFP300は、APリストからのAPの選択を受け付け(S1002)、無線インフラモードを新たに設定する。具体的には、MFP300は、無線インフラモードをOFFする(S1003)。これは、現在接続しているアクセスポイントの情報等の、現在の無線インフラモードの設定を削除するためである。更に、MFP300は、選択されたAPに対応する新たな無線インフラモードをONする(S1004)。なお、無線インフラのモードの設定の切り替えが可能であれば、ここでの無線インフラモードのОN/OFFの切り替えは不要である。そして、MFP300は、APリストからの選択されたAPとWLANによって接続し(S1005)、インフラ通信を実行可能となる。これにより、新たな設定内容(新たに接続したアクセスポイントの情報)によって、無線インフラモードが新たに設定される。
【0048】
図12は、無線通信設定の詳細を表すフローチャートである。なお、本フローチャートが示す処理は、実際には例えば、ROM603等のメモリに格納されたプログラムをCPU602がRAM604に読み出して実行することにより実現される。
【0049】
S1201にて、MFP300は、図11(a)の画面1100で無線LANセットアップ1101が選択されると、無線LANセットアップ(無線インフラモードの設定)の実行を開始する。
【0050】
S1202にて、MFP300は、APサーチ(無線アクセスポイント検索)を実行する。本工程の詳細は、図13を用いて説明する。
【0051】
S1203にて、MFP300は、S1202のAPサーチの結果をRAM604に保存する。無線アクセスポイント検索は通常、アクセスポイント400がBeaconと呼ばれるパケットを定期的に同時送信しているため、これらを受信した結果とする。Beaconにて特定される情報としては、図15に示すような、SSID、周波数帯域、認証方式、暗号方式、Macアドレス、電波強度などの情報が含まれている。なお、図15は、BLEモードによるAPサーチの結果であるため、2.4GHzの周波数帯を利用するアクセスポイントしか含まない。しかしながら、他のモードで実行したAPサーチの結果であれば、5GHzの周波数帯を利用するアクセスポイントも含まれうる。S1202~S1203の処理が実施されている間は、MFP300は、図11(b)の画面1110を表示している。
【0052】
S1204にて、MFP300は、S1203にて保存した無線アクセスポイントの検索結果を、図11(c)の画面1120ように操作表示部305に情報を表示する。ここでは、SSIDのみを表示しているが、他の情報を更に表示してもよい。もしくは、ユーザの操作に応じて、対応する無線アクセスポイントの詳細情報を表示するような構成であってもよい。そして、ユーザから無線アクセスポイントの選択を受け付ける。
【0053】
S1205にて、MFP300は、S1204で選択されたアクセスポイントの暗号、認証方式の指定があるか否かを判定する。例えば、図15に示すように、検出された各アクセスポイントは、認証方式や暗号方式が指定されている場合がある。これらの情報に基づいて、本工程における判定を行う。暗号、認証方式の指定がある場合(S1205にてYES)S1206へ進み、指定が無い場合は(S1205にてNO)S1207へ進む。
【0054】
S1206にて、MFP300は、指定された暗号、認証方式に沿ったパスフレーズ入力画面(不図示)を操作表示部305に表示する。そして、ユーザから対応するパスフレーズの入力を受け付け、S1207へ進む。なお、受け付けたパスフレーズに基づく認証を行った際に、正しいパスフレーズが入力されていない場合には、再度入力させるか、接続できない旨の表示を行ってもよい。
【0055】
S1207にて、MFP300は、無線インフラモードを有効化する。なお、無線インフラモードを有効化する前に、BLEモード以外の他の通信モードで動作している場合、当該他の通信モードを無効化してから、無線インフラモードを有効化する。そして、MFP300は、S1204にて指定されたアクセスポイントとの接続を開始する。なおMFP300は、上記の処理にて、無線インフラモードを有効化する前にWFDモードやソフトAPモードを無効化していた場合は、アクセスポイントと接続した後WFDモードやソフトAPモードを再び有効化してもよい。すなわち、MFP300は、同時動作を開始してもよい。このときMFP300は、無線インフラモードで用いている(アクセスポイントとの接続に用いている)周波数帯や通信チャネルを、WFDモードやソフトAPモードでも使用するように制御する。そして、本処理フローを終了する。
【0056】
(APサーチ処理)
図13は、本実施形態に係るAPサーチ処理のフローチャートである。本処理は、図12のS1202の工程に対応する。
【0057】
S1301にて、MFP300は、APサーチの実行準備を実行する。具体的にはMFP300は、APサーチ実行用のメモリの確保等を行う。
【0058】
S1302にて、MFP300は、無線アクセスポイントを検索するために通信モードの切り替えが必要か否かを判定する。具体的には、本実施形態において、APサーチを実行可能なモード(無線インフラモード、BLEモード、WFDモード、ソフトAPモードのうち少なくとも1つ)が有効である場合は通信モードの切り替えが不要と判定する。一方、無線インフラモード、APサーチを実行可能なモードが有効でない(全ての通信モードが無効か、有線通信モードのみ有効である)場合は通信モードの切り替えが必要と判定する。通信モードの切り替えが必要であると判定した場合(S1302にてNO)S1304へ進み、切り替えが不要であると判定した場合(S1302にてYES)S1303へ進む。
【0059】
S1303にて、MFP300は、通信モードの切り替え(通信モードの有効化ないし無効化)を伴わずに、APサーチを実行可能なモードのうちいずれかでAPサーチを実施する。APサーチの完了後、本処理フローを終了する。
【0060】
S1304にて、MFP300は、APサーチを実行するためのモードとして、BLEモードの有効化を行う。なお、このとき、有線通信モード等の他のモードが有効化されている場合は、当該他のモードを維持したまま、BLEモードを有効化する。そして、S1305へ進む。
【0061】
S1305にて、MFP300は、APサーチを実行する。APサーチの完了後、S1306へ進む。
【0062】
S1306にて、MFP300は、S1304にて有効化したBLEモードの無効化を行う。そして、本処理フローを終了する。
【0063】
このように、本実施形態では、無線インフラモード以外のモードでMFP300が動作している場合は、APサーチを実行するためのモードとして、無線インフラモードではなく、WFDモードとソフトAPモード、BLEモードのうちいずれかとして動作する。これは、モードを有効化するための処理を実行してからAPサーチを実行可能になるまでにかかる時間が、無線インフラモードよりWFDモードやソフトAPモード、BLEモードの方が短いためである。具体的には、当該時間の長さは、無線インフラモード>WFDモード=ソフトAPモード>BLEモードの順となる。
【0064】
また、BLEモードが有効である場合は無線インフラモードへの一時的な切り替えを実施しない。そのため、上記の切り替え制御を行うことで、APサーチが完了するまでの時間の短縮化を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態では、APサーチが実行される前のモードが有線通信モードであっても、APサーチの前に有線通信モードを無効化しない。これは、本実施形態でAPサーチを実行するためのモードとして有効化するモードが、有線通信モードと並行して有効化可能なBLEモードであるためである。これにより、APサーチが完了した後、APサーチが実行される前のモードを一時的に有効化する処理が必要なくなるため、APサーチが完了した後に必要な処理の短縮化を図ることができる。
【0066】
なお、上述では、APサーチを実行するためのモードとしてBLEモードを有効化する形態を説明したが、この形態に限定されない。APサーチを実行するためのモードとし、BLEモードではなく、例えば、WFDモードやソフトAPモードを有効化しても良い。これらのモードも、無線インフラモードと比較して、APサーチが完了するまでの時間を短くすることができるためである。また、BLEモードを用いたAPサーチでは、MFP300は、2.4GHzの周波数帯しか用いることができないのに対し、WFDモードやソフトAPモードは、2.4GHzと5GHzの両方の周波数帯を用いることができる。
【0067】
以上、本実施形態では、無線インフラモード以外の通信モードを利用可能な無線チップセットを備えた通信装置において、無線アクセスポイントを検索するために一時的にP2Pモード(上記の例の場合は、BLEモード)を有効化する。これにより、無線アクセスポイントの検出に伴う通信モードの切り替え時間を短縮し、ユーザの利便性を損なわずに無線アクセスポイントの検出が可能となる。
【0068】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態として、APサーチに用いる周波数帯に基づいて、切り替え先の通信モードを異ならせる実施形態について説明する。本実施形態のMFP300は、2.4GHzの周波数帯のみ使用可能な装置で合ってもよい。なお、上記にて説明した構成と重複する構成については、説明を省略し、差異のみを説明する。
【0069】
第1の実施形態では、APサーチを実行するためのモードとしてBLEモードに移行させる形態を説明した。しかしながら、BLE通信は、2.4GHzの周波数帯が利用されるため、BLEモードを用いたAPサーチでは、MFP300は、2.4GHzの周波数帯しか用いることができない。本実施形態では5GHzの周波数帯を用いてAPサーチを行うことが可能な形態について説明する。
【0070】
(処理シーケンス)
本実施形態に係るAPサーチ処理について、図14を用いて説明する。本フローチャートが示す処理は、実際には例えば、ROM603等のメモリに格納されたプログラムをCPU602がRAM604に読み出して実行することにより実現される。なお、APサーチ処理以外の処理および構成については、第1の実施形態と同様である。
【0071】
S1401にて、MFP300は、APサーチの実行準備を実行する。本処理は、S1301の処理と同様である。
【0072】
S1402にて、MFP300は、無線アクセスポイントを検索するために通信モードの切り替えが必要か否かを判定する。本処理は、S1302の処理と同様である。通信モードの切り替えが必要であると判定した場合(S1402にてNO)S1404へ進み、切り替えが不要であると判定した場合(S1402にてYES)S1403へ進む。
【0073】
S1403にて、MFP300は、通信モードの切り替えを伴わずにAPサーチを実施する。APサーチの完了後、本処理フローを終了する。
【0074】
S1404にて、MFP300は、2.4GHz以外の(ここでは5GHzの)周波数帯をAPサーチに利用するか否かを判定する。具体的には、MFP300は、自身が、2.4GHzしか利用できない装置である場合、NOと判定し、自身が、2.4GHzと5GHzの両方を利用可能な装置である場合、YESと判定する。また例えば、MFP300は、携帯端末200等の外部装置からの指示を受け付けてAPサーチを実行する場合は、当該指示が、5GHzの周波数帯を用いたAPサーチの実行指示を含むか否かを判定する。そして、MFP300は、当該指示が5GHzの周波数帯を用いたAPサーチの実行指示を含む場合、YESと判定し、当該指示が5GHzの周波数帯を用いたAPサーチの実行指示を含まない場合、NOと判定する。2.4GHz以外の周波数帯をAPサーチに利用しない場合は(S1404にてNO)S1405へ進み、2.4GHz以外の周波数帯をAPサーチに利用する場合は(S1404にてYES)S1408へ進む。
【0075】
S1405にて、MFP300は、APサーチを実行するためのモードとして、BLEモードの有効化を行う。本処理は、S1304の処理と同様である。そして、S1406へ進む。
【0076】
S1406にて、MFP300は、APサーチを実行する。このとき。MFP300は、BLEモードが有効化されている状態でAPサーチを実行するため、BLE通信に用いる周波数帯である2.4GHzの周波数帯を用いて、APサーチを実行する。APサーチの完了後、S1407へ進む。
【0077】
S1407にて、MFP300は、S1405にて有効化したBLEモードの無効化を行う。そして、本処理フローを終了する。
【0078】
S1408にて、MFP300は、無線インフラモードと排他の関係となる(無線インフラモードと並行して動作できない)通信モードで動作している場合は、当該モードの無効化を行う。なお、当該モードで動作していない場合は、本処理は省略される。無線インフラモードと排他となる通信モードは、例えば有線通信モードである。そして、S1409へ進む。
【0079】
S1409にて、MFP300は、無線インフラモードの有効化を行う。そして、S1410へ進む。
【0080】
S1410にて、MFP300は、APサーチを実行する。このとき、MFP300は、無線インフラモードが有効化されている状態でAPサーチを実行するため、インフラ通信に用いることが可能な周波数帯である5GHzの周波数帯を用いて、APサーチを実行する。なおこのとき、5GHzの周波数帯だけでなく、2.4GHzの周波数帯を用いたAPサーチも実行しても良い。APサーチの完了後、S1411へ進む。
【0081】
S1411にて、MFP300は、S1409にて有効化した無線インフラモードの無効化を行う。そして、S1412へ進む。
【0082】
S1412にて、MFPは、S1408にて無効化した、無線インフラモードと排他となる通信モードの有効化を行う。S1408にていずれの通信モードも無効化されていない場合、本処理は省略される。そして、本処理フローを終了する。
【0083】
上記の構成において、S1405~S1407のBLEモードへ一時的に切り替える処理に要する時間は、S1408~S1410の無線インフラモードへ一時的に切り替える処理に要する時間と比較して短い。そのため、2.4GHzの周波数帯を用いてAPサーチを行う場合は、上記のBLEモードへの切り替え制御を行うことで、時間の短縮化を図ることができる。
【0084】
また、5GHzの周波数帯を用いてAPサーチを行うべき場合は、無線インフラモードへ移行することで、5GHzの周波数帯を用いてAPサーチを実行することができる。
【0085】
上記の例では、5GHzの周波数帯を用いたAPサーチを実行するためのモードとして無線インフラモードを有効化する形態を説明したが、この形態に限定されない。5GHzの周波数帯を用いたAPサーチを実行するためのモードとし、無線インフラモードではなく、例えば、WFDモードやソフトAPモードを有効化してもよい。
【0086】
<その他の実施形態>
上述の各実施形態では、使用する通信インターフェースの例として、無線LANやBluetooth(登録商標)の規格を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は他の無線通信規格を使用することもできる。例えば、無線LAN通信の規格の追加・変更や、新規の無線通信規格が使用可能となった場合にも本発明は適用可能である。また、使用する周波数帯の例として、2.4GHz帯域と5GHz帯域の例を挙げて説明しているが、上記の周波数帯以外にも、前述の通り無線通信規格の追加・変更によって新規の周波数帯域が使用可能となった場合にも本発明は適用可能である。
【0087】
上述の実施形態では、画面1100において無線LANセットアップ1101が選択された場合にAPサーチを実行する形態を説明したが、APサーチが実行されるタイミングはこの形態に限定されない。例えば、MFP300は、携帯端末200と接続することで、無線インフラモードに利用するアクセスポイントの情報を受信する機能(セットアップ機能)を有している。セットアップ機能を実行するための指示を受け付けた場合に、APサーチを実行してもよい。なお、セットアップ機能における携帯端末200との通信方法は、BLEモードを用いたものと、ソフトAPモードを用いたものがある。そのため、セットアップ機能を実行するための指示を受け付けた場合、MFP300は、BLEモードとソフトAPモードのうち一方又は両方を有効化する。本実施形態においては、どちらの通信モードも、APサーチを実行可能な通信モードである。そのため、MFP300は、セットアップ機能を実行するための指示を受け付けて、BLEモードとソフトAPモードのうち一方又は両方を有効化した後、BLEモードとソフトAPモードのうち一方によってAPサーチを実行する。すなわち、MFP300は、セットアップ機能におけるAPサーチにおいても、無線インフラモードを有効化する必要はない。このようにして行われたAPサーチによって生成されるAPリストは、携帯端末200に送信される。そして、携帯端末200上で選択されたアクセスポイントに関する情報をMFP300が受信し、当該アクセスポイントを用いて、無線インフラモードでの動作を開始する。
【0088】
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0089】
200…携帯端末、201…WLANユニット、205…BTユニット、300…MFP、400…アクセスポイント、616…無線コンボユニット
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