(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240828BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2023131712
(22)【出願日】2023-08-11
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】593018208
【氏名又は名称】株式会社シンテックホズミ
(74)【代理人】
【識別番号】100093931
【氏名又は名称】長屋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 真介
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-086416(JP,A)
【文献】特開2023-173688(JP,A)
【文献】特開2022-187584(JP,A)
【文献】特開2019-125345(JP,A)
【文献】特開2014-219721(JP,A)
【文献】国際公開第2021/256322(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行して物品を搬送する搬送ロボットであって、
搬送ロボットが走行するエリアの2次元点群データである初期地図データを記憶する初期地図データ記憶部(22)と、
差分地図データを記憶するための差分地図データ記憶部(24)と、
作業用当初地図データを記憶するための作業用当初地図データ記憶部(26)と、
作業用更新地図データを記憶するための作業用更新地図データ記憶部(28)と、
経路データを記憶する経路データ記憶部(30)と、
一部地図データを記憶するための一部地図データ記憶部(32)と、
車輪(14)と車輪を駆動する駆動部(16)とを有する駆動ユニット(13)と、
レーザー光を2次元方向に走査するとともに反射光を受光し、距離と方向のデータからなるライダーデータを出力するライダーユニット(12)と、
ライダーユニットからのライダーデータに基づき2次元点群データからなる一部地図データを作成し、作成した一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶する一部地図データ作成制御部(41)と、
一部地図データ作成制御部により作成された一部地図データと、作業用更新地図データ記憶部に記憶されている作業用更新地図データとから自己位置を推定する自己位置推定部(48)と、
自己位置推定部により推定された自己位置のデータと、経路データ記憶部に記憶された経路データと、作業用更新地図データ記憶部に記憶された作業用更新地図データとにより駆動ユニットの動作を制御する走行制御部(50)と、
地図データ制御部(46)と、を有し、
搬送ロボットの走行開始時には、地図データ制御部は、初期地図データ記憶部に記憶された初期地図データに差分地図データ記憶部に記憶された差分地図データを追加したデータである合成地図データを作業用当初地図データとして作業用当初地図データ記憶部に記憶するとともに、該合成地図データを作業用更新地図データとして作業用更新地図データ記憶部に記憶し、
搬送ロボットの走行中には、一部地図データ作成制御部が、予め定められた時間である第1の時間(T2)ごとに、一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶するとともに、地図データ制御部は、予め定められた時間である第2の時間であって第1の時間よりも長い時間である第2の時間(T1)ごとに、一部地図データ記憶部から一部地図データを読み出し、作業用更新地図データ
記憶部に記憶された作業用更新地図データに該一部地図データを追加することにより、作業用更新地図データを更新し、
搬送ロボットの走行終了時には、地図データ制御部は、作業用更新地図データ記憶部に記憶された作業用更新地図データと作業用当初地図データ記憶部に記憶された作業用当初地図データの差分である差分地図データを作成して、差分地図データ記憶部に記憶し、地図データ制御部は、各走行ごとに差分地図データを差分地図データ記憶部に記憶することを特徴とする搬送ロボット。
【請求項2】
一部地図データ作成制御部は、一部地図データ作成部(42)と、一部地図データ制御部(44)とを有し、
一部地図データ作成部は、ライダーユニットからのライダーデータに基づいて一部地図データを作成し、
一部地図データ制御部は、作成された一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶し、一部地図データ記憶部にすでに第2の時間分の一部地図データが記憶されている場合には、一部地図データ記憶部に記憶されている一部地図データのうち、最も古い一部地図データを削除した上で、作成された一部地図データを記憶することを特徴とする請求項1に記載の搬送ロボット。
【請求項3】
搬送ロボットには、差分地図データ記憶部に記憶されている差分地図データを特定する特定情報を差分地図データごとに表示する表示手段(60)と、表示手段に表示された特定情報において、1又は複数の特定情報を選択するとともに、選択された特定情報により特定される差分地図データの追加または削除を指示する入力手段
(70)が設けられ、
搬送ロボットの走行開始時に、特定情報が表示手段に表示されている状態で、入力手段により、特定情報の選択と選択された特定情報により特定される差分地図データの追加又は削除を指示することにより、地図データ制御部は、作業用更新地図データ記憶部に記憶する作業用更新地図データに対して、選択された特定情報により特定される差分地図データを追加又は削除することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行する搬送ロボットに関するものであり、特に、工場等において利用される無人搬送車(AMR:Autonomous Mobile Robot)等の自走式の搬送ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における自走式の搬送ロボットを備える搬送システムとして、特許文献1に示す搬送システムが存在する。
【0003】
搬送システム1は、制御装置10と搬送ロボット20を有し、制御装置10は、マップデータを記憶するマスタ記憶部16と、搬送指示とマップデータに基づいて、搬送ロボット20による搬送対象物の搬送元から搬送先までの搬送経路を決定する搬送経路決定部14等を有し、搬送ロボット20は、制御装置10との間で通信を行うための通信インターフェースであるスレーブ通信部21と、走行制御部22と、環境センサ26と、環境センサ26が計測した計測結果を取得する環境情報取得部27と、スレーブ記憶部28を有している。
【0004】
そして、制御装置10は、搬送ロボット26から環境センサ26の計測結果を取得すると、搬送経路決定部14が、取得した計測結果をもとにマスタ記憶部16に記憶されているマップデータを更新する。すなわち、マップデータにおける環境パラメタ情報や障害物情報を更新する。
【0005】
具体的には、走行制御部22は、距離センサ24のスキャンデータを取得し、各パーティクルの姿勢位置において、スキャンデータを位置変換し、位置変換後のスキャンデータを蓄積されたマップデータの対応関係から局所的な局所マップデータに変換して生成する。
【0006】
そして、走行制御部22は、最尤度のパーティクルを当該搬送ロボット20の現在の位置姿勢として更新し、局所マップデータもエリア全体のマップデータに更新する。そして、走行制御部22は、スレーブ通信部21を通じて障害物情報を含んだ更新したマップデータを制御装置10に送信する。その際、走行制御部22は、環境センサ26により環境情報取得部27が取得した環境パラメタの値を、現在の位置に紐づけて制御装置10に送信する。この結果、制御装置10では、マスタ記憶部16に障害物情報及び環境パラメタ情報が更新されたマップデータに変更されて記憶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、例えば、工場建屋内の別のエリアにおいて、エリア内のレイアウト(例えば、棚などの装置の配置や製造ラインを構成する装置の配置)が近似する場合に、該エリア内のレイアウトの変更状況が複数のエリアの間で同様の場合には、あるエリア(当該エリア)において更新されたマップデータを他のエリアにおいても利用することが可能であるが、複数のエリアにおいて、レイアウト変更の進捗状況が異なる場合に、あるエリアにおいて更新されたマップデータを更新の進捗が遅れている他のエリア(エリアAとする)に適用すると、該エリアAのレイアウトと更新されたマップデータがマッチせず、更新されたマップデータを利用することができないという問題がある。つまり、当該エリアとレイアウトが近似する他のエリアを走行する際に、レイアウト変更の進捗によっては、当該エリアのマップデータを利用できない。エリアAのレイアウトにマッチしたマップデータを使用できれば、自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0009】
そこで、本発明は、当該エリアとしてのあるエリアとレイアウトが近似する他のエリアを走行する際に、レイアウト変更の進捗が異なっても、他のエリアを走行する際に、当該エリアの地図データを利用することにより、他のエリアのレイアウトにマッチした地図データを使用することができる搬送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、自律走行して物品を搬送する搬送ロボットであって、搬送ロボットが走行するエリアの2次元点群データである初期地図データを記憶する初期地図データ記憶部(22)と、差分地図データを記憶するための差分地図データ記憶部(24)と、作業用当初地図データを記憶するための作業用当初地図データ記憶部(26)と、作業用更新地図データを記憶するための作業用更新地図データ記憶部(28)と、経路データを記憶する経路データ記憶部(30)と、一部地図データを記憶するための一部地図データ記憶部(32)と、車輪(14)と車輪を駆動する駆動部(16)とを有する駆動ユニット(13)と、レーザー光を2次元方向に走査するとともに反射光を受光し、距離と方向のデータからなるライダーデータを出力するライダーユニット(12)と、ライダーユニットからのライダーデータに基づき2次元点群データからなる一部地図データを作成し、作成した一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶する一部地図データ作成制御部(41)と、一部地図データ作成制御部により作成された一部地図データと、作業用更新地図データ記憶部に記憶されている作業用更新地図データとから自己位置を推定する自己位置推定部(48)と、自己位置推定部により推定された自己位置のデータと、経路データ記憶部に記憶された経路データと、作業用更新地図データ記憶部に記憶された作業用更新地図データとにより駆動ユニットの動作を制御する走行制御部(50)と、地図データ制御部(46)と、を有し、搬送ロボットの走行開始時には、地図データ制御部は、初期地図データ記憶部に記憶された初期地図データに差分地図データ記憶部に記憶された差分地図データを追加したデータである合成地図データを作業用当初地図データとして作業用当初地図データ記憶部に記憶するとともに、該合成地図データを作業用更新地図データとして作業用更新地図データ記憶部に記憶し、搬送ロボットの走行中には、一部地図データ作成制御部が、予め定められた時間である第1の時間(T2)ごとに、一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶するとともに、地図データ制御部は、予め定められた時間である第2の時間であって第1の時間よりも長い時間である第2の時間(T1)ごとに、一部地図データ記憶部から一部地図データを読み出し、作業用更新地図データ記憶部に記憶された作業用更新地図データに該一部地図データを追加することにより、作業用更新地図データを更新し、搬送ロボットの走行終了時には、地図データ制御部は、作業用更新地図データ記憶部に記憶された作業用更新地図データと作業用当初地図データ記憶部に記憶された作業用当初地図データの差分である差分地図データを作成して、差分地図データ記憶部に記憶し、地図データ制御部は、各走行ごとに差分地図データを差分地図データ記憶部に記憶することを特徴とする。
【0011】
第1の構成の搬送ロボットにおいては、あるエリア(当該エリア)を走行した際に、各走行回ごとに差分地図データを記憶することから、他のエリアで当該エリアと近似するレイアウトのエリアを走行する際に、レイアウト変更の進捗が異なる場合でも、当該エリアの差分地図データを利用して作業用更新地図データに加えることにより、他のエリアのレイアウトにマッチした地図データを使用することができ、他のエリアを走行する際に自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0012】
また、各走行回ごとに差分地図データを記憶するので、当該エリアのレイアウトを以前のレイアウト(つまり、過去の走行回の際のレイアウト)に戻した場合に、記憶されている差分地図データを作業用更新地図データに加算すべき差分地図データから削除することにより、戻したレイアウトにマッチしたマップデータを使用することができ、レイアウトを戻したエリアを走行する際に、自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0013】
なお、上記第1の構成において、「ライダーユニットからのライダーデータに基づき2次元点群データからなる一部地図データを作成し、作成した一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶する一部地図データ作成制御部(41)」を「ライダーユニットからのライダーデータと作業用更新地図データ記憶部に記憶されている作業用更新地図データに基づき2次元点群データからなる一部地図データを作成し、作成した一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶する一部地図データ作成制御部(41)」としてもよい。
【0014】
また、第2には、上記第1の構成において、一部地図データ作成制御部は、一部地図データ作成部(42)と、一部地図データ制御部(44)とを有し、一部地図データ作成部は、ライダーユニットからのライダーデータに基づいて一部地図データを作成し、一部地図データ制御部は、作成された一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶し、一部地図データ記憶部にすでに第2の時間分の一部地図データが記憶されている場合には、一部地図データ記憶部に記憶されている一部地図データのうち、最も古い一部地図データを削除した上で、作成された一部地図データを記憶することを特徴とする。
【0015】
第2の構成の搬送ロボットによれば、一部地図データ記憶部にすでに第2の時間分の一部地図データが記憶されている場合には、一部地図データ記憶部に記憶されている一部地図データのうち、最も古い一部地図データを削除した上で、作成された一部地図データを記憶するので、一部地図データ記憶部に記憶された第2の時間分の一部地図データを常に最新のデータとしておくことができる。
【0016】
なお、上記第2の構成において、「一部地図データ作成部は、ライダーユニットからのライダーデータに基づいて一部地図データを作成し、」を「一部地図データ作成部は、ライダーユニットからのライダーデータと作業用更新地図データ記憶部に記憶されている作業用更新地図データに基づいて一部地図データを作成し、」としてもよい。
【0017】
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、搬送ロボットには、差分地図データ記憶部に記憶されている差分地図データを特定する特定情報を差分地図データごとに表示する表示手段(60)と、表示手段に表示された特定情報において、1又は複数の特定情報を選択するとともに、選択された特定情報により特定される差分地図データの追加または削除を指示する入力手段(70)が設けられ、搬送ロボットの走行開始時に、特定情報が表示手段に表示されている状態で、入力手段により、特定情報の選択と選択された特定情報により特定される差分地図データの追加又は削除を指示することにより、地図データ制御部は、作業用更新地図データ記憶部に記憶する作業用更新地図データに対して、選択された特定情報により特定される差分地図データを追加又は削除することを特徴とする。
【0018】
第3の構成の搬送ロボットによれば、差分地図データを特定するための情報である特定情報が表示手段に表示されている状態で、差分地図データを選択して追加又は削除の指示を行うことにより、搬送ロボットの走行開始時に、作業用更新地図データに対して、選択した差分地図データを追加したり、作業用更新地図データから、選択した差分地図データを削除したりすることができる。
【0019】
なお、上記第3の構成において、搬送ロボットが、通信端末を有し、表示手段と入力手段が該通信端末に設けられていて、表示手段及び入力手段と地図データ制御部とが、無線通信手段により接続されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に基づく搬送ロボットによれば、あるエリア(当該エリア)を走行した際に、各走行回ごとに差分地図データを記憶することから、他のエリアで当該エリアと近似するレイアウトのエリアを走行する際に、レイアウト変更の進捗が異なる場合でも、当該エリアの差分地図データを利用して作業用更新地図データに加えることにより、他のエリアのレイアウトにマッチした地図データを使用することができ、他のエリアを走行する際に自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】搬送ロボットの動作を説明するフローチャートである。
【
図3】搬送ロボットの動作を説明するフローチャートである。
【
図4】搬送ロボットの動作を説明するための説明図である。
【
図5】搬送ロボットの動作を説明するための説明図である。
【
図6】搬送ロボットの動作を説明するための説明図である。
【
図7】搬送ロボットの動作を説明するための説明図である。
【
図8】搬送ロボットの動作を説明するための説明図である。
【
図9】搬送ロボットの動作を説明するための説明図である。
【
図10】搬送ロボットに設けられた表示装置とその表示内容を説明するための説明図である。
【
図11】搬送ロボットの動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明においては、当該エリアとしてのあるエリアとレイアウトが近似する他のエリアを走行する際に、レイアウト変更の進捗が異なっても、他のエリアを走行する際に、当該エリアの地図データを利用することにより、他のエリアのレイアウトにマッチした地図データを使用することができる搬送ロボットを提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0023】
本発明に基づく搬送ロボット(「物品搬送ロボット」としてもよい)10は、
図1に示すように構成され、ライダーユニット12と、車輪14と、駆動部16と、記憶部20と、制御部40とを有している。
【0024】
ここで、ライダーユニット12は、ライダー(Light Detection and Ranging)技術を用いた自律走行用のセンサユニットであり、ライダーユニット12は、赤外線のレーザー光を水平方向に照射するエミッター(図示せず)と、照射されたレーザー光の反射光を受光するレシーバー(図示せず)と、エミッターとレシーバーを水平方向に回転させるモーター(図示せず)とを有し、エミッターからレーザー光が照射され、レーザー光が搬送ロボット10の周辺の物体に当たると、その反射光がレシーバーで受信され、照射から受光までの時間を計測することにより、ライダーユニット12から反射点までの距離が測定される。エミッターとレシーバーは、モータにより水平方向に回転されることにより、レーザー光が水平方向に走査され、搬送ロボット10の周辺の物体の方向と距離が測定される。測定された方向と距離のデータは、ライダーデータとして出力される。
【0025】
なお、エミッターとレシーバーは、搬送ロボット10の車輪14の下端から所定の高さの位置に設けられ、走行面から所定の高さの位置の物体との距離が計測される。
【0026】
また、車輪14は、左右一対の車輪を有し、駆動部16は、車輪ごとに設けられたモータを有している。つまり、右側の車輪を駆動するモータ(右側モータ)と左側の車輪を駆動するモータ(左側モータ)が設けられ、搬送ロボット10が走行しながらカーブするときには、左右の車輪の速度差を利用する。つまり、車輪14における一対の車輪は、左右二軸速度差制御により走行が制御される。なお、車輪14と駆動部16により、駆動ユニット13が構成される。
【0027】
次に、記憶部20は、各種データを記憶する記憶するものであり、RAMやハードディスクドライブ等の記憶装置により構成される。記憶部20には、
図1に示すように、初期地図データ記憶部22と、差分地図データ記憶部24と、作業用当初地図データ記憶部26と、経路データ記憶部30と、一部地図データ記憶部32が設けられている。
【0028】
ここで、初期地図データ記憶部22には、初期地図データが記憶されている。この初期地図データは、搬送ロボット10が走行するエリア(「空間」としてもよい。他においても同じ)について、予め作成・記憶された2次元地図データであり、具体的には、2次元点群データにより形成される。例えば、ライダーユニットを備えた搬送ロボットを該エリア内を走行させることにより、ライダーユニット12により得られた方向と距離のデータに基づき、2次元点群データからなる一部地図データを作成し、走行しながら該一部地図を蓄積することにより初期地図データが作成される。
【0029】
差分地図データ記憶部24には、差分地図データが記憶される。この差分地図データは、作業用更新地図データと作業用当初地図データの差分データであり、搬送ロボット10の1回の走行ごとに作成される。
【0030】
作業用当初地図データ記憶部26には、作業用当初地図データが記憶される。作業用当初地図データは、ある走行回の走行における最初の地図データあり、初期地図データと差分地図データを合成した地図データである。この作業用当初地図データは、ある走行の終了時に作業用更新地図データとの差分データを算出するために記憶される。
【0031】
作業用更新地図データ記憶部28には、作業用更新地図データが記憶される。作業用更新地図データは、搬送ロボットの走行に際して、作業用当初地図データを更新することにより作成される地図データであり、一部地図データ(後述)が作成されるごとに、作業用更新地図データが更新される。
【0032】
経路データ記憶部30には、搬送ロボットの経路データが記憶される。つまり、地図データに対応した2次元座標エリアにおいて、予め決められた走行経路のデータが記憶され、例えば、ユーザーが手動で経路を入力することにより、経路データが記憶される。例えば、経路データとしては、例えば、搬送ロボット10が通過する位置(通過位置)の2次元座標と、通過位置の順序の情報等により構成され、経路データの例としては、
図5(a)に示すように、位置aを始点として、位置b、位置c、位置d、位置e、位置f、位置g、位置h、位置aの順の経路を示すデータとなる。
【0033】
一部地図データ記憶部32には、一部地図データ作成部42により作成された一部地図データが記憶される。この一部地図データ記憶部32には、後述するように、時間T1(第2の時間)分の一部地図データが記憶される。
【0034】
次に、制御部40は、搬送ロボット10の動作を制御するものであり、動作を行うためのプログラムと該プログラムを実行するためのCPU等により構成される。制御部40は、一部地図データ作成部42と、一部地図データ制御部44と、地図データ制御部46と、自己位置推定部48と、走行制御部50とを有している。
【0035】
ここで、一部地図データ作成部42は、主として、ライダーユニット12から得られたライダーデータ(方向と距離のデータ)に基づき、2次元点群データからなる一部地図データを作成する(S22)。具体的には、一部地図データ作成部42は、方向と距離のデータ(ライダーデータ)から作成された地図データを作業用更新地図データ28に記憶された作業用更新地図データと比較することにより、一部地図データは、初期地図データと同じ絶対座標の地図データとなる。つまり、一部地図データ作成部42は、ライダーユニット12から得られたライダーデータと、作業用更新地図データ記憶部28に記憶された作業用更新地図データとに基づき、一部地図データを作成するといえる。なお、一部地図データの作成は、時間T2(第1の時間)ごとに行われる(S31)。
【0036】
なお、一部地図データの作成に際して、作業用更新地図データのみならず、自己位置推定部48からの自己位置の情報を考慮することにより一部地図データを作成してもよい。
【0037】
また、一部地図データ制御部44は、一部地図データ作成部42により一部地図データが作成された場合には、一部地図データ記憶部32に記憶し(S25)、その際、時間T1分の一部地図データがすでに記憶されている場合には、最古の一部地図データを削除する(S23、S24)。つまり、時間T1分の一部地図データが一部地図データ記憶部32に記憶されていない場合には、一部地図データを一部地図データ記憶部32に記憶し、一方、時間T1分の一部地図データがすでに記憶されている場合には、最古の一部地図データを一部地図データ記憶部32から削除した上で、一部地図データを一部地図データ記憶部32に記憶する。
【0038】
なお、一部地図データ作成部42と一部地図データ制御部44とで、一部地図データ作成制御部41が構成され、一部地図データ作成制御部41は、ライダーユニットからのライダーデータに基づき2次元点群データからなる一部地図データを作成し、作成した一部地図データを一部地図データ記憶部に記憶する。
【0039】
地図データ制御部46は、一部地図データ以外の地図データ全般を制御するものであり、地図データ制御部46は、走行開始時に、初期地図データに差分地図データを追加して、作業用当初地図データや作業用更新地図データを作成したり(S11、S12)、走行中に、作業用更新地図データを一部地図データにより更新したり(S15)、走行終了時に、作業用更新地図データと作業用当初地図データの差分を算出して差分地図データを作成し、差分地図データ記憶部24に記憶する(S17)。
【0040】
自己位置推定部48は、一部地図データ作成部42により作成された一部地図データと作業用更新地図データをマッチングすることにより、搬送ロボット10の自己位置を推定し、自己位置のデータを出力する(S28、S29)。
【0041】
走行制御部50は、自己位置推定部48により推定された自己位置のデータと、経路データ記憶部30に記憶された経路データと、作業用更新地図データ記憶部28に記憶された作業用更新地図データに従い、駆動部16を制御して走行制御を行なう(S30)。また、走行制御部50は、後述するように、ライダーユニット12からのライダーデータによっても走行制御を行なう(S30)。
【0042】
また、搬送ロボット10には、走行開始を指示するための操作ボタンである開始ボタン(図示せず)が設けられている。
【0043】
なお、上記の説明で、時間T1は時間T2よりも長い時間であり(T1>T2)、例えば、T1は、T2の100倍~1000倍の大きさとなっている。時間T1、T2は、いずれも予め定められた時間である。
【0044】
なお、搬送ロボット10には、物品を積載するための荷台(図示せず)が設けられている。
【0045】
搬送ロボット10の動作について、
図2、
図3等を使用して説明する。なお、
図2に示すフローチャートは、主として、地図データ制御部46の動作を説明するものであり、
図3に示すフローチャートは、主として、制御部40における地図データ制御部46以外の構成(つまり、一部地図データ作成部42、一部地図データ制御部44、自己位置推定部48、走行制御部50)の動作と、車輪14及び駆動部16の動作を説明するものである。
【0046】
まず、
図2のフローチャートに従い説明すると、搬送ロボット10の走行開始を指示する操作ボタンをオン操作することにより、地図データ制御部46は、初期地図データ記憶部22に記憶されている初期地図データと差分地図データ記憶部24に記憶されている差分地図データを読み出し、初期地図データと差分地図データを合成して合成地図データを作成する(S11)。つまり、初期地図データに差分地図データを追加して、合成地図データを作成する。なお、差分地図データ記憶部24に差分地図データが記憶されていない場合には、初期地図データがそのまま合成地図データとされる。
【0047】
そして、地図データ制御部46は、合成地図データを作業用当初地図データ記憶部26と作業用更新地図データ記憶部28に記憶する。つまり、地図データ制御部46は、合成地図データを作業用当初地図データ記憶部26に作業用当初地図データとして記憶するとともに、合成地図データを作業用更新地図データ記憶部28に作業用更新地図データとして記憶する。
【0048】
次に、地図データ制御部46は、時間T1が経過したか否かを判定し(S13)、時間T1を経過した場合には、地図データ制御部46は、一部地図データを一部地図データ記憶部32から読み出して(S14)、この読み出した一部地図データを作業用更新地図データに追加して、作業用更新地図データを更新する(S15)。一部地図データについては後述する。
【0049】
ステップS13~S15は、走行を終了するまで繰り返して行う。つまり、時間T1ごとに一部地図データを読み出して(S14)、作業用更新地図データを更新する(S15)。このように、作業用更新地図データの更新(S15)の周期を一部地図データの作成(S22)の周期よりも長くしているが、これは、作業用更新地図データの更新のための時間的余裕を確保するためであり、一部地図データ作成の周期を短くして迅速に一部地図データを入手するためである。
【0050】
そして、搬送ロボット10が走行経路の終点まで到達して走行を終了する場合には(S16)、地図データ制御部46は、作業用更新地図データと作業用当初地図データの差分を算出して差分地図データを作成し、この差分地図データを差分地図データ記憶部24に記憶する。この差分地図データは、作成した差分地図データごとに差分地図データ記憶部24に記憶する(S17)。つまり、各走行回ごとに差分地図データを記憶していく(
図6参照)。
【0051】
なお、後述するように、搬送ロボット10の走行開始時に作業用更新地図データに対して、差分地図データを追加又は削除するが、その際に差分地図データを特定できるようにするために、ステップS17で差分地図データを差分地図データ記憶部24に記憶する際に、タッチパネル70(後述)により差分地図データを特定するための情報(例えば、在庫置場の種類:第1在庫置場、名称:差分地図データ(1回目))を登録しておくことが好ましい。つまり、走行エリアの種類の情報と、走行回の情報を登録しておく。登録する情報は「差分地図データを特定するための特定情報」となり、走行開始時にこの特定情報が表示される。
【0052】
また、
図3のフローチャートに従い説明すると、一部地図データ作成部42は、ライダーユニット12からライダーデータを受信すると、該ライダーデータと作業用更新地図データ記憶部28に記憶された作業用更新地図データとに基づき、2次元点群データからなる一部地図データを作成する(S22)。
【0053】
そして、一部地図データ制御部44は、一部地図データ記憶部32に時間T1分の一部地図データが記憶されているか否かを判定し(S23)、時間T1分の一部地図データが記憶されている場合には、一部地図データ記憶部32に記憶された一部地図データのうち最古の一部地図データ(最先に記憶された一部地図データ)を削除して(S24)、新たに作成された一部地図データを一部地図データ記憶部32に記憶する(S25)。一方、時間T1分の一部地図データが記憶されていない場合には、新たに作成された一部地図データを一部地図データ記憶部32に記憶する(S25)。以上のようにして、一部地図データ記憶部32に記憶された時間T1分の一部地図データを常に最新のデータに更新する。なお、一部地図データの作成(S22)と時間T1分の一部地図データの更新(S23~S25)は、走行を終了するまで、時間T2ごとに繰り返し行う。
【0054】
また、ステップS22で一部地図データが作成されたら、自己位置推定部48は、作業用更新地図データ記憶部28から作業用更新地図データを読み出し(S27)、作成された一部地図データと作業用更新地図データをマッチングすることにより、搬送ロボット10の自己位置を推定する(S28)。
【0055】
そして、走行制御部50は、自己位置推定部48により推定された自己位置と、経路データ記憶部30に記憶された経路データとを比較して駆動部16の動作を制御して搬送ロボット10を走行させる(S29)が、当然、作業用更新地図データに従い、走行経路上や走行経路の近傍に障害物がある場合には、走行を停止する(すなわち、駆動部16の動作を停止させる)。つまり、走行制御部50は、推定された自己位置と経路データと作業用更新地図データに従い、駆動部16を制御して走行制御を行なう。
【0056】
なお、走行制御部50は、上記のような経路データに従った走行制御のみならず、ライダーユニット12からのライダーデータによっても走行制御を行なう(S30)。例えば、搬送ロボット10から所定距離内に障害物を示す点が検出された場合には、減速や停止を行なう。具体的には、レーザー光の走査方向に連続した複数の点(障害物を示す点)が検出された場合には、減速や停止を行い、該所定距離における距離に応じて、減速又は停止を行なう。
【0057】
上記で説明した搬送ロボット10の具体的な動作例を説明する。
図4は、搬送ロボット10が走行するエリアとして、工場建屋内における在庫置場(「在庫置き場」としてもよい)Gを例にしたものであり、在庫置場Gには、計5つの棚を連ねて配置した棚列100-1と、互いに背中合わせにした一対の棚を連ねることにより計8つの棚からなる棚列100-2と、棚列100-2と同様の構成の棚列100-3と、棚列100-4が設けられ、
図4(a)における棚列100-4は、互いに背中合わせにした一対の棚を2つ連ねた計4つの棚からなり、
図4(b)における棚列100-4は、該一対の棚を3つ連ねた計6つの棚からなり、
図4(c)における棚列100-4は、該一対の棚を4つ連ねた計8つの棚からなる。なお、棚列100-1~100-4を構成する棚には、扉は設けられておらず、棚の正面側が開放された構成であるとする。
【0058】
そして、当初における在庫置場Gは、
図4(a)の状態となっていて、初期地図データは、
図4(a)の状態に対応して、
図5(a)に示す2次元点群データとなっていたが、1回目の走行前には、棚100A、100Bが増設されていて
図4(b)の状態になっていたとする。
【0059】
なお、
図5は、在庫置場Gの2次元点群データを示しており、
図5における太線は点群(点の集まり)を示しており、棚列については、棚の両側面と背面(つまり、棚の両側面と背面におけるレーザーの高さ位置の部分)を示している。
【0060】
また、経路データは、位置aからスタートして、位置a→位置b→位置c→位置d→位置e→位置f→位置g→位置h→位置aというように位置aに戻るものとする。
【0061】
その状態で、搬送ロボット10を走行を開始する(これを1回目の走行とする)が、この段階では、差分地図データ記憶部24には、差分地図データは記憶されていないので、ステップS12においては、作業用当初地図データと作業用更新地図データとしては、
図5(a)に示す初期地図データが記憶される。なお、経路データには、経路上の停止位置と停止時間の情報が含まれていて、搬送ロボットが停止位置に到達すると、走行を停止し、該停止時間を経過すると、走行を再開するように規定されている。
【0062】
そして、搬送ロボット10の走行中では、時間T2ごとに一部地図データが作成され(S22)、一部地図データ記憶部32に記憶されていくので、(S23~S25)、一部地図データ記憶部32に記憶された時間T1分の一部地図データにより作業用更新地図データを更新していく(S14、S15)。なお、搬送ロボット10の走行中では、停止位置に到達すると、走行が停止するので、停止中に荷台から物品(具体的には、在庫品)を降ろして棚に配置したり、棚から物品を取り出して荷台に載せる。
【0063】
1回目の走行終了時には、作業用更新地図データにおいては、
図5(b)に示すように、棚100A、100Bに対応する点群データが追加されている。
【0064】
すると、ステップS17において算出される差分データは、作業用更新地図データ(
図5(b)参照)と作業用当初地図データ(
図5(a))の差分となるので、
図7(a)に示す2次元点群データとなり、この差分データが差分地図データ記憶部24に記憶される(
図6参照)。つまり、
図6に示すように、1回目の走行が終了した時点では、初期地図データ記憶部22に記憶されている初期地図データには変更はなく(つまり、
図5(a)に示す点群データが記憶されている)、差分地図データ記憶部24に差分地図データ(
図7(a)に示す点群データ)が新たに記憶される。
【0065】
なお、上記1回目の走行の際に、走行経路が上記ではなく、
図5(b)に示すように、位置aから位置hまでは同じであるが、位置hから位置aではなく、位置iから位置aであるとした場合には、初期地図データでは、そのような経路上を走行することは可能であるが、位置iに到達した時点で棚100A、100Bに対応する点群データが追加されて作業用更新地図データが
図5(b)に示す構成となっているので、走行制御部50は、経路上に障害物があると判断して走行を停止する。
【0066】
次に、2回目の走行前に、棚200A、200Bが増設されていて
図4(c)の状態になっていたとする。また、経路データとしては、
図5(a)に示す経路と同様で、位置a→位置b→位置c→位置d→位置e→位置f→位置g→位置h→位置aであるとする。
【0067】
その状態で、搬送ロボット10を走行を開始する(これを2回目の走行とする)が、走行開始時には、差分地図データ記憶部24には、差分地図データが記憶されているので、ステップS12においては、作業用当初地図データ記憶部26と作業用更新地図データ記憶部28には、初期地図データと差分地図データとを合成した地図データ(
図5(b)に示す点群データ)を、それぞれ、作業用当初地図データ、作業用更新地図データとして記憶する。
【0068】
そして、搬送ロボット10の走行中では、逐次作成されていく一部地図データ(S22~S25)により作業用更新地図データを更新していく(S14、S15)ことにより、2回目の走行終了時における作業用更新地図データにおいては、
図5(c)に示すように、棚200A、200Bに対応する点群データが追加される。
【0069】
すると、ステップS17において算出される差分データは、作業用更新地図データ(
図5(c)参照)と作業用当初地図データ(
図5(b))の差分となるので、
図7(b)に示す2次元点群データとなり、この差分データが差分地図データ記憶部24に記憶される。つまり、差分地図データ記憶部24にすでに記憶されている差分地図データに追加して差分地図データが記憶される(
図6参照)。つまり、
図6に示すように、2回目の走行が終了した時点では、初期地図データ記憶部22に記憶されている初期地図データには変更はなく(つまり、
図5(a)に示す点群データが記憶されている)、差分地図データ記憶部24には、1回目の走行時の差分地図データ(
図7(a)に示す点群データ)に加えて、2回目の走行時の差分地図データ(
図7(b)に示す点群データ)が新たに記憶される。なお、各走行回で得られた差分地図データは、それぞれ別個に記憶されるので、1回目の走行時の差分地図データと2回目の走行時の差分地図データは別個に記憶される。
【0070】
次に、3回目以降の走行についても上記と同様に行ない、例えば、3回目の走行開始時においては、地図データ制御部46が初期地図データと差分地図データとを合成する際には(S11)、初期地図データと1回目走行時の差分地図データと2回目走行時の差分地図データとを合成して、作業用当初地図データと作業用更新地図データとする。つまり、3回目走行時には、2つの差分地図データが記憶されているので、初期地図データと2つの差分地図データを合成する。
【0071】
また、3回目の走行終了時には、上記と同様に、作業用更新地図データと作業用当初地図データの差分を算出して、差分地図データ記憶部24に、3回目の走行時の差分地図データが記憶される。つまり、差分地図データ記憶部24には、1回目の走行時の差分地図データと2回目の走行時の差分地図データとともに、3回目の走行時の差分地図データが記憶される。
【0072】
以上のように、本発明の搬送ロボット10においては、あるエリア(当該エリア)を走行した際に、各走行回ごとに差分地図データを記憶することから、他のエリア(例えば、工場建屋内の他のエリア)で当該エリアと近似するレイアウトのエリアを走行する際に、レイアウト変更の進捗が異なる場合でも、当該エリアの差分地図データを利用して作業用更新地図データに加えることにより、他のエリアのレイアウトにマッチした地図データを使用することができ、他のエリアを走行する際に自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0073】
また、あるエリア(当該エリア)を走行した際に、各走行回ごとに差分地図データを記憶しておくので、当該エリアのレイアウトを以前のレイアウト(つまり、過去の走行回の際のレイアウト)に戻した場合に、記憶されている差分地図データを作業用更新地図データに加算すべき差分地図データから削除することにより、戻したレイアウトにマッチしたマップデータを使用することができ、レイアウトを戻したエリアを走行する際に、自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0074】
上記のように、当該エリアと他のエリアとで、レイアウトが近似する場合、例えば、当初のレイアウトは同じで、その後のレイアウトの変更内容は同じであるが、レイアウト変更の進捗が異なり、当該エリアで走行した際に記憶された差分地図データを他のエリア(工場建屋内の他のエリア)で走行する際の作業用更新地図データに加える場合の具体例を以下に説明する。なお、レイアウトが近似する場合とは、レイアウトが同一の場合も含むものとする。
【0075】
図4(a)に示すような在庫置場が工場建屋内に別区画で2つあり(つまり、第1在庫置場、第2在庫置場とする)、各在庫置場ともに、
図4(a)のように棚が設置されていて、初期地図データは、
図4(a)に対応した
図5(a)に示す点群マップであるとする。つまり、第1在庫置場、第2在庫置場ともに当初のレイアウトは同じであり、初期地図データも共通であるとする。なお、「第1在庫置場」については、以下では「第1置場」と表現することがあり、また、「第2在庫置場」については、以下では「第2置場」と表現することがあるものとする。
【0076】
そして、
図8に示すように、第1在庫置場、第2在庫置場ともに、棚100A、100Bを設置する設置作業(これを1回目設置作業とする)を行ない、その後、1回目の走行を行い、さらに、棚200A、200Bを設置する設置作業(これを2回目設置作業とする)を行ない、その後、2回目の走行を行なうものとする。つまり、第1在庫置場、第2在庫置場のいずれの場合も、1回目設置作業→1回目走行→2回目設置作業→2回目走行を行なうものとする。つまり、第1在庫置場、第2在庫置場ともに同一の変更作業に基づきレイアウトの変更を行なうものとする。
【0077】
なお、第2在庫置場におけるレイアウト変更(棚を増設することによるレイアウトの変更)の進捗は、第1在庫置場におけるレイアウト変更よりも遅く設定されていて、第2在庫置場における1回目設置作業の開始のタイミングは、第1在庫置場における1回目設置作業の開始のタイミングよりも遅れていて、これにより、第2在庫置場における1回目走行の開始のタイミングは、第1在庫置場における1回目走行の終了のタイミングとなっていて、第2在庫置場における2回目走行の開始のタイミングは、第1在庫置場における1回目走行の終了のタイミングとする。
【0078】
また、差分地図データ記憶部24は、各在庫置場ごとに設けられているものとする(
図9参照)。また、初期地図データとしては、第1在庫置場、第2在庫置場について共通のデータ(
図5(a)に示すデータ)が記憶されているものとする。
【0079】
上記の場合には、
図9に示すように、第1在庫置場の1回目走行開始時には、差分地図データ記憶部24にはデータが記憶されていないので、作業用当初地図データと作業用更新地図データは初期地図データと同じとなり(
図9のR1参照)、第1在庫置場の1回目走行終了時には、差分地図データ(1回目)が第1在庫置場について記憶される(
図9のR2参照)。
【0080】
次に、第2在庫置場の1回目走行開始時には、初期地図データを作業用更新地図データとするのではなく、第1在庫置場について差分地図データ(1回目)が記憶されているので、作業用更新地図データ記憶部28には、初期地図データと差分地図データ(第1置場1回目)(第1在庫置場についての差分地図データ(1回目))を合成したデータを作業用更新地図データとして記憶する(
図9のR3参照)。つまり、作業用更新地図データに差分地図データ(第1置場1回目)を追加する。
【0081】
この場合、通常の動作では、差分地図データ(第2置場1回目)は記憶されていないので、作業用更新地図データは、初期地図データのみとなることから、具体的には、作業用更新地図データに差分地図データ(第1置場1回目)を追加することを手動で指示する。
【0082】
つまり、作業用更新地図データに差分地図データを手動で追加する場合の構成を例示すると、搬送ロボット10に、入力装置としてのタッチパネル(入力手段)70が設けられた表示装置(表示手段)60を設け、表示装置60には、差分地図データ記憶部24に記憶されている差分地図データが、在庫置場ごとに表示され、第2置場1回目の走行開始時には、
図10(a)に示すように、「第1在庫置場:差分地図データ(1回目)・第2在庫置場:なし」と表示され、「差分地図データ(1回目)」、「追加」、「削除」がそれぞれタッチパネル70における入力ボタン72となるので、第1在庫置場の「差分地図データ(1回目)」を選択した上で「追加」を選択することにより、差分地図データ(第1置場1回目)が作業用更新地図データに追加される。なお、この場合、
図1のブロック図においては、地図データ制御部46に表示装置60とタッチパネル(入力装置)70が接続されているものとする。
【0083】
なお、具体的には、表示装置60とタッチパネル70は搬送ロボット10の筐体に直接設ける構成としてもよいし、また、表示装置60とタッチパネル70を設けた通信端末(リモコンとしてもよい)を設け、表示装置60及びタッチパネル70と地図データ制御部46とを通信手段により接続する構成としてもよい。
【0084】
通信端末を設ける構成の場合、搬送ロボットは、
図1に示す各部を備えた搬送ロボット本体と、通信端末とを有し、通信端末においては、表示装置60と、タッチパネルと70と、通信装置からなる通信部と、通信端末における各部の動作を制御する制御部が設けられるとともに、搬送ロボット本体には、地図データ制御部46に接続された通信装置からなる通信部が設けられ、2つの通信部間の無線通信手段により、表示装置60及びタッチパネル70と地図データ制御部46が接続される。通信端末を設けた構成とする場合でも、該通信端末を搬送ロボット10の構成要素とすることにより、表示装置60とタッチパネル70が搬送ロボット10に設けられているといえる。
【0085】
具体的には、地図データ制御部46が、
図10(a)に示す画面を表示装置60に表示している状態で、ユーザーによる入力ボタン72への操作により、差分地図データ(第1置場1回目)の追加が指示されたことを地図データ制御部46が検知すると、地図データ制御部46は、作業用更新地図データ記憶部28に記憶される作業用更新地図データに差分地図データ(第1置場1回目)を追加する。
【0086】
これにより、
図4(b)のレイアウトにマッチした作業用更新地図データ(つまり、1回目設置作業後の状況を反映した作業用更新地図データ)とすることができ、搬送ロボット10の走行に際して自己位置を見失うおそれを低下させることができる。つまり、自己位置推定部48は、一部地図データと作業用更新地図データとをマッチングすることにより自己位置を推定することから、自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0087】
なお、作業用当初地図データについては、本来、初期地図データと第2在庫置場についての差分地図データを合成したデータとするので、第2在庫置場の1回目走行開始時における作業用当初地図データは、第2在庫置場についての差分地図データは記憶されていないことから、初期地図データのみとなる。
【0088】
つまり、他の走行によって得られた差分地図データを利用する場合でも、ステップS12において、作業用当初地図データ記憶部には、初期地図データと、第2在庫置場についての差分地図データ記憶部に記憶された差分地図データを合成して作業用当初地図データとして記憶する。この段階では、第2在庫置場についての差分地図データ記憶部には差分地図データは記憶されていないので、初期地図データのみが作業用当初地図データ記憶部26に記憶される。これは、第2在庫置場の1回目走行終了時に、第2在庫置場における1回目走行開始前の状況との差を示す差分地図データを得ることができるようにするためである。
【0089】
なお、
図10(a)において、第1在庫置場についての「差分地図データ(1回目)」が「差分地図データを特定するための特定情報」となり、また、後述の
図10(b)においても、第1在庫置場について表示される「差分地図データ(1回目)」や「差分地図データ(2回目)」や第2在庫置場について表示される「差分地図データ(1回目)」が「差分地図データを特定するための特定情報」となり、また、後述の
図10(c)においても、第1在庫置場について表示される「差分地図データ(1回目)」や「差分地図データ(2回目)」や第2在庫置場について表示される「差分地図データ(1回目)」や「差分地図データ(2回目)」が「差分地図データを特定するための特定情報」となり、このように、特定情報が、表示装置60に差分地図データごとに表示される。
【0090】
第2在庫置場の1回目走行終了時には、ステップS17において、作業用更新地図データと作業用当初地図データ(つまり、初期地図データ)の差分が差分地図データ(1回目)として記憶される(
図9のR4参照)。
【0091】
次に、第1在庫置場の2回目走行開始時には、第1在庫置場について差分地図データ(1回目)が記憶されているので、作業用当初地図データと作業用更新地図データは、初期地図データと差分地図データ(第1置場1回目)(第1在庫置場について差分地図データ(1回目))を合成したデータとする(
図9のR5参照)。そして、第1在庫置場の2回目走行終了時には、差分地図データ(2回目)が差分地図データ(1回目)に追加して第1在庫置場について記憶される(
図9のR6参照)。
【0092】
次に、第2在庫置場の2回目走行開始時には、初期地図データと第2在庫置場についての差分地図データ(1回目)を合成したデータを作業用更新地図データとするのではなく、第1在庫置場について差分地図データ(2回目)が記憶されているので、作業用更新地図データ記憶部28には、初期地図データと差分地図データ(第2置場1回目)(第2置場について差分地図データ(1回目))と差分地図データ(第1置場2回目)(第1在庫置場について差分地図データ(2回目))合成したデータを作業用更新地図データとして記憶する(
図9のR7参照)。つまり、作業用更新地図データに差分地図データ(第1置場2回目)を追加する。
【0093】
この場合も、通常の動作では、差分地図データ(第2置場2回目)は記憶されていないので、作業用更新地図データは、初期地図データ+差分地図データ(第2置場1回目)のみとなることから、具体的には、作業用更新地図データに差分地図データ(第1置場2回目)を追加することを手動で指示する。
【0094】
つまり、タッチパネル70が設けられた表示装置60には、第2置場2回目の走行開始時には、
図10(b)に示すように、「第1在庫置場:差分地図データ(1回目)、差分地図データ(2回目)・第2在庫置場:差分地図データ(1回目)」と表示されるので、第1在庫置場の「差分地図データ(2回目)」を選択した上で「追加」を選択することにより、差分地図データ(第1置場2回目)が作業用更新地図データに追加される。
【0095】
具体的には、地図データ制御部46が、
図10(b)に示す画面を表示装置60に表示している状態で、ユーザーによるタッチパネル70への操作により、差分地図データ(第1置場2回目)の追加が指示されたことを地図データ制御部46が検知すると、地図データ制御部46は、作業用更新地図データ記憶部28に記憶される作業用更新地図データに差分地図データ(第1置場2回目)を追加する。
【0096】
これにより、
図4(c)のレイアウトにマッチした作業用更新地図データ(つまり、2回目設置作業後の状況を反映した作業用更新地図データ)とすることができ、搬送ロボット10の走行に際して自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0097】
なお、作業用当初地図データは、本来、初期地図データと第2在庫置場についての差分地図データを合成したデータとするので、初期地図データと差分地図データ(第2置場1回目)を合成したデータとなる。これにより、第2在庫置場の2回目走行終了時に、第2在庫置場における2回目走行開始前の状況との差を示す差分地図データを得ることができる
第2在庫置場の2回目走行終了時には、ステップS17において、作業用更新地図データと作業用当初地図データの差分が差分地図データ(2回目)として記憶される(
図9のR8参照)。
【0098】
なお、上記の説明では、第1在庫置場と第2在庫置場で初期地図データが共通であるとしたが、第1在庫置場と第2在庫置場で当初のレイアウトが同一以外で近似する場合、例えば、第1在庫置場と第2在庫置場で当初のレイアウトが若干異なり、棚列100-1において、第2在庫置場では、位置b側の端に位置する棚がない場合で、初期地図データが第1在庫置場、第2在庫置場それぞれに設けられる場合でも、その後のレイアウトの変更内容が同じで、レイアウト変更の進捗が異なる場合には、上記と同様に、第2在庫置場の走行開始時に、第1在庫置場の差分地図データを作業用更新地図データに追加することにより、第2在庫置場のレイアウトにマッチした作業用更新地図データとすることができる。
【0099】
例えば、初期地図データが第1在庫置場と第2在庫置場それぞれに設けられるので、第1在庫置場における走行開始時には、第1在庫置場の初期地図データに第1在庫置場についての差分地図データを追加し、第2在庫置場における走行開始時には、第2在庫置場の初期地図データに第2在庫置場についての差分地図データを追加するのが基本であるが、
図8の例における第2在庫置場の1回目の走行開始時には、初期地図データ(第2在庫置場についての初期地図データ)と差分地図データ(第1置場1回目)を合成したデータを作業用更新地図データとし、第2在庫置場の2回目の走行開始時には、初期地図データ(第2在庫置場についての初期地図データ)と差分地図データ(第2置場1回目)と差分地図データ(第1置場2回目)を合成したデータを作業用更新地図データとする。なお、第1在庫置場と第2在庫置場で当初のレイアウトが若干異なる場合に、初期地図データをそれぞれ設けるとしたが、レイアウトの相違の程度によっては、共通の初期地図データを用いてもよい。
【0100】
また、
図11に示すように、
図8の例に対して第3在庫置場が追加され、第3在庫置場における1回目設置作業の開始のタイミングは、第2在庫置場における1回目設置作業の開始のタイミングよりも遅れていて、これにより、第3在庫置場における1回目走行の開始のタイミングは、第2在庫置場における1回目走行の終了のタイミングとなっていて、第3在庫置場における2回目走行の開始のタイミングは、第2在庫置場における1回目走行の終了のタイミングであるとする。
【0101】
この第3在庫置場についても、第2在庫置場の場合と同様に、作業用更新地図データとして、第1在庫置場についての差分地図データを利用すればよく、例えば、第3在庫置場の1回目走行開始時には、初期地図データと差分地図データ(第1置場1回目)を合成したデータを作業用更新地図データとし(つまり、作業用更新地図データに対して、差分地図データ(第1置場1回目)を追加する)、第3在庫置場の2回目走行開始時には、初期地図データと差分地図データ(第3置場1回目)(第3在庫置場について差分地図データ(1回目))と差分地図データ(第1置場2回目)を合成したデータを作業用更新地図データとする(つまり、作業用更新地図データに対して、差分地図データ(第1置場2回目)を追加する)。
【0102】
なお、第3在庫置場についての作業用当初地図データは、上記と同様に、初期地図データと第3在庫置場についての差分地図データを合成したものであり、1回目走行開始時には、初期地図データが作業用当初地図データとなり、2回目走行開始時には、初期地図データと差分地図データ(第3置場1回目)とを合成したデータが作業用当初地図データとなる。
【0103】
なお、上記の説明では、第3在庫置場の作業用更新地図データとして、第1在庫置場についての差分地図データを利用するとしたが、第2在庫置場についての差分地図データを利用してもよい。つまり、第3在庫置場の1回目走行開始時には、初期地図データと差分地図データ(第2置場1回目)を合成したデータを作業用更新地図データとし、第3在庫置場の2回目走行開始時には、初期地図データと差分地図データ(第3置場1回目)と差分地図データ(第2置場2回目)を合成したデータを作業用更新地図データとしてもよい。
【0104】
なお、第3在庫置場の1回目走行の際には、第1在庫置場でも2回目の走行が行われるので、他の搬送ロボットを用意し、第1在庫置場や第2在庫置場での走行に使用した搬送ロボットの初期地図データ記憶部22に記憶されている初期地図データや差分地図データ記憶部24に記憶されている差分地図データをコピーして他の搬送ロボットに記憶させる必要がある。
【0105】
以上のように、走行が終了した際には、走行に際して更新した地図データ(作業用更新地図データ)により初期地図データを上書きして更新するのではなく、走行前の地図データとの差分データを記憶しておくので、あるエリアを走行して得た差分データを、当該エリアとは別のエリアでレイアウトの変更作業が同一であるエリアの走行に利用することにより、該別のエリアを走行する際に自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0106】
なお、上記の説明では、走行開始時に、作業用更新地図データに対して1つの差分地図データを追加しているが、複数の差分地図データを追加してもよい。例えば、
図8の例で、第2在庫置場の1回目の走行開始が、第1在庫置場の2回目の走行終了後であり、第2在庫置場の1回目の走行開始時には、すでに1回目設置作業と2回目設置作業が完了している場合には、第2在庫置場の1回目の走行開始時には、初期地図データと差分地図データ(第1置場1回目)と差分地図データ(第1置場2回目)を合成したデータを作業用更新地図データとする。つまり、この場合、第2在庫置場の1回目走行開始時における本来の作業用更新地図データは、初期地図データのみであるが、差分地図データ(第1置場1回目)と差分地図データ(第1置場2回目)の2つの差分地図データを追加する操作を行なう。
【0107】
次に、上記のように、あるエリアのレイアウトを以前のレイアウトに戻した場合に、当該エリアで走行した際に記憶された差分地図データのうち、作業用更新地図データに加算すべき差分地図データから削除する場合の具体例を以下に説明する。
【0108】
すなわち、上記の例で、第1在庫置場における2回目の走行後に棚100A、100Bが撤去され(棚200A、200Bは残っている)、その後に、第1在庫置場について3回目の走行を行なう場合には、走行開始時の作業用更新地図データには、差分地図データ(第1置場1回目)を記憶させずに、走行開始時の作業用更新地図データは、初期地図データと差分地図データ(第1置場2回目)を合成したデータとする。
【0109】
つまり、第1置場4回目の走行開始時には、
図10(c)に示すように、「第1在庫置場:差分地図データ(1回目)、差分地図データ(2回目)・第2在庫置場:差分地図データ(1回目)、差分地図データ(2回目)」と表示されるので、第1在庫置場の「差分地図データ(1回目)」を選択した上で「削除」を選択することにより、差分地図データ(第1置場1回目)が作業用更新地図データから削除した状態となる。
【0110】
具体的には、地図データ制御部46が、
図10(c)に示す画面を表示装置60に表示している状態で、ユーザーによるタッチパネル70への操作により、差分地図データ(第1置場1回目)の削除が指示されたことを地図データ制御部46が検知すると、地図データ制御部46は、作業用更新地図データ記憶部28に記憶される作業用更新地図データから差分地図データ(第1置場1回目)を削除する。
【0111】
これにより、棚100A、100Bが撤去された状況に近い状態の地図データを作業用更新地図データとすることができ、自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0112】
なお、上記の説明では、走行開始時に、作業用更新地図データに対して1つの差分地図データを削除しているが、複数の差分地図データを削除してもよい。例えば、第1在庫置場における2回目の走行後に棚100A、100B、200A、200Bが撤去され、
図4(a)に示す状態と戻っていて、その後に、第1在庫置場について3回目の走行を行なう場合には、走行開始時の作業用更新地図データには、差分地図データ(第1置場1回目)と差分地図データ(第1置場2回目)を記憶させずに、走行開始時の作業用更新地図データは、初期地図データとする。つまり、第1在庫置場について3回目の走行を行なう場合の作業用更新地図データは、初期地図データと差分地図データ(第1置場1回目)と差分地図データ(第1置場2回目)を合成したデータであるが、差分地図データ(第1置場1回目)と差分地図データ(第1置場2回目)の2つの差分地図データを削除する操作を行なう。
【0113】
以上のように、本発明の搬送ロボット10においては、各走行回ごとに差分地図データを記憶することから、搬送ロボットの走行開始時に作業用更新地図データに対して、記憶されている差分地図データを追加又は削除することにより、走行するエリアのレイアウトにマッチした地図データを使用することができ、走行に際して自己位置を見失うおそれを低下させることができる。
【0114】
なお、上記の説明においては、走行エリアとして工場建屋内の在庫置場を例にとって説明したが、これには限られず、例えば、工場建屋内における類似配置の(つまり、構成が類似する)製造ラインが設けられたエリアとしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 搬送ロボット
12 ライダーユニット
13 駆動ユニット
14 車輪
16 駆動部
20 記憶部
22 初期地図データ記憶部
24 差分地図データ記憶部
26 作業用当初地図データ記憶部
28 作業用更新地図データ記憶部
30 経路データ記憶部
32 一部地図データ記憶部
40 制御部
41 一部地図データ作成制御部
42 一部地図データ作成部
44 一部地図データ制御部
46 地図データ制御部
48 自己位置推定部
50 走行制御部
60 表示装置
70 タッチパネル
72 入力ボタン
100-1、100-2、100-3、100-4 棚列
100A、100B、200A、200B 棚
G 在庫置場
a、b、c、d、e、f、g、h、i 位置
【要約】
【課題】当該エリアとしてのあるエリアとレイアウトが近似する他のエリアを走行する際に、レイアウト変更の進捗が異なっても、他のエリアを走行する際に、当該エリアの地図データを利用することにより、他のエリアのレイアウトにマッチした地図データを使用することができる搬送ロボットを提供する。
【解決手段】搬送ロボットの走行中には、地図データ制御部46は、一部地図データを作業用更新地図データに追加して、作業用更新地図データを更新していき、走行終了時には、作業用更新地図データと作業用当初地図データの差分である差分地図データを走行ごとに差分地図データ記憶部24に記憶する。次の走行の開始時には、初期地図データ記憶部22に記憶された初期地図データに差分地図データ記憶部24に記憶された差分地図データを追加した地図データを作業用当初地図データ及び作業用更新地図データとする。
【選択図】
図1