(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240828BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240828BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/08 381
G03G9/09
(21)【出願番号】P 2023214047
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2022202385
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新谷 貫太
(72)【発明者】
【氏名】丸野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】村田 将一
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-352247(JP,A)
【文献】特開2005-352245(JP,A)
【文献】特開2005-043772(JP,A)
【文献】特開2017-223922(JP,A)
【文献】特開2013-222052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
G03G 9/08
G03G 9/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂A
、及び、エステル基濃度5.0mmol/g以上12.0mmol/g以下の結晶性ポリエステル樹脂Cを含有し、
前記着色剤が、BET比表面積200m
2/g以上のカーボンブラックを含有する、
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
結着樹脂及び着色剤を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂A、及び、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有し、当該非晶性ポリエステル樹脂Aに対する当該結晶性ポリエステル樹脂Cの質量比[結晶性ポリエステル樹脂C/非晶性ポリエステル樹脂A]が、5/95以上40/60以下であり、
前記着色剤が、BET比表面積200m
2
/g以上のカーボンブラックを含有する、
静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステル樹脂Aが、アルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物であり、当該アルコール成分(a)が、炭素数が2以上6以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールを含有する、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記アルコール成分(a)中の前記脂肪族ジオールの含有量が80mol%以上である、請求項
3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記着色剤が、BET比表面積290m
2/g以下のカーボンブラックを含有する、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記着色剤が、BET比表面積210m
2/g以上250m
2/g以下のカーボンブラックを含有する、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記静電荷像現像用トナーがトナー粒子を含み、当該トナー粒子中のカーボンブラックの含有量が、2質量%以上20質量%以下である、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集及び融着させる工程を含む
、静電荷像現像用トナー
の製
造方法であって、
前記樹脂粒子が、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂A
、及び、エステル基濃度5.0mmol/g以上12.0mmol/g以下の結晶性ポリエステル樹脂Cを含有し、
前記着色剤粒子が、BET比表面積200m
2/g以上のカーボンブラックを含有する、
静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集及び融着させる工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記樹脂粒子が、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂A、及び、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有し、当該非晶性ポリエステル樹脂Aに対する当該結晶性ポリエステル樹脂Cの質量比[結晶性ポリエステル樹脂C/非晶性ポリエステル樹脂A]が、5/95以上40/60以下であり、
前記着色剤粒子が、BET比表面積200m
2
/g以上のカーボンブラックを含有する、
静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項10】
前記融着させる工程における加熱温度が100℃以下である、請求項
8又は9に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
顔料分散剤である付加重合体Eを用いて、BET比表面積200m
2/g以上のカーボンブラックを含有する着色剤粒子分散液を得る工程を含む、請求項
8又は9に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した電子写真用トナーの開発が求められている。黒色トナーにおいては、着色剤としてカーボンブラックが汎用され、印刷物の画像濃度の向上が検討されている。
【0003】
特許文献1には、高着色力であり、かつ環境安定性に優れた静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを目的として、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び有機溶剤を混合して、油相を調製する工程、及び前記油相と水相とを混合する工程を有し、前記着色剤が、DBP吸油量が25mL/100g以上45mL/100g以下、かつ、BET比表面積が65m2/g以上120m2/g以下のカーボンブラックであり、前記結着樹脂が、非晶性樹脂を含有し、前記非晶性樹脂が、側鎖に炭素数8以上の脂肪族炭化水素基を有する非晶性ポリエステル樹脂、及びポリエステルセグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む非晶性複合樹脂の少なくともいずれかを含有する、静電荷像現像用トナーの製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、化学トナー組成物を提供することを目的として、樹脂と着色剤とを含むトナー組成物であって、該着色剤が、a)特定の有機基が結合された顔料を含む改質顔料であるか、或いはb)該着色剤の表面上に少なくとも1種のフェニル含有ポリマーが吸着された顔料を含む改質顔料である、トナー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-154020号公報
【文献】特開2014-222344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷物の画像濃度を高めるためには、トナー粒子中に着色剤を均一に分散させることが必須であるが、カーボンブラックは粒子の凝集力が強いためトナー粒子中に分散させることが容易ではなく、特許文献1及び2に記載のトナーで印刷した場合でも、印刷物の画像濃度はいまだ十分であるとは言えなかった。
本発明は、高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、エステル基濃度が特定の範囲にある非晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂と、BET比表面積が比較的大きいカーボンブラックを含有する着色剤とを組み合わせて含む静電荷像現像用トナーにより、高い画像濃度を有する印刷物が得られることを見出した。
本発明は、以下の〔1〕に関する。
〔1〕結着樹脂及び着色剤を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂Aを含有し、
前記着色剤が、BET比表面積200m2/g以上のカーボンブラックを含有する、静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる静電荷像現像用トナーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)は、少なくとも、結着樹脂及び着色剤を含む。
前記結着樹脂が、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂A(以下、単に「樹脂A」ともいう)を含有する。また前記着色剤が、BET比表面積200m2/g以上のカーボンブラックを含有する。
以上の特徴により、本発明のトナーを用いて、高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる。本発明のトナーの記録媒体としては、紙やフィルムが例示される。
なお、少なくとも、結着樹脂及び着色剤を含むトナー粒子(以下、単に「トナー粒子」ともいう)を、本発明のトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
【0009】
本発明のトナーを用いて、高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
BET比表面積の高いカーボンブラックは一次粒子が小さいため、着色力が高く、潜在的に高い画像濃度を有する印刷物が得られる。しかし、BET比表面積が高いと、粒子表面に存在する質量単位当たりの官能基(例えば、カルボキシ基及びヒドロキシ基)の数も増加する。そのため、BET比表面積の高いカーボンブラックは結着樹脂中で分散しにくく凝集しやすい。結着樹脂を用いて、粉砕法での混練、又は、ケミカル法での融着工程を経てトナーを作製する場合、原料混合物を、非晶性樹脂のガラス転移温度以上で加熱して、粘度が低い状態で保持すると、BET比表面積の高いカーボンブラックは、水素結合等の作用により凝集してしまう。この場合、BET比表面積の高いカーボンブラックを含むトナーを用いた印刷物であっても、十分な画像濃度が得られない。
本発明では、エステル基濃度が比較的高い非晶性ポリエステル樹脂Aを用いることで、カーボンブラック表面の官能基と、非晶性ポリエステル樹脂Aのエステル部とが、水素結合等により互いに相互作用する。そのため、原料混合物を粘度が低い状態で保持しても、BET比表面積の高い(一次粒径の小さい)カーボンブラックが原料混合物中で凝集することが抑制され、カーボンブラックがトナー粒子中に均一に分散したトナーを得ることができる。結果、当該トナーを用いて作製された印刷物の画像濃度を向上させることができると考えられる。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
明細書中、ポリエステル系樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解してカルボン酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
「スチレン系化合物」とは、無置換又は置換のスチレンを意味する。
【0011】
〔トナー粒子〕
本発明において、トナー粒子は、少なくとも、結着樹脂及び着色剤を含む。
【0012】
<結着樹脂>
結着樹脂は、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂A(以下、単に「樹脂A」ともいう)を含有する。
【0013】
(非晶性ポリエステル樹脂A)
非晶性ポリエステル樹脂Aは、アルコール成分(a)とカルボン酸成分(b)との重縮合物である。
アルコール成分(a)は、脂肪族ジオールを含有することが好ましく、炭素数が2以上6以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールを含むことがより好ましい。
【0014】
炭素数が2以上6以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,4-ブタンジオール、2,3-ジメチル-1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,4-ブタンジオール、及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールであり、より好ましくは1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールであり、更に好ましくは1,2-プロパンジオール及びネオペンチルグリコールである。
これらの脂肪族ジオールは、1種又は2種以上を用いてもよい。
アルコール成分(a)中、脂肪族ジオールの含有量は、所望のエステル基濃度を得る観点から、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より好ましくは100mol%である。
【0015】
脂肪族ジオール以外のアルコール成分(a)としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物としては、式(I):
【0016】
【化1】
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立にエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加mol数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が例示される。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキシド付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
【0017】
カルボン酸成分(b)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
これらの中でも、カルボン酸成分(b)は、所望のエステル基濃度を得る観点から、好ましくは、芳香族ジカルボン酸を含む。
芳香族ジカルボン酸としては、上記観点から、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、テレフタル酸及びイソフタル酸を含むことが更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分(b)中、所望のエステル基濃度を有する非晶性ポリエステル樹脂Aを得る観点から、好ましくは60mol%以上、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは80mol%以上であり、そして、100mol%以下である。
【0018】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、アジピン酸、コハク酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよいコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、オクチルコハク酸やドデセニルコハク酸(テトラプロペニルコハク酸)等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分(b)中、所望のエステル基濃度を有する非晶性ポリエステル樹脂Aを得る観点から、好ましくは40mol%以下、より好ましくは20mol%以下であり、0mol%以上である。
【0019】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸及びその無水物が好ましい。
3価以上のカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分(b)中、所望のエステル基濃度を有する非晶性ポリエステル樹脂Aを得る観点から、好ましくは20mol%以下、より好ましくは15mol%以下、更に好ましくは10mol%以下であり、0mol%以上である。
アルコール成分(a)は1価のアルコールを、カルボン酸成分(b)は1価のカルボン酸化合物を、適宜含有してもよい。
【0020】
アルコール成分(a)の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0021】
樹脂Aは、印刷物の画像濃度の観点から、エステル基濃度が5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下であり、好ましくは5.5mmol/g以上、より好ましくは6.0mmol/g以上であり、そして、好ましくは13.0mmol/g以下、より好ましくは12.0mmol/g以下である。樹脂Aのエステル基濃度は、次の式により算出される。
【0022】
【数1】
〔式中、Aは非晶性ポリエステル樹脂Aの原料モノマーがすべて反応した際に生成する全エステル結合量(mol)であり、Bは、非晶性ポリエステル樹脂Aを構成する原料モノマーの全質量(g)である。なお、式中の( )内は、各数値の単位を意味する。〕
なお、非晶性ポリエステル樹脂Aとして、2種以上の樹脂を混合して使用する場合には、各非晶性ポリエステル樹脂Aのエステル基濃度の加重平均を非晶性ポリエステル樹脂Aのエステル基濃度とする。
【0023】
非晶性ポリエステル樹脂Aに加えて、後述する結晶性ポリエステル樹脂Cを用いる場合には、各樹脂のエステル基濃度の加重平均が、好ましくは5.0mmol/g以上、より好ましくは5.5mmol/g以上、更に好ましくは6.0mmol/g以上であり、そして、好ましくは15.0mmol/g以下、より好ましくは13.0mmol/g以下、更に好ましくは12.0mmol/g以下である。
【0024】
≪非晶性ポリエステル樹脂Aの製造方法≫
樹脂Aは、例えば、アルコール成分(a)及びカルボン酸成分(b)を含む原料モノマーを重縮合することにより製造することができる。
【0025】
アルコール成分(a)及びカルボン酸成分(b)の重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、120℃以上250℃以下程度の温度で行うことができる。
エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等の錫化合物、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のチタン化合物が挙げられる。エステル化触媒と共に用い得るエステル化助触媒としては、例えば、没食子酸が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、樹脂Aの原料モノマーであるアルコール成分(a)、及びカルボン酸成分(b)の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下である。
エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分(a)、及びカルボン酸成分(b)の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下である。
また、重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤が挙げられる。
重合禁止剤を用いる場合、重合禁止剤の使用量はアルコール成分(a)、及びカルボン酸成分(b)の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下である。
【0026】
≪非晶性ポリエステル樹脂Aの物性≫
樹脂Aの軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。
樹脂Aのガラス転移温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下である。
【0027】
樹脂Aの酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
樹脂Aのエステル基濃度、軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、樹脂Aの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、樹脂Aを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0028】
(非晶性樹脂B)
結着樹脂は、樹脂A以外に、非晶性樹脂B(以下、単に「樹脂B」ともいう)を含んでいてもよい。樹脂Bとしては、例えば、エステル基濃度が5.0mmol/g未満の非晶性ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂が挙げられる。
【0029】
(結晶性ポリエステル樹脂C)
トナーの画像濃度の観点から、結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂C(以下、単に「樹脂C」ともいう)を含んでいてもよく、樹脂Cを含むことが好ましい。
【0030】
結晶性ポリエステル樹脂Cは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分としては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、エチレングリコール、1,10-デカンジオールがより好ましく、エチレングリコールが更に好ましい。
【0031】
α,ω-脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして100mol%以下であり、好ましくは100mol%である。
【0032】
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等のα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0033】
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、ドデカン二酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0034】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして100mol%以下であり、好ましくは100mol%である。
【0035】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸成分としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸等のモノカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0036】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0037】
樹脂Cの製造方法は、例えば、非晶性ポリエステル樹脂Aと同様の方法が挙げられる。
【0038】
≪結晶性ポリエステル樹脂Cの物性≫
樹脂Cのエステル基濃度は、結晶性ポリエステル樹脂の製造上の観点から、好ましくは5.0mmol/g以上、より好ましくは6.0mmol/g以上、更に好ましくは7.0mmol/g以上であり、そして、好ましくは12.0mmol/g以下、より好ましくは11.0mmol/g以下、更に好ましくは10.0mmol/g以下である。
樹脂Cのエステル基濃度は、樹脂Cのエステル基濃度と同様にして算出される。すなわち、樹脂Aのエステル基濃度を算出する式において、「A」を「非晶性ポリエステル樹脂Aの原料モノマーがすべて反応した際に生成する全エステル結合量(mol)」から「結晶性ポリエステル樹脂Cの原料モノマーがすべて反応した際に生成する全エステル結合量(mol)」に代え、「B」を、「非晶性ポリエステル樹脂Aを構成する原料モノマーの全質量(g)」から「結晶性ポリエステル樹脂Cを構成する原料モノマーの全質量(g)」に代えることにより算出される。
【0039】
樹脂Cの軟化点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
樹脂Cの融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
【0040】
樹脂Cの酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
樹脂Cの軟化点、融点、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂Cを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、融点、及び酸価の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0041】
本発明において、結着樹脂は、樹脂A、樹脂B、及び樹脂Cを意味する。
トナー粒子中の結着樹脂の含有量は、印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは95質量%以下である。
結着樹脂中の樹脂Aの含有量は、印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
【0042】
結着樹脂が樹脂Cを含む場合、結着樹脂中の樹脂Cの含有量は、印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0043】
結着樹脂が樹脂Cを含む場合、樹脂粒子中、樹脂Aに対する樹脂Cの質量比[樹脂C/樹脂A]は、トナーの熱応答性の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上であり、そして、好ましくは40/60以下、より好ましくは30/70以下、更に好ましくは25/75以下である。
【0044】
<着色剤>
本発明において、着色剤は、BET比表面積200m2/g以上のカーボンブラック(以下、単に「カーボンブラック」又は「顔料」と記載することもある)を含有する。
【0045】
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックが挙げられる。これらの中でも、着色力の観点から、ファーネスブラックが好ましい。
カーボンブラックのpH値は、トナーの画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上、更に好ましくは7.0以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
カーボンブラックのpH値の測定は、具体的には以下の手順で行うことができる。
(1)カーボンブラック6gとpH7の蒸留水79mLとエタノール1gを容器に採取し混合する。
(2)これを15分間煮沸し、その後常温まで30分で冷却する。
(3)デカンテーションにより上澄みを除去し、固形分30~35質量%のスラリーを得る。
(4)スラリーにpH電極を差し込み、pHを測定する。
このスラリーのpH値をカーボンブラックのpH値とする。
pHメータとしては、例えば、「Seven2Go S2」(METTLER TOLEDO社製)が挙げられる。
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、トナーの帯電性の観点から、好ましくは30ml/100g以上、より好ましくは60ml/100g以上、更に好ましくは100ml/100g以上であり、そして、好ましくは160ml/100g以下、より好ましくは140ml/100g以下、更に好ましくは125ml/100g以下である。
カーボンブラックのDBP吸油量は、ISO4656(JIS K6217-4:2008)の「オイル吸油量の求め方」に準拠して測定される。
カーボンブラックのBET比表面積は、より高画像濃度の印刷物を得ることができ、かつ、環境安定性に優れた静電荷像現像用トナーを得る観点から、好ましくは205m2/g以上、より好ましくは210m2/g以上であり、そして、好ましくは290m2/g以下、より好ましくは275m2/g以下、更に好ましくは260m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下である。
カーボンブラックのBET比表面積は、JIS K 6217-2:2017に準拠し、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、カーボンブラックの中には、FDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)により食品接触物質として承認されているものがあり、本発明のトナーを包装紙などの食品と接触する可能性のある印刷物に適用する場合には、それらを使用することが好ましい。すなわち、FDAの承認基準に準拠し、カーボンブラックに含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)の量は、質量基準で10ppb以下であることが好ましい。
【0046】
商業的に入手できるカーボンブラックとしては、「Printex F80」(オリオン・エンジニアドカーボン社製、pH 8.1、DBP吸油量105ml/100g、BET比表面積225m2/g)、「Black Pearls 4750」(キヤボットコーポレーション製、pH 7.9、DBP吸油量117ml/100g、BET比表面積240m2/g)、「Monarch 4750」(キヤボットコーポレーション製、pH 7.9、DBP吸油量122ml/100g、BET比表面積258m2/g)、及び「Monarch 880」(キヤボットコーポレーション製、pH 7.4、DBP吸油量105ml/100g、BET比表面積258m2/g)が例示される。
カーボンブラックは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0047】
トナー粒子中のカーボンブラックの含有量は、印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
また、トナー粒子中のカーボンブラックの含有量は、高い画像濃度の印刷物を得る観点から、樹脂A 100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上であり、そして、環境安定性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0048】
トナー粒子は、着色剤として、上述した特定のBET比表面積を有するカーボンブラックに加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の着色剤を含有していてもよいが、他の着色剤の含有量は、着色剤全体の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは他の着色剤を含有しないことである。
【0049】
<離型剤>
トナー粒子は、離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0050】
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
離型剤の含有量は、トナー粒子中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは21質量%以下、更に好ましくは17質量%以下である。
その他、トナー粒子は、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0051】
<トナー粒子の物性>
トナー粒子の体積中位粒径D50は、良好な画質の印刷塗膜を得る観点、トナーのクリーニング性をより向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0052】
トナー粒子の円形度は、良好な画質の印刷塗膜(画像)を得る観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上であり、そして、クリーニング性の観点から、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
【0053】
トナー粒子のCV値は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上、更に好ましくは14%以上であり、そして、良好な画質を得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下である。
トナー粒子の体積中位粒径D50及びCV値は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0054】
〔トナーの製造方法〕
本発明の一実施態様に係るトナーの製造方法は、溶融混練法、乳化転相法、懸濁重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法であってもよいが、乳化凝集法、溶融混練法が好ましく、乳化凝集法がより好ましい。
【0055】
<乳化凝集法>
乳化凝集法は、樹脂Aを含有する樹脂粒子と、カーボンブラックを含有する着色剤とを、水系媒体中で凝集させる工程及び融着させる工程を含む。
【0056】
(樹脂粒子を凝集させる工程)
樹脂粒子を凝集させる工程では、水系媒体中で、樹脂Aを含有する樹脂粒子と、カーボンブラックとを凝集させて、凝集粒子1を得る。樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液と、着色剤(カーボンブラック)を含有する着色剤粒子分散液とを混合して、これらの粒子を凝集させて凝集粒子1を得ることが好ましい。結着樹脂が樹脂Aに加えて樹脂Bや樹脂C等の樹脂A以外の樹脂を含有する場合も、樹脂Aと同一若しくは異なる粒子に含有させて凝集させてもよい。ここで、樹脂粒子と着色剤に加えて、離型剤を更に凝集させることが好ましく、樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液と、着色剤を含む着色剤粒子分散液と、離型剤を含む離型剤粒子分散液とを混合して、これらの粒子を凝集させて凝集粒子1を得ることがより好ましい。また、樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、及び離型剤粒子分散液は、それぞれ樹脂粒子の水系分散液、着色剤粒子の水系分散液、及び離型剤粒子の水系分散液であることが更に好ましい。
また、樹脂粒子を凝集させる工程において、凝集粒子1は、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明において、水系媒体とは、水を主成分とする媒体であり、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下である。水としては、脱イオン水、又は蒸留水が好ましい。
水と共に水系媒体を構成し得る水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。これらの中でも、炭素数1以上5以下のアルキルアルコールが好ましく、より好ましくはエタノールである。
【0057】
≪樹脂粒子分散液の製造方法≫
樹脂粒子は、水系媒体を用いて、水系分散液として製造するのが好ましい。
【0058】
分散は、公知の方法を用いて行うことができるが、転相乳化法により分散することが好ましい。転相乳化法としては、例えば、樹脂の有機溶媒溶液又は溶融した樹脂に、水系媒体を添加して転相乳化する方法が挙げられる。樹脂の有機溶媒溶液に水系媒体を添加して転相乳化する方法が好ましい。
転相乳化に用いる有機溶媒としては、樹脂を溶解し、水溶性であれば特に限定されないが、例えば、樹脂Aに対してはメチルエチルケトンが挙げられる。
有機溶媒溶液には、中和剤を添加してもよい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
樹脂粒子を構成する樹脂の中和度は、好ましくは40mol%以上、より好ましくは50mol%以上、更に好ましくは60mol%以上、更に好ましくは70mol%以上であり、そして、好ましくは100mol%以下、より好ましくは95mol%以下、更に好ましくは90mol%以下である。
なお、樹脂粒子を構成する樹脂の中和度は、下記式によって求めることができる。
中和度(mol%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子を構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子を構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
【0059】
樹脂の有機溶媒溶液、又は溶融した樹脂を撹拌しながら、水系媒体を徐々に添加して転相させる。
水系媒体を添加する際の有機溶媒溶液の温度は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
【0060】
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶媒を除去してもよい。また、濾過等によって樹脂粒子を単離してもよい。転相乳化の後に得られた分散液から有機溶媒を除去した樹脂粒子の水系分散液を用いることが好ましい。この場合、有機溶媒の残存量は、分散液中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%である。
【0061】
分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは0.08μm以上、より好ましくは0.12μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。
分散液中の樹脂粒子のCV値は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。
分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値は、実施例に記載の方法により測定される。
【0062】
樹脂粒子の水系分散液の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点、及び樹脂粒子の水系分散液の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
なお、固形分は不揮発性成分の総量である。
【0063】
≪着色剤粒子分散液の製造方法≫
着色剤粒子分散液は、カーボンブラックを含有する着色剤と水系媒体とを、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散機を用いて分散して得ることが好ましい。当該分散は、顔料の分散安定性を向上させる観点から、ポリマータイプの顔料分散剤(好ましくは付加重合体E)又は界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
【0064】
付加重合体Eは、印刷物の画像濃度の観点から、スチレン系化合物aを含む原料モノマーの付加重合物である。すなわち、付加重合体Eは、印刷物の画像濃度の観点から、スチレン系化合物a由来の構成単位を主鎖に含む。
付加重合体Eの原料モノマーは、スチレン系化合物aの他、好ましくはイオン性基を有する付加重合性モノマーb(以下、単に「モノマーb」ともいう)を含有する。
【0065】
スチレン系化合物aとしては、例えば、置換又は無置換のスチレンが挙げられる。スチレンに置換される置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホ基又はその塩が挙げられる。
スチレン系化合物aの分子量は1,000未満が好ましく、800以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。
スチレン系化合物aとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましい。
スチレン系化合物aは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系化合物aの量は、印刷物の画像濃度の観点から、付加重合体Eの原料モノマー中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
【0066】
モノマーbにおける、イオン性基とは、水中でイオン解離する基を意味する。
イオン性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、アミノ基、又はこれらの塩が挙げられる。
イオン性基としては、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性基である。アニオン性としては、酸性基又はこれらの塩が好ましく、カルボキシ基、スルホ基、又はこれらの塩がより好ましく、カルボキシ基、又はこれらの塩が更に好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸が挙げられる。
これらの中でも、アニオン性基を有する付加重合性モノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
モノマーbを含有する場合、モノマーbの量は、付加重合体Eの原料モノマー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0067】
本発明において、顔料分散剤は、スチレン系化合物aと(メタ)アクリル酸との共重合ポリマー(スチレンアクリルポリマー)が好ましい。
【0068】
更に、付加重合体Eの原料モノマーとしては、モノマーa、b以外の付加重合性モノマー(その他のモノマー)を含有していてもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレンオキシド基を有する付加重合性モノマー、片末端に付加重合性官能基を有するスチレン系マクロモノマー、炭素数1以上22以下(好ましくは6以上18以下)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
その他のモノマーを含有する場合、その他のモノマーの量は、付加重合体Eの原料モノマー中、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0069】
付加重合体Eの重量平均分子量は、画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下である。なお、重量平均分子量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
【0070】
付加重合体Eは、例えば、原料モノマーを公知の重合法により共重合させることによって製造できる。重合法としては、好ましくは、原料モノマーを溶媒中で重合開始剤や重合連鎖移動剤等と共に加熱して重合させる、溶液重合法である。
重合開始剤としては、例えば、ジブチルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下である。
重合連鎖移動剤としては、例えば、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類が挙げられる。
重合連鎖移動剤の添加量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは3質量部以下である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離及び精製してもよい。
【0071】
着色剤粒子分散液中、着色剤(カーボンブラック)と付加重合体Eとの質量比(着色剤/付加重合体E)は、トナーの帯電性及び印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上、更に好ましくは65/35以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下である。
【0072】
顔料の分散安定性を向上させる界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられ、顔料の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアリールエーテル類が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアリールエーテル類が好ましく、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルがより好ましい。
【0073】
着色剤粒子分散液中、着色剤(カーボンブラック)と界面活性剤との質量比(着色剤/界面活性剤)は、トナーの帯電性及び印刷物の画像濃度の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上、更に好ましくは65/35以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下である。
【0074】
着色剤粒子分散液中、顔料は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
着色剤粒子分散液の固形分濃度は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0075】
着色剤粒子の体積中位粒径D50は、トナー粒子中での分散性向上の観点から、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.04μm以上、更に好ましくは0.06μm以上であり、そして、好ましくは0.20μm以下、より好ましくは0.15μm以下、更に好ましくは0.10μm以下である。
着色剤粒子のCV値は、トナー粒子中での分散性向上の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値は、実施例の方法によって測定される。
【0076】
≪離型剤粒子分散液の製造方法≫
離型剤粒子分散液は、例えば、離型剤と前述の樹脂粒子分散液と必要に応じて水系媒体とを、離型剤の融点以上の温度で、ホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等の分散機を用いて分散することによって得られる。
分散時の加熱温度は、好ましくは離型剤の融点以上かつ80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは96℃以下である。
【0077】
離型剤粒子分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、離型剤と前述の樹脂粒子とを混合して得ることが好ましい。離型剤と樹脂粒子を用いて離型剤粒子を調製することで、樹脂粒子により離型剤粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくても離型剤を水系媒体中に分散させることが可能となる。離型剤粒子分散液中では、離型剤粒子の表面に樹脂粒子が多数付着した構造を有していると考えられる。
離型剤を分散する樹脂粒子を構成する樹脂は、好ましくはポリエステル系樹脂であり、前述の非晶性ポリエステル樹脂Aを用いることがより好ましい。
【0078】
離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径D50は、凝集により均一な凝集粒子を得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.15μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.5μm以下である。
離型剤粒子分散液中の離型剤粒子のCV値は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値は、実施例に記載の方法により測定される。
【0079】
-界面活性剤-
樹脂粒子を凝集させる工程では、各粒子の分散液を混合し、混合分散液を調製する際、樹脂粒子、離型剤粒子、着色剤粒子等の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合、その総使用量は、凝集粒子1における結着樹脂 100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0080】
-凝集剤-
樹脂粒子を凝集させる工程では、凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤としては、例えば、第四級塩等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤、無機系凝集剤が挙げられる。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体が挙げられる。
凝集性を向上させ均一な凝集粒子1を得る観点から、1価以上5価以下の無機系凝集剤が好ましく、1価以上2価以下の無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましく、硫酸アンモニウムが更に好ましい。
【0081】
凝集剤を用いて、例えば、0℃以上40℃以下の樹脂粒子、離型剤粒子、及び着色剤粒子を含む混合分散液に、凝集粒子1における結着樹脂 100質量部に対し25質量部以上50質量部以下の凝集剤を添加し、樹脂粒子、離型剤粒子、及び着色剤粒子を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子1を得る。更に、凝集を促進させる観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。
【0082】
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
【0083】
-凝集停止剤-
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アリールスルホン酸塩、アリールスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられ、好ましくはアリールスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、より好ましくはβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩である。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、凝集粒子1における結着樹脂 100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。
【0084】
凝集粒子1の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0085】
なお、本発明において、樹脂粒子を凝集させる工程の後、融着させる工程の前に、得られた凝集粒子1に非晶性樹脂を含むシェル用樹脂粒子を付着させて凝集させ、凝集粒子2を得る工程を有していてもよい。シェル用樹脂粒子を凝集させる工程を有することで、コアシェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
シェル用樹脂粒子としては、好ましくは非晶性樹脂、より好ましくは非晶性ポリエステル系樹脂、更に好ましくは上述した樹脂A及び樹脂Bから選ばれる少なくとも1種である。
シェル用樹脂粒子分散液は、前述の樹脂粒子分散液の製造方法により得られる。
また、トナーの製造方法がシェル用樹脂粒子を凝集させる工程を有する場合には、該工程において凝集粒子2が、トナー粒子として適度な粒径に成長したところで凝集を停止させることが好ましく、上述の凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集粒子1の質量に対する、シェル用樹脂粒子の質量比[シェル用樹脂粒子/凝集粒子1]は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは1/99以上、より好ましくは3/97以上、更に好ましくは5/95以上であり、そして、好ましくは25/75以下、より好ましくは20/80以下、更に好ましくは15/85以下である。
【0086】
(融着させる工程)
融着させる工程では、例えば、凝集粒子1又は凝集粒子2を水系媒体中で融着させる。
融着によって、凝集粒子1又は凝集粒子2に含まれる各粒子を融着し、融着粒子が得られる。
融着させる工程においては、凝集粒子1又は凝集粒子2の融着性を向上させる観点、並びにトナーの低温定着性を向上させる観点から、凝集粒子に含まれる非晶性ポリエステル系樹脂のうち最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度以上の温度で保持する。
凝集粒子を融着させる際の保持(加熱)温度は、トナーの生産性を向上させる観点から、100℃以下であることが好ましい。また、前記保持温度は、100℃以下であり、かつ、非晶性ポリエステル系樹脂中の最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度より、好ましくは2℃高い温度以上、より好ましくは3℃高い温度以上であり、そして、非晶性ポリエステル系樹脂中の最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度より、好ましくは30℃高い温度以下、より好ましくは25℃高い温度以下、更に好ましくは20℃高い温度以下である。
その際、非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度で保持する時間は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは10分間以上、更に好ましくは30分間以上であり、そして、好ましくは240分間以下、より好ましくは180分間以下、更に好ましくは120分間以下、更に好ましくは90分間以下である。
なお、所望の円形度となるまで、上記の温度で保持することが好ましい。
【0087】
融着により得られた融着粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0088】
融着により得られる融着粒子の円形度は、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
融着は、上記好ましい円形度に達した後に終了することが好ましい。
円形度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0089】
(後処理工程)
融着させる工程の後に後処理工程を行ってもよく、融着粒子を単離することによってトナー粒子が得られる。融着させる工程で得られた融着粒子は、水系媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水系媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
【0090】
<溶融混練法>
本発明において、溶融混練法は、例えば、結着樹脂、着色剤、及び必要に応じて、離型剤等の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練する。続いて、冷却、粉砕、分級して製造することによりトナー粒子を得ることができる。
【0091】
トナーはトナー粒子を含む。得られたトナー粒子はそのまま本発明のトナーとして用いることができる。また、トナー粒子の表面に、外添剤を添加処理したものを本発明のトナーとして用いることが好ましい。
【0092】
<外添剤>
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料の微粒子、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。外添剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。また、粒径の異なる疎水性シリカを2種以上使用してもよい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
【0093】
トナーは、電子写真方式の印刷において、静電荷像現像に用いられる。トナーは、例えば、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
なお、「アルキレンオキシド(X)」等の標記において、かっこ内の数値Xは、アルキレンオキシドの平均付加mol数を意味する。
【0095】
[測定方法]
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992に記載の中和滴定法に従って測定した。ただし、測定溶媒をクロロホルムとした。
【0096】
〔樹脂の軟化点、結晶性指数、及びガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。
結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0097】
〔顔料分散剤の重量平均分子量〕
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ43mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製、GPC装置(HLC-8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolum Super AW-H)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中にポリマー0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(DISMIC-13HP PTFE 0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
〔顔料分散剤の酸価〕
JIS K 0070:1992に記載の電位差滴定法に準拠して測定した。
【0098】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0099】
〔樹脂粒子、離型剤粒子、着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに試料分散液を入れ、蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径D50及び体積平均粒径DVを測定した。また、CV値(粒径分布)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径DV)×100
【0100】
〔樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、及び離型剤粒子分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5min/変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0101】
〔凝集粒子の体積中位粒径D50〕
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50を求めた。
【0102】
〔融着粒子の円形度〕
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:融着粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
【0103】
〔トナー粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
測定機、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、前述の凝集粒子の体積中位粒径D50の測定で用いたものと同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance):13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50及び体積平均粒径Dvを求めた。
また、CV値(%)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径Dv)×100
【0104】
〔BET比表面積〕
カーボンブラックのBET比表面積はJIS K6217-2:2017の「比表面積の求め方」に準拠して測定した。測定装置は多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置「3FLEX」(株式会社島津製作所製)を用いて、試料1.0gを検出方法に容量法、測定方法に多点法を用いて測定した。
【0105】
[樹脂の製造]
〔非晶性ポリエステル樹脂Aの製造〕
製造例A1(樹脂A-1の製造)
表1に示す、ネオペンチルグリコール、テレフタル酸、及びジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10Lリットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温し、2時間反応を行った後、210℃まで5℃/hの速度で昇温を行った。その後180℃まで冷却した後、表1に示すイソフタル酸を添加し、再び190℃まで昇温し、1時間反応を行った後、220℃まで10℃/hの速度で昇温を行った。その後13.3kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行い、樹脂A-1を得た。物性値を表1に示す。
【0106】
製造例A2(樹脂A-2の製造)
表1に示すフマル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、反応系を210℃で1時間保持した後に210℃から220℃まで10℃/hで昇温し、その後220℃で3時間保持し、重縮合させた。その後、190℃まで冷却した後、フマル酸及び4-tert-ブチルカテコールを反応系に投入し、190℃から220℃まで10℃/hで昇温し、220℃にて5時間反応を行い、220℃、10kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行い、樹脂A-2を得た。物性値を表1に示す。
【0107】
製造例B1(樹脂B-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、表1に示すトリメリット酸無水物以外のポリエステル樹脂の原料モノマー及びジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で6時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、表1に示すトリメリット酸無水物を入れ、215℃で1時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行って、樹脂B-1を得た。物性値を表1に示す。
【0108】
【0109】
〔結晶性ポリエステル樹脂(C)の製造〕
製造例C1(樹脂C-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコの内部を窒素置換し、表2に示すポリエステル樹脂の原料モノマーを入れ、反応系を撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)23gを反応系に加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaの減圧下にて1時間保持し、樹脂C-1を得た。物性値を表2に示す。
【0110】
【0111】
〔顔料分散剤(付加重合体E)の製造〕
アクリル酸 61.6質量部、スチレン 128.8質量部、α-メチルスチレン 9.6質量部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン 20質量部、重合連鎖移動剤2-メルカプトエタノール 0.3質量部、及び前記モノマー混合液の10質量%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90質量%、前記重合連鎖移動剤 0.27質量部、メチルエチルケトン 60質量部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 2.2質量部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤 0.3質量部をメチルエチルケトン 5質量部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、カルボキシ基を有する付加重合体Eのメチルエチルケトン溶液(重量平均分子量:20100)を得た。その後、減圧乾燥させることで付加重合体E(酸価240mgKOH/g)を得た。
【0112】
〔樹脂粒子分散液の製造〕
製造例X1(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積5Lの容器に、樹脂A-1を1000g、及びメチルエチルケトンを1000g入れ、80℃にて1時間かけて樹脂A-1を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂A-1の酸価に対して中和度80mol%になるように添加して、30分間撹拌した。
次いで、80℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水 3000gを60分間かけて添加し、転相乳化した。継続して80℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が25質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X-1を得た。得られた樹脂粒子分散液X-1中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3示す。
【0113】
製造例X2及びX3(樹脂粒子分散液X-2及びX-3の製造)
使用する樹脂A-1を樹脂A-2及びB-1に変更した以外は、製造例X1と同様にして樹脂粒子分散液X-2及びX-3を得た。得られた樹脂粒子分散液X-2及びX-3中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
【0114】
製造例X4(樹脂粒子分散液X-4の製造)
使用する樹脂A-1 1000gを、樹脂A-1 800g、樹脂C-1 200gに変更した以外は、製造例X1と同様にして樹脂粒子分散液X-4を得た。得られた樹脂粒子分散液X-4の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
【0115】
製造例P1(樹脂粒子分散液P-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂A-1を200g及びメチルエチルケトンを200g入れ、80℃にて1時間かけて樹脂A-1を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂A-1の酸価に対して中和度75mol%になるように添加して、30分間撹拌した。次いで、80℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水 700gを50分間かけて添加し、転相乳化した。継続して80℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液P-1を得た。得られた樹脂粒子分散液P-1中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
【0116】
【0117】
〔離型剤粒子分散液の製造〕
製造例W1(離型剤粒子分散液W-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水 20g、樹脂粒子分散液P-1 100g、及びパラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)50gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させ、撹拌し、溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を更に90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、20分間分散処理した後に室温(20℃)まで冷却した。脱イオン水を加え、固形分濃度を40質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-1を得た。離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径D50は0.29μm、CV値は37%であった。
【0118】
製造例W2(離型剤粒子分散液W-2の製造)
使用する離型剤種をフィッシャートロプシュワックス「FNP-0090」(日本精蝋株式会社製、融点90℃)に変更した以外は、製造例W1と同様にして離型剤粒子分散液W-2を得た。離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径D50は0.26μm、CV値は39%であった。
【0119】
〔着色剤粒子分散液の製造〕
製造例E1(着色剤粒子分散液E-1の製造)
内容積2L容器にカーボンブラック「Printex F80」(オリオン・エンジニアドカーボン製) 160g、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル)「エマルゲンA-60」 40g、及び、脱イオン水 750gを添加して、ディスパー翼を備えた撹拌機「ラボ・リューション」(プライミクス株式会社製)を用いて6400rpm/minにて20℃にて1時間撹拌を行った。その後、200メッシュのフィルターを通し、ホモジナイザー「Microfluidizer M-110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で15パス処理した。その後、200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、着色剤粒子分散液E-1を得た。得られた着色剤粒子分散液E-1中の着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表4に示す。
【0120】
製造例E2~E4、E6、E7(着色剤粒子分散液E-2~E-4、E-6、E-7の製造)
使用する着色剤を変更した以外は、製造例E1と同様にして着色剤粒子分散液を得た。得られた着色剤粒子分散液E-2~E-4、E-6、及びE-7中の着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表4に示す。
【0121】
製造例E5(着色剤粒子分散液E-5の製造)
内容積2L容器に付加重合体Eを40g及びメチルエチルケトンを218g入れ20℃にて付加重合体Eを溶解させた。得られた溶液に、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(固形分濃度16.9質量%) 32g(付加重合体Eの酸価に対して中和度が80mol%になる量)を添加し、更に脱イオン水を516g添加して、ディスパー翼で2000r/minにて20℃にて10分間撹拌した。次いで、カーボンブラック、Printex F80(カーボンブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ社製) 160gを加え、ディスパー翼で6400r/minにて10℃にて1時間撹拌を行った。その後、200メッシュのフィルターを通し、ホモジナイザー「Microfluidizer M-110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で5パス処理した。得られた分散液を撹拌しながら、減圧下70℃でメチルエチルケトンと一部の水を除去した。冷却後、200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子分散液E-5を得た。得られた着色剤粒子分散液E-5中の着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表4に示す。
【0122】
【0123】
[トナーの製造]
実施例1(トナー1の製造)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した3L容の4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-1を500g、離型剤粒子分散液W-1を35g、離型剤粒子分散液W-2を35g、着色剤粒子分散液E-1を63g入れ温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム 46gを脱イオン水 1346gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.0に調整した溶液を、25℃で30分間かけて滴下した後、55℃まで1時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径D50が6.0μmになるまで、55℃で保持し、凝集粒子1の分散液を得た。
得られた凝集粒子1の分散液に、デモールN(β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、花王株式会社製)の20質量%水溶液 155g、脱イオン水 1690g、4.8質量%水酸化カリウム水溶液 253gを添加した。その後、70℃まで1時間かけて昇温し、円形度が0.970になるまで70℃で保持することにより、凝集粒子1が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却し、分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機「DRV622DA」(ADVANTEC社製)を用いて、33℃で24時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。トナー粒子 100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm) 2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm) 1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。得られたトナー1を以下のように評価した。トナー粒子の物性値及びトナー1の評価結果を表5に示す。
【0124】
[トナーの評価]
〔印刷物の画像濃度〕
上質紙「J紙A4サイズ」(富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(沖電気工業株式会社製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.35mg/cm2となるベタ画像を定着させずに出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を130℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度でトナーを定着させて、印刷物を得た。
印刷物の下に上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(沖電気工業株式会社製)を30枚敷き、出力した印刷物のベタ画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、画像上の任意の10点を測定した値を平均して画像濃度とした。数値が大きいほど、画像濃度に優れる。
【0125】
実施例2~7、及び比較例1~3(トナー2~7、51~53の製造)
使用する樹脂粒子分散液の種類及び着色剤粒子分散液の種類を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子2~7、51~53、トナー2~7、51~53を製造した。得られたトナー粒子の物性値、及びトナーの評価結果を表5に示す。
【0126】
【0127】
実施例8(トナー8の作製)
樹脂A-1 100質量部とカーボンブラック(Printex F80 キャボットコーポレーション製) 8質量部、及び離型剤フィッシャートロプシュワックス「FNP-0090」(日本精蝋株式会社製、融点90℃) 3質量部及び、「HNP-9」(日本精蝋社製、パラフィンワックス、融点78℃) 3質量部をヘンシェルミキサーにて2分間撹拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度33m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数50r/min(周速度22m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側端部が145℃及び混練物排出側端部が110℃であり、低回転側ロールの原料投入側端部が35℃及び混練物排出側端部が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約6分間であった。
得られた溶融混練物を冷却ロールで圧延しながら20℃以下に冷却し、冷却された溶融混練物をロートプレックス(東亜機械社製)で3mmに粗粉砕した後、気流式ジェットミルであるIDS粉砕・分級機(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて、体積中位粒径(D50)が7.0μmになるように粉砕・分級しトナー粒子8を得た。
トナー粒子8 100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm) 2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm) 1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー8を得た。得られたトナー粒子8の物性値、及びトナー8の評価結果を表6に示す。
【0128】
【0129】
表5及び6に示すように、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂Aと、BET比表面積が200m2/g以上であるカーボンブラックを含む本発明のトナーを用いて製造した印刷物は画像濃度に優れる(実施例1~8)。
これに対して、BET比表面積が200m2/g以上であるカーボンブラックと、エステル基濃度が本発明の規定の範囲外(4.5mmol/g)の非晶性ポリエステル系樹脂B-1を含むトナーを用いて製造した印刷物は画像濃度が劣った(比較例1)。また、エステル基濃度5.0mmol/g以上15.0mmol/g以下の非晶性ポリエステル樹脂Aと、BET比表面積が本発明の規定の範囲外(116m2/g、95m2/g)であるカーボンブラックを含むトナーを用いて製造した印刷物は画像濃度が劣った(比較例2、3)。