(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
F04D 33/00 20060101AFI20240828BHJP
F04D 25/02 20060101ALI20240828BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
F04D33/00
F04D25/02 A
F04B49/06 331C
(21)【出願番号】P 2023177467
(22)【出願日】2023-10-13
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】公文 ゆい
(72)【発明者】
【氏名】三角 勝
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実公昭25-009173(JP,Y1)
【文献】特公昭58-038640(JP,B2)
【文献】特開2014-182914(JP,A)
【文献】特許第6023909(JP,B1)
【文献】特開2015-063981(JP,A)
【文献】特開平06-249188(JP,A)
【文献】実開昭59-10618(JP,U)
【文献】実開昭59-39799(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 33/00
F04D 25/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根状又は翼状の
少なくとも二つの可動体を
左右対称に上下に揺動することで送風する送風部と、
人間が前記送風部の送風動作を指示するための操作部と、を備え、
前記操作部は、前記送風動作に関す
るボタンを含み、
前
記ボタ
ンは、翼又は羽根を
揺動させて飛行可能な生物を表す画像によって、対応する前記送風動作を視覚的に示すアイコンを有する、
送風装置。
【請求項2】
前記操作部は、複数の前記ボタンを含み、
前記複数のボタンは、前記送風部に送風を開始又は/及び停止させる電源ボタンを含み、
前記電源ボタンのアイコンは、飛行していない状態の前記生物を表す、
請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記複数のボタンは、前記送風部に第一送風運転を実行させる第一運転ボタンを含み、
前記第一運転ボタンのアイコンは、飛行している状態の前記生物を表す、
請求項2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記電源ボタンのアイコンと前記第一運転ボタンのアイコンとは、要部の形態的特徴が
共通する前記生物を表す、
請求項3に記載の送風装置。
【請求項5】
前記操作部は、複数の前記ボタンを含み、
前記複数のボタンは、前記送風部に第一送風運転を実行させる第一運転ボタンと、前記第一送風運転とは異なる第二送風運転を、前記送風部に実行させる第二運転ボタンとを含み、
前記第一運転ボタンと前記第二運転ボタンとは、互いに異なる前記アイコンによって、対応する送風運転を視覚的に示す、
請求項1に記載の送風装置。
【請求項6】
前記第一運転ボタンのアイコンと前記第二運転ボタンのアイコンとは、要部の形態的特徴が異なる前記生物を表す、
請求項5に記載の送風装置。
【請求項7】
前記第一送風運転は、互いに送風動作が異なる複数の送風モードを含み、
前記第一運転ボタンは、さらに前記複数の送風モードの何れかを選択的に前記送風部に実行させることが可能であり、
前記第二運転ボタンは、前記複数の送風モードの何れとも異なる送風動作の前記第二送風運転のみを前記送風部に実行させる、
請求項6に記載の送風装置。
【請求項8】
前記第一運転ボタンのアイコンと前記第二運転ボタンのアイコンとは、要部の形態的特徴が共通する前記生物を表し、
前記第二運転ボタンのアイコンが表す前記生物は、前記第一運転ボタンのアイコンが表す前記生物よりも後の成長段階の前記生物である、
請求項5に記載の送風装置。
【請求項9】
前記第二送風運転の運転動作は、前記第一送風運転の送風動作に加えてさらに前記第一送風運転の送風動作に含まれない送風動作を含む、
請求項6に記載の送風装置。
【請求項10】
前記操作部は、複数の前記ボタンを含み、
前記複数のボタンは、互いに異なる風量又は/及び風向きで、前記送風部に送風を実行させる複数の調整ボタンを含み、
前記複数の調整ボタンは、互いに異なる前記アイコンによって、対応する前記風量又は/及び風向きを視覚的に示す、
請求項1に記載の送風装置。
【請求項11】
前記複数の調整ボタンは、前記送風部に第一風量での送風を実行させる第一風量調整ボタンと、前記送風部に第一風量より大きい第二風量での送風を実行させる第二風量調整ボタンとを含み、
前記第一風量調整ボタンのアイコンと前記第二風量調整ボタンのアイコンとは、要部の形態的特徴が共通する前記生物を表し、
前記第二風量調整ボタンのアイコンは、前記第一風量調整ボタンのアイコンよりも、翼又は羽根を大きく広げている前記生物を表す、
請求項10に記載の送風装置。
【請求項12】
前記送風部は、各々の揺動軸を中心に揺動可能な二つの翼部を有し、前記二つの翼部が上死点と下死点との間で上下に揺動する往復運動によって送風し、
前
記ボタ
ンは、二つの羽根又は翼を有する前記生物を表し
た前記アイコンを有する、
請求項1から11の何れかに記載の送風装置。
【請求項13】
羽根状又は翼状の可動体を上下に揺動することで送風する送風部と、
人間が前記送風部の送風動作を指示するための操作部と、を備え、
前記操作部は、前記送風動作に関する複数のボタンを含み、
前記複数のボタンの各々は、本体と翼又は羽根とを有する生物を表す画像によって、前記送風動作を行うときの前記可動体の動きを示すアイコンを有し、
前記複数のボタンは、互いに異なる前記送風動作に対応し、
前記複数のボタンでは、対応する前記送風動作に応じて、前記アイコンに表れる前記生物の本体に対する翼又は羽根の角度、大きさ、形状、及び位置の少なくとも1つが互いに異なる、
送風装置。
【請求項14】
羽根状又は翼状の可動体を上下に揺動することで送風する送風部と、
人間が前記送風部の送風動作を指示するための操作部と、を備え、
前記操作部は、前記送風動作に関するボタンを含み、
前記ボタンは、翼又は羽根を有する生物を表す画像によって、対応する前記送風動作を視覚的に示すアイコンを有し、
前記アイコンにおいて前記生物が有する翼又は羽根の数量は、前記送風部が有する前記可動体の数量と同じである、
送風装置。
【請求項15】
羽根状又は翼状の可動体を揺動軸を中心に上下に揺動することで、前記揺動軸の軸方向に送風する送風部と、
人間が前記送風部の送風動作を指示するための操作部と、を備え、
前記操作部は、前記送風動作に関するボタンを含み、
前記ボタンは、翼又は羽根を揺動させて飛行可能な生物を表す画像によって、対応する前記送風動作を視覚的に示すアイコンを有する、
送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送風装置は、例えばプロペラファンを用いる扇風機や、クロスファンを用いるエアコンなど、旋回流を用いたものが主流である。また、旋回流とは異なる手法を用いた送風装置として、扇子を自動的に扇ぐ自動団扇が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来とは異なる新たな送風装置が求められている。本開示は、従来とは異なる新たな送風装置を提供することを目的とする。なお、本開示の一態様は、鳥の羽ばたきに着目した技術的思想を含んでいるため、バイオミメティクスに関係するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る送風装置は、羽根状又は翼状の可動体を用いて送風する送風部と、人間が前記送風部の送風動作を指示するための操作部と、を備え、前記操作部は、前記送風動作に関する複数のボタンを含み、前記複数のボタンの各々は、翼又は羽根を有する生物を表す画像によって、対応する前記送風動作を視覚的に示すアイコンを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】装飾カバーを取り除いた装置本体の斜め上方から視た斜視図である。
【
図6】第一部材を取り除いた駆動ユニットの正面図である。
【
図7】第二部材を取り除いた駆動ユニットの背面図である。
【
図8】第一部材及び第二部材を取り除いた駆動ユニットの斜視図である。
【
図9】第一部材を取り除いた駆動ユニットの他の正面図である。
【
図11】翼部の変位を説明するための送風装置の正面図である。
【
図12】変形例に係る、装飾カバーを取り除いた装置本体の斜め上方から視た斜視図である。
【
図16】製造工程における翼部の模式的な正面図である。
【
図17】変形例に係る翼部の模式的な部品展開図である。
【
図18】変形例に係る翼部の模式的な底面図である。
【
図19】翼部の送風態様を説明するための模式的な正面図である。
【
図20】翼部の送風態様を説明するための模式的な側面図である。
【
図21】翼部の送風態様を説明するための模式的な平面図である。
【
図22】変形例に係る翼部の送風態様を説明するための模式的な側面図である。
【
図23】変形例に係る翼部の送風態様を説明するための模式的な側面図である。
【
図28】間欠運転時における翼部の翼端の変位を示すグラフである。
【
図29】リズム運転時における翼部の翼端の変位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<送風装置>
送風装置1の全体構成を説明する。
図1は、送風装置1の斜め上方から視た斜視図である。
図2は、送風装置1の平面図である。
図3は、送風装置1の右側面図である。以下の説明では、
図1の左下側、右上側、左上側、右下側、上側、下側を、それぞれ、送風装置1の前側、後側、左側、右側、上側、下側とする。
【0009】
図1~
図3に示すように、送風装置1は、羽根状又は翼状の可動体を用いて送風する送風部2を備える。本例の送風部2は、各々の揺動軸400(
図5参照)を中心に揺動可能な複数の翼部3と、複数の翼部3が装着される装置本体4とを有する。本例では、上下方向と交差する方向に延びる二つの翼部3が、装置本体4を挟んで左右対称に設けられる。二つの翼部3は、左側の翼部3Lと右側の翼部3Rからなる。
【0010】
送風装置1は、スタンド8及び支柱9を備える。スタンド8は、送風装置1の設置面上に配置される箱状の部材である。支柱9は、スタンド8の上面から上方に延びる筒状の部材である。支柱9の上端部には、装置本体4が固定されている。これによりスタンド8及び支柱9は、送風部2を設置面よりも上方で支持する。
【0011】
本例では、送風装置1のメイン基板が、スタンド8の内部に収容されている。外部電源であるACアダプタは、スタンド8の背面側に設けられたソケットに接続されて、メイン基板に電力を供給する。メイン基板は、支柱5内に設けられた配線を介して装置本体4の駆動源410(
図5参照)に駆動信号を供給することで、翼部3L,3Rを揺動させる。
【0012】
<装置本体>
装置本体4の構造を説明する。
図4は、装飾カバー42を取り除いた装置本体4の斜め上方から視た斜視図である。
図5は、
図4のA-A線矢視方向断面図である。
図6は、第一部材480を取り除いた駆動ユニット40の正面図である。
図7は、第二部材490を取り除いた駆動ユニット40の背面図である。
図8は、第一部材480及び第二部材490を取り除いた駆動ユニット40の斜視図である。
図4~
図8では、各翼部3L,3Rのうちで翼軸310のみを図示している。
【0013】
図1~
図5に示すように、装置本体4は、駆動ユニット40、本体カバー41、及び装飾カバー42を有する。駆動ユニット40は、複数の翼部3を揺動させる駆動機構である。本体カバー41は、駆動ユニット40を収容して保護する中空の部材である。装飾カバー42は、本体カバー41の少なくとも一部を収容して装置本体4の外形をなす中空の部材である。
【0014】
図5~
図8に示すように、駆動ユニット40は、回転軸411を回転駆動させる駆動源410と、回転軸411の回転に連動して回転する複数のギア420と、複数のギア420の回転のそれぞれに連動して複数の翼部3のそれぞれを揺動させる複数の運動変換機構430と、を有する。複数のギア420は、回転軸411を挟んだ両側で回転軸411と噛み合い、且つ複数のギア420の軸421は、回転軸411と交差する方向に延びる。
【0015】
駆動ユニット40は、複数のギア420を支持する第一部材480と、第一部材480の背面側に固定される第二部材490と、を更に有する。第一部材480及び第二部材490は、複数の翼部3の揺動軸400を、揺動軸400の軸方向に挟み込んで支持する。
【0016】
駆動ユニット40は、複数の翼部3と複数の運動変換機構430との間にそれぞれ設けられた複数の伝達部材440を、更に有する。複数の運動変換機構430と複数の伝達部材440とは、互いに一対一で軸432を介して連結される。複数の翼部3と複数の伝達部材440とは、互いに一対一で対応し且つ互いに独立して揺動軸400を中心に揺動可能であり、且つ翼部3及び伝達部材440の各々に設けられた磁性体の磁力によって互いに連結可能である。
【0017】
以下、本例の駆動ユニット40における上記構造を具体的に説明する。
図5及び
図6に示すように、駆動源410はステッピングモータであり、駆動源410から上方に延びる回転軸411を回転可能である。回転軸411は、その上端に設けられた、上下方向に延びる円筒ウォーム412を含む。二つの翼部3L,3Rに対応して、二つのギア420L,420Rと、二つの運動変換機構430L,430Rと、二つの伝達部材440L,440Rとが設けられる。
【0018】
駆動源410の上側には、左側のギア420Lと右側のギア420Rが、回転軸411を挟んで左右対称に設けられる。これらのギア420L,420Rは、それぞれ前後方向に延びる軸421を中心に回転可能であり、且つ円筒ウォーム412と噛み合う円盤状のウォームホイールである。円筒ウォーム412とギア420L,420Rとは、二組のウォームギアを構成する。
【0019】
第一部材480は、駆動源410の上側に設けられ、前部材481と後部材482とからなる。前部材481及び後部材482は上下左右方向に延びる板状部材であり、前部材481の背面側に後部材482が固定される。駆動源410の上面が前部材481の下面及び後部材482の下面に固定されることで、駆動源410は第一部材480の下方で支持される。
【0020】
第一部材480の下部における前部材481と後部材482との間に、円筒ウォーム412とギア420L,420Rとが収容される空間が形成される。第一部材480はこの空間において、円筒ウォーム412と各ギア420L,420Rとを回転可能に支持する。各ギア420L,420Rの背面には、軸421から径方向外側にずれた位置に、前後方向に延びる軸431が連結される。各ギア420L,420Rに連結する軸431は、後部材482に形成された開口を貫通して、第一部材480の後方に突出する。
【0021】
第二部材490は、第一部材480の背面側に固定される、上下左右方向に延びる板状部材である。第一部材480と第二部材490との間に形成される空間470には、二つの揺動軸400L,400Rが設けられる。揺動軸400L,400Rは、正面視で回転軸411の軸線を挟んで左右対称をなし、且つ前後方向に延びる円柱体である。揺動軸400L,400Rの各々は、第一部材480及び第二部材490によって軸方向に挟み込まれて、その前端が第一部材480で支持され、且つその後端が第二部材490で支持される。
【0022】
空間470には、左側の運動変換機構430Lと右側の運動変換機構430Rが、正面視で回転軸411の軸線を挟んで左右対称に設けられる。これらの運動変換機構430L,430Rは、前後方向と直交をなすように上下両側に延びる板状部材である。ギア420Lに連結する軸431の後端が運動変換機構430Lの下端部を貫通して連結され、且つギア420Rに連結する軸431の後端が運動変換機構430Rの下端部を貫通して連結される。
【0023】
空間470には、左側の伝達部材440Lと右側の伝達部材440Rが、運動変換機構430L,430Rの後側で左右対称に設けられる。左側の翼部3Lの翼軸310と右側の翼部3Rの翼軸310とが、運動変換機構430L,430Rの後側で左右対称に設けられる。揺動軸400Lは、翼部3Lの翼軸310の右端部と伝達部材440Lの右端部を貫通して、この翼軸310と伝達部材440Lとを同軸で回転可能に支持する。揺動軸400Rは、翼部3Rの翼軸310の左端部と伝達部材440Rの左端部を貫通して、この翼軸310と伝達部材440Rとを同軸で回転可能に支持する。
【0024】
運動変換機構430Lは、ギア420Lの背面側から上側に向かって、且つ揺動軸400Lの左側に向かって延びる。運動変換機構430Lは、運動変換機構430Lの上端部を貫通する軸432によって、左右に延びる伝達部材440Lの正面に連結される。運動変換機構430Lは、ギア420Lに連結する軸431と伝達部材440Lに連結する軸432との二点を中心として回転可能な連結リンクであり、ギア420Lの回転運動を伝達部材440Lの揺動運動に変換する。
【0025】
同様に、運動変換機構430Rは、ギア420Rの背面側から上側に向かって、且つ揺動軸400Rの右側に向かって延びる。運動変換機構430Rは、運動変換機構430Rの上端部を貫通する軸432によって、左右に延びる伝達部材440Rの正面に連結される。運動変換機構430Rは、ギア420Rに連結する軸431と伝達部材440Rに連結する軸432との二点を中心として回転可能な連結リンクであり、ギア420Rの回転運動を伝達部材440Rの揺動運動に変換する。
【0026】
伝達部材440Lは、揺動軸400Lから径方向に離れた位置に、複数の磁性体441が装着される。翼部3Lの翼軸310にも、揺動軸400Lから径方向に離れた位置に、複数の磁性体341が装着される。一例として、伝達部材440Lのうち、軸432を挟んで揺動軸400Lとは反対側にある左側部分に、二つの磁性体441が設けられる。翼部3Lの翼軸310にも、二つの磁性体441に対応する二つの磁性体341が設けられる。各磁性体341,441は、前後方向に延びる円柱状の磁石である。
【0027】
伝達部材440Lの磁性体441と翼部3Lの磁性体341とは、揺動軸400Lからの距離が略等しく、且つ互いに極性が異なる。そのため、伝達部材440Lと翼部3Lの翼軸310とが揺動軸400Lから略同じ方向に並んで延びる場合、磁性体441と磁性体341とが近接して互いに引き合う。このとき伝達部材440Lと翼部3Lの翼軸310とは、互いに前後に重なった状態で磁力によって連結される。
【0028】
同様に、伝達部材440Rは、揺動軸400Rから径方向に離れた位置に、複数の磁性体441が装着される。翼部3Rの翼軸310にも、揺動軸400Rから径方向に離れた位置に、複数の磁性体341が装着される。これらの磁性体441と磁性体341とは、揺動軸400Rからの距離が略等しく、且つ互いに極性が異なる。伝達部材440Rと翼部3Rの翼軸310とは、揺動軸400Rから略同じ方向に並んで延びる場合、互いに前後に重なった状態で磁力によって連結される。
【0029】
図4及び
図5に示すように、送風装置1は、駆動ユニット40の上側を収容する上カバー41Aと、駆動ユニット40の下側を収容する下カバー41Bとからなる本体カバー41を備える。複数の翼部3の各々は、揺動軸400を中心に揺動することで前側に送風する。駆動ユニット40は、複数のギア420と駆動源410とを支持する第一部材480を更に有する。駆動源410は、第一部材480の下側に設けられ、且つ第一部材480よりも前側に突出する。駆動源410の少なくとも一部を収容する下カバー41Bの前端は、上カバー41Aの前端よりも前側に位置する。
【0030】
本例では、上カバー41Aは、前後方向の厚みよりも上下左右方向の長さが大きい箱状である。上カバー41Aの内部には、駆動ユニット40の上側に配置された各種部材、即ち第一部材480や第二部材490が収容される。第一部材480の内側で支持されたギア420L,420Rや、空間470に配置された運動変換機構430L,430R及び伝達部材440L,440Rも、上カバー41Aの内部に収容される。
【0031】
下カバー41Bは、上下方向の厚みよりも前後左右方向の長さが大きい箱状であり、上カバー41Aの下側に設けられる。駆動源410は、先述のように第一部材480の下側で支持されており、且つその直径が第一部材480の前後方向長さよりも大きい。従って、駆動源410は第一部材480の下側において、第一部材480よりも前側に突出する。駆動源410の略全体は、下カバー41Bの内部に収容される。下カバー41Bも第一部材480よりも前側に突出するため、下カバー41Bの前端が上カバー41Aの前端よりも前側に位置する。
【0032】
これにより本体カバー41では、下カバー41Bのほうが上カバー41Aよりも、翼部3の送風方向の下流側に延びる。例えば上カバー41Aと下カバー41Bとが互いに同じ位置まで前側に突出する場合と比べて、翼部3L,3Rから前側への送風が上カバー41Aに接触して減衰することを抑制できる。なお本例では、上カバー41Aの略全体を覆うように装飾カバー42が設けられる(
図1~
図3参照)。装飾カバー42は前側に向かって半球状に突出しているため、翼部3L,3Rからの送風が装飾カバー42の表面に沿って前側に流れやすい。従って、翼部3L,3Rから前側への送風が上カバー41A及び装飾カバー42に接触して減衰することを抑制できる。
【0033】
図5に示すように、送風装置1は、設置面よりも上方で駆動ユニット40を支持する、上下方向に延びる支柱9を備える。駆動ユニット40は、支柱9の上端よりも上方に位置し、且つ支柱9と上下方向に並ぶ。このように、駆動ユニット40が支柱9の真上に配置されることで、相対的に重量の大きい駆動ユニット40の荷重が、重力方向に沿って支柱9に加わりやすい。従って、支柱9が駆動ユニット40を安定的に支持でき、送風装置1の姿勢が安定する。
【0034】
図5に示すように、複数の翼部3の各々は、揺動軸400から揺動軸400と交差する方向に延びる翼軸310を有する。翼軸310の少なくとも一部の前後方向位置は、支柱9の前後方向位置と一致する。
【0035】
本例では、翼部3Lの翼軸310は揺動軸400Lから直交に左側へ延び、且つこの翼軸310の一部が側面視で支柱9の一部と上下方向に並ぶ。翼部3Rの翼軸310は揺動軸400Rから直交に右側へ延び、且つ翼軸310の一部が側面視で支柱9の一部と上下方向に並ぶ。このように、支柱9は各翼部3R,3Lの翼軸310と重複した前後方向位置にあるため、翼部3R,3Lの総荷重が重力方向に沿って支柱9に加わりやすい。従って、支柱9が翼部3R,3Lを安定的に支持でき、送風装置1の姿勢が安定する。
【0036】
図5に示すように、送風装置1は、支柱9に連結され、支柱9の背面側から上方に延びる固定部材900を備える。駆動ユニット40の後面のみが、固定部材900の前面側に固定される。
【0037】
本例では、支柱9の上端に、固定部材900が固定されている。固定部材900は、支柱9の上端から後方に延び、その後端から上方に延びる側面視でL字の板状部材である。支柱9の上方では、固定部材900の上部における前面側に、第二部材490の背面が固定される。即ち、駆動ユニット40のうちで第二部材490のみが、固定部材900に固定される。
【0038】
これにより支柱9は、支柱9の近傍にある駆動源410を避けて、固定部材900に固定された第二部材490を介して、駆動ユニット40の全体を支持できる。駆動源410を含む駆動ユニット40の荷重や振動は、固定部材900を介して間接的に支柱9に加わる。例えば駆動ユニット40の荷重や振動が支柱9に直接的に加わる場合と比べて、支柱9に加わる荷重や振動が低減されるため、支柱9の破損や劣化を抑制できる。
【0039】
<駆動ユニットの動作>
駆動ユニット40の動作を説明する。
図9は、第一部材480を取り除いた駆動ユニット40の他の正面図である。
図10は、駆動ユニット40の斜視図である。
図11は、翼部3Lの変位を説明するための送風装置1の正面図である。
図11では、理解を容易にするために、基準点P0、上死点P1、下死点P2、及び解除点P3の各位置に変位した翼部3Lを一図に示している。
【0040】
図6~
図8に示すように、駆動源410はメイン基板からの駆動信号に応じて、例えば平面視で時計回り方向に回転軸411を回転駆動する。回転軸411に伴って、円筒ウォーム412と噛み合う二つのギア420L,420Rは、各々の軸421を中心に回転する。このとき、上下方向を中心とした回転軸411の回転が、前後方向を中心としたギア420L,420Rの回転に変換される。ギア420Lは正面視で反時計回り方向に回転し、ギア420Rは正面視で時計回り方向に回転する。
【0041】
複数の運動変換機構430は、複数のギア420の回転に連動して複数の伝達部材440をそれぞれ回転させることで、複数の伝達部材440と磁力によって連結されている複数の翼部3をそれぞれ揺動させる。
【0042】
本例では、ギア420Lの回転に伴って、運動変換機構430Lの下部に連結された軸431が、ギア420Lの回転軸411を中心として正面視で反時計回り方向に回転する。この軸431の回転に伴って運動変換機構430Lが上下に揺動し、運動変換機構430Lの上部と軸432で連結された伝達部材440Lも揺動軸400Lを中心として上下に揺動する。
【0043】
同様に、ギア420Rの回転に伴って、運動変換機構430Rの下部に連結された軸431が、ギア420Rの回転軸411を中心として正面視で時計回り方向に回転する。この軸431の回転に伴って運動変換機構430Rが上下に揺動し、運動変換機構430Rの上部と軸432で連結された伝達部材440Rも揺動軸400Rを中心として上下に揺動する。
【0044】
このように駆動源410の回転駆動によって、伝達部材440L,440Rが左右対称に上下に揺動する。これに伴って、伝達部材440L,440Rと磁力で連結された各翼部3L,3Rの翼軸310も、それぞれ揺動軸400L,400Rを中心として左右対称に上下に揺動する。これにより翼部3Lと翼部3Rとが、装置本体4の両側で左右対称に上下に揺動する。
【0045】
翼部3の揺動範囲の大きさは、翼軸310と連結された伝達部材440を揺動させる運動変換機構430の上下方向の変位幅に依存する。運動変換機構430の上下方向の変位幅は、ギア420と共に回転する軸431の上下方向の変位幅に対応する。
【0046】
図6~
図8に示すように、運動変換機構430の軸431がギア420の軸421と同じ高さにある場合、翼部3は揺動軸400から略水平に延び、翼部3の翼端が基準点P0(
図11参照)に配置される。基準点P0は、翼部3の揺動範囲の中間位置である。この状態からギア420が90度回転すると、軸431がその可動範囲の最下点である軸421の直下に変位する。このとき、翼部3は揺動軸400から斜め下方に傾斜するように下側に回転して、翼部3の翼端が基準点P0から下死点P2(
図11参照)に変位する。下死点P2は、翼部3の揺動範囲の下限位置である。
【0047】
この状態からギア420が更に90度回転すると、軸431が軸421と同じ高さに戻る。このとき翼部3は、揺動軸400から水平に延びるように上側に回転して、翼部3の翼端が下死点P2から基準点P0に変位する。この状態からギア420が更に90度回転すると、
図9及び
図10に示すように、軸431がその可動範囲の最上点である軸421の直上に変位する。このとき、翼部3は揺動軸400から斜め上方に傾斜するように上側に回転して、翼部3の翼端が基準点P0から上死点P1(
図11参照)に変位する。上死点P1は、翼部3の揺動範囲の上限位置である。
【0048】
この状態からギア420が更に90度回転すると、駆動ユニット40は
図6~
図8に示す状態に戻り、軸431が軸421と同じ高さに戻る。このとき、翼部3は揺動軸400から水平に延びるように下側に回転して、翼部3の翼端が上死点P1から基準点P0に変位する。従って、駆動源410がギア420を連続して回転させることで、翼部3は上死点P1と下死点P2との間を往復するように揺動する。本例では、ギア420が二つのギア420L,420Rを回転させるため、二つの翼部3L,3Rが左右対称に揺動する。
【0049】
例えば送風装置1を使用しない場合、ユーザは手動で翼部3を伝達部材440から引き離すように下側に回転させることで、翼軸310と伝達部材440との磁力による連結を解除する。この場合、翼部3は自重によって、揺動軸400から垂下した解除点P3(
図11参照)まで落下するように揺動する。これにより、未使用状態の送風装置1では、二つの翼部3L,3Rが解除点P3に配置されることで、鳥が翼を折り畳んで休息しているような外観で、翼部3L,3Rをコンパクトに収容できる。
【0050】
図1~
図4に示すように、複数の翼部3の各々は、揺動軸400から揺動軸400と交差する方向に延び、且つ本体カバー41の内側から外側に突出する翼軸310を有する。本例では、各翼部3L,3Rの翼軸310が、揺動軸400から左右両側に直交に延び、上カバー41Aの内側から外側に突出する。
【0051】
上カバー41Aの左右両側の各々には、上下方向に延びるスリット491が設けられる。装飾カバー42の左右両側の各々には、スリット491に対応して上下方向に延びるスリット492が設けられる。翼部3Lの翼軸310は、左側のスリット491,492を介して、装置本体4の外側に突出する。翼部3Rの翼軸310は、右側のスリット491,492を介して、装置本体4の外側に突出する。翼部3L,3Rの翼軸310が夫々対応するスリット491,492の内部で上下に揺動することで、翼部3L,3Rは上述したように変位できる。
【0052】
送風装置1の構造は、上記実施形態に限定されない。
図12は、変形例に係る、装飾カバー42を取り除いた装置本体4の斜め上方から視た斜視図である。
図13は、変形例に係る、翼軸310の斜視図である。
図12では、上死点P1にある翼部3Rの翼軸310と、基準点P0、上死点P1、及び解除点P3の各位置に変位した翼部3Lの翼軸310とを一図に示している。なお、翼部3が送風装置1に装着され且つ基準点P0に変位しているとき、翼部3の上下前後左右の方向定義は、送風装置1の上下前後左右の方向定義と略一致する。
図13の例では、翼部3Lの方向定義は送風装置1の方向定義と略一致している。
【0053】
図12及び
図13に示す変形例では、翼軸310は、揺動軸400を中心とした揺動方向に貫通する開口部313と、開口部313を挟んだ両側において、揺動軸400と交差する方向に延びる一対の分割軸314A,314Bとを有する。本体カバー41は、揺動方向に延びるように本体カバー41を貫通する一対のスリット491A,491Bを有する。一対の分割軸314A,314Bは、一対のスリット491,491B内において、揺動方向に揺動可能である。
【0054】
本変形例では、翼部3Lの翼軸310は、揺動軸400Lから略直交に延びる主軸部311に、翼部3Lの揺動方向に沿って上下に貫通する開口部313が設けられる。開口部313は、二つの磁性体341を挟んで、揺動軸400Lが挿入される孔312とは反対側に設けられる。一対の分割軸314A,314Bは、主軸部311のうちで、開口部313の前後両側で揺動軸400Lの径方向に延びる部分である。
【0055】
上カバー41Aの左右両側の各々には、上下方向に延びる一対のスリット491A,491Bが設けられる。翼部3Lが上下に揺動するとき、一対の分割軸314A,314Bは、それぞれ一対のスリット491A,491Bの内側で上下に揺動する。翼部3Rも同様である。一対のスリット491A,491Bの各々は、上記実施形態のスリット491よりも前後の幅が狭い。従って、人間の指などがスリット491A,491Bに進入して本体カバー41内の駆動ユニット40に触れることが防止される。
【0056】
<翼部>
翼部3の構造を説明する。
図14は、翼部3Lの斜め下方から視た斜視図である。
図15は、翼部3Lの部品展開図である。
図16は、製造工程における翼部3Lの模式的な正面図である。
図14及び
図15は、上下反転された状態の翼部3Lを示す。以下では、左右一対の翼部3のうち、左側の翼部3Lを適宜参照して説明する。右側の翼部3Rは翼部3Lと左右対称であるため、その説明を省略する。翼部3Lの右側は揺動軸400L(
図8参照)に接続される本体側であり、翼部3Lの左側は揺動軸400Lから離れた翼端側である。
【0057】
先述したように、翼部3が送風装置1に装着され且つ基準点P0に変位しているとき、翼部3及び送風装置1は互いの方向定義が略同じである。
図14~
図16は、翼部3が送風装置1から取り外された単体の状態を示し、この状態では翼部3の方向定義が送風装置1の方向定義と必ずしも一致しない。このような単体の翼部3Lでは、
図14の右下側、左上側、右上側、左下側、下側、上側を、それぞれ、翼部3Lの前側、後側、左側、右側、上側、下側とする。以下では、単体の翼部3Lを説明する場合、翼部3Lの方向定義を参照する。
【0058】
図14及び
図15に示すように、翼部3は、揺動軸400と交差する方向に延びて、揺動軸400を中心に揺動可能な可撓性の部材である。翼部3は、棒状の翼軸310と、翼軸310よりも剛性の低い二つの布状の翼面体320とを有する。翼軸310は、二つの翼面体320の間に挟み込んで固定されている。
【0059】
本例では、翼軸310は、相対的に剛性が高く撓み難い材料で形成され、例えばPP等の強化プラスチックや軽金属等で形成される。翼軸310は、翼部3の揺動時に生じる振動や空気抵抗を受けても撓み難い。翼軸310は、シート状の翼面体320を支持するフレームとして機能する。
【0060】
翼面体320は、揺動軸400の径方向及び軸方向と略平行な面状に延びるシート部材である。翼面体320は、薄手の状態で高い弾性や伸長性を発揮できる材料で形成され、例えば布(例えば不織布)、樹脂フィルム(例えばPP)、ゴム系(例えばシリコンゴム)等で形成される。翼面体320は、相対的に剛性が低いため、翼部3の揺動時に生じる振動や空気抵抗を受けると撓み易い。
【0061】
翼面体320は、揺動軸400の径方向に長手であり、且つ揺動軸400の軸方向に短手である。例えば翼部3Lでは、左方向が揺動軸400Lの径方向に対応し、前後方向が揺動軸400Lの軸方向に対応する。そのため翼部3Lの翼面体320は、左右方向に長手であり且つ前後方向に短手である。この翼面体320は、平面視で横長の略矩形状であるが、左後角及び右前角が円弧状に大きな丸みを帯びている。
【0062】
翼軸310の主体をなす主軸部311は、二つの翼面体320の間に挟み込んで固定され、且つ翼部3の後端辺に沿って配置される。例えば翼部3Lでは、左右に延びる主軸部311の左端が、翼部3Lの円弧状の左後角に位置する。主軸部311の右部は、翼部3Lの右後角の若干前側から二つの翼面体320の外側に突出する。主軸部311の右端には、揺動軸400Lが挿入される孔312が設けられる。主軸部311では、孔312と翼面体320との間に、二つの磁性体341が設けられる。
【0063】
翼軸310は、揺動軸400と交差する方向に延びる主軸部311と、主軸部311と交差する方向に延びる複数の副軸部332とを含む。例えば翼部3Lでは、翼軸310は二つの翼面体320の間に配置される補強部材330を有する。補強部材330は、翼軸310と同様に翼面体320よりも剛性が高い材料で形成され、例えばPP等の強化プラスチックや軽金属等で形成される。
【0064】
補強部材330は、主軸部311と対応する形状で左右方向に延びる基部331と、基部331から前側に延びる複数の副軸部332とを有する。本例の翼部3Lでは、最も左側の副軸部332を除いて、四つの副軸部332が基部331から直線状に前方へ延びる。最も左側の副軸部332は、基部331の左端から翼部3の左前角に向かって、翼部3の左辺に沿って円弧状に延びる。複数の副軸部332は、略等間隔で左右方向に並ぶ。補強部材330は主軸部311の上側に配置されて、基部331の下面と主軸部311の上面とが互いに重なるように接着剤等で固定される。
【0065】
複数の副軸部332は、翼面体320のうちで主軸部311によって支持されない部分を支持して、翼部3全体の剛性を高める。補強部材330は、翼軸310と予め一体の部材として形成されてもよい。翼軸310は、補強部材330を有するのに代えて、複数の副軸部332が主軸部311から突出するように一体形成されてもよい。
【0066】
二つの翼面体320は、互いの対向する面同士が接合するように接着又は溶着されている。本例では、二つの翼面体320は、上シートである翼面体320Aと、下シートである翼面体320Bとからなる。翼面体320Aの下側には、翼面体320Aとほぼ同形の補強シート335が固定される。補強シート335は、翼部3の剛性を更に高めるためのシート状の部材であり、例えばPP等のプラスチック製の不織布である。翼面体320Aと補強シート335とは、互いの対向する面同士が接合するようにスプレー糊等で接着される。
【0067】
補強シート335の下側には、翼面体320Aとほぼ同形の翼面体320Bが固定される。補強シート335と翼面体320Bとは、補強部材330が固定された翼軸310を挟み込んで、互いの対向する面同士が接合するようにスプレー糊等で接着される。補強シート335と翼面体320Bとの間では、補強部材330全体の上面が、補強シート335の下面と面接触するように、スプレー糊や両面テープで接着される。また主軸部311の下面及び複数の副軸部332の下面が、翼面体320Bの上面と面接触するように、スプレー糊や両面テープで接着される。
【0068】
これにより、二つの翼面体320A,320Bは、互いの対向する面同士が補強部材330を挟んで間接的に接合するように接着される。これに代えて、二つの翼面体320A,320Bは、互いに溶着されてもよい。二つの翼面体320A,320Bは、補強部材330を挟み込まずに、互いの対向する面同士が直接的に接合するように接着又は溶着されてもよい。
【0069】
複数の副軸部332は、主軸部311から離れるほど上側に向かうように湾曲した状態で、二つの翼面体320の間に挟み込んで固定されている。本例では、翼部3Lの製造工程において、まず作業者は補強シート335が接着された翼面体320Aを用意し、且つ翼軸310に接着された補強部材330を用意する。次に作業者は、
図16に示すように、翼面体320Aの重力方向の上流側に、この補強部材330を配置する。
図16の例では、翼部3Lの下側が重力方向の上流側であり、翼部3Lの上側が重力方向の下流側である。作業者は、翼軸310の主軸部311を重力方向の上流側に浮かせることで、基部331から前方に延びる各副軸部332の前端側を自重によって重力方向の下流側に湾曲させる。
【0070】
次に作業者は、翼軸310に接着された補強部材330のうち、補強シート335と対向する表面に両面テープを貼り付ける。作業者は補強シート335に対して、上記のように各副軸部332が湾曲した状態で、主軸部311を近接させる。これにより、補強部材330における前後両端の二点P11,P12で、補強シート335が補強部材330に接着する。その後に作業者は、各副軸部332を直線状に延びる姿勢に戻しつつ、補強部材330のうちで補強シート335と対向する面全体を、補強シート335に接着させる。最後に作業者は、補強部材330が固定された翼軸310を挟み込むように、翼面体320Bを補強シート335に接着する。
【0071】
これにより、完成後の翼部3Lでは、上側の翼面体320Aにおいて前後方向に縮む張力が大きくなる。例えば翼部3Lが揺動軸400Lから水平に延びる状態では、自重によって翼部3Lの前端側が垂れ下がるおそれがある。これに対して本例の翼部3Lは、上側の翼面体320Aに作用する前後方向の張力によって、送風方向と平行な前後方向の剛性が高まるため、自重の作用に抗って水平に延びる姿勢を維持できる。
【0072】
図14及び
図15に示すように、主軸部311は、二つの翼面体320の間に配置される第一部分311Aと、第一部分311Aから二つの翼面体320の外部に突出する第二部分311Bとを含む。翼部3は、第一部分311Aと第二部分311Bとの境界部311Cに固定されて、境界部311Cと二つの翼面体320との隙間を塞ぐ閉塞部材350を、更に有する。
【0073】
本例の翼部3Lでは、主軸部311において第二部分311Bが第一部分311Aから右側に延びる。第一部分311Aと第二部分311Bとの境界部311Cは、翼部3Lの右後角の若干前側に配置される。閉塞部材350は、上ケース351と下ケース352とからなる。作業者は、境界部311Cの上下両側から翼面体320A,320Bを挟み込むように、上ケース351と下ケース352とを組み付ける。
【0074】
閉塞部材350は、境界部311Cの周囲を取り囲む翼面体320A,320Bの開口縁を、外部に露出しないように収容する。例えば翼部3Lの揺動時には、翼面体320A,320Bが大きな負荷を受けて境界部311Cから剥離しやすい。閉塞部材350が境界部311Cと翼面体320A,320Bとの隙間を塞ぐことで、翼面体320A,320Bの剥離が抑制される。
【0075】
翼部3の構造は、上記実施形態に限定されない。
図17は、変形例に係る翼部3Lの模式的な部品展開図である。
図18は、変形例に係る翼部3Lの模式的な底面図である。
図17及び
図18に示すように、本変形例では、翼軸310は第一部材380と第二部材390とで構成される。第一部材380は、二つの翼面体320の間に挟み込んで固定される。第二部材390は、第一部材380に対して着脱可能である。
図17及び
図18は、
図14と同様に単体の翼部3Lを示し、且つ翼部3Lの方向定義を示す。
【0076】
例えば翼部3Lでは、第一部材380は左右に延びる筒状体381を有する。筒状体381の内部には、筒状体381の軸方向に延びる軸穴383が形成される。軸穴383は、筒状体381の右端で開口する。筒状体381の右端には、筒状体381の径方向外側へ円環状に突出する連結部382が設けられる。第二部材390は、軸穴383に対応する形状で左右に延びる棒状の挿入軸391を有する。挿入軸391の右端には、挿入軸391の径方向外側へ円環状に突出する連結部392が設けられる。
【0077】
変形例に係る翼部3Lの製造工程において、まず作業者は、第一部材380を二つの翼面体320の間に挟み込んで接着剤などで固定する。次に作業者は、第二部材390の挿入軸391を第一部材380の軸穴383に挿入し、第一部材380の連結部382と第二部材390の連結部392とを左右に重ね合わせる。最後に作業者は、互いに重ね合った連結部382,392を閉塞部材350で固定する。閉塞部材350は、上ケース351と下ケース352とからなる。作業者は、連結部382,392の上下両側から翼面体320A,320Bを挟み込むように、上ケース351と下ケース352とを組み付ける。これにより翼部3Lでは、互いに着脱可能な第一部材380と第二部材390とからなる翼軸310が、二つの翼面体320に一体に固定される。
【0078】
翼部3の用途は、送風装置1に用いる態様に限定されず、翼部3を単体の扇子として用いてもよい。この扇子は、翼面体320と翼軸310とを有する。翼軸310は、翼面体320の一方端に沿って延び、且つ翼軸310の延伸方向の一端が翼面体320から離隔するように突出する。翼面体320の他方端側は、翼面体320の一方端側よりも剛性が低い。本例では、
図14に示すように、揺動軸400から取り外された翼部3を、扇子として使用できる。例えばユーザは、翼軸310のうちで翼面体320から突出する第二部分311Bを握って、翼部3で扇ぐことができる。
【0079】
<翼部の送風原理>
翼部3の送風原理を説明する。
図19は、翼部3Lの送風態様を説明するための模式的な正面図である。
図20は、翼部3Lの送風態様を説明するための模式的な側面図である。
図21は、翼部3Lの送風態様を説明するための模式的な平面図である。
図20では、上死点P1及び下死点P2にある翼部3Lの翼端を実線で示し、且つ撓んでいない状態の翼部3Lを点線で示す(後述の
図22及び
図23も同様)。なお、
図19~
図23の例では、
図1と同様に送風装置1に装着された翼部3Lを示し、且つ送風装置1の方向定義を示す。
【0080】
先述のように駆動ユニット40は、翼部3のうちで揺動軸400とは反対側の翼端が上死点P1と下死点P2との間で往復するように、翼部3を上下に揺動させる駆動部である(
図11参照)。この駆動部は、翼端が上死点P1と下死点P2の何れかに達したときに、翼部3のうちで揺動軸400と平行な方向の端部が撓むように、翼部3を揺動させる。
【0081】
本例では、翼部3のうちで揺動軸400と平行な前後方向の両端部は、翼軸310が配置される後翼端と、翼軸310とは反対側の前翼端である。このうち翼部3の前翼端が、上死点P1と下死点P2の何れかに達したときに撓む。即ち、
図19に示すように、翼部3Lの揺動時には、剛性の高い翼軸310は撓むことが抑制されつつ上下動すると共に、翼面体320も翼軸310に追従して上下動する。このとき、
図20に示すように、剛性の低い翼面体320の前翼端が、翼軸310を中心としたねじれ運動によって撓む。
【0082】
詳細には、翼部3が上側に揺動している間は、翼面体320の前翼端が空気抵抗を受けて下側に撓む。その後、翼部3が上死点P1に達して一時停止すると、翼面体320の前翼端は弾性力によって上死点P1よりも上側に撓む。一方、翼部3が下側に揺動している間は、翼面体320の前翼端が空気抵抗を受けて上側に撓む。その後、翼部3が下死点P2に達して一時停止すると、翼面体320の前翼端は弾性力によって下死点P2よりも下側に撓む。このように翼部3は、上下揺動時に翼面体320で空気を捕まえて、上死点P1又は下死点P2における翼面体320のしなりによって、捕まえた空気を打ち出す。
【0083】
鳥の羽ばたきは、フラッピング運動、フェザリング運動、リードラグ運動という3つの動作の組合せで構成されることが知られている。フラッピング運動は、羽を体軸に対して上下に動かす動作である。フェザリング運動は、羽を羽前縁部に対してねじる動作である。リードラグ運動は、羽を体軸に対して前後に動かす動作である。翼面体320の上下揺動(
図19参照)は、フラッピング運動を技術的に実現する。翼面体320のねじれ運動(
図20参照)は、フェザリング運動を技術的に実現する。送風装置1は、上記のフラッピング運動とフェザリング運動との組合せによって、鳥の羽ばたきと同様に後方への送風を効率的に実行できる。
【0084】
詳細には、
図19及び
図21に示すように、揺動軸400Lを中心とした翼部3Lのフラッピング運動では、翼面体320の揺動方向下流側を向く面に沿って、空気が揺動軸400Lの径方向外側である左側に流れる。更に、
図20及び
図21に示すように、翼軸310を中心とした翼部3Lのフェザリング運動では、翼面体320の揺動方向下流側を向く面に沿って、空気が翼軸310の径方向外側である前側に流れる。これにより、
図21に示す翼部3Lでは、その表面に沿って右側から左側に供給される空気が、一つの空気流塊をなす気流Fとして前方に送出される。
【0085】
図20に示すように、翼部3Lが上側に揺動するとき、翼面体320の上面から空気流塊F1が送出される。このとき空気流塊F1は、上死点P1において上側に撓む翼面体320の前翼端から、水平方向よりも上向きに送出される。一方、翼部3が下側に揺動するとき、翼面体320の下面から空気流塊F2が送出される。このとき空気流塊F2は、下死点P2において下側に撓む翼面体320の前翼端から、水平方向よりも下向きに送出される。翼部3Lの上下揺動によって、翼面体320から上向きの空気流塊F1と下向きの空気流塊F2とが交互に送出され、これらの空気流塊F1,F2が合成された気流Fを生じさせることで、乱れの少ない面的な気流Sを生成できる。
【0086】
メイン基板の制御部は、翼部3を上下揺動させる速度によって、翼部3が送出する風量を制御できる。翼部3を上下揺動させる速度が速いほど、翼部3の揺動するピッチが短くなり、翼部3が送出する風量が増加する。ピッチは、揺動する翼部3の翼端が基準点P0から上死点P1及び下死点P2を経て基準点P0に戻るまでの時間の長さである。これに代えて制御部は、翼部3を上下揺動させる距離又は角度によって、翼部3が送出する風量を制御してもよい。
【0087】
メイン基板の制御部は、以下のように翼部3が送出する気流の風向きを制御してもよい。
図22及び
図23は、変形例に係る翼部3Lの送風態様を説明するための側面図である。
図22の変形例において制御部は、翼部3を上側に揺動させる速度S1を、翼部3を下側に揺動させる速度S2よりも速くする。この場合、空気流塊F1は空気流塊F2よりも大きくなるため、空気流塊F1,F2が合成された気流Fは水平方向よりも上向きに送出される。また、制御部は速度S2を速度S1よりも速くすることで、気流Fを水平方向よりも下向きに送出できる。
【0088】
図23の変形例では、送風装置1は翼軸310をその軸線方向を中心に回転させる機能を有する。制御部は、翼面体320の上面が後方上側を向くように、翼軸310を回転させる。この場合、空気流塊F1,F2は翼軸310の回転前よりも上向きに送出されるため、気流Fは水平方向よりも上向きに送出される。また、制御部は翼面体320の下面が後方下側を向くように翼軸310を回転させることで、気流Fを水平方向よりも下向きに送出できる。
【0089】
従来の自動団扇では、団扇の後側に設けられた駆動機構が団扇を左右に揺動させるため、駆動機構と団扇とが送風方向に沿って直列に並ぶ。このような自動団扇を例えば壁際に配置すると、壁から自動団扇の前端までの突出幅が大きくなるため、設置スペースの確保が難しい場合がある。これに対して、本実施形態の送風装置1によれば、送風方向と平行な前後方向の大きさが抑制されるため、従来の旋回流とは異なる手法で自然な風を供給でき、且つ設置スペースの問題を生じにくい。
【0090】
<操作部>
操作部90を説明する。
図24は、操作部90の平面図である。
図1及び
図24に示すように、送風装置1は、羽根状又は翼状の可動体を用いて送風する送風部2と、人間が送風部2の送風動作を指示するための操作部90と、を備える。操作部90は、送風動作に関する複数のボタン91を含む。複数のボタン91の各々は、翼又は羽根を有する生物を表す画像によって、対応する送風動作を視覚的に示すアイコンを有する。
【0091】
本例の送風装置1では、送風部2は、各々の揺動軸400を中心に揺動可能な二つの翼部3L,3Rを有し、二つの翼部3L,3Rが上死点P1と下死点P2との間で上下に揺動する往復運動によって送風する。スタンド8の内部には、メイン基板に接続された操作基板が収容されている。操作部90はこの操作基板に設けられ、複数のボタン91はスタンド8の上面に配置される。複数のボタン91の各々は、二つの羽根又は翼を有する生物を表した、互いに異なるアイコンを有する。具体的には、各ボタン91には、二つの翼部3L,3Rに対応する二つの翼を有する鳥のアイコンが付されており、これらのアイコンが各々異なる送風動作を視覚的に示す。
【0092】
メイン基板は、送風装置1の動作を制御する制御部を有する。この制御部は、操作部90から指示された送風動作に基づいて、翼部3L,3Rの揺動を制御する。制御部は、MCU(Micro Control Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)でもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他の演算機能を有する回路でもよい。
【0093】
図24に示すように、複数のボタン91は、送風部2に送風を開始又は/及び停止させる電源ボタン91Aを含む。電源ボタン91Aのアイコンは、飛行していない状態の生物を表す。本例では、操作部90は三つのボタン91を有する。左側のボタン91が、電源ボタン91Aである。電源ボタン91Aには、飛行していない状態の鳥のアイコンが付されている。
【0094】
送風装置1は電源ボタン91Aの操作に応じて、翼部3L,3Rを揺動しないオフ状態と、翼部3L,3Rを揺動するオン状態とに遷移する。人間がオフ状態の送風装置1で電源ボタン91Aを操作すると、メイン基板の制御部は運転動作として、翼部3L,3Rを揺動させる送風運転を実行する。このとき制御部は、デフォルトの送風運転として、例えば後述の弱運転で翼部3L,3Rを駆動する。人間がオン状態の送風装置1で電源ボタン91Aを操作すると、メイン基板の制御部は運転動作として、翼部3L,3Rを停止させる運転停止を実行する。電源ボタン91Aの近傍にある電源ランプ191は、送風装置1がオフ状態のときに消灯し、送風装置1がオン状態のときに点灯する。
【0095】
複数のボタン91は、送風部2に第一送風運転を実行させる第一運転ボタン91Bを含む。第一運転ボタン91Bのアイコンは、飛行している状態の生物を表す。本例では、中央のボタン91が、第一運転ボタン91Bである。第一運転ボタン91Bには、飛行している状態の鳥のアイコンが付されている。第一送風運転は、翼部3L,3Rを一定のピッチで揺動させる定速運転である。
【0096】
第一送風運転は、互いに送風動作が異なる複数の送風モードを含む。第一運転ボタン91Bは、さらに複数の送風モードの何れかを選択的に送風部2に実行させることが可能である。本例では、第一送風運転は、互いに異なる風量で送風する複数の送風モードを含む。メイン基板の制御部は、単位時間あたりの翼部3L,3Rの揺動回数を制御することで、翼部3L,3Rが送風する風量を制御して、複数の送風モードを切り替える。なお、単位時間あたりの翼部3L,3Rの揺動回数は、翼部3L,3Rの揺動速度に比例する。翼部3L,3Rが送風する風量は、翼部3L,3Rが送風する風速に比例する。
【0097】
本例では、第一送風運転は、最も風量の小さい弱運転と、最も風量の大きい強運転と、中間の風量で送風する中運転とからなる三つの送風モードを含む。先述のように、オフ状態の送風装置1で電源ボタン91Aが操作されると、制御部は弱運転で翼部3L,3Rを駆動する。弱運転の実行中に第一運転ボタン91Bが操作されると、制御部は送風モードを中運転に切り替える。中運転の実行中に第一運転ボタン91Bが操作されると、制御部は送風モードを強運転に切り替える。強運転の実行中に第一運転ボタン91Bが操作されると、制御部は送風モードを弱運転に切り替える。
【0098】
このように、ユーザは第一運転ボタン91Bを用いて、第一送風運転において互いに風量が異なる送風モードを切り替えできる。第一運転ボタン91Bの近傍には、弱運転ランプ192A、中運転ランプ192B、及び強運転ランプ192Cが並んで設けられる。弱運転ランプ192Aは弱運転のときに点灯し、弱運転以外のときは消灯する。同様に、中運転ランプ192Bは中運転のときに点灯し、強運転ランプ192Cは強運転のときに点灯する。
【0099】
電源ボタン91Aのアイコンと第一運転ボタン91Bのアイコンとは、いずれも翼を有する生物である鳥類を表す。また、電源ボタン91Aのアイコンと第一運転ボタン91Bのアイコンとは、要部の形態的特徴が共通する生物を表す。形態的特徴とはアイコンの表す生物の形や構造の有する特徴であり、例えば翼の有無やクチバシの有無などの特徴をいう。要部の形態的特徴とは、例えば頭部の形状、翼と比較した頭部の大きさの割合、クチバシの有無、頭部と比較したクチバシの大きさの割合、翼や羽根の形状、体長と比較した翼や羽根の大きさの割合、尾羽の形状、翼と比較した尾羽の大きさの割合など、形態的特徴のなかでもアイコンの表す生物をユーザが見たときに支配的な印象を与える特徴である。
【0100】
本例では、電源ボタン91Aのアイコンが表す生物は、翼を閉じて止まっているものの、翼と尾羽とクチバシとを有し、頭部は翼の1/4程度の大きさの丸みを帯びた形状であり、クチバシが頭部の1/3程度を占めるという形態的特徴を備えている。また、電源ボタン91Bのアイコンが表す生物は、翼を広げて飛んでいるものの、翼と尾羽とクチバシとを有し、頭部は翼の1/4程度の大きさの丸みを帯びた形状であり、クチバシが頭部の1/3程度を占めるという形態的特徴を備えている。従って、電源ボタン91Aのアイコンが表す生物と第一運転ボタン91Bのアイコンが表す生物とは、要部の形態的特徴が共通する生物に該当する。
【0101】
一般的に、哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、魚類、節足動物、軟体動物といった生物の分類において、互いに同一の分類に属する生物は、形態的特徴が類似する生物に該当する。換言すると、リンネ階層分類において互いに同じ綱に属する生物は、形態的特徴が類似する生物に該当する。例えばインコとワシとは、リンネ階層分類において互いに同じ綱である鳥綱に属し、且つ綱よりも下位階級において互いに異なる分類に属するため、形態的特徴が類似する生物に該当する。また、例えば蝙蝠は哺乳類であるが、鳥類と同様に翼を有する。従って、蝙蝠のアイコンは、翼を有する生物を表すアイコンに該当する。
【0102】
複数のボタン91は、送風部2に第一送風運転を実行させる第一運転ボタン91Bと、第一送風運転とは異なる第二送風運転を送風部2に実行させる第二運転ボタン91Cとを含む。第一運転ボタン91Bと第二運転ボタン91Cとは、互いに異なるアイコンによって、対応する送風運転を視覚的に示す。本例では、右側のボタン91が第二運転ボタン91Cである。第二運転ボタン91Cには、第一運転ボタン91Bのアイコンとは異なる鳥であるフクロウのアイコンが付されている。第二運転ボタン91Cのアイコンが表す生物は、翼と尾羽とクチバシに加えて羽角を有し、頭部は翼の1/2程度の大きさであり、クチバシが頭部の1/5程度を占めるという形態的特徴を備えている。
【0103】
第二送風運転は、翼部3L,3Rの揺動するピッチを定期的に又は経時的に変化させるリズム運転である。例えば制御部は、翼部3L,3Rを相対的に高速揺動させる制御と、翼部3L,3Rを相対的に低速揺動させる制御とを所定間隔で交互に繰り返して、ピッチを定期的に変化させるリズム運転を実行してもよい。制御部は、翼部3L,3Rの揺動速度を漸増させる制御と、翼部3L,3Rの揺動速度を漸減させる制御とを所定間隔で交互に繰り返して、ピッチを経時的に変化させるリズム運転を実行してもよい。
【0104】
本例では、第一送風運転の実行中に第二運転ボタン91Cが操作されると、メイン基板の制御部は第二送風運転で翼部3L,3Rを駆動する。第二送風運転の実行中に第二運転ボタン91Cが操作されると、制御部は元の第一送風運転に戻るように翼部3L,3Rを駆動する。第二運転ボタン91Cの近傍にある第二運転ランプ193は、送風装置1が第二送風運転のときに点灯し、第二送風運転以外のときは消灯する。
【0105】
第一運転ボタン91Bのアイコンと第二運転ボタン91Cのアイコンとは、要部の形態的特徴が共通しない、互いに異なる生物を表す。本例では、第一運転ボタン91Bのアイコンはワシを表し、第二運転ボタン91Cのアイコンはフクロウを表す。ワシとフクロウは、何れも翼を有する生物である鳥類を表すため、形態的特徴が類似する生物に該当する。しかし、羽角の有無や翼に対する頭部の大きさといった要部の形態的特徴は異なるため、要部の形態的特徴が共通する生物に該当しない。
【0106】
第二運転ボタン91Cは、複数の送風モードの何れとも異なる送風動作の第二送風運転のみを送風部2に実行させる。本例では、先述のように第一送風運転に含まれる複数の送風モードは、互いの風量が異なるものの、何れも翼部3L,3Rが一定のピッチで揺動される定速運転である。これに対して第二送風運転は、翼部3L,3Rが変動するピッチで揺動されるリズム運転である。第一送風運転では、複数の送風モードの何れが実行されても、第二送風運転と同じ送風動作を実行できない。従ってユーザは第二運転ボタン91Cを操作することで、第一送風運転では実行できない特殊な運転動作である第二送風運転を実行できる。
【0107】
本例では、送風装置1は一対の翼部3L,3Rを備え、全体として鳥を模した外観を有する。これに対応して
図20の操作部90では、電源ボタン91A、第一運転ボタン91B、及び第二運転ボタン91Cが何れも、一対の翼を有する鳥のアイコンを有する。これらのアイコンは鳥の画像によって、各ボタン91の対応する送風動作を視覚的に示唆する。
【0108】
例えば電源ボタン91Aのアイコンは、飛行していない状態の鳥の画像によって、停止中の翼部3L,3Rの揺動を開始させるオン状態と、揺動中の翼部3L,3Rの揺動を停止させるオフ状態とを示唆する。第一運転ボタン91Bのアイコンは、飛行している状態の鳥の画像によって、翼部3L,3Rが揺動する第一送風運転を示唆する。第二運転ボタン91Cのアイコンは、第一運転ボタン91Bとは異なる種類の鳥の画像によって、第一送風運転とは異なる態様で翼部3L,3Rが揺動する第二送風運転を示唆する。
【0109】
操作部90は、上記実施形態に限定されない。
図25は、第一変形例に係る操作部90の平面図である。
図26は、第二変形例に係る操作部90の平面図である。
図27は、第三変形例に係る操作部90の平面図である。
【0110】
図25及び
図26に示す各変形例の操作部90は、上記実施形態と同様に、送風動作に関する複数のボタン91を含む。複数のボタン91の各々は、翼又は羽根を有する生物を表す画像によって、対応する送風動作を視覚的に示すアイコンを有する。各変形例では、複数のボタン91は、互いに異なる風量又は/及び風向きで、送風部2に送風を実行させる複数の調整ボタン292を含む。複数の調整ボタン292は、互いに異なるアイコンによって、対応する風量又は/及び風向きを視覚的に示す。
【0111】
具体的には、各変形例の操作部90には、複数のボタン91として、一つの停止ボタン291と三つの調整ボタン292が設けられる。三つの調整ボタン292は、それぞれ異なる風量に対応する弱ボタン292A、中ボタン292B、及び強ボタン292Cからなる。弱ボタン292Aが操作されると、制御部は送風モードの弱運転を実行する。中ボタン292Bが操作されると、制御部は送風モードの中運転を実行する。強ボタン292Cが操作されると、制御部は送風モードの強運転を実行する。送風装置1が上記送風モードの何れかを実行するオン状態であるときに、停止ボタン291が操作されると、制御部は翼部3L,3Rの揺動を停止して、送風装置1をオフ状態に制御する。
【0112】
各変形例の操作部90では、要部の形態的特徴が共通する鳥のアイコンが、複数のボタン91に付されている。但し各変形例の操作部90では、各ボタン91に付される鳥のアイコンは、対応する送風動作を上記実施形態と異なる表示態様で示唆する。
【0113】
第一及び第二変形例(
図25、
図26参照)では、停止ボタン291のアイコンは、飛行していない鳥の画像によって、翼部3L,3Rの揺動を停止させるオフ状態を示唆する。各調整ボタン292のアイコンは、飛行している鳥の画像によって、翼部3L,3Rを揺動させるオン状態を示唆する。更に各調整ボタン292のアイコンは、画像に表れる鳥の飛行動作によって、対応する送風モードの風量を示唆する。
【0114】
図25の第一変形例では、各調整ボタン292のアイコンが表す鳥は、対応する送風モードの風量が大きいほど、翼の角度が上向きである。
図26の第二変形例では、各調整ボタン292のアイコンが表す鳥は、対応する送風モードの風量が大きいほど、翼で後方に押し出す風が大きい。他の変形例として、各調整ボタン292のアイコンが表す鳥は、対応する送風モードの風量が大きいほど、地上からの飛行位置が高くてもよい。
【0115】
複数の調整ボタン292は、送風部2に第一風量での送風を実行させる第一風量調整ボタンと、送風部2に第一風量より大きい第二風量での送風を実行させる第二風量調整ボタンとを含む。第一風量調整ボタンのアイコンと第二風量調整ボタンのアイコンとは、要部の形態的特徴が共通する生物を表す。第二風量調整ボタンのアイコンは、第一風量調整ボタンのアイコンよりも、翼又は羽根を大きく広げている生物を表す。
【0116】
本例では、
図25の第一変形例において、弱ボタン292Aと中ボタン292Bとは、第一風量調整ボタンと第二風量調整ボタンとの関係にある。弱ボタン292Aのアイコンと中ボタン292Bのアイコンとは、何れも一対の翼を有する鳥を表す。中ボタン292Bのアイコンは、弱ボタン292Aのアイコンと比べて、翼の角度が上向きであるため、鳥が翼をより大きく広げている。また、中ボタン292Bと強ボタン292Cとは、第一風量調整ボタンと第二風量調整ボタンとの関係にある。強ボタン292Cのアイコンは、中ボタン292Bのアイコンと比べて、鳥が翼をより大きく広げている。
【0117】
図26の第二変形例では、第二風量調整ボタンのアイコンは第一風量調整ボタンのアイコンよりも、鳥が翼で後方に押し出す風が大きい。先述した変形例では、第二風量調整ボタンのアイコンは第一風量調整ボタンのアイコンよりも、地上からの鳥の飛行位置が高い。これらの変形例では、複数の調整ボタン292の各々が、対応する送風運転の風量の大きさを視覚的に示すアイコンを有する。
【0118】
操作部90では、各ボタン91に付されたアイコンが、要部の形態的特徴が共通する生物の表情によって、対応する送風動作を示唆してもよい。例えば、互いに同じキャラクタを表した鳥のアイコンが各ボタン91に付されており、これらの鳥の表情が対応する風量に応じて異なっている。これに代えて、各ボタン91に付されたアイコンが、画像に表れる生物の表示サイズによって、対応する送風動作を示唆してもよい。各ボタン91のアイコンが表す生物は、互いに異なるキャラクタを表した同種又は異種の鳥でもよいし、互いに異なるキャラクタを表した同種又は異種の生物でもよい。
【0119】
複数のボタン91の各々は、翼又は羽根を有する生物を表す画像によって、対応する送風運転の風向きを視覚的に示すアイコンを有してもよい。先述のようにメイン基板の制御部は、翼部3が送出する気流の風向きを制御できる。例えば、複数のボタン91は、水平方向の風向きに対応する第一ボタンと、上向きの風向きに対応する第二ボタンと、下向きの風向きに対応する第三ボタンとを有する。第一ボタンは水平方向の飛ぶ鳥のアイコンを有し、第二ボタンは上向きに飛ぶ鳥のアイコンを有し、第三ボタンは下向きに飛ぶ鳥のアイコンを有する。
【0120】
第二運転ボタンのアイコンが表す生物は、第一運転ボタンのアイコンが表す生物よりも後の成長段階の生物であってもよい。例えば、上記実施形態(
図24参照)と同様に、操作部90に電源ボタン91A、第一運転ボタン91B、及び第二運転ボタン91Cが設けられる。電源ボタン91Aのアイコンは雛鳥を表し、第一運転ボタン91Bのアイコンはこの雛鳥が成長した幼鳥を表し、第二運転ボタン91Cのアイコンはこの幼鳥が成長した成鳥を表す。このように各ボタン91は、アイコンが表す鳥の成長段階によって、対応する運転動作を示唆する。
【0121】
第二送風運転の運転動作は、第一送風運転の送風動作に加えて、さらに第一送風運転の送風動作に含まれない送風動作を含んでもよい。例えば、制御部は第一運転ボタン91Bが操作された場合、第一送風運転として定速運転を実行する。制御部は第二運転ボタン91Cが操作された場合、第二送風運転として定速運転及びリズム運転の両方を実行する。例えば制御部は第二送風運転において、所定時間毎に定速運転とリズム運転とを交互に実行する。
【0122】
第一送風運転の送風動作に含まれない送風動作は、リズム運転に限定されない。例えば送風装置1は、支柱9を軸周りに回転させることで、翼部3L,3Rを左右に揺動させる首振り機能を有してもよい。この場合、制御部は第一運転ボタン91Bが操作された場合、第一送風運転として、首振り機能をオフにして定速運転を実行する。制御部は第二運転ボタン91Cが操作された場合、第二送風運転として、首振り機能をオンにして定速運転を実行する。
【0123】
更に、操作部90からの指示に基づく送風動作の制御は、上記に限定されない。
図28は、間欠運転時における翼部3の翼端の変位を示すグラフである。
図29は、リズム運転時における翼部3の翼端の変位を示すグラフである。
【0124】
送風部2は、送風の停止中に電源ボタン91Aが操作された場合、二つの翼部3L,3Rを所定時間、先述の往復運動において本運転よりも低速で揺動させる準備運転を行った後に、本運転を開始してもよい。本運転は、ユーザが翼部3L,3Rからの送風を十分に体感できる程度の風量となるように、翼部3L,3Rを揺動させる送風動作である。例えば、先述の弱運転、中運転、及び強運転は、何れも本運転に相当する。準備運転の風量は、弱運転の風量未満である。
【0125】
本例では、オフ状態の送風装置1で電源ボタン91Aが操作されると、送風装置1はオン状態に制御される。このとき制御部は、例えば5秒間の準備運転を行った後に、本運転として弱運転を実行する。この準備運転では、翼部3L,3Rが本運転よりも低速で揺動し、例えば弱運転よりも低速で揺動する。そのため、人間が翼部3L,3Rの近傍にいる状態で送風装置1が誤って電源オンされても、翼部3L,3Rが人間に与える衝撃を抑制でき、安全性を向上できる。
【0126】
送風部2は、送風の実行中に電源ボタン91Aが操作された場合、二つの翼部3L,3Rが下死点P2に到達する前に、下死点P2に達したときの揺動速度が実質的にゼロとなるように、二つの翼部3L,3Rの揺動速度を漸減させ、且つ、下死点P2に達した二つの翼部3L,3Rを停止させることで、往復運動を終了してもよい。
【0127】
本例では、オン状態の送風装置1で電源ボタン91Aが操作されると、送風装置1はオフ状態に制御される。このとき制御部は、翼部3L,3Rを減速しつつ下側に揺動させることで、翼部3L,3Rをその揺動が終了したタイミングで下死点P2に停止させる。詳細には制御部は、図示外のセンサによって翼部3L,3Rの翼軸310の傾き又は駆動源410の回転位置を測定し、その測定データに基づいて翼部3L,3Rの揺動位置を特定する。制御部は、特定した揺動位置に基づいて駆動源410のモータ制御を行って、翼部3L,3Rを下死点P2でスムーズに停止させる。これにより電源オフされた送風装置1は、鳥が両翼をゆっくり下ろして静止するような外観を呈するため、ユーザは送風装置1が動作終了したことを視覚的に認識できる。
【0128】
送風部2は、往復運動において二つの翼部3L,3Rが上死点P1及び下死点P2の一方に到達した場合、二つの翼部3L,3Rを所定のインターバル期間が経過するまで停止させてから、二つの翼部3L,3Rを上死点P1及び下死点P2の他方に向けて揺動させてもよい。
【0129】
本例では、
図28に示すように、制御部は本運転の実行時に、翼部3L,3Rの定速運転を行って翼部3L,3Rの揺動するピッチを均等に制御し、さらに上死点P1の間欠運転を実行する。この間欠運転では、翼部3L,3Rが上死点P1に到達した場合、翼部3L,3Rを一定のインターバル期間(例えば1秒)が経過するまで停止させてから、下死点P2に向けて揺動させる。
【0130】
これに代えて制御部は、下死点P2の間欠運転を実行してもよい。この間欠運転では、翼部3L,3Rが下死点P2に到達した場合、翼部3L,3Rを例えば一定のインターバル期間が経過するまで停止させてから、上死点P1に向けて揺動させる。また制御部は、上死点P1及び下死点P2の両方で間欠運転を実行してもよい。
【0131】
例えば上側に揺動する翼部3が上死点P1に達したとき、先述のように翼部3の前翼端が上側に撓むが、この前翼端は自身の弾性力によって元の状態に復帰する。但し、翼部3が上死点P1に達した直後に下側への揺動が開始されると、翼部3の前翼端が弾性復帰する前に揺動開始してしまい、下側への揺動時に翼部3から送風される風量が減少するおそれがある。そこで本例では、翼部3が上死点P1及び下死点P2の何れかに達したとき、翼部3の前翼端が弾性復帰する程度のインターバル期間が経過してから次の揺動を開始させることで、翼部3の送風性能を十分に発揮できる。
【0132】
図29に示すように、制御部は本運転の実行時に、翼部3L,3Rのリズム運転を行って翼部3L,3Rの揺動するピッチを変化させ、さらに上死点P1の間欠運転を実行してもよい。この場合、制御部はインターバル期間の長さも変化させてもよい。また制御部は、上記と同様に、下死点P2の間欠運転を実行してもよいし、上死点P1及び下死点P2の両方で間欠運転を実行してもよい。
【0133】
送風部2は、往復運動において二つの翼部3L,3Rが上死点P1及び下死点P2の何れかに到達する前に、上死点P1及び下死点P2の何れかに達したときの揺動速度が実質的にゼロとなるように、二つの翼部3L,3Rの揺動速度を漸減させてもよい。
【0134】
本例では、
図28及び
図29に示すように、制御部は翼部3L,3Rを上側に揺動させる場合、上死点P1に到達する前に揺動速度を減速し始めて、翼部3L,3Rをその揺動が終了したタイミングで上死点P1に停止させる。詳細には制御部は、先述したセンサの測定データに基づいて翼部3L,3Rの揺動位置を特定し、その揺動位置が上死点P1から所定距離内にある場合に、駆動源410を減速させるモータ制御を開始して、翼部3L,3Rを上死点P1でスムーズに停止させる。同様に制御部は、翼部3L,3Rを下側に揺動させる場合、下死点P2に到達する前に揺動速度を減速し始めて、翼部3L,3Rをその揺動が終了したタイミングで下死点P2に停止させる。これにより翼部3L,3Rは、その揺動範囲の上下両端においてゆっくりと停止してから、次の揺動を開始する。
【0135】
翼部3L,3Rの上側揺動及び下側揺動が切り替わるタイミングでは、駆動源410であるモータへの負荷が大きく変化して、ギアやリンクの遊びで雑音を生じる場合がある。本例では、翼部3L,3Rの揺動方向が切り替わるタイミングで駆動源410の回転にブレーキをかけて、翼部3L,3Rを上死点P1及び下死点P2でスムーズに停止させることで、上記の雑音を抑制できる。
【0136】
なお送風部2は、翼部3L,3Rを上下揺動させて送風する態様に限定されず、羽根状又は翼状の可動体を用いて送風できればよい。例えば送風部2は、遠心式送風機、軸流式送風機、斜流式送風機、横流式送風機の何れでもよい。複数のボタン91が有するアイコンは、鳥類の画像に限定されず、翼又は羽根を有する哺乳類、爬虫類、昆虫類、魚類などの画像を有してもよい。
【0137】
本例では、翼又は羽根を有する生物を表す画像のアイコンが、ボタン91の表面に印刷される。これに代えて、アイコンが印刷されたシールが、ボタン91の表面に貼り付けられてもよい。ボタン91がLED等の表示機能を備える場合、ボタン91の表面にアイコンの画像が表示されてもよい。送風装置1を遠隔操作するためのアプリケーションプログラムが、ユーザの携帯端末で実行されてもよい。ユーザの携帯端末では、このアプリケーションプログラムが実行されると、送風装置1の操作画面が表示される。この操作画面において、それぞれ対応するアイコンを有する複数のボタン91が、画像として表示されてもよい。
【0138】
従来の送風装置では、人間が送風装置の操作部に設けられた複数のボタンを用いて、例えば電源のオン・オフや風速の大きさなどを、所望の送風動作として指示可能である。しかし、これらのボタンには、対応する送風動作を表す文字が表記されているだけである。例えば子供や外国人等のユーザは、ボタンに表記された文字を理解できないため、所望の送風動作に対応するボタンを把握し難い可能性がある。これに対して、本実施形態の送風装置1によれば、ユーザが文字に頼らず各ボタン91に対応する送風動作を視覚的に認識できるため、ユーザの操作性を向上できる。
【0139】
<翼部材>
翼部材1000を説明する。
図30は、翼部材1000の斜め下方から視た斜視図である。
図31及び
図32は、翼部材1000の底面図である。
図33は、変形例に係る翼部材1000の底面図である。送風装置1は、翼部3に代えて、翼部材1000を備えてもよい。以下では、上記実施形態と同一の又は対応する構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図30~
図33は、左側の翼部材1000を示す。右側の翼部材1000は、左側の翼部材1000と左右対称であるため、説明を省略する。
【0140】
なお翼部3と同様に、翼部材1000が送風装置1に装着され且つ基準点P0に変位しているとき、翼部材1000及び送風装置1は互いの方向定義が略同じである。
図30~
図33は、
図14の翼部3Lと同様に、翼部材1000が送風装置1から取り外された単体の状態を示す。このような単体の翼部材1000では、
図30の右下側、左上側、右上側、左下側、下側、上側を、それぞれ、翼部材1000の前側、後側、左側、右側、上側、下側とする。以下では、単体の翼部材1000を説明する場合、翼部材1000の方向定義を参照する。
【0141】
図30~
図32に示すように、翼部材1000は、左右方向及び左右方向に直交する前後方向に延びる面状の翼面体320と、翼面体320の後縁に沿って左右両側に延びる翼軸310と、翼面体320の面上に配置された骨部1100と、を備える。
【0142】
本例では、翼面体320は、上記実施形態と同様に横長の略矩形状であり、且つ左後角及び右前角が円弧状に大きな丸みを帯びている。翼軸310は、一枚の翼面体320の下面に固着されて、この下面の後縁に沿って左右両側に延びる。骨部1100は、翼面体320の下面に配置された、複数の細長い棒状の部材で構成される。骨部1100は、翼軸310と同様に強化プラスチックや軽金属等で形成される。骨部1100は、翼軸310よりも径又は厚みが小さいため、翼軸310よりも剛性が低い。
【0143】
骨部1100は、後骨部1110、中骨部1120、及び前骨部1130を含む。後骨部1110は、左右方向及び前後方向に直交する上下方向から視て、翼軸310と部分的に重なる。本例では、一つの後骨部1110が、翼軸310の前側で左右両側に延び、且つその両端が翼軸310と接続することで、上下方向から視て翼軸310と部分的に重なる。後骨部1110は、後骨部1110の前端から左後方へ直線状に延びる左骨部1111と、後骨部1110の前端から右後方へ直線状に延びる右骨部1112とを含む。左骨部1111の後端は翼軸310の左部に接続し、且つ右骨部1112の後端は翼軸310の右部に接続する。左右方向に対する左骨部1111の傾斜角度は、左右方向に対する右骨部1112の傾斜角度よりも小さい。左骨部1111は右骨部1112よりも長い。
【0144】
これに代えて、後骨部1110と翼軸310とが、翼面体320の両面のうちで互いに異なる面に設けられてもよい。この場合、後骨部1110の一部が翼面体320を挟んで翼軸310と上下に並ぶように配置されることで、後骨部1110は上下方向から視て翼軸310と部分的に重なる。また、複数の後骨部1110が翼面体320に設けられてもよい。複数の後骨部1110の少なくとも一つが、翼面体320の両面のうちで翼軸310と異なる面に設けられてもよい。
【0145】
中骨部1120は、上下方向から視て、後骨部1110から前側に延びる。本例では、骨部1100は、上下方向から視て、左右方向に間隔を空けて並ぶ複数の中骨部1120を含む。具体的には、七つの中骨部1120が、翼面体320の下面において左右方向に間隔を空けて並ぶ。各中骨部1120は、その後端が後骨部1110と接続するように、後骨部1110から前側へ直線状に延びる。七つの中骨部1120のうち、左側五つの中骨部1120は左骨部1111から延び、且つ右側二つの中骨部1120は右骨部1112から延びる。左側四つの中骨部1120は左前方に延び、且つ右側三つの中骨部1120は右前方に延びる。七つの中骨部1120のうち、互いに隣り合う二つの中骨部1120の間隔は、送風方向である前側に向かって漸増する。
【0146】
これに代えて、複数の中骨部1120の少なくとも一つが、翼面体320の両面のうちで後骨部1110と異なる面に設けられてもよい。この場合、後骨部1110と異なる面に設けられた中骨部1120の後端は、翼面体320を挟んで、この後骨部1110と上下に並ぶように配置される。従ってこの中骨部1120は、上下方向から視て後骨部1110から前側に延びる。
【0147】
前骨部1130は、上下方向から視て、中骨部1120の前側に配置され、且つ中骨部1120の前端を通って前後方向に延びる仮想線と交差する。本例では、骨部1100は、上下方向から視て、左右方向に間隔を空けて並ぶ複数の前骨部1130を含む。各中骨部1120は、上下方向から視て、前骨部1130と交差する位置まで前側に延びる。具体的には、六つの前骨部1130が、翼面体320の下面において左右方向に間隔を空けて並ぶ。各前骨部1130が、夫々対応する中骨部1120の前側に配置される。各前骨部1130の一端が、対応する中骨部1120の前端に接続する。左側三つの中骨部1120は、夫々、左側三つの前骨部1130の左端に接続する。右側二つの中骨部1120は、夫々、右側二つの前骨部1130の右端に接続する。中央側二つの中骨部1120は、中央側にある一つの前骨部1130の両端に接続する。
【0148】
これに代えて、複数の前骨部1130の少なくとも一つと、複数の中骨部1120の少なくとも一つとが、翼面体320の両面のうちで互いに異なる面に設けられてもよい。この場合、中骨部1120とは異なる面に設けられた前骨部1130の一端が、翼面体320を挟んで、この中骨部1120と上下に並ぶように配置される。
【0149】
前骨部1130は、前後方向と交差する方向に延び、且つ上下方向から視て、前骨部1130の前端又は後端において屈曲又は湾曲する形状である。本例では、
図31に示すように、各前骨部1130は、前後方向と交差する方向に延び、且つ前端1131において屈曲する形状である。具体的には、前骨部1130は、前端1131から互いに異なる方向に延びる二つの延伸部1132,1133を有する。延伸部1132は前端1131から左後方に直線状に延び、且つ延伸部1133は前端1131から右後方に直線状に延びる。従って、延伸部1132,1133は、何れも前後方向と交差する方向に延び、且つ前端1131を前後方向に通る仮想線V1を挟んだ左右両側にある。
【0150】
このように延伸部1132,1133は、翼部材1000の送風方向と略平行な前後方向と交差する方向に延びる。前骨部1130は、少なくとも左右両側に延びる部分を含むため、翼面体320の左右方向の剛性を向上させる。左右方向は、翼面体320の長手方向に延びる翼軸310の延伸方向と平行である。換言すると前骨部1130は、翼面体320において翼軸310の延伸方向の剛性を向上させる。
【0151】
更に、直線状の延伸部1132,1133が仮想線V1を挟んだ両側にあり且つ前端1131で屈曲するように繋がるため、前骨部1130は前側へVの字に突出する。この場合、延伸部1132,1133が左右方向の一直線状に繋がらないため、前骨部1130は少なくとも前後両側に延びる部分を含む。そのため前骨部1130は、翼面体320の前後方向の剛性を向上させ、換言すると送風方向の剛性を向上させる。このように前後左右に延びる前骨部1130は、延伸部1132,1133によって囲まれた内側領域を中心として、翼面体320の剛性を面的に向上させる。
【0152】
これに代えて、
図33に示す前骨部1130A~1130Cのように、前後方向と交差する方向に延び、且つ前端1131において湾曲する形状でもよい。曲線状の延伸部1132,1133が仮想線V1を挟んだ両側にあり且つ前端1131で湾曲するように繋がるため、前骨部1130A~1130Cは前側へUの字に突出する。前骨部1130A~1130Cに示すように、延伸部1132,1133の長さや角度は各種変形が可能である。
【0153】
図33に示す前骨部1130Fのように、前後方向と交差する方向に延び、且つ後端1134において屈曲する形状でもよい。具体的には、前骨部1130Fでは、その後端1134から二つの延伸部1132,1133が延びる。延伸部1132は後端1134から左前方に直線状に延び、且つ延伸部1133は後端1134から右前方に直線状に延びる。延伸部1132,1133は、後端1134を前後方向に通る仮想線V2を挟んだ左右両側にあり、後端1134で屈曲するように繋がる。従って前骨部1130Fは、後側へVの字に突出するように屈曲する。
【0154】
図33に示す前骨部1130Eのように、前後方向と交差する方向に延び、且つ後端1134において湾曲する形状でもよい。曲線状の延伸部1132,1133が仮想線V2を挟んだ両側にあり且つ後端1134で湾曲するように繋がるため、前骨部1130Eは後側へUの字に突出するように湾曲する。
【0155】
中骨部1120は、上下方向から視て前骨部1130と交差する位置まで前側に延びなくてもよい。例えば前骨部1130C,1130Dのように、中骨部1120から前側に離れてもよい。この場合も、中骨部1120の前端を通る前後方向の仮想線V3は、上下方向から視て、前骨部1130C,1130Dと交差する。この場合、前骨部1130Cのように、中骨部1120の前端が、延伸部1132,1133に囲まれた内側領域に進入してもよい。前骨部1130Dのように、中骨部1120の前端が、延伸部1132,1133に囲まれた内側領域に進入しなくてもよい。
【0156】
前骨部1130E,1130Fのように、中骨部1120の前端は、延伸部1132,1133の端部以外の中間部に接続してもよい。延伸部1132,1133の何れか一つは、左右方向に延びてもよい。
図33に示す前骨部1130Gでは、延伸部1132が前端1131から左後方に延び、且つ延伸部1133が前端1131から右方向に延びる。この場合も、延伸部1132,1133は仮想線V1を挟んだ左右両側にあり、且つ前端1131で屈曲するように繋がるため、前骨部1130Gは前側へVの字に突出する。
【0157】
図33に示す変形例では、説明の便宜のため、翼部材1000が互いに異なる種類の前骨部1130A~1130Gを備える。翼部材1000は、前骨部1130A~1130Gのうち少なくとも一種類を備えてもよく、例えば複数の前骨部1130Aを備えてもよい。
【0158】
図31に示すように、翼部材1000の後部1001は、後骨部1101の前端を通る左右方向の仮想線よりも後側の部分である。後部1001では、後骨部1110が上下方向から視て翼軸310と部分的に重なる。本例では、若干後側に膨らむように湾曲する翼軸310と、前側に突出するように屈曲する後骨部1110とが、前後に対向するように互いに接続する。後部1001では、剛性の高い翼軸310が後骨部1110によって支持される。後骨部1110と翼軸310とが構成する閉空間を中心として、翼面体320が面的に支持される。そのため後部1001は、翼部材1000のうちで最も剛性が高い。
【0159】
翼部材1000の中部1002は、後部1001の前側において、前後両側に延びる複数の中骨部1120を含む部分である。複数の中骨部1120が翼面体320を支持することで、中部1002の剛性が向上する。中部1002の剛性は、後部1001の剛性よりも低い。
【0160】
翼部材1000の前部1003は、中部1002の前側において、左右方向に並ぶ複数の前骨部1130を含む部分である。各前骨部1130は、前側又は後側に突出する形状によって、各前骨部1130に囲まれた内側領域を形成する。複数の中骨部1120の内側領域を中心として、翼面体320が面的に支持されることで、前部1003の剛性が向上する。前部1003の剛性は、中部1002の剛性よりも高く、且つ後部1001の剛性よりも低い。
【0161】
上記実施形態と同様に、送風装置1は翼部材1000を上下に揺動させることで、翼面体320で捕まえた空気を上死点P1及び下死点P2での撓りによって前方に打ち出す。このとき、送風方向の下流側にある前部1003の剛性が低いと、前部1003の撓りが弱くなり、翼面体320が空気を押し出す力も弱まる可能性がある。また、揺動時の翼面体320では、揺動軸400からの距離差(ストローク差)によって、揺動軸400に近い本体側は風量が小さくなり、且つ揺動軸400から遠い翼端側は風量が大きくなりやすい。このような翼面体320における風量の偏りによって、翼部材1000の送風方向が翼端側に傾く可能性がある。
【0162】
本実施形態の翼部材1000によれば、上述した前骨部1130によって前部1003の剛性が向上するため、前部1003の撓りを強くして空気を押し出す力が向上する。さらに、複数の前骨部1130が左右に並ぶ構造によって、前部1003の左右全体に亘って剛性が一様に向上する。これにより、上記のストローク差に起因する風量の偏りを抑制して、翼部材1000の送風方向が翼端側に傾くことが抑制される。揺動時の翼部材1000は、前側に向かって一様な強い気流を送風できる。
【0163】
先述のように、中部1002を支持する中骨部1120は、後部1001を支持する後骨部1110から前側に延びる。更に前部1003を支持する前骨部1130は、中骨部1120の前側に配置され、且つ中骨部1120の前端を通る前後方向の仮想線と交差する。従って、相対的に剛性の高い後部1001は、相対的に剛性の低い中部1002を挟んで、中程度の剛性である前部1003と前後方向に並ぶ。翼部材1000の揺動時には、送風方向の上流側にある後部1001の高い剛性が、中部1002を介して、送風方向の下流側にある前部1003に伝わる。従って、前部1003は後部1001によって間接的に支持されて、その揺動範囲を最大限に利用して安定的に上下動できる。
【0164】
前部1003は、更に以下の構造を含んでもよい。本例の前骨部1130は、前後方向よりも左右方向に長い。これにより前骨部1130は、翼面体320において左右方向に広い範囲を支持でき、前部1003の左右方向の剛性が一様に向上する。
【0165】
複数の中骨部1120は、前骨部1130と接続する第一中骨部と、上下方向から視て第一中骨部と隣り合う第二中骨部と、を含む。前骨部1130は、上下方向から視て、第一中骨部から第二中骨部に向かって延びる。本例では、七つの中骨部1120は、六つの前骨部1130の何れかと接続する。各前骨部1130は、自身と接続する中骨部1120と隣り合う他の中骨部1120に向かって延びる。この場合、前骨部1130と接続する中骨部1120が第一中骨部であり、この第一中骨部と隣り合う他の中骨部1120が第二中骨部である。
【0166】
具体的には、左側三つの前骨部1130の各々は、第一中骨部の前端から、第一中骨部の右側に隣り合う第二中骨部の前端に向かって、右側に延びる。右側二つの前骨部1130の各々は、第一中骨部の前端から、第一中骨部の左側に隣り合う第二中骨部の前端に向かって、左側に延びる。中央側にある一つの前骨部1130は、その両端が二つの中骨部1120の前端に接続する。この前骨部1130は、二つの中骨部1120のうちで左側の第一中骨部から右側の第二中骨部に向かって延び、且つ右側の第一中骨部から左側の第二中骨部に向かって延びる。
【0167】
これによれば、後部1001の高い剛性が、第一中骨部及び第二中骨部という二つの前骨部1130を介して前骨部1130へ確実に伝わるため、前部1003の撓りをより強くできる。
【0168】
複数の前骨部1130は、第一前骨部と、上下方向から視て第一前骨部と隣り合う第二前骨部と、を含む。第一前骨部の前端と第二前骨部の前端とは、互いに前後方向の位置が異なる。本例では、六つの前骨部1130の前端1131のうち、翼面体320の左右方向中心に最も近い前骨部1130の前端1131が最も前側に位置する。互いに隣り合う任意の二つの前骨部1130のうち、翼面体320の左右方向中心から遠い方を第一前骨部とし、翼面体320の左右方向中心に近い方を第二前骨部とする。この場合、第二前骨部の前端1131は、第一前骨部の前端1131よりも前側にある。従って六つの前骨部1130は、翼面体320の左右方向中心に近い前骨部1130であるほど前側に配置される。
【0169】
このように、剛性が高い複数の前骨部1130の前後方向位置をずらすことで、これらの前骨部1130を送風方向の上流側及び下流側に分布させて、前部1103を送風方向に広げることができる。更に、複数の前骨部1130の分布によって、後述のように送風方向を任意に調整できる。なお、複数の前骨部1130は、互いに左右方向に繋がってもよい。
【0170】
翼部材1000は、翼部3と同様に、翼部材1000を揺動させる送風装置1に着脱可能である。翼部材1000の左側又は右側の何れか一方は、送風装置1に装着された翼部材1000において、送風装置1に近い本体側である。第一前骨部は、第二前骨部よりも本体側に配置される。第一前骨部の前端は、第二前骨部の前端よりも後側にある。
図30~
図32に示す翼部材1000は、左側の翼部3Lに対応するため、その右側が揺動軸400Lに接続される本体側であり、その左側が翼端側である。送風装置1は、前後方向に延びる揺動軸400Lを中心として、翼部材1000を上下に揺動させる。
【0171】
翼面体320の本体側端部に近い右側三つの前骨部1130から、任意の二つを選択する。これら二つの前骨部1130を、本体側である右側から順に第一前骨部及び第二前骨部とする。この場合、第一前骨部の前端1131は、第一前骨部の前端1131よりも後側にある。従って、右側三つの前骨部1130は、翼面体320の本体側端部に近いほど後側に配置される。このような前骨部1130の分布によって、翼面体320の右側部分が押し出す空気は、本体側に偏って右前側に送出される。これにより、翼面体320から本体側に向かう十分な空気の風量を確保できるため、上記のストローク差に起因して風量が翼端側に偏ることを抑制できる。
【0172】
更に本例では、六つの前骨部1130は、前側に膨らむ円弧状に並ぶ。そのため、翼面体320の翼端側端部に近い複数の前骨部1130では、この翼端側端部に近いほど後側に配置される。このような前骨部1130の分布によって、翼面体320の左側部分が押し出す空気は、通常よりも翼端側に拡散して送出される。これにより翼部材1000は、その本体側及び翼端側の幅広い範囲に向けて、均等な風量の空気を送風できる。
【0173】
中部1002は、更に以下の構造を含んでもよい。本例の中骨部1120は、前後方向よりも左右方向に長い。これにより中骨部1120は、送風方向と平行な前後方向に広い範囲で、翼面体320の剛性を向上させる。また中骨部1120は、中部1002において、左右方向の撓りよりも前後方向の撓りを大きくできる。更に中骨部1120は、前後方向及び左右方向の両方に対して傾斜するように延びる。中骨部1120は、翼軸310の延伸方向である左右方向に延びる成分を含むため、翼面体320の剛性を面的に向上できる。
【0174】
本例では、複数の中骨部1120のうち、左右方向の中央側にある二つの中骨部1120が、一つの前骨部1130に接続する。このように複数の中骨部1120が一つの前骨部1130に接続することで、後部1001の高い剛性をこの前骨部1130に確実に伝達できる。更に、複数の前骨部1130のうち、左右方向の中央側にある前骨部1130の剛性が最も高くなるため、前部1003内で左右方向に剛性の異なる部位を設けて、送風方向を任意に調整できる。
【0175】
本例では、七つの中骨部1120のうち、翼面体320の左右方向中心よりも本体側にある三つの中骨部1120が、本体側に傾くように右前方に延びる。これら三つの中骨部1120は、翼部材1000の揺動時に本体側に向かって撓りを作るため、翼面体320はその本体側に十分な風量を送出できる。
【0176】
本例では、七つの中骨部1120が互いに離隔している。このように複数の中骨部1120が互いに接続せずに独立することで、各中骨部1120が設計通りの剛性や撓みを発揮できる。七つの中骨部1120のうちで互いに隣り合う二つは、送風方向の下流側である前側に向かって、互いの左右方向の間隔が広がる。これにより中部1002では、送風方向の下流側に向かって徐々に剛性が弱まるように、剛性のバランスを調整できる。
【0177】
本例では、翼面体320の翼端側端部に近い左側三つの中骨部1120のうちで、互いに隣り合う二つの間隔を、第一間隔とする。翼面体320の本体側端部に近い右側三つの中骨部1120のうちで、互いに隣り合う二つの間隔を、第二間隔とする。第一間隔は第二間隔よりも狭い。これにより中部1002では、翼端側にある領域の剛性が、本体側にある領域の剛性よりも高くなる。翼部材1000の揺動時には、先述のストローク差に起因して、翼面体320の翼端側はその本体側よりも大きな風圧を受ける。このように翼面体320で翼軸方向に風圧差が生じても、中部1002における翼端側の剛性が本体側の剛性よりも高いため、翼面体320は左右方向全体で均等に撓んで、一様な風量で前側に送風できる。
【0178】
本例では、各中骨部1120は、上下方向から視て直線状に延びる。これに代えて、各中骨部1120は、上下方向から視て、左側又は右側に湾曲又は屈曲するように延びてもよい。
【0179】
後部1001は、更に以下の構造を含んでもよい。本例では、翼部材1000において最も剛性の高い翼軸310が、翼面体320の本体側端部から翼端側端部まで延び、翼面体320の左右方向への変形を抑える。翼軸310は湾曲するように延びるため、直線状に延びる形状よりも、翼軸310の剛性が高い。翼軸310は、上下方向から視て後側に膨らむように湾曲する。従って翼軸310は、より大きな面積の翼面体320を、翼軸310に対して送風方向の下流側である前側で支持できる。
【0180】
本例では、後骨部1110とこれを補助する翼軸310とが連結されて、後骨部1110と翼軸310とに囲まれた補強領域を形成する。この補強領域は、翼面体320の左右方向中心よりも右側にある本体側補強領域と、翼面体320の左右方向中心よりも左側にある翼端側補強領域とを含む。本体側補強領域の面積は、翼端側補強領域の面積よりも大きい。換言すると、後部1001では、補強領域が本体側に偏って配置される。
【0181】
翼軸310の本体側端部は、翼部材1000の揺動中心となる揺動軸400に接続される。そのため、翼部材1000の揺動時には、翼軸310が配置された後部1001に大きな負荷が加わる。このとき後部1001では、翼面体320の本体側端部に近いほど、より大きな負荷が加わる。上記のように後部1001の補強領域が本体側に偏って配置されることで、揺動時の負荷が大きい後部1001の本体側部分を補強できる。
【0182】
本例では、複数の中骨部1120が後骨部1110から延びる。これに代えて、複数の中骨部1120の少なくとも一つは、翼軸310から延びてもよい。後部1001には、後骨部1110が配置されなくてもよい。この場合、翼軸310が後部1001を支持する。
【0183】
骨部1100は、翼面体320の周縁に沿って配置されるフレーム1140を、更に含む。本例では、フレーム1140は、骨部1100と同様に強化プラスチックや軽金属等で形成される。フレーム1140は、骨部1100と同程度の径又は厚みであるため、翼軸310よりも剛性が低い。
【0184】
図32に示すように、フレーム1140は、翼面体320の左縁に沿って配置される左フレーム部1141と、翼面体320の右縁に沿って配置される右フレーム部1142と、翼面体320の前縁に沿って配置される前フレーム部1143とを含む。左フレーム部1141は、翼軸310の左端から前側に延び、円弧状の左後角を形成する。右フレーム部1142は、翼軸310の右縁から前側に延び、円弧状の右前角を形成する。左フレーム部1141及び右フレーム部1142は、前側に向かって径又は厚みが漸減する。
【0185】
前フレーム部1143は、左フレーム部1141と右フレーム部1142とに亘って左右両側に延びる。前フレーム部1143は、左フレーム部1141の前端から右フレーム部1142の前端に向かって、直線状に右後方に延びる。複数の前骨部1130は、前フレーム部1143よりも後側にある。そのため前フレーム部1143は、複数の前骨部1130と間隔を空けて、これらの前骨部1130の前側を左右両側に延びる。
【0186】
フレーム1140は、翼面体320の周縁を弛まないように支持する。更にフレーム1140のうち、中骨部1120と左右方向に並ぶ部分は、中骨部1120と同様に中部1002を支持する。フレーム1140のうち、前骨部1130と左右方向に並ぶ部分、及び前骨部1130の前側にある前フレーム部1143は、前骨部1130と同様に前部1003を支持する。これにより、中部1002及び前部1003は、各々の剛性が更に向上する。
【0187】
左フレーム部1141及び右フレーム部1142は、前側に向かって径又は厚みが漸減するため、前側に向かって剛性が小さくなる。
図32に示す例において、仮想線L1,L2の各々は、左フレーム部1141及び右フレーム部1142のうちで互いの厚みが一致する位置を通る直線である。例えば、左フレーム部1141及び右フレーム部1142において、仮想線L1と交差する位置の厚みは何れも4mmであり、仮想線L2と交差する位置の厚みは何れも3mmである。
【0188】
仮想線L1は、本体側から翼端側に向かって、前側に傾くように傾斜する。仮想線L2は、本体側から翼端側に向かって、仮想線L1よりも大きく前側に傾くように傾斜する。このように、左フレーム部1141及び右フレーム部1142のうちで互いの厚みが一致する位置を通る仮想線は、この仮想線が通る厚みが小さいほど、前側への傾きが大きくなる。換言すると、この仮想線は送風方向の下流側である前側に向かって、前側への傾きが大きくなる。
【0189】
図32の例では、翼面体320に沿って前側に押し出される空気の一部は、この仮想線と直交する右前方に案内される。この空気は前側に向かうほど、交差する仮想線が前側に向かって大きく傾くため、より右側に傾くように案内される。その結果、翼面体320に沿って流れる空気の一部は、右前方に向かって湾曲するように流れた後、翼面体320から本体側に向かって右前方に送出される。これにより、翼面体320から翼端側に流出する送風量が抑制され、且つ翼面体320から本体側に向かう送風量が確保されるため、翼面体320は前側に向かって広い範囲に一様な送風を供給できる。なお、上記実施形態の翼部3と同様に、人間は翼部材1000を団扇として用いてもよい。
【符号の説明】
【0190】
1 送風装置、2 送風部、3 翼部、40 駆動ユニット、90 操作部、91 ボタン、320 翼面体、400 揺動軸、410 駆動源、420 ギア、430 運動変換機構、1000 翼部材、1100 骨部
【要約】
【課題】従来とは異なる新たな送風装置を提供する。
【解決手段】送風装置は、羽根状又は翼状の可動体を用いて送風する送風部と、人間が前記送風部の送風動作を指示するための操作部と、を備え、前記操作部は、前記送風動作に関する複数のボタンを含み、前記複数のボタンの各々は、翼又は羽根を有する生物を表す画像によって、対応する前記送風動作を視覚的に示すアイコンを有する。
【選択図】
図1