(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】地下水の処理方法および処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/66 20230101AFI20240828BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C02F1/66 522B
E02D3/10 101
C02F1/66 510A
C02F1/66 530D
(21)【出願番号】P 2023146673
(22)【出願日】2023-09-11
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】森澤 友博
(72)【発明者】
【氏名】大森 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸行
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-136725(JP,A)
【文献】特開2009-233630(JP,A)
【文献】登録実用新案第3218782(JP,U)
【文献】特開2006-281075(JP,A)
【文献】特開2016-203140(JP,A)
【文献】特開平05-023674(JP,A)
【文献】実開平02-075198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66- 1/68
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
E02D 3/00- 3/12
E21B 43/00-43/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水が存在する地盤に揚水管を挿設し、送気装置により前記揚水管の下部に設けられている注入口から前記揚水管の管内に、施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体を注入して、前記揚水管の管内に多数の気泡を発生させ、多数の前記気泡による見かけ比重の低下によって前記地下水を、前記地下水が存在する地盤から上昇させて揚水し、前記気泡に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の前記地下水とを中和反応させて、その地下水の水素イオン濃度指数を低下
させ、
前記気体に、大気に排出されることが望まれていない前記二酸化炭素を含むことを特徴とする地下水の処理方法。
【請求項2】
前記気体に、
前記施工現場で発生した前記二酸化炭素、前記施工現場とは別の施工現場で発生した前記二酸化炭素、発電所で発生した前記二酸化炭素の少なくともいずれかを含む請求項1に記載の地下水の処理方法。
【請求項3】
水素イオン濃度指数を低下させた前記地下水を前記地盤中に戻す請求項1または2に記載の地下水の処理方法。
【請求項4】
前記地盤から水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の土砂を掘削し、その掘削した前記土砂と水素イオン濃度指数を低下させた前記地下水とを撹拌混合してスラリー状の前記土砂を作製し、そのスラリー状の前記土砂と施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体とを混合して、その気体に含まれる二酸化炭素とアルカリ性の前記土砂とを中和反応させ、水素イオン濃度指数を低下させたスラリー状の前記土砂を前記地盤の掘削箇所に送泥して前記掘削箇所を埋め戻す請求項1または2に記載の地下水の処理方法。
【請求項5】
前記地盤から掘削した前記土砂を解砕して細粒化し、その細粒化した前記土砂を用いてスラリー状の前記土砂を作製する請求項4に記載の地下水の処理方法。
【請求項6】
スラリー状の前記土砂を前記掘削箇所に送泥する送泥管の管内で、スラリー状の前記土砂と前記気体とを管中混合する請求項4に記載の地下水の処理方法。
【請求項7】
水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水が存在する地盤に挿設される揚水管と、前記揚水管の下部に設けられている注入口に接続された送気装置とを備え、
前記送気装置によって、前記注入口から前記揚水管の管内に、施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体が注入されることで前記揚水管の管内に多数の気泡が発生し、前記多数の気泡による見かけ比重の低下によって前記地下水が、前記地下水が存在する地盤から上昇して揚水され、前記気泡に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の前記地下水とが中和反応して、その地下水の水素イオン濃度指数が低下する構成
であり、
前記気体に、大気に排出されることが望まれていない前記二酸化炭素を含むことを特徴とする地下水の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水の処理方法および処理システムに関し、さらに詳しくは、大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を有効利用して、水素イオン濃度指数が高いアルカリ性の地下水を簡易に効率よく中性化できる地下水の処理方法および処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉱滓が埋設された水域に近い土地では、水素イオン濃度指数が高いアルカリ性の地下水が地中に保持されている場合がある。このような土地を無対策で放置した場合には、アルカリ性の地下水が水域に流出する恐れがある。このような土地を改変する場合には、従来では、鉱滓が混合しているアルカリ性の土砂を掘削する。そして、揚水管と送気装置を使用してエアリフトによりアルカリ性の地下水を地上に揚水している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
揚水したアルカリ性の地下水は、そのままの状態では公共用水域や下水道に排水することはできない。そのため、従来では、揚水したアルカリ性の地下水に中和剤を添加することで、地下水を中性化していた。土地の改変工事では多量の地下水を揚水することになるため、揚水後の地下水の中性化に比較的多くのコストと時間を要していた。また、アルカリ性の土砂はそのままの状態では掘削箇所に埋め戻すことはできない。そのため、従来では、アルカリ性の土砂は廃棄物処理場などで埋立処分等を行う場合が多く、アルカリ性の土砂の処理にも比較的多くのコストを要していた。
【0004】
また、建設業界では、施工における地球温暖化の原因とされている二酸化炭素(CO2)の排出量の低減や、発電装置や建設機械などの排気に含まれる二酸化炭素を有効利用することが課題になっている。そのため、施工現場などで生じる大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を、アルカリ性の土地の改変に有効利用して、二酸化炭素を地下水や地中に固定することができれば、非常に有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を有効利用して、水素イオン濃度指数が高いアルカリ性の地下水を簡易に効率よく中性化できる地下水の処理方法および処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の地下水の処理方法は、水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水が存在する地盤に揚水管を挿設し、送気装置により前記揚水管の下部に設けられている注入口から前記揚水管の管内に、施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体を注入して、前記揚水管の管内に多数の気泡を発生させ、多数の前記気泡による見かけ比重の低下によって前記地下水を、前記地下水が存在する地盤から上昇させて揚水し、前記気泡に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の前記地下水とを中和反応させて、その地下水の水素イオン濃度指数を低下させ、前記気体に、大気に排出されることが望まれていない前記二酸化炭素を含むことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため本発明の地下水の処理システムは、水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水が存在する地盤に挿設される揚水管と、前記揚水管の下部に設けられている注入口に接続された送気装置とを備え、前記送気装置によって、前記注入口から前記揚水管の管内に、施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体が注入されることで前記揚水管の管内に多数の気泡が発生し、前記多数の気泡による見かけ比重の低下によって前記地下水が、前記地下水が存在する地盤から上昇して揚水され、前記気泡に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の前記地下水とが中和反応して、その地下水の水素イオン濃度指数が低下する構成であり、前記気体に、大気に排出されることが望まれていない前記二酸化炭素を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、揚水管を用いてアルカリ性の地下水を揚水する際に、揚水管の管内に、二酸化炭素の体積割合の高い気体を注入して、揚水管の管内に多数の気泡を発生させる。そして、多数の気泡による見かけ比重の低下によって地下水を上昇させて揚水し、気泡に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の地下水とを中和反応させる。これにより、大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を有効利用して、地下水の水素イオン濃度指数を効果的に低下させることができ、アルカリ性の地下水の中性化を簡易に効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の地下水の処理システムの実施形態を模式的に例示する説明図である。
【
図2】本発明の地下水の処理システムの別の実施形態を模式的に例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の地下水の処理方法および処理システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
本発明の地下水の処理方法および処理システムは、鉱滓が埋設された土地などの地中に存在する水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水を中性化する方法およびシステムである。なお、本発明で言う地下水の中性化は、地下水の水素イオン濃度指数を完全な中性(pH7)に変化させることに限らず、強アルカリ性の水素イオン濃度指数を低下させて、水素イオン濃度指数を弱アルカリ性や中性に近づけることを意味している。
【0013】
図1に例示するように、本発明の地下水の処理システム1は、水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水Wが存在する地盤Gに挿設される揚水管2と、揚水管2の下部に設けられている注入口2bに接続された送気装置4とを備えている。この実施形態の処理システム1は、さらに、送気装置4に接続された高圧容器(ボンベ)8と、揚水管2の排出口2cが接続された貯水槽9と、貯水槽9に接続された混合管11とを備えている。
【0014】
揚水管2は地盤Gに挿入された状態で上下方向に延在している。揚水管2の下端に設けられている流入口2aは、地下水Wが存在している帯水層に配置されている。揚水管2の下部の側壁に注入口2bが設けられていて、注入口2bには送気管5が接続されている。揚水管2の上部は地上に配置されていて、揚水管2の排出口2cは、地上に配置された貯水槽9に接続されている。この実施形態の揚水管2は、地上において屈曲していて、揚水管2の地上に配置されている部分は貯水槽9に向かって横方向に延在している。また、揚水管2は下流側の端部が下方向に向かって屈曲していて、揚水管2の排出口2cが貯水槽9の内側に配置されている。また、この実施形態では、地盤Gに外管3が挿設されていて、外管3の内側に、揚水管2の地盤Gに挿入される部分と送気管5が配置されている。外管3は必要に応じて任意に設けることができる。
【0015】
送気装置4は、揚水管2の注入口2bに施工現場の空気よりも二酸化炭素(CO2)の体積割合の高い気体Cを注入する。送気装置4は、例えば、空気圧縮機(エアコンプレッサー)等で構成される。送気装置4の送気口に送気管5の後端部が接続されていて、送気管5の先端部が揚水管2の注入口2bに接続されている。
【0016】
この実施形態では、送気装置4から排出される排気を送気装置4の給気口に供給する循環機構7が設けられている。循環機構7には、送気装置4の排気に含まれる粒子状物質(PM)や窒素酸化物(例えば、NOやNO2)、揮発性有機化合物(VOC)などの汚染物質を取り除くフィルタを設けるとよい。この実施形態ではさらに、二酸化炭素が予め貯留された高圧容器8が、送気装置4の給気口に接続されている。高圧容器8には例えば、他の施工現場で発生した二酸化炭素や、発電所などで発生した二酸化炭素などの大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を貯留しておくことが好ましい。
【0017】
この実施形態では、循環機構7により送気装置4の給気口に、送気装置4から排出される二酸化炭素を含む排気が供給され、高圧容器8により送気装置4の給気口に二酸化炭素の体積割合が高い気体が供給される。これにより、送気装置4の送気口から施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cが送気され、その送気された気体Cが送気管5を介して、揚水管2の注入口2bに供給される構成になっている。
【0018】
施工現場の標高などによって空気(地表付近の大気)に含まれる二酸化炭素の体積割合は多少異なるが、通常の空気における二酸化炭素の体積割合は約0.03~0.04%程度である。本発明でいう施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合を高めた気体Cは、例えば、二酸化炭素の体積割合を0.4%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは10%以上とした気体Cである。或いは、二酸化炭素の体積割合を、施工現場の空気に含まれる二酸化炭素の体積割合の例えば、10倍以上、より好ましくは50倍以上、さらに好ましくは250倍以上とした気体Cである。二酸化炭素の体積割合を高めた気体Cに含まれる二酸化炭素の体積割合の上限値は例えば、99%以下である。送気装置4の排気に含まれる二酸化炭素の体積割合は例えば、1%~10%程度である。
【0019】
図1に例示するように、貯水槽9には排気口10が設けられている。貯水槽9の下流側には混合管11が接続されている。混合管11は、液体と気体の管中混合に使用する管体であり、例えば、スタティックミキサーなどのインラインミキサーで構成される。この実施形態では、送気管5の中途に分岐管6の後端部が接続されていて、分岐管6の先端部が混合管11の上流側に接続されている。送気装置4から送気管5に供給された施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cの一部が、分岐管6を介して混合管11に供給される構成になっている。
【0020】
混合管11の下流側には排出管12が接続されている。排出管12の先端側は地盤中に挿入されていて、排出管12の排出口は地下水Wが存在している帯水層に配置されている。
【0021】
次に、この処理システム1を使用した地下水Wの処理方法を説明する。
【0022】
図1に例示するように、水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水Wが存在する地盤Gに揚水管2を挿設する。この実施形態では、外管3を地盤Gに挿入し、外管3の内側の土砂を取り除く。その後、外管3の内側に揚水管2と送気管5を設置する。揚水管2の下端に設けられている流入口2aは、地下水Wが存在している帯水層に配置する。揚水管2の排出口2cは、地上に配置された貯水槽9に接続しておく。
【0023】
そして、送気装置4を駆動させて、送気装置4の送気口から施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cを送気管5に送気し、揚水管2の下部に設けられている注入口2bから揚水管2の管内に前述した気体Cを注入することで、揚水管2の管内に多数の気泡を発生させる。この実施形態では、送気装置4の排気口から排出された排気を循環機構7によって送気装置4の給気口に供給することで、送気装置4の送気口から送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を高めている。さらに、高圧容器8に予め貯留しておいた二酸化炭素を、送気装置4の給気口に供給することで、送気装置4の送気口から送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を高めている。
【0024】
そして、揚水管2の管内に発生させた多数の気泡による見かけ比重の低下によって揚水管2の管内で地下水Wを上昇させて揚水し、揚水管2の流入口2aよりも下流側で、気泡(気体C)に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の地下水Wとを中和反応させて、揚水中または揚水後の地下水Wの水素イオン濃度指数を低下させる。この実施形態では、揚水管2の流入口2aから流入した地下水Wは、揚水管2の地上までの管内で上昇する間(揚水中)に中和反応し、さらに、揚水管2の地上に延在する管内を通過する間(揚水後)においても中和反応する構成になっている。揚水管2の管内で中和反応して、水素イオン濃度指数が低下した中和反応後の地下水NWは、揚水管2の排出口2cから排出される。
【0025】
具体的には、例えば、鉱滓が埋設されている地盤では、地下水Wに多くの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が含まれている。そのため、揚水管2の管内で地下水Wと気泡が接触すると、気泡に含まれる二酸化炭素(CO2)と、地下水Wに含まれる水(H20)が化学反応して炭酸(H2C03)が生成される(CO2+H20→H2C03)。さらに、その生成された炭酸(H2C03)と、地下水Wに含まれる水酸化カルシウム(Ca(OH)2)とが化学反応して、炭酸カルシウム(CaC03)が生成される中和反応が起こる(Ca(OH)2+H2C03→CaC03+2H20)。これにより、地下水Wを揚水する過程で、地下水Wの水素イオン濃度指数が低下し、気泡(気体C)に含まれる二酸化炭素も減少する。
【0026】
この実施形態では、揚水管2の排出口2cから排出された中和反応後の地下水NWと、中和反応後の残存した中和反応後の気体NCは貯水槽9に流入し、貯水槽9に貯留されている地下水NWは順次、混合管11に流入する。中和反応後の気体NCは、貯水槽9に設けられている排気口10から貯水槽9の外部に排気される。中和反応後の気体NCの二酸化炭素の体積割合は、施工現場の空気と同程度になっているため、そのまま排気しても問題はない。
【0027】
この実施形態では、送気装置4から施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cが分岐管6を介して混合管11の管内に注入されることで、地下水NWが流れる混合管11の管内に多数の気泡がする。そして、地下水NWと多数の気泡が混合管11の管内で渦を巻くように流れ、混合管11の管内で気泡(気体C)に含まれる二酸化炭素と地下水NWとが中和反応する。これにより、混合管11を通過した地下水NWの水素イオン濃度指数はさらに低下する。
【0028】
この実施形態では、混合管11を通過した中和反応後の地下水NWは、排出管12を介して地盤G中に戻している。中和反応後の地下水NWは、揚水管2の挿設位置から離間した位置で排水することが好ましい。この実施形態では、処理システム1によって地下水Wが揚水されることで、揚水管2の流入口2a付近の地下水位が一時的に下がり、その地下水位が下がった揚水管2の流入口2a付近に周囲の地下水Wが流れ込む。そして、揚水管2の流入口2a付近に流れ込んだ地下水Wは、処理システム1により揚水され、中性化された後に、地盤G中に戻される。この循環が繰り返されることで、地盤に存在している地下水Wの水素イオン濃度指数の平均値が中性(pH7)に近づいていく。
【0029】
本発明では、処理システム1から最終的に排出する中性化した後の地下水NWの水素イオン濃度指数は、例えば、pH5.0以上pH9.0以下、より好ましくはpH5.8以上pH8.6以下、さらに好ましくはpH6.0以上pH8.0以下である。言い換えると、揚水管2や混合管11に注入する気体Cの二酸化炭素の体積割合や供給量、揚水管2や混合管11の長さなどは、処理システム1から最終的に排出する中性化した地下水NWの水素イオン濃度指数が、例えば、pH5.0以上pH9.0以下、より好ましくはpH5.8以上pH8.6以下、さらに好ましくはpH6.0以上pH8.0以下になる条件に設定する。
【0030】
このように、本発明では、揚水管2を用いて水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水Wを揚水する際に、揚水管2の管内に、施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cを注入して、揚水管2の管内に多数の気泡を発生させる。そして、多数の気泡によって見かけ比重を低下させることにより地下水Wを上昇させて揚水し、気泡に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の地下水Wとを中和反応させる。これにより、大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を有効利用して、揚水中または揚水後の地下水NWの水素イオン濃度指数を効果的に低下させることができ、アルカリ性の地下水Wの中性化を簡易に効率よく行うことができる。即ち、本発明では、大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を地下水Wの揚水と中性化の両方に有効利用できる。また、本発明で中性化した地下水NWには、中和剤を添加する必要がない、或いは、中和剤を添加する場合にもその添加量を従来よりも削減できる。それ故、本発明は、地下水Wの中性化に要するコストや時間を低減するには有利になる。
【0031】
さらに、本発明では、地球温暖化の要因となる二酸化炭素をアルカリ性の地下水Wの中性化に有効利用できる。それ故、二酸化炭素の低減にも寄与でき、非常に有益である。この実施形態のように、循環機構7を設けて、送気装置4から送気する気体Cに送気装置4から排出される排気を含む構成にすると、送気装置4の排気に含まれる二酸化炭素を地下水Wの中性化に有効に利用することができ、施工における二酸化炭素の排出量も低減できる。
【0032】
この実施形態のように、高圧容器8などに予め貯留しておいた二酸化炭素を、送気装置4の給気口に供給する構成にすると、揚水管2の管内に送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を簡易に高めることができる。また、施工現場以外で発生した大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を高圧容器8などに貯留しておくことで、施工現場以外で発生した二酸化炭素を地下水Wの中性化に利用することが可能になる。特に、高圧容器8を用いると、二酸化炭素を容易に安定した状態で貯留しておくことができ、送気装置4の給気口に二酸化炭素を供給する量も簡易に調整できるので、利便性が非常に高くなる。
【0033】
なお、本発明では、送気装置4から施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合が高い気体Cを送気する方法は、循環機構7や高圧容器8を用いる場合に限らず、他にも様々な方法を採用できる。具体的には、例えば、施工現場で使用する送気装置4以外の機械から排出される排気を送気装置4の給気口に供給する構成にすることもできる。前述した施工現場で使用する機械としては、建設機械や車両、工事に用いられる各機械(例えば、発電機等)などが例示できる。施工現場の機械が排出した二酸化炭素を使用する場合には、施工現場の機械が排出した排気に含まれる汚染物質を取り除いた上で、排気を送気装置4の給気口に供給するとよい。即ち、本発明では、循環機構7や高圧容器8は必要に応じて任意に設けることができる。建設機械や車両の排気に含まれる二酸化炭素の体積割合は例えば、1%~10%程度である。
【0034】
揚水管2の注入口2bから揚水管2の管内に発生させる気泡の大きさは、例えば、0.1mm以上5mm以下に設定するとよい。気泡が揚水管2の管内を上昇する過程で、気泡に含まれる二酸化炭素と地下水Wとが中和反応することで、気泡は徐々に縮小するが、発生させる気泡の大きさを0.1mm以上に設定することで、気泡により地下水Wを上昇させるリフト効果を地上まで維持することができ、地下水Wを中性化しつつ安定して揚水するには有利になる。また、発生させる気泡の大きさを大きく設定するほど、送気する気体量に対して揚水管2の管内に発生する気泡の数は少なくなるが、注入口2bから発生させる気泡の大きさを0.5mm以下に設定すると、揚水管2の管内に発生する気泡の数が過小になることを防ぐことができ、地下水Wを安定して揚水するには有利になる。
【0035】
この実施形態では設けていないが、例えば、揚水管2の注入口2bに、微小な孔が多数形成された多孔フィルタを設けることもできる。多孔フィルタの孔の大きさは、例えば、0.01mm以上0.1mm以下に設定するとよい。多孔フィルタを設けると、揚水管2の管内に発生させる気泡の大きさを均一化するには有利になる。また、多孔フィルタを設けることで、簡易に多数の微小な気泡を形成し易くなる。
【0036】
この実施形態のように、揚水管2の排出口2cから排出された中和反応後の地下水NWを地盤G中に戻す構成にすると、処理システム1により地下水Wを揚水しつつ中性化する工程と、中性化した地下水NWを地盤G中に戻す工程を並行して行うことで、地盤Gに存在している地下水Wの水素イオン濃度指数の平均値を効率的に中性に近づけることができる。なお、本発明では、例えば、揚水管2の排出口2cから排出された中和反応後の地下水NWを公共用水域や下水道に排水する構成や、中和反応後の地下水NWを他の用途に使用する構成にすることもできる。
【0037】
この実施形態のように、揚水管2の排出口2cから排出された地下水NWに対して、施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cを注入して、地下水NWと気体Cを混合する構成にすると、揚水後にさらに地下水NWの中性化を行うことで、地下水NWの水素イオン濃度指数をより中性に近づけることができる。この実施形態のように、揚水管2の排出口2cから排出された地下水NWに対して、送気装置4から送気する気体Cを注入する構成にすると、揚水後にさらに中性化を行う処理システム1を非常に簡素に構成できる。この実施形態のように、揚水後の中性化に、混合管11を使用すると、混合管11の管内で地下水NWと気泡とが渦を巻くように流れることで、地下水NWと気泡とが接触し易くなり、地下水NWの中性化を非常に効率よく行える。
【0038】
次に、
図2に例示する本発明に係る別の実施形態の処理システム1について説明する。以下では、
図1に例示した実施形態の処理システム1と異なる点を主に説明する。
【0039】
鉱滓が埋設された水域に近い土地では、水素イオン濃度指数が高いアルカリ性の地下水Wが地中に保持されているだけではなく、地盤Gの土砂Sの水素イオン濃度指数も高い場合がほとんどである。そのようなアルカリ性の土地を改変(中和化)する場合には、地下水Wだけではなく、地盤Gの土砂Sも中性化する必要がある。そこで、この実施形態の処理システム1では、地下水Wの中性化とともに、地盤Gの土砂Sの中性化を行う構成にしている。
【0040】
図2に例示するように、この実施形態では、土砂Sを解砕する解砕装置14と、泥倉を備えた台船15と、送泥装置18を搭載した作業船16を使用している。台船15と作業船16は、例えば、改変を行う土地の近傍の水域に停船させる。
【0041】
この実施形態では、地盤Gに遮蔽板13(例えば、矢板)を打設して、遮蔽板13により地盤Gの一部を区画している。そして、その遮蔽板13で区画した内側の領域に揚水管2を挿設している。この実施形態では、揚水管2の排出口2cに混合管11を接続している。混合管11の下流側に排出管12を接続し、排出管12は台船15まで延在させている。この実施形態では、
図1に例示した実施形態の貯水槽9は使用していない。
【0042】
作業船16には、バックホウ17と送泥装置18と送気装置20が搭載されている。作業船16に搭載されている送気装置20は、揚水管2に接続されている送気装置4とは別に設けられている。送泥装置18の下流側には送泥管19が接続されていて、送泥管19の排泥口は遮蔽板13で区画した内側の領域に配置されている。送泥管19の中途には送泥管19の他の部分の管径よりも内径が大きい拡大管19aが設けられている。
【0043】
この実施形態では、送気装置20の排気口から排出される排気を送気装置20の給気口に供給する循環機構22が設けられている。さらに、二酸化炭素が予め貯留された高圧容器23が、送気装置20の給気口に接続されている。その他の構成は、
図1に例示した実施形態の処理システム1と同じである。
【0044】
この実施形態の処理システム1を使用した地下水Wの処理方法では、水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水Wと、水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の土砂Sが存在する地盤Gに遮蔽板13を打設して、遮蔽板13により地盤Gの一部を区画する。そして、その遮蔽板13で区画した内側の領域に外管3と揚水管2を挿設する。
【0045】
そして、先に例示した実施形態と同様に、送気装置4を駆動させて、送気装置4の送気口から施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cを送気管5に送気し、揚水管2の下部に設けられている注入口2bから揚水管2の管内に前述した気体Cを注入することで、揚水管2の管内に多数の気泡を発生させる。この実施形態では、送気装置4の排気口から排出された排気を循環機構7によって送気装置4の給気口に供給することで、送気装置4の送気口から送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を高めている。この実施形態では、さらに、高圧容器8に予め貯留しておいた二酸化炭素を、送気装置4の給気口に供給することで、送気装置4の送気口から送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を高めている。
【0046】
そして、揚水管2の管内に発生させた多数の気泡による見かけ比重の低下によって地下水Wを上昇させて揚水し、揚水管2の流入口2aよりも下流側で、気泡(気体C)に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の地下水Wとを中和反応させて、揚水中または揚水後の地下水Wの水素イオン濃度指数を低下させる。揚水した中和反応後の地下水NWは、揚水管2の排出口2cから混合管11に流入する。
【0047】
送気装置4から施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cが分岐管6を介して混合管11の管内に注入されることで、地下水NWが流れる混合管11の管内に多数の気泡が発生する。そして、地下水NWと多数の気泡が混合管11の管内で渦を巻くように流れ、混合管11の管内で気泡(気体C)に含まれる二酸化炭素と地下水NWとが中和反応する。これにより、混合管11を通過した地下水NWの水素イオン濃度指数はさらに低下して中性に近づく。混合管11を通過した中和反応後の地下水NWは、排出管12を通って、台船15の泥倉に排出される。
【0048】
この実施形態では、地下水Wを揚水して中性化する工程と並行して、遮蔽板13で区画した内側の領域の土砂Sを掘削する。土砂Sの掘削は例えば、バックホウなどの建設機械を用いて行う。掘削した土砂Sは、大型車両などを用いて解砕装置14まで運搬し、土砂Sを解砕装置14によって解砕して細粒化する。解砕後の土砂DSの粒径は、例えば、40mm以下、より好ましくは20mm以下にするとよい。
【0049】
そして、解砕装置14によって細粒化した解砕後の土砂DSを、大型車両などを用いて台船15まで運搬し、解砕後の土砂DSを台船15の泥倉に投入する。これにより、台船15の泥倉には、解砕後の土砂DSと中和反応後の地下水NWが貯留された状態になる。この実施形態では、作業船16に配置しているバックホウ17を使用して台船15の泥倉で、解砕後の土砂DSと中和反応後の地下水NWを撹拌混合して、スラリー状の土砂SSを作製する。解砕後の土砂DSはアルカリ性であるため、スラリー状の土砂SSもアルカリ性である。そして、バックホウ17を使用して台船15の泥倉で作製したスラリー状の土砂SSを送泥装置18の投入口(ホッパ)に投入する。送泥装置18の投入口に投入されたスラリー状の土砂SSは送泥管19に流れ込む。
【0050】
この実施形態では、作業船16に搭載されている送気装置20を駆動させて、送気装置20の送気口から施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cを送気管21に送気し、送泥管19の管内に前述した気体Cを注入する。この実施形態では、送気装置20の排気口から排出された排気を循環機構22によって送気装置20の給気口に供給することで、送気装置20の送気口から送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を高めている。この実施形態では、さらに、高圧容器23に予め貯留しておいた二酸化炭素を、送気装置20の給気口に供給することで、送気装置20の送気口から送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を高めている。
【0051】
送泥管19にスラリー状の土砂SSと気体Cとが流れ込むことで、スラリー状の土砂SSと気体Cとが送泥管19を通過する過程で混合される。そして、送泥管19の管内で、アルカリ性のスラリー状の土砂SSと気体Cに含まれる二酸化炭素とが中和反応することにより、スラリー状の土砂SSの水素イオン濃度指数が低下する。この実施形態では、送泥管19の中途に設けられている拡大管19aにおいて特に、スラリー状の土砂SSと気体Cとが効果的に混合され、スラリー状の土砂SSと気体Cに含まれる二酸化炭素との中和反応が効果的に行われる。そして、中和反応して水素イオン濃度指数が低下したスラリー状の中和反応後の土砂NSは、送泥管19の排出口から遮蔽板13で区画した内側の領域に流出する。即ち、中和反応後の土砂NSは、地盤Gの掘削箇所に送泥され、中和反応後の土砂NSにより掘削箇所が埋め戻される。
【0052】
本発明では、処理システム1から最終的に排出する中性化した後の土砂NSの水素イオン濃度指数は、例えば、pH5.0以上pH9.0以下、より好ましくはpH5.8以上pH8.6以下、さらに好ましくはpH6.0以上pH8.0以下である。言い換えると、送泥管19に注入する気体Cの二酸化炭素の体積割合や供給量、送泥管19の長さなどは、処理システム1から最終的に排出する中性化した土砂NSの水素イオン濃度指数が、例えば、pH5.0以上pH9.0以下、より好ましくはpH5.8以上pH8.6以下、さらに好ましくはpH6.0以上pH8.0以下になる条件に設定する。
【0053】
この実施形態のように、地盤Gから水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の土砂Sを掘削し、その土砂Sと水素イオン濃度指数を低下させた地下水NWとを撹拌混合してスラリー状の土砂SSを作製する。その後、そのスラリー状の土砂SSと施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cとを混合して、気体Cに含まれる二酸化炭素とアルカリ性の土砂SSとを中和反応させる。そして、中和反応によって水素イオン濃度指数を低下させた中和反応後のスラリー状の土砂NSを地盤Gの掘削箇所に送泥して掘削箇所を埋め戻す構成にすると、揚水管2で中性反応させた地下水NWを有効活用して、地盤Gから掘削したアルカリ性の土砂Sを簡易に効率よく中性化できる。つまり、地盤G中の地下水Wを中性化するとともに、地盤Gから掘削した土砂Sを中性化して掘削箇所に埋め戻すことで、水素イオン濃度指数が高いアルカリ性の土地を効率的に改変(中性化)することができる。
【0054】
この実施形態のように、解砕装置14等を使用して、地盤Gから掘削した土砂Sを解砕して細粒化し、その細粒化した解砕後の土砂DSを用いてスラリー状の土砂SSを作製すると、掘削した土砂Sを解砕してそれぞれの粒子をより細かくすることで、スラリー状の土砂SSにおいて、気体Cに接触する土砂Sの粒子の表面積が増える。それ故、気体Cに含まれる二酸化炭素とアルカリ性の土砂SSとがより中和反応し易くなり、アルカリ性の土砂SSを効率的に中性化するには有利になる。また、地盤Gから掘削した土砂Sを解砕して細粒化することで、スラリー状の土砂SSが送泥装置18や送泥管19で詰まるリスクも低くなる。
【0055】
この実施形態のように、スラリー状の土砂SSを地盤Gの掘削箇所に送泥する送泥管19の管内で、スラリー状の土砂SSと気体Cとを管中混合する構成にすると、簡易な構成でありながら、スラリー状の土砂SSと気体Cとを効率的に混合することができ、アルカリ性の土砂SSと気体Cに含まれる二酸化炭素とを効率的に中和反応させることができる。特に、この実施形態のように、送泥管19の中途に拡大管19aを設けると、拡大管19aにおいてスラリー状の土砂SSと気体Cとを効率的に混合することができ、アルカリ性の土砂SSと気体Cに含まれる二酸化炭素とを効率的に中和反応させることができる。なお、拡大管19aは任意に設けることができる。
【0056】
この実施形態のように、高圧容器23などに予め貯留しておいた二酸化炭素を、作業船16に搭載した送気装置20の給気口に供給する構成にすると、送泥管19の管内に送気する気体Cの二酸化炭素の体積割合を簡易に高めることができる。また、施工現場以外で発生した二酸化炭素を高圧容器23などに貯留しておくことで、施工現場以外で発生した二酸化炭素をスラリー状の土砂SSの中性化に有効利用することが可能になる。特に、高圧容器23を用いると、二酸化炭素を容易に安定した状態で貯留しておくことができ、送気装置20の給気口に二酸化炭素を供給する量も簡易に調整できるので、利便性が非常に高くなる。
【0057】
本発明では、作業船16に搭載した送気装置20の給気口に二酸化炭素を供給する方法は、循環機構22や高圧容器23を用いる場合に限らず、他にも様々な方法で送気装置20の給気口に二酸化炭素を供給することができる。具体的には、例えば、施工現場で使用する送気装置20以外の機械から排出される排気を送気装置20の給気口に供給する構成にすることもできる。前述した施工現場で使用する機械としては、作業船16やバックホウ17、工事に用いられる各機械(例えば、発電機等)などが例示できる。施工現場の機械が排出した二酸化炭素を使用する場合には、施工現場の機械が排出した排気に含まれる汚染物質を取り除いた上で、排気を送気装置20の給気口に供給するとよい。即ち、本発明では、循環機構22や高圧容器23は必要に応じて任意に設けることができる。
【0058】
この実施形態のように、地盤Gから掘削して解砕した土砂Sと中和反応後の地下水NWを台船15の泥倉に貯留する構成にすると、陸上に土砂Sと地下水NWを貯留する土砂仮置き場を設ける必要がなく、土地改変に要するコストを低減するには有利になる。また、送泥装置18を搭載した作業船16を使用すると、陸上に送泥装置18やバックホウ17を配置する作業エリアを設ける必要がなくなるため、土地改変に要するコストを低減するには有利になる。
【0059】
なお、作業船16の泥倉に貯留しているスラリー状の土砂SSを地盤Gの掘削箇所に送泥するシステムは、この実施形態の構成に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、作業船16の泥倉に貯留しているスラリー状の土砂SSを揚土ポンプにより吸い上げて地盤Gの掘削箇所に水搬する構成にすることもできる。
【0060】
また、本発明では、例えば、台船15の代わりに陸上に土砂仮置き場を設ける構成にしてもよい。例えば、送泥装置18やバックホウ17を陸上に配置する構成にしてもよい。また、本発明では、それぞれの管体(揚水管2や送気管5など)の形状や配置、管体どうしの接続位置、各装置(送気装置4や解砕装置14など)の配置などは上記で例示した実施形態に限定されず、施工条件に応じて他にも様々な構成にすることができる。また、本発明は、鉱滓が埋設された土地の改変に限らず、鉱滓以外の要因で水素イオン濃度指数が高くなっている地下水Wや土砂Sが存在する土地の改変やその他の工事で採用することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1 処理システム
2 揚水管
2a 流入口
2b 注入口
2c 排出口
3 外管
4 送気装置
5 送気管
6 分岐管
7 循環機構
8 高圧容器
9 貯水槽
10 排気口
11 混合管
12 排出管
13 遮蔽板
14 解砕装置
15 台船
16 作業船
17 バックホウ
18 送泥装置
19 送泥管
19a 拡大管
20 送気装置
21 送気管
22 循環機構
23 高圧容器
C (空気よりも二酸化炭素の体積割合が高い)気体
NC 中和反応後の気体
W 地下水
NW 中和反応後の地下水
S 地盤の土砂
DS 解砕後の土砂
SS スラリー状の土砂
NS 中和反応後の土砂
G 地盤
【要約】
【課題】大気に排出されることが望まれていない二酸化炭素を有効利用して、水素イオン濃度指数が高いアルカリ性の地下水を簡易に効率よく中性化できる地下水の処理方法および処理システムを提供する。
【解決手段】水素イオン濃度指数がpH9以上のアルカリ性の地下水Wが存在する地盤Gに揚水管2を挿設する。そして、送気装置4により揚水管2の下部に設けられている注入口2bから揚水管2の管内に、施工現場の空気よりも二酸化炭素の体積割合の高い気体Cを注入して、揚水管2の管内に多数の気泡を発生させ、多数の気泡による見かけ比重の低下によって地下水Wを上昇させて揚水し、気泡に含まれる二酸化炭素と揚水中または揚水後のアルカリ性の地下水Wとを中和反応させて、その地下水NWの水素イオン濃度指数を低下させる。
【選択図】
図1