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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】塗料組成物及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240828BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240828BHJP
   C09D 169/00 20060101ALI20240828BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20240828BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240828BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240828BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D133/00
C09D169/00
C09D101/08
C09D7/65
B32B27/26
B32B27/18 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023216899
(22)【出願日】2023-12-22
(65)【公開番号】P2024092990
(43)【公開日】2024-07-08
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022208109
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】福西 啓充
(72)【発明者】
【氏名】吉川 慎太郎
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100783(JP,A)
【文献】特開2023-95361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(a)と、ポリカーボネートジオール(b)と、セルロース誘導体(c)と、イソシアネート基を3つ以上有するイソシアヌレート化合物(d)とを含み、
前記ポリカーボネートジオール(b)の数平均分子量が400以上500以下であり、
前記セルロース誘導体(c)の数平均分子量は、10,000以上40,000以下であり、
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)と、前記ポリカーボネートジオール(b)の合計質量に対する前記ポリカーボネートジオール(b)の含有量は、1~19質量%であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
セルロース誘導体(c)は、ガラス転移温度が85℃以上であり、水酸基価が1.0~2.0mgKOH/gである請求項記載の塗料組成物。
【請求項3】
セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート(CAB)である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
水酸基含有アクリル樹脂(a)は、水酸基価が90mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が3,500以上8,000以下であり、ガラス転移温度が10℃以上70℃以下である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
さらに、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)を含み、
水酸基含有アクリル樹脂(a)の固形分100質量部に対する、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の配合量は、0.1質量部以上25質量部以下である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
さらに、有機ナノ粒子を含む請求項1又は2記載の塗料組成物。
【請求項7】
水酸基含有アクリル樹脂(a)と、ポリカーボネートジオール(b)の合計質量に対するセルロース誘導体(c)の含有量は、0.5~5質量%である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項8】
被塗物、ベース塗膜、及び、請求項1又は2に記載の塗料組成物から形成した塗膜を有する塗装物品。
【請求項9】
さらに、プライマー塗膜を有する請求項記載の塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に使用されているプラスチック部品(例えば、バンパー、プラスチックフェンダーおよびプラスチックバックドア)の塗装に欠陥が存在すると、それを覆うように再度、塗装が行われる。行程負荷を低減するために、通常、欠陥が存在するプラスチック部品に研磨などの前処理を行うことなく、そのまま再度塗装が行われる。この塗装を、ノンサンドリコートと言う。特許文献1は、リコート性が高い塗料組成物を開示している。
【0003】
特許文献1では、硬化した無機粒子を含むフィルムの、表面自由エネルギーを制御することにより、リコート性を向上させている。本発明は、上記特許文献とは異なる構成により、外観およびノンサンドリコート性に優れる塗膜が得られる塗料組成物を提供することを目的とする。
【0004】
特許文献2には、アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有する2液系の塗料組成物であって、ポリカーボネートジオールの含有量を限定した塗料組成物が開示されている。このような塗料組成物は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)成形品等の表面に存在する凹凸をより効率的に埋めて、平滑な塗装面を得るためのものであるが、リコート性についての検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-172688号公報
【文献】特開2022-65832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、外観およびノンサンドリコート性に優れる塗膜が得られる塗料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(a)と、ポリカーボネートジオール(b)と、セルロース誘導体(c)と、イソシアネート基を3つ以上有するイソシアヌレート化合物(d)とを含み、
上記ポリカーボネートジオール(b)の数平均分子量が400以上500以下であり、
上記セルロース誘導体(c)の数平均分子量は、10,000以上40,000以下であり、
上記水酸基含有アクリル樹脂(a)と、上記ポリカーボネートジオール(b)の合計質量に対する上記ポリカーボネートジオール(b)の含有量は、1~19質量%であることを特徴とする塗料組成物に関する。
【0008】
上記セルロース誘導体(c)は、ガラス転移温度が85℃以上であり、水酸基価が1.0~2.0mgKOH/gであることが好ましい。
上記セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート(CAB)であることが好ましい。
【0009】
上記水酸基含有アクリル樹脂(a)は、水酸基価が90mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が3,500以上8,000以下であり、ガラス転移温度が10℃以上70℃以下であることが好ましい。
上述の塗料組成物は、さらに、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)を含み、
水酸基含有アクリル樹脂(a)の固形分100質量部に対する、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の配合量は、0.1質量部以上25質量部以下である、ことが好ましい。
上述の塗料組成物は、さらに、有機ナノ粒子を含むことが好ましい。
上述の塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(a)と、ポリカーボネートジオール(b)の合計質量に対するセルロース誘導体(c)の含有量は、0.5~5質量%である、ことが好ましい。
【0010】
本発明は、被塗物、ベース塗膜、及び、上述の塗料組成物から形成した塗膜を有する塗装物品でもある。
上記塗装物品は、さらに、プライマー塗膜を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノンサンドリコート性に優れるクリヤー塗膜が得られる、塗料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
既存の塗膜を研磨により剥離した後、行われる塗装は、補修と言われる。補修では、既存の塗膜が除去されるため、新しい塗膜との密着性は通常、問題とはならない。
【0013】
一方、上記の通り、ノンサンドリコートでは、通常、欠陥周辺の塗膜は除去されない。そのため、ノンサンドリコートにおいて、既存の塗膜と再塗装によって形成される塗膜との密着性が重要である。以下、既存の塗膜と新しい塗膜との密着性を、ノンサンドリコート性という。ノンサンドリコート性に優れるとは、既存の塗膜と新しい塗膜との密着性が高いことを言う。
【0014】
既存の塗膜と再塗装によって形成される塗膜とは、同一組成の塗料により形成される場合が多いが、これに限らない。異なる組成の塗膜同士の密着性は、特に低下し易い。ノンサンドリコート性には、既存の塗膜の最外に配置されるクリヤー塗膜の物性が特に関係する。
【0015】
イソシアネート化合物と水酸基含有樹脂から構成される二液タイプの塗料は、イソシアネート基と水酸基との反応によって硬化する。しかし、この反応は、通常、塗膜の硬化工程においてすべて進行するわけではなく、硬化後にも経時的に進行していく。特に、低温短時間の条件で硬化が行われる場合、この傾向が顕著である。ノンサンドリコートは、既存の塗膜が形成されてからある程度時間が経過した後、行われる場合が多い。ノンサンドリコートまでの間に上記の経時的な反応が進行して、未反応のイソシアネート基および水酸基が減少すると、ノンサンドリコート性は低下し易い。また、ノンサンドリコートされるまでの間に、イソシアネート基が空気中の水分と反応すると、既存の塗膜の表面にウレア結合が形成されて、やはりノンサンドリコート性が低下し得る。
【0016】
本発明は、特定のセルロース誘導体及びポリカーボネートジオールを併用することにより、ノンサンドリコート性を顕著に改善することができる効果を見出したものである。
【0017】
本発明に係る塗料組成物から得られる塗膜は、新たに付与される塗料との密着性に優れる。そのため、本発明に係る塗料組成物は、特に、被塗物に最初に形成される複合塗膜の最外に形成されるクリヤー塗膜用の塗料として適している。
【0018】
以下、水酸基含有アクリル樹脂(a)、および、その他の水酸基を含有する塗膜形成成分(典型的には、後述する水酸基含有ポリエステル樹脂(e)。ただし、硬化剤を除く。)を、水酸基含有樹脂と総称する。
【0019】
(a)水酸基含有アクリル樹脂
水酸基含有アクリル樹脂(a)は、塗膜のベースとなる樹脂(塗膜形成成分)である。水酸基含有アクリル樹脂(a)は、イソシアヌレート化合物(d)と反応して、架橋構造を形成する。
【0020】
水酸基含有アクリル樹脂(a)は、1分子内に複数のアクリロイル基と1以上(典型的には、2以上)の水酸基とを有する。アクリル樹脂は、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステルのうちの少なくとも一つのモノマーを重合して得られる。
【0021】
水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価は、例えば、70mgKOH/g以上である。これにより、架橋密度が高くなり易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価は、100mgKOH/g以上であってよく、110mgKOH/g以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価は、例えば、190mgKOH/g以下である。これにより、塗膜の親水化が抑制されて、塗膜の耐水性が向上し易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価は、180mgKOH/g以下であってよく、170mgKOH/g以下であってよい。一態様において、水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価は、70mgKOH/g以上170mgKOH/g以下である。
【0022】
水酸基価は、JIS K 0070に記載されている水酸化カリウム水溶液を用いる中和滴定法により求めることができる。
【0023】
水酸基含有アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、例えば、3,000以上である。これにより、得られる塗膜の硬度および耐候性が向上し易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、4,000以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、例えば、7,000以下である。これにより、塗料組成物の過度な粘度上昇が抑制され易くなる。一態様において、水酸基含有アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、3,000以上7,000以下である。
【0024】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出できる。ゲルパーミエーションクロマトグラフとしては、例えば、HLC-8200(東ソー社製)が用いられる。これを用いた測定条件は以下の通りである。
カラム: TSgel Super Multipore HZ-M 3本
展開溶媒: テトラヒドロフラン
カラム注入口オーブン: 40℃
流量: 0.35ml
検出器 示差屈折率検出器(RI)
標準ポリスチレン 東ソー株式会社製PSオリゴマーキット
【0025】
水酸基含有アクリル樹脂(a)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、8℃以上である。これにより、得られる塗膜の耐汚染性、耐擦り傷性および硬度が向上し易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)のTgは、10℃以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂(a)のTgは、例えば、70℃以下である。これにより、クリヤー塗料組成物の速乾性が向上し易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)のTgは、60℃以下であってよく、55℃以下であってよい。一態様において、水酸基含有アクリル樹脂(a)のTgは、10℃以上70℃以下である。
【0026】
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、以下の方法により求められる。水酸基含有アクリル樹脂(a)に対して、昇温速度10℃/minにて20℃から150℃に昇温する工程(工程1)と、工程1の後、降温速度10℃/minにて150℃から-50℃に降温する工程(工程2)と、工程2の後、昇温速度10℃/minにて-50℃から150℃に昇温する工程(工程3)とを行う。工程3の昇温時のチャートから得られる値が、当該水酸基含有アクリル樹脂(a)のTgである。DSCとしては、例えば、熱分析装置SSC5200(セイコー電子製)が用いられる。
【0027】
硬度の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(a)は、水酸基価が90mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が3,500以上8,000以下であり、かつ、Tgが10℃以上70℃以下であることが好ましい。
【0028】
水酸基含有アクリル樹脂(a)の酸価(AV)は、2mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であってよい。これにより、得られる塗膜の平滑性が良好になり易い。さらに、塗料組成物を他の未硬化の塗膜上に塗装したとき、混相の発生が抑制され易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)の酸価は、3mgKOH/g以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂(a)の酸価は、20mgKOH/g以下であってよく、15mgKOH/g以下であってよい。酸価は、水酸基価と同様の方法により求めることができる。
【0029】
塗料組成物の固形分100質量部に占める、水酸基含有アクリル樹脂(a)の固形分量は、例えば、60質量部以上である。これにより、得られる塗膜の外観(特に、平滑性)が向上し易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)の上記固形分量は、65質量部以上であってよく、70質量部以上であってよい。水酸基含有アクリル樹脂(a)の上記固形分量は、例えば、95質量部以下である。これにより、塗料組成物の乾燥性が向上し易い。水酸基含有アクリル樹脂(a)の上記固形分量は、90質量部以下であってよく、85質量部以下であってよい。一態様において、塗料組成物の固形分100質量部に占める、水酸基含有アクリル樹脂(a)の固形分量は、60質量部以上95質量部以下である。
【0030】
水酸基含有アクリル樹脂(a)の原料モノマーとしては、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル等のアクリル酸ヒドロキシエステル;メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等のメタクリル酸ヒドロキシエステル;が挙げられる。さらに、必要に応じて、アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボロニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソボロニル等のメタクリル酸エステル;スチレン等の芳香環を有するエチレン性不飽和モノマー等を用いてもよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。市販の水酸基含有アクリル樹脂(a)を用いてもよい。
【0031】
(b)ポリカーボネートジオール
ポリカーボネートジオールは、複数のポリカーボネート結合(-OCOO-)及び2つの水酸基をもつ化合物であり、両末端が水酸基であることが好ましい。ポリカーボネートジオールを配合することによって、CFRPなどの基材に対する密着性を確保することができる。また、本発明に係る塗料組成物により得られる塗膜の上に、上塗りとして意匠層を塗装する場合、該意匠層に対する密着性も確保することができる。
【0032】
本発明の塗料組成物では、ポリカーボネートジオールの数平均分子量が400~1000であり、かつ、ポリカーボネートジオールの水酸基価が100~300mgKOH/gであることが好ましい。上記数平均分子量は、500~1000であることがより好ましい。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500未満では、十分な密着性が得られない場合がある。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が1000を超えると、塗装性が低下する場合がある。また、ポリカーボネートジオールの水酸基価が100mgKOH/g未満では、乾燥性が劣る場合がある。ポリカーボネートジオールの水酸基価が300mgKOH/gを超えると、密着性が低下する場合がある。
【0033】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される、スチレンホモポリマー換算値である。
また、ポリカーボネートジオールの水酸基価は、ポリカーボネートジオールの固形分100質量%を基準とした水酸基価をいう。
【0034】
本発明の塗料組成物において、上記水酸基含有アクリル樹脂(a)と、上記ポリカーボネートジオール(b)の合計質量に対する上記ポリカーボネートジオール(b)の含有量は、1~19質量%である。含有量が1質量%未満であると、基材又は上塗りとの密着性に劣る場合がある。19質量%を超えると、乾燥性が劣る場合がある。上記ポリカーボネートジオール(b)の含有量は、上記水酸基含有アクリル樹脂(a)と上記ポリカーボネートジオール(b)の合計質量に対して、2~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0035】
(c)セルロース誘導体
適切な量のセルロース誘導体は、ノンサンドリコート性を向上させる。セルロース誘導体は、塗膜の表面に偏在し易く、塗膜の表面の凝集力を高めることができる。よって、セルロース誘導体を含む既存の塗膜は、新しい塗膜との密着性(すなわち、ノンサンドリコート性)が高い。
【0036】
セルロース誘導体(c)の配合量は、塗料組成物に含まれる水酸基含有樹脂の合計の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。これにより、得られる塗膜のノンサンドリコート性が向上する。セルロース誘導体(c)の上記配合量は、1質量部以上であってよく、2質量部以上であってよい。セルロース誘導体(c)の粘度に関わらず、セルロース誘導体(c)の上記配合量は0.1質量部以上であることが好ましい。
【0037】
一方、セルロース誘導体(c)の上記配合量の上限値は、セルロース誘導体(c)の粘度や他の配合成分を考慮して、塗装粘度が35秒を超えないように設定されることが好ましい。例えば、ASTM-D-1343に記載された方法(ボールドロップ法によるセルロース誘導体の粘度の標準試験法)により測定される粘度が0.005秒以上0.5秒未満のセルロース誘導体(c)の上記配合量は、例えば、10質量部以下であり、7質量部以下であってよい。セルロース誘導体(c)の上記粘度が0.5秒以上5秒未満のセルロース誘導体(c)の上記配合量は、例えば、5質量部未満であり、3質量部以下であってよい。セルロース誘導体(c)の上記粘度が5秒以上のセルロース誘導体(c)の上記配合量は、3質量部未満であり、1質量部以下であってよい。
【0038】
本発明の塗料組成物において、上記水酸基含有アクリル樹脂(a)と、上記ポリカーボネートジオール(b)の合計質量に対する上記セルロース誘導体(c)の含有量は、0.5~5質量%であることが好ましい。
【0039】
セルロース誘導体(c)の数平均分子量は、例えば、10,000以上である。これにより、ノンサンドリコート性がさらに向上し得る。セルロース誘導体(c)の数平均分子量は、12,000以上であってよく、15,000以上であってよい。セルロース誘導体(c)の数平均分子量は、例えば、40,000以下である。これにより、塗料組成物の粘度上昇が抑制される。セルロース誘導体(c)の数平均分子量は、30,000以下であってよく、25,000以下であってよい。一態様において、セルロース誘導体(c)の数平均分子量は、10,000以上40,000以下である。
【0040】
セルロース誘導体(c)のTgは、例えば、85℃以上である。これにより、クリヤー塗料組成物が成膜するとき凝集力が向上して、密着性がさらに向上する。セルロース誘導体(f)のTgは、例えば、130℃以下である。これにより、クリヤー塗料組成物の上記粘度が、35秒以下に維持され易くなる。一態様において、セルロース誘導体(f)のTgは、85℃以上130℃以下である。この場合、ノンサンドリコート性がさらに向上して、粘度が20秒以上35秒以下に維持され易い。
【0041】
同様に、ノンサンドリコート性および塗料粘度の最適化の両立の観点から、セルロース誘導体(c)は、数平均分子量が10,000以上40,000以下であり、かつ、ガラス転移温度が85℃以上であることが好ましい。
【0042】
上記セルロース誘導体(c)は、特に限定されない。セルロース誘導体(c)としては、代表的には、セルロースエーテルおよびセルロースエステルが挙げられる。セルロース誘導体(c)は、セルロースエーテルおよびセルロースエステルよりなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてよく、少なくともセルロースエステルを含んでいてよい。
【0043】
セルロースエステルとしては、具体的には、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、樹脂成分との溶解性および粘性の発現等の観点から、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート(CAB)が好ましい。
【0044】
セルロースエーテルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドリキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0045】
(d)イソシアヌレート化合物
イソシアヌレート化合物(d)は硬化剤であり、水酸基含有樹脂と反応して架橋構造を形成し、塗料組成物を硬化させる。
【0046】
イソシアヌレート化合物(d)は、1分子中に少なくとも3個のイソシアネート基と、トリアジントリオン環とを有する。イソシアヌレート化合物(d)は、1分子中に3個のイソシアネート基を有していてよい。イソシアヌレート化合物(d)は、典型的には、ポリイソシアネート化合物の三量体である。
【0047】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、分子中にイソシアネート基に結合していない芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ポリイソシアネート)、芳香族ポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。具体的には、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルへキサンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート-(1,11)、リジンエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。なかでも、イソシアヌレート化合物(d)は、炭素数3以上24以下の脂肪族ポリイソシアネートの三量体であってよく、炭素数5以上18以下の脂肪族ポリイソシアネートの三量体であってよい。
【0048】
イソシアヌレート化合物(d)に含まれるイソシアネート基と、水酸基含有樹脂に含まれる水酸基との当量比:NCO/OHは、0.8以上であってよく、0.9以上であってよく、1.0以上であってよい。当量比がこの範囲であると、得られる塗膜の凝集力が高まり易くなって、ノンサンドリコート性も向上し得る。当量比:NCO/OHは、2.0以下であってよく、1.8以下であってよく、1.5以下であってよい。当量比がこの範囲であると、ウレタン結合の形成が抑制されるため、ノンサンドリコート性の向上が期待できる。一態様において、当量比:NCO/OHは、0.8以上2.0以下である。本発明に係る塗料組成物によれば、上記当量比:NCO/OHの範囲内で反応率が経時的に変化する場合であっても、優れたノンサンドリコート性を達成できる。
【0049】
(その他の硬化剤)
本発明に係る塗料組成物は、その他の硬化剤として、例えば、イソシアヌレート化合物(d)以外のポリイソシアネート化合物をさらに含み得る。その他のポリイソシアネート化合物としては、2官能イソシアネートから誘導されるウレトジオン、イミノオキザジアジンジオン、ビウレット体、アダクト体等のポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。その他の硬化剤の含有量は、塗膜形成成分に応じて適宜設定される。
【0050】
(e)水酸基含有ポリエステル樹脂
本発明に係る塗料組成物は、さらに、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)を含んでいてよい。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)もまた、塗膜形成成分であって、イソシアヌレート化合物(d)と反応して、架橋構造を形成する。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)は、複数のエステル結合と1以上の水酸基とを有する。
【0051】
水酸基含有アクリル樹脂(a)は、塗料組成物の粘度を増大させ易い。一方、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)は、一般に粘度が低く、また水酸基価を高くし易い。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)を併用することにより、粘度上昇を抑制しながら、架橋密度を向上することができる。
【0052】
水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の水酸基価は、例えば、80mgKOH/g以上である。これにより、塗膜の架橋密度が高くなり易い。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の水酸基価は、100mgKOH/g以上であってよい。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の水酸基価は、例えば、500mgKOH/g以下である。これにより、塗膜の親水化が抑制されて、塗膜の耐水性が向上し易い。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の水酸基価は、480mgKOH/g以下であってよく、450mgKOH/g以下であってよい。一態様において、水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価は、80mgKOH/g以上500mgKOH/g以下である。
【0053】
水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の数平均分子量は、例えば、700以上である。これにより、得られる塗膜の硬度および耐候性が向上し易い。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の数平均分子量は、900以上であってよい。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の数平均分子量は、例えば、2,500以下である。これにより、塗料組成物の過度な粘度上昇が抑制され易くなる。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の数平均分子量は、2,000以下であってよい。一態様において、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の数平均分子量は、700以上2,000以下である。
【0054】
粘度の観点から、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)は、水酸基価が80mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であり、かつ、数平均分子量が700以上2,000以下であることが好ましい。
【0055】
水酸基含有アクリル樹脂(a)の固形分100質量部に対する、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の配合量は、例えば、固形分換算で0.1質量部以上である。これにより、塗膜の架橋密度が高くなり易い。水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の上記配合量は、例えば、固形分換算で25部以下である。これにより、塗膜の耐水性が向上し易い。一態様において、水酸基含有アクリル樹脂(a)の固形分100質量部に対する、水酸基含有ポリエステル樹脂(e)の配合量は、固形分換算で0.1質量部以上25質量部以下である。
【0056】
水酸基含有ポリエステル樹脂(e)は、例えば、多価アルコールと多塩基酸またはその無水物とを重縮合(エステル反応)することにより得られる。市販の水酸基含有ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0057】
多価アルコールは特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-(ヒドロキシエチル)イソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0058】
多塩基酸またはその無水物は特に限定されず、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、無水エンド酸が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0059】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、ラクトン、油脂または脂肪酸、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などを用いて変性されていてもよい。油脂または脂肪酸は特に限定されず、例えば、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油、コーン油、綿実油、亜麻仁油、荏の油、ケシ油、紅花油、大豆油、桐油などの油脂、またはこれらの油脂から抽出した脂肪酸が挙げられる。
【0060】
(その他の水酸基含有樹脂)
本発明に係る塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(a)および水酸基含有ポリエステル樹脂(e)以外の、その他の水酸基含有樹脂として、例えば、ポリカーボネートポリオール樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリカプロラクトンポリオール樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含み得る。
【0061】
水酸基含有樹脂の合計の固形分100質量部に占める、その他の水酸基含有樹脂の固形分量は、例えば、10質量部以下であり、5質量部以下である。
【0062】
(f)希釈成分
本発明に係る塗料組成物は、希釈成分(f)を含み得る。塗料組成物は、塗装方法や、温度および湿度等の塗装環境等を考慮して、適宜希釈成分によって希釈される。希釈成分としては、水および非水溶媒が挙げられる。本発明に係る塗料組成物はまた、各成分の製造の際に使用された非水溶媒等を含み得る。
【0063】
非水溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、ミネラルスプリット等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン等の芳香族炭化水素系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸アルミ等のエステル系有機溶媒;モノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル-エーテル系有機溶媒;ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0064】
(粘性調整剤)
本発明に係る塗料組成物は、粘性調整剤を含み得る。粘性調整剤は、本発明の効果を妨げない範囲で使用できる。水酸基含有樹脂の合計の固形分100質量部に対する、他の粘性調整剤の配合量は、5質量部以下であってよく、3質量部以下であってよい。
【0065】
他の粘性調整剤としては、例えば、無機粘性剤、ウレタン会合型粘性剤、ポリカルボン酸型粘性剤およびアマイド系粘性剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。無機粘性剤としては、例えば、層状シリケート(ケイ酸塩鉱物)、ハロゲン化鉱物、酸化鉱物、炭酸塩鉱物、ホウ酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、モリブデン酸塩鉱物、タングステン酸塩鉱物、リン酸塩鉱物、ヒ酸塩鉱物およびバナジン酸塩鉱物が挙げられる。ウレタン会合型粘性剤としては、例えば、疎水性鎖を分子中に持つポリウレタン系粘性剤、および、主鎖の少なくとも一部が疎水性ウレタン鎖であるウレタン-ウレア系粘性剤が挙げられる。
【0066】
上記粘性調整剤としては、「AZS-522」、「AZS-607」(日本ペイント社製)等の市販の商品を使用することもできる。なかでも、「AZS-607」(有機ナノ粒子、日本ペイント株式会社製)を使用することが好ましい。
【0067】
(その他の添加剤)
本発明に係る塗料組成物は、その他、塗料分野において一般的に使用される添加剤を含み得る。例えば、透明性を阻害しない範囲において、着色顔料および/または光輝性顔料を含んでいてよい。さらに、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、触媒等を含んでいてよい。
【0068】
本発明の塗料組成物の固形分濃度は特に限定されない。低VOCおよび工程短縮の観点から、塗料組成物の固形分濃度は、例えば、45質量%以上60質量%以下であることが好ましい。上記固形分濃度は、上記の通り、塗装に供される塗料組成物のものである。塗料組成物の固形分濃度は、48質量%以上であってよく、50質量%以上であってよい。塗料組成物の固形分濃度は、58質量%以下であってよく、57質量%以下であってよい。塗料組成物の固形分は、非水溶媒等の希釈成分を除く全成分である。
【0069】
本発明に係る塗料組成物は、クリヤー塗膜を形成するのに適している。クリヤー塗膜は、通常、被塗物上に形成された1以上の他の塗膜(典型的には、ベース塗膜)を覆うように、最外に配置される。本発明に係る塗料組成物を用いて最外に位置するクリヤー塗膜を形成すると、ノンサンドリコート性が発揮され易い。
【0070】
[塗膜]
本発明に係る塗料組成物を用いて、塗膜が形成される。得られる塗膜は、外観およびノンサンドリコート性に優れる。本発明に係る塗膜は、既存の塗膜上に積層される塗膜であってよく、被塗物に最初に形成される塗膜であってよい。
【0071】
塗膜の厚さは特に限定されない。耐擦傷性および平滑性の観点から、塗膜の乾燥後の厚さは、例えば、15μm以上であり、20μm以上であってよい。塗膜の厚さは、50μm以下であってよく、40μm以下であってよい。塗膜の厚さは、電磁式膜厚計(例えば、SANKO社製SDM-miniR)により測定できる。塗膜の厚さは、任意の5点における塗膜の厚さの平均値である。
【0072】
本発明に係る塗膜は、ノンサンドリコート性に優れる。例えば、被塗物に本発明に係る塗料組成物を用いて、既存の塗膜に相当する塗膜を形成した後、常温で長期間(例えば、25℃で10日間)放置し、その後、当該塗膜上に、他の塗膜を再び形成した場合であっても、既存の塗膜と新しい塗膜との間の剥離が生じ難い。特に、既存の塗膜と新しい塗膜とが同一組成である場合、ノンサンドリコート性はより向上する。
【0073】
塗膜の密着性評価には、例えば、JIS K-5600-5-6に準じた手法が用いられる。試験片の塗面上に、JIS K-5600-5-6にて規定される単一刃切り込み工具を垂直に当て、素地(基材)にまで達する切込み(平行線1)を入れる。さらに、この平行線1に平行な切込みを等間隔に10本入れる。この11本の平行線1に垂直に交わり、かつ、素地にまで達する切込み(平行線2)を等間隔に11本入れる。平行線1同士および平行線2同士の間隔は、それぞれ2mmとする。このようにして、4本の直線に囲まれた正方形100個を有する碁盤目部を形成する。
【0074】
上記の碁盤目部に、JIS K-5600-5-6にて規定される透明感圧着テープを、塗面との間に気泡が含まれないように密着させる。その後、当該テープを、0.5秒から1.0秒の間に一気に剥がし、碁盤目部の剥離状態を目視にて評価する。塗膜の剥離は、既存の塗膜と新しい塗膜との間、既存の塗膜と基材との間で生じ得る。いずれかの剥離が生じている場合、塗膜が剥離していると評価する。いずれの剥離も見られない場合、本発明に係る塗料組成物を用いて得られる塗膜は、基材との密着性に優れ、かつ、ノンサンドリコート性に優れると評価できる。
【0075】
[塗膜の形成方法]
塗膜は、対象物に塗料組成物を塗装した後、硬化させることにより形成される。塗料組成物は加熱により硬化し得る。塗装方法および硬化条件については後述する。
【0076】
[塗装物品]
塗装物品は、被塗物と、被塗物上に形成され、かつ、少なくとも本発明に係る塗料組成物により形成される塗膜と、を備える。塗装物品は、予めプライマーおよびベース塗膜を備えてよい。この場合、本発明に係る塗料組成物はクリヤー塗膜の形成に用いられてよい。このような塗装物品も本発明の一つである。
以下、本発明に係る塗料組成物がクリヤー塗膜の形成に使用される場合について説明する。ただし、本発明に係る塗料組成物の用途はこれに限定されない。
【0077】
[被塗物]
被塗物の材質は特に限定されない。被塗物の材質としては、例えば、金属、樹脂、ガラスが挙げられる。被塗物の形状も特に限定されない。被塗物は、具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体および自動車車体用の部品、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等の自動車部品が挙げられる。
【0078】
金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛またはこれらの合金(例えば、鋼)が挙げられる。金属製の被塗物としては、代表的には、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板等の鋼板が挙げられる。
【0079】
金属製の被塗物は、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム化成処理、複合酸化物処理が挙げられる。金属製の被塗物は、表面処理後、さらに電着塗料によって塗装されていてもよい。電着塗料は、カチオン型であってよく、アニオン型であってよい。
【0080】
樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。樹脂製の被塗物は、脱脂処理されていることが好ましい。
【0081】
(プライマー塗膜)
プライマー塗膜は、被塗物とベース塗膜との間に介在する。プライマー塗膜によって、ベース塗膜と被塗物(特には、樹脂製の被塗物)との付着性が向上する。また、被塗物の表面が不均一な場合、プライマー塗装により塗装面が均一になって、ベース塗膜のムラが抑制され易くなる。
【0082】
プライマー塗膜は、例えば、塗膜形成成分と、素材付着成分、粘性調整剤と、希釈成分と、顔料と、必要に応じて硬化剤とを含むプライマー塗料組成物により形成される。プライマー塗料組成物は、必要に応じて種々の上記添加剤を含み得る。プライマー塗料組成物は、溶剤系であってもよいし、水系であってもよい。塗膜形成成分、硬化剤、粘性調整剤、希釈成分および顔料としては、ベース塗料組成物に配合されるものとして例示された各成分を挙げることができる。例えば、水系のプライマー塗料組成物の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、500cps/6rpm以上6,000cps/6rpm以下である。プライマー塗料組成物の固形分含有率は、例えば、30質量%以上50質量%以下である。プライマー塗料組成物の固形分は、プライマー塗料組成物から希釈成分を除いた全成分である。
【0083】
プライマー塗膜の厚さは特に限定されない。塗装物品の平滑性および耐チッピング性の点で、プライマー塗膜の厚さは5μm以上40μm以下であってよい。プライマー塗膜の厚さは、7μm以上であってよい。プライマー塗膜の厚さは、25μm以下であってよい。
【0084】
(ベース塗膜)
ベース塗膜は、1層であってよく、2層以上の積層塗膜であってよい。ベース塗膜は、例えば、1層または2層以上のいわゆるベース塗膜であり得る。
【0085】
ベース塗膜は、例えば、塗膜形成成分と、硬化剤と、粘性調整剤と、希釈成分と、顔料とを含むベース塗料組成物により形成される。ベース塗料組成物は、必要に応じて種々の上記添加剤を含み得る。各ベース塗膜に含まれる成分は同じであってもよいし、異なっていてもよい。ベース塗料組成物は、溶剤系であってもよいし、水系であってもよい。ベース塗料組成物に配合される塗膜形成成分、硬化剤、粘性調整剤および希釈成分としては、上記の塗料組成物に配合されるものとして例示された各成分を挙げることができる。
【0086】
ベース塗料組成物の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、水性塗料の場合、例えば、500cps/6rpm以上6,000cps/6rpm以下である。ベース塗料組成物の固形分割合は、例えば、30質量%以上70質量%以下である。ベース塗料組成物の固形分は、ベース塗料組成物から希釈成分を除いた全成分である。
【0087】
ベース塗膜の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜設定される。ベース塗膜の1層当たりの厚さは、例えば、10μm以上であり、15μm以上であってよい。ベース塗膜の1層当たりの厚さは、例えば、45μm以下であってよく、30μm以下であってよい。
【0088】
顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料および体質顔料が挙げられる。
着色顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料および金属錯体顔料等の有機系着色顔料:黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラックおよび二酸化チタン等の無機着色顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0089】
光輝性顔料としては、例えば、金属片(アルミニウム、クロム、金、銀、銅、真鍮、チタン、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等)、金属酸化物片、パール顔料、金属あるいは金属酸化物で被覆されたガラスフレーク、金属酸化物で被覆されたシリカフレーク、グラファイト、ホログラム顔料およびコレステリック液晶ポリマー挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0090】
体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレーおよびタルクが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0091】
全顔料の濃度、すなわち、ベース塗料組成物の樹脂固形分100質量%に対する全顔料の質量割合(PWC)は、0.1質量%以上50質量%以下が好ましい。これにより、得られる塗膜の平滑性が向上する。個々の顔料のPWCは特に限定されない。光輝性顔料のPWCは、例えば、1質量%以上40質量%以下であってよい。光輝性顔料のPWCは、5質量%以上が好ましい。光輝性顔料のPWCは、30質量%以下が好ましい。
【0092】
[塗装物品の製造方法]
上記の塗装物品は、被塗物上に、ベース塗料組成物を塗装して未硬化のベース塗膜を形成する工程と、未硬化のベース塗膜を硬化させる工程と、ベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、未硬化のクリヤー塗膜を硬化させる工程と、を備える方法により製造される。
【0093】
上記の塗装物品は、また、被塗物上に、プライマー塗料組成物を塗装して未硬化のプライマー塗膜を形成する工程と、未硬化のプライマー塗膜を硬化させる工程と、ベース塗料組成物を塗装して未硬化のベース塗膜を形成する工程と、未硬化のベース塗膜を硬化させる工程と、ベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、未硬化のクリヤー塗膜を硬化させる工程と、を備える方法により製造されてもよい。
【0094】
クリヤー塗膜が形成される際、プライマー塗膜やベース塗膜は硬化していてもよく、未硬化であってもよい。なかでも、生産性、付着性および耐水性の観点から、各塗膜を硬化させることなく積層した後(いわゆる、ウェット・オン・ウェット塗装)、これら複数の未硬化の塗膜を同時に硬化させることが好ましい。すなわち、塗装物品は、被塗物上に、プライマー塗料組成物およびベース塗料組成物を塗装して、未硬化のプライマー塗膜およびベース塗膜を形成する工程と、未硬化のベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程と、未硬化のプライマー塗膜、ベース塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を硬化させる工程と、を備える方法により製造されることが好ましい。
【0095】
以下、ウェット・オン・ウェット塗装によって、プライマー塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を有する塗装物品を製造する場合を例に挙げて、各工程を説明する。ただし、本発明に係る塗装物品の製造方法はこれに限定されない。
【0096】
(I)未硬化のプライマー塗膜を形成する工程
未硬化のプライマー塗膜は、上記のプライマー塗料組成物を被塗物に塗装することにより形成される。プライマー塗料組成物は、例えば、硬化後のプライマー塗膜の厚さが5μm以上40μm以下になるように、塗装される。
【0097】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装が挙げられる。これらの方法と静電塗装とを組み合わせてもよい。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。回転霧化式静電塗装には、例えば、通称「マイクロ・マイクロベル(μμベル)」、「マイクロベル(μベル)」、「メタリックベル(メタベル)」などと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機が用いられる。
【0098】
プライマー塗料組成物を塗装した後、予備乾燥(プレヒートとも称される)を行ってもよい。これにより、プライマー塗料組成物に含まれる希釈成分が、硬化工程において突沸することが抑制されて、ワキの発生が抑制され易くなる。さらに、予備乾燥により、未硬化のプライマー塗膜とその上に塗装される塗料組成物とが混ざりあうことが抑制されて、混相が形成され難くなる。そのため、得られる塗装物品の平滑性が向上し易くなる。
【0099】
予備乾燥の条件は特に限定されない。予備乾燥としては、例えば、20℃以上25℃以下の温度条件で5分以上15分以下放置する方法、50℃以上80℃以下の温度条件で30秒以上10分以下加熱する方法が挙げられる。
【0100】
(II)未硬化のベース塗膜を形成する工程
未硬化のベース塗膜は、上記のベース塗料組成物を被塗物に塗装することにより形成される。ベース塗料組成物は、例えば、硬化後のベース塗膜の厚さが10μm以上45μm以下になるように、塗装される。
【0101】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、プライマー塗料組成物の塗装方法と同様の方法が挙げられる。
【0102】
上記と同様の観点から、ベース塗料組成物を塗装した後、プライマーと同様に予備乾燥(プレヒートとも称される)を行ってもよい。予備乾燥の条件は特に限定されない予備乾燥の条件は特に限定されず、プライマー塗膜の予備乾燥と同様であってよい。
【0103】
(III)未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
未硬化のクリヤー塗膜は、本発明に係る塗料組成物(以下、クリヤー塗料組成物と称する場合がある。)をベース塗膜上に塗装することにより形成される。クリヤー塗料組成物は、例えば、硬化後のクリヤー塗膜の厚さが15μm以上50μm以下になるように、塗装される。
【0104】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、プライマー塗料組成物の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。クリヤー塗料組成物を塗装した後、予備乾燥を行ってもよい。予備乾燥の条件は特に限定されず、プライマー塗膜あるいはベース塗膜の予備乾燥と同様であってよい。
【0105】
(IV)硬化工程
未硬化の各塗膜を硬化させる。各塗膜は加熱により硬化し得る。本工程では、プライマー塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜が一度に硬化されてよい。
【0106】
加熱条件は、各塗料組成物の組成や被塗物の材質等に応じて適宜設定される。加熱温度は、例えば60℃以上120℃以下であり、65℃以上90℃以下であってよい。本発明に係るクリヤー塗料組成物によれば、このような低温であっても、最終的には高い硬度を有するクリヤー塗膜が形成される。
【0107】
加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定すればよい。加熱温度が60℃以上120℃以下の場合、加熱時間は、例えば10分以上60分以下であり、15分以上45分以下であってよい。加熱時間は、加熱装置内が目的の温度に達し、被塗物が目的の温度に保たれている時間を意味し、目的の温度に達するまでの時間は考慮しない。加熱装置としては、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線等の加熱源を利用した乾燥炉が挙げられる。
【実施例
【0108】
以下、本発明を実施例により説明する。実施例中、配合割合において部、%とあるのは特に言及が無い限り質量部、質量%を意味する。本発明は以下に示した実施例により限定されるものではない。
【0109】
(実施例1)
(主剤の調製)
主剤として、アクリルポリオール(日本ペイント社製アクリル樹脂;重量平均分子量6000、水酸基価151mgKOH/g、固形分濃度50質量%、Tg10℃)を37質量部と、ポリカーボネートジオール(デュラノールT5650E、旭化成社製;数平均分子量500、水酸基価200~250mgKOH/g、固形分濃度100質量%)を7質量部と、セルロース誘導体(CAB-551-0.2 イーストマンケミカル:数平均分子量30000、水酸基価1.8mgKOH/g、固形分濃度100質量%、Tg101℃)を1質量部と、マイクロジェル(日本ペイント社製品AZS-607、ゲル化粒子)を0.7質量部と、紫外線吸収剤(チヌビン384、BASF社製)を0.7質量部と、光安定剤(チヌビン292、BASF社製)を0.3質量部と、レベリング剤(BYK-310、BYK社製)を0.1質量部と、酢酸ブチルを20質量部と、キシレンを33.19質量部と、硬化触媒(ジラウリン酸ジブチルスズ、東京化成工業製、固形分濃度100質量%)を0.01質量部と、を配合した。主剤において、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量(表中、ポリカーボネートジオール含有率と示す。)は、16質量%であった。
【0110】
(塗料組成物の調製)
得られた主剤100質量部に対して、硬化剤としてポリイソシアネート(コロネートHX、トーソー)を30質量部と、希釈溶媒(T-507HCL 日本ペイント社製)を30質量部とを配合して、塗料組成物とした。
この塗料組成物の固形分濃度は43.6質量%であった。
【0111】
(塗装品の形成)
PP素材(縦150mm、横100mm、厚さ3mm)の表面上にPPプライマー(RB-170CDプライマー:日本ペイント製)、カラーベース(R-303ベース;日本ペイント製)を塗装した塗板上に、得られた塗料組成物をスプレー塗装し、80℃で30分間Keepで乾燥させ(クリヤー塗膜の厚さは25~35μm)塗装品を得た。
リコート付着評価用塗板は前述で得られた塗装板上にプライマー/ベース/クリヤーをスプレー塗装し70℃で30分間Keepで乾燥させ塗装品A、70℃で90分間Keepで乾燥させ塗装品Bおよび90℃で120分間Keepで乾燥させ塗装品Cを得た。
【0112】
(リコート付着評価)
上記塗装品の塗面上に、JIS K-5600-5-6にて規定される単一刃切り込み工具を垂直に当て、素地(基材)にまで達する切込み(平行線1)を入れた。さらに、この平行線1に平行な切込みを等間隔に10本入れた。この11本の平行線1に垂直に交わり、かつ、素地にまで達する切込み(平行線2)を等間隔に11本入れた。平行線1同士および平行線2同士の間隔は、それぞれ2mmとした。このようにして、4本の直線に囲まれた正方形100個を有する碁盤目部を形成した。
上記の碁盤目部に、JIS K-5600-5-6にて規定される透明感圧着テープを、塗面との間に気泡が含まれないように密着させた。その後、当該テープを、0.5秒から1.0秒の間に一気に剥がし、碁盤目部の剥離状態を目視にて評価した。評価基準は以下の通りである。評価が「◎」または「〇」であれば、実用上問題がない。
◎:塗装品A、塗装品Bおよび塗装品Cにおいて24時間および72時間経過時の塗膜の剥離が認められない
〇:塗装品Aおよび塗装品Bにおいて24時間および72時間経過時の塗膜の剥離が認められないが、塗装品Cにおいて24時間および72時間経過時の塗膜の剥離が認められる
×:塗装品A、塗装品Bおよび塗装品Cにおいて24時間および72時間経過時の塗膜の剥離が認められる
【0113】
実施例2,比較例1
塗料組成物の組成を表1に示したものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗装品を得た。
【0114】
【表1】
【0115】
表1の結果から、セルロース誘導体を配合することで70℃×90分の焼き付け後24時間経過時のリコート性を確保することが示された。また、セルロース誘導体を増量することで90℃×120分の焼き付け後72時間経過時のリコート性も確保することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の塗料組成物は、例えば、自動車車両、自動車用部品において好適に使用することができる。