IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

特許7545576非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート及びその製造方法、非燃焼加熱型香味吸引器、並びに非燃焼加熱型香味吸引システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート及びその製造方法、非燃焼加熱型香味吸引器、並びに非燃焼加熱型香味吸引システム
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/14 20060101AFI20240828BHJP
   A24B 15/16 20200101ALI20240828BHJP
   A24B 3/14 20060101ALI20240828BHJP
   A24B 15/26 20060101ALI20240828BHJP
   A24B 15/32 20060101ALI20240828BHJP
   A24B 15/36 20060101ALI20240828BHJP
   A24D 1/02 20060101ALI20240828BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20240828BHJP
   A24D 3/04 20060101ALI20240828BHJP
   A24D 3/17 20200101ALI20240828BHJP
【FI】
A24B15/14
A24B15/16
A24B3/14
A24B15/26
A24B15/32
A24B15/36
A24D1/02
A24D1/20
A24D3/04
A24D3/17
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023517550
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2022018858
(87)【国際公開番号】W WO2022230866
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/018192
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021075206
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021143801
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021170059
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】小出 明弘
(72)【発明者】
【氏名】打井 公隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】四分一 弘
(72)【発明者】
【氏名】本溜 哲也
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 亨
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-114206(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016961(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/070330(WO,A1)
【文献】特表2016-538842(JP,A)
【文献】特表2018-516075(JP,A)
【文献】国際公開第2021/033637(WO,A1)
【文献】特開平10-075760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00-15/42
A24D 1/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含むたばこ含有セグメントを備える非燃焼加熱型香味吸引器であって、
前記たばこシートは、たばこ原料を含む圧延成形品であり、
前記たばこシートの厚み方向の断面が波型形状を有し、
前記たばこシートの膨嵩性は190cc/100g以上であり、
前記たばこ含有セグメントにおける前記たばこシートの充填密度は250~800mg/cm である、非燃焼加熱型香味吸引器
【請求項2】
前記たばこシートがさらにエアロゾル発生剤を含む、請求項1に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項3】
前記エアロゾル発生剤が、グリセリン、プロピレングリコール及び1,3-ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項2に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項4】
前記たばこシート100質量%に含まれる前記エアロゾル発生剤の割合が4~50質量%である、請求項2に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項5】
前記たばこシートが、さらに第一の成型剤及び第二の成型剤を含む、請求項1に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項6】
前記第一の成型剤が、多糖類、タンパク及び合成ポリマーからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項5に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項7】
前記第二の成型剤が、前記第一の成型剤とは異なる、多糖類、タンパク及び合成ポリマーからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項5に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項8】
前記たばこシート100質量%に含まれる前記第一の成型剤の割合が0.1~15質量%である、請求項5に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項9】
前記たばこシート100質量%に含まれる前記第二の成型剤の割合が0.1~15質量%である、請求項5に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項10】
前記非燃焼加熱型香味吸引器がマウスピースセグメントをさらに含み、
前記たばこ含有セグメントが、エアロゾル発生剤を含む第一のセグメントと、前記非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含む第二のセグメントと、を含み、
前記マウスピースセグメントが、冷却セグメントと、フィルターセグメントと、を含む、請求項に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項11】
前記第一のセグメントが、筒状のラッパーと、前記ラッパー内部に充填された植物繊維で構成される不織布と、を含み、前記不織布が前記エアロゾル発生剤を含む、請求項10に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項12】
前記非燃焼加熱型香味吸引器が棒状であり、マウスピースセグメントをさらに備え、
前記マウスピースセグメントが、フィルター濾材を有するフィルターセグメントを備え、
前記フィルター濾材が、周方向断面がY形状であり、かつ、単繊維デニールが8以上、12以下である繊維から構成される、請求項に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項13】
前記フィルター濾材の密度が、0.09g/cm以上、0.14g/cm以下である、請求項12に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項14】
前記非燃焼加熱型香味吸引器が、
前記たばこ含有セグメントに隣接する隣接部材と、
前記たばこ含有セグメントを巻包する巻包材、または前記たばこ含有セグメントと前記隣接部材とを巻包する巻包材と、
をさらに備え、
前記巻包材が、当接する被巻装部材よりも高い伝熱性を有する高伝熱部を有し、
当該高伝熱部が、たばこ含有セグメントの下流端近傍を巻包している、請求項に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項15】
前記高伝熱部が、前記たばこ含有セグメントの下流端近傍から隣接部材の上流端近傍までを巻包している、請求項14に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項16】
請求項に記載の非燃焼加熱型香味吸引器と、
前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引システム。
【請求項17】
請求項1に記載の非燃焼加熱型香味吸引器の製造方法であって、
たばこ原料、エアロゾル発生剤、第一の成型剤、及び第二の成型剤を含む混合物を調製する工程と、
前記混合物を圧延して圧延成形品を形成する工程と、
前記圧延成形品に回転式ロール刃を押し当てて短冊状に切断しつつ波型形状を付与することで、前記たばこシートを製造する工程と、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート及びその製造方法、非燃焼加熱型香味吸引器、並びに非燃焼加熱型香味吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼型香味吸引器(シガレット)では、葉たばこやたばこシートを含むたばこ充填物を燃焼して香味を得る。例えば特許文献1には、燃焼型香味吸引器に使用されるたばこシートが開示されている。該燃焼型香味吸引器の代替として、たばこシート等の香味源を燃焼する代わりに加熱して香味を得る非燃焼加熱型香味吸引器が提案されている。非燃焼加熱型香味吸引器の加熱温度は、燃焼型香味吸引器の燃焼温度より低く、例えば約400℃以下である。このように、非燃焼加熱型香味吸引器の加熱温度は低いため、煙量を増加させる観点から、非燃焼加熱型香味吸引器では香味源にエアロゾル発生剤を添加することができる。エアロゾル発生剤は加熱により気化し、エアロゾルを発生する。該エアロゾルはたばこ成分等の香味成分を伴い使用者に供給されるため、使用者は十分な香味を得ることができる。
【0003】
非燃焼加熱型香味吸引器は、例えば、たばこシート等が充填されたたばこ含有セグメントと、冷却セグメントと、フィルターセグメントとを備えることができる。非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントの軸方向の長さは、加熱ヒーターとの関係で、通常燃焼型香味吸引器のたばこ含有セグメントの軸方向の長さよりも短い。そのため、非燃焼加熱型香味吸引器では、加熱時のエアロゾル生成量を担保するために、短いたばこ含有セグメントの区間内に多量のたばこシートが充填されている。短い区間内に多量のたばこシートを充填するために、非燃焼加熱型香味吸引器では、通常膨嵩性の低い、すなわち高密度のたばこシートが使用されている。なお、膨嵩性とは、所定質量のたばこシートの刻みを一定圧力で一定時間圧縮したときの体積を示す値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭60-45914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者等は、加熱方式やヒーターの加熱能力とエアロゾルの生成を考えた場合、膨嵩性の低い(高密度の)たばこシートを用いるとたばこ含有セグメントの総熱容量が高くなるため、加熱方法やヒーターの能力によっては、たばこ含有セグメントに充填されたたばこシートがエアロゾル生成に十分に寄与しないことを見出した。当該課題を解決するためには、たばこ含有セグメントの総熱容量を低減することが考えられる。
【0006】
本発明者等は、たばこ含有セグメントの総熱容量を低減するために、(1)たばこシートに含まれるたばこ原料の比熱を低減する、(2)膨嵩性の高い(低密度の)たばこシートを用いる、ことを検討した。しかし、(1)についてはたばこ原料自体の比熱の低減は困難であるため、(2)によりたばこ含有セグメントの総熱容量を低減することが有効と考えられた。そのため、非燃焼加熱型香味吸引器に好適に用いられる膨嵩性の高い(低密度の)たばこシートの開発が望まれる。
【0007】
本発明は、膨嵩性の高い非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート、該たばこシートを含む非燃焼加熱型香味吸引器、及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の実施態様を含む。
【0009】
[1]たばこ原料を含む非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートであって、前記たばこシートの厚み方向の断面が波型形状を有する、非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0010】
[2]前記たばこシートがさらにエアロゾル発生剤を含む、[1]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0011】
[3]前記エアロゾル発生剤が、グリセリン、プロピレングリコール及び1,3-ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも一つである、[2]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0012】
[4]前記たばこシート100質量%に含まれる前記エアロゾル発生剤の割合が4~50質量%である、[2]又は[3]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0013】
[5]前記たばこシートが、さらに第一の成型剤及び第二の成型剤を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0014】
[6]前記第一の成型剤が、多糖類、タンパク及び合成ポリマーからなる群から選択される少なくとも一つである、[5]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0015】
[7]前記第二の成型剤が、前記第一の成型剤とは異なる、多糖類、タンパク及び合成ポリマーからなる群から選択される少なくとも一つである、[5]又は[6]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0016】
[8]前記たばこシート100質量%に含まれる前記第一の成型剤の割合が0.1~15質量%である、[5]から[7]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0017】
[9]前記たばこシート100質量%に含まれる前記第二の成型剤の割合が0.1~15質量%である、[5]から[8]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート。
【0018】
[10][1]~[9]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含むたばこ含有セグメントを備える非燃焼加熱型香味吸引器。
【0019】
[11]前記非燃焼加熱型香味吸引器がマウスピースセグメントをさらに含み、
前記たばこ含有セグメントが、エアロゾル発生剤を含む第一のセグメントと、前記非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含む第二のセグメントと、を含み、
前記マウスピースセグメントが、冷却セグメントと、フィルターセグメントと、を含む、[10]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0020】
[12]前記第一のセグメントが、筒状のラッパーと、前記ラッパー内部に充填された植物繊維で構成される不織布と、を含み、前記不織布が前記エアロゾル発生剤を含む、[11]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0021】
[13]前記非燃焼加熱型香味吸引器が棒状であり、マウスピースセグメントをさらに備え、
前記マウスピースセグメントが、フィルター濾材を有するフィルターセグメントを備え、
前記フィルター濾材が、周方向断面がY形状であり、かつ、単繊維デニールが8以上、12以下である繊維から構成される、[10]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0022】
[14]前記フィルター濾材の密度が、0.09g/cm以上、0.14g/cm以下である、[13]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0023】
[15]前記非燃焼加熱型香味吸引器が、
前記たばこ含有セグメントに隣接する隣接部材と、
前記たばこ含有セグメントを巻包する巻包材、または前記たばこ含有セグメントと前記隣接部材とを巻包する巻包材と、
をさらに備え、
前記巻包材が、当接する被巻装部材よりも高い伝熱性を有する高伝熱部を有し、
当該高伝熱部が、たばこ含有セグメントの下流端近傍を巻包している、[10]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0024】
[16]前記高伝熱部が、前記たばこ含有セグメントの下流端近傍から隣接部材の上流端近傍までを巻包している、[15]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0025】
[17][10]から[16]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器と、
前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0026】
[18][1]から[9]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートの製造方法であって、
たばこ原料、エアロゾル発生剤、第一の成型剤、及び第二の成型剤を含む混合物を調製する工程と、
前記混合物を圧延して圧延成形品を形成する工程と、
前記圧延成形品に回転式ロール刃を押し当てて短冊状に切断しつつ波型形状を付与する工程と、
を含む方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、膨嵩性の高い非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート、該たばこシートを含む非燃焼加熱型香味吸引器、及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係るたばこシートの一例を示す厚み方向の断面図である。
図2】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の一例を示す断面図である。
図3】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例であって、(a)非燃焼加熱型香味吸引器を加熱装置に挿入する前の状態、(b)非燃焼加熱型香味吸引器を加熱装置に挿入して加熱する状態、を示す断面図である。
図4】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の一例を示す模式図である。
図5】本実施形態に係る第一のセグメントの形成方法の一例を示す模式図である。
図6】本実施形態に係る第一のセグメントのラッパーの接着方法の一例を示す模式図である。
図7】本実施形態に係るたばこ含有セグメントの他の実施形態を示す模式図である。
図8】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例を示す模式図である。
図9】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムにおけるヒータの構成の他の例を示す模式図である。
図10】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の概略図である。
図11】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの概略図である。
図12】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの概略図である。
図13】冷却セグメントと加熱装置とが接触する領域の吸口端側の端部を説明するための図である。
図14】冷却セグメントと加熱装置とが接触する領域の吸口端側の端部を説明するための図である。
図15】参考例におけるニコチン及びグリセリンのデリバリー量を示すグラフである。
図16】参考例におけるニコチン及びグリセリンのデリバリー量を示すグラフである。
図17】参考例におけるニコチン及びグリセリンのデリバリー量を示すグラフである。
図18】参考例におけるニコチン及びグリセリンのデリバリー量を示すグラフである。
図19】非燃焼加熱型香味吸引器の一態様を示す図である。
図20】非燃焼加熱型香味吸引システムの一態様を示す図である。
図21A】非燃焼加熱型香味吸引器の別態様を示す図である。
図21B】非燃焼加熱型香味吸引器の別態様を示す図である。
図21C】非燃焼加熱型香味吸引器の別態様を示す図である。
図22】伝熱特性を算出するためのモデルを示す図である。
図23】曲げ試験の概要を示す図である。
図24】非燃焼加熱型香味吸引器の煙量を示す図である。
図25】自動喫煙システムにおける煙量と官能評価との相関性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシート(以下、「たばこシート」ともいう。)は、たばこ原料を含み、前記たばこシートの厚み方向の断面は波型形状を有する。本実施形態に係るたばこシートは厚み方向の断面形状が波型であるため、嵩高く、高い膨嵩性を有する。そのため、本実施形態に係るたばこシートを用いることでたばこ含有セグメントの総熱容量を低減することができ、たばこ含有セグメントに充填されたたばこシートをエアロゾル生成に十分に寄与させることができる。また、本実施形態に係るたばこシートはエアロゾル発生剤や一種又は二種以上の成型剤をさらに含むことが好ましく、これらの配合割合を所定の範囲内とすることで、たばこシートの膨嵩性がより向上する。
【0030】
(たばこシートの形状)
本実施形態に係るたばこシートは、厚み方向の断面が波型形状を有する。すなわち、本実施形態に係るたばこシートを平面方向のある一方向において厚み方向に切断した場合、その断面の形状が波型の形状を有する。前記平面方向のある一方向は、例えばたばこシートの長手方向であってもよく、短手方向であってもよい。ここで「波型」とは、上下にうねった形状であれば特に限定されず、波の山は直線的な形状であってもよく、曲線的な形状であってもよい。また、波は規則的であってもよく、不規則的であってもよい。
【0031】
本実施形態に係るたばこシートの厚み方向の断面形状の一例を図1に示す。図1に示されるたばこシート1は、厚み方向の断面において波2を有する。波2の幅w1は特に限定されないが、0.1~10.0mmの範囲内であることが好ましい。また、波2の高さw2は特に限定されないが、0.1~5.0mmの範囲内であることが好ましい。たばこシート1の厚みw3は、100~1000μmの範囲内であることが好ましい。図1に示されるように、波2は鋸歯形状3を有していてもよい。波2が鋸歯形状3を有することにより、たばこシートの混合体において鋸歯形状の先端と先端が接することによりさらに空隙を形成させることができ、結果として膨嵩性をより向上させることができる。本実施形態に係るたばこシートの平面方向における大きさは特に限定されないが、例えば長さ:5.0~40.0mm、幅:0.5~2.0mmであることができる。
【0032】
(たばこ原料)
本実施形態に係るたばこシートに含まれるたばこ原料としては、たばこ成分が含まれるものであれば特に限定されないが、例えばたばこ粉末やたばこ抽出物が挙げられる。たばこ粉末としては、例えば葉たばこ、中骨、残幹等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらを所定の大きさに裁刻することで、たばこ粉末として使用することができる。たばこ粉末の大きさとしては、乾式レーザー回折法により測定される体積基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)が200μm以上であることが、更なる膨嵩性向上の観点から好ましい。たばこ原料がたばこ粉末である場合、たばこシート100質量%に含まれるたばこ粉末の割合は、45~95質量%であることが好ましく、50~93質量%であることがより好ましく、60~85質量%であることがさらに好ましい。たばこ抽出物としては、例えば葉たばこを粗砕し、これを水等の溶媒と混合・攪拌することで葉たばこから水溶性成分を抽出し、得られた水抽出物を減圧乾燥して濃縮することで得られるたばこ抽出物が挙げられる。
【0033】
(エアロゾル発生剤)
本実施形態に係るたばこシートは、加熱時の煙量増加の観点から、さらにエアロゾル発生剤を含むことが好ましい。エアロゾル発生剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0034】
たばこシートにエアロゾル発生剤が含まれる場合、たばこシート100質量%に含まれるエアロゾル発生剤の割合は、4~50質量%であることが好ましい。前記エアロゾル発生剤の割合が4質量%以上であることにより、量の観点から加熱時に十分なエアロゾルを発生させることができる。また、前記エアロゾル発生剤の割合が50質量%以下であることにより、熱容量の観点から加熱時に十分なエアロゾルを発生させることができる。前記エアロゾル発生剤の割合は、6~40質量%であることがより好ましく、8~30質量%であることがさらに好ましく、10~20質量%であることが特に好ましい。
【0035】
(成型剤)
本実施形態に係るたばこシートは、形状担保の観点から、さらに成型剤を含むことが好ましい。本実施形態に係るたばこシートは、特に、たばこシートのエアロゾル発生剤の保持性能と波型形状の維持性能とを十分に両立させることができる観点から、第一の成型剤及び第二の成型剤をさらに含むことが好ましい。ここで、第一の成型剤と第二の成型剤とは成型剤の種類が異なっていてもよく、成型剤の種類は同一で形態が異なっていてもよい。第一の成型剤としては、例えば多糖類、タンパク、合成ポリマー等が挙げられる。多糖類としては、例えばセルロース誘導体、天然由来の多糖類が挙げられる。
【0036】
セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロースエーテル類;酢酸セルロース、ギ酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、安息香酸セルロース、フタル酸セルロース、トシルセルロース等の有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、セルロースキサントゲン酸塩等の無機酸エステル等が挙げられる。
【0037】
天然由来の多糖類としては、例えば、グアーガム、タラガム、ローストビーンガム、タマリンド種子ガム、ペクチン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、アマシードガム、カッシャガム、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム等の植物由来の多糖類;カラギーナン、寒天、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ファーセレラン、フクロノリ抽出物等の藻類由来の多糖類;キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、プルラン、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ウェランガム、マクロホモプシスガム、ラムザンガム等の微生物由来の多糖類;キチン、キトサン、グルコサミン等の甲殻類由来の多糖類;デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、α化デンプン、デキストリン等のデンプン等が挙げられる。
【0038】
タンパクとしては、例えば、小麦グルテン、ライ麦グルテン等の穀物タンパクが挙げられる。合成ポリマーとしては、例えば、ポリリン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。第二の成型剤としては、第一の成型剤とは異なるものの、第一の成型剤と同様の多糖類、タンパク、合成ポリマー等を用いることができる。
【0039】
たばこシートに第一の成型剤が含まれる場合、たばこシート100質量%に含まれる第一の成型剤の割合は、0.1~15質量%であることが好ましい。前記第一の成型剤の割合が0.1質量%以上であることにより、原料の混合体をシート状に容易に成型可能となる。また、前記第一の成型剤の割合が15質量%以下であることにより、非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントに求められる機能を担保するための他原料を十分に用いることができる。前記第一の成型剤の割合は、0.1~12質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましく、0.1~7質量%であることが特に好ましい。
【0040】
たばこシートに第二の成型剤が含まれる場合、たばこシート100質量%に含まれる第二の成型剤の割合は、0.1~15質量%であることが好ましい。前記第二の成型剤の割合が0.1質量%以上であることにより、原料の混合体をシート状に容易に成型可能となる。また、前記第二の成型剤の割合が15質量%以下であることにより、非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントに求められる機能を担保するための他原料を十分に用いることができる。前記第二の成型剤の割合は、0.1~12質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましく、0.1~7質量%であることが特に好ましい。
【0041】
また、第一の成型剤と第二の成型剤とが成型剤の種類が同一で形態が異なる場合、例えば第一の成型剤が粉末、第二の成型剤が溶液又はスラリー等であることができる。例えば、後述するたばこシートの製造方法において、第一の成型剤として成型剤を粉末として直接混合し、かつ、第二の成型剤として成型剤を水等の溶媒に分散又は膨潤させて混合することができる。このような方法でも、種類の異なる二つの成型剤を使用した場合と同様の効果が得られる。
【0042】
(補強剤)
本実施形態に係るたばこシートは、更なる物性向上の観点から、さらに補強剤を含むことができる。補強剤としては、例えばファイバー状パルプ、ファイバー状合成セルロース等の繊維状物質、ペクチン懸濁水など乾燥すると膜を形成する表面コーティング機能をもった液状物質等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0043】
たばこシートに補強剤が含まれる場合、たばこシート100質量%に含まれる補強剤の割合は、4~40質量%であることが好ましい。本範囲内の場合、非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントに求められる機能を担保するための他原料を十分に用いることができる。前記補強剤の割合は、4.5~35質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることがさらに好ましい。
【0044】
(保湿剤)
本実施形態に係るたばこシートは、品質保持の観点から、さらに保湿剤を含むことができる。保湿剤としては、例えばソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0045】
たばこシートに保湿剤が含まれる場合、たばこシート100質量%に含まれる保湿剤の割合は、1~15質量%であることが好ましい。本範囲内の場合、非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントに求められる機能を担保するための他原料を十分に用いることができる。前記保湿剤の割合は、2~12質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
(その他の成分)
本実施形態に係るたばこシートは、前記たばこ原料、前記エアロゾル発生剤、前記成型剤(第一及び第二の成型剤)、前記補強剤、前記保湿剤以外にも、必要に応じて香料、呈味料等の香味料、着色剤、湿潤剤、保存料、無機物質等の希釈剤等を含むことができる。
【0047】
(膨嵩性)
本実施形態に係るたばこシートの膨嵩性は、190cc/100g以上であることが好ましい。該膨嵩性が190cc/100g以上であることにより、非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントの総熱容量を十分に低減することができ、たばこ含有セグメントに充填されたたばこシートがエアロゾル生成により寄与できるようになる。該膨嵩性は210cc/100g以上であることがより好ましく、230cc/100g以上であることがさらに好ましい。該膨嵩性の範囲の上限は特に限定されないが、例えば800cc/100g以下であることができる。なお、該膨嵩性は、たばこシートを0.8mm×20mmのサイズに裁刻し、22℃、60%の調和室内で48時間存置した後、DD-60A(商品名、ボルグワルド社製)にて測定される値である。測定は、裁刻されたたばこシート15gを内径60mmの円筒形容器に入れ、3kg荷重で30秒圧縮した時の容積を求めることで行われる。
【0048】
[たばこシートの製造方法]
本実施形態に係るたばこシートは、例えばたばこ原料、エアロゾル発生剤、第一の成型剤、及び第二の成型剤を含む混合物を調製する工程と、前記混合物を圧延して圧延成形品を形成する工程と、前記圧延成形品に回転式ロール刃を押し当てて短冊状に切断しつつ波型形状を付与する工程と、を含むことができる。なお、波型形状を付与する処理をリップリング処理ともいう。例えば、以下の方法により本実施形態に係るたばこシートを製造することができる。
【0049】
(1)水、たばこ原料、エアロゾル発生剤、第一及び第二の成型剤、及び補強剤を混合して混合物を得る工程。
(2)当該混合物を複数の圧延ローラーに投入して圧延し、圧延成形品を得る工程。
(3)圧延成形品に対して回転式ロール刃を押し当て、短冊状に切断しつつ波型形状を付与する工程。
【0050】
回転式ロール刃により短冊状に切断されたシートは、ロールから剥離される時に抵抗力が掛かることで、図1に示されるような波型形状及び鋸歯形状が付与される。なお、圧延成形品を回転式ロール刃により切断しない場合には、例えば圧延ローラー上の圧延成形品をドクターナイフで剥離することで、ロールから剥離される時に抵抗力が掛かり、同様に波型形状及び鋸歯形状を付与することができる。また、前記方法でたばこシートを製造する場合、目的に応じて、圧延ローラーの表面を加温又は冷却してもよく、圧延ローラーの回転数を調整してもよい。さらに、圧延ローラーの間隔を調整することで、所望の坪量のたばこシートを得ることができる。
【0051】
[非燃焼加熱型香味吸引器]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器は、本実施形態に係るたばこシート等を含むたばこ含有セグメントを備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器は、本実施形態に係る膨嵩性の高いたばこシート等が充填されたたばこ含有セグメントを備えるため、たばこ含有セグメントの総熱容量を十分に低減することができ、たばこ含有セグメントに充填されたたばこシートがエアロゾル生成により寄与できるようになる。
【0052】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の一例を図2に示す。図2に示される非燃焼加熱型香味吸引器4は、本実施形態に係るたばこシート等が充填されたたばこ含有セグメント5と、周上に穿孔11を有する筒状の冷却セグメント6と、センターホールセグメント7と、フィルターセグメント8と、を備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器は、たばこ含有セグメント、冷却セグメント、センターホールセグメント及びフィルターセグメント以外にも、他のセグメントを有していてもよい。
【0053】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の軸方向の長さは特に限定されないが、40mm以上、90mm以下であることが好ましく、50mm以上、75mm以下であることがより好ましく、50mm以上、60mm以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱型香味吸引器の周の長さは16mm以上、25mm以下であることが好ましく、20mm以上、24mm以下であることがより好ましく、21mm以上、23mm以下であることがさらに好ましい。例えば、たばこ含有セグメントの長さは20mm、冷却セグメントの長さは20mm、センターホールセグメントの長さは8mm、フィルターセグメントの長さは7mmである態様を挙げることができる。なお、フィルターセグメントの長さは4mm以上、10mm以下の範囲内で選択可能である。また、その際のフィルターセグメントの通気抵抗は、セグメント当たり15mmHO/seg以上、60mmHO/seg以下であるように選択される。これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。さらには、センターホールセグメントを用いずに、冷却セグメントの下流側にフィルターセグメントのみを配置しても、非燃焼加熱型香味吸引器として機能させることができる。
【0054】
(たばこ含有セグメント)
たばこ含有セグメント5は、本実施形態に係るたばこシートが巻紙(以下、ラッパーともいう)内に充填されている。たばこシートを巻紙内に充填する方法は特に限定されないが、例えばたばこシートをラッパーで包んでもよく、筒状のラッパー内にたばこシートを充填してもよい。たばこシートの形状が矩形状のように長手方向を有する場合、たばこシートは該長手方向がラッパー内でそれぞれ不特定の方向となるように充填されていてもよく、たばこ含有セグメント5の軸方向又は該軸方向に対して垂直な方向となるように整列させて充填されていてもよい。
【0055】
(冷却セグメント)
図2に示されるように、冷却セグメント6は筒状部材10で構成される態様を挙げることができる。筒状部材10は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であってもよい。
【0056】
筒状部材10及び後述するマウスピースライニングペーパー15には、両者を貫通する穿孔11が設けられている。穿孔11の存在により、吸引時に外気が冷却セグメント6内に導入される。これにより、たばこ含有セグメント5が加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。穿孔11の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5mm以上、1.5mm以下であってもよい。穿孔11の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔11は冷却セグメント6の周上に複数設けられていてもよい。
【0057】
穿孔11から導入される外気量は、使用者により吸引される気体全体の体積に対して85体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましい。前記外気量の割合が85体積%以下であることにより、外気によって希釈されることによる香味の低減を十分に抑制することができる。なお、これを別の言い方ではベンチレーション割合ともいう。ベンチレーション割合の範囲の下限は、冷却性の観点から、55体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましい。
【0058】
また、冷却セグメントは、しわ付けされた、ひだ付けされた、ギャザー加工された、又は折り畳まれた適切な構成材料のシートを含むセグメントであってもよい。そのような要素の断面プロフィールは、ランダムに向いたチャネルを示す場合がある。また、冷却セグメントは、縦方向延在チューブの束を含んでいてもよい。このような冷却セグメントは、例えば、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれたシート材料を巻紙で巻装して形成することができる。
【0059】
冷却セグメントの軸方向の長さは、例えば7mm以上、28mm以下であることができ、例えば18mmであることができる。また、冷却セグメントは、その軸方向断面形状として実質的に円形であることができ、その直径は例えば5mm以上、10mm以下であることができ、例えば約7mmであることができる。
【0060】
(センターホールセグメント)
センターホールセグメントは1つまたは複数の中空部を有する充填層と、該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)とで構成される。例えば、図2に示されるように、センターホールセグメント7は、中空部を有する第二の充填層12と、第二の充填層12を覆う第二のインナープラグラッパー13とで構成される。センターホールセグメント7は、マウスピースセグメント9の強度を高める機能を有する。第二の充填層12は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して、6質量%以上、20質量%以下添加されて硬化された内径φ1.0mm以上、φ5.0mm以下のロッドとすることができる。第二の充填層12は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、第二の充填層12内はほとんど流れない。センターホールセグメント7内部の第二の充填層12が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。なお、センターホールセグメント7が第二のインナープラグラッパー13を持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。
【0061】
(フィルターセグメント)
フィルターセグメント8の構成は特に限定されないが、単数または複数の充填層から構成されてよい。充填層の外側は一枚または複数枚の巻紙で巻装されてよい。フィルターセグメント8のセグメント当たりの通気抵抗は、フィルターセグメント8に充填される充填物の量、材料等により適宜変更することができる。例えば、充填物が酢酸セルロース繊維である場合、フィルターセグメント8に充填される酢酸セルロース繊維の量を増加させれば、通気抵抗を増加させることができる。充填物が酢酸セルロース繊維である場合、酢酸セルロース繊維の充填密度は0.13~0.18g/cmであることができる。なお、通気抵抗は通気抵抗測定器(商品名:SODIMAX、SODIM製)により測定される値である。
【0062】
フィルターセグメント8の周の長さは特に限定されないが、16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。フィルターセグメント8の軸方向の長さは4~10mmを選択可能であり、その通気抵抗が15~60mmHO/segとなるように選択される。フィルターセグメント8の軸方向の長さは5~9mmが好ましく、6~8mmがより好ましい。フィルターセグメント8の断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。また、フィルターセグメント8には香料を含んだ破壊性カプセル、香料ビーズ、香料を直接添加していてもよい。
【0063】
図2に示されるように、センターホールセグメント7と、フィルターセグメント8とはアウタープラグラッパー(外側巻紙)14で接続できる。アウタープラグラッパー14は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント5と、冷却セグメント6と、接続済みのセンターホールセグメント7及びフィルターセグメント8とは、マウスピースライニングペーパー15により接続できる。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー15の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つのセグメントを入れて巻くことで接続することができる。なお、これらのセグメントは複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。
【0064】
[非燃焼加熱型香味吸引システム]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器と、該非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器及び前記加熱装置以外に、他の構成を有していてもよい。
【0065】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例を図3に示す。図3に示される非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器4と、非燃焼加熱型香味吸引器4のたばこ含有セグメントを外側から加熱する加熱装置16とを備える。
【0066】
図3(a)は非燃焼加熱型香味吸引器4を加熱装置16に挿入する前の状態を示し、図3(b)は非燃焼加熱型香味吸引器4を加熱装置16に挿入して加熱する状態を示す。図3に示される加熱装置16は、ボディ17と、ヒーター18と、金属管19と、電池ユニット20と、制御ユニット21とを備える。ボディ17は筒状の凹部22を有し、凹部22の内側側面であって、凹部22に挿入される非燃焼加熱型香味吸引器4のたばこ含有セグメントと対応する位置に、ヒーター18及び金属管19が配置されている。ヒーター18は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット21からの指示により電池ユニット20より電力が供給され、ヒーター18の加熱が行われる。ヒーター18から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管19を通じて非燃焼加熱型香味吸引器4のたばこ含有セグメントへ伝えられる。
【0067】
図3(b)においては、模式的に図示しているため、非燃焼加熱型香味吸引器4の外周と金属管19の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達する目的で非燃焼加熱型香味吸引器4の外周と金属管19の内周との間に隙間は無い方が望ましい。なお、加熱装置16は非燃焼加熱型香味吸引器4のたばこ含有セグメントを外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。
【0068】
加熱装置による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150℃以上400℃以下であることがより好ましく、200℃以上350℃以下であることがさらに好ましい。なお、加熱温度とは加熱装置のヒーターの温度を示す。
【0069】
さらに非燃焼加熱型香味吸引器には、香味成分(煙)のデリバリー改善が求められている。以下、香味成分(煙)のデリバリーを改善させた非燃焼加熱型香味吸引器について説明する。
【0070】
[第1の態様]
本実施態様は、以下の[1a]~[19a]を含む。本実施形態によれば、使用の前半から後半にわたって使用者に供給される各成分のバランスが均一な非燃焼加熱型香味吸引器及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供することができる。
【0071】
[1a]たばこ含有セグメントと、マウスピースセグメントと、を含む非燃焼加熱型香味吸引器であって、
前記たばこ含有セグメントが、エアロゾル発生剤を含む第一のセグメントと、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含む第二のセグメントと、を含み、
前記マウスピースセグメントが、冷却セグメントと、フィルターセグメントと、を含む非燃焼加熱型香味吸引器。
【0072】
[2a]前記エアロゾル発生剤が、グリセリン、プロピレングリコール、及び1,3-ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも一種である、[1a]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0073】
[3a]前記第一のセグメントが植物繊維をさらに含む、[1a]又は[2a]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0074】
[4a]前記第一のセグメントが、筒状のラッパーと、前記ラッパー内部に充填された前記植物繊維で構成される不織布と、を含み、前記不織布が前記エアロゾル発生剤を含む、[3a]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0075】
[5a]シート状の前記不織布が複数枚重ねられ、S字状形状に折りたたまれた状態で前記ラッパー内部に充填されている、[4a]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0076】
[6a]前記ラッパーが、金属箔、金属箔と紙との張り合わせシート、ポリマーフィルム、ポリマーフィルムと紙との張り合わせシート、又は、表面に修飾セルロース、修飾でんぷん、ポリビニルアルコール及び酢酸ビニルからなる群から選択されるコート剤が塗布された紙である、[4a]又は[5a]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0077】
[7a]前記ラッパーが、外表面を構成する紙層と、内表面を構成する液体不透過層との積層体であり、
前記液体不透過層が、金属箔、ポリマーフィルム、又は、修飾セルロース、修飾でんぷん、ポリビニルアルコール及び酢酸ビニルからなる群から選択されるコート剤の層からなり、
前記ラッパーの一方の端部と他方の端部において、前記ラッパーの前記液体不透過層同士が接着されることで、前記ラッパーが筒状に形成されている、[4a]~[6a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0078】
[8a]前記第一のセグメントが増粘剤をさらに含む、[1a]~[7a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0079】
[9a]前記たばこシートが香味発現助剤を含む、[1a]~[8a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0080】
[10a]前記たばこシートが脂質を含む、[1a]~[9a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0081】
[11a]前記第二のセグメントが、前記第一のセグメントに対して前記マウスピースセグメント側に配置されている、[1a]~[10a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0082】
[12a]柱状の前記第一のセグメントが前記たばこ含有セグメントの軸方向に延びて設けられ、前記第一のセグメントの外周上に前記第二のセグメントが配置されている、[1a]~[10a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0083】
[13a]柱状の前記第二のセグメントが前記たばこ含有セグメントの軸方向に延びて設けられ、前記第二のセグメントの外周上に前記第一のセグメントが配置されている、[1a]~[10a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0084】
[14a]前記第一のセグメントと前記第二のセグメントが、熱伝導素材を含むアウターラッパーにより巻装されることで接続されている、[1a]~[11a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0085】
[15a][1a]~[14a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器と、
前記非燃焼加熱型香味吸引器の前記たばこ含有セグメントを加熱するヒータを備える加熱装置と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0086】
[16a]前記ヒータが、柱状の前記第一のセグメントの側面全体を加熱し、かつ、柱状の前記第二のセグメントの側面の一部を加熱する又は前記第二のセグメントを加熱しない、第一の外周加熱ヒータを含む、[15a]に記載の非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0087】
[17a]前記ヒータが、柱状の前記第一のセグメントの側面全体及び底面全体を加熱し、かつ、柱状の前記第二のセグメントの側面の少なくとも一部を加熱する又は前記第二のセグメントを加熱しない、第二の外周加熱ヒータを含む、[15a]に記載の非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0088】
[18a]前記ヒータが、柱状の前記第一のセグメントの内部を軸方向全体にわたって加熱し、かつ、柱状の前記第二のセグメントの内部を軸方向の一部において加熱する又は前記第二のセグメントを加熱しない、内部加熱ヒータを含む、[15a]~[17a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0089】
[19a]前記ヒータによる加熱温度が200~350℃である、[15a]~[18a]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0090】
〔非燃焼加熱型香味吸引器〕
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器では、たばこ含有セグメントが、エアロゾル発生剤を含む第一のセグメントと、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含む第二のセグメントを含む。そのため、たばこ含有セグメントを加熱する際に、沸点が高い(蒸気圧が低い)エアロゾル発生剤を含む第一のセグメントの加熱温度を高くし、かつ、沸点が低い(蒸気圧が高い)たばこ成分等の香味成分を含む第二のセグメントの加熱温度を低くすることができる。これにより、使用の前半における沸点が低い(蒸気圧が高い)香味成分の揮発を抑制でき、使用の後半まで香味成分の揮発及び供給を維持することができる。さらに、使用の前半における沸点が高い(蒸気圧が低い)エアロゾル発生剤の揮発を促進できる。したがって、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器では、使用の前半から後半にわたって使用者に供給される各成分のバランスを均一にすることができる。
【0091】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の一例を図4(a)に示す。図4(a)に示される非燃焼加熱型香味吸引器101は、たばこ含有セグメント102と、マウスピースセグメント103とを備える。たばこ含有セグメント102は、エアロゾル発生剤を含む第一のセグメント104と、第一のセグメント104よりも下流側に配置された、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含む第二のセグメント105とを有する。マウスピースセグメント103は、上流側から冷却セグメント106と、センターホールセグメント107と、フィルターセグメント108とをこの順に備える。なお、本実施形態ではマウスピースセグメント103はセンターホールセグメント107を備えなくてもよい。使用時、たばこ含有セグメント102の少なくとも一部(主に第一のセグメント104)が加熱され、第一のセグメント104のエアロゾル発生剤及び第二のセグメント105の香味成分が気化し、吸引によりこれらはマウスピースセグメント103へ移行し、フィルターセグメント108の端部より吸引が行われる。
【0092】
(たばこ含有セグメント)
本実施形態に係るたばこ含有セグメントは、エアロゾル発生剤を含む第一のセグメントと、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含む第二のセグメントと、を含む。本実施形態に係るたばこ含有セグメントは、前記第一のセグメント及び/又は前記第二のセグメントを複数含んでもよい。
【0093】
<第一のセグメント>
本実施形態に係る第一のセグメントは、エアロゾル発生剤を含む。エアロゾル発生剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0094】
第一のセグメントは、エアロゾル発生剤を十分に保持する観点から植物繊維をさらに含むことが好ましい。植物繊維としては、例えば木材パルプ、麻、トウモロコシ、竹、綿、たばこ等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。植物繊維は、植物繊維が集合した植物繊維シートであることができる。エアロゾル発生剤が植物繊維シートに安定的に保持されること、および、エアロゾルの生成量を必要量担保する観点から、植物繊維はエアロゾル発生剤を10~50質量%含むことが好ましく、12~30質量%含むことがより好ましい。
【0095】
前記第一のセグメントは、筒状のラッパーと、前記ラッパー内部に充填された植物繊維で構成される不織布と、を含み、前記不織布がエアロゾル発生剤を含むことが好ましい。前記第一のセグメントでは、不織布によりエアロゾル発生剤を十分に保持することができる。不織布の厚みは特に限定されないが、例えば1~2mmであることができる。不織布はエアロゾル発生剤を10~50質量%含むことが好ましく、12~30質量%含むことがより好ましい。
【0096】
また、前記第一のセグメントは、筒状のラッパーと、前記ラッパー内部に充填された植物繊維で構成される紙と、を含み、前記紙がエアロゾル発生剤を含むことが好ましい。前記第一のセグメントでは、紙によりエアロゾル発生剤を十分に保持することができる。紙の厚みは特に限定されないが、例えば50~200μmであることができる。紙はエアロゾル発生剤を10~50質量%含むことが好ましく、12~30質量%含むことがより好ましい。
【0097】
前記第一のセグメントでは、例えば図5(a)に示されるように、シート状の不織布121が複数枚重ねられ、S字状形状に折りたたまれた状態でラッパー内部に充填されていることが好ましい。このような第一のセグメントでは不織布が折りたたまれて充填されているため、通常不織布間の間隙は視認されないが、例えばブレード状、棒状等の内部加熱用のヒータを挿入した際には、不織布間の間隙にヒータが入り込み、不織布自体の損傷はない。そのため、前記ヒータを加熱した際に、不織布等が焦げて脆くなり、デバイス内にごみとして残留することを防止することができる。
【0098】
また、前記第一のセグメントでは、例えば図5(b)に示されるように、シート状の紙131がギャザーされた状態でラッパー内部に充填されていることが好ましい。このような第一のセグメントでは、例えばブレード状、棒状等の内部加熱用のヒータを挿入した際には、紙間の間隙にヒータが入り込み、紙自体の損傷はない。そのため、前記ヒータを加熱した際に、紙等が焦げて脆くなり、デバイス内にごみとして残留することを防止することができる。また、前記不織布も前記S字状形状に折りたたまれた充填ではなく、ギャザー充填されていてもよい。ギャザー充填されると、空気の流れ方向に空気が透過しやすいチャネルが複数形成されるため、第一のセグメントの通気抵抗を低くすることができる。
【0099】
また、エアロゾル発生剤の染み出しを抑制する観点から、前記ラッパーは液体透過性を下げたものを使用することが望ましい。液体透過しにくいラッパーとしては、例えば金属箔、金属箔と紙との張り合わせシート、ポリマーフィルム、ポリマーフィルムと紙との張り合わせシート、表面に修飾セルロース、修飾でんぷん、ポリビニルアルコール、および酢酸ビニル等の液体の透過を妨げるようなコート剤が塗布された紙等が挙げられる。液体の透過を防止する観点に加えて、第一のセグメントの長手方向の温度分布を均一にできる観点では、熱伝導性に優れた金属箔を含むラッパーであることが好ましい。さらに、金属箔と紙との張り合わせシートとしてロッド巻装後に内側に金属箔、外側に紙が配置するようにすることで、外観を通常の燃焼型香味吸引器(シガレット)に類似させることができる。第一のセグメントに含ませるエアロゾル発生剤の量を比較的少量とした場合は、表面に修飾セルロース、修飾でんぷん、ポリビニルアルコール、および酢酸ビニル等の液体の透過を妨げるようなコート剤が塗布された紙を用いることが、第一のセグメントのロッド硬さ、弾力、および触り心地を通常の燃焼型香味吸引器(シガレット)に類似させることができるため、好ましい。
【0100】
前記ラッパーが、外表面を構成する紙層と、内表面を構成する液体不透過層との積層体である場合、前記液体不透過層は、金属箔、ポリマーフィルム、又は、修飾セルロース、修飾でんぷん、ポリビニルアルコール及び酢酸ビニルからなる群から選択されるコート剤の層からなることができる。ここで、前記ラッパーの一方の端部と他方の端部において、前記ラッパーの前記液体不透過層同士が接着されることで、前記ラッパーが筒状に形成されていることが好ましい。例えば図6に示されるように、エアロゾル発生剤を含む不織布122が、外表面を構成する紙層124と、内表面を構成する液体不透過層123との積層体である筒状のラッパー内に充填されている。ここで、ラッパーの一方の端部と他方の端部において液体不透過層123同士が接着されることで(接着部125)、ラッパーが筒状に形成されている。このように液体不透過層同士を接着することで、エアロゾル発生剤の外部への染み出しをより抑制することができる。
【0101】
前記第一のセグメントは、エアロゾル発生剤の保持性を向上させる観点から、増粘剤をさらに含むことが好ましい。例えばグリセリンやプロピレングリコール等のエアロゾル発生剤は常温で液体であり、不織布等に多量に含ませる場合、不織布から流れ出る可能性がある。しかし、不織布等に増粘剤をさらに含ませることで、エアロゾル発生剤の外部への流出を抑制でき、取り扱い性が向上する。増粘剤としては、ジェランガム、タマリンドガム、寒天、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸塩等の増粘多糖類、コラーゲン、ゼラチン等のタンパク質、HPC、CMC、HPMC等の修飾セルロース等が挙げられる。これらの増粘剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。前記第一のセグメントに増粘剤が含まれる場合、増粘剤の含有量は、使用する増粘剤の種類にもよるが、エアロゾル発生剤100質量部に対して0.1~5.0質量部であることが好ましい。例えばエアロゾル発生剤としてグリセリン、増粘剤としてネイティブ型のジェランガム、希釈剤として水を使用する場合は、グリセリン100質量部に対してネイティブ型のジェランガムを0.3~0.7質量部、水を23.5質量部とすることで、粘度が2000~26000(mPa・s at25℃)と、保持に優れた粘度を有するエアロゾル発生剤が得られる。該エアロゾル発生剤は、室内温度領域でゲル状であり、60~70℃程度に加温して液状となる。こうすることで、第一のセグメントを製造する際はエアロゾル発生剤を加温して液体状態として不織布もしくは紙に塗布することで容易に含ませることができ、常温程度まで温度が低下した後はゲル状態となり安定的に保持される。
【0102】
前記第一のセグメントは、エアロゾル発生剤、植物繊維(不織布または紙)、ラッパー、増粘剤以外にも、例えばたばこ成分、たばこ成分以外の香料成分(外添香料)等を含んでもよい。たばこ成分以外の香料成分としては、例えばL-メンソール、リコリスエキス、還元糖、ココアエキス等が挙げられる。なお、前記第一のセグメントは香味成分を含まないことができる。
【0103】
前記第一のセグメントの軸方向の長さは特に限定されないが、例えば5~15mmであることができる。また、前記第一のセグメントの周の長さは特に限定されないが、例えば15~24mmであることができる。
【0104】
<第二のセグメント>
本実施形態に係る第二のセグメントは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含む。すなわち、第二のセグメントはたばこ成分等の香味成分を含む。第二のセグメントは、例えば筒状のラッパーと、前記ラッパー内部に充填された本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートとを含むことができる。
【0105】
前記たばこシートは香味発現助剤を含むことができる。香味発現助剤は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物及び水酸化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、香味発現助剤は炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムである。たばこシートに含まれるたばこ成分の大半はアミン類であるため、たばこシートが香味発現助剤を含むことで、比較的低い温度においてもたばこ成分の揮発が確保され、たばこ香味を十分に発現することができる。たばこシートに含まれる香味発現助剤の量は、たばこシート100質量部に対して5~20質量部であることが好ましい。香味発現助剤を添加することで、たばこシートのpHは7~11になってもよい。なお、pHは、pHメーター(例えば、IQ Scientific InstrumentsInc.製のIQ240)で測定することができる。例えば、たばこシート2~10gに質量比で10倍の蒸留水を加え、室温(例えば22℃)で水とたばこシートとの混合物を200rpmで10分間振盪し5分間静置した後、得られた抽出液のpHをpHメーターで測定する。
【0106】
また、前記たばこシートは脂質を含むことができる。脂質としては、例えばモノグリセライド・ジグリセリド・トリグリセリド等のアシルグリセロール、脂肪酸等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。たばこシートが脂質を含むことで、たばこシート中に含まれるニコチン等の香味成分と脂質との相互作用により、ニコチン等香味成分の余剰な揮発を抑制できる。また、たばこシートが脂質を含むことで、使用時に生成されるエアロゾル中にも微量ではあるものの脂質が含まれることがある。こうすることで、香味成分やエアロゾル発生剤の蒸気が冷却されてエアロゾルが形成された後の、香味成分の再蒸気化を抑制することができる。たばこシートに含まれる脂質の量は、たばこシート100質量部に対して2~15質量部であることが好ましい。
【0107】
第二のセグメントは、例えば筒状のラッパー内に、たばこシートが裁刻されたたばこシート刻がランダムに又は配向を揃えて充填されたもの、或いはたばこシートが裁刻されずにギャザーして充填されたもの、等であることができる。以下、たばこシート刻をたばこ刻ともいう。ラッパーとしては、例えば巻紙を筒状にしたもの等が挙げられる。ラッパー内に充填される充填物中のニコチンの含有量は1.5質量%以上であることが好ましく、2.0~4.0質量%であることがより好ましい。また、ラッパー内に充填されるたばこ刻の充填密度は、0.2~0.7mg/mmとすることで、使用時の充分な香味成分の生成が担保され、かつ、第二のセグメントの十分なロッドの硬さが担保されるため好ましい。
【0108】
たばこ刻の大きさや調製法については特段の制限はない。一例として、たばこシートを、幅を0.5mm以上、2.0mm以下、長さを3mm以上、10mm以下となるように刻んだものが挙げられる。このような大きさのたばこ刻は、被充填物に充填するうえで好ましい。その他の例として、たばこシートを、幅を0.5mm以上、2.0mm以下、長さを前述のたばこ刻よりも長く、好ましくは被充填物と同程度の長さとなるように刻んだもの(ストランドタイプ刻)を挙げることができる。ストランドタイプ刻は、成形の容易さの観点から、たばこシートを使用することが好ましい。
【0109】
たばこ刻の水分含有量は、たばこ刻の全質量に対して、10質量%以上、15質量%以下を挙げることができ、11質量%以上、13質量%以下であることが好ましい。このような水分含有量であると、たばこ刻を被充填物に充填した後の巻染みの発生を抑制できる。
【0110】
ラッパー内部におけるたばこシートの充填密度は、充填されるたばこシートの形態や、目的とする香味、通気抵抗などに応じて適宜設定し得る。例えば、前記充填密度は0.2mg/mm以上、0.7mg/mm以下である態様を挙げることができる。前記充填密度は、ラッパーで形成されるロッドの内容積に対するたばこシートの質量の割合によって算出される。
【0111】
前記第二のセグメントの軸方向の長さは特に限定されないが、例えば5~15mmであることができる。また、前記第二のセグメントの周の長さは特に限定されないが、例えば15~24mmであることができる。
【0112】
<たばこ含有セグメントの構成>
たばこ含有セグメントの構成は、たばこ含有セグメントが前記第一のセグメントと前記第二のセグメントを含めば特に限定されないが、前記第二のセグメントが、前記第一のセグメントに対して前記マウスピースセグメント側(下流側)に配置されていることが好ましい。例えば図4(a)に示されるように、柱状の第二のセグメント105が柱状の第一のセグメント104に対してマウスピースセグメント103側(下流側)に配置されていることができる。図4(a)において、第一のセグメント104は、エアロゾル発生剤を含み植物繊維で構成される不織布109が第一のラッパー110内に充填されて構成されることができる。また、第二のセグメント5は、たばこシート111が第二のラッパー112内に充填されて構成されることができる。第一のセグメント及び第二のセグメントに含まれる各成分の揮発のしやすさは主に加熱温度で決まるが、揮発する成分と相溶性が高い物質が周辺に存在することで、前記成分の揮発が促進される。前記構成では、第一のセグメントで揮発したエアロゾル発生剤が、吸引時に第二のセグメントに流れ込んだ瞬間に冷却されて液化(エアロゾル化)し、第二のセグメント内に存在する香味成分(例えばニコチン)をエアロゾル内に溶解してたばこ含有セグメント外に運び出すことで、第二のセグメント内の前記香味成分の濃度が下がり、揮発が促進される。これにより、第二のセグメントの温度をそれほど上げなくても、リリース効率が担保される。そのため、低温においてパフ動作の都度、第二のセグメントから前記香味成分をリリースさせることができ、結果として前記香味成分が出尽くしてしまうことを抑制することができる。たばこ含有セグメントの軸方向における、第二のセグメントの長さ(B)に対する第一のセグメントの長さ(A)の比率(A/B)は、0.3~3.0が好ましく、0.5~2.0がより好ましい。
【0113】
前記第一のセグメントと前記第二のセグメントは、アウターラッパーにより巻装されることで接続されることができる。ここで、アウターラッパーは、通常の紙製ラッパーを用いても良いが、熱伝導素材を含むアウターラッパーであることが好ましい。第一のセグメント及び第二のセグメントを、熱伝導素材を含むアウターラッパーにより巻装することで、例えば第一のセグメントの側面のみを外周加熱ヒータにより加熱する場合にも、該ヒータの熱を第二のセグメントへ均一かつ効率よく伝熱することができる。熱伝導素材としては、例えば紙よりも熱伝導率が高い金属箔が挙げられる。特に、アルミニウム箔やステンレス箔に代表されるように、熱伝導率が10W/m・K以上で、安価で錆びにくく、加工特性が高い(数μm~10μmの厚さで引張強度が高く、曲げやすい)金属箔を用いることが好ましい。参考として、表1に代表的な金属箔(合金箔)の熱伝導率を示す。
【0114】
【表1】
【0115】
また、柱状の前記第一のセグメントが前記たばこ含有セグメントの軸方向に延びて設けられ、前記第一のセグメントの外周上に前記第二のセグメントが配置されていてもよい。例えば、図7(a)に示されるように、柱状の第一のセグメント104の(側面の)外周上に第二のセグメント105が配置されることができる。このような構成では、第一のセグメントにブレードヒータ等の内部加熱ヒータを挿入することで加熱することができる。前記構成では、より高温で加熱したい第一のセグメントが細巻形状に形成されているため、内部ヒータで第一のセグメントを効率的に高温加熱できる、といった点で好ましい。また、吸引時の円柱状ロッド縦方向の空気の流れやすさを、それぞれの充填物の充填密度を調整することで第一のセグメントに比べて第二のセグメントを流れやすく設定することで、第一のセグメントから主に生成されるエアロゾル発生剤が直接マウスピース方向へ移動するのではなく、第一のセグメントから主に生成されるエアロゾル発生剤が第二のセグメントに移動し、香味成分を同伴してからマウスピース部分へ移動することもできる。この場合第一のセグメントと第二のセグメントとの界面は、気体やエアロゾルが透過できるような、透過性のラッパー、例えば通気度が1000~30000コレスタユニットの紙で構成されていることが好ましい。また、前記界面にラッパー様のものが存在していなくても、第一のセグメントから第二のセグメントへの気体成分の移動促進の観点で好ましい。
【0116】
また、柱状の前記第二のセグメントが前記たばこ含有セグメントの軸方向に延びて設けられ、前記第二のセグメントの外周上に前記第一のセグメントが配置されていてもよい。例えば、図7(b)に示されるように、柱状の第二のセグメント105の(側面の)外周上に第一のセグメント104が配置されることができる。このような構成では、第一のセグメントの側面を外周加熱ヒータで加熱することができる。前記構成では、より高温で加熱したい第一のセグメントが外部ヒータで効率的に高温加温される、といった点で好ましい。また、吸引時の円柱状ロッド縦方向の空気の流れやすさを、それぞれの充填物の充填密度を調整することで第一のセグメントに比べて第二のセグメントを流れやすく設定することで、第一のセグメントから主に生成されるエアロゾル発生剤が直接マウスピース方向へ移動するのではなく、第一のセグメントから主に生成されるエアロゾル発生剤が第二のセグメントに移動し、香味成分を同伴してからマウスピース部分へ移動することもできる。この場合第一のセグメントと第二のセグメントとの界面は、気体やエアロゾルが透過できるような、透過性のラッパー、例えば通気度が1000~30000コレスタユニットの紙で構成されていることが好ましい。また、前記界面にラッパー様のものが存在していなくても、第一のセグメントから第二のセグメントへの気体成分の移動促進の観点で好ましい。
【0117】
前記たばこ含有セグメントの軸方向の長さは特に限定されないが、例えば12~50mmであることができる。また、前記たばこ含有セグメントの周の長さは特に限定されないが、例えば15~24mmであることができる。
【0118】
(マウスピースセグメント)
本実施形態に係るマウスピースセグメントは、冷却セグメントと、フィルターセグメントと、を含む。本実施形態に係るマウスピースセグメントは、冷却セグメント及び/又はフィルターセグメントを複数含んでもよい。また、本実施形態に係るマウスピースセグメントは、前記冷却セグメント及び前記フィルターセグメント以外の他のセグメントを含んでもよい。他のセグメントとしては、例えばセンターホールセグメント等が挙げられる。
【0119】
<冷却セグメント>
図4(a)に示されるように、冷却セグメント106は筒状部材113で構成される態様を挙げることができる。筒状部材113は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であってもよい。
【0120】
冷却セグメントは、たばこ含有セグメントよりも下流に位置する。冷却セグメントに求められる機能は、使用時にたばこ含有セグメントにて生成される香味成分やエアロゾル発生剤の蒸気を濾過や吸着によって減少させることを極力低減しつつ、香味成分やエアロゾル発生剤の蒸気を冷却して、液化(エアロゾル化)することである。例えば、吸引時に冷却セグメント入口のセグメント内部温度と冷却セグメント出口部のセグメント内部温度との差が20℃以上となることもある。通常の燃焼型香味吸引器のフィルター部材として用いられている、酢酸セルロース繊維充填セグメントを香味成分やエアロゾル発生剤の高温蒸気成分が通過した際は、セグメント入口とセグメント出口との温度差は20℃以上となることはあるものの、香味成分やエアロゾル発生剤の蒸気が繊維充填層を通過する際に多くの量が濾過や吸着によって減少してしまう。この繊維充填層は本願では冷却セグメントとは言わない。
【0121】
冷却セグメントの一つの態様としては、1枚の紙もしくは複数枚の紙を貼り合わせた紙を円筒状に加工した、中空の管であっても良い。管を構成する材料としては前記の紙以外にも、酢酸セルロース繊維をシート状にコルゲート加工した物でもよいし、ポリオレフィン、ポリエステル等のブラスチックフィルムでもよい。また、室温の外部空気を高温の蒸気と接触させて冷却効果を増大させるために、前記管の周囲に外部空気導入のための孔があることが好ましい。管の内側表面にポリビニルアルコール等のポリマーコーティング、または、ペクチン等の多糖類のコーティングを施すことで、コーティングの吸熱や相変化に伴う溶解熱を利用して冷却効果を増大することもできる。この筒状の冷却セグメントの通気抵抗はゼロmmHOとなる。
【0122】
冷却セグメントのもう一つの態様としては、円筒状に加工した管の内部に冷却用のシート部材を充填することも好ましい。この際は、流れ方向に一つまたは複数の空気流通チャネルを設けることで、冷却シートによる冷却を行いつつ、低いレベルのセグメント通過時の成分除去を達成できる。この冷却シートを充填した際の冷却セグメントの通気抵抗は0~30mmHOであることが望ましい。通気抵抗(RTD)は、22℃及び101kPa(760トル)での17.5ml/秒の流量の試験の下で物体の全長に空気を押し通すのに必要な圧力である。RTDは、一般的にmmHOの単位で表され、ISO 6565:2011に従って測定される。この冷却用シートを充填した態様においても、外部空気導入のための孔を管部材に施すこともできる。
【0123】
冷却用のシート部材の全表面積は、300mm/mm以上、1000mm/mm以下を挙げることができる。この表面積は、冷却用のシート部材の通気方向の長さ(mm)当たりの表面積である。冷却用のシート部材の全表面積は、400mm/mm以上であることが好ましく、450mm/mm以上であることがより好ましく、一方、600mm/mm以下であることが好ましく、550mm/mm以下であることがより好ましい。
【0124】
冷却機能の観点では冷却用のシート部材が大きい表面積を有することが望ましい。香味成分やエアロゾル発生剤の濾過や吸着による除去を低くするといった観点では、冷却用のシート部材を充填した冷却セグメントの通気抵抗は低い方が望ましい。従って、好ましい実施形態において、冷却用のシートは、流れ方向にチャネルを形成するためにしわ付けされて、次に、ひだ付け、ギャザー付け、及び折り畳まれた薄い材料のシートによって形成されてもよい。
【0125】
一部の実施形態において、冷却用のシート部材の構成材料の厚みは、5μm以上、500μm以下、例えば、10μm以上、250μm以下を挙げることができる。
【0126】
冷却用のシート部材の材料としては、金属箔、ポリマーシート、及び、通気性の低い紙等のシート材料であってよい。一実施形態において、冷却セグメントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、酢酸セルロース、及びアルミニウム箔から構成される群から選択されたシート材料を含むことができる。
【0127】
また、冷却用のシート部材の材料として紙を用いることも環境負荷低減の観点で望ましい。冷却用シート部材に用いる紙は、坪量30~100g/m、厚さ20~100μmであることが望ましい。冷却セグメントにおける香味成分とエアロゾル発生剤成分の除去を少なくするという観点では、冷却シート用の材料としての紙の通気度は低いことが望ましく、通気度は10コレスタユニット以下が好ましい。冷却用シート部材としての紙にポリビニルアルコール等のポリマーコーティング、または、ペクチン等の多糖類のコーティングを施すことで、コーティングの吸熱や相変化に伴う溶解熱を利用して冷却効果を増大することもできる。
【0128】
図4(a)において、筒状部材113及び後述するマウスピースライニングペーパー120には、両者を貫通する穿孔114が設けられている。穿孔114の存在により、吸引時に外気が冷却セグメント106内に導入される。これにより、たばこ含有セグメント102が加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。穿孔114の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5mm以上、1.5mm以下であってもよい。穿孔114の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔114は冷却セグメント106の周上に複数設けられていてもよい。
【0129】
穿孔114から導入される外気量は、使用者により吸引される気体全体の体積に対して85体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましい。前記外気量の割合が85体積%以下であることにより、外気によって希釈されることによる香味の低減を十分に抑制することができる。なお、これを別の言い方ではベンチレーション割合ともいう。ベンチレーション割合の範囲の下限は、冷却性の観点から、55体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましい。
【0130】
一部の実施形態において、生成したエアロゾルは、それが冷却セグメントを通って使用者に吸引される際に、温度が10℃以上低下することがある。別の一態様では温度が15℃以上、さらに別の一態様では20℃以上低下することがある。
【0131】
冷却セグメントは、その軸方向の長さが例えば7mm以上、30mm以下のロッド形状に形成することができる。例えば、冷却セグメントの軸方向の長さは20mmとすることができる。
【0132】
一部の実施形態において、冷却セグメントは、その軸方向断面形状として実質的に円形であり、周の長さは16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。
【0133】
<センターホールセグメント>
センターホールセグメントは1つまたは複数の中空部を有する充填層と、該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)とで構成される。例えば、図4(a)に示されるように、センターホールセグメント107は、中空部を有する第二の充填層115と、第二の充填層115を覆う第二のインナープラグラッパー116とで構成される。センターホールセグメント107は、マウスピースセグメント103の強度を高める機能を有する。第二の充填層115は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して、6質量%以上、20質量%以下添加されて硬化された内径φ1.0mm以上、φ5.0mm以下のロッドとすることができる。第二の充填層115は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、第二の充填層115内はほとんど流れない。センターホールセグメント107内部の第二の充填層115が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。なお、センターホールセグメント107が第二のインナープラグラッパー116を持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。
【0134】
<フィルターセグメント>
フィルターセグメントの構成は特に限定されないが、単数または複数の充填層から構成されてよい。例えば図4(a)に示されるように、フィルターセグメント108において、第一の充填層117の外側は第一のインナープラグラッパー118(内側巻紙)で巻装されてよい。フィルターセグメントのセグメント当たりの通気抵抗は、フィルターセグメントに充填される充填物の量、材料等により適宜変更することができる。例えば、充填物が酢酸セルロース繊維である場合、フィルターセグメントに充填される酢酸セルロース繊維の量を増加させれば、通気抵抗を増加させることができる。充填物が酢酸セルロース繊維である場合、酢酸セルロース繊維の充填密度は0.13~0.18g/cmであることができる。また、同じ充填密度においても、充填する酢酸セルロース繊維の太さは太い方が低い通気抵抗を発現するためには好ましい。酢酸セルロース繊維の1本の太さは、5~20デニール/フィラメントが好ましい。さらには、フィルターセグメントの高速製造の観点で7~13デニール/フィラメントであることがさらに好ましい。なお、通気抵抗は通気抵抗測定器(商品名:SODIMAX、SODIM製)により測定される値である。
【0135】
フィルターセグメントの周の長さは特に限定されないが、16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。フィルターセグメントの軸方向の長さは5~20mmを選択可能であり、その通気抵抗が10~60mmHO/segとなるように選択される。フィルターセグメントの軸方向の長さは5~9mmが好ましく、6~8mmがより好ましい。フィルターセグメントの断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。また、フィルターセグメントには香料を含んだ破壊性カプセル、香料ビーズ、香料を直接添加していてもよい。
【0136】
図4(a)に示されるように、センターホールセグメント107と、フィルターセグメント108とはアウタープラグラッパー(外側巻紙)119で接続できる。アウタープラグラッパー119は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント102と、冷却セグメント106と、接続済みのセンターホールセグメント107及びフィルターセグメント108とは、マウスピースライニングペーパー120により接続できる。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー120の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つのセグメントを入れて巻くことで接続することができる。なお、これらのセグメントは複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。また、図4(b)に示されるように、マウスピースライニングペーパー120により第一のセグメント104が固定されていてもよい。また、図4(c)に示されるように、アウターラッパー134により第一のセグメント104と第二のセグメント105を接続してから、マウスピースライニングペーパー120によりたばこ含有セグメント102と、冷却セグメント106と、接続済みのセンターホールセグメント107及びフィルターセグメント108とを接続してもよい。
【0137】
(非燃焼加熱型香味吸引器の構成)
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の軸方向の長さは特に限定されないが、40mm以上、90mm以下であることが好ましく、50mm以上、75mm以下であることがより好ましく、50mm以上、60mm以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱型香味吸引器の周の長さは16mm以上、25mm以下であることが好ましく、20mm以上、24mm以下であることがより好ましく、21mm以上、23mm以下であることがさらに好ましい。例えば、たばこ含有セグメントの長さは20mm、冷却セグメントの長さは20mm、センターホールセグメントの長さは8mm、フィルターセグメントの長さは7mmである態様を挙げることができる。なお、フィルターセグメントの長さは4mm以上、20mm以下の範囲内で選択可能である。また、その際のフィルターセグメントの通気抵抗は、セグメント当たり10mmHO/seg以上、60mmHO/seg以下であるように選択される。これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。さらには、センターホールセグメントを用いずに、冷却セグメントの下流側にフィルターセグメントのみを配置しても、非燃焼加熱型香味吸引器として機能させることができる。
【0138】
〔非燃焼加熱型香味吸引システム〕
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器と、前記非燃焼加熱型香味吸引器の前記たばこ含有セグメントを加熱するヒータを備える加熱装置と、を備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器を備えるため、使用の前半から後半にわたって使用者に供給される各成分のバランスが均一である。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器及び前記加熱装置以外の他の構成を有していてもよい。
【0139】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例を図8に示す。図8に示される非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器101と、非燃焼加熱型香味吸引器101のたばこ含有セグメントを外側から加熱する加熱装置127とを備える。図8(a)は非燃焼加熱型香味吸引器101を加熱装置127に挿入する前の状態を示し、図8(b)は非燃焼加熱型香味吸引器101を加熱装置127に挿入して加熱する状態を示す。図8に示される加熱装置127は、ボディ128と、ヒータ129と、金属管130と、電池ユニット131と、制御ユニット132とを備える。ボディ128は筒状の凹部133を有し、凹部133の内側側面であって、凹部133に挿入される非燃焼加熱型香味吸引器101のたばこ含有セグメント(主に第一のセグメント)と対応する位置に、ヒータ129及び金属管130が配置されている。ヒータ129は電気抵抗によるヒータであることができ、温度制御を行う制御ユニット132からの指示により電池ユニット131より電力が供給され、ヒータ129の加熱が行われる。ヒータ129から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管130を通じて非燃焼加熱型香味吸引器101のたばこ含有セグメント(主に第一のセグメント)へ伝えられる。
【0140】
図8(b)においては模式的に図示しているため、非燃焼加熱型香味吸引器101の外周と金属管130の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達する目的で非燃焼加熱型香味吸引器101の外周と金属管130の内周との間に隙間は無い方が望ましい。また、加熱装置127は非燃焼加熱型香味吸引器101のたばこ含有セグメント(主に第一のセグメント)を外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。内側から加熱するものである場合、金属管130を用いずに、剛直性のある板状、ブレード状、柱状ヒータを用いることが好ましい。係るヒータとしては、例えばセラミック基材の上にモリブデンやタングステン等を付与したセラミックヒータが挙げられる。
【0141】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムにおいて、ヒータは、柱状の第一のセグメントの側面全体を加熱し、かつ、柱状の第二のセグメントの側面の一部を加熱する又は第二のセグメントを加熱しない、第一の外周加熱ヒータを含むことが好ましい。このような構成とすることで、沸点が高い(蒸気圧が低い)エアロゾル発生剤を含む第一のセグメントの加熱温度を高くでき、かつ、沸点が低い(蒸気圧が高い)香味成分を含む第二のセグメントの加熱温度を低くすることができるため、使用の前半から後半にわたって使用者に供給される各成分のバランスを均一にすることができる。前記第一の外周加熱ヒータは、例えば図8に示されるヒータ129のように、柱状の第一のセグメントの側面全体を加熱し、かつ、柱状の第二のセグメントの側面の一部を加熱することができる。なお、図8ではヒータ129は第二のセグメントの側面の一部を加熱するが、第二のセグメントを加熱しなくてもよい。この場合、第二のセグメントは第一のセグメントからの伝熱や余熱により加熱される。
【0142】
また、本実施形態に係る他の非燃焼加熱型香味吸引システムにおいて、ヒータは、柱状の第一のセグメントの側面全体及び底面全体を加熱し、かつ、柱状の第二のセグメントの側面の少なくとも一部を加熱する又は第二のセグメントを加熱しない、第二の外周加熱ヒータを含むことが好ましい。このような構成とすることで、前記実施形態と同様に、使用の前半から後半にわたって使用者に供給される各成分のバランスを均一にすることができる。前記第二の外周加熱ヒータは、例えば図9(a)に示されるヒータ129のように、柱状の第一のセグメントの側面全体及び底面全体を加熱し、かつ、柱状の第二のセグメントの側面を加熱することができる。なお、図9(a)ではヒータ129は第二のセグメントの側面を加熱するが、第二のセグメントを加熱しなくてもよい。この場合、第二のセグメントは第一のセグメントからの伝熱や余熱により加熱される。
【0143】
また、本実施形態に係る他の非燃焼加熱型香味吸引システムにおいて、ヒータは、柱状の第一のセグメントの内部を軸方向全体にわたって加熱し、かつ、柱状の第二のセグメントの内部を軸方向の一部において加熱する又は第二のセグメントを加熱しない、内部加熱ヒータを含むことが好ましい。このような構成とすることで、前記実施形態と同様に、使用の前半から後半にわたって使用者に供給される各成分のバランスを均一にすることができる。前記内部加熱ヒータは、例えば図9(b)に示されるヒータ129のように、柱状の第一のセグメントの内部を軸方向全体にわたって加熱し、かつ、柱状の第二のセグメントを加熱しないことができる。なお、図9(b)ではヒータ129は第二のセグメントを加熱しないが、第二のセグメントの内部を軸方向の一部において加熱してもよい。
【0144】
また、本実施形態に係る他の非燃焼加熱型香味吸引システムにおいて、ヒータは、前記第一又は第二の外周加熱ヒータと、前記内部加熱ヒータとの組み合わせであってもよい。前記ヒータは、例えば図9(c)に示されるヒータ129のように、柱状の第一及び第二のセグメントの側面全体を加熱する外周加熱ヒータと、柱状の第一のセグメントの内部を軸方向全体にわたって加熱し、かつ、柱状の第二のセグメントを加熱しない内部加熱ヒータとの組み合わせであってもよい。
【0145】
前記ヒータによる加熱温度は、200~350℃であることが好ましい。なお、加熱温度とはヒータの温度を示す。
【0146】
[第2の態様]
本実施態様は、以下の[1b]~[7b]を含む。本実施形態によれば、加熱により生成される成分のデリバリー量が改善された非燃焼加熱型香味吸引器及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供できる。
【0147】
[1b]本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含むたばこ含有セグメントと、マウスピースセグメントとを備える棒状の非燃焼加熱型香味吸引器であって、
前記マウスピースセグメントが、フィルター濾材を有するフィルターセグメントを備え、
前記フィルター濾材が、周方向断面がY形状であり、かつ、単繊維デニールが8以上、12以下である繊維から構成される、非燃焼加熱型香味吸引器。
【0148】
[2b]前記フィルター濾材の密度が、0.09g/cm以上、0.14g/cm以下である、[1b]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0149】
[3b]下記の式(1)で表されるフィルター濾材の圧縮変化率Pが、88%以上、95%以下である、[1b]又は[2b]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
P=(D1×100)/D2 (1)
P(%):圧縮変化率
D1(mm):フィルター濾材が通気方向に垂直な方向に変形するように、長軸方向の単位長さ当たりの圧縮荷重3N/mm、圧縮時間10秒の条件でフィルター濾材を圧縮した後の圧縮方向のフィルター濾材の直径
D2(mm):圧縮前のフィルター濾材の平均直径
【0150】
[4b]前記フィルター濾材の長軸方向の長さが、5mm以上、20mm以下である、[1b]~[3b]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0151】
[5b]前記フィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗が、1.0mmHO/mm以上、4.0mmHO/mm以下である、[1b]~[4b]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0152】
[6b]前記フィルター濾材の内部に香料カプセルが配置される、[1b]~[5b]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0153】
[7b]ヒータと、該ヒータの電力源となる電池ユニットと、該ヒータを制御するための制御ユニットとを備える加熱装置と、該ヒータに接触するように挿入される、[1b]~[6b]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器と、から構成される、非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0154】
<非燃焼加熱型香味吸引器>
本発明の一実施形態である非燃焼加熱型香味吸引器(単に「非燃焼加熱型香味吸引器」とも称する。)は、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含むたばこ含有セグメントと、マウスピースセグメントとを備える棒状の非燃焼加熱型香味吸引器であって、
前記マウスピースセグメントが、フィルター濾材を有するフィルターセグメントを備え、
前記フィルター濾材が、周方向断面がY形状であり、かつ、単繊維デニールが8以上、12以下である繊維から構成される、非燃焼加熱型香味吸引器である。
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の一例を図10に示す。以下、該図10を参照しながら非燃焼加熱型香味吸引器の説明を行う。
【0155】
図10に示す棒状の非燃焼加熱型香味吸引器210は、たばこ含有セグメント211とマウスピースセグメント214と、これらを巻装してなるチップペーパー215とを備える棒状の非燃焼加熱型香味吸引器であって、該マウスピースセグメント214は冷却セグメント212と、フィルター濾材を含むフィルターセグメント213とを含み、非燃焼加熱型香味吸引器210の軸方向(「長軸方向」とも称する。)に対して、該冷却セグメント212が、該たばこ含有セグメント211と該フィルターセグメント213とに隣接して挟持され、かつ、該冷却セグメント212の周方向に同心状に開孔Vが設けられている。該開孔Vは、通常、使用者の吸引による外部からの空気の流入を促進するための孔であり、この空気の流入によりたばこ含有セグメント211から流入する成分や空気の温度を下げることができる。
非燃焼加熱型香味吸引器210では、たばこ含有セグメント211等の加熱により生成される成分がマウスピースセグメントを通過して使用者の口内に運ばれる。加熱により生成される成分としては、例えば、香料由来の香味成分や、たばこ葉由来のニコチンやタール、エアロゾル発生剤由来のエアロゾル成分が挙げられる。なお、本明細書において、エアロゾル発生剤とは、エアロゾルを生成するための基材である。
【0156】
非燃焼加熱型香味吸引器210は、以下のように定義されるアスペクト比が1以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
アスペクト比=h/w
wは柱状体の底面の幅(本明細書においては、たばこ含有セグメント側の底面の幅とする。)、hは高さであり、h≧wであることが好ましい。本明細書においては、長軸方向はhで示された方向であると規定する。したがって、仮にw≧hである場合においてもhで示された方向を便宜上長軸方向と称する。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、または楕円等であってよく、幅wは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、または多角形もしくは角丸多角である場合は外接円の直径もしくは外接楕円の長径である。
非燃焼加熱型香味吸引器210の長軸方向の長さhは、特段制限されず、例えば、通常40mm以上であり、45mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましい。また、通常100mm以下であり、90mm以下であることが好ましく、80mm以下であることがより好ましい。
非燃焼加熱型香味吸引器210の柱状体の底面の幅wは、特段制限されず、例えば、通常5mm以上であり、5.5mm以上であることが好ましい。また、通常10mm以下であり、9mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
非燃焼加熱型香味吸引器の長軸方向の長さにおける、前記冷却セグメント、及び前記フィルターセグメントの長さの割合(冷却セグメント:フィルターセグメント)は、特段制限されないが、香料のデリバリー量の観点から、通常0.60:1.40~1.40:0.60であり、0.80~1.20:0.80~1.20であり、0.85~1.15:0.85~1.15であることが好ましく、0.90~1.10:0.90~1.10であることがより好ましく、0.95~1.05:0.95~1.05であることがさらに好ましい。
冷却セグメント及びフィルターセグメントの長さの割合を上記範囲内とすることで、冷却効果、生成した蒸気及びエアロゾルが冷却セグメントの内壁に付着することによるロスを抑制する効果、及びフィルターの空気量及び香味の調整機能のバランスがとれて、良好な香味を呈する効果を実現できる。特に、冷却セグメントを長くすると、エアロゾル等の粒子化が促進され良好な香味を実現できるが、長すぎると通過する物質の内壁への付着が生じてしまう。
【0157】
非燃焼加熱型香味吸引器210の1本当たりの長軸方向の通気抵抗は、特段制限されないが、吸い易さの観点から、通常8mmHO以上であり、10mmHO以上であることが好ましく、12mmHO以上であることがより好ましく、また、通常100mmHO以下であり、80mmHO以下であることが好ましく、60mmHO以下であることがより好ましい。
通気抵抗は、ISO標準法(ISO6565:2015)に従って、例えばセルリアン社製フィルター通気抵抗測定器を使用して測定される。通気抵抗は、非燃焼加熱型香味吸引器210の側面における空気の透過が行なわれない状態で一方の端面(第1端面)から他方の端面(第2端面)に所定の空気流量(17.5cc/min)の空気を流した際の、第1端面と第2端面との気圧差を指す。単位は、一般的にはmmHOで表す。通気抵抗と非燃焼加熱型香味吸引器の長さとの関係は、通常実施する長さ範囲(長さ5mm~200mm)においては比例関係であることが知られていて、長さが倍になれば、非燃焼加熱型香味吸引器の通気抵抗は倍になる。
【0158】
〔マウスピースセグメント〕
マウスピースセグメント214は、フィルター濾材を有するフィルターセグメント213を備え、該フィルター濾材が、周方向断面がY形状であり、かつ、単繊維デニールが8以上、12以下である繊維から構成されていれば特段制限されず、例えば、図10に示すように、冷却セグメント212と、上記のフィルター濾材を含むフィルターセグメント213とを含み、非燃焼加熱型香味吸引器210の軸方向に対して、冷却セグメント212が、たばこ含有セグメント211とフィルターセグメント213とに隣接して挟持されるように構成されている態様とすることができる。以下、フィルターセグメント213及び冷却セグメント212について詳細に説明する。
【0159】
(フィルターセグメント)
フィルターセグメント213は、フィルター濾材を含み、該フィルター濾材が、周方向断面がY形状であり、かつ、単繊維デニールが8以上、12以下である繊維から構成されており、一般的なフィルターとしての機能を有していれば特に制限されない。フィルターの一般的な機能とは、例えば、エアロゾル等を吸引する際に混ざる空気量の調整や、香味の軽減、ニコチンやタールの軽減等が挙げられるが、これらの機能を全て備えていることは要しない。また、紙巻きたばこ製品と比較して、生成される成分が少なく、また、たばこ充填物の充填率が低くなる傾向のある非燃焼加熱型香味吸引システムにおいては、濾過機能を抑えつつたばこ充填物の落下を防止する、ということも重要な機能の一つである。
【0160】
フィルターセグメント213の形状は、特段制限されず、公知の形状を採用することができ、通常は円柱状の形状とすることができ、以下の態様とすることができる。
【0161】
フィルターセグメント213の周方向断面形状は実質的に円形であり、その円の直径は、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常4.0mm以上、9.0mm以下であり、4.5mm以上、8.5mm以下であることが好ましく、5.0mm以上、8.0mm以下であることがより好ましい。なお、周方向断面が円形でない場合、上記の直径は、その断面の面積と同じ面積を有する円で仮定し場合、その円における直径が適用される。
フィルターセグメント213の周方向断面形状の周の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常14.0mm以上、27.0mm以下であり、15.0mm以上、26.0mm以下であることが好ましく、16.0mm以上、25.0mm以下であることがより好ましい。
フィルターセグメント213の長軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常15mm以上、35mm以下であり、17.5mm以上、32.5mm以下であることが好ましく、20.0mm以上、30.0mm以下であることがより好ましい。
フィルターセグメント213の形状や寸法が上記範囲となるように、フィルター濾材の形状や寸法を適宜調整できるが、フィルター濾材の長軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更することができ、所望の硬さを得ることができる観点から、通常3mm以上、30mm以下であり、5mm以上、20mm以下であることが好ましく、8mm以上、18mm以下であることがより好ましく、10mm以上、15mm以下であることがさらに好ましい。
【0162】
フィルターセグメント213の長軸方向の通気抵抗は、特段制限されないが、吸い易さの観点から、通常1.0mmHO/mm以上、4.0mmHO/mm以下である。特に、フィルター濾材が後述する香料カプセルを有する場合、吸い易さの観点から、1.5mmHO/mm以上、4.0mmHO/mm以下であることが好ましく、この場合においてさらに、フィルター濾材がさらに後述する香味剤を含む場合、特に香味剤としてメンソール等の結晶性の物質を含む場合、2.5mmHO/mm以上、3.6mmHO/mm以下であることがより好ましい一方で、香味剤を含まない場合、1.9mmHO/mm以上、3.0mmHO/mm以下であることがより好ましい。また、フィルター濾材が後述する香料カプセルを有さない場合には、吸い易さの観点から、香料剤を含むか否かに関わらず、1.3mmHO/mm以上、2.4mmHO/mm以下であることが好ましい。また、これらの通気抵抗の条件は、フィルター濾材の通気方向の通気抵抗の条件としても適用できる。
上記の通気抵抗は、ISO標準法(ISO6565)に従って、例えばセルリアン社製フィルター通気抵抗測定器を使用して測定される。フィルターセグメント213の通気抵抗は、フィルターセグメント213の側面における空気の透過が行なわれない状態で一方の端面(第1端面)から他方の端面(第2端面)に所定の空気流量(17.5cc/min)の空気を流した際の、第1端面と第2端面との気圧差を指す。単位は、一般的にはmmHOで表す。フィルターセグメント213の通気抵抗とフィルターセグメント213の長さとの関係は、通常実施する長さ範囲(長さ5mm~200mm)においては比例関係であることが知られていて、長さが倍になれば、フィルターセグメント213の通気抵抗は倍になる。
【0163】
また、フィルターセグメント213の態様は、単一のフィルターセグメントを含むプレーンフィルターや、デュアルフィルター又はトリプルフィルタ等の複数のフィルターセグメントを含むマルチセグメントフィルター等とすることができる。
【0164】
フィルターセグメント213は、公知の方法で製造することができ、例えば、セルロースアセテートトウの等の合成繊維をフィルター濾材の材料として用いる場合、ポリマー及び溶媒を含むポリマー溶液を紡糸し、これを捲縮する方法により製造することができる。該方法としては、例えば、国際公開第2013/067511号に記載の方法を用いることができる。
フィルターセグメント213の製造において、通気抵抗の調整や添加物(公知の吸着剤や香料(例えばメンソール)、粒状の活性炭、香料保持材等)のフィルター濾材への添加を適宜設計できる。
【0165】
フィルターセグメント213を構成するフィルター濾材は、周方向断面がY形状であり、かつ、単繊維デニールが8以上、12以下である繊維から構成されていれば特段制限されず、例えば、Y形状の周方向断面を有する繊維から構成されるセルロースアセテートトウ等のトウを円柱状に加工したものを用いることができる。
トウを構成する繊維の周方向断面の形状は、Y形状である。Y形状の繊維形状を有するトウを用いた場合、円形状等の一般的な繊維形状を有するトウを用いた場合と比較して、その繊維形状が複雑であるため、デリバリー量に優れるフィルターセグメントが得られやすく、特に、少ない使用量で、つまりコストを抑えつつ、高い成分デリバリー量及び所望の硬さを有するフィルターセグメントを製造することができる。
繊維の単繊維デニール(g/9000m)は、加熱により生成される成分のデリバリー量の向上の観点から、8以上、12以下であれば特段制限されず、9以上、11以下であってもよい。繊維の単繊維デニールが上記範囲を下回ると、フィルター濾材を構成する繊維の構造が密になりすぎるため成分のデリバリー量が減少し、また、上記範囲を上回ると、フィルター濾材を構成する繊維の構造が疎になりすぎるため十分な硬さが得られない。繊維の総繊維デニール(g/9000m)は、特段制限されないが、加熱により生成される成分のデリバリー量の向上の観点から、総繊デニールは12000以上、35000以下であってよく、15000以上、30000以下であることが好ましい。これらの単繊維デニール及び総繊維デニールは、マウスピースセグメントの円周が22mmであるときに特に好ましい。繊維を充填したフィルターの場合は、フィルター硬さを向上させるためにトリアセチンを総繊維重量に対して、5重量%以上、10重量%以下で添加してもよい。
周方向断面がY形状の繊維の製造方法は、特段制限されないが、例えばアセテート繊維とする場合、パルプ原料の酢化を経てアセテートフレーク(酢酸繊維素)を製造し、その後、溶解機でアセトンにアセテートフレークを溶解させ(ドープ)、紡糸することで繊維状の束を製造することができるが、この紡糸工程において、ノズル口金の形状を変更することで周方向断面をY形状とすることができ、また、ノズル孔径を変更することで繊維の太さ(フィラメントデニール)を変更することができる。その後、必要な通気抵抗に応じてトータルデニールを決定し、それにより集束糸数(トータルでニール÷フィラメントデニール)が決定され、必要な紡糸室数を使用して紡糸され、紡糸集束されたアセテート繊維が、捲縮機にて均一の波型(クリンプ)がかけられ、リボン状で流れてくるトウを梱包機にてあや振り込みをしながら層積みして梱包し得る。
【0166】
フィルター濾材の密度(特に、後述する香料カプセルを含む場合、該香料カプセルを除いた状態の密度)は、特段制限されないが、所望の硬さを得ることができる観点から、通常0.09g/cm以上、0.25g/cm以下であり、0.09g/cm以上、0.20g/cm以下であることが好ましく、0.09g/cm以上、0.14g/cm以下であることがより好ましく、0.11g/cm以上、0.14g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0167】
下記の式(1)で表されるフィルター濾材の圧縮変化率Pは、硬さを表す指標の1つであり、特段制限されないが、所望の硬さを得ることができる観点から、通常85%以上、98%以下であり、88%以上、95%以下であることが好ましく、90%以上、93%以下であることがより好ましい。この圧縮変化率Pの測定方法は特段制限されないが、例えばSodim SAS社製のSODIM-H Hardness module等を用いて測定することができ、その数値はフィルター濾材の密度や材料を変更することにより調整することができる。
P=(D1×100)/D2 (1)
P(%):圧縮変化率
D1(mm):フィルター濾材が通気方向に垂直な方向(円柱形状の場合には円周方向)に変形するように、長軸方向の単位長さ当たりの圧縮荷重3N/mm、圧縮時間10秒の条件でフィルター濾材を圧縮した後の圧縮方向のフィルター濾材の直径
D2(mm):圧縮前のフィルター濾材の平均直径
また、圧縮変化率は、フィルター濾材の硬さを表す指標の一つであるため、本明細書では、圧縮変化率を「硬さ」とも表す。
【0168】
また、フィルター濾材は、後述する香料カプセルとは別に香味材等の成分を含んでいてもよく、例えば、香味剤としては、メンソール、スペアミント、ペパーミント、フェヌグリーク、またはクローブ、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられ、メンソールが好ましい。これらの成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の種類及び比率で併用してもよい。
フィルター濾材中の香味剤(特にメンソール)の含有量(後述する香料カプセル中の香味剤は除く)は、特段制限されず、通常0.5重量%以上、15重量%以下であり、3重量%以上、10重量%以下であることが好ましく、10重量%以上、5重量%以下であることがより好ましい。
【0169】
フィルター濾材は、ゼラチン等の破砕可能な外殻を含む破砕可能な添加剤放出容器(例えば、香料カプセル)を内部に配置してよい。香料カプセル(当該技術分野では「添加剤放出容器」とも呼ばれる)の態様は特段制限されず、公知の態様を採用してよく、例えば、ゼラチン等の破砕可能な外殻を含む破砕可能な添加剤放出容器とすることができる。この場合、香料カプセルは、香味吸引器の使用者により使用前、使用中、または使用後に破壊されると、香料カプセル内に含まれる液体または物質(通常、香味剤)を放出し、次に、該液体または物質は、香味吸引器を使用する間はたばこの煙に伝達され、使用後においては周囲の環境へと伝達される。
香料カプセルの形態は、特段限定されず、例えば、易破壊性の香料カプセルであってよく、その形状は球であることが好ましい。香料カプセルに含まれる添加剤としては、上述した任意の添加剤を含んでいてもよいが、特に、香味剤や活性炭素を含むことが好ましい。また、添加剤として、煙を濾過する一助となる1種類以上の材料を加えてもよい。添加剤の形態は、特段限定されないが、通常、液体又は固体である。なお、添加剤を含むカプセルの使用は、当技術分野において周知である。易破壊性の香料カプセルおよびその製造方法は、本技術分野において周知である。
香味剤としては、例えば、メンソール、スペアミント、ペパーミント、フェヌグリーク、またはクローブ、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等であってよい。香味剤は、メンソールである、またはメンソール等、又はこれらの組合せを用いることができる。
香料カプセルを用いた場合、上述のフィルター濾材を構成する繊維の単繊維デニールが上述の範囲の上限を上回ると、香料カプセルから放出された成分のフィルターへの染みの広がりが不十分となりやすく、また、下限を下回ると、フィルターへの染みの広がりが促進され過ぎるため、成分デリバリー量が過度に抑制されやすくなる。
【0170】
フィルターセグメント213は、強度及び構造剛性の向上の観点から、上述フィルター濾材等を巻装する巻取紙(フィルタープラグ巻取紙)を備えていてよい。巻取紙の態様は特段制限されず、一列以上の接着剤を含む継ぎ目を含んでいてよい。該接着剤は、ホットメルト接着剤を含んでいてよく、さらに該ホットメルト接着剤は、ポリビニルアルコールを含み得る。また、フィルターセグメントが二以上のセグメントからなる場合、巻取紙は、これらの二以上のセグメントを併せて巻装することが好ましい。
巻取紙の材料は特段制限されず、公知のものを用いることができ、また、炭酸カルシウム等の充填剤等を含んでいてよい。
巻取紙の厚さは、特段制限されず、通常20μm以上、140μm以下であり、30μm以上、130μm以下であることが好ましく、30μm以上、120μm以下であることがより好ましい。
巻取紙の坪量は、特段制限されず、通常20gsm以上、100gsm以下であり、22gsm以上、95gsm以下であることが好ましく、23gsm以上、90gsm以下であることがより好ましい。
また、巻取紙は、コーティングされていても、されていなくともよいが、強度や構造剛性以外の機能を付与できる観点からは、所望の材料でコーティングされることが好ましい。
【0171】
フィルターセグメント213は、1つまたは複数の中空部を有するセンターホールセグメントをさらに含んでいてもよい。センターホールセグメントは、通常、フィルター濾材よりも冷却セグメント側に配置され、好ましくは冷却セグメントと隣接するように配置される。
【0172】
センターホールセグメントは1つまたは複数の中空部を有する充填層と、該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻取紙)とで構成される。例えば、センターホールセグメントは、中空部を有する充填層と、充填層を覆うインナープラグラッパーとで構成される。センターホールセグメントは、マウスピースセグメントの強度を高める機能を有する。充填層は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して、6質量%以上、20質量%以下添加されて硬化された内径φ1.0mm以上、φ5.0mm以下のロッドとすることができる。充填層は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、充填層内はほとんど流れない。センターホールセグメント内部の充填層が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。なお、センターホールセグメントがインナープラグラッパーを持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。
【0173】
センターホールセグメントと、フィルター濾材とは、例えばアウタープラグラッパー(外側巻取紙)で接続されていてよい。アウタープラグラッパーは、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント211と、冷却セグメント212と、接続済みのセンターホールセグメント及びフィルター濾材とは、例えばマウスピースライニングペーパーにより接続されていてよい。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパーの内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記たばこ含有セグメント211、冷却セグメント212と、並びに接続済みのセンターホールセグメント及びフィルター濾材を入れて巻くことで接続することができる。なお、これらは複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。
【0174】
(冷却セグメント)
冷却セグメント212は、たばこ含有セグメントとフィルターセグメントとに隣接して挟持され、通常、円筒等の周方向の断面が中空(空洞)となるキャビティが設けられた棒状の部材である。
冷却セグメント212には、その周方向に、かつ、同心状に開孔V(本技術分野では「ベンチレーションフィルター(Vf)」とも称する。)が設けられていてよい。
たばこ含有セグメントにエアロゾル発生剤が用いられる場合、たばこロッドが加熱されることで生じるエアロゾル発生剤とたばこ香味成分とを含む蒸気が、外部からの空気と接触して温度が低下することで液化し、エアロゾルが生成されることを促進させることができる。
また、同心円状に存在する開孔Vを1つの開孔群として扱った場合、開孔群は1つであってもよく、また、2つ以上であってもよい。開孔群が2つ以上存在する場合、加熱により生成される成分のデリバリー量向上の観点から、冷却セグメントとフィルターセグメントとの境界から、冷却セグメント側の方向の4mm未満の領域には開孔群を設けないことが好ましい。
また、非燃焼加熱型香味吸引器210が、たばこ含有セグメント211、冷却セグメント212及びフィルターセグメント213がチップペーパー215で巻装されてなる態様である場合、チップペーパー215には、冷却セグメント212に設けられた開孔Vの直上の位置に開孔が設けられていることが好ましい。このような非燃焼加熱型香味吸引器210を作製する場合、開孔Vと重なるような開孔を設けたチップペーパー215を準備して巻装してもよいが、製造容易性の観点から、開孔Vを有さない冷却セグメント212を用いて非燃焼加熱型香味吸引器210を作製した後、冷却セグメント212及びチップペーパー215を同時に貫通する孔を開けることが好ましい。
【0175】
開孔Vが存在する領域は、加熱により生成される成分のデリバリー量を向上させる観点から、冷却セグメント212とフィルターセグメント213との境界から、冷却セグメント側の方向に4mm以上の領域であることが好ましく、4.5mm以上の領域であることがより好ましく、5mm以上の領域であることがさらに好ましく、5.5mm以上の領域であることが特に好ましく、また、冷却機能を確保する観点から、15mm以下の領域であることが好ましく、10mm以下の領域であることがより好ましく、7mm以下の領域であることがさらに好ましい。
開孔Vが存在する領域は、加熱により生成される成分のデリバリー量を向上させる観点から、非燃焼加熱型香味吸引器の吸口端から冷却セグメント側の方向の22mm以上の領域であることが好ましく、23.5mm以上の領域であることが好ましく、24mm以上の領域であることが好ましく、25mm以上の領域であることがより好ましく、また、冷却機能を確保する観点から、38mm以下の領域であることが好ましく、36.5mm以下の領域であることがより好ましく、33mm以下の領域であることがさらに好ましい。
また、冷却セグメント212とたばこ含有セグメント211との境界を基準に考えると、冷却セグメント212の軸方向の長さが20mm以上である場合、開孔Vが存在する領域は、冷却機能を確保する観点から、冷却セグメント212とたばこ含有セグメント211との境界から、冷却セグメント側の方向に2mm以上の領域であることが好ましく、3.5mm以上の領域であることがより好ましく、7mm以上の領域であることがさらに好ましく、また、加熱により生成される成分のデリバリー量を向上させる観点から、18mm以下であることが好ましく、16.5mm以下の領域であることがより好ましく、15mm以下の領域であることがさらに好ましく、14.5mm以下の領域であることが特に好ましい。
【0176】
開孔Vの径は、特段制限されないが、100μm以上、1000μm以下であることが好ましく、300μm以上、800μm以下であることがより好ましい。開孔は、略円形もしくは略楕円形であることが好ましく、略楕円形の場合の前記径は長径を表す。
【0177】
冷却セグメントの長軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常15mm以上であり、20mm以上であることが好ましく、また、通常40mm以下であり、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。冷却セグメントの長軸方向の長さを上記下限以上とすることで、十分な冷却効果を確保して良好な香味を得ることができ、上記上限以下とすることで、生成した蒸気及びエアロゾルが冷却セグメントの内壁に付着することによりロスを抑制することができる。
冷却のための冷却シート等を冷却セグメント212に充填する場合、冷却セグメント212の全表面積は、特段制限されず、例えば、150mm/mm以上、1000mm/mm以下を挙げることができる。この表面積は、冷却セグメント212の通気方向の長さ(mm)当たりの表面積である。冷却セグメント212の全表面積は、200mm/mm以上であることが好ましく、250mm/mm以上であることがより好ましく、一方、600mm/mm以下であることが好ましく、400mm/mm以下であることがより好ましい。
【0178】
冷却セグメント212は、その内部構造が大きい全表面積を有することが望ましい。従って、好ましい実施形態において、冷却セグメント212は、チャネルを形成するためにしわ付けされて、次に、ひだ付け、ギャザー付け、及び折り畳まれた薄い材料のシートによって形成されてもよい。要素の与えられた体積内の折り畳み又はひだが多いと、冷却セグメントの合計表面積が大きくなる。
【0179】
冷却セグメント212の構成材料の厚みは、特段制限されず、例えば、5μm以上、500μm以下であってよく、また、10μm以上、250μm以下であってよい。
【0180】
〔たばこ含有セグメント〕
たばこ含有セグメント211の態様は、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含めば特段制限されないが、たばこシートを含むたばこ充填物を巻紙で巻装してなる態様であることができる。たばこ充填物は、エアロゾル発生剤を含んでいてもよい。エアロゾル発生剤は、加熱されることによりエアロゾルを生成する基材であり、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物が例示される。
たばこ充填物中のエアロゾル発生剤の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを生成させるとともに、良好な香味の付与の観点から、たばこ充填物の全量に対して通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは15重量%以上、25重量%以下である。
【0181】
また、たばこ含有セグメント211は、非燃焼加熱型香味吸引器を加熱するためのヒータ等との嵌合部を有していてもよい。
たばこ充填物を巻紙で巻装してなるたばこ含有セグメント211は、柱状形状を有していることが好ましく、この場合には、たばこ含有セグメント211の底面の幅に対するたばこ含有セグメント211の長軸方向の高さで表されるアスペクト比が1以上であることが好ましい。
底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅は当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。たばこ含有セグメント211を構成するたばこ充填物の高さは10~70mm程度、幅は4~9mm程度であることが好ましい。
【0182】
たばこ含有セグメント211の長軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常10mm以上であり、12mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、18mm以上であることがさらに好ましく、また、通常70mm以下であり、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱型香味吸引器210の長軸方向の長さhに対するたばこ含有セグメント211の長さの割合は、デリバリー量とエアロゾル温度のバランスの観点から、通常10%以上であり、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、また、通常60%以下であり、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0183】
(巻紙)
巻紙の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができ、例えば、パルプが主成分のものを挙げることができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ製品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。
パルプの種類としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
【0184】
上記パルプを用いて長網抄紙機、円網抄紙機、円短複合抄紙機等による抄紙工程の中で、地合いを整え均一化して巻紙を製造する。なお、必要に応じて、湿潤紙力増強剤を添加して巻紙に耐水性を付与したり、サイズ剤を添加して巻紙の印刷具合の調整を行ったりすることができる。さらに、硫酸バンド、各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、及び紙力増強剤等の抄紙用内添助剤、並びに、染料、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用添加剤を添加することができる。
【0185】
巻紙原紙の坪量は、例えば通常20gsm以上であり、好ましくは25gsm以上である。一方、坪量は通常65gsm以下、好ましくは50gsm以下、さらに好ましくは45gsm以下、である。
上記の特性を有する巻紙の厚みは、特に限定されず、剛性、通気性、及び製紙時の調整の容易性の観点から、通常10μm以上であり、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、また、通常100μm以下であり、好ましくは75μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。
該非燃焼加熱型香味吸引器の巻紙として、その形状は正方形又は長方形を挙げることができる。
たばこ充填物を巻装するため(たばこ含有セグメントを作製するため)の巻紙として利用する場合、一辺の長さとして12~70mm程度を挙げることができ、もう一辺の長さとして15~28mm、もう一辺の好ましい長さとして22~24mm、さらに好ましい長さとして23mm程度を挙げることができる。たばこ充填物を巻紙で柱状に巻装する際は、例えばw方向の巻紙の端部とその逆側の端部を2mm程度重ね合わせて糊付けすることで、柱状の紙管の形状となり、その中にたばこ充填物が充填されている形状となる。長方形形状の巻紙のサイズは、出来上がったたばこ含有セグメント211のサイズによって決めることができる。
チップペーパーのように、たばこ含有セグメント211とたばこ含有セグメント211に隣接するその他の部材を連結して巻装するものである場合、一辺の長さとして20~60mm、もう一辺の長さとして15~28mmを挙げることができる。
【0186】
上記のパルプの他に、巻紙には填料が含まれてもよい。填料の含有量は、巻紙の全重量に対して10重量%以上、60重量%未満を挙げることができ、15重量%以上、45重量%以下であることが好ましい。
巻紙では、好ましい坪量の範囲(25gsm以上、45gsm以下)において、填料が15重量%以上、45重量%以下であることが好ましい。
さらに、坪量が25gsm以上、35gsm以下のとき、填料が15重量%以上、45重量%以下であることが好ましく、坪量が35gsm超、45gsm以下のとき、填料が25重量%以上、45重量%以下であることが好ましい。
填料としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を使用することができるが、香味や白色度を高める観点等から炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0187】
巻紙には、原紙や填料以外の種々の助剤を添加してもよく、例えば、耐水性を向上させるために、耐水性向上剤を添加することができる。耐水性向上剤には、湿潤紙力増強剤(WS剤)及びサイズ剤が含まれる。湿潤紙力増強剤の例を挙げると、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン(PAE)等である。また、サイズ剤の例を挙げると、ロジン石けん、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ケン化度が90%以上の高ケン化ポリビニルアルコール等である。
助剤として、紙力増強剤を添加してもよく、例えば、ポリアクリルアミド、カチオンでんぷん、酸化でんぷん、CMC、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げられる。特に、酸化でんぷんについては、極少量用いることにより、通気度が向上することが知られている(特開2017-218699号公報)。
また、巻紙は、適宜コーティングされていてもよい。
【0188】
巻紙には、その表面及び裏面の2面うち、少なくとも1面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。例えばアルギン酸及びその塩(例えばナトリウム塩)、ペクチンのような多糖類、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンやその誘導体(例えばカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン及びカチオンデンプンのようなエーテル誘導体、酢酸デンプン、リン酸デンプン及びオクテニルコハク酸デンプンのようなエステル誘導体)を挙げることができる。
【0189】
〔チップペーパー〕
チップペーパー215の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができ、例えば、パルプが主成分のものを挙げることができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。これらのパルプは、単独の種類で用いてもよく、複数の種類を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
また、チップペーパー215は一枚で構成されていてもよいが、複数枚以上で構成されていてもよい。
パルプの態様としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
なお、チップペーパー215は、後述する製造方法により製造したものでも、市販品を用いてもよい。
チップペーパー215の形状は、特段制限されず、例えば、正方形または長方形とすることができる。
【0190】
チップペーパー215の坪量は、特段制限されないが、通常32gsm以上、40gsm以下であり、33gsm以上、39gsm以下であることが好ましく、34gsm以上、38gsm以下であることがより好ましい。
チップペーパー215の通気度は、特段制限されないが、通常0コレスタユニット以上、30000コレスタユニット以下であり、0コレスタユニット超、10000コレスタユニット以下であることが好ましい。通気度は、ISO 2965:2009に準拠して測定される値であり、紙の両面の差圧が1kPaのときに、1分ごとに面積1cmを通過する気体の流量(cm)で表される。1コレスタユニット(1コレスタ単位、1C.U.)は、1kPa下においてcm/(min・cm)である。
【0191】
チップペーパー215は、上記のパルプ以外に、填料が含有されていてもよく、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、酸化チタン、二酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、硫化亜鉛などの金属硫化物、石英、カオリン、タルク、ケイソウ土、石膏等が挙げられ、特に、白色度・不透明度の向上及び加熱速度の増加の観点から炭酸カルシウムを含んでいることが好ましい。また、これらの填料は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0192】
チップペーパー215は、上記のパルプや填料以外に、種々の助剤を添加してもよく、例えば、向上させるために、耐水性向上剤を有することができる。耐水性向上剤には、湿潤紙力増強剤(WS剤)及びサイズ剤が含まれる。湿潤紙力増強剤の例を挙げると、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン(PAE)等である。また、サイズ剤の例を挙げると、ロジン石けん、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ケン化度が90%以上の高ケン化ポリビニルアルコール等である。
【0193】
チップペーパー215には、その表面及び裏面の2面うち、少なくとも1面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。
【0194】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の構成は、後述する非燃焼加熱型香味吸引システムに用いられ得るものであるが、燃焼を伴うシガレット(紙巻きたばこ)にも適用することができる。
【0195】
〔非燃焼加熱型香味吸引器の製造方法〕
上述した非燃焼加熱型香味吸引器の製造方法は、特段制限されず、公知の方法を適用することができ、例えば、たばこ含有セグメント及びマウスピースセグメントをチップペーパーで巻き上げることで製造することができる。
【0196】
<非燃焼加熱型香味吸引システム>
本発明の別の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システム(単に「非燃焼加熱型香味吸引システム」とも称する。)は、ヒータと、該ヒータの電力源となる電池ユニットと、該ヒータを制御するための制御ユニットとを備える加熱装置と、該ヒータに接触するように挿入される、上記の非燃焼加熱型香味吸引器と、から構成される、非燃焼加熱型香味吸引システムである。
非燃焼加熱型香味吸引システムの態様としては図11に示すような、非燃焼加熱型香味吸引器210の外周面を加熱する態様であってもよく、図12に示すような、非燃焼加熱型香味吸引器210におけるたばこ含有セグメント211の内部から加熱する態様であってもよい。なお、図11及び図12に示す加熱装置220には空気導入孔が設けられているが、ここでは図示しない。以下、図12を用いて非燃焼加熱型香味吸引システム230を説明する。なお、図11及び12における非燃焼加熱型香味吸引器210について、図11及び12に示す各構成を表す符号は一部省略する。
非燃焼加熱型香味吸引システム230は、加熱装置220の内部に配置された、ヒータ221に、上記で説明した非燃焼加熱型香味吸引器210が接触するように挿入されて使用される。
加熱装置220は、例えば樹脂性の躯体224の内部に、電池ユニット222と制御ユニット223とを有する。
非燃焼加熱型香味吸引器210を加熱装置220に挿入すると、たばこ含有セグメント211の外周面が加熱装置220のヒータ221と接触し、やがてたばこ含有セグメント211の外周面の全部とチップペーパーの外周面の一部がヒータ221に接触する。
加熱装置220のヒータ221は、制御ユニット223による制御により発熱する。その熱が非燃焼加熱型香味吸引器210のたばこ含有セグメント211に伝わることで、たばこ含有セグメント211のたばこ充填物に含まれるエアロゾル発生剤や香味成分等が揮発する。
【0197】
ヒータ221は、例えばシート状ヒータ、平板状ヒータ、筒状ヒータであってよい。シート状ヒータとは柔軟なシート形のヒータであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20μm~225μm程度)を含むヒータが挙げられる。平板状ヒータとは剛直な平板形のヒータ(厚み200μm~500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒータが挙げられる。筒状ヒータとは中空または中実の筒形のヒータ(厚み200μm~500μm程度)であり、例えば金属製等の筒の外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒータが挙げられる。また、内部に抵抗回路を有し、当該部分を発熱部とする金属製等の棒状ヒータ、錐状ヒータも挙げられる。筒状ヒータの周方向断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
図11に示すような、非燃焼加熱型香味吸引器210の外周面を加熱する態様である場合、上記のシート状ヒータ、平板状ヒータ、筒状ヒータを用いることができる。一方で、図12に示すような、非燃焼加熱型香味吸引器210におけるたばこ含有セグメント11の内部から加熱する態様である場合は、上記の平板状ヒータや柱状ヒータ、錐状ヒータを用いることができる。
ヒータ221の長軸方向の長さは、たばこ含有セグメント211の長軸方向の長さをLmmとしたときに、L±5.0mmの範囲内とすることができる。ヒータ221の長軸方向の長さは、たばこ含有セグメント211に十分に熱を伝え、たばこ充填物に含まれるエアロゾル発生剤や香味成分等を十分に揮発させる、すなわちエアロゾルデリバリーの観点から、Lmm以上であることが好ましく、香味等へ不所望な影響を及ぼす成分の発生を抑制する観点からL+0.5mm以下、L+1.0mm以下、L+1.5mm以下、L+2.0mm以下、L+2.5mm以下、L+3.0mm以下、L+3.5mm以下、L+4.0mm以下、L+4.5mm以下又はL+5.0mm以下であることが好ましい。
【0198】
ヒータ221による非燃焼加熱型香味吸引器210の加熱時間や加熱温度といった加熱強度は、非燃焼加熱型香味吸引システム230ごとにあらかじめ設定することができる。例えば、加熱装置220に非燃焼加熱型香味吸引器210を挿入した後に、一定時間の予備加熱を行うことで、非燃焼加熱型香味吸引器210における、加熱装置220に挿入されている部分の外周面の温度がX(℃)になるまで加熱し、その後、該温度がX(℃)以下の一定温度を保つように、あらかじめ設定することができる。
上記X(℃)は、加熱により生成される成分等のデリバリー量の観点から、80℃以上400℃以下であることが好ましい。具体的には、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃とすることができる。
ヒータ221による加熱により、たばこ含有セグメント211から生じるエアロゾル発生剤由来の成分や香味成分由来の成分等を含む蒸気は、冷却セグメント212やフィルターセグメント213等から構成されるマウスピースセグメント214を通して使用者の口腔内に到達する。
【0199】
冷却セグメント212に設けられる開孔Vは、外部からの空気の流入の促進及び加熱により生成される成分や空気の冷却セグメント212内での滞留の抑制の観点から、図13に示すように、冷却セグメント212における、加熱装置220と接触する領域の吸口端側の端部(図中の矢印Xで示す箇所)よりも吸口端側に存在することが好ましい。また、加熱装置220の非燃焼加熱型香味吸引器210の挿入口は、非燃焼加熱型香味吸引器210を挿入し易くするため、図14に示すようテーパー状となっていてもよく、この場合には、加熱装置220と接触する領域の吸口端側の端部とは、図中の矢印Yで示す箇所の位置となる。なお、図13及び14における非燃焼加熱型香味吸引器210について、図10~12に示す各構成を表す符号は一部省略する。
【0200】
[第3の態様]
本実施態様は、以下の[1c]~[13c]を含む。本実施形態によれば、破断折れの抑制と伝熱効率のバランスに優れたたばこ含有セグメントを備える非燃焼加熱型香味吸引器を提供できる。
【0201】
[1c]本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器用たばこシートを含むたばこ含有セグメントと、
当該たばこ含有セグメントに隣接する隣接部材と、
当該たばこ含有セグメントを巻包する巻包材、または当該たばこ含有セグメントと隣接部材とを巻包する巻包材と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引器であって、
前記巻包材が、当接する被巻装部材よりも高い伝熱性を有する高伝熱部を有し、
当該高伝熱部が、たばこ含有セグメントの下流端近傍を巻包している、非燃焼加熱型香味吸引器。
【0202】
[2c]前記高伝熱部が、前記たばこ含有セグメントの下流端近傍から隣接部材の上流端近傍までを巻包している、[1c]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0203】
[3c]前記巻包材が、前記たばこ含有セグメントと前記隣接部材を接続するチップペーパーである、[1c]または[2c]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0204】
[4c]前記巻包材が、前記たばこ含有セグメントにおけるたばこシートを直接巻包する巻紙である、[1c]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0205】
[5c]前記高伝熱部が式(1)の伝熱特性を満足する材料で構成される、
dT≧330(W/℃)・・・(1)
ここで、QdTは円筒形状サンプルに基づいて算出された下記式で定義される伝熱量係数である、
dT=K×2πL/ln(r/r
K=熱伝導係数(W/m/℃)
L=サンプルの軸方向長さ(mm)
=サンプルの外半径(mm)
=サンプルの内半径(mm)
[1c]~[4c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0206】
[6c]前記高伝熱部が、前記たばこ含有セグメントのヒータによって加熱される部分に存在する、[1c]~[5c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0207】
[7c]前記たばこ含有セグメントの下流端近傍は、当該下流端を始点とし、当該たばこ含有セグメントの軸方向長さの5~50%の位置を終点とする領域である、[1c]~[6c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0208】
[8c]前記隣接部材の上流端近傍は、当該上流端を始点とし、当該隣接部材の軸方向長さの1~15%の位置を終点とする領域である、[2c]、[3c]、または[5c]~[7c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0209】
[9c]前記高伝熱部の軸方向長さが3~10mmである、[1c]~[8c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0210】
[10c]前記高伝熱部が、アルミニウム、ステンレス、金、銀、およびこれらの組合せからなる群より選択される金属を含む、[1c]~[9c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0211】
[11c]前記高伝熱部が、紙と、当該紙上に担持された、前記金属粒子または金属シートを備える、[1c]~[10c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0212】
[12c]前記隣接部材が、冷却部材である、[1c]~[11c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器。
【0213】
[13c][1c]~[12c]のいずれかに記載の非燃焼加熱型香味吸引器と、
当該非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントにおける前記高伝熱部が巻包している部分を加熱するヒータを
備える加熱装置と、
を備える、非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0214】
1.非燃焼加熱型香味吸引器
図19は本実施形態の非燃焼加熱型香味吸引器の一態様を示す。図中、310は非燃焼加熱型香味吸引器、301はたばこ含有セグメント、303はたばこ含有セグメントに隣接する隣接部材(好ましくは冷却部材)、305はマウスピース、352はフィルター、354はセンターホールフィルター、307はチップペーパー、309は巻包材、Vはベンチレーションである。図19に示す態様は、たばこシートを直接加熱するので非燃焼直接加熱型香味吸引器ともいう。
【0215】
(1)たばこ含有セグメント
たばこ含有セグメントは本実施形態に係るたばこシートを含み、該たばこシートに含まれる香喫味成分を発生するための略円柱状の部材である。たばこ含有セグメントはたばこシートとその周囲を巻装する巻紙(ラッパー)を備える。巻紙内に充填されるたばこシートの形状は限定されず、例えばシートそのもの、または当該シートを幅0.8~1.2mmに裁刻したものなどが挙げられる。前記シートを裁刻せずにギャザー加工、折り畳み、あるいは渦巻き状にして巻紙内に充填してたばこ含有セグメントとしてもよい。また、当該シートを短冊状に裁断してこれらを巻紙に、同心円状にあるいは短冊の長手方向がたばこ含有セグメントの長手方向と平行になるように充填してたばこ含有セグメントとしてもよい。
【0216】
たばこシートの充填密度は特に限定されないが、非燃焼加熱型香味吸引器の特性を担保し、良好な喫味を付与する観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは320mg/cm以上である。また、その上限は通常800mg/cm以下であり、好ましくは600mg/cm以下である。たばこ含有セグメント301の長さは限定されないが15~25mmであることが好ましい。その直径も限定されないが6~8mmであることが好ましい。
【0217】
たばこシートは、加熱に伴って蒸気を発生してもよい。加熱温度は限定されないが30~350℃程度である。エアロゾルの発生を促進するために、たばこシートにグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加してもよい。エアロゾル源の添加量は、たばこシートの乾燥重量に対して5~50重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましい。その他、たばこシートには公知の香料等を添加してもよい。
【0218】
(2)隣接部材
隣接部材303とは、たばこ含有セグメント301の下流側に隣接する部材である。本実施形態において、下流とは吸口端への方向をいう。隣接部材としては、エアロゾルを冷却するための冷却部材、器全体の強度を高めるための支持部材、または後述するマウスピースが挙げられる。本実施形態において隣接部材303は冷却部材であることが好ましい。
【0219】
冷却部材は、たばこ含有セグメント301で発生した香喫味成分や蒸気を冷却する等してエアロゾル化を促進するための部材である。冷却部材は中空の紙管であってよい。紙管は巻紙やチップペーパーよりも剛性の高いカードボードで構成されることが好ましい。当該紙管には、ベンチレーションV(開孔)が設けられてもよい。ベンチレーションは紙管の円周に沿って複数設けられることが好ましい。また冷却部材内には、熱交換効率を高めるためにギャザー付けされたシートが充填されてもよい。冷却部材の寸法は限定されないが、長さは15~25mmであることが好ましく、直径は5.5~7.5mmであることが好ましい。
【0220】
(3)巻包材
巻包材は、たばこ含有セグメント、または当該たばこ含有セグメントと隣接部材とを巻包する。巻包材は、当接する被巻装部材よりも伝熱性が高い高伝熱部を備える。当該構成を備える非燃焼加熱型香味吸引器は、破断折れの抑制と伝熱効率のバランスに優れ、総煙量を増加させる。高伝熱部を構成する材料としては、熱伝導係数が50(W/m/℃)以上である材料が挙げられる。このような材料の具体例としては、アルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛、金、または銀が挙げられる。
【0221】
巻包材からたばこ含有セグメントへの伝熱性は、用いる材料の熱伝導係数の他に、高伝熱部の軸方向長さ、厚さ、または非燃焼加熱型香味吸引器の直径等によって変動する。よって、高伝熱部を構成する材料は、好ましくは式(1)の伝熱特性を満足するように選択されてよい。
dT≧330(W/℃)・・・(1)
ここで、QdT図22に示す円筒形状サンプルに基づき算出された下記式で定義される伝熱量係数である。
dT=K×2πL/ln(r/r
K=熱伝導係数(W/m/℃)
L=サンプルの軸方向長さ(mm)
=サンプルの外半径(mm)
=サンプルの内半径(mm)
【0222】
具体的に、QdTは以下のように定義される。
図22は、内半径r、外半径r、高さLの円筒サンプルであり、内壁の温度がT、外壁の温度がTである。この場合、伝熱速度Q(W)は、フーリエの法則から式(i)で与えられる。Kは熱伝導係数(W/m/℃)、Amは対数平均面積(m)である。
【0223】
【数1】
【0224】
これを変形して式(ii)とし、さらに両辺を積分すると式(iii)が成立し、以降、式(1)に変形できる。すなわち、QdT図22のモデルにおいて求めた伝熱速度Q(W)を内壁と外壁との温度差で除したパラメータである。
【0225】
【数2】
【0226】
例えば、非燃焼加熱型香味吸引器の直径が5mm程度である細巻きタイプの場合、アルミニウム(K=236(W/m/℃))を用いると以下のようなケースにおいて、前記式(1)を満足することができる。
【0227】
【表2】
【0228】
また、非燃焼加熱型香味吸引器の直径が7mm程度である標準巻きタイプの場合、以下のようなケースにおいて、前記式(1)を満足することができる。伝熱性が低い材料を用いた場合と合わせて下表に示す。
【0229】
【表3】
【0230】
以上から、一態様においてQdTは、好ましくは650(W/℃)以上、または850(W/℃)以上である。また高伝熱部は、アルミニウム、ステンレス、金、銀、およびこれらの組合せからなる群より選択される。
【0231】
巻包材は、高伝熱部のみで構成されていてもよいし、他の材料を備えていてもよい。例えば、巻包材は紙やポリマーシートの上に、金属粒子または金属シートが担持された積層体(貼合体)であってもよい。また、巻包材は紙やポリマー等のマトリックスの中に伝熱性の高い金属やセラミック等の粒子が分散している複合体であってもよい。あるいは、巻包材は紙やポリマー等のシートと伝熱性の高い金属やセラミック等のシートを端部でもしくは端部の近傍で接合したシートであってもよい。
【0232】
図19(1)に示すとおり、巻包材309の高伝熱部はたばこ含有セグメント301の下流端近傍を巻包している。説明しやすいように、たばこ含有セグメント301の下流端を原点0とし、たばこ含有セグメント301の上流端をX、隣接部材303の下流端を-Yとする。たばこ含有セグメント301の下流端近傍とは、好ましくは原点0を始点とし、0.05X~0.5Xを終点とする領域であり、より好ましくは原点0を始点とし、0.05X~0.2Xを終点とする領域である。本実施形態の効果をより顕著にする観点からは、高伝熱部はたばこ含有セグメント301と隣接部材303の接合部も巻装する、すなわち隣接部材303の上流端近傍も巻装することが好ましい。隣接部材303の上流端近傍とは、好ましくは原点0を始点とし、-0.01Y~-0.5Yを終点とする領域であり、より好ましくは-0.01Y~-0.15Yを終点とする領域である。さらに、熱伝導率を高める観点からは、高熱伝導部はたばこ含有セグメント301の最上流端部までを巻装していてもよい。また、図19(2)に示すように巻包材309とチップペーパー307は端面が接合されて一体としてチップペーパーとされてもよい。さらには、図19(3)に示すように巻包材309の外側にチップペーパー307が配置されてもよい。前述のとおり、巻包材309は高伝熱部のみで構成されていてもよいし他の材料を備えていてもよいが、説明を簡略にするため、図19および図21においては、巻包材309が高伝熱部のみで構成される態様を示す。
【0233】
図21Aは巻包材309がたばこ含有セグメント301から隣接部材303まで延在する具体的な態様を示す。本態様においてチップペーパー307はたばこ含有セグメント301を巻包しない。図中、308は第2の巻紙であり、好ましくは紙で構成される。図21A(1)は巻包材309と第2の巻紙308が接合されて一体となって、たばこ含有セグメント301の先端部から隣接部材303の上流端部までを巻包する態様を示す。図21A(2)は、巻包材309がたばこ含有セグメント301の下流端部から隣接部材303の上流端部までを巻包し、第2の巻紙308がたばこ含有セグメント301を巻包し、その一部は巻包材309の外周部に存在する態様を示す。図21A(3)は、第2の巻紙308がたばこ含有セグメント301を巻包し、巻包材309が第2の巻紙308の上からたばこ含有セグメント301の下流端部を巻包し、かつ隣接部材303の上流端部まで延在する態様を示す。
【0234】
図21Bは巻包材309がたばこ含有セグメント301の下流端部を巻包する具体的な態様を示す。本態様においてチップペーパー307はたばこ含有セグメント301の下流端部を巻包する。図21B(1)は巻包材309と第2の巻紙308が接合されて一体となって、たばこ含有セグメント301を巻包する態様を示す。図21B(2)は、巻包材309がたばこ含有セグメント301の下流端部を巻包し、第2の巻紙308が巻包材309の上からたばこ含有セグメント301を巻包する態様を示す。図21B(3)は、第2の巻紙308がたばこ含有セグメント301を巻包し、巻包材309が第2の巻紙の上からたばこ含有セグメント301の下流端部を巻包する態様を示す。
【0235】
図21は巻包材309がチップペーパー307で覆われる具体的な態様を示す。本態様において巻包材309はチップペーパー307の内周面の一部に貼合される。図21C(1)は前記巻包材309が、第2の巻紙308で巻包されたたばこ含有セグメント301の下流端部と隣接部材303の上流端部を巻包する態様を示す。チップペーパー307の上流端は、巻包材309の上流端と同じ位置にある。図21C(2)は、図21C(1)において、チップペーパー307の上流端がたばこ含有セグメント301の上流端まで延びる態様を示す。図21C(3)は、図21C(1)において、チップペーパー307と巻包材309が、たばこ含有セグメント301の上流端まで延びる態様を示す。
【0236】
巻包材309の高伝熱部は、たばこ含有セグメント301のヒータによって加熱される部分に存在することが好ましい。一態様において高伝熱部の軸方向長さは3~10mm程度である。
【0237】
(4)マウスピース
マウスピースは吸口端を構成する部材である。一態様においてマウスピース305は、フィルター352とセンターホールフィルター354を備える。フィルター352およびセンターホールフィルター354としては公知のものを使用できる。
【0238】
2.非燃焼加熱型香味吸引システム
非燃焼加熱型香味吸引器と加熱ユニットの組合せを非燃焼加熱型香味吸引システムともいう。図20に当該システムの一態様を示す。図中、300は非燃焼加熱型香味吸引システム、310は非燃焼加熱型香味吸引器、330はヒータを備える加熱ユニットである。加熱ユニットは、ヒータとハウジングと電源等を備える。
【0239】
ヒータは、好ましくは電気的にたばこ含有セグメント301を加熱する。ヒータの形状は限定されず、たばこ含有セグメント301の外周に配置される。ヒータは、例えばシート状ヒータ、平板状ヒータ、筒状ヒータ、ニードル状ヒータであってよい。シート状ヒータとは柔軟なシート形のヒータであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20~225μm程度)を含むヒータが挙げられる。平板状ヒータとは剛直な平板形のヒータ(厚み200~500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒータが挙げられる。筒状ヒータとは中空または中実の筒形のヒータであり、例えば、外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒータが挙げられる。筒状ヒータの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
【実施例
【0240】
以下、本実施形態の具体例について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0241】
[実施例1]
たばこラミナ(葉たばこ)をホソカワミクロンACM機にて乾式粉砕し、たばこ粉末を得た。該たばこ粉末について、マスターサイザー(商品名、スペクトリス株式会社マルバーン・パナリティカル事業部製)を用いて、乾式レーザー回折法により測定される体積基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)を測定したところ、200μmであった。
【0242】
前記たばこ粉末をたばこ原料として用いて、たばこシートを製造した。具体的には、前記たばこ原料70質量部と、エアロゾル発生剤としてのグリセリン12質量部と、第一の成型剤としての粉末状のカルボキシメチルセルロース4質量部と、第二の成型剤としての水で膨潤させたカルボキシメチルセルロース1質量部と、補強剤としての繊維状パルプ5質量部と、香料としてのココアパウダー8質量部とを混合し、押出成形機にて混練した。混練物を2対の金属製ロールにてシート状に成型して圧延成形品を得た。該圧延成形品に対して製麺用回転式ロール刃を押し当て、短冊状に切断しつつ波型形状を付与した。さらに長さが20mmとなるように切断し、乾燥することで、長さ:20mm、幅:0.8mmのたばこシートを得た。該たばこシートの厚み方向断面は、図1に示されるような断面形状を有していた。
【0243】
得られたたばこシートについて、膨嵩性を測定した。具体的には、たばこシートを22℃、60%の調和室内で48時間存置した後、DD-60A(商品名、ボルグワルド社製)にて膨嵩性を測定した。測定は、たばこシート15gを内径60mmの円筒形容器に入れ、3kg荷重で30秒圧縮した時の容積を求めることで行った。結果を表4に示す。なお、表4において膨嵩性は、後述する比較例1の膨嵩性の値を基準として、該基準値に対する膨嵩性の増加率(%)で示した。
【0244】
[比較例1]
実施例1と同様の方法により圧延成形品を作製した。その後、複数のリング型の回転刃で短冊状に切断した。さらに長さが20mmとなるように切断することで、長さ:20mm、幅:0.8mmの波型形状が付与されていないたばこシートを得た。得られたたばこシートについて、実施例1と同様に膨嵩性を測定した。結果を表4に示す。
【0245】
【表4】
【0246】
表4より、本実施形態に係るたばこシートである実施例1のたばこシートでは、波型形状が付与されていない比較例1のたばこシートと比較して膨嵩性が向上した。
【0247】
<非燃焼加熱型香味吸引器の作製>
[参考例1b]
たばこ充填物として、グリセリン15g/100g、およびプロピレングリコール4g/100gをシートたばこの刻みに混合したものを準備した。高速巻き上げ機を用い、巻紙(日本製紙パピリア製、坪量35g/m、厚み52μm)でたばこ充填物を巻き上げた。
1本あたりの刻み重量は0.8g、巻円周は22mm、巻き長さは68mmとした。
巻き上げたたばこ含有セグメントは水準毎に200本ずつプラスチックの密閉容器に入れて保管した。
保管したたばこ含有セグメントを長さ20mmに切断した。その後、たばこ含有セグメントと、長さ20mmの紙管と、長さ12mmの貫通孔(直径4.5mm)を有したセンターホール、及び長さ8mmの周方向断面がY形状の酢酸セルロース繊維(単繊維デニール(g/9000m):12、総繊維デニール(g/9000m):28000)から構成されるフィルター濾材(密度:0.122g/cm、圧縮変化率P(以下「硬さ」と称する。):88%)とを、上記で準備したチップペーパーで巻装することで、開孔を有しない非燃焼加熱型香味吸引器を作製した後、紙管とセンターホールフィルターとの境界から、紙管側の方向の5.5mm(非燃焼加熱型香味吸引器の吸口端から25.5mm)の位置に、紙管の周方向に同心状に、かつ、チップペーパーと紙管とをともに貫通するように17個の孔を開けて開孔を設け、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗は、1.35mmHO/mmであった。
なお、上述した式(1)で表される上記のフィルター濾材の圧縮変化率P(硬さ)は、Sodim SAS社製のSODIM-H Hardness module等を用いて測定した。これは、以下の全ての参考例及び比較例で同様である。
【0248】
[比較例1b]
単繊維デニール(g/9000m):12、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.122g/cm)から、単繊維デニール(g/9000m):5.9、総繊維デニール(g/9000m):35000のフィルター濾材(密度0.143g/cm、硬さ:87%)に変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、比較例1bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗は、2.62mmHO/mmであった。
【0249】
[参考例2b]
メンソールを含む香料カプセル(直径3.5mmの球形状である。他の参考例及び比較例における香料カプセルも同様。)をフィルター濾材の内部に配置し、センターホールの長さを12mmから8mmに、フィルター濾材の長さを8mmから12mmに変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、参考例2bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの密度(香料カプセルを除いた状態の密度)、硬さ、及び長軸方向の通気抵抗は、それぞれ0.122g/cm、88%、1.93mmHO/mmであった。なお、フィルターセグメントに係るパラメータは、香料カプセルを破砕せずに評価を行った。これは、香料カプセルを用いた他の参考例及び比較例でも同様である。
【0250】
[参考例3b]
単繊維デニール(g/9000m):12、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.122g/cm)から、単繊維デニール(g/9000m):8、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.119g/cm、硬さ:89%)に変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、参考例3bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗は、1.69mmHO/mmであった。
【0251】
[参考例4b]
メンソールを含む香料カプセルをフィルター濾材の内部に配置し、センターホールの長さを12mmから8mmに、フィルター濾材の長さを8mmから12mmに変更し、単繊維デニール(g/9000m):12、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.122g/cm、硬さ:88%)から、単繊維デニール(g/9000m):8、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.123g/cm、硬さ:91%)に変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、参考例4bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗は、2.76mmHO/mmであった。
【0252】
[参考例5b]
センターホールの長さを12mmから6mmに、フィルター濾材の長さを8mmから14mmに変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、参考例5bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの密度、硬さ、及び長軸方向の通気抵抗は、それぞれ0.129g/cm、90%、1.58mmHO/mmであった。
【0253】
[参考例6b]
センターホールの長さを12mmから6mmに、フィルター濾材の長さを8mmから14mmに変更し、単繊維デニール(g/9000m):12、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.122g/cm、硬さ:88%)から、単繊維デニール(g/9000m):8、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.119g/cm、硬さ:89%)に変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、参考例6bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗は、1.69mmHO/mmであった。
【0254】
[参考例7b]
メンソールを含む香料カプセルをフィルター濾材の内部に配置し、かつ、フィルター濾材にメンソール6mg/12mmを添加し、センターホールの長さを12mmから8mmに、フィルター濾材の長さを8mmから12mmに変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、参考例7bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの密度(香料カプセルを除いた状態の密度)、硬さ、及び長軸方向の通気抵抗は、それぞれ0.122g/cm、91%、2.48mmHO/mmであった。
【0255】
[比較例2b]
メンソールを含む香料カプセルをフィルター濾材の内部に配置し、かつ、フィルター濾材にメンソール6mg/12mmを添加し、センターホールの長さを12mmから8mmに、フィルター濾材の長さを8mmから12mmに変更し、単繊維デニール(g/9000m):12、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.122g/cm、硬さ:88%)から、単繊維デニール(g/9000m):5.9、総繊維デニール(g/9000m):35000のフィルター濾材(密度(香料カプセルを除いた状態の密度):0.152g/cm、硬さ:94%)に変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、比較例2bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗は、それぞれ6.23mmHO/mmであった。
【0256】
[比較例3b]
単繊維デニール(g/9000m):12、総繊維デニール(g/9000m):28000のフィルター濾材(密度:0.122g/cm)から、単繊維デニール(g/9000m):20、総繊維デニール(g/9000m):25000のフィルター濾材(密度0.113g/cm、硬さ:85%)に変更したこと以外は、参考例1bの非燃焼加熱型香味吸引器と同様の方法により、比較例3bの非燃焼加熱型香味吸引器を作製した。該非燃焼加熱型香味吸引器のフィルターセグメントの長軸方向の通気抵抗は、0.80mmHO/mmであった。比較例3bの非燃焼加熱型香味吸引器は、十分な硬さが得られなかったため、後述のデリバリー量の評価は行わなかった。
【0257】
上述した各参考例、比較例における非燃焼加熱型香味吸引器の製造条件や特性を表5にまとめる。
【0258】
【表5】
【0259】
<デリバリー量の評価>
参考例1b~7b及び比較例1b~3bで作製した各非燃焼加熱型香味吸引器を喫煙試験に供し、加熱により生成される成分のデリバリー量を評価した。
喫煙試験は、Canadian Intense Smoking(CIR)を参考に下記の条件で行った。
外周加熱を行う加熱装置を使用し、非燃焼加熱型香味吸引器を挿入した後に、ヒータ温度を21秒間以内で295℃まで昇温し、5秒間以内で260℃まで降温し、評価終了まで(約330秒間)260℃で維持した。この後、喫煙試験はBorgwaldt社製1本がけ自動喫煙機を用いて、流量55cc/2秒、喫煙間隔30秒の条件で自動喫煙を行った。この際、冷却セグメントに施された開孔が、非燃焼加熱型香味吸引器と加熱装置とが接触する領域の吸口端側の端部から25.5mmとなるようにした。喫煙試験で発生した主流煙をケンブリッジパッドに捕集し、参考例1b~6b及び比較例1bについてはパフ動作を12回、参考例7b及び8b並びに比較例2b及び3bについてはパフ動作10回行なった後にケンブリッジパッドを取り出し、10mlのエタノールにて抽出し、GC-MSを用いて各パフ動作で採取した主流煙中の各成分の量を測定した。
参考例1b~9b及び比較例1bにおける非燃焼加熱型香味吸引器において、上記の測定から得られた主流煙中の成分量の指標として、ニコチン及びグリセリンの各成分の量を下記の表6及び7、並びに図15~18に示す。具体的に、図15には参考例1b及び3b、並びに比較例1bの結果(カプセルなし、メンソールなし、センターホールの長さ:フィルターセグメントの長さ=12:8の条件における繊維デニールの影響の検討)を示し、図16には参考例7b及び比較例2bの結果(カプセルあり、メンソールあり、センターホールの長さ:フィルターセグメントの長さ=8:12の条件における繊維デニールの影響の検討)を示し、図17には参考例2b及び4bの結果(カプセルあり、メンソールなし、センターホールの長さ:フィルターセグメントの長さ=12:8の条件における繊維デニールの影響の検討)を示し、また図18には参考例5b及び6bの結果(カプセルなし、メンソールなし、センターホールの長さ:フィルターセグメントの長さ=6:14の条件における単繊維デニールの影響の検討)を示す。なお、カプセル添加を行った参考例及び比較例については、香料カプセルを破砕した後に上記の評価を行った。
【0260】
【表6】
【0261】
【表7】
【0262】
上記の表4及び5、並びに図15~18から、フィルター濾材への香料カプセル添加の有無、及びメンソール添加の有無に関わらず、単繊維デニールが8以上12以下である非燃焼加熱型香味吸引器は、短繊維デニールがこの範囲外である非燃焼加熱型香味吸引器と比較し、主流煙の成分量の指標であるニコチン及びグリセリンのいずれにおいてもデリバリー量の観点において、優位性があることが分かった。
【0263】
[参考例1c]
図19に示すような非燃焼加熱型香味吸引器を準備した。外径は7mm、全長は55mmであり、各セグメントの寸法は以下のとおりであった。
たばこ含有セグメント:20mm
冷却セグメント:20mm
マウスピースセグメント:15mm
【0264】
以下の巻包材を準備した。
アルミニウム箔A1:非燃焼加熱型香味吸引器の軸方向長さが15mm、厚さ30μm
アルミニウム箔A2:非燃焼加熱型香味吸引器の軸方向長さが22mm、厚さ30μm
貼合紙AP:非燃焼加熱型香味吸引器の軸方向長さが15mm、厚さ50μmの紙と厚さ15μmアルミニウム箔を貼合せた積層体
それぞれの巻包材を用いて非燃焼加熱型香味吸引器を巻包した。非燃焼加熱型香味吸引器の上流端を基準とした巻包材の上流端の位置を表8に示した。
【0265】
前記非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ刻み側端を、図20に示す加熱デバイスに挿入した。たばこ含有セグメントを295℃に加熱し、この際、たばこ含有セグメント301の一部がヒータで加熱されるようにした。その後、喫煙機による喫煙試験に供した。具体的には、自動喫煙器(Borgwaldt KC Inc.製LM-1)を用いて、サンプルを吸煙容量27.5ml/秒、吸煙時間2秒/パフ、吸煙頻度2パフ/分、8パフの条件で自動喫煙を実施した。
【0266】
喫煙後のサンプルを室温まで冷却し、破断試験に供した。試験の概要を図23に示した。図中、Pはプランジャー、Bは台座である。プランジャーの移動距離、最大荷重、および破断状況を表8にまとめた。
【0267】
[比較例1c]
巻包材を巻包しなかったこと以外は、参考例1cと同じ非燃焼加熱型香味吸引器を準備した。喫煙試験に供する前の当該香味吸引器について、参考例1cと同じ方法で破断試験を行った。さらに、参考例1cと同じ非燃焼加熱型香味吸引器を準備した。巻包材を巻包しない当該香味吸引器を参考例1cと同じ方法で喫煙試験に供し、その後、破断試験に供した。結果を表8に示した。
【0268】
【表8】
【0269】
比較例1cの結果より、加熱前のたばこ含有セグメントは破断せず、破断に対して耐性を有するが、加熱後のたばこ含有セグメントは小さな力で破断することが明らかである。一方、比較例1cにおいて加熱後のたばこ含有セグメント破断に要した力(1.61N)では、参考例1cにおける加熱後のたばこ含有セグメントは破断しなかった。すなわち、参考例1cのたばこ含有セグメントは、破断のためにはかなり大きな力を要した。また、平均距離は、サンプルが破断に至るまでのプランジャーの平均移動距離であり、サンプルが撓ってなかなか破断しないという粘り強さの指標である。参考例1cと比較例1cを対比すると、平均距離および平均荷重とも参考例1cの方が高い値を示す。このことから、参考例1cのたばこ含有セグメントでは、破断折れ抑制効果が十分に発現していることが明らかである。
【0270】
[煙量の測定]
前述の条件で自動喫煙器を用いて喫煙試験を行い、1パフごとの煙量を測定した。ただし加熱温度は295℃とした。具体的には、フィルターを介さずに喫煙機から吐出された煙の光透過度を、フォトセンサーを用いて検出し、煙量を測定した。一般的な煙量測定には、パフ毎に煙成分をガラス繊維フィルターに捕集して秤量する捕集法が用いられる。しかしながらこの方法は比較的煩雑な操作が必要で、またリアルタイムに迅速な計測が困難である。そこで本実施形態においてはフォトセンサーを使用した測定システムを新たに構築して使用した。測定システムの精度を検証するため、市販品PloomTech+(登録商標)(日本たばこ産業株式会社製)をエアロゾル発生源として使用し、一定の煙量に対する電圧値の関係におけるこの測定システム自体の精度を検証した。その結果σ0.005V(CV値2%未満)の結果が得られたため、本システムはデータ評価に際し十分な精度であることが確認された。
【0271】
[煙量測定値と実際の煙量との相関]
前述の煙量測定値(センサー電圧値)と煙量の感覚との関係を調べるため、パネリストによる煙量の官能評価を行った。パネリストは当該煙量の官能評価について十分な訓練を受けた6名とし、下記の評価基準を基に、市販品PloomS(登録商標)(日本たばこ産業株式会社製)をエアロゾル発生源として使用し、一定の煙量に対する官能評価を実施した。同時に前述のシステムで煙量を測定し、その相関性を検証した。具体的には、感覚と刺激量の間には対数相関があるというヴェーバー-フェヒナーの法則に基づいて検証を行った。結果を図25に示す。
【0272】
<評価基準>
0:全く煙が出ていない
1:微かに煙が出ている
2:煙がやや出ている
3:煙が出ている
4:煙がかなり出ている
5:煙が非常に多く出ている
【0273】
この結果より、一定の煙量に対する評価として、センサー電圧値と煙量の感覚の間には、精度の高い相関があることがわかった(R>0.95)。よって前述の測定システムによるセンサー電圧値は、官能評価を精度良く代替することが可能であることが分かった。
【0274】
[参考例2c]
参考例1cと同じ巻き包材を備える非燃焼加熱型香味吸引器を準備した。各香味吸引器について、前述のとおり煙量の測定を行った。フォトセンサーからの電圧値は煙の濃度を反映しており、データロガーでリアルタイムに記録することができた。1パフ内電圧値の最大値とベースラインの差をもって煙量とした。結果を図24に示した。電圧値の差0.05Vは、パネリストが適切に煙量の差を認識できるレベルである。なお、データのバラつきについて統計的な検証を行うため、比較例、参考例それぞれのパフごとの値を対象に標準偏差を算出してその平均値を求めた。その結果、当該平均値は0.04Vであり、比較例に対し、各参考例は、特に3パフ以降において差異があることが確認された。
【0275】
[比較例2c]
巻包材を巻包しなかったこと以外は、参考例1cと同じ非燃焼加熱型香味吸引器を準備した。参考例2cと同じ方法で喫煙試験を行い、各パフにおける煙量を求めた。結果を図24に示した。
【0276】
図に示すとおり、参考例ではヒータからの熱が十分にたばこ含有セグメントに伝わったため総煙量が増加するという効果が認められた。中でもA2の巻包材を用いたたばこ含有セグメントは、煙量増加が著しく、かつ減衰も小さかった。すなわち、当該たばこ含有セグメントは、総煙量の増加を達成できた。これは、A2の巻包材は供給された熱量を十分に刻に与えることができるので、ヒータから離れた場所に位置する刻をも効果的に加熱できたためと推察される。
【符号の説明】
【0277】
1 たばこシート
2 波
3 鋸歯形状
4 非燃焼加熱型香味吸引器
5 たばこ含有セグメント
6 冷却セグメント
7 センターホールセグメント
8 フィルターセグメント
9 マウスピースセグメント
10 筒状部材
11 穿孔
12 第二の充填層
13 第二のインナープラグラッパー
14 アウタープラグラッパー
15 マウスピースライニングペーパー
16 加熱装置
17 ボディ
18 ヒーター
19 金属管
20 電池ユニット
21 制御ユニット
22 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図22
図23
図24
図25