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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】走行玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 19/15 20060101AFI20240828BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20240828BHJP
   A63H 19/10 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
A63H19/15
A47L9/28 E
A63H19/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023181084
(22)【出願日】2023-10-20
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306009927
【氏名又は名称】株式会社トミーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 克哉
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160350(JP,A)
【文献】特開2020-036738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203223(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0023232(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 19/00-36
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を構成する車体には
モータと、
前記モータの動力によって駆動されるファンと、
駆動された前記ファンによって導入口に送り込まれた空気を導出口からフィルタを介して筐体の外部に排出するダクトと、
前記空気の中に含まれる粉塵を捕集する集塵室と、
が設けられ、
前記ファンは、車台の下面に設けられた被装着部に装着され、車台下の空気を吸込み可能に構成され、
前記ダクトの通路途中で前記ダクトと前記集塵室とを連通させ、前記ダクトに送り込まれた空気を分流して前記ダクトに噴出させるようにした、
ことを特徴とする走行玩具
【請求項2】
左右のレールが敷設された軌道の上を走行する走行玩具である、ことを特徴とする請求項1に記載の走行玩具。
【請求項3】
前記ダクトには、前記集塵室との連通部と導出口との間に、前記導出口に向けて拡がる拡開部が設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載の走行玩具。
【請求項4】
前記車体の長さ方向に沿って、前記モータ、前記ダクト及び前記集塵室がこの順に収められている、ことを特徴とする請求項3に記載の走行玩具。
【請求項5】
前記車体の一部の壁は、前記車体の主体に対して着脱可能に構成され、前記壁に前記フィルタが設けられているとともに、前記壁の取外しによって前記集塵室が開放される、ことを特徴とする請求項3に記載の走行玩具。
【請求項6】
前記車体の屋根は、前記車体の主体に対して着脱可能に構成され、前記フィルタは、前記屋根に設けられるとともに、前記屋根によって前記集塵室の上壁が構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の走行玩具。
【請求項7】
前記ファンは、前記被装着部に着脱可能に構成され、
前記ファンに代えて装着可能で、前記左右のレールに圧接される当て部を有する研磨ユニットを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の走行玩具。
【請求項8】
前記ファンは、前記被装着部に着脱可能に構成され、
3線集電方式用の軌道に用いられ、前記ファンに代えて装着可能で、前記左右のレールの間の接点に圧接される当て部を有する研磨ユニットを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の走行玩具。
【請求項9】
前記軌道から集電して走行する動力車玩具によって牽引される走行玩具であって、前記モータの電力源を有する、ことを特徴とする請求項2~請求項8のいずれか一項に記載の走行玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集塵機として、吸気するファンの上流に、フィルタと集塵室とが設けられた構造のものが知られている(特許文献1参照)。
また、集塵機として、吸気するファンの下流に、集塵室が設けられ、集塵室に設けられたフィルタで塵埃を捕捉するものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-325673号公報
【文献】特許7037431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の発明によれば、ファンの上流に、フィルタと集塵室とが1つに又は一緒に設けられているため、フィルタに塵埃が溜まり易く、また、ファンの動きを止めると塵埃が溢れ易いという問題がある。
また、特許文献2に記載の発明によれば、塵埃が空気流に乗って全て集塵室に運ばれるため、やはりフィルタに塵埃が溜まり易いという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、フィルタが目詰まりし難い集塵機を備えた走行玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
筐体を構成する車体には
モータと、
前記モータの動力によって駆動されるファンと、
駆動された前記ファンによって導入口に送り込まれた空気を導出口からフィルタを介して筐体の外部に排出するダクトと、
前記空気の中に含まれる粉塵を捕集する集塵室と、
が設けられ、
前記ファンは、車台の下面に設けられた被装着部に装着され、車台下の空気を吸込み可能に構成され、
前記ダクトの通路途中で前記ダクトと前記集塵室とを連通させ、前記ダクトに送り込まれた空気を分流して前記ダクトに噴出させるようにした、
ことを特徴とする走行玩具である。
集塵機である。
【0007】
第2の手段は、第1の手段であって、左右のレールが敷設された軌道の上を走行する走行玩具である、ことを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第2の手段であって、前記ダクトには、前記集塵室との連通部と導出口との間に、前記導出口に向けて拡がる拡開部が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第3の手段であって、前記車体の長さ方向に沿って、前記モータ、前記ダクト及び前記集塵室がこの順に収められている、ことを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第3の手段であって、前記車体の一部の壁は、前記車体の主体に対して着脱可能に構成され、前記壁に前記フィルタが設けられているとともに、前記壁の取外しによって前記集塵室が開放される、ことを特徴とする。
【0011】
第6の手段は、第4の手段であって、前記車体の屋根は、前記車体の主体に対して着脱可能に構成され、前記フィルタは、前記屋根に設けられるとともに、前記屋根によって前記集塵室の上壁が構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
第7の手段は、第2の手段であって
前記ファンは、前記被装着部に着脱可能に構成され、
前記ファンに代えて装着可能で、前記左右のレールに圧接される当て部を有する研磨ユニットを有する、ことを特徴とする。
【0013】
第8の手段は、第2の手段であって
前記ファンは、前記被装着部に着脱可能に構成され、
3線集電方式用の軌道に用いられ、前記ファンに代えて装着可能で、前記左右のレールの間の接点に圧接される当て部を有する研磨ユニットを有する、ことを特徴とする。
【0014】
第9の手段は、第2~第8のいずれかの手段であって、前記軌道から集電して走行する動力車玩具によって牽引される走行玩具であって、前記モータの電力源を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の手段によれば、分流された空気中に含まれる塵埃が集塵室で捕集されるので、本流の空気に含まれる塵埃を減少させることができ、その分、フィルタの負担が少なくなる。また、集塵室で捕集された塵埃はダクトの導入口側に戻ることがない。
【0016】
第1の手段によれば、走行中に、車台下にある塵埃を取り除くことができる。
【0017】
第2の手段によれば、走行中に、軌道上にある塵埃を取り除くことができる。
【0018】
第3の手段によれば、拡開部で本流が拡がり、フィルタで塵埃が捕捉される。また、通路抵抗が減少するため、拡開部を設けない場合に比べて、空気の流れがよくなり、その分、風量が増大することになる。
【0019】
第4の手段によれば、車体の長さ方向に、バランス良くモータ、ダクト及び集塵室を収めることができる。
【0020】
第5の手段によれば、車体の一部の壁を取り外すことで、フィルタ掃除をすることができるとともに、集塵室にある塵埃を捨てることができる。
【0021】
第6の手段によれば、車体の屋根を取り外すことで、フィルタ掃除をすることができるとともに、集塵室にある塵埃を捨てることができる。
【0022】
第7の手段によれば、ファンの代わりに研磨ユニットを取り付けることにより、左右のレールを研磨することができる。
【0023】
第8の手段によれば、ファンの代わりに研磨ユニットを取り付けることにより、3線集電方式の軌道における中央の接点を研磨することができる。
【0024】
第9の手段によれば、動力車玩具の集電方式によらず、動力車玩具に連結して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る貨車玩具の斜視図である。
図2】貨車玩具の下面側斜視図である。
図3】車体の一部側壁を取り外した状態の貨車玩具の斜視図である。
図4】貨車玩具の上面図である。
図5】屋根と屋根下の一部の部品を取り外した状態の貨車玩具の上面図である。
図6】ダクト及び集塵室の縦断面図である。
図7】貨車玩具が走行する軌道板の斜視図であり、図7(A)は、2線集電方式用の軌道板、図7(B)は、3線集電方式用の軌道板である。
図8】ファンとモータとを示した斜視図である。
図9】キャップの斜視図である。
図10】研磨ユニットの斜視図である。
図11】研磨ユニットの本体の下面側斜視図である。
図12】研磨ユニットの分解斜視図である。
図13】研磨ユニットの下面側斜視図である。
図14】研磨ユニットの分解斜視図である。
図15】研磨ユニットの下面側分解斜視図である。
図16】拭取りブロックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0027】
《概要》
図1は、貨車玩具100の斜視図である。
貨車玩具100は、車体10に屋根11がある有蓋車となっている。
車体10の車台12下には車輪13が設けられている。この貨車玩具100は、走行用の動力源を持たず、動力車玩具(機関車玩具等)に牽引されることで軌道板50A、50Bの上を走行可能となっている。
また、車台12下には、レール51が敷かれた軌道板50A、50B(図7)の掃除や保守を行うための各種のファン70、研磨ユニット71、72又は拭取りブロック73(図8図16)が選択的に装着される。この装着されたファン70、研磨ユニット71、72又は拭取りブロック73によって、走行中に、軌道板50A、50Bの掃除や保守を行うことができる。
この貨車玩具100は、2線集電方式用の軌道板50A、及び、3線集電方式用の軌道板50Bのどちらの上でも走行することができる。
【0028】
《詳細》
(外観)
図2は、貨車玩具100の下面側斜視図である。
車台12及び屋根11を含んで構成される車体10は、前後方向に長尺な直方体形状となっており(図1参照)、車体10下の車台12には、左右で対をなす車輪13が前後に一対ずつ設けられている。
また、車台12の前端部及び後端部には連結器14が設けられている。この連結器14によって、貨車玩具100は、他の貨車玩具や動力車玩具と連結することができる。
【0029】
さらに、車台12の下には、拭取りブロック73を装着するための第1被装着部15と、ファン70や研磨ユニット71、72を選択的に装着するための第2被装着部16とが設けられている。ファン70、研磨ユニット71、72又は拭取りブロック73の詳細は後述する。
【0030】
第1被装着部15は、車台12下に突出して形成された細長で角筒状の枠体15aによって構成されている。この枠体15aは左右方向に長尺となっている。枠体15aの長尺方向の長さは、左右の車輪13の幅よりも大きくなっている。この枠体15aによって区画される穴には、必要に応じて、拭取りブロック73が選択的に取り付けられる。
【0031】
第2被装着部16は、車台12下に突出して形成された円筒状の枠体16aによって構成されている。枠体16aによって区画される穴の中心には、車体10内に設置されたモータ17(図8)のモータ軸17aが突出している。枠体16aの穴の直径は、左右の車輪13の幅よりも大きくなっている。この第2被装着部16には、必要に応じて、ファン70や研磨ユニット71、72が選択的に取り付けられる。
【0032】
(屋根11)
図3は、車体10の一部側壁を取り外した状態の貨車玩具100の斜視図、図4は、貨車玩具100の上面図である。
車体10の屋根11は、前側の第1屋根部11aと後側の第2屋根部11bとから構成されている。
第1屋根部11aは屋根11の全長の2/3程度の長さを有し、第2屋根部11bは屋根11の全長の1/3程度の長さを有している。
第1屋根部11a及び第2屋根部11bは、車体10の主体に嵌合して取り付けられており、第2屋根部11bは、その主体から個別に取外し可能となっている。第1屋根部11aの下側には、回路基板18が取り付けられ、第2屋根部11bには矩形開口11cが形成され、矩形開口11cにはフィルタ19が設置されている。第1屋根部11aには、回路基板18に取り付けられた電源スイッチSWの摘まみが突出して設けられている。
【0033】
(車体10の内部)
図5は、屋根11と屋根11下の一部の部品を取り外した状態の貨車玩具100の上面図である。
車体10の内部には、図3及び図5に示すように、前側から後側に向けて順に、電池収容部20、モータ収容部21、ダクト22及び集塵室23が設けられている。
【0034】
電池収容部20には、電池ボックス24が設けられている。電池ボックス24には、中心軸が前後方向に延在するように電池(図示せず)が横倒し状態で2本設置される。電池ボックス24の上壁24aには、雌ねじ付きのボス25が立設されている。このボス25には回路基板18がねじ止めされている。この電池ボックス24への電池の着脱は、車体10の前壁を開放することで、電池ボックス24に対して、前方から横向きに電池を入れたり出したりすることでなされる。
【0035】
モータ収容部21には、モータ収容ボックス26が設けられている。モータ収容ボックス26内にはモータ17(図8)が縦置き状態に設置されている。モータ17のモータ軸17aは、第2被装着部16の枠体16a内に突出している。
【0036】
図6は、ダクト22及び集塵室23の縦断面図である。
ダクト22は、図3に示すように、モータ収容ボックス26の直後に設けられ、車体10の上下方向に延在している。ダクト22の導入口22aは、弓形に形成され、第2被装着部16の枠体16a内に開口している(図2)。ダクト22の下半部通路の断面形状は、ほぼ導入口22aの断面形状と同じとなっている。また、ダクト22の上半部通路は、後方側に拡開した形となっていて、上方に行くにつれて大きくなっている。この拡開している部分を以下では拡開部という。そして、ダクト22の上端の導出口22b(図6)の直上には、第2屋根部11bに設けたフィルタ19が位置している。なお、この拡開部は、ダクト22と集塵室23との連通部と、導出口22bとの間に設けられていることが好ましい。
【0037】
集塵室23は、ダクト22の直後に設けられている。集塵室23は、ダクト22の通路途中で入口23aを介してダクト22と連通している。この集塵室23の上壁は、第2屋根部11bによって構成され、第2屋根部11bの取外しによって、集塵室23の上端が開口する。この開口部23bが図5に示されている。この上端が開放された集塵室23を貨車玩具100ごと逆さにすることで、集塵室23に溜まった塵埃を排出させることができる。
【0038】
(軌道板50A、50B)
図7(A)及び図7(B)は、貨車玩具100が走行する軌道板50A、50Bの斜視図である。このうち図7(A)は、2線集電方式の軌道板50Aを示し、図7(B)は、3線集電方式の軌道板50Bを示している。
貨車玩具100は軌道板50A、50Bの上を走行可能となっている。
軌道板50Aでは、左右のレール51から車輪を通じて動力車玩具が集電し、この集電によって動力車玩具が走行する。その際、貨車玩具100は、動力車玩具に牽引されて軌道板50Aを走行することができる。
また、軌道板50Bでは、左右のレール51と、枕木相当部分に突出した接点52とから車輪及びシューを通じて動力車玩具が集電し、この集電によって動力車玩具が走行する。その際、貨車玩具100は、動力車玩具に牽引されて軌道板50Bを走行することができる。
なお、左右のレール51の幅は、軌道板50Aと軌道板50Bとで同じとなっている。
【0039】
(クリーニングツール)
図8は、ファン70とモータ17とを示した斜視図、図9は、キャップ75の斜視図である。
ファン70は、軸流ファン(プロペラファン)として構成され、モータ軸17aに嵌合可能な穴70aが形成された軸部70bと、軸部70bの外周に等間隔で形成された複数枚の羽根70cとによって構成されている。ファン70は、軸部70bの穴70aをモータ軸17aに嵌合させた状態で、車台12下の枠体16a内に収容される。
この場合の第2被装着部16の枠体16aは、ファン70を簡単に着脱することができるように、下端が開口している。そこで、吸引力を高めるため、枠体16aには、有底円筒状のキャップ75が嵌合可能となっている。キャップ75には、長円状の吸気口75aが形成されている。この吸気口75aの長手方向の長さは、左右のレール51をカバーできる大きさとなっていることが好ましい。なお、キャップ75は、指の挿入を阻止する働きもする。また、キャップ75ひいては吸気口75aの向きを変えることができる。これにより、吸気口75aの向きを変え、所望の場所をクリーニングすることができる。
【0040】
図10は、研磨ユニット71の斜視図、図11は、研磨ユニット71の本体の下面側斜視図、図12は、研磨ユニット71の分解斜視図である。
この研磨ユニット71は、左右のレール51を研磨するためのもので、軌道板50A,50Bの場合に使用することができる。この研磨ユニット71は、金属製のコイルばね71kを除いてプラスチック製となっている。
研磨ユニット71は、円板(当て部)71aと、円板71aを支持する取付部材71bと、円板71aの下面に貼られる研磨用テープ71cとを備える。
【0041】
円板71aの直径は、軌道50A、50Bの左右レール51をカバーできるような大きさに設定されている。この円板71aの中央には、上方に盛り上がる膨出部71dが形成されている。膨出部71dの内部は中空となっており、その中空部は膨出部71dの上端に開口している。また、中空部は円板71aの下面の穴71eと連通している。この穴71eは、中空の膨出部71dを形成するための食い切りである。また、符号71gは、膨出部71dを補強するためのリブである。
【0042】
取付部材71bには、モータ軸17aに嵌合する穴71оと、一対の突片71fとが設けられている。一対の突片71fは、穴71оをモータ軸17aに嵌合させた際に車台12の下面に当接する。
また、取付部材71bには、一対の弾性爪部材71hが設けられている。弾性爪部材71hは下方に延び、その下端には外向爪71iが設けられている。外向爪71iは、弾性爪部材71hの弾性で、膨出部71dの開口71jの縁下面と係合する。一対の弾性爪部材71hにはコイルばね71kが巻装されている。コイルばね71kは、膨出部71dと突片71fとの間に位置し、外向爪71iが膨出部71dの開口71jの縁下面と係合している状態では、膨出部71dと突片71fとを互いに離間する方向に付勢する。この付勢力によって回転板71aはレール51に圧接される。
この研磨ユニット71の円板71aの下面には、クリーニングヘッドとして研磨用テープ71cが貼着される。
なお、この研磨ユニット71をモータ軸17aに取り付けた状態では、円板71aの下面が少なくとも第2被装着部16の枠体16aの下端から下方に突出する。この研磨ユニット71は、モータ17を止めた状態で使用される。
なお、研磨ユニット71は、モータ17によって回転駆動されるように構成してもよい。この場合、突片71fは、回転抵抗となるので、車台12の下面に当接させないことが好ましい。
【0043】
図13は、研磨ユニット72の下面側斜視図、図14は、研磨ユニット72の分解斜視図、図15は、研磨ユニット72の下面側分解斜視図である。
この研磨ユニット72は、軌道板50Bの接点52を研磨するためのもので、軌道板50Bの場合に使用することができる。この研磨ユニット72は、金属製のコイルばね72оを除いてプラスチック製となっている。
研磨ユニット72は、円板(当て部)72aと、円板72aを支持する取付部材72bと、円板72a下面に貼られる研磨用テープ72cとを備える。
【0044】
円板72aの直径は、左右のレール51の間に収まる大きさとなっている。この円板72aの中央には、上方に盛り上がる膨出部72dが形成されている。膨出部72dの内部は中空となっており、その中空部は膨出部72dの上端に開口している。また、中空部は円板72aの下面の穴72eと連通している。この穴72eは、中空の膨出部72dを形成するための食い切りである。また、符号72pは、膨出部72dを補強するためのリブである。
【0045】
穴72eには長円状の座繰り72fが形成されている。この座繰り72fの底面には嵌合穴72gが形成されている。座繰り72fには、長円板状のリッド72hが嵌合される。その際、リッド72hに形成された嵌合突起72iが嵌合穴72gに嵌め込まれる。座繰り72fにリッド72hが嵌合された状態では、穴72eが塞がれ、円板72aの下面とリッド72hの下面とが面一となる。
【0046】
取付部材72bには、モータ軸17aに嵌合する穴72jと、一対の突片72kとが設けられている。一対の突片72kは、穴72jをモータ軸17aに嵌合させた際に車台12の下面に当接する。また、取付部材72bには、一対の弾性爪部材72lが設けられている。弾性爪部材72lは下方に延び、その下端には外向爪72mが設けられている。外向爪72mは、弾性爪部材72lの弾性で膨出部72dの開口72nの縁下面と係合する。一対の弾性爪部材72lにはコイルばね72oが巻装されている。コイルばね72oは、膨出部72dと突片72kとの間に位置し、外向爪72mが膨出部72dの開口72nの縁下面と係合している状態では、膨出部72dと突片72kを互いに離間する方向に付勢する。この付勢力によって円板72aは接点52に圧接される。
この研磨ユニット72の円板72aの下面には、クリーニングヘッドとして研磨用テープ72cが貼着される。
【0047】
なお、円板72aの下面と外周面との間の角にはアール(丸み)が付けられている。この研磨ユニット72は、接点52の研磨に使用されるものであり、アールがないと、走行中に、接点52に円板72aの外周が引っかかる恐れがあるからである。アールがあれば、アール部分が接点52に摺接して上手く円板72aが接点52に乗り、接点52を研磨することができる。なお、アールに代えて、円板72aの外周面が下面に対して傾斜するように、円板72aを逆円錐台状に構成してもよい。要は、外周面が下面に対して上方に行くに従って拡径するものであればよい。
また、円板72aの厚さは、レール51の上面と接点52の距離よりも大きく設定されていることが好ましい。なぜなら、円板72aの厚さが、レール51の上面と接点52の距離よりも小さいと、ポイントにおいて交差するレールを乗り越えることができないからである。
さらに、この研磨ユニット72においても、モータ軸17aに取り付けた状態では、円板72aの下面が第2被装着部16の枠体16aの下端から下方に突出するが、この場合の突出量は、研磨ユニット71の場合よりも大きい。なぜなら、接点52の上面の高さは、レール51の上面の高さよりも低いからである。
また、研磨ユニット72は、モータ17によって回転駆動されるように構成してもよい。この場合、突片72kは、回転抵抗となるので、車台12の下面に当接させないことが好ましい。
【0048】
図16は、拭取りブロック73の斜視図である。
拭取りブロック73は、軌道板50A、50Bの左右のレール51の拭き取りに使用されるものである。
この拭取りブロック73は、例えば化学繊維等で構成され、可撓性を有している。この拭取りブロック73は、単独で、或いは他のクリーニングツール(ファン70、研磨ユニット71又は72)と一緒に使用される。
なお、乾式の拭取りブロック73に代えて、洗浄液等を浸み込ませた湿式の拭取りブロックを用いることもできる。
なお、ブロックの形は、左右のレール51を拭取るものであるため、中央が凹んだ形となっていてもよい。
【0049】
(動作及び作用)
この貨車玩具100は、以下のように動作及び作用する。
【0050】
ファン70及びキャップ75を取り付け、電源スイッチSWをオンすると、ファン70が回転駆動され、吸気口75aから塵埃を含んだ空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ファン70によって、ダクト22の導入口22aからダクト22内に送り込まれ、導出口22bからフィルタ19を介して外に出て行こうとする空気の流れが形成される。この場合、ダクト22内は導入口22a側が高圧、導出口22b側が低圧(大気圧)となる。このときには集塵室23は大気圧である。
したがって、ダクト22に入った空気は、大気圧に近い集塵室23の入口23aまで来ると、その一部が分流して集塵室23に噴き出す。そして、集塵室23の中に入った空気は、集塵室23内で滞留し、空気中の塵埃が集塵室23の床に落ちる。そして、集塵室23に入らなかった残りの空気(本流)は、拡開部で拡げられ、ダクト22の導出口22bを経てフィルタ19で捕捉される。
【0051】
また、研磨ユニット71を取り付け、電源スイッチSWをオンすると、研磨ユニット71が回転駆動され、軌道板50A、50Bの左右のレール51の表面が研磨される。
【0052】
さらに、研磨ユニット72を取り付け、電源スイッチSWをオンすると、研磨ユニット72が回転駆動され、軌道板50Bの中央の接点52の表面が研磨される。
【0053】
また、拭取りブロック73を取り付けると、貨車玩具100の走行に伴って、軌道板50A、50Bの左右のレール51の表面が拭き取られる。
【0054】
(実施形態の効果)
この貨車玩具100によれば、以下のような効果を奏する。
【0055】
排気の途中の集塵室23で塵埃を捕捉しているので、フィルタ19に達する塵埃の量が少なくなる。そのため、フィルタ19にかかる負荷が小さくなり、比較的に小さいフィルタで済ませることができる。したがって、貨車玩具100の意匠性を向上させることができる。
【0056】
また、ダクト22の導出側の通路を拡開しているので、その拡開部で気流の速度が遅くなり、塵埃が拡開部の下壁に落ちやすくなる。この点でも、フィルタ19にかかる負担を軽減させることができるとともに、ファン70を止めたときに塵埃が導入側に戻ることを防止することができる。
【0057】
また、電源を有しているため、動力車玩具の集電方式によらす、動力車玩具に連結して使用することができる。
【0058】
さらに、前後方向にモータ17、ダクト22及び集塵室23を順に設けているため、長尺の車体10に、バランス良くモータ17、ダクト22及び集塵室23を収めることができる。
【0059】
また、屋根11を取り外すことで、フィルタ19の掃除をすることができるとともに、集塵室23に溜まった塵埃を捨てることができる。
【0060】
さらにまた、ファン70の代わりに研磨ユニット71を取り付けることにより、左右のレール51を研磨することができる。
【0061】
また、ファン70の代わりに研磨ユニット72を取り付けることにより、3線集電方式の軌道における中央の接点52を研磨することができる。
【0062】
《変形例》
上記実施形態では、ファン70に代えて研磨ユニット71、72を取り付けられる構造としたが、円板71a、72aにクリーニングヘッドとしてフェルト等を貼り付けることにより拭取りユニットとし、当該拭取りユニットを取り付けるようにしてもよい。要は、ファン70に代えて他のクリーニングツールが取り付けられることである。
【0063】
また、上記実施形態では、電源として電池を設けることとしたが、二次電池を設けるようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、貨車玩具100に集塵機を設けたが、上記集塵機はフォルムを変えて卓上集塵機とすることができる。また、貨車玩具100以外の走行玩具、例えばコンテナ車玩具にも適用できる。
【0065】
また、上記実施形態では、取付部材71b、72bに弾性爪部材71h、72lを設けたが、円板71a、72a側に弾性爪部材を設け取付部に係合部を設けてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、ダクト22を上下方向に延在するように構成したが、ダクト22を途中で曲げてもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態では、屋根11にフィルタ19を設けるとともに、屋根11を集塵室23の上壁としたが、フィルタ19の取付場所は、ダクト22の導出口22bに設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、屋根11の取外しによって集塵室23の上端が開放されるように構成したが、車体10の側壁や後壁の取外しによって集塵室23の側端や後端等が開放されるようにしてもよい。
【0069】
《抽出される発明》
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施形態から、3線集電方式用の軌道を走行する走行玩具として、次のような発明を抽出することができる。
(i) 3線集電方式用の軌道を走行する走行玩具であって、
車体の下側に所定範囲で上下動可能に設けられ、前記軌道の左右のレールの間に進入可能で、下端にクリーニングヘッドが付設された当て部と、
前記当て部を下方に付勢し、前記クリーニングヘッドを前記左右のレールの間の接点に圧接させる付勢手段と、
を備え、
前記当て部の下面は平面であり、前記下面と周面との間にはアールが付されている、ことを特徴とする走行玩具。
ここで、アールが付された部分は、円板の外周面が下面に対して傾斜するように、円板を逆円錐台状に構成してもよい。要は、外周面が下面に対して上方に行くに従って拡がるものであればよい。
また、クリーニングヘッドは、研磨用テープ(やすり)や、乾式又は湿式の布等、或いは当て部に固定的に形成された研磨用の凹凸部(やすり)等から構成される。
【0070】
軌道の左右のレール51を研磨する研磨ユニット71の場合には、円板71a下の研磨用テープ71cを常に左右のレール51に接触させることができるため、左右のレール51の高さのずれ、レール51の上面高さのうねりを考慮して、円板71aを揺動可能且つ上下動可能に構成し、コイルばね71kで円板71aを下方に付勢しておけば足りる。
これに対して、3線集電方式の軌道の接点52を研磨する研磨ユニット72の場合にも、突起52の上面高さのうねりはあるため、円板72aを揺動可能且つ上下動可能に構成し、コイルばね72oで円板72aを下方に付勢しておくことは有用である。
しかし、このような構造とするため、3線集電方式の研磨ユニットでは、却って、不都合を生じる。
すなわち、3線集電方式の軌道の場合、接点52が間隔をおいて設けられていること、接点52の間隔が異なる場所があること、また、ポイントにおいては横に並んで複数の接点52が設けられている場合があること、さらには接点52の高さが異なる場合があること、から、円板72aに外周面が下面に対して直立していると、円板72aの揺動又は上下動に伴って、走行時に、接点52に円板72aの外周が突き当たってしまう可能性が高い。
そこで、接点52に円板72aの外周が突き合った場合でも、接点52と円板72aとの摺接によって、円板72aが自ら当該接点52から逃げ、当該接点52に乗り上げることができるようにするために、円板72aの外周面が下面に対して上方に行くに従って拡がるようにしている。
この走行玩具によれば、3線集電方式の軌道の接点を乗り越えつつ確実にクリーニングすることができる。
【0071】
(ii) 上記(i)の走行玩具であって、
前記当て部は円板状に構成され、全周に亘って前記アールが付されている、ことを特徴とする走行玩具。
この走行玩具によれば、当て部がどの向きであっても、接点を乗り越えクリーニングすることができる。
【0072】
(iii) 上記(i)又は(ii)の走行玩具であって、
前記車体に取り付けられる取付部材を備え、
前記取付部材又は前記当て部の一方には、先端に爪が形成された複数の弾性爪部材が設けられ、
前記取付部材又は前記当て部の他方には、前記弾性爪部材の弾性によって前記爪に係合される係合部が設けられ、
前記当て部は、前記爪と前記係合部との係合によって、前記取付部材に対して所定範囲で上下動可能に結合されるとともに、前記取付部材と前記当て部との間に前記付勢部材が設けられ前記取付部材に対して下方に付勢されている、ことを特徴とする走行玩具。
この走行玩具によれば、クリーニングヘッドが摩耗したときなどに、当て部を取付部材から取り外して当て部ごと交換することができる。
【0073】
(iv) (iii)の走行玩具であって、前記取付部材、前記当て部及び前記付勢部材は一体化されたクリーニングユニットを構成し、前記クリーニングユニットは前記車体に対して着脱可能となっている、ことを特徴とする走行玩具。
この走行玩具によれば、クリーニングユニットごと着脱できるので、その取扱いが容易となる。
【符号の説明】
【0074】
10 車体
11 屋根
12 車台
13 車輪
15 第1被装着部
16 第2被装着部
17 モータ
17a モータ軸
19 フィルタ
20 電池収容部
21 モータ収容部
22 ダクト
23 集塵室
50A,50B 軌道板
51 レール
52 接点
70 ファン
71、72 研磨ユニット
72a 円板
72b 取付部材
72c 研磨用テープ
72d 膨出部
72e 穴
72f 座繰り
72g 嵌合穴
72h リッド
72i 嵌合突起
72j 穴
72k 突片
72l 弾性爪部材
72m 外向爪
72n 開口
75 キャップ
75a 吸気口
100 貨車玩具
【要約】
【課題】フィルタが目詰まりし難い集塵機と、当該集塵機を備えた走行玩具とを提供すること。
【解決手段】モータと、前記モータの動力によって駆動されるファンと、駆動された前記ファンによって導入口に送り込まれた空気を導出口からフィルタを介して筐体の外部に排出するダクトと、前記空気の中に含まれる粉塵を捕集する集塵室と、を備え、前記ダクトの通路途中で前記ダクトと前記集塵室とを連通させ、前記ダクトに送り込まれた空気を分流して前記ダクトに噴出させるようにした集塵機である。また、当該集塵機を備えた走行玩具である。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16